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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103413
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】カスタマイズド化粧料キット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/00 20060101AFI20230719BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K8/00
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081945
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2019555383の分割
【原出願日】2018-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2017226278
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】松田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】細川 欣哉
(72)【発明者】
【氏名】野水 千枝子
(72)【発明者】
【氏名】柳原 茜
(72)【発明者】
【氏名】糠田 悠一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】その日その時のユーザにカスタマイズされた化粧料を提供できる化粧料キット及び当該キットを用いてカスタマイズド化粧料を供給する化粧料提供装置を開発する。
【解決手段】複数の化粧料基剤を含み、ユーザ固有情報に基づいて決定されたレシピ情報に従って、前記複数の化粧料基剤を混合して調製されるカスタマイズド化粧品に使用するための化粧料キットであって、前記複数の化粧料基剤から選択される少なくとも2種類の化粧料基剤を収容した容器を所定速度で回転させながら同容器内の基剤の近赤外線測定を所定時間間隔で実施したとき、n回目の測定において初めて、n回目の測定の吸光度と前回(n-1回目)の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%であり、なおかつ次回(n+1)回目の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%となるn回目の測定、までに要する時間(T)が35分以内であることを特徴とする化粧料キットの製造に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の化粧料基剤を含み、
ユーザ固有情報に基づいて決定されたレシピ情報に従って、前記複数の化粧料基剤を混合して調製されるカスタマイズド化粧品に使用するための化粧料キットであって、
前記複数の化粧料基剤から選択される少なくとも2種類の化粧料基剤を収容した容器を所定速度で回転させながら同容器内の基剤の近赤外線測定を所定時間間隔で実施したとき、n回目の測定において初めて、n回目の測定の吸光度と前回(n-1回目)の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%であり、なおかつ次回(n+1)回目の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%となるn回目の測定、までに要する時間(T)が35分以内であることを特徴とする、化粧料キット。
【請求項2】
前記ユーザ固有情報は、ユーザの属性に関するユーザ属性情報、ユーザの環境に関する環境情報、ユーザの行動に関する行動情報、ユーザの心身に関する心身情報、及び、ユーザの肌に関する肌情報、ユーザが使用している化粧品に関する情報の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の化粧料キット。
【請求項3】
前記レシピ情報が、各化粧料基剤の使用量、配合比率および/または合計量を示す、請求項1又は2に記載の化粧料キット。
【請求項4】
前記複数の化粧料基剤が、各々別のカートリッジに収容されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料キット。
【請求項5】
前記カートリッジが、複数のカートリッジスロットを備え、各カートリッジスロットは化粧料基剤を収容するカートリッジを着脱可能に保持でき、ユーザ固有情報に基づいて決定された各化粧料基剤の使用量等を示すレシピ情報に従って、前記複数のカートリッジスロットに保持された各カートリッジに収容された化粧料基剤を提供する手段を備える化粧品提供装置におけるカートリッジである、請求項4に記載の化粧料キット。
【請求項6】
前記化粧品提供装置が、ユーザ固有情報に基づいて情報処理することができる情報処置装置と通信可能に接続されている、請求項5に記載の化粧料キット。
【請求項7】
前記複数の化粧料基剤が、少なくとも第1の基剤及び第2の基剤を含み、
前記第1の基剤が第1の増粘剤を含有し、前記第2の基剤が第2の増粘剤を含有し、かつ前記第1の増粘剤と前記第2の増粘剤とが異なる物質からなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧料キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用する個人にカスタマイズされた化粧品を提供するための化粧料キットに関する。
【背景技術】
【0002】
使用している化粧品が自分に適したものであるかは消費者(ユーザー)が常に抱えている悩みである。従来は、いわゆる対面販売において相談しながら自分に適すると思われる化粧品を購入するのが一般的であった。対面販売の場において肌状態を簡易測定することも行われている。しかし、購入した化粧品は、対面販売の時点においては適したものであっても、嗜好は日々変化するし、肌の状態は環境や心理状態などによって時々刻々変化するので常に適した化粧品であると言えない場合もある。
【0003】
近年、消費者が注文した化粧料成分を配送し、消費者の手元にある簡便な製造装置を用いて当該成分から別注化粧料を製造するシステムも提案されている(特許文献1)。しかし、注文時に選択できるのは化粧料の色と製品の種類のみであり、選択した色や種類に応じて各成分の配合比率等が決定されるに過ぎない。
