(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103406
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】排気ガス再循環システム及びこれを備える船舶
(51)【国際特許分類】
F02D 13/02 20060101AFI20230719BHJP
F02B 33/00 20060101ALI20230719BHJP
F02B 33/44 20060101ALI20230719BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20230719BHJP
F02B 37/02 20060101ALI20230719BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20230719BHJP
F02B 37/24 20060101ALI20230719BHJP
F02M 26/07 20160101ALI20230719BHJP
F02D 19/06 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F02D13/02 A
F02D13/02 J
F02B33/00 C
F02B33/44 A
F02D23/00 J
F02B37/02 A
F02B37/00 302F
F02B37/24
F02D13/02 B
F02M26/07 301
F02D19/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081567
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2021520183の分割
【原出願日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0063441
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520387760
【氏名又は名称】ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペク ウン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ハン チュ ソグ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン クォン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デュアル燃料エンジンのガスモード運転に適用するための排気ガス再循環システムの提供。
【解決手段】シリンダーの上側に備えられる排気バルブと、ピストンが下死点から上死点に移動する途中でシリンダーにガス燃料を供給するためのガス燃料供給ユニットと、シリンダーに流入される掃気ガスが経由する吸気ラインL2と、シリンダーから排出される排気ガスが経由する排気ラインL1と、吸気ラインに連結されて掃気ガスを圧縮しシリンダーに供給する圧縮機と、排気ラインに連結されてシリンダーから排気ガスの供給を受けて駆動し、回転力を圧縮機に伝達するタービンを含むターボチャージャーと、排気ラインのうちタービンの前段部と吸気ラインのうち圧縮機の前段部を連通するEGRラインL3と、排気バルブの開閉を制御する第1制御部及び/またはタービンに供給される排気ガスの流量を制御する第2制御部と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃料を主燃料に利用して駆動力を発生させるガスモード、および液体燃料を主燃料に利用して駆動力を発生させるディーゼルモードを有するデュアル燃料エンジンに適用される排気ガス再循環システムであって、
燃料を燃焼させるためのシリンダーと、
前記シリンダーの上側に備えられる排気バルブと、
前記シリンダーにおいて下死点と上死点の間を往復移動するピストンと、
前記ピストンが下死点から上死点に移動する途中で前記シリンダーにガス燃料を供給するためのガス燃料供給ユニットと、
前記シリンダーに液体燃料を供給するための液体燃料供給ユニットと、
前記シリンダーに流入される掃気ガスが経由する吸気ラインと、
前記シリンダーから排出される排気ガスが経由する排気ラインと、
前記吸気ラインに連結されて前記掃気ガスを圧縮し前記シリンダーに供給する圧縮機と、前記排気ラインに連結されて前記シリンダーから排気ガスの供給を受けて駆動し、回転力を前記圧縮機に伝達するタービンを含むターボチャージャーと、
前記排気ラインのうち前記タービンの前段部と、前記吸気ラインのうち前記圧縮機の前段部を連通するEGRラインと、
前記排気バルブの開閉を制御する第1制御部と、を含み、
前記シリンダーは、前記ガスモード、または前記ディーゼルモードで運転し、
前記第1制御部は、前記シリンダーが前記ガスモードで運転し、前記EGRラインを介した排気再循環時にガス燃料の供給が完了した直後に前記排気バルブを閉めることを特徴とする排気ガス再循環システム。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記シリンダー内の燃焼圧力に応じて前記液体燃料の噴射タイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項3】
前記タービンに供給される排気ガスの流量を制御する第2制御部と、をさらに含み、
前記第2制御部は、前記EGRラインを介した排気再循環時に前記タービンに供給される排気ガスの流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項4】
前記第2制御部は、前記EGRラインを介した排気再循環時に前記タービンに供給される排気ガスの流量を増加させることを特徴とする請求項3に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項5】
前記タービンの前段と後段を連結し開閉できるバイパスラインをさらに含み、
前記第2制御部は、前記EGRラインを介した排気再循環時に前記バイパスラインを調整することを特徴とする請求項3に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項6】
前記圧縮機の後段と前記タービンの前段を連結し開閉できるバイパスラインをさらに含み、
前記第2制御部は、前記EGRラインを介した排気再循環時に前記バイパスラインを調整して前記圧縮機から排出される掃気ガスの一部を前記タービンに供給することを特徴とする請求項3に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項7】
前記吸気ラインはクーラーをさらに備え、
前記クーラーの後段と前記タービンの前段を連結し開閉できるバイパスラインをさらに含み、
前記第2制御部は、前記EGRラインを介した排気再循環時に前記バイパスラインを調整して前記クーラーから排出される掃気ガスの一部を前記タービンに供給することを特徴とする請求項3に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項8】
前記タービンは備えられるノズル羽根を調整することができる可変型タービンであり、
前記第2制御部は、前記EGRラインを介した排気再循環時に前記ノズル羽根を調整してタービンに供給される排気ガスの流速を増加させることを特徴とする請求項3に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項9】
前記シリンダーから排出された排気ガスは、前記EGRラインを介して前記圧縮機に流入され、
前記EGRラインには排気ガスを加圧するEGRブロワが省略されることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス再循環システム。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の排気ガス再循環システムを備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス再循環システム及びこれを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、船舶などに搭載される大型エンジンとしては、ディーゼルエンジン(Diesel Engine)、ガスエンジン(Gas Engine)、デュアル燃料エンジン(Dual Fuel Engine)などの様々なエンジンが開発されている。このうち、デュアル燃料エンジン(Dual Fuel Engine)は、2つの燃料、例えば、ガス(LNGなど)とディーゼルを並行して使用できるメリットにより船舶に多く使用される。
【0003】
このようなデュアル燃料エンジンが設けられた船舶は、燃焼室の内圧に応じて高圧エンジン(MEGI)と低圧エンジン(X-DFなど)に区分され、2サイクルエンジン(MEGI、X-DF)または4サイクルエンジン(DFDE)などに区分されることができる。
【0004】
デュアル燃料エンジンは、ガスを主燃料に利用して推進駆動力を発生させるガスモードと、ディーゼルを主燃料に利用して推進駆動力を発生させるディーゼルモードのうち何れか1つを利用して運転する。
【0005】
このため、デュアル燃料エンジン(特に、2サイクル低圧Otto cycleエンジン)は、燃焼室を有するシリンダーと、シリンダーにおいて上下方向に往復運動するピストンと、シリンダーの上側に設けられるシリンダーカバーと、シリンダーカバーに設けられてシリンダーにディーゼル燃料を噴射するディーゼルインジェクターと、シリンダーカバーに設けられてシリンダーで燃焼された排気ガスを排出させるための排気バルブと、シリンダーから排出される排気ガスの供給を受ける排気ガスレシーバーと、シリンダーの下側に設けられてシリンダーの内部に空気を供給する掃気レシーバーと、シリンダーの上側と下側の間に設けられてシリンダーの内部にガス燃料を供給する燃料供給部(ガスインジェクターまたはガスノズル)と、ガスモードでの点火のために少量のディーゼル燃料をパイロット燃料として注入するディーゼルインジェクターまたは別のパイロットインジェクターと、を含む。
【0006】
また、デュアル燃料エンジンは、シリンダーから排出される排気ガスを利用してシリンダーに供給される空気の量を増加させることでエンジンの出力を上げるターボチャージャーを含む。ターボチャージャーで供給する圧縮された空気は掃気レシーバーに供給されてシリンダーに供給されることができる。
【0007】
このようなデュアル燃料エンジンがディーゼルモードで運転される場合には、高温で空気と燃料の燃焼が起きるため、有害物質である窒素酸化物(nitrous oxide;NOx)が多量に排出されるが、環境問題に対する規制のため、有害物質を取り除かなければならない。
【0008】
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation、EGR)システムは、熱容量が空気より大きい排気ガスの一部をエンジンの掃気ガスに供給することにより、燃焼室内の温度(燃焼温度及び混合物の圧縮温度など)を下げ、酸素濃度の減少により窒素酸化物の生成を抑制することができる。
【0009】
