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特開2023-103408鮮度保持用ポリエステル系フィルムおよび包装体
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  • 特開-鮮度保持用ポリエステル系フィルムおよび包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103408
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】鮮度保持用ポリエステル系フィルムおよび包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/24 20060101AFI20230719BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B65D81/24 D
B65D85/50 120
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081692
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2020525464の分割
【原出願日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2018111641
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石丸 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕子
(72)【発明者】
【氏名】橋田 智之
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】包装体としたときに青果物等の内容物のシェルフライフを延長できるだけでなく、商品価値を高めることができ、包装体を開封した後も再封止可能なフィルムを提供すること。
【解決手段】エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系樹脂層を含有してなり、下記要件を満たすことを特徴とする鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
(1)温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度が50~1000[cc/(m・d・atm)]
温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度が200~5000[cc/(m・d・atm)](2)温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度が200~5000[cc/(m・d・atm)]
(3)温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が20~400[g/(m・d)](4)折りたたみ保持角度が20度以上80度以下
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系樹脂層を含有してなり、
前記エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系樹脂層において、
ポリエステル系樹脂の全モノマー成分中、エチレンテレフタレート以外の非晶質成分となる1種以上のモノマー成分を含有し、該非晶質成分となるモノマーが、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ネオペンチルグリコール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される1種以上を含み、脂肪族ジカルボン酸成分を含有せず、
下記要件(1)~(4)を満たすことを特徴とする鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
(1)温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度が50[cc/(m・d・atm)]以上1000[cc/(m・d・atm)]以下
(2)温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度が200[cc/(m・d・atm)]以上5000[cc/(m・d・atm)]以下
(3)温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が20[g/(m・d)]以上400[g/(m・d)]以下
(4)折りたたみ保持角度が80度以下
(5)ヘイズが10%以下
【請求項2】
温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度と温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度との比(二酸化炭素透過度/酸素透過度)が2以上8以下であることを特徴とする請求項1に記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
溶断シール強度が5N/15mm以上60N/15mm以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
長手方向または幅方向いずれかの引張弾性率が2000MPa以上4500MPa以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
厚みが3μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
前記エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系樹脂層において、ポリエステル系樹脂の全モノマー成分中、エチレンテレフタレート以外の非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分の合計が12モル%以上30モル%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルムを少なくとも1層は含むことを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載のポリエステル系フィルムまたは請求項7に記載の積層体を用いたことを特徴とする包装体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載のポリエステル系フィルムまたは請求項7に記載の積層体を用いたことを特徴とする蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体としたときに口部をひねることで再封止が可能であって、包装対象物の鮮度を保持するのに好適であり、青果物の鮮度を保持するのに特に好適なフィルムおよびそれを用いた包装体または蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な物品の包装材料としてプラスチックフィルムが使用されてきており、包装対象物は、工業製品、食品、医薬品など、広範にわたっている。包装材料は、外部からの汚れを防ぐだけでなく、包装によって意匠性を高めて消費者の購買意欲を高めたり、内容物の消費期限(シェルフライフ)を延長する働きも有している。
野菜や果物といった青果物をプラスチックフィルムで包装する場合、自身から蒸散される水蒸気がシェルフライフを短くしてしまう。すなわち、水滴が包装体の内側に付くことにより曇ってしまい、商品としての見た目が悪くなるだけでなく、カビの発生等によって腐敗しやすくなってしまう。
【0003】
従来から、ポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン系フィルムは安価で大量生産が可能なため、青果物の包装材料として好適に使用されてきたが、オレフィン系フィルムは水蒸気透過度が低いため、包装体内に水滴が付きやすいという問題があった。水滴による見た目の悪化に対しては、例えば特許文献1に開示されているように、少なくとも片側の表層面に防曇剤を存在させることにより解消されている。しかし、この技術では、本質的には包装体内部の水蒸気量を減らすことはできないので、シェルフライフの改善には至っていない。