【0004】
特許文献1と同様に、ユーザの手元にある製造装置において、ユーザの肌タイプに応じたカスタマイズド化粧料を製造するためのシステム及び装置も提案されている(特許文献2)。この装置においては、5種類の化粧品ベース(1次カテゴリー)から選択されるベースと化粧有効成分(2次カテゴリー)から選択された有効成分とが混合されてカスタマイズド化粧料が提供されるのみである。
【0005】
即ち、従来のシステムは、注文時点での肌状態を反映した成分は配合されていたとしても、ユーザ自身や環境の変化には対応しておらず、その日の自分に適した化粧品という真の意味でのカスタマイズド化粧品(パーソナライズド化粧品)とは言い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3843017号公報
【特許文献2】特表2017-510389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明の目的は、肌状態に影響を与え得るとされているユーザ固有の因子、例えば、ユーザが過ごす環境、ユーザの行動、ユーザの心身状況等を考慮して、その日その時のユーザに適した化粧品(真の意味での「カスタマイズド化粧品」)を提供するのに適した化粧料キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、カスタマイズド化粧品を調製するための各基剤に独自の特性を持たせ、その日その時のユーザに適したカスタマイズド化粧品を構成する基剤の種類及び配合量をユーザ固有情報に基づいて決定し、化粧品提供装置を介して当該基剤をユーザに提供するに際し、各基剤の混ざりやすさが極めて重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、複数の化粧料基剤を含み、ユーザ固有情報に基づいて決定されたレシピ情報に従って、前記複数の化粧料基剤を混合して調製されるカスタマイズド化粧品に使用するための化粧料キットであって、前記複数の化粧料基剤から選択される少なくとも2種類の化粧料基剤を収容した容器を所定速度で回転させながら同容器内の基剤の近赤外線測定を所定時間間隔で実施したとき、n回目の測定において初めて、n回目の測定の吸光度と前回(n-1回目)の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%であり、なおかつ次回(n+1)回目の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%となるn回目の測定、までに要する時間(T)が35分以内であることを特徴とする化粧料キット、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧料キットは、当該キットに含まれる複数の化粧料基剤が独自の特性を有するとともに、互いに混ざり合わせ易く調製されているため、ユーザ固有情報に基づくレシピ情報に従って吐出される化粧料基剤を、ユーザが容易かつストレスフリーで混合してカスタマイズド化粧品を得ることができる。各化粧料基剤の処方はユーザ固有情報等に基づいて決定されているので、その日その時のユーザの状態に応じて柔軟に対応可能な、真の意味でのカスタマイズド化粧品を効率的かつ簡便にユーザに提供でき、ユーザの化粧品に関する悩みを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の化粧料キットを用いるのに適した化粧品提供装置と情報処理装置を含む情報処理システムの一形態の構成を示すブロック図である。
図2図1における化粧品提供装置の一形態の構造を示す図である。
図3図1における化粧品提供装置の一形態の構成を示す概略図である。
図4図1の情報処理システムを用いたカスタマイズド化粧品の提供方法の一実施形態の概略図である。
図5図4の実施形態のユーザ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図6図4の実施形態の環境ログ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図7図4の実施形態の行動ログ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図8図4の実施形態の心身ログ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図9】一実施形態の肌ログ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図10】一実施形態の肌評価ログ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図11】一実施形態のマシン情報データベースのデータ構造を示す図である。
図12】一実施形態のレシピ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図13】一実施形態の情報処理の全体フローを示す図である。
図14】一実施形態のユーザログの更新の処理のフローチャートである。
図15】一実施形態のユーザログの更新の処理のフローチャートである。
図16】一実施形態の化粧品の提供の処理のフローチャートである。
図17図16の情報処理において表示される画面例の図である。
図18】変形例1のレシピ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図19】変形例1の化粧品の提供の処理のフローチャートである。
図20図19の情報処理において表示される画面例の図である。
図21】変形例2のカートリッジの交換の処理のフローチャートである。
図22】変形例3の化粧品提供装置の構成を示す概略図である。
図23】変形例3のレシピ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図24】変形例6のニアエンドの通知の処理のフローチャートである。
図25図24の情報処理において表示される画面例の図である。
図26】変形例7の化粧品の提供の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の化粧料キットは、例えば、複数のカートリッジスロットを備え、各カートリッジスロットは化粧料基剤を収容するカートリッジを着脱可能に保持し、ユーザ固有情報に基づいて決定された各化粧料基剤の使用量等を示すレシピ情報に従って、前記複数のカートリッジスロットに保持された各カートリッジに収容された化粧料基剤を提供する手段を備える化粧品提供装置で使用するのに特に適している。