しかし、デュアル燃料エンジンがガスモードで運転される場合には、空気の流入量が減少することにより燃焼効率が低下し、排気ガス再循環システムの適用効果を有効に得られないか、またはエンジンの運転に制限が発生する可能性がある。従って、デュアル燃料エンジンをガスモードで運転する場合にもEGRシステムの効果を有効に得るための解決方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために創出されたものであり、本発明の目的は、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に適用するための排気ガス再循環システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面により、ガス燃料を主燃料に利用して駆動力を発生させるガスモード、および液体燃料を主燃料に利用して駆動力を発生させるディーゼルモードを有するデュアル燃料エンジンに適用される排気ガス再循環システムであって、 燃料を燃焼させるためのシリンダーと、前記シリンダーの上側に備えられる排気バルブと、前記シリンダーにおいて下死点と上死点の間を往復移動するピストンと、前記ピストンが下死点から上死点に移動する途中で前記シリンダーにガス燃料を供給するためのガス燃料供給ユニットと、前記シリンダーに液体燃料を供給するための液体燃料供給ユニットと、前記シリンダーに流入される掃気ガスが経由する吸気ラインと、前記シリンダーから排出される排気ガスが経由する排気ラインと、前記吸気ラインに連結されて前記掃気ガスを圧縮し前記シリンダーに供給する圧縮機と、前記排気ラインに連結されて前記シリンダーから排気ガスの供給を受けて駆動し、回転力を前記圧縮機に伝達するタービンを含むターボチャージャーと、前記排気ラインのうち前記タービンの前段部と、前記吸気ラインのうち前記圧縮機の前段部を連通するEGRラインと、前記排気バルブの開閉を制御する第1制御部と、を含み、前記シリンダーは、前記ガスモード、または前記ディーゼルモードで運転し、前記第1制御部は、前記シリンダーが前記ガスモードで運転し、前記EGRラインを介した排気再循環時にガス燃料の供給が完了した直後に前記排気バルブを閉めることを特徴とする。
【0013】
具体的に、上記第1制御部は、前記シリンダー内の燃焼圧力に応じて液体燃料の噴射タイミングを制御することができる。
【0014】
具体的に、前記タービンに供給される排気ガスの流量を制御する第2制御部と、をさらに含み、前記第2制御部は、前記EGRラインを介した排気再循環時に前記タービンに供給される排気ガスの流量を調整する
【0015】
具体的に、上記第2制御部は、上記EGRラインを介した排気再循環時に上記タービンに供給される排気ガスの流量を増加させることができる。
【0016】
具体的に、上記排気ガス再循環システムは、上記タービンの前段と後段を連結し開閉できるバイパスラインをさらに含み、上記第2制御部は、上記EGRラインを介した排気再循環時に上記バイパスラインを調整することができる。
【0017】
具体的に、上記排気ガス再循環システムは、上記圧縮機の後段と上記タービンの前段を
連結し開閉できるバイパスラインをさらに含み、上記第2制御部は、上記EGRラインを介した排気再循環時に上記バイパスラインを調整して上記圧縮機から排出される掃気ガスの一部を上記タービンに供給することができる。
【0018】
具体的に、上記排気ガス再循環システムにおいて、上記吸気ラインはクーラーをさらに備え、上記クーラーの後段と上記タービンの前段を連結し開閉できるバイパスラインをさらに含み、上記第2制御部は、上記EGRラインを介した排気再循環時に上記バイパスラインを調整して上記クーラーから排出される掃気ガスの一部を上記タービンに供給することができる。
【0019】
具体的に、上記タービンは備えられるノズル羽根を調整することができる可変型タービンであり、上記第2制御部は、上記EGRラインを介した排気再循環時に上記ノズル羽根を調整してタービンに供給される排気ガスの流速を増加させることができる。
【0020】
具体的に、前記シリンダーから排出された排気ガスは、前記EGRラインを介して前記圧縮機に流入され、上記EGRラインには排気ガスを加圧するEGRブロワが省略されることができる。
【0021】
本発明の他の一側面による船舶は、上記排気ガス再循環システムを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による排気ガス再循環システムは、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に、既存の排気ガス再循環システムを単純適用することに比べてエンジンからのメタンスリップ量を減少させることができる。
【0023】
本発明による排気ガス再循環システムは、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に、既存の排気ガス再循環システムを単純適用することに比べて燃料消費率を減少させることができる。
【0024】
本発明による排気ガス再循環システムは、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に、既存の排気ガス再循環システムを単純適用することに比べて窒素酸化物の排出量を減少させることができる。
【0025】
本発明による排気ガス再循環システムは、EGRブロワを省略することでEGRブロワによるエンジンシステムの構造変更を防止し、ブロワの設置、運転及びメインテナンスに対する費用を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用した概念図である。
【
図2a】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるa.EGR有無、を相対的な比率で示したグラフである。
【
図2b】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるb.排気ガス中のメタンの比率を相対的な比率で示したグラフである。
【
図2c】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるc.掃気ガスに再循環されるメタンの比率を相対的な比率で示したグラフである。
【
図2d】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるd.シリンダー内の有効ラムダ(空燃比)を相対的な比率で示したグラフである。
【
図3a】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるa.シリンダーの最大圧縮圧力を相対的な比率で示したグラフである。
【
図3b】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるb.シリンダーの最大圧縮温度を相対的な比率で示したグラフである。
【
図3c】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるc.シリンダー内の最大燃焼圧力を相対的な比率で示したグラフである。
【
図3d】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるd.シリンダー内の最大燃焼温度を相対的な比率で示したグラフである。
【
図4a】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるa.ガス燃料供給量を相対的な比率で示したグラフである。
【
図4b】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるb.窒素酸化物(NOx)の発生量をそれぞれ相対的な比率で示したグラフである。
【
図4c】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるc.シリンダーのP-Vダイアグラムによる温度のダイアグラムを示したものである。
【
図4d】デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用し、ガスモードで排気ガス再循環システムを運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるd.ピストンクランク角度による温度のダイアグラムを示したものである。
【
図5】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムの概念図である。
【
図6a】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のa.EGR有無を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図6b】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のb.排気ガス中のメタンの比率を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図6c】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のc.掃気ガスに再循環されるメタンの比率を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図6d】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のd.シリンダー内の有効ラムダ(空燃比)を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図7a】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のa.シリンダーの最大圧縮圧力を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図7b】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のb.シリンダーの最大圧縮温度を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図7c】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のc.シリンダー内の最大燃焼圧力を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図7d】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のd.シリンダー内の最大燃焼温度を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図8a】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のa.ガス燃料供給量を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図8b】本発明の実施例1による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のb.窒素酸化物(NOx)の発生量を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図9】本発明の実施例2-1による排気ガス再循環システムの概念図である。
【
図10】本発明の実施例2-2による排気ガス再循環システムの概念図である。
【
図11】本発明の実施例2-3による排気ガス再循環システムの概念図である。
【
図12】本発明の実施例2-4による排気ガス再循環システムの概念図である。
【