【0004】
シェルフライフの改善については、Modified Atomosphere(MA)という概念が提唱されている。これは、包装体内のガス環境を積極的に操作することにより、青果物の呼吸を調整してシェルフライフを高める効果がある。例えば特許文献2には、フィルムに細孔を設けることによりフィルムの水蒸気透過度を高めることができ、包装体としたときに水滴の付着を抑制できる技術が提案されている。また、特許文献2には、青果物のシェルフライフは水蒸気だけでなく、酸素濃度や二酸化炭素濃度も大きく関与していると記載されており、同様の技術思想は特許文献3でも記載されている。ただし、包装体を構成するフィルムに細孔をあけると、水蒸気透過度が増加すると同時に酸素や二酸化炭素の透過度も増加してしまう。MA包装においては、低酸素・高二酸化炭素状態であることが好ましいため、細孔による酸素・二酸化炭素の透過は必ずしも青果物の包装に適しているわけではなかった。さらに、細孔を設けることにより、本質的に包装体のコシ感や強度が低下するだけでなく、細孔を設ける工程を必要とするため包装体の生産性が低下する問題があった。
【0005】
一方、ポリオレフィン系以外の素材を用いて、青果物のシェルフライフを伸ばそうとする試みもある。例えば、特許文献4に開示されている鮮度保持材においては、脂肪族ポリエステルを用いて水蒸気、酸素、二酸化炭素の各透過度を所定の範囲とするだけでなく、酸素と二酸化炭素の透過度の比も規定されている。しかし、特許文献4に記載されている実施例では、二酸化炭素透過度と酸素透過度の比は最小でも6.7であり、青果物のシェルフライフ延長のためには更なる低減が課題であった。また、特許文献4においては、脂肪族ポリエステルよりブリードアウトする環状二量体を減少させるために、有機溶媒あるいはアルカリ性水溶液によりポリエステルを洗浄、浸漬する等の長時間の処理を要し、脂肪族ポリエステルの生産性が低下する問題があった。
【0006】
また、青果物のシェルフライフには、エチレンガスも関与していると考えられている。特許文献5には、ポリエステルフィルムに無機物を存在させることにより、エチレンガスを吸着することができ、シェルフライフの延長が可能と記載されている。しかし、フィルムを構成するポリエステル樹脂と無機物は相溶しないため、包装体が白く濁り(ヘイズが高くなり)、内容物を視認しにくいという問題があった。
【0007】
ところで、包装体は2つの側部、底部と口部からなることが大半であり、通常は側部と底部の3方向または側部の2方向が封止(シール)され、口部は内容物を出し入れするために開かれていることが多い。しかし、口部が開いたままでは、包装体としての機能を果たすことができないため、必要に応じて口部を開閉する必要がある。例えば、特許文献6及び7では、包装体の口部にファスナやチャックを設けることにより、再封止が可能な包装体構造が提案されている。しかし、製袋時にこれらの封止具を取り付けるための工程が増加するため、包装体の生産性が低下してしまう。さらに、近年は環境意識の高まりにより、包装材料をできるだけ単一素材(所謂、モノマテリアル)にしてリサイクル性を向上させようとする動きが活発となっており、上述の封止具は包装体と異素材で構成されていることが多いためにモノマテリアル化が困難なケースもある。
【0008】
前述のように従来から使用されているオレフィン系フィルムは、水蒸気透過度と酸素透過度、二酸化炭素透過度をすべて好ましい範囲にすることが課題であったが、未だ実現には至っていない。また、オレフィン系フィルムは熱シールによる再封止は可能だが専用の機器を要するため、一般消費者による熱シールは通常、困難である。そのため、オレフィン系フィルムを用いた包装体を簡便に再封止する手法は提案されていない。さらに、特許文献4、5いずれのポリエステル系フィルムにおいても、再封止性については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平2-28310号公報
【特許文献2】特開2001-146291号公報
【特許文献3】特開2000-263705号公報
【特許文献4】特許5007623号公報
【特許文献5】特開平9-104091号公報
【特許文献6】特表平2-501563号公報
【特許文献7】特開2005-178817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、前述の従来技術の問題点を解消するものであり、包装体としたときに青果物等の内容物のシェルフライフを延長できるだけでなく、商品価値(見た目)を高めることができ、包装体を開封した後も再封止可能なフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成よりなる。
1.エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系樹脂層を含有してなり、下記要件(1)~(4)を満たすことを特徴とする鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
(1)温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度が50[cc/(m・d・atm)]以上1000[cc/(m・d・atm)]以下
(2)温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度が200[cc/(m・d・atm)]以上5000[cc/(m・d・atm)]以下
(3)温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が20[g/(m・d)]以上400[g/(m・d)以下
(4)折りたたみ保持角度が20度以上80度以下
2.温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度と温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度との比(二酸化炭素透過度/酸素透過度)が2以上8以下であることを特徴とする1.に記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
3.溶断シール強度が5N/15mm以上60N/15mm以下であることを特徴とする1.または2.のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
4.長手方向または幅方向いずれかの引張弾性率が2000MPa以上4500MPa以下であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
【0012】
5.厚みが3μm以上70μm以下であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
6.前記エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系樹脂層において、ポリエステル系樹脂の全モノマー成分中、エチレンテレフタレート以外の非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分の合計が12モル%以上30モル%以下であることを特徴とする1.~5.のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルム。
7.前記1.~6.のいずれかに記載の鮮度保持用ポリエステル系フィルムを少なくとも1層は含むことを特徴とする積層体。
8.前記1.~6.のいずれかに記載のポリエステル系フィルムまたは7.に記載の積層体を用いたことを特徴とする包装体。
9.前記1.~6.のいずれかに記載のポリエステル系フィルムまたは7.に記載の積層体を用いたことを特徴とする蓋材。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリエステル系フィルムは、酸素透過度透過度と二酸化炭素透過度が低く、水蒸気透過度を所定の範囲としており、高いデッドホールド性を有する。そのため、包装体として使用すると、包装体の口をひねる、または折りたたむだけで再封止することができ、青果物等の内容物のシェルフライフ延長と商品価値向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】折りたたみ保持角度の測定方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系樹脂層を含有してなり、下記要件(1)~(4)を満たすことを特徴とする鮮度保持用ポリエステル系フィルムである。