なお、本明細書における「化粧料基剤」(以下では、単に「基剤」ともいう)は、化粧料成分を含み、単独で化粧品として使用することができる製剤(組成物)を意味するものとする。
【0013】
前記化粧品提供装置は、ユーザ固有情報に基づいて情報処理することができる情報処置装置と通信可能に接続されているのが好ましく、前記レシピ情報は前記情報処理装置から送信されるのが好ましい。以下に詳述する。
【0014】
本発明において好ましく用いられる情報処理装置は、ユーザに固有のユーザ固有情報を取得する手段を備え、前記ユーザ固有情報は、前記ユーザの属性に関するユーザ属性情報、前記ユーザの環境に関する環境情報、前記ユーザの行動に関する行動情報、前記ユーザの心身に関する心身情報、及び、前記ユーザの肌に関する肌情報、前記ユーザが使用している化粧品に関する情報の少なくとも1つを含み、複数のレシピ情報の中から、前記ユーザ固有情報に基づくレシピ情報を選択する手段を備え、前記選択されたレシピ情報を前記化粧品提供装置に送信する手段を備える。
【0015】
以下、図面を参照して詳細に説明するが、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
(1)情報処理システムの構成
前記化粧品提供装置及び情報処理装置を含む情報処理システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、情報処理システム1は、クライアント装置10と、サーバ30と、化粧品提供装置50と、予測情報提供サーバ70と、ウェアラブルデバイス90とを備える。 クライアント装置10、サーバ30、化粧品提供装置50、及び予測情報提供サーバ70は、ネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。
【0018】
クライアント装置10は、サーバ30にリクエストを送信する情報処理装置の一例である。クライアント装置10は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータである。
【0019】
サーバ30は、所定のリクエストに応じたレスポンスをクライアント装置10及び化粧品提供装置50に提供する情報処理装置の一例である。サーバ30は、例えば、ウェブサーバである。
【0020】
化粧品提供装置50は、サーバ30から送信される情報に基づいて、化粧品を提供するように構成される。
【0021】
予測情報提供サーバ70は、将来の予測を示す予測情報を提供する情報処理装置の一例である。予測情報提供サーバ70は、例えば、以下の情報を提供する。
・将来の環境の予測(例えば、ユーザが住んでいる場所の天気予報)を示す環境予測情報
・将来のユーザの行動の予測(例えば、ユーザが任意に入力した予定)を示す行動予測情報
・将来のユーザの心身の予測(例えば、ユーザが任意に入力した性周期の予測日)を示す心身予測情報
【0022】
ウェアラブルデバイス90は、環境ログ情報(後述の図6)、行動ログ情報(後述の図7)、及び、心身ログ情報(後述の図8)の少なくとも1つを取得するように構成される。
【0023】
(1-1)クライアント装置の構成
図1に示すように、クライアント装置10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14と、GPSモジュール15と、カメラ16と、を備える。
【0024】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Acce ss Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0025】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、化粧品提供装置50と連動する化粧品提供アプリケーション)のプログラム
【0026】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0027】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、クライアント装置10の機能を実現するように構成される。プロセッサ12は、コンピュータの一例である。
【0028】
入出力インタフェース13は、クライアント装置10に接続される入力デバイスからユーザの指示を取得し、ウェアラブルデバイス90から情報を取得し、かつ、クライアント装置10に接続される出力デバイスに情報を出力するように構成される。入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0029】
通信インタフェース14は、クライアント装置10とサーバ30との間の通信を制御するように構成される。
【0030】
GPSモジュール15は、GPS(Global Positioning System)衛星と通信を行うことにより、クライアント装置10の位置情報を取得するように構成される。
【0031】
カメラ16は、画像を取得するように構成される。カメラ16は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラである。
【0032】
(1-2)サーバの構成
図1に示すように、サーバ30は、記憶装置31と、プロセッサ32と、通信インタフェース34とを備える。
【0033】
記憶装置31は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置31は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0034】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0035】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0036】
プロセッサ32は、記憶装置31に記憶されたプログラムを起動することによって、サーバ30の機能を実現するように構成される。プロセッサ32は、コンピュータの一例である。
【0037】