図13a】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のa.EGR有無を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図13b】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のb.排気ガス中のメタンの比率を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図13c】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のc.掃気ガスに再循環されるメタンの比率を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図13d】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のd.シリンダー内の有効ラムダ(空燃比)を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図14a】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のa.シリンダーの最大圧縮圧力を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図14b】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のb.シリンダーの最大圧縮温度を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図14c】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のc.シリンダー内の最大燃焼圧力を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図14d】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のd.シリンダー内の最大燃焼温度を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図15a】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のa.ガス燃料供給量を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図15b】本発明の実施例2による排気ガス再循環システムをガスモードで運転する場合のb.窒素酸化物(NOx)の発生量を既存の排気ガス再循環システムを運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。
【
図16a】デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システムを適用しない場合(EGR未適用)、既存の排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR適用)、本発明の実施例1による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+エンジンチューニング)及び本発明の実施例2による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+付加装置)において、a.EGR率を相対的な比率で示したグラフである。
【
図16b】デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システムを適用しない場合(EGR未適用)、既存の排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR適用)、本発明の実施例1による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+エンジンチューニング)及び本発明の実施例2による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+付加装置)において、b.メタンスリップの比率を相対的な比率で示したグラフである。
【
図16c】デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システムを適用しない場合(EGR未適用)、既存の排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR適用)、本発明の実施例1による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+エンジンチューニング)及び本発明の実施例2による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+付加装置)において、c.ガス燃料の消費率を相対的な比率で示したグラフである。
【
図16d】デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システムを適用しない場合(EGR未適用)、既存の排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR適用)、本発明の実施例1による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+エンジンチューニング)及び本発明の実施例2による排気ガス再循環システムを適用して運転した場合(EGR+付加装置)において、d.窒素酸化物(NOx)の発生率を相対的な比率で示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付の図面と関連する以下の詳細な説明
と好ましい実施例から更に明らかになるだろう。本明細書では、各図面の構成要素に参照番号を付するにおいて、同じ構成要素に限ってはたとえ他の図面上に表示されても、可能な限り同じ番号を付したことに留意すべきである。また、本発明を説明するに当たり、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0028】
以下において、高圧(HP:High pressure)、低圧(LP:Low pressure)、高温及び低温は相対的なものであり、絶対的な数値を示すものではない。
【0029】
以下において、ガスはLNG、LPG、エタンなどで、沸点が常温より低い物質を意味することができ、ディーゼルは液体燃料で、発熱量を有する全ての物質を包括する。
【0030】
以下において、エンジンは、ガス燃料を主燃料に利用して駆動力を発生させるガスモードとディーゼルを主燃料にして駆動力を発生させるディーゼルモードのうち何れか1つで運転するデュアル燃料エンジンであることができ、大きく、シリンダー、ピストン、ガス燃料供給ユニット、液体燃料供給ユニット、排気バルブを含む。
【0031】
以下において、ターボチャージャーは、大きく圧縮機とタービンを含む。
【0032】
以下において、有効圧縮比は、ピストンが上死点にあるときのシリンダー容積に対する排気バルブが閉められた時点におけるシリンダー体積の比率である。
【0033】
以下において、圧縮圧力及び温度は、ピストンが燃焼過程なしに上死点にあるときの混合ガスの圧力及び温度を意味する。
【0034】
以下において、燃焼圧力及び温度は、燃焼期間の間ピストンに加えられる爆発圧力と温度を意味する。
【0035】
まず、
図1~4を利用してデュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用したものを説明する。
【0036】
図1は、デュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システムを適用した概念図である。以下において、既存の排気ガス再循環システムは、ディーゼルエンジンまたはデュアル燃料エンジンのディーゼルモード運転時に発生する窒素酸化物の量を低減させるために適用可能な排気ガス再循環システムを意味する。
【0037】
図1を参照すると、既存の排気ガス再循環システム2は、エンジン3、EGRバルブ10、圧縮機11及びタービン12aを含み、上記排気バルブ9から上記タービン12aを連結する排気ラインL1、上記圧縮機11から上記シリンダー4を連結する吸気ラインL2、上記排気ラインL1のうち上記タービン12aの前段部と上記吸気ラインのうち上記圧縮機11の前段部を連通するEGRラインL3を含む。
【0038】
シリンダー4は燃料を燃焼させるためのものである。上記シリンダー4はエンジン3のエンジンブロック(不図示)の内部に形成されることができる。上記シリンダー4は空気、燃料などが供給されることができる燃焼室を有する。上記燃焼室は内部が空いている円筒状に形成されてもよい。シリンダー4とエンジンブロックの間にはシリンダーライナー(不図示)が設けられてもよい。上記シリンダー4の上側にはシリンダーカバー4aが設けられてもよい。上記シリンダー4にはピストン5が移動できるように設けられてもよい。例えば、上記ピストン5は上記燃焼室の内部において上下方向に往復移動することがで
きる。ここで、上記上下方向は重力方向と平行な方向であってもよいが、異なる方向であってもよい。上記シリンダー4にはガス燃料を供給するためのガス燃料供給ユニット6、及び液体燃料を供給するための液体燃料供給ユニット7が結合されてもよい。これにより、上記シリンダー4は、上記ガス燃料供給ユニット6及び上記液体燃料供給ユニット7からガス燃料及び液体燃料のうち少なくとも1つの供給を受けることができる。上記ガス燃料供給ユニット6及び上記液体燃料供給ユニット7は、上記シリンダー4の下側に設けられる掃気孔(不図示)を介して外部の空気である掃気ガスが供給されてから上記シリンダー4にガス燃料、液体燃料を供給することができる。このとき、上記ガス燃料供給ユニット6及び上記液体燃料供給ユニット7は、上記ガス燃料が供給されてから液体燃料を供給することができる。従って、本発明によるエンジン3は、掃気ガス、ガス燃料及び液体燃料を上記シリンダー4に順次供給するデュアル燃料エンジンであってもよい。上記掃気孔は上記シリンダー4の下側から上記シリンダー4を貫通して形成された孔であり、空気が充填されている掃気レシーバー(不図示)に連結されるように設けられてもよい。これにより、上記掃気レシーバーに充填された空気は上記掃気孔を介して上記シリンダー4に供給されることができる。上記掃気レシーバーは、ターボチャージャーが上記シリンダーから排出される排気ガスを利用して空気を圧縮して供給することで、空気を充填することができる。上記シリンダー4の燃焼室はピストン5が往復運動することにより体積が増減することができる。例えば、燃焼室は、ピストン5が上側方向に移動すると、体積が減少することができる。この場合、燃焼室に供給された燃料と空気は圧縮されることができる。上記ピストンが下死点P1から移動して上死点P2に達すると、シリンダー4の上側に設けられたディーゼルインジェクターまたは別のパイロットインジェクター7aがディーゼルを供給して圧縮された燃料を着火させることで、ガス燃料と空気の混合された燃料が燃焼及び爆発してピストン5を下側方向に移動させることができる。これにより、駆動力が発生し、燃焼室には排気ガスが発生することができる。燃焼室は、ピストン5が下側方向に移動すると、体積が増加することができる。ピストンが下死点P1側に移動すると、上記掃気レシーバーに充填された空気が上記燃焼室に供給されることができる。従って、上記燃焼室で燃料の燃焼によって発生した排気ガスは上記掃気レシーバーから供給された空気によって排気バルブ9を経て上記燃焼室の外部に排出されることができる。排気ガスは、掃気レシーバーと排気ガスを貯蔵する排気ガスレシーバー(不図示)との圧力差により上記燃焼室の外部に排出されることもできる。上記燃焼室から排出された排気ガスは上記シリンダー4の上側に結合された排気バルブ9に連結された排気ラインL1に沿って排出されて排気ガスレシーバーに供給されることができる。
【0039】
ピストン5は上記燃焼室に供給された空気と燃料を圧縮するためのものである。上記ピストン5は上記燃焼室に移動できるように設けられる。例えば、ピストン5は、上記燃焼室の内部において下死点P1と上死点P2の間を往復移動することができる。上記ピストン5は円柱状に形成されることができるが、上記燃焼室で移動でき、且つ燃料と空気を圧縮することができるのであれば、他の形状に形成されてもよい。ピストン5は駆動力を伝達するクランク軸(不図示)によって上側方向に移動することができる。ピストン5は棒状のピストンロッド(不図示)とコネクティングロッド(不図示)を介してクランク軸に連結されることができる。上記ピストン5はクランク軸が回転することにより上側方向に移動することができる。ピストン5はクランク軸によって上側方向に移動する場合、燃料と空気を圧縮することができる。ピストン5は上死点P2でシリンダー4に供給された燃料及び空気が混合燃焼されて爆発することによって下側方向に移動することができる。従って、ピストン5は、シリンダー4の内部において下死点P1と上死点P2の間を往復運動することができる。下死点P1はピストンの圧縮方向を基準としてピストン5がシリンダー4の内部において最も低い位置に位置する地点であり、上死点P2はピストンの圧縮方向を基準としてピストン5がシリンダー4の内部において最も高い位置に位置する地点である。ピストン5が上死点P2付近で、駆動力を発生させるために圧縮された燃料を爆発させることができる。