(1)温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度が50[cc/(m・d・atm)]以上1000[cc/(m・d・atm)]以下
温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度が200[cc/(m・d・atm)]以上5000[cc/(m・d・atm)]以下
(2)温度23℃環境下で測定した二酸化炭素透過度が200[cc/(m・d・atm)]以上5000[cc/(m・d・atm)]以下
(3)温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が20[g/(m・d)]以上400[g/(m・d)]以下
(4)折りたたみ保持角度が20度以上80度以下
以下、本発明のポリエステル系フィルムの特性、ポリエステル系フィルムの構成材料、及びポリエステル系フィルムの製膜条件について説明する。
【0016】
1.ポリエステル系フィルムの特性
1.1.酸素透過度
本発明のポリエステル系フィルムは、温度23℃、相対湿度65%RH環境下での酸素透過度が50[cc/(m・d・atm)]以上1000[cc/(m・d・atm)]以下でなければならない。これは、フィルムを包装体として青果物を入れたとき、包装体内の酸素濃度と二酸化炭素濃度が変化するためである。包装体内では、青果物の呼吸によって酸素が消費されて二酸化炭素が発生する。フィルムの酸素透過度を上記の範囲とすることで、外部との酸素のやり取りが小さくなるため、MA包装に好ましい低酸素、高二酸化炭素状態としやすくなり、結果として青果物の呼吸が抑制されてシェルフライフの延長につながる。
【0017】
酸素透過度が1000[cc/(m・d・atm)]を超えると、青果物の呼吸量が増加して変色等を招きやすくなるため好ましくない。一方、酸素透過度が50[cc/(m・d・atm)]より小さい場合、包装体内が極端な低酸素・高二酸化炭素状態となるため青果物がガス障害(窒息)を起こし、臭い成分の放出等が起きやすくなるため好ましくない。
【0018】
酸素透過度は、100[cc/(m・d・atm)]以上950[cc/(m・d・atm)]以下であると好ましく、150[cc/(m・d・atm)]以上900[cc/(m・d・atm)]以下であるとより好ましい。
【0019】
1.2.二酸化炭素透過度
本発明のポリエステル系フィルムは、温度23℃環境下での二酸化炭素透過度が200[cc/(m・d・atm)]以上5000[cc/(m・d・atm)]以下でなければならない。二酸化炭素透過度が5000[cc/(m・d・atm)]を超えると、内容物のシェルフライフが短くなってしまうため好ましくない。一方、二酸化炭素透過度が200[cc/(m・d・atm)]より小さい場合、やはり青果物のシェルフライフが短くなってしまうため好ましくない。これは、上述の1.1.酸素透過度で述べた理由と同じである。二酸化炭素透過度は、250[cc/(m・d・atm)]以上4950[cc/(m・d・atm)]以下であると好ましく、300[cc/(m・d・atm)]以上4900[cc/(m・d・atm)]以下であるとより好ましい。
【0020】
1.3.水蒸気透過度
本発明のポリエステル系フィルムは、温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が20[g/(m・d)]以上400[g/(m・d)]以下でなければならない。水蒸気透過度が400[g/(m・d)]を超えると、包装体として青果物を入れたとき、包装体内の水分が外部へ放出されやすくなり、青果物の水分蒸散量が増加してしまうため好ましくない。一方、水蒸気透過度が20[g/(m・d)]を下回ると、青果物から放出される水蒸気が包装体内に閉じ込められ、包装体内が結露しやすくなり、結果として青果物にカビ等が生えやすくなるため好ましくない。水蒸気透過度は、25[g/(m・d)]以上395[g/(m・d)]以下であると好ましく、30[g/(m・d)]以上390[g/(m・d)]以下であるとより好ましい。
【0021】
1.4.折りたたみ保持角度
本発明のポリエステル系フィルムは、後述する方法で測定される折りたたみ保持角度が20度以上80度以下であることが必要である。折りたたみ保持角度が80度を超えると、包装体として口部をひねるまたは折りたたんだとしても、折り目がつきにくくなり再封止できなくなるため好ましくない。一方、折りたたみ保持角度は小さければ小さいほど好ましいが、本発明のカバーできる範囲は20度が下限であり、折りたたみ保持角度が25度以上であっても、実用上は十分好ましいといえる。折りたたみ保持角度の上限は75度であるとより好ましく、70度であるとより好ましい。
【0022】
1.5.二酸化炭素透過度と酸素透過度の比
本発明のポリエステル系フィルムは、上記1.2.二酸化炭素透過度と1.1.酸素透過度の比(二酸化炭素透過度/酸素透過度)が2以上8以下であると好ましい。二酸化炭素透過度と酸素透過度の比が8を超えると、包装体内を低酸素・高二酸化炭素としにくくなり、青果物のシェルフライフが短くなってしまうため好ましくない。一方、二酸化炭素透過度と酸素透過度の比は低ければ低いほど、包装体内を低酸素・高二酸化炭素としやすくなるため好ましいが、現状の技術水準では二酸化炭素透過度と酸素透過度の比は2が下限である。二酸化炭素透過度と酸素透過度の比の下限は3であっても実用上は十分好ましいといえる。二酸化炭素透過度と酸素透過度の比の上限は7であると好ましく、6であるとより好ましく、5以下であると特に好ましい。
【0023】
1.6.溶断シール強度
本発明のポリエステル系フィルムを溶断シールしたとき、シール強度の平均値は5N/15mm以上60N/15mmであると好ましい。溶断シール強度が5N/15mm未満であると、包装体として内容物を入れたときに溶断シール部分が容易に剥離され、包装体が破袋しやすくなるため好ましくない。溶断シール強度は6N/15mm以上が好ましく、7N/15mm以上がより好ましい。溶断シール強度は大きいほど好ましいが、現状得られる上限は60N/15mmである。溶断シール強度は55N/15mmであっても実用上は十分好ましいといえる。後述するように本発明の包装体は、溶断シールにより製袋されてなることが好ましい。
【0024】
1.7.引張弾性率
本発明のポリエステル系フィルムは、長手方向もしくは幅方向の引張弾性率が2000MPa以上4500MPa以下であると好ましい。引張弾性率が2000MPaを下回ると、包装体としたときのコシ感が低下しやすくなるだけでなく、包装体が破れやすくなってしまうおそれがあるためこのましくない。それだけでなく、引張弾性率が2000MPaを下回ると、フィルムロールからフィルムを繰り出して溶断シール加工する際にフィルムにかかる張力によって破断してしまうおそれがある。引張弾性率は2100MPa以上が好ましく、2200MPa以上がより好ましい。引張弾性率が高いほど包装体としたときのコシ感や機械強度が向上し、製袋加工時の破断がなくなるため好ましいが、本発明の分子設計のフィルムでは4500MPaを超えることは難しいため、4500MPaを上限としている。引張弾性率は長手方向、幅方向のいずれかが上記範囲内であればよいが、引張弾性率は、長手方向、幅方向共に上記範囲内であることが好ましい。
【0025】
1.8.厚み
本発明のポリエステル系フィルムの厚みは、3μm以上70μm以下が好ましい。フィルムの厚みが3μmより薄いと、酸素透過度や二酸化炭素透過度、水蒸気透過度が増加して上限を超えやすくなるため好ましくない。それだけでなく、フィルムの厚みが3μmより薄いと、包装体としたときにコシ感や強度が不足するおそれがある。一方、フィルム厚みが70μmより厚い場合、酸素透過度、二酸化炭素透過度、水蒸気透過度が減少して下限を下回りやすくなるため好ましくない。フィルムの厚みは5μm以上68μm以下であるとより好ましく、7μm以上66μm以下であるとさらに好ましい。