入出力インタフェース33は、サーバ30に接続される入力デバイスからユーザの指示を取得し、サーバ30に接続される出力デバイスに情報を出力するように構成される。入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0038】
通信インタフェース34は、サーバ30とクライアント装置10との間の通信を制御するように構成される。
【0039】
(1-3)化粧品提供装置の構成
図1に示すように、化粧品提供装置50は、記憶装置51と、プロセッサ52と、入出力インタフェース53と、通信インタフェース54とを備える。
【0040】
記憶装置51は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置51は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0041】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・化粧品提供装置50を制御するファームウェアのプログラム
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0042】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0043】
プロセッサ52は、記憶装置51に記憶されたプログラムを起動することによって、化粧品提供装置50の機能を実現するように構成される。プロセッサ52は、コンピュータの一例である。
【0044】
入出力インタフェース53は、化粧品提供装置50の入力デバイス又はクライアント装置10からユーザの指示を受け付け、かつ、化粧品提供装置50の出力デバイスに情報を出力するように構成される。入力デバイスは、例えば、タッチパネルである。出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0045】
通信インタフェース54は、化粧品提供装置50とサーバ30との間の通信を制御するように構成される。
【0046】
図1の実施形態において使用できる化粧品提供装置の一形態の構造及び構成について説明する。
図2は、化粧品提供装置の一形態の構造を示す図である。図3は、図2の化粧品提供装置の構成の一例を示す概略図である。
【0047】
図2Aに示すように、化粧品提供装置50は、上部50a及び下部50bから構成される。下部50bには、吐出口50baが配置されている。吐出口50baは、前方FRに向かって開口している。
【0048】
図2Bに示すように、上部50aの内部には、複数のカートリッジスロット50aa~50aeが配置されている。各カートリッジスロット50aa~50aeには、カートリッジCAが着脱可能に保持される。
【0049】
各カートリッジCAには、化粧料基剤(例えば、液体)が収容される。各カートリッジCAに収容される化粧料基剤は、単独でも使用可能であり、且つ、他のカートリッジCAに収容された化粧料基剤と混合可能である。
【0050】
各カートリッジCAの側面には、ICチップCAaが配置される。ICチップCAaには、カートリッジCAに関する情報(以下「カートリッジ情報」という)が格納される。
カートリッジ情報は、例えば、以下の情報を含む。
・カートリッジを識別するカートリッジID
・カートリッジに収容された化粧料基剤の残量値
・カートリッジに収容された化粧料基剤を示す情報
【0051】
図3に示すように、カートリッジスロット50aa~50aeは、それぞれ、カートリッジCA1~CA5を保持する。カートリッジCA1~CA5には、互いに異なる化粧料基剤又は同じ化粧料基剤が収容される。
【0052】
プロセッサ52は、各カートリッジCA1~CA5を制御することにより、カートリッジCA1~CA5に収容された化粧料基剤を吐出口50baから吐出させる。
【0053】
(2)カスタマイズド化粧品提供方法の概略
図4は、図1の情報処理システムを用いたカスタマイズド化粧品の提供方法の一実施形態を示す概略図である。
【0054】
図4に示すように、本実施形態では、ユーザ(例えば、化粧品の消費者)が、クライアント装置10と、化粧品提供装置50とを使用する。
【0055】
クライアント装置10は、ユーザから、ユーザに固有の情報(以下「ユーザ固有情報」という)を取得する。クライアント装置10は、取得したユーザ固有情報をサーバ30に送信する。
【0056】
ユーザ固有情報は、ユーザログ情報と、予測情報とを含む。
ユーザログ情報とは、ユーザの過去の環境情報、行動情報、心身情報、肌情報、及び、肌評価情報の少なくとも1つの履歴を示す情報である。
予測情報は、ユーザの未来の環境、行動、及び、心身の少なくとも1つの予測を示す情報である。
【0057】
サーバ30は、クライアント装置10から送信されたユーザ固有情報に基づいて、複数のレシピ情報の中から、化粧品提供装置50に送信すべきレシピ情報を選択する。サーバ30は、選択したレシピ情報を化粧品提供装置50に送信する。
【0058】
化粧品提供装置50は、サーバ30から送信されたレシピ情報に基づいて化粧料基剤を吐出口50baから提供する。レシピ情報は、ユーザ固有情報に基づいている。つまり、ユーザに提供される化粧料基剤から構成される化粧品は、ユーザ固有の因子に合わせてカスタマイズされている。
【0059】
(3)データベース
本実施形態のデータベースについて説明する。以下のデータベースは、記憶装置31に記憶される。
【0060】
(3-1)ユーザ情報データベース
本実施形態のユーザ情報データベースについて説明する。図5は、本実施形態のユーザ情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図5のユーザ情報データベースには、ユーザに関する情報(以下「ユーザ情報」という)が格納される。
ユーザ情報データベースは、「ユーザID」フィールドと、「ユーザ名」フィールドと、「ユーザ属性」フィールドと、「推定式」フィールドと、「使用化粧品ID」フィールドと、「問診」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0061】
「ユーザID」フィールドには、ユーザを識別するユーザIDが格納される。
「ユーザ名」フィールドには、ユーザ名を示す情報(例えば、テキスト)が格納される。
「ユーザ属性」フィールドには、ユーザの属性に関する情報(以下「ユーザ属性情報」という)が格納される。ユーザ属性情報は、ユーザが任意に決定する情報である。「ユーザ属性」フィールドは、「性別」フィールドと、「年齢」フィールドと、「住所」フィールドとを含む。「性別」フィールドには、ユーザの性別を示す情報が格納される。「年齢」フィールドには、ユーザの年齢を示す情報が格納される。「住所」フィールドには、ユーザの住所を示す情報が格納される。