【0040】
上記ガス燃料供給ユニット6及び上記液体燃料供給ユニット7は、それぞれ上記シリンダー4にガス燃料及び液体燃料を供給するためのものである。上記ガス燃料供給ユニット6は、ピストン5の上死点P2と下死点P1の間に位置するように上記シリンダー4に結合されることができる。例えば、上記ガス燃料供給ユニット6は上記シリンダー4の側壁に結合されてもよい。上記ガス燃料供給ユニット6は、ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中で上記シリンダー4にガス燃料を供給することができる。上記ガス燃料供給ユニット6は、ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中で上記シリンダー4にガス燃料及び空気を混合して供給することもできる。例えば、上記ガス燃料供給ユニット6は、ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中で上記シリンダー4にガス燃料を供給するとき、補助空気供給ユニット(不図示)から追加で空気の供給を受けて一緒に供給することができる。従って、本発明によるエンジン3は、上記ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中でシリンダー4にガス燃料と空気を混合して供給することができるため、シリンダー4にガス燃料のみを供給する場合に比べて空気と燃料をより均一に混合させてノッキング、早期点火などの異常燃焼の発生を低減または防止することができる。上記ガス燃料供給ユニット6は、掃気孔を介して上記シリンダー4に掃気空気が供給され始めてから上記シリンダー4にガス燃料を供給することができる。
【0041】
上記ガス燃料供給ユニット6はシリンダー4にガス燃料(不図示)を供給するためのものである。上記ガス燃料供給ユニット6は、ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中でガス燃料をシリンダー4に供給することができる。この場合、シリンダー4は排気バルブ9によって閉鎖された状態であってもよい。上記ガス燃料供給ユニット6は、船舶がLNG船である場合、LNG貯蔵タンク(不図示)に貯蔵されたLNGを気化させて上記シリンダー4にガス燃料を供給することができる。上記ガス燃料供給ユニット6は、LNG貯蔵タンクで発生するBOG(Boil off gas)を上記シリンダー4に供給することもできる。ガス燃料供給ユニット6は補助空気供給ユニットと連結されるように設けられてもよい。従って、上記シリンダー4にはガス燃料と空気が混合された空気混合ガス燃料(不図示)が供給されることができる。上記ガス燃料供給ユニット6が上記シリンダー4に供給するガス燃料または空気混合ガス燃料の圧力は、エンジン負荷に応じて約3バー(bar)から30バー(bar)の間であってもよいが、好ましくは5バー(bar)から22バー(bar)の間であることができる。この場合、上記補助空気供給ユニットが追加で供給する空気の圧力は、上記ガス燃料供給ユニット6が供給するガス燃料の供給圧力より相対的に低いことができる。それは上記シリンダー4へのガス燃料の供給を円滑にするためである。ガス燃料または空気混合ガス燃料の圧力が30バー(bar)を超えると、シリンダー4に空気を供給するためのガス燃料供給ユニット6及び補助空気供給ユニットのそれぞれの容量が大きくならなければならないため、全体的なエンジンのサイズが大きくなる問題がある。ガス燃料または空気混合ガス燃料の圧力が3バー(bar)未満であれば、シリンダー4に供給された掃気空気の圧力により、ガス燃料または空気混合ガス燃料がシリンダー4に円滑に供給されない問題がある。ガス燃料供給ユニット6は、ピストン5がピストンの圧縮方向を基準として上記ガス燃料供給ユニット6がシリンダー4の側壁に結合された地点を過ぎると、上記シリンダー4にガス燃料を供給しないことができる。シリンダー4とガス燃料供給ユニット6の連通が遮断されるためである。ガス燃料供給ユニット6は、上記シリンダーライナーに設けられる燃料噴射ノズルと連結されるガス燃料供給配管の開度を開閉することにより、上記シリンダー4にガス燃料を供給または遮断することができる。上記ガス燃料供給ユニット6は、上記ガス燃料供給配管の開度が開放される大きさ、または上記ガス燃料供給配管の開度が開放される開放時間を調整することで、上記シリンダー4に供給されるガス燃料の量を調整することができる。例えば、上記ガス燃料供給ユニット6は上記ガス燃料供給配管の開度を大きく開放するか、開放時間を増加させることで、上記シリンダー4に供給されるガス燃料の量を
増加させることができる。上記ガス燃料供給ユニット6は、上記ガス燃料供給配管の開度を小さく開放するか、開放時間を減少させることで、上記シリンダー4に供給されるガス燃料の量を減少させることができる。上記ガス燃料供給ユニット6は上記シリンダー4にガス燃料を供給するためのガス燃料移送装置の移送力を増減させることで、上記シリンダー4に供給されるガス燃料の量を調整することもできる。上記ガス燃料移送装置は、圧縮機、インペラ、ブロワのうち少なくとも1つであってもよい。
【0042】
上記液体燃料供給ユニット7はシリンダー4に液体燃料(不図示)を供給するためのものである。上記液体燃料供給ユニット7は、ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中で上記シリンダー4にガス燃料が供給されてから液体燃料をシリンダー4に供給することができる。好ましくは、上記液体燃料供給ユニット7は上記ピストン5が上死点P2付近に達したとき、液体燃料を供給することができる。この場合、シリンダー4は排気バルブ9によって閉鎖された状態であってもよい。上記液体燃料供給ユニット7は、液体燃料が貯蔵された液体燃料貯蔵タンク(不図示)から液体燃料の供給を受けて上記シリンダー4に供給することができる。上記液体燃料はディーゼルであってもよいが、必ずしもこれに限定されない。上記液体燃料供給ユニット7は上記シリンダーカバー4aに設けられたディーゼルインジェクターまたは別のパイロットインジェクター7aに結合されて上記シリンダー4の上側から液体燃料を上記シリンダー4に供給することができるが、これに限定されず、ピストン5が上死点P2付近に位置したときに液体燃料をシリンダー4に供給することができるのであれば、パイロットインジェクター(不図示)などのシリンダーカバー4aまたはシリンダー4の他の位置に設けられて上記シリンダー4に液体燃料を供給することもできる。上記液体燃料供給ユニット7は、ガス燃料を主燃料に利用して推進するガスモード運転で供給するディーゼル燃料の量よりさらに多い液体燃料の量を上記シリンダー4に供給することができる。上記液体燃料供給ユニット7は、ディーゼルインジェクターまたは別のパイロットインジェクター7aが上記シリンダー4に液体燃料を噴射する噴射期間を増大させるか、噴射圧力を増加させることで、ガスモード運転で供給するディーゼル燃料の量よりさらに多い液体燃料の量をシリンダー4に供給することができる。液体燃料供給ユニット7は上記ディーゼルインジェクターまたは別のパイロットインジェクター7aに連結される液体燃料供給配管の開度を開閉することで、上記シリンダー4に液体燃料を供給または遮断することもできる。上記液体燃料供給ユニット7は、上記液体燃料供給配管の開度が開放される大きさ、または開度が開放される時間を調整することで、上記シリンダー4に供給される液体燃料の量を調整することができる。例えば、上記液体燃料供給ユニット7は、上記液体燃料供給配管の開度を大きく開放するか、開度が開放される開放時間を増加させることで、上記シリンダー4に供給される液体燃料の量を増加させることができる。上記液体燃料供給ユニット7は、上記液体燃料供給配管の開度を小さく開放するか、開放時間を減少させることで、上記シリンダー4に供給される液体燃料の量を減少させることができる。上記液体燃料供給ユニット7は、上記シリンダー4に液体燃料を供給するための液体燃料移送装置の移送力を増減させることで、上記シリンダー4に供給される液体燃料の量を調整することもできる。上記液体燃料移送装置はインペラ、ポンプのうち少なくとも1つであってもよい。上記液体燃料供給ユニット7は、上記ガス燃料供給ユニット6がシリンダー4の側壁側から供給したガス燃料と上記掃気レシーバーが供給した掃気空気がピストン5が上死点P2側に移動して圧縮された場合に、上記シリンダー4に液体燃料を供給して着火させることができる。
【0043】
エンジン3で燃焼された排気ガスはシリンダー4の上側に備えられた排気バルブ9を介して排気ラインL1を経由することができ、排気ラインL1に連結されているタービン12aに流入されて外部に流出するか、圧縮機11で圧縮される掃気ガスと合流して再びエンジン3に供給されることができる。
【0044】
ターボチャージャー(Turbo Charger)は、エンジン3から排出される排
気ガスの高圧及び高温のエネルギーを利用して空気を圧縮させてエンジン3に注入することで、エンジン3で利用される燃料の効率を向上させることができる。このようなターボチャージャーは圧縮機11とタービン12aを含む。
【0045】
圧縮機11は吸気ラインL2に連結されて空気を圧縮してエンジン3に供給する。圧縮機11には外部から空気が流入されるが、圧縮機11に内蔵されたホイール(不図示)の回転によって流入された空気が圧縮されて掃気ガスになることができる。
【0046】
タービン12aは排気ラインL1に連結されてエンジン3から排気ガスの供給を受けて駆動し、回転力を圧縮機11に伝達するように軸を介して圧縮機11と連結されることができる。タービン12aの駆動はエンジン3で燃焼された排気ガスが流入されて、排気ガスが有するエネルギーによってタービン12a内に自由に支持されたタービン12aのホイール(不図示)が回転されることにより行われることができる。このとき、タービン12aに内蔵されたホイールの回転トルクが軸を介して圧縮機11のホイールに伝達されることができ、圧縮機11のホイールが回転されることによって流入された空気が圧縮されて掃気ガスになることができる。
【0047】
このようなターボチャージャーから排出された掃気ガスが吸気ラインL2を経由してエンジン3に流入されるが、掃気ガスの温度を下げるクーラー(不図示)と掃気ガスから湿気を取り除く湿気除去装置(不図示)が吸気ライン(不図示)上に設けられて、ターボチャージャーから排出された掃気ガスはエンジン3で求める温度に低くなり、不要な湿気が除去されることができる。ここで、クーラーは水を冷媒に利用して掃気ガスと熱交換が行われて掃気ガスを冷却させることができ、湿気除去装置は公知の湿気除去装置に代えることができ、具体的な説明は省略する。
【0048】
EGRラインL3は排気ラインL1と吸気ラインL2を連通して排気ガスを循環させることができる。EGRラインL3の一端部は排気ラインL1のうちタービン12aの前段部に連結され、EGRラインL3の他端部は吸気ラインL2のうち圧縮機11の前段部に連結されることができる。ここで、タービン12aの前段部は排気ガスの流れ方向を基準として排気ラインL1の上流部分であり、圧縮機11の前段部は掃気ガスの流れ方向を基準として吸気ラインL2の上流部分である。このようなEGRラインL3の連通構造により、タービン12aを経由した排気ガスと圧縮機11に循環する排気ガスは互いに独立して流動することができる。即ち、排気ガスのうち一部はEGRラインL3を経由して圧縮機11に循環され、残りの排気ガスはタービン12aを経て外部に排出される。エンジン3から排出された排気ガスは高圧状態でEGRラインL3を介して圧縮機11に流入される。従って、EGRラインL3には排気ガスを加圧する構成、例えば、EGRブロワ(不図示)が省略されてもよい。EGRブロワは排気ガスを吸気ラインL2に強制的に流入させる構成であり、EGRブロワが駆動される間、少なくは100kwから多くは500kwまで継続的に電力を消費するが、EGRブロワを省略すると、システムの消費電力を減少させることができる。