【0026】
1.9.ヘイズ
本発明のポリエステル系フィルムは、ヘイズが1%以上10%以下であると好ましい。ヘイズが10%を超えるとフィルムの透明性が悪くなるため、包装体とした場合に内容物の視認性が劣ることになる。ヘイズの上限は9%以下であるとより好ましく、8%以下であると特に好ましい。ヘイズは低くければ低いほど透明性は高くなり好ましいが、現状の技術水準では1%が下限であり、2%以上であっても実用上は十分好ましいといえる。
【0027】
1.10.グロス
本発明のポリエステル系フィルムは、グロスが100%以上200%以下であると好ましい。グロスが高ければ高いほどフィルムに光沢が増すため、包装体としたときに内容物の見た目で高級感が増す効果がある。グロスは高ければ高いほど好ましいが、現状の技術水準では200%が上限である。グロスが190%であっても実用上は十分好ましいといえる。一方、グロスが100%を下回るとフィルムの光沢感が少なくなるため、包装体としたときに内容物の見た目としての高級感が損なわれる恐れがある。グロスは110%以上であるとより好ましく、120%以上であるとさらに好ましい。
【0028】
1.11.温湯熱収縮率
本発明のポリエステル系フィルムは、80℃の温湯中で10秒間に亘って処理した場合における幅方向、長手方向の温湯熱収縮率がいずれも0%以上10%以下であると好ましい。温湯熱収縮率が10%を超えると、フィルムを熱シールして包装体を作製するときに、シール部が収縮して波打つことにより外観が悪化してしまうため好ましくない。温湯熱収縮率は9%以下であるとより好ましく、8%以下であるとさらに好ましい。一方、温湯熱収縮率が0%を下回る場合、フィルムが伸びることを意味しており、温湯熱収縮率が高い場合と同様に袋が元の形状を維持できにくくなるため好ましくない。現状の技術水準では、温湯熱収縮率の下限は0%である。温湯熱収縮率は1%であっても実用上は十分である。
【0029】
2.ポリエステル系フィルムの構成材料
2.1.ポリエステル系樹脂を構成するモノマーの種類
本発明に用いるポリエステル系樹脂は、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするものである。ここで、「主たる構成成分とする」とは、全構成成分量を100モル%としたとき、50モル%以上含有することを指す。
また、本発明に用いるポリエステル系樹脂は、エチレンテレフタレートユニット以外の成分として、非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分(以下、単に非晶成分と称する場合がある)を含む。非晶成分が存在することによってフィルムのデッドホールド性や溶断シール強度が向上するためである。
【0030】
非晶成分となりうるカルボン酸成分のモノマーとしては、例えばイソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
また、非晶成分となりうるジオール成分のモノマーとしては、例えばネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができる。
【0031】
上述の非晶成分のなかでも、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールが好ましく、これらの内の1種以上を用いることでフィルムの非晶性を高めて、折りたたみ保持角度を80度以下、溶断シール強度を5N/15mm以上としやすくなる。非晶成分としては、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールを使用することがより好ましく、ネオペンチルグリコールを使用することが特に好ましい。
【0032】
ポリエステル系樹脂は、エチレンテレフタレートや非晶成分以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。ポリエステルを構成する他のジカルボン酸成分としては、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。ただし、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)及び、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸は、ポリエステル系樹脂としては使用しないことが好ましい。
【0033】
また、ポリエステル系樹脂を構成する他のジオール成分としては、1,4-ブタンジオール等の長鎖ジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。ただし、炭素数8個以上のジオール(例えば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリンなど)は、ポリエステル原料としては使用しないことが好ましい。
【0034】
さらに、ポリエステル系樹脂を構成する成分として、ε-カプロラクトンやテトラメチレングリコールなどを含むポリエステルエラストマーを使用してもよい。ポリエステルエラストマーは、フィルムの融点を下げる効果があるため好適に使用することができる。
【0035】
2.2.ポリエステル系樹脂を構成するモノマーの含有量
本発明に用いるポリエステル系樹脂は、非晶成分量が12モル%以上であると好ましく、より好ましくは13モル%以上であり、さらに好ましくは14モル%以上である。また、非晶成分量の上限は30モル%であると好ましく、より好ましくは29モル%以下であり、さらに好ましくは28モル%以下である。ここでの非晶成分量とは、非晶成分となりうるカルボン酸、もしくはジオールモノマー成分量の総和を指す。エステル成分1ユニット(カルボン酸モノマーとジオールモノマーがエステル結合によってつながれた1単位)につき、酸成分またはジオール成分のいずれか片方が非晶成分となりうるモノマーであれば、そのエステルユニットは非晶質であるとみなせるためである。
非晶成分量が12モル%より少ない場合、溶融樹脂をダイから押し出した後にたとえ急冷固化したとしても、後の延伸および最終熱処理工程で結晶化してしまうため、溶断時にフィルムが融解しにくくなり、折りたたみ保持角度を80度以下、溶断シール強度を5N/15mm以上とすることが困難となってしまう。
【0036】
また、非晶成分量の合計が30モル%超である場合、フィルムの折りたたみや溶断シールは容易に行えるものの、後述の最終熱処理温度を高くしたとしてもフィルムの収縮率が10%を超えてしまう。非晶成分量が上記範囲であれば良好なデッドホールド性と溶断シール強度、非熱収縮性を確保することができる。
【0037】
また、本発明に用いるポリエステル系樹脂中に含まれるエチレンテレフタレートユニットは、ポリエステル系樹脂の構成ユニット100モル%中、50モル%以上88モル%以下であることが好ましい。より好ましくは55モル%以上83モル%以下である。エチレンテレフタレートユニットが50モル%より少ないと、フィルムの機械強度や耐熱性などが不十分になる虞がある。一方、エチレンテレフタレートユニットが88モル%より多いと、相対的に非晶成分量が少なくなってしまうため、適切な溶断シールを行うことが困難となる。
【0038】
2.3.その他の成分
本発明のポリエステル系フィルムを構成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。また、フィルムのすべり性を良好にする滑剤として微粒子を添加してもよい。微粒子としては、任意のものを使用することができる。例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムなどを挙げることができ、有機系微粒子としては、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径は0.05μm~3.0μm(コールターカウンタにより測定した場合)の範囲内で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0039】