【0062】
「推定式」フィールドには、ユーザの肌状態を推定するための推定式(式1)が格納される。推定式は、ユーザの肌に影響を与える因子毎の係数を含む。
(式1) f=a×A+b×B+c×C+d×D
・f…肌状態の推定結果を示すスコア(以下「肌スコア」という)
・a…環境の係数
・A…環境情報
・b…行動の係数
・B…行動情報
・c…心身の係数
・C…心身情報・d…肌の係数
・D…肌情報
【0063】
推定式は、ユーザの肌状態の指標(以下「肌指標」という)毎に用意される。つまり、推定式に含まれる係数は、肌指標毎に異なる。肌指標は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・角層水分量
・肌理・肌色
・肌のかさつき・肌の滑らかさ
・肌の透明感
・肌の美白の程度
・肌荒れの有無
・肌の炎症の程度
・肌の小じわの程度
【0064】
「使用化粧品ID」フィールドには、ユーザが使用している化粧品を識別する化粧品IDが格納される。
「問診」フィールドには、ユーザの肌に関する質問に対するユーザの回答を示す情報が格納される。
【0065】
(3-2)環境ログ情報データベース
図6は、本実施形態の環境ログ情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図6の環境ログ情報データベースには、ユーザが過ごした環境に関する環境情報のログを示す情報(以下「環境ログ情報」という)が格納される。環境ログ情報は、ウェアラブルデバイス90から取得される情報である。
環境ログ情報データベースは、「環境ログID」フィールドと、「日時」フィールドと、「紫外線曝露量」フィールドと、「温度」フィールドと、「湿度」フィールドとを含む。 各フィールドは、互いに関連付けられている。環境ログ情報データベースは、ユーザIDに関連付けられている。
【0066】
「環境ログID」フィールドには、環境ログ情報を構成する環境情報を識別する環境ログIDが格納される。
「日時」フィールドには、環境情報が取得された日時を示す情報が格納される。
「紫外線曝露量」フィールドには、ユーザが浴びた紫外線の量(以下「紫外線曝露量」という)を示す情報が格納される。
「温度」フィールドには、ユーザが過ごした環境の温度を示す情報が格納される。
「湿度」フィールドには、ユーザが過ごした環境の湿度を示す情報が格納される。
【0067】
(3-3)行動ログ情報データベース
図7は、本実施形態の行動ログ情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図7の行動ログ情報データベースには、ユーザの行動に関する行動情報の履歴を示す情報(以下「行動ログ情報」という)が格納される。行動ログ情報は、ウェアラブルデバイス90から取得される情報、ユーザ指示(例えば、アンケートに対するユーザの回答)に応じて決まる情報、又は、それらの組合せである。
行動ログ情報データベースは、「行動ログID」フィールドと、「日時」フィールドと、「行動」フィールドと、「開始時間」フィールドと、「終了時間」フィールドと、「カロリー変化」フィールドと、「位置情報」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。行動ログ情報データベースは、ユーザIDに関連付けられている。
【0068】
「行動ログID」フィールドには、行動ログ情報を構成する行動情報を識別する行動ログIDが格納される。
「日時」フィールドには、行動情報が取得された日時を示す情報が格納される。
「行動」フィールドには、ユーザの行動に関する情報が格納される。
ユーザの行動は、以下の少なくとも1つを含む。
・食事(例えば、食事の内容)・運動(例えば、運動の種目)
・睡眠(例えば、睡眠中の寝返り回数)
【0069】
「開始時間」フィールドには、行動の開始時間を示す情報が格納される。
「終了時間」フィールドには、行動の終了時間を示す情報が格納される。
「カロリー変化」フィールドには、行動に応じた摂取カロリー又は消費カロリー(消費エネルギの一例)を示す情報が格納される。
「位置情報」フィールドには、GPSモジュール15によって取得された位置情報が格納される。
【0070】
(3-4)心身ログ情報データベース
図8は、本実施形態の心身ログ情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図8の心身ログ情報データベースには、ユーザの心身に関する心身情報の履歴を示す情報(以下「心身ログ情報」という)が格納される。心身ログ情報は、ウェアラブルデバイス90から取得される情報、ユーザ指示(例えば、問診に対するユーザの回答(以下「問診結果」という))、又は、それらの組合せに応じて決まる情報である。
心身ログ情報データベースは、「心身ログID」フィールドと、「日時」フィールドと、「脈拍値」フィールドと、「性周期」フィールドと、「ストレス」フィールドと、「マインドフルネス」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。心身ログ情報データベースは、ユーザIDに関連付けられている。
【0071】
「心身ログID」フィールドには、心身ログ情報を構成する心身情報を識別する心身ログIDが格納される。
「日時」フィールドには、心身情報が取得された日時を示す情報が格納される。
「脈拍値」フィールドには、ユーザの脈拍値が格納される。脈拍値は、例えば、ウェアラブルデバイス90から取得される情報である。
「性周期」フィールドには、性周期を示す情報(ホルモンバランス情報の一例)が格納される。
【0072】
「ストレス」フィールドには、ストレスの指標を示すストレス情報が格納される。ストレス情報は、例えば、ストレスの強さ、ストレスの要因、ストレスの種類、又は、それらの組合せを示す。ストレス情報は、脈拍値、性周期、問診結果、又は、それらの組合せによって決まる。
「マインドフルネス」フィールドには、ユーザのマインドフルネスの指標を示すマインドフルネス情報が格納される。マインドフルネス情報は、脈拍値、性周期、問診結果、又は、それらの組合せによって決まる。
【0073】
(3-5)肌ログ情報データベース