【0049】
また、圧縮機11は、EGRラインL3を介して高圧の排気ガスが流入されると、外部から流入された空気を加圧するときよりも負荷を減少させることができるメリットがある。即ち、圧縮機11による消費電力も減少させることができる。
【0050】
一方、EGRラインL3を介して排気ガスが掃気ガスと合流されることにより、出力の減少を最小化しながら燃焼最高温度を下げて窒素酸化物の排出量を減少させることができる。これは、シリンダーに流入される掃気ガスに排気ガスを混入すると、燃焼温度と酸素濃度が低くなって窒素酸化物の発生を抑制することができるためである。
【0051】
さらに、EGRラインL3上にEGRバルブ10が設けられてもよい。EGRバルブ10は、EGRラインL3を介して排気ガスが再循環されるように排気ガスの流量を調整する構成であり、EGRバルブ10はEGRラインL3を介して排気ガスが再循環される場合、開放されることができる。
【0052】
また、EGRラインL3上にEGRクーラー(不図示)が設けられてもよいため、排気ガスの温度を低下させることができ、湿気除去装置(不図示)により湿気を除去することができる。ここで、EGRクーラーは水により排気ガスの温度を下げることができる。
【0053】
図2はデュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システム2を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム2を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるa.EGR有無、b.排気ガス中のメタンの比率、c.掃気ガスに再循環されるメタンの比率、d.シリンダー内の有効ラムダ(空燃比)をそれぞれ相対的な比率で示したグラフである。
【0054】
図2aはEGR有無を示したグラフであり、以下では、排気ガス再循環システム2を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)の上記システム環境などを比較して説明する。
【0055】
図2bはタービン12aの前段の排気ラインL1を流動する排気ガス中のメタン(CH
4)の比率を相対的に示したグラフである。X-DFなどの低圧エンジンでは、燃料の部分的な不燃焼によりメタンが排気ガスに混ざってシリンダー4から抜け出るメタンスリップ(methane slip)が発生することがあるが、排気ガス再循環システム2を運転する場合には、排気ガスと外部から流入された掃気ガスが混合されてシリンダー4に供給されながらエンジン3の効率が減少するため、運転しない場合に比べて不燃焼される燃料の量が増加することができる。
【0056】
図2cは掃気ガスに再循環されるメタンの比率を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム2を運転しない場合には、EGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合が行われないため、メタンが検出されない。排気ガス再循環システム2を運転する場合には、排気ガス中のメタンがEGRラインL3を介して圧縮機11に流入された後、吸気ラインL2に流入されることができる。
【0057】
図2dはシリンダー4内の有効ラムダ(実際の空燃比/理論空燃比)を相対的に示したグラフである。エンジン3は、特にデュアル燃料エンジンを安定的に稼動するためには空燃比の制御が重要であるが、ガス量対比で空気量が減少して空燃比が低くなると、ノッキング(knocking)が発生することがあり、ガス量対比で空気量が増えて空燃比が高くなると、失火(Misfiring)が発生することがある。そのうえ、空燃比に応じてエンジン3の最大燃焼温度が異なることがあり、これはエンジン3の排気ガス中の窒素酸化物の発生量にも影響を与える。排気ガス再循環システム2を運転しない場合には、EGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合が行われないため、吸気ラインL2を介してシリンダー4に供給される掃気ガスには相対的に空気(酸素)量が多くて空燃比が相対的に高く表れる。これに比べて、排気ガス再循環システム2を運転する場合には、EGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合により、シリンダー4の燃焼室内の空気量が減少して空燃比も相対的に低く表れる。
【0058】
図3はデュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システム2を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム2を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)によるa.シリンダーの最大圧縮圧力、b.シリンダーの最大圧縮温度、c.シリンダー内の最大燃焼圧力、d.シリンダー内の最大燃焼温度をそれぞれ相対的な比率
で示したグラフである。以下では、上記
図2に関する説明に続いて、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)のシステム環境などを比較して説明する。
【0059】
図3aはシリンダー4の最大圧縮圧力を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム2を運転する場合、上記システム2を運転しない場合に比べてシリンダー4の最大圧縮圧力が相対的に減少することができる。排気ガス再循環システム2を運転することによって排気ラインL1を流動する排気ガスの一部がEGRラインL3を介して圧縮機11及び吸気ラインL2を経てシリンダー4に流動するようになるため、排気ラインL1に沿ってタービン12aに流入される排気ガスの量は減少するようになる。タービン12aは排気ガスの供給を受けて駆動するものであるため、排気ガス量の減少による排気エネルギーの減少はタービン12aホイールの回転数の減少に繋がる。タービン12aホイールの回転数が減少することにより、軸を介して連結された圧縮機11の回転数も減少するようになり、EGRラインL3を介して流入される排気ガスと外部から流入される空気が混合された混合空気の流入量が減少するようになる。吸気ラインL2を介してシリンダー4に供給される混合空気の量が減少することにより、シリンダー4内の燃焼室の初期圧力が減少するため、シリンダー4の最大圧縮圧力も減少するようになる。
【0060】
図3bはシリンダー4の最大圧縮温度を相対的に示したグラフである。シリンダー4の最大圧縮温度は、排気ガス再循環システム2を運転する場合が上記システム2を運転しない場合に比べて微細に低く表れた。排気ガス再循環システム2の運転によりシリンダー4内の燃焼室に流入される掃気ガスの温度が上昇することにより燃焼室内のガスの比熱比が減少してシリンダー4の最大圧縮温度が減少するようになる。
【0061】
図3cはシリンダー4内の最大燃焼圧力を相対的に示したグラフである。シリンダー4内の最大燃焼圧力は、排気ガス再循環システム2を運転する場合と上記システム2を運転しない場合が類似したが、これは、後述するガス燃料供給量を比較するために、排気ガス再循環システム2を運転する場合の最大燃焼圧力を運転しない場合の最大燃焼圧力と類似するレベルに合わせたために表れた結果である。排気ガス再循環システム2を運転する場合には、燃焼室内に流入された掃気ガスの圧力が低いため、シリンダー4内部の圧縮圧力も低くなり、これはエンジン3の効率悪化に繋がる。排気ガス再循環システム2の運転時にも一定以上のエンジン効率を確保した状態で排気ガス再循環システム2の運転による効果を運転しない場合と比較するために、最大燃焼圧力を類似するレベルに合わせた。排気ガス再循環システム2を運転する場合、シリンダー4で発生する出力を上記システム2を運転しない場合のレベルに合わせるために要求されるガス燃料の量が増加するようになる。
【0062】
図3dはシリンダー4内の最大燃焼温度を相対的に示したグラフである。シリンダー4内の最大燃焼温度は、排気ガス再循環システム2を運転する場合が上記システム2を運転しない場合に比べてさらに高く表れた。
図2dで述べたように、排気ガス再循環システム2を運転することで吸気ラインL2を介してシリンダー4に流入される空気量が減少することにより、空燃比が減少するようになる。このとき、エンジン3がディーゼルモードで運転される場合には空燃比が減少することによって最大燃焼温度が低くなり、排気ガス中の窒素酸化物の発生量が低減されることができる。しかし、エンジン3がガスモードで運転される場合は、ディーゼルとは異なり、シリンダー4の燃焼室の内部でガス燃料と空気が混合された状態で存在するようになるため、空燃比が低くなるほど、さらに早く燃焼するようになり、シリンダー4内の最大燃焼温度がさらに高くなることができる。
【0063】
図4はデュアル燃料エンジンに既存の排気ガス再循環システム2を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム2を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR
off)によるa.ガス燃料供給量、b.窒素酸化物(NOx)の発生量をそれぞれ相対的な比率で示したグラフであり、c.シリンダーのP-Vダイアグラム、d.ピストンクランク角度による温度のダイアグラムを示したものである。以下では、上記
図2及び3に関する説明に続いて、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)のシステム環境などを比較して説明する。
【0064】
図4aは排気ガス再循環システム2を運転する場合と運転しない場合に同じエンジン出力を有することを基準としたとき要求されるガス燃料の供給量を相対的に示したグラフである。
図3cで述べたように、排気ガス再循環システム2を運転する場合、燃焼室内に流入された掃気ガスの圧力が減少するため、排気ガス再循環システム2を運転しない場合と同じレベルの出力を確保し保持するためにはエネルギー供給量、即ち、シリンダー4内に供給するガス燃料の供給量を増加させなければならない。
【0065】
図4bは排気ガス中の窒素酸化物の量を相対的に示したグラフである。
図3dで述べたように、ガスモードで排気ガス再循環システム2を運転する場合は、空燃比が減少すると、ガス燃料の燃焼がより促進されて最大燃焼温度がさらに増加するようになる。このような高い燃焼温度により排気ガス中の窒素の酸化反応が促進されて窒素酸化物の発生量が増加するようになる。
【0066】
図4cはシリンダー4のPVダイアグラム、
図4dはピストン5クランク角度による温度のダイアグラムを示したもので、排気ガス再循環システム2を運転する場合、運転しない場合と同じエンジン出力(ダイアグラム上同じ面積)を確保するためには圧縮圧力と最大圧縮圧力の差を増加させなければならないことを意味する。このような結果は、デュアル燃料エンジンにおいてディーゼルモードではないガスモードで運転するとき、排気ガス再循環システム2の適用による有効な効果を得るためにはガス燃料をさらに供給しなければならないことを示す。
【0067】
以下では、既存の排気ガス再循環システム2対比で、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時にも排気ガス再循環システムの適用による有効な効果を確保するための本発明の実施例を説明する。
【0068】
以下では、
図5~8を参照して本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1について詳細に説明する。
【0069】
図5を参照すると、本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1は、上述した既存の排気ガス再循環システム2において、排気バルブ9の開閉を制御する第1制御部8aをさらに含むシステムを提供する。以下では、本実施例が上述した既存の排気ガス再循環システム2と比べて変わる点を中心に説明し、説明を省略した部分は上述した内容に代える。