ポリエステル系フィルムを構成する樹脂に上記微粒子を配合する方法は特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階で添加する方法が挙げられる。微粒子の添加段階としては、例えば、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で微粒子をエチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いて、エチレングリコールや水、そのほかの溶媒に分散させた微粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法や、乾燥させた微粒子とポリエステル系樹脂原料とを混練押出し機を用いてブレンドする方法なども挙げられる。
【0040】
3.ポリエステル系フィルムの製膜条件
3.1.溶融押し出し
本発明のポリエステル系フィルムは、上記「2.ポリエステル系フィルムの構成材料」に記載したポリエステル系樹脂を押出機により溶融押し出しして未延伸のフィルムを形成し、それを以下に示す所定の方法により得ることができる。フィルムは無延伸であってもよく、延伸する場合は一軸延伸、二軸延伸のどの延伸方式を採用しても構わないが、フィルムの酸素透過度、二酸化炭素透過度、水蒸気透過度や引張弾性率、生産性の観点からは二軸延伸により得られたフィルムが好ましい。なお、ポリエステル系樹脂は、前述のように、非晶質成分となり得るモノマーを適量含有するように、ジカルボン酸成分とジオール成分の種類と量を選定して重縮合させることで得られる。また、予め重縮合して得たチップ状のポリエステル系樹脂を単独で、または2種以上を混合してフィルムの原料として使用することもできる。
【0041】
原料樹脂を溶融押し出しするとき、ポリエステル系樹脂をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後、押出機を利用して200~300℃の温度で溶融してフィルムとして押し出す。押し出しはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0042】
その後、押し出しで溶融されたフィルムを急冷することにより、未延伸のフィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。フィルムは、縦(長手)方向、横(幅)方向のいずれか、少なくとも一方向に延伸されているのが好ましい(一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム)。以下では、最初に横延伸、次に縦延伸を実施する横延伸-縦延伸による逐次二軸延伸法について説明するが、順番を逆にする縦延伸-横延伸であっても、主配向方向が変わるだけなので構わない。また同時二軸延伸法でも構わない。
【0043】
3.2.第一(横)延伸
溶融押出後に急冷して得られた未延伸のフィルムをテンター(第1テンター)内でフィルム幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で横方向への延伸を行う。横延伸の条件は、65℃~100℃で3倍~5倍程度の倍率とすることが好ましい。延伸温度が65℃よりも低いと横延伸によるフィルムの配向結晶化が促進されるため、横延伸だけでなく後工程の縦延伸でも破断しやすくなる虞がある。一方、横延伸温度が100℃よりも高いと、幅方向の厚みムラが18%を超える虞がある。横延伸に先立って、予備加熱を行うのが好ましく、予備加熱はフィルム表面温度が60℃~100℃になるまで行うとよい。
【0044】
また、横延伸倍率が3倍よりも低いと、幅方向の厚みムラが18%を超えやすくなるだけでなく、後述する最終熱処理工程において破断が発生するおそれがある。横延伸倍率が3倍よりも低いと、フィルムの端部(クリップ際)まで延伸伝播されにくくなり、フィルム耳部に延伸されない部分(いわゆる延伸残)が多くなる虞がある。延伸残が発生したフィルム耳部はフィルム中央部に比べて分子が配向しておらず弾性率が著しく低いので、最終熱処理工程で発生する幅方向への熱収縮応力が延伸残近傍に集中する。このことにより、延伸残付近の厚み(樹脂体積)がフィルム幅方向の中央側へ移動した結果、フィルム幅方向端部の厚みが急激に減少し、強度が弱くなって破断してしまう。
【0045】
横延伸の後は、積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンにフィルムを通過させることが好ましい。第1テンターの横延伸ゾーンと中間熱処理ゾーンで温度差がある場合、後述の中間熱処理ゾーンの熱(熱風そのものや輻射熱)が横延伸工程に流れ込み、横延伸ゾーンの温度が不安定になりフィルム品質が安定しなくなることがある。したがって、横延伸後で中間熱処理前のフィルムは、所定時間をかけて中間ゾーンを通過させた後に、中間熱処理ゾーンへと供給するのが好ましい。この中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、横延伸ゾーンや中間熱処理ゾーンからの熱風を遮断すると、安定した品質のフィルムが得られる。中間ゾーンの通過時間は、1秒~5秒程度で充分である。1秒より短いと、中間ゾーンの長さが不充分となって、熱風の遮断効果が不足する。また、中間ゾーンの通過時間は長い方が好ましいが、あまりに長いと設備が大きくなってしまうので、5秒程度で充分である。
【0046】
3.3.中間熱処理
中間ゾーンの通過後は、縦延伸前の中間熱処理を行う。この中間熱処理により、幅方向の収縮率を低減させることができる。中間熱処理の温度は横延伸の温度と同じ~+30℃の幅方向の収縮率を低減させることができる。中間熱処理の温度は横延伸の温度と同じ~+30℃の範囲であることが好ましい。中間熱処理ゾーンの温度が横延伸温度より低いと、横方向の収縮率を低減させる効果が発現し難くなる。一方、横延伸温度+30℃より高いと、幅方向の収縮率はより低くなるものの、フィルムが結晶化しすぎてしまい、続く縦方向への延伸を行いにくくなる場合がある。中間熱処理ゾーンの通過時間は2秒~20秒が好ましい。2秒より短いと中間熱処理ゾーンの長さが不充分で、幅方向の熱収縮率の調整が難しくなる場合がある。中間熱処理ゾーンの通過時間は長い方が好ましいが20秒程度で充分である。これにより横一軸延伸フィルムが得られる。
【0047】
中間熱処理の際には、第1テンターのクリップ間距離を任意の倍率で縮めることでリラックス処理を実施することもできる。リラックス処理により、横方向に配向した分子が結晶化することなく緩和し、幅方向の収縮率を低減させることができる。横延伸後のリラックス率は0%(リラックス率0%はリラックスを行わないことを指す)~20%の範囲で任意に設定することができる。リラックス率が20%より高いと、端部(フィルムの耳部)の配向が緩和されすぎて弾性率が低下し、前述の通り最終熱処理工程で破断してしまうおそれがある。
【0048】
3.4.第二(縦)延伸
続いて縦延伸を行う。縦延伸工程では、まず、横一軸延伸フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へと導入する。縦延伸に当たっては、予熱ロールでフィルム温連続的に配置した縦延伸機へと導入する。縦延伸に当たっては、予熱ロールでフィルム温度が65℃~110℃になるまで予備加熱することが好ましい。フィルム温度が65℃より低いと、縦方向に延伸し難くなる傾向がある(すなわち、破断が生じやすくなる)。一方、110℃より高いとロールにフィルムが粘着しやすくなり、連続生産においてロール汚れの発生が早期に生じるおそれがある。
フィルム温度が前記範囲になったら、縦延伸を行う。縦延伸はロールの速度差によって行う。延伸倍率は1.5倍~5倍とするのが好ましい。またこのとき、延伸に使用するロ行う。延伸倍率は1.5倍~5倍とするのが好ましい。またこのとき、延伸に使用するロールが低速・高速の2つである一段延伸だけでなく、低速・中速・高速の3つである二段延伸、低速・中低速・中高速・高速の4つである3段延伸と延伸段数を増加させることもできる。
【0049】