図9は、本実施形態の肌ログ情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図9の肌ログ情報データベースには、ユーザの肌に関する肌情報の履歴を示す情報(以下「肌ログ情報」という)が格納される。
肌ログ情報データベースは、「肌ログID」フィールドと、「日時」フィールドと、「肌画像」フィールドと、「肌色」フィールドと、「水分量」フィールドと、「皮脂量」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。肌ログ情報データベースは、ユーザIDに関連付けられている。
【0074】
「肌ログID」フィールドには、肌ログ情報を識別する肌ログIDが格納される。
「日時」フィールドには、肌情報が取得された日時を示す情報が格納される。
「肌画像」フィールドには、ユーザの肌の画像の画像データが格納される。
【0075】
「肌色」フィールドには、ユーザの肌の画像から推定される肌の色を示す情報(例えば、RGB値)が格納される。
「水分量」フィールドには、ユーザの肌の画像から推定される水分量の指標を示す情報が格納される。
「皮脂量」フィールドには、ユーザの肌の画像から推定される皮脂量の指標を示す情報が格納される。
【0076】
(3-6)肌評価ログ情報データベース
図10は、本実施形態の肌評価ログ情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図10の肌評価ログ情報データベースには、肌状態に関する定性的な評価(以下「肌評価」という)の履歴を示す情報(以下「肌評価ログ情報」という)が格納される。
肌評価ログ情報データベースは、「肌評価ログID」フィールドと、「日時」フィールドと、「肌スコア」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。肌評価ログ情報データベースは、ユーザIDに関連付けられている。
【0077】
「肌評価ログID」フィールドには、肌評価ログ情報を構成する肌評価を識別する肌評価ログIDが格納される。
「日時」フィールドには、肌評価が生成された日時を示す情報が格納される。
「肌スコア」フィールドには、ユーザログ情報(環境ログ情報、行動ログ情報、心身ログ情報、及び、肌ログ情報の少なくとも1つ)を推定式に適用することにより得られる肌スコアが格納される。「肌スコア」フィールドは、「第1肌スコア」フィールドと、「第2肌スコア」フィールドとを含む。
「第1肌スコア」フィールドには、第1肌スコア(第1肌指標の一例)が格納される。第1肌スコアは、ユーザログ情報から推定される現在(例えば、ユーザログ情報が取得された時)の肌状態を示す。
「第2肌スコア」フィールドには、第2肌スコア(第2肌指標の一例)が格納される。第2肌スコアは、ユーザログ情報及び予測情報から推定される将来(例えば、ユーザログ情報が取得された日の1週間後)の肌状態を示す。
【0078】
(3-7)マシン情報データベース
図11は、本実施形態のマシン情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図11のマシン情報データベースには、化粧品提供装置50に関する情報(以下「マシン情報」という)が格納される。
マシン情報データベースは、「マシンID」フィールドと、「オーナユーザID」フィールドと、「カートリッジ」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0079】
「マシンID」フィールドには、化粧品提供装置50を識別するマシンIDが格納される。 「マシンID」フィールドの情報は、例えば、化粧品提供装置50に予め割り当てられているシリアル番号である。
「オーナユーザID」フィールドには、化粧品提供装置50を使用するユーザのユーザIDが格納される。
「カートリッジ」フィールドは、「スロット1」~「スロット5」フィールドを含む。
「スロット1」~「スロット5」フィールドには、それぞれ、カートリッジスロット50aa~50aeに保持されたカートリッジCA1~CA5に関するカートリッジ情報が格納される。カートリッジ情報は、カートリッジCAを識別するカートリッジIDと、カートリッジCAに収容された化粧料基剤の残量値と、カートリッジCAに収容された化粧料基剤を示す情報とを含む。
【0080】
(3-8)レシピ情報データベース
図12は、本実施形態のレシピ情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図12のレシピ情報データベースには、レシピ情報が格納される。レシピ情報は、化粧品のカスタマイズ方法を示す。
レシピ情報データベースは、「レシピID」フィールドと、「使用量」フィールドと、「条件」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0081】
「レシピID」フィールドには、レシピ情報を識別するレシピIDが格納される。「レシピID」フィールドの情報は、サーバ30によって決定される。
「使用量」フィールドには、各化粧料基剤の使用量を示す情報が格納される。
「条件」フィールドには、レシピ情報を選択するときの基準となる肌スコアの範囲を示す情報が格納される。
【0082】
(4)情報処理
図13は、本実施形態の情報処理の全体フローを示す図である。
図13に示すように、本実施形態の情報処理は、ユーザログの更新(OP1)と、肌ログの更新(OP2)と、化粧品の提供(OP3)と、を含む。
【0083】
(4-1)ユーザログの更新の処理
図14は、本実施形態のユーザログの更新の処理のフローチャートである。
図14のステップのうち、クライアント装置10によって実行されるステップは、化粧品提供アプリケーションの機能として実行される。
【0084】
図14に示すように、クライアント装置10は、ユーザログの取得(S100)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、入出力インタフェース13を介して、ウェアラブルデバイス90から、ユーザログ情報(環境ログ情報、行動ログ情報、及び、心身ログ情報の少なくとも1つ)を取得する。
【0085】
ステップS100の後、クライアント装置10は、ユーザログ更新リクエスト(S101)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、ユーザログ更新リクエストデータをサーバ30に送信する。
ユーザログ更新リクエストデータは、以下の情報を含む。
・ユーザID