【0070】
第1制御部8aは、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システム1の運転によってEGRラインL3を介して排気が再循環されるとき、上記排気バルブ9のクロージングタイミングを調整することができる。好ましくは、上記第1制御部8aは上記排気バルブ9のクロージングタイミングを早めることができる。デュアル燃料エンジンのガスモード運転時の排気バルブ9のクロージングは、シリンダー4内の燃焼室への掃気ガスの供給とガス燃料供給ユニット6によるガス燃料の供給が完了した後に行われることができる。シリンダー4内の燃焼室への掃気ガスの供給はピストン5が上死点P2から下死点P1に移動する途中で始まってもよく、ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中で完了することもできる。ガス燃料供給ユニット6によるガス燃料の供給は、ピストン5が下死点P1から上死点P2に移動する途中で完了することができ、掃気
ガスの供給が完了した後に完了することもできる。排気バルブ9は、ガス燃料の供給が完了した時点から一定時間後に閉められることができるが、第1制御部8aは排気バルブ9のクロージングタイミングを早めることができ、好ましくは、ガス燃料の供給が完了した直後に排気バルブ9を閉めることができる。第1制御部8aが排気バルブ9のクロージングタイミングを早めることで、ピストン5が下死点P1から上死点P2まで移動することによるシリンダー4内の圧縮時間が長くなる。
【0071】
第1制御部8aは、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システム1の運転によってEGRラインL3を介して排気が再循環されるとき、上記シリンダー4の有効圧縮比を調整することができる。好ましくは、上記第1制御部8aは、上記シリンダー4の有効圧縮比を保持または増加させることができる。第1制御部8aが排気バルブ9のクロージングタイミングを早めることで、シリンダー4内部のガス燃料と掃気ガス混合物の外部への流出率が低くなり、シリンダー4内部の圧縮時間が長くなって既存の排気ガス再循環システム2の運転に比べてシリンダー4内の有効圧縮比を保持または増加させることができる。シリンダー4内の有効圧縮比が保持または増加されることにより、シリンダー4の圧縮圧力が排気ガス再循環システム1を運転しない場合と同等のレベルに保持されることができる。即ち、エンジン3のガスモード運転時に本実施例1による排気ガス再循環システム1を運転する場合には、上記システム1を運転しない場合と同等のレベルのシリンダー4の最大圧縮圧力を確保することができるため、排気ガス再循環システム1を運転する場合と運転しない場合に同じエンジン出力を有することを基準としたとき要求されるガス燃料の量を節減することができる。
【0072】
また、第1制御部8aは、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システム1の運転によってEGRラインL3を介して排気が再循環されるとき、上記シリンダー4の内部に液体燃料を噴射するタイミングを調整することができる。上記シリンダー4内において燃焼圧力が高い場合には液体燃料の噴射タイミングを遅らせることができ、燃焼圧力が低い場合には噴射タイミングを早めることができる。
【0073】
第1制御部8aは、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システム1の運転によってEGRラインL3を介して排気が再循環されるとき、上記シリンダー4内の圧縮温度を調整することができる。好ましくは、上記第1制御部8aは上記シリンダー4内の温度を上昇させることができる。上述したように、排気ガス再循環システム1の運転により、既存の排気ガス再循環システム2の運転に比べてシリンダー4内の圧縮時間が長くなり、シリンダー4内の有効圧縮比を保持または増加させることができ、有効圧縮比の増加と掃気ガス温度の増加によりシリンダー4内の圧縮温度が上昇することができる。シリンダー4内の圧縮温度の上昇と排気ガス再循環システム1の運転による空燃比の減少はシリンダー4内の燃焼温度を増加させることができるが、既存の排気ガス再循環システム2の運転による燃焼温度の増加分に比べては相対的に低いことができる。即ち、エンジン3のガスモード運転時に本実施例1による排気ガス再循環システム1を運転する場合、システムを運転しない場合に比べては燃焼温度が増加するが、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べると、その増加幅が小さいため、既存の排気ガス再循環システム2に比べて窒素酸化物の発生量を低減させることができるようになる。
【0074】
図6は、デュアル燃料エンジンに本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合のa.EGR有無、b.排気ガス中のメタンの比率、c.掃気ガスに再循環されるメタンの比率、d.シリンダー内の有効ラムダ(空燃比)を既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に対して相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したものである。
【0075】
図6aはEGR有無を示したグラフであり、以下では、排気ガス再循環システム1を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)の上記システム環境などを比較して説明する。本実施例1による排気ガス再循環システム1を運転する場合、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて再循環率が増加したが、このような排気ガス再循環率はEGRバルブ10の開度を調整して変更することができる。
【0076】
図6bはタービン12aの前段の排気ラインL1を流動する排気ガス中のメタンの比率を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転する場合、上記システム1を運転しない場合に比べて排気ガス中のメタンの比率が減少し、
図2bの既存の排気ガス再循環システム2の運転時に発生した排気ガス中のメタンの比率と比較してもメタンの比率が著しく減少する。これは、本実施例1による排気ガス再循環システム1において、第1制御部8aが排気バルブ9のクロージングタイミングを早めることで、シリンダー4内部のガス燃料と掃気ガスの混合物が外部に流出できる期間が短くなり、メタンの流出量が減少するためである。このようなメタンスリップ量の直接的な減少により、排気ガス再循環システム1のタービン12aの前段の配管で検出されるメタンの比率が既存の排気ガス再循環システム2の運転時に比べて低くなることができる。
【0077】
図6cは掃気ガスに再循環されるメタンの比率を相対的に示したグラフである。上述したように、排気ガス再循環システム1を運転しない場合にはEGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合が行われないため、メタンが検出されない。排気ガス再循環システム1を運転する場合は、排気ガス中のメタンがEGRラインL3を介して圧縮機11に流入された後、吸気ラインL2に流入されることができるが、
図6bに示したように、排気ガス中のメタンの流量が減少するため、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて掃気ガスに再循環されるメタンの比率も低くなる。
【0078】
図6dはシリンダー4内の有効ラムダ(空燃比)を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転しない場合には、EGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合が行われないため、吸気ラインL2を介してシリンダー4に供給される掃気ガスには相対的に空気(酸素)量が多くて空燃比が相対的に高く表れる。これに比べて、排気ガス再循環システム1を運転する場合は、EGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合により、シリンダー4の燃焼室内の空気量が減少して空燃比も相対的に低く表れる。
【0079】
図7は、デュアル燃料エンジンに本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合のa.シリンダーの最大圧縮圧力、b.シリンダーの最大圧縮温度、c.シリンダー内の最大燃焼圧力、d.シリンダー内の最大燃焼温度を既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。以下では、上記
図6に関する説明に続いて、排気ガス再循環システム1を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)のシステム環境などを比較して説明する。
【0080】
図7aはシリンダー4の最大圧縮圧力を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転する場合、上記システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の最大圧縮圧力が同等に保持される。排気ガス再循環システム1の運転によってEGRラインL3を介して排気が再循環されるとき、第1制御部8aが排気バルブ9のクロージングタイミングを早めることで、シリンダー4内部のガス燃料と掃気ガス混合物の外部への流出率が低くなり、シリンダー4内部の圧縮時間が長くなって既存の排気ガス再循環システム2の運転と比べてシリンダー4内の有効圧縮比が保持または増加することができる。シリンダー4内の有効圧縮比が保持または増加することにより、排気ガス再循環システム1を
運転しない場合と比べてシリンダー4の圧縮圧力を同等のレベルに保持することができ、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて高い圧縮圧力を保持することができる。
【0081】
図7bはシリンダー4の最大圧縮温度を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転する場合、上記システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の最大圧縮温度が上昇するようになる。排気ガス再循環システム1の運転によりシリンダー4内の燃焼室に流入される掃気ガスの温度が上昇し、上述したようにシリンダー4内の有効圧縮比が増加することによってシリンダー4の最大圧縮温度が上昇するようになる。
【0082】
図7cはシリンダー4内の最大燃焼圧力を相対的に示したグラフである。シリンダー4内の最大燃焼圧力は排気ガス再循環システム1を運転する場合と運転しない場合が類似したが、これは、後述するガス燃料供給量を比較するために排気ガス再循環システム1を運転する場合の最大燃焼圧力を上記システム1を運転しない場合の最大燃焼圧力と類似するレベルに合わせたために出た結果である。
【0083】
図7dはシリンダー4内の最大燃焼温度を相対的に示したグラフである。シリンダー4内の最大燃焼温度は排気ガス再循環システム1を運転する場合が上記システム1を運転しない場合に比べてより高く表れた。排気ガス再循環システム1の運転により吸気ラインL2を介してシリンダー4に流入される空気量が減少することで、空燃比が減少するようになる。エンジン3がガスモードで運転される場合は、ディーゼルとは異なり、シリンダー4の燃焼室内でガス燃料と空気が混合された状態で存在するようになるため、空燃比が低くなるほど、さらに早く燃焼するようになり、シリンダー4内の最大燃焼温度がさらに高くなることができる。既存の排気ガス再循環システム2の運転と比べて排気ガス再循環システム1の運転時に再循環率が少し高く表れたため、最大燃焼温度は既存対比で低いことができる。
【0084】