縦延伸後にはフィルムを長手方向へ弛緩させること(長手方向へのリラックス)により、縦延伸で生じたフィルム長手方向の収縮率を低減することができる。長手方向へのリラックス率は0%以上70%以下(リラックス率0%はリラックスを行わないことを指す)とするのが好ましい。長手方向へのリラックス率の上限は使用する原料や縦延伸条件よって決まり、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明のポリエステル系フィルムにおいては、長手方向へのリラックス率は70%が上限である。長手方向へのリラックスは、縦延伸後のフィルムを65℃~100℃に加熱し、ロールの速度差を調整することで実施できる。加熱手段はロール、近赤外線、遠赤外線、熱風ヒータ等のいずれも用いる事ができる。また、長手方向へのリラックスは縦延伸直後でなくとも、後述するように最終熱処理で長手方向のクリップ間隔を狭めることでも実施できる。温度、リラックス率等の条件は後述する。
長手方向へのリラックス(リラックスを行わない場合は縦延伸)の後は、一旦フィルムを冷却することが好ましく、表面温度が20℃~40℃の冷却ロールで冷却することが好ましい。
【0050】
3.5.最終熱処理
次に、縦延伸および冷却後のフィルムを第2テンターへと導入して、最終熱処理、さらに同時にリラックス処理を行う。最終熱処理では縦と横の収縮率を調整することができるため、フィルムの延伸後に最終熱処理工程を実施するのは好ましい実施態様である。第二テンター内でのリラックスは、縦方向、横方向ともに任意の倍率で実施することができる。縦・横方向へのリラックスは、それぞれの方向におけるクリップ間の距離を縮めることにより実施できる。縦方向、横方向ともにリラックス率は0%~50%であることが好ましい。リラックス率は0%が下限である。リラックス率が高すぎると、フィルムの生産速度や製品幅が低下するというデメリットもあるので、リラックス率の上限は50%程度が好適である。
【0051】
熱処理(リラックス処理)温度は、120℃~180℃が好ましい。熱処理温度が120℃より低いと、フィルムの収縮率を10%以下とすることが困難となる。一方、熱処理温度は高ければ高いほどフィルムの収縮率を低減できて好ましいが、180℃より高いとヘイズが10%を超えやすくなるだけでなく、前述のように、フィルム幅方向端部の厚みが減少することで破断が発生するおそれがある。さらに、最終熱処理温度が180℃より高い場合には、フィルムがテンター内に接触すると粘着してしまい、生産性を著しく低下させるおそれもある。
【0052】
最終熱処理後は、フィルム両端部を裁断除去しながら巻き取れば、ポリエステル系フィルムロールが得られる。
上述のようにして得られたポリエステル系フィルムは、フィルムロールに巻回する前、または、一旦フィルムロールに巻回した後に、フィルム表面に種々の特性を付与する表面処理工程に供してもよい。斯かる表面処理としては例えば、フィルム表面の接着性を良好にするためのコロナ処理、火炎処理、帯電防止性能や防曇性能を付与するためのコーティング処理などが挙げられる。これらの処理により接着性や帯電防止性、防曇性を向上させることができる。
【0053】
4.ポリエステル系フィルムを用いた積層体
本発明のポリエステル系フィルムは単独で使用することもできるが、他の材料を積層して積層体としてもよい。積層体は、本発明のポリエステル系フィルムを少なくとも1層有していればよく、これにより積層体は上述した酸素透過度、二酸化透過度、水蒸気透過度、二酸化炭素透過度と酸素透過度の比、折りたたみ保持角度、溶断シール強度等の特性を備えたものとなる。
【0054】
積層体を構成する他の層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを構成成分に含む無延伸フィルム、他の非晶性ポリエステルを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム、ナイロンを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム、ポリプロピレンを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム、ポリエチレンを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
積層体において、本発明のポリエステル系フィルムが存在する位置は特に限定されないが、包装体としたときの最内層(青果物と接する面)に本発明のポリエステル系フィルムが存在することが好ましい。これにより優れたデッドホールド性、溶断シール性能を発揮することができる。
積層体の製造方法は特に限定されず、塗布形成法、共押出法、ラミネート法、ヒートシール法等、従来公知の積層体の製造方法を使用することができる。
【0056】
5.ポリエステル系フィルムを用いた包装体
上記特性を有する本発明のポリエステル系フィルムおよび積層体は、包装体として好適に使用することができる。包装体の少なくとも一部に本発明のポリエステル系フィルムまたは積層体が存在していればよいが、包装体の酸素透過度、二酸化炭素透過度、水蒸気透過度を好ましい値とするためには、包装体の全面積が本発明のポリエステル系フィルムまたは積層体で構成されていることが好ましい。
【0057】
本発明のポリエステル系フィルムおよび積層体を有する包装体を製袋する方法は特に限定されず、ヒートバー(ヒートジョー)を用いたヒートシール、溶断刃を用いた溶断シール、ホットメルトを用いた接着、溶剤によるセンターシール等の従来公知の製造方法を採用することができる。これらの中でも、ヒートシール、溶断シールによる製袋が好ましく、溶断シールによる製袋が特に好ましい。
【0058】
本発明のポリエステル系フィルムおよび積層体を用いた包装体は、口部をひねるだけで封止することができ、外部とのガスのやり取りを少なくすることができる。包装体の口部のひねり角度は720度(2周分)以上あると好ましく、そのときの戻り角度が450度未満であると包装体を封止することができるため好ましい。口部のひねり角度を720度以上とすると包装体がより封止されるため好ましいが、袋の破れ等が発生するため720度あれば十分である。口部をひねった後の戻り角度が450度以上あると、封止効果が十分得られないため好ましくない。
【0059】
本発明のポリエステル系フィルムおよび積層体を有する包装体は、青果物の包装体として好適に使用することができる。
さらに、本発明のポリエステル系フィルムおよび積層体は、内容物の鮮度保持を目的とした容器の蓋材として用いることができる。
【0060】
6.内容物
本発明のポリエステル系フィルムおよび積層体を用いた包装体に入れる内容物としては、ブロッコリー、コマツナ、ナバナ、トウミョウ、ネギ、トマト、サヤエンドウ、インゲン、ホウレンソウ、コマツナ、シュンギク、オオバ、栗、ニラ、ネギ、パセリ、ミズナ、ピーマン、キュウリ、ニガウリ、ナス、グリーンアスパラガス、ホワイトアスパラガス、ミョウガ、モヤシ、カイワレ、ハクサイ、キャベツ、ニンジン、カボチャ、レタス、パプリカ、タマネギ、ナガイモ、ダイコン、カブ、トウモロコシ、ジャガイモ等の豆類、穀物類、ハーブ類を含むあらゆる野菜、しいたけ、マッシュルーム、ナメコ、シメジ、エノキ、エリンギ、マイタケ、マツタケ、エダマメ等の茸類、スダチ、カボス、ブドウ、メロン、サクランボ、イチゴ、柿、キウイフルーツ、サクランボ、青梅、ナシ、リンゴ、バナナ、モモ、ビワ、ブルーベリー、スイカ等の果物類、バラ、カーネーション、キク、カラー、ユリ、桜、桃、梅、フリージア、アルメリア、スイートピー、アジサイ、サフィニア、ダリア等の花卉類、鮭、ひらめ、鰈、鰤、秋刀魚、鰯、鯖、蛸、烏賊、鯛、金目鯛、鮪、細魚、太刀魚、飛魚、穴子、鰻等の魚肉類、赤貝、蛤、アサリ、蜆、帆立貝、青柳等の貝類、豚肉、牛肉、鶏肉、羊肉等の肉類等を挙げることができる。これらの内容物の中でも、野菜類と果物類に好ましく使用することができ、さらに好ましくはブロッコリー、レタス、ネギ、キャベツ、しいたけ、シメジの包装体に使用することができる。また、これらの内容物は、皮や枝等の非可食部がついたまま包装体内に入れてもよく、非可食部を除去して可食部をカットした状態、または非可食部がついたまま可食部をカットした状態で包装体内に入れてもよい。
【実施例0061】
次に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0062】
積層体の評価方法は以下の通りである。なお、積層体の面積が小さいなどの理由で長手方向と幅方向が直ちに特定できない場合は、仮に長手方向と幅方向を定めて測定すればよく、仮に定めた長手方向と幅方向が真の方向に対して90度違っているからといって、とくに問題を生ずることはない。
【0063】
<ポリエステル原料の調製>
[合成例1]