・ステップS101の実行日時を示す情報
・ステップS100において取得したユーザログ情報
【0086】
ステップS101の後、サーバ30は、ユーザログ更新リクエストデータに基づいてデータベースの更新(S300)を実行する。
第1例として、ユーザログ更新リクエストデータが環境ログ情報を含む場合、プロセッサ32は、ステップS101において送信されたユーザログ更新リクエストデータに含まれるユーザIDに関連付けられた環境ログ情報データベース(図6)に新規レコードを追加する。
新規レコードの各フィールドには、以下の情報が格納される。
・「環境ログID」フィールドには、新規環境ログIDが格納される。
・「日時」フィールドには、ユーザログ更新リクエストデータに含まれるステップS101の実行日時を示す情報が格納される。
・「紫外線曝露量」フィールド、「温度」フィールド、及び「湿度」フィールドには、ユーザログ更新リクエストデータに含まれる環境情報が格納される。
【0087】
第2例として、ユーザログ更新リクエストデータが行動ログ情報を含む場合、プロセッサ32は、ステップS101において送信されたユーザログ更新リクエストデータに含まれるユーザIDに関連付けられた行動ログ情報データベース(図7)に新規レコードを追加する。
新規レコードの各フィールドには、以下の情報が格納される。
・「行動ログID」フィールドには、新規行動ログIDが格納される。
・「日時」フィールドには、ユーザログ更新リクエストデータに含まれるステップS101の実行日時を示す情報が格納される。
・「行動」フィールド、「開始時間」フィールド、「終了時間」フィールド、「カロリー変化」フィールド、及び「位置情報」フィールドには、ユーザログ更新リクエストデータに含まれる行動情報が格納される。
【0088】
第3例として、ユーザログ更新リクエストデータが心身ログ情報を含む場合、プロセッサ32は、ステップS101において送信されたユーザログ更新リクエストデータに含まれる ユーザIDに関連付けられた心身ログ情報データベース(図8)に新規レコードを追加する。
新規レコードの各フィールドには、以下の情報が格納される。
・「心身ログID」フィールドには、新規心身ログIDが格納される。
・「日時」フィールドには、ユーザログ更新リクエストデータに含まれるステップS101の実行日時を示す情報が格納される。
・「脈拍値」フィールド、「性周期」フィールド、「ストレス」フィールド、及び、「マインドフルネス」フィールドには、ユーザログ更新リクエストデータに含まれる心身情報が格納される。
これにより、ユーザログ情報が更新される。
【0089】
ステップS300の後、サーバ30は、肌状態の推定(S301)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、ユーザ情報データベース(図5)を参照して、ユーザログ更新リクエストデータに含まれるユーザIDに関連付けられた推定式を特定する。
プロセッサ32は、特定した推定式に、ステップS300で更新したユーザログ情報を適用することにより、ユーザログ情報に基づく肌スコアを算出する。
プロセッサ32は、ユーザIDに関連付けられた肌評価ログ情報データベース(図10)の「第1肌スコア」フィールドに、算出した肌スコアを示す情報を格納する。
【0090】
(4-2)肌ログの更新の処理
図15は、本実施形態のユーザログの更新の処理のフローチャートである。
図15のステップのうち、クライアント装置10によって実行されるステップは、化粧品提供アプリケーションの機能として実行される。
【0091】
図15に示すように、クライアント装置10は、肌画像の取得(S110)を実行する。
具体的には、カメラ16は、ユーザの肌の画像を取得する。
プロセッサ12は、取得された画像を記憶装置11に記憶する。
【0092】
ステップS110の後、クライアント装置10は、肌パラメータの推定(S111)を実行する。
プロセッサ12は、ステップS110において記憶装置11に記憶した画像を解析する。
プロセッサ12は、画像の解析結果に所定のアルゴリズムを適用することにより、ユーザの肌の色の値と、水分量の値と、皮脂量の値と、を算出する。
【0093】
ステップS111の後、クライアント装置10は、肌ログ更新リクエスト(S112)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、肌ログ更新リクエストデータをサーバ30に送信する。
肌ログ更新リクエストデータは、以下の情報を含む。
・ユーザID
・ステップS112の実行日時を示す情報
・ステップS110において取得された画像の画像データ
・ステップS111において算出された肌の色の値、皮脂量の値、及び、水分量の値
【0094】
ステップS112の後、サーバ30は、肌ログ更新リクエストデータに基づいてデータベースの更新(S310)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、ステップS112において送信された肌ログ更新リクエストデータに含まれるユーザIDに関連付けられた肌ログ情報データベース(図9)に新規レコードを追加する。
新規レコードの各フィールドには、以下の情報が格納される。
・「肌ログID」フィールドには、新規肌ログIDが格納される。
・「日時」フィールドには、肌ログ更新リクエストデータに含まれるステップS112の実行日時を示す情報が格納される。
・「肌画像」フィールドには、肌ログ更新リクエストデータに含まれる画像データが格納される。
・「肌色」フィールドには、肌ログ更新リクエストデータに含まれる肌の色の値が格納される。
・「水分量」フィールドには、肌ログ更新リクエストデータに含まれる水分量の値が格納される。
・「皮脂量」フィールドには、肌ログ更新リクエストデータに含まれる皮脂量の値が格納される。
これにより、肌ログ情報が更新される。
【0095】
ステップS310の後、サーバ30は、肌状態の推定(S311)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、ユーザ情報データベース(図5)を参照して、肌ログ更新リクエストデータに含まれるユーザIDに関連付けられた推定式を特定する。
プロセッサ32は、特定した推定式に、ステップS310で更新した肌ログ情報を適用することにより、肌ログ情報に基づく肌スコアを算出する。
プロセッサ32は、ユーザIDに関連付けられた肌評価ログ情報データベース(図10)の「第1肌スコア」フィールドに、算出した肌スコアを示す情報を格納する。