図8は、デュアル燃料エンジンに本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合のa.ガス燃料供給量、b.窒素酸化物(NOx)の発生量を既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。以下では、上記
図6及び7に関する説明に続いて、排気ガス再循環システム1を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)のシステム環境などを比較して説明する。
【0085】
図8aは、排気ガス再循環システム1を運転する場合と運転しない場合の同じエンジン出力を基準として要求されるガス燃料の供給量を相対的に示したグラフである。
図7aで述べたように、排気ガス再循環システム1を運転する場合、上記システム1を運転しない場合と同等のレベルのシリンダー4内の圧縮圧力を保持することができるため、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて、エンジン出力を確保するために要求されるガス燃料の量を節減することができる。
【0086】
図8bは排気ガス中の窒素酸化物の量を相対的に示したグラフである。
図7dで述べたように、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合は、空燃比の減少によりガス燃料の燃焼がさらに促進されて最大燃焼温度がさらに増加するようになる。このような高い燃焼温度により排気ガス中の窒素の酸化反応が促進されて窒素酸化物の発生量が増加するようになる。しかし、既存の排気ガス再循環システム2の運転に比べて、排気ガス再循環システム1の運転時の最大燃焼温度は低いことができるため、既存のシステム2に比べて窒素酸化物の発生量はより少ないことができる。
【0087】
このように、本実施例は、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時の排気ガス再循環システムの効果を有効に得るために、排気ガス再循環システム1に排気バルブ9の開閉を制御する第1制御部8aを設け、EGRラインL3を介した排気再循環時に上記排気バルブ9のクロージングタイミングを早めることで、シリンダー4の有効圧縮比を保持または増加させ、同じレベルのエンジン出力を基準として既存のシステム2の条件対比でガス燃料の消費量を節減することができ、排気ガス中の窒素酸化物の発生量を低減させることができる。
【0088】
以下では、
図9~15を参照して本発明の実施例2による排気ガス再循環システム1について詳細に説明する。
【0089】
図9~12には、それぞれ本発明の実施例2-1~2-4による排気ガス再循環システム1を示した。実施例2による排気ガス再循環システム1は、上述した既存の排気ガス再循環システム2において、タービン12a、12bに供給される排気ガスの流量を調整する第2制御部8bをさらに含むシステムを提供する。上記第2制御部8bは、上記タービン12a、12bに供給される排気ガスの流量を増加させるものであってもよい。以下では、本実施例が上述した既存の排気ガス再循環システム2と比べて変わる点を中心に説明し、説明を省略した部分は上述した内容に代える。
【0090】
本発明の実施例2-1に関する
図9を参照すると、排気ガス再循環システム1はタービン12aの前段と後段を連結し開閉できるバイパスラインL4aをさらに含み、上記第2制御部8bは上記EGRラインL3を介した排気再循環時に上記バイパスラインL4aを調整することができる。好ましくは、上記第2制御部8bは上記バイパスラインL4aを一部閉じるが、完全に密閉することができる。排気ガス再循環システム1が運転しない場合、即ち、EGRラインL3を介した排気ガスの流動が起きない場合は、上記バイパスラインL4aは開放された状態で保持され、排気ラインL1を介して流動する排気ガスはタービン12aを経てからそのまま外部に放出されることができる。排気ガス再循環システム1を運転する場合には、上記バイパスラインL4aの一部を閉じるか、完全に密閉することで、上記タービン12aに供給される排気ガスの量を増加させることができる。タービン12aに供給される排気エネルギーの量を排気ガス再循環システム1を運転しない場合と同等のレベルに保持することにより、上記システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の圧縮圧力を同等のレベルに保持することができる。
【0091】
本発明の実施例2-2に関する
図10を参照すると、排気ガス再循環システム1は、圧縮機11の後段とタービン12aの前段を連結し開閉できるバイパスラインL4bをさらに含み、上記第2制御部8bは上記EGRラインL3を介した排気再循環時に上記バイパスラインL4bを調整することができる。好ましくは、上記第2制御部8bは上記バイパスラインL4bを開放して上記圧縮機11から排出される掃気ガスの一部を上記タービン12aに供給することができる。排気ガス再循環システム1が運転しない場合、即ち、EGRラインL3を介した排気ガスの流動が起きない場合は、上記バイパスラインL4bは密閉された状態で保持されて吸気ラインL2を介して流動する掃気ガスはシリンダー4の内部に流入されることができる。排気ガス再循環システム1を運転する場合は、上記バイパスラインL4bを開放することで、上記タービン12aに供給される排気ガスの量を増加させることができる。タービン12aに供給される排気エネルギーの量を排気ガス再循環システム1を運転しない場合と同等のレベルに保持することにより、上記システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の圧縮圧力を同等のレベルに保持することができる。
【0092】
本発明の実施例2-3に関する
図11を参照すると、排気ガス再循環システム1の吸気ラインL2はクーラー13をさらに備え、上記クーラー13の後段とタービン12aの前
段を連結し開閉できるバイパスラインL4cをさらに含み、上記第2制御部8bは上記EGRラインL3を介した排気再循環時に上記バイパスラインL4cを調整することができる。好ましくは、上記第2制御部8bは上記バイパスラインL4cを開放して上記クーラー13から排出される掃気ガスの一部を上記タービン12aに供給することができる。排気ガス再循環システム1が運転しない場合、即ち、EGRラインL3を介した排気ガスの流動が起きない場合は、上記バイパスラインL4cは密閉された状態で保持されて吸気ラインL2を介して流動する掃気ガスはシリンダー4の内部に流入されることができる。排気ガス再循環システム1を運転する場合は、上記バイパスラインL4cを開放することで、上記タービン12aに供給される排気ガスの量を増加させることができる。タービン12aに供給される排気エネルギーの量を排気ガス再循環システム1を運転しない場合と同等のレベルに保持することにより、上記システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の圧縮圧力を同等のレベルに保持することができる。
【0093】
本発明の実施例2-4に関する
図12を参照すると、排気ガス再循環システム1のタービンはノズル羽根(不図示)を備え、上記ノズル羽根を調整することができる可変型タービン12bであり、上記第2制御部8bは上記EGRラインL3を介した排気再循環時に上記ノズル羽根を調整してタービン12bに供給される排気ガスの流速を増加させることができる。可変型タービン12bのタービンホイール(不図示)に排気ガスを供給するための排気経路上には可変ノズル機構(不図示)が設けられてもよく、上記可変ノズル機構上にノズル羽根が設けられてもよい。可変ノズル機構は上記ノズル羽根を調整することで、排気経路の排気流動面積(スロットル面積)を変更することができる。第2制御部8bは、上記可変ノズル機構を制御してノズル羽根の開閉を調整することができる。ノズル羽根が一部閉まるか、完全に密閉されると、タービンホイールに流入される排気ガスの流速が増加するようになり、ターボチャージャーの回転速度が増加するようになる。ターボチャージャーの回転速度の増加により圧縮機11における排気ガスと外部から流入された空気の混合量が増加するようになり、吸気ラインL2を介した掃気ガスの供給量が増加するようになる。従って、排気ガス再循環システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の圧縮圧力を同等のレベルに保持することができる。
【0094】
纏めると、エンジン3のガスモード運転時に本実施例2による排気ガス再循環システム1を適用して運転する場合は、上記システム1を運転しない場合と同等のレベルでシリンダー4の最大圧縮圧力を確保することができるため、既存の排気ガス再循環システム2に比べてエンジン出力を確保するために要求されるガス燃料の量を節減することができる。
【0095】
図13は、デュアル燃料エンジンに本発明の実施例2による排気ガス再循環システム1を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合のa.EGR有無、b.排気ガス中のメタンの比率、c.掃気ガスに再循環されるメタンの比率、d.シリンダー内の有効ラムダ(空燃比)を既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に対して相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したものである。
【0096】
図13aはEGR有無を示したグラフであり、以下では、排気ガス再循環システム1を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)の上記システム環境などを比較して説明する。本実施例2による排気ガス再循環システム1を運転する場合、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて再循環率が増加しているが、このような排気ガス再循環率はEGRバルブ10の開度を調整して変更することができる。
【0097】
図13bはタービン12a、12bの前段の排気ラインL1を流動する排気ガス中のメタンの比率を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転する場合、排気ガス再循環システム1を運転しない場合と比べて同等のレベルのメタン比率を示し、
図2bの既存の排気ガス再循環システム2の運転時に発生した排気ガス中のメタンの比率に比べては著しく減少した。これは、本実施例2による排気ガス再循環システム1において第2制御部8bがタービン12a、12bに供給される排気ガスの流量を増加させることにより、供給されるガス燃料の量が減少するようになってシリンダー4から流出されるメタンの量が減少するためである。このようなメタンスリップ量の減少により排気ガス再循環システム1のタービン12a、12bの前段の配管で検出されるメタンの比率が既存の排気ガス再循環システム2の運転時に比べて低くなることができる。
【0098】
図13cは掃気ガスに再循環されるメタンの比率を相対的に示したグラフである。上述したように、排気ガス再循環システム1を運転しない場合は、EGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合が行われないため、メタンが検出されない。排気ガス再循環システム1を運転する場合には、排気ガス中のメタンがEGRラインL3を介して圧縮機11に流入された後、吸気ラインL2に流入されることができるが、
図13bに示したように、排気ガス中のメタンの流量が減少するため、掃気ガスに再循環されるメタンの比率も低くなる。
【0099】
図13dはシリンダー4内の有効ラムダ(空燃比)を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転しない場合は、EGRラインL3を介した排気ガスと掃気ガスの混合が行われないため、吸気ラインL2を介してシリンダー4に供給される掃気ガスには相対的に空気(酸素)量が多くて空燃比が相対的に高く表れる。これに比べて、排気ガス再循環システム1を運転する場合には、EGRラインL3を介して排気ガスが流入されるため、運転しない場合に比べては空燃比が低くなるが、外部からの空気の流入量が増加するようになるため、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べては高い空燃比になる。