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.7Paの減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(A)を得た。このポリエステル(A)は、ポリエチレンテレフタレートである。ポリエステル(A)の組成を表1に示す。
【0064】
[合成例2]
合成例1と同様の手順でモノマーを変更したポリエステル(B)~(G)を得た。各ポリエステルの組成を表1に示す。表1において、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、BDは1,4-ブタンジオール、NPGはネオペンチルグリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、DEGはジエチレングリコールである。なお、ポリエステル(G)の製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して7,000ppmの割合で添加した。各ポリエステルは、適宜チップ状にした。ポリエステル(B)~(G)の組成を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
[フィルム1]
ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとポリエステルGを質量比10:75:10:5で混合し、二軸スクリュー押出機に投入して270℃で溶融混合させてTダイから押し出した後、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸フィルムを得た。
その未延伸フィルムを、横延伸ゾーン、中間ゾーン、中間熱処理ゾーンを連続的に設けたテンター(第1テンター)に導いた。なお、中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、横延伸ゾーンからの熱風および中間熱処理ゾーンからの熱風が遮断されている。
【0067】
第1テンターに導いた未延伸フィルムを横延伸ゾーンで80℃、4.0倍の条件で横延伸し、中間ゾーンを通過させた後に(通過時間=約1.2秒)、中間熱処理ゾーンへ導き、95℃の温度で8秒間に亘って熱処理しながら、第1テンターのクリップ幅を縮めて10%のリラックスを実施することによって横一軸延伸フィルムを得た。
横延伸したフィルムを、低速・高速ロールを含むロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、低速、高速ロール上で延伸倍率が2.8倍となるよう延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。
【0068】
そして、冷却後のフィルムをテンター(第2テンター)へ導き、第2テンター内で140℃の雰囲気下で10秒間に亘って熱処理しながら、横方向(フィルム幅方向)に10%リラックスさせた後に冷却し、幅方向の両縁部を裁断除去することによって、厚みが約20μmのポリエステル系フィルムを得た。
得られたフィルムの製造条件を表2に示す。
【0069】
[フィルム2~8]
フィルム2~8もフィルム1と同様にして、原料の配合比率、第一延伸、中間熱処理、第二延伸、最終熱処理を種々変更したポリエステル系フィルムを製膜した。なお、フィルム8は、フィルム1から原料の配合比率を変更した以外にも、第一延伸を縦方向、第二延伸を横方向とし、最終熱処理においては縦・横方向ともにリラックス処理を行った。各フィルムの製造条件を表2に示す。
【0070】
[フィルム9]
フィルム9は、東洋紡株式会社製パイレンフィルム-OT(登録商標)P5562-20μm(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)を使用した。フィルム1~8と併せて表2に示す。
【0071】
[フィルム10]
フィルム10は、東洋紡株式会社製リックスフィルム(登録商標)L4103-30μm(無延伸、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)を使用した。フィルム1~9と併せて表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例1]
以下に示す方法により、フィルム1を用いて包装体を作製した。
<包装体の製袋方法>
折り目がフィルムの流れ方向に沿うようにフィルムを半折して溶断シール機(共栄印刷機械材料(株)製、PP500型 サイドウェルダー)にセットし、溶断刃角度90度、刃先設定温度410℃、ショット数140袋/分の条件にてフィルムを溶断シールし、サイドシール袋を作製した。袋のサイズは、溶断シール線に沿った方向(フィルムロールの幅方向)に310mm×溶断シール線に直交した方向(フィルムロールの流れ方向)に220mmである(以下、特に断らないときは、溶断シール線に沿った方向を「幅方向」、それと直交した方向を「流れ方向」と呼ぶ)。
【0074】
[実施例2~6]
実施例1と同様の方法で、使用したフィルムを変更して包装体を作製した。実施例2~6の包装体の構成と特性を表3に示す。
【0075】
[実施例7]
フィルム3とフィルム7を、以下に示す方法にしたがって積層し、その積層体を用いて、実施例1と同様の方法で包装体を作製した。実施例7の包装体の構成と特性を表3に示す。
<積層体の作製方法>
フィルム3のロールを繰り出し、ドライラミネーション用接着剤(三井化学社製タケラック(登録商標)A-950)を用いて片面にフィルム7を接着させて、包装体の内層側(青果物と接する面)から順に、フィルム3(12μm)/フィルム7(12μm)の2層からなる積層フィルムを作製した。
【0076】
[実施例8]
実施例1と同様の方法で、使用したフィルムを変更して包装体を作製した。実施例2~7の包装体の構成と特性を表3に示す。
【0077】
[比較例1~4]
実施例1と同様の方法により、表3に示す構成で包装体を作製した。なお、比較例2は、包装体としたときの内層、外層ともにフィルム6を用いて積層させた(55μmのフィルムを2層にして110μmとした)。
<包装体の評価方法>
上記の製袋方法で作製した包装体の中から無作為にサンプルを抜き取り、以下の方法にしたがって、包装体の各特性を評価した。
実施例1~8、比較例1~4について、包装体の構成と特性を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
[溶断シール強度]
包装体の溶断シールした部分より、幅方向15mm×流れ方向100mmのサイズのサンプルを計40個(包装体の片側20個ずつ、片側310mm×2=両側620mm)サンプリングした。JIS Z1707に準拠し、サンプルを180度に開いてその両端を引張試験機 (島津製作所製、オートグラフAG-Xplus)にセットし(チャック間距離:50mm)、サンプルの流れ方向へ速度200mm/minで引張試験を行い、溶断シール部が破断したときの剥離強度を測定した。各サンプルにおいて剥離強度の最大値を溶断シール強度として15mmあたりの強度(N/15mm)で記録し、サンプル40個の平均値を溶断シール強度の平均値とした。
【0080】
[水蒸気透過度]
水蒸気透過度はJIS K7126 B法に準じて測定した。包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)からサンプル(フィルム1枚)を切り出し、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-W3/33MG)を用いて、温度40℃、湿度90%RH環境下において、調湿ガスを透過させて水蒸気透過度を測定した。なお、測定前には温度23℃、湿度65%RH環境下でサンプルを4時間放置して調湿した。
【0081】
[酸素透過度]
酸素透過度はJIS K7126-2法に準じて測定した。包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)からサンプル(フィルム1枚)を切り出し、酸素透過量測定装置(MOCON社製、OX-TRAN 2/20)を用いて、温度23℃、湿度65%RH環境下において、酸素を透過させて酸素透過度を測定した。なお、測定前には温度23℃、湿度65%RH環境下でサンプルを4時間放置して調湿した。
【0082】