【0100】
図14はデュアル燃料エンジンに本発明の実施例2による排気ガス再循環システム1を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合のa.シリンダーの最大圧縮圧力、b.シリンダーの最大圧縮温度、c.シリンダー内の最大燃焼圧力、d.シリンダー内の最大燃焼温度を既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。以下では、上記
図13に関する説明に続いて、排気ガス再循環システム1を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)のシステム環境などを比較して説明する。
【0101】
図14aはシリンダー4の最大圧縮圧力を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転する場合、上記システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の最大圧縮圧力が同等に保持される。排気ガス再循環システム1の運転によりEGRラインL3を介して排気が再循環されるとき、第2制御部8bがタービン12a、12bに供給される排気ガスの流量を増加させることにより、既存の排気ガス再循環システム2の運転と比べてタービン12a、12bに供給される排気エネルギーをさらに高く保持することができる。これにより、排気ガス再循環システム1を運転しない場合と比べてシリンダー4の圧縮圧力を同等のレベルに保持することができ、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて高い圧縮圧力を保持することができる。
【0102】
図14bはシリンダー4の最大圧縮温度を相対的に示したグラフである。排気ガス再循環システム1を運転する場合、上記システム1を運転しない場合に比べて最大圧縮温度が微細に低く表れる。排気ガス再循環システム1の運転によりシリンダー4内の燃焼室に流入される掃気ガスの温度が上昇することによって燃焼室内のガスの比熱比が減少してシリンダー4の最大圧縮温度が減少するようになる。
【0103】
図14cはシリンダー4内の最大燃焼圧力を相対的に示したグラフである。シリンダー4内の最大燃焼圧力は排気ガス再循環システム1を運転する場合と運転しない場合が類似ているが、これは、後述するガス燃料供給量を比較するために排気ガス再循環システム1を運転する場合の最大燃焼圧力を運転しない場合の最大燃焼圧力と類似するレベルに合わせたために出た結果である。
【0104】
図14dはシリンダー4内の最大燃焼温度を相対的に示したグラフである。シリンダー4内の最大燃焼温度は、排気ガス再循環システム1を運転する場合が上記システム1を運転しない場合に比べて微細に低い。排気ガス再循環システム1の運転により吸気ラインL2を介してシリンダー4に流入される空気量が減少することにより、空燃比が多少減少するが、シリンダー4内に再循環供給される排気ガスを含む掃気ガスは二酸化炭素の含量が増加することによって熱容量(比熱)が増加するようになり、熱容量の増加によって最大燃焼温度はシステムを運転しない場合に比べて低くなることができる。既存の排気ガス再循環システム2の運転に比べて排気ガス再循環システム1の運転時に空燃比が増加するため、最大燃焼温度は既存対比で低いことができる。
【0105】
図15は、デュアル燃料エンジンに本発明の実施例2による排気ガス再循環システム1を適用し、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合のa.ガス燃料供給量、b.窒素酸化物(NOx)の発生量を既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に対してそれぞれ相対的な比率(EGR on)で示し、排気ガス再循環システムを運転しない場合(EGR off)と一緒に示したグラフである。以下では、上記
図13及び14に関する説明に続いて、排気ガス再循環システム1を運転する場合(EGR on)と運転しない場合(EGR off)のシステム環境などを比較して説明する。
【0106】
図15aは、排気ガス再循環システム1を運転する場合と運転しない場合、同じエンジン出力を有することを基準としたとき要求されるガス燃料の供給量を相対的に示したグラフである。
図14aで述べたように、本発明の実施例2による排気ガス再循環システム1を運転する場合、上記システム1を運転しない場合と比べて同等のレベルのシリンダー4内の最大圧縮圧力が保持できるようになるため、既存の排気ガス再循環システム2に比べてエンジン出力を確保するために要求されるガス燃料の供給量を減少させることができる。
【0107】
図15bは排気ガス中の窒素酸化物の量を相対的に示したグラフである。
図14dで述べたように、ガスモードで排気ガス再循環システム1を運転する場合には、シリンダー4内の掃気ガスの比熱が増加することにより、最大燃焼温度は上記システム1を運転しない場合に比べて低くなることができ、既存の排気ガス再循環システム2の運転と比べて排気ガス再循環システム1の運転時の空燃比が増加することにより、最大燃焼温度は既存システム2に比べて低いことができ、窒素酸化物の発生量がさらに少ないことができる。
【0108】
このように、本実施例は、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時の排気ガス再循環システムの効果を有効に得るために、排気ガス再循環システム1にタービン12a、12bに供給される排気ガスの流量を制御する第2制御部8bを設け、EGRラインL3を介した排気再循環時に上記タービン12a、12bに供給される排気ガスの流量を増加させることで、同じレベルのエンジン出力を基準として、有効圧縮比の変更なしに既存システム2の条件に比べてガス燃料の消費量を節減することができ、窒素酸化物の発生量を低減させることができる。
【0109】
図16は、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に排気ガス再循環システムを適用しない場合(EGR未適用)、既存の排気ガス再循環システム2を適用して運転した場合(EGR適用)、本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1を適用して運転した
場合(EGR+エンジンチューニング)及び本発明の実施例2による排気ガス再循環システム1を適用して運転した場合(EGR+付加装置)において、a.EGR率、b.メタンスリップの比率、c.ガス燃料の消費率、d.窒素酸化物(NOx)の発生率を相対的な比率で示したグラフである。
【0110】
図16aはEGR有無を示したグラフであり、本発明の実施例1及び2による排気ガス再循環システム1を適用して運転する場合、既存の排気ガス再循環システム2を運転した場合に比べてさらに高い再循環率が示されているが、このような排気ガス再循環率はEGRバルブ10の開度を調整して変更することができる。
【0111】
図16bはタービン12a、12bの前段の排気ラインL1を流動する排気ガス中のメタンの比率を相対的に示したグラフである。上述したように、本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1を適用して運転する場合、排気バルブのクロージングタイミングを早めることで、シリンダー4からの直接的なメタンスリップ量を大幅に減少させることができる。本発明の実施例2による排気ガス再循環システム1を適用して運転する場合、運転しない場合と比べて同等のレベルのメタン比率を示した。
【0112】
図16cは、排気ガス再循環システム1、2を運転する場合と運転しない場合、同じエンジン出力を基準として要求されるガス燃料の供給量を相対的に示したグラフである。上述したように、本発明の実施例1及び2による排気ガス再循環システム1を運転する場合、運転しない場合と比べて同等のレベルのシリンダー4内の最大圧縮圧力を保持することができるようになるため、既存の排気ガス再循環システム2と比べて、エンジン出力を確保するために要求されるガス燃料の供給量を減少させることができる。
【0113】
図16dは排気ガス中の窒素酸化物の量を相対的に示したグラフである。上述したように、本発明の実施例1による排気ガス再循環システム1を運転する場合、最大燃焼温度の上昇により、運転しない場合に比べては窒素酸化物の発生量がより多いことができるが、実施例1及び2の場合、両方とも最大燃焼温度が既存の排気ガス再循環システム2の運転による最大燃焼温度より低いことができるため、窒素酸化物の発生量がさらに少ないことができる。
【0114】
纏めると、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に本発明の実施例1及び2による排気ガス再循環システム1を適用して運転する場合、運転しない場合や既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて、同じエンジン出力を基準としてさらに要求されるガス燃料の供給量を節減することができる。
【0115】
また、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時に本発明の実施例1及び2による排気ガス再循環システム1を適用して運転する場合、既存の排気ガス再循環システム2を運転する場合に比べて窒素酸化物の発生量を低減させることができるが、これは排気ガス再循環システム1で燃焼温度を高めて窒素酸化物の発生量の低減分を減少させると、ガス燃料の消費量及びメタンスリップ量をさらに低減させることができることを示唆する。
【0116】
従って、本発明の実施例による排気ガス再循環システム1は、デュアル燃料エンジンのガスモード運転時のエンジン出力に制限を最小化しながら、排気ガス再循環システムの適用による効果を有効に確保することができる。
【0117】
一方、図面には示されていないが、本発明の実施例による排気ガス再循環システム1は、
図5に示された第1制御部8a及び
図9~
図13に示された第2制御部8bの両方を同時に含んでもよい。また、本発明の実施例による排気ガス再循環システム1において、
図13に示された可変型タービン12bは
図5、
図9~
図12の実施例に含まれてもよい。
また、本発明の実施例による排気ガス再循環システム1において、
図11のクーラー13は
図5、
図9、
図10及び
図12の実施例に含まれてもよい。
【0118】
本発明は、上記で説明した実施例に限定されず、上記実施例の組み合わせまたは上記実施例のうち少なくとも何れか1つと公知技術の組み合わせをさらに他の実施例として含むことができる。
【0119】
以上では、本発明の実施例を中心に本発明を説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明が属する分野の通常の知識を有する者であれば、本実施例の本質的な技術内容から外れない範囲内で実施例に例示されていない様々な組み合わせまたは変形と応用が可能であることが分かるだろう。従って、本発明の実施例から容易に導出できる変形と応用に関する技術内容は本発明に含まれると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0120】
1 排気ガス再循環システム
2 既存の排気ガス再循環システム
3 エンジン
4 シリンダー
4a シリンダーカバー
5 ピストン
6 ガス燃料供給ユニット
6a ガスインジェクター
7 液体燃料供給ユニット
7a ディーゼルインジェクターまたはパイロットインジェクター
8a 第1制御部
8b 第2制御部
9 排気バルブ
10 EGRバルブ
11 圧縮機
12a タービン
12b 可変型タービン
13 クーラー
L1 排気ライン
L2 吸気ライン
L3 EGRライン
L4a、b、c バイパスライン