[二酸化炭素透過度]
二酸化炭素透過度はJIS K7126-1法(差圧法、ガスクロマトグラフ法)に準じて測定した。包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)からサンプル(フィルム1枚)を切り出し、二酸化炭素透過率測定装置(GTRテック社製、GTR-10X)を用いて、温度23℃環境下において、二酸化炭素を透過させて二酸化炭素透過度を測定した。なお、測定前には温度23℃、湿度65%RH環境下でサンプルを4時間放置して調湿した。
【0083】
[折りたたみ保持角度]
包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)からサンプル(フィルム1枚)を切り出し、28℃50%RH環境の恒温室で24時間放置した。その後直ちに、サンプルを20℃65%RH環境で10cm×10cmの正方形に裁断し、4つ折にした(5cm×5cmの正方形)。サンプルを折りたたむ際は、最初の2つ折りで出来た長方形の短辺が長手方向になるようにし、包装体の内側が山折りとなるようにした。その後、大きさが10cm×15cmで厚みが2mmであるガラス2枚に4つ折りのサンプルを挟み、5kgのおもりをガラスの上に置いて10秒間プレスした。4つ折りのサンプルからおもりを外した後、最後にできた折目を基点としてサンプルが開いた角度を図1のようにして測定した。なお、サンプルが完全に折畳まれた状態は0度、完全に開いた角度は180度である。
【0084】
[引張弾性率]
JIS K7113に準拠して測定した。包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)から、測定方向(フィルム長手方向、幅方向)が140mm、測定方向と直交する方向が20mmの短冊状のフィルムサンプルを1枚切り出した。引張試験機 (島津製作所製、オートグラフAG-Xplus)を用いて、サンプルの両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離100mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、引張試験開始時の強度(応力)の傾きを引張弾性率(MPa)とした。測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0085】
[ヘイズ]
JIS K7136に準拠して測定した。包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)からサンプル(フィルム1枚)を切り出し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0086】
[グロス]
JIS K8741に準じて測定した。包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)からサンプル(フィルム1枚)を切り出し、グロスメーター(日本電色工業株式会社製、VG2000)を用いて角度45度で測定した。
【0087】
[温湯熱収縮率]
包装体の溶断シールしていない部分(シール部分から少なくとも20mm離れた位置)からサンプル(フィルム1枚)を10cm×10cmの正方形に裁断し、80±0.5℃の温水中に無荷重状態で3分間浸漬して収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から出した。その後、サンプルの縦および横方向の寸法を測定し、下式1にしたがって各方向の熱収縮率を求めた。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。

収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) 式1
【0088】
[口部のひねり保持性]
包装体の口部から約10cmの部分を手で2回(720度)ひねり、1分放置後にひねった部分の戻り具合を評価した。ひねり保持性の評価観点は、以下の通りである。

○:ひねり状態が保持されている(戻り角度450度未満)
×:ひねり部分が解けて保持されていない(戻り角度450度以上)
【0089】
[鮮度保持性能]
ブロッコリーを包装体の中に入れ、30℃、85%RH環境下で3日間放置した後のカラー値変化と臭いで鮮度保持性能を評価した。以下に詳細な方法を示す。
まず、市販のブロッコリーから花蕾を1房(5cm程度)切り取り、花蕾の天頂部をカラーメーター(日本電色工業製、ZE6000)により、反射法でL値、b値を測定した。なお、カラー値の測定時には、カラーメーターの測定部に東洋紡株式会社製 超高透明ポリエステルフィルムA4100-25μm(カラーL値93.7、b値0.07)を敷き、その上にブロッコリーを置くようにした。なお、カラーL値、b値の測定は3回行い、それぞれの平均値を用いた。
次に、カラーL値、b値を測定したブロッコリーを包装体の中に入れ、包装体の口部を卓上シーラー(白光社製、HAKKO No.310-1)によりヒートシールして密封した。このとき、シーラーの目盛りを6として2回シール(シール間隔3秒以内)した後、シール部分から外側(ブロッコリーを入れていない方)3mmの部分でフィルムをカットした。
【0090】
上記の方法でブロッコリーを密封した包装体を、温度30℃、湿度85%RHに設定した恒温恒湿機(エスペック社製、LHU124)に入れ、3日間放置した。その後、包装体の中からブロッコリーを取り出し、カラー値を測定した。カラー値の測定方法は、ブロッコリーを放置する前の方法と同じである。カラーL値、b値それぞれについて、放置後のカラー値変化を、下記式2により算出した。
カラー値変化=(放置後のカラー値)-(放置前のカラー値) 式2

カラー値変化は、以下の基準に従って評価した。

○:カラーL値、b値の変化がともに5以下
△:カラーL値、b値いずれか1つの変化が5以下
×:カラーL値、b値の変化がともに5より大きい
【0091】
また、ブロッコリーを放置した後の包装体内面(青果物と接する面)についた水滴を、以下の基準に従って目視で評価した。

○:包装体内面に水滴がついていない(包装体の面積の1/5未満)
×:包装体内面に水滴がついている(包装体の面積の1/5以上)
【0092】
さらに、ブロッコリーを放置して包装体から取り出した際の臭いを、以下の基準に従って評価した。

○:包装体を開封したときに臭いがしない
×:包装体を開封したときに臭い(漬物臭)がする
【0093】
なお、表3中の鮮度保持評価には参考例として、ブロッコリーを包装しなかった「包装体なし」も記載している。この場合、ブロッコリー放置前後のカラーL値、b値のみ評価した。
【0094】
[フィルムの評価結果]
表3より、実施例1から8までの包装体はいずれも各特性に優れており、良好な評価結果が得られた。
一方、比較例1の包装体は、折りたたみ保持角度が高いため、包装体としての適性は低かった。また、溶断シール強度は極端に低くなった。
比較例2の包装体は酸素透過度、及び二酸化炭素透過度が極端に低く、ブロッコリーを放置して包装体を開封したときに臭いがしたため、鮮度保持性能には劣る結果となった。また、比較例2の包装体は、折りたたみ保持角度が高く、包装体としての適性は低かった。ヘイズも高い値を示した。
比較例3の包装体は、二酸化炭素透過度が高く、水蒸気透過度が低いため、鮮度保持性能に劣る結果となった。二酸化炭素透過度と酸素透過度の比も高い値を示した。また、比較例3の包装体は、折りたたみ保持角度が高いため、包装体としての適性は低かった。グロスも低い値を示した。
比較例4の包装体は、酸素透過度と二酸化炭素透過度が高く、水蒸気透過度が低いため、鮮度保持性能に劣る結果となった。二酸化炭素透過度と酸素透過度の比も高い値を示した。また、比較例4の包装体は、折りたたみ保持角度が高く、包装体としての適性は低かった。引張弾性率及びグロスも低い値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の鮮度保持用ポリエステル系フィルムは酸素透過度と二酸化炭素透過度が低く、水蒸気透過度を所定の範囲としており、高いデッドホールド性を有する。そのため、包装体として使用すると、包装体の口をひねる、または折りたたむだけで再封止することができ、青果物等のシェルフライフ延長と商品価値向上に資することができる。
図1