【0096】
(4-3)化粧品の提供の処理
図16は、本実施形態の化粧品の提供の処理のフローチャートである。図17は、図16の情報処理において表示される画面例の図である。
【0097】
図16に示すように、化粧品提供装置50は、メニュー画面の表示(S520)を実行する。
具体的には、プロセッサ52は、画面P520をディスプレイに表示する。
画面P520は、ボタンオブジェクトB520が表示される。
ボタンオブジェクトB520は、化粧品の提供を受けるためのユーザ指示を受け付けるオブジェクトである。
【0098】
ステップS520の後、化粧品提供装置50は、レシピリクエスト(S520)を実行する。
具体的には、ユーザがボタンオブジェクトB520を操作すると、プロセッサ52は、レシピリクエストデータをサーバ30に送信する。レシピリクエストデータは、化粧品提供装置50のマシンIDを含む。
【0099】
ステップS521の後、サーバ30は、レシピリクエストデータに基づいてレシピの選択(S320)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、マシン情報データベース(図11)を参照して、レシピリクエストデータに含まれるマシンIDに関連付けられたオーナユーザIDを特定する。 プロセッサ32は、特定したオーナユーザIDに関連付けられた肌評価ログ情報データベース(図10)を参照して、最新の肌スコア(例えば、「日時」フィールドの情報が最も新しい日時を示すレコードの第1肌スコア)を特定する。
プロセッサ32は、レシピ情報データベース(図12)を参照して、特定した肌スコアが「条件」フィールドの情報が示す範囲に含まれるレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコードのレシピID及び各化粧料基剤の使用量を特定する。
【0100】
ステップS320の後、サーバ30は、レシピレスポンス(S321)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、レシピレスポンスデータを化粧品提供装置50に送信する。
レシピレスポンスデータは、以下の情報を含む。
・ステップS320で特定されたレシピID
・ステップS320で特定された各化粧料基剤の使用量
【0101】
ステップS321の後、化粧品提供装置50は、レシピレスポンスデータに基づいて画面表示(S522)を実行する。
具体的には、プロセッサ52は、画面P522をディスプレイに表示する。
画面P522は、表示オブジェクトA522a~A522bと、ボタンオブジェクトB522a~B522bとを含む。
表示オブジェクトA522aには、レシピレスポンスデータに含まれるレシピIDが表示される。
表示オブジェクトA522bには、レシピレスポンスデータに含まれる各化粧料基剤の使用量が表示される。
【0102】
ボタンオブジェクトB522aは、表示オブジェクトA522bに示される各化粧料基剤の使用量の増減のユーザ指示を受け付けるオブジェクトである。ボタンオブジェクトB522bは、表示オブジェクトA522bに示される各化粧料基剤の使用量を確定させるユーザ指示を受け付けるオブジェクトである。
【0103】
ステップS522の後、化粧品提供装置50は、化粧料基剤の吐出(S523)を実行する。
具体的には、ユーザがボタンオブジェクトB522bを操作すると、プロセッサ52は、表示オブジェクトA522bに示される各化粧料基剤の使用量の分だけ、各カートリッジCA1~CA5に収容された化粧料基剤が吐出されるように、各カートリッジCA1~CA5を制御する。
【0104】
各カートリッジCA1~CA5に収容された化粧料基剤は、吐出口50baから吐出される。ユーザは、吐出口50baに手を挿入することにより、吐出された化粧料基剤を受け取る。
受け取った化粧料基剤を必要に応じて混合することにより、ユーザ固有の因子に適合したカスタマイズド化粧品をユーザに提供すことができる。
【0105】
ステップS524の後、化粧品提供装置50は、残量更新リクエスト(S524)を実行する。
具体的には、プロセッサ52は、残量更新リクエストデータをサーバ30に送信する。
残量更新リクエストデータは、以下の情報を含む。
・マシンID
・ステップS523で吐出した化粧料基剤の吐出量を示す値
【0106】
ステップS524の後、サーバ30は、データベースの更新(S322)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、マシン情報データベース(図11)を参照して、残量更新リクエストデータに含まれるマシンIDのレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコードの「カートリッジ」フィールドの値から、残量更新リクエストデータに含まれる吐出量の値を引く。
これにより、各カートリッジCA1~CA5に収容された化粧料基剤の残量がサーバ30に保持される。
【0107】
上記の実施形態によれば、ユーザ固有の因子に適合したカスタマイズド化粧品を提供することができる。ただし、以上は本発明で好ましく使用できる情報処理システムの一例を示すものであり、様々な変形が可能である。以下にいくつかの変形例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
(5)変形例
(5-1)変形例1
変形例1は、化粧品を受け取るときのユーザの感情を考慮してレシピを選択する例である。
【0109】
(5-1-1)レシピ情報データベース
図18は、変形例1のレシピ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図18に示すように、変形例1のレシピ情報データベースは、図12の各フィールドに加えて、「感情条件」フィールドを含む。
「感情条件」フィールドには、レシピ情報を選択するときの基準となる感情コードが格納される。感情コードは、ユーザの感情を示す情報である。
【0110】
(5-1-2)化粧品の提供の処理
図19は、変形例1の化粧品の提供の処理のフローチャートである。図20は、図19の情報処理において表示される画面例の図である。
図19に示すように、化粧品提供装置50は、感情情報の取得(S530)を実行する。
具体的には、ユーザがボタンオブジェクトB520を操作すると、プロセッサ52は、画面P530をディスプレイに表示する。
【0111】
画面P530は、ボタンオブジェクトB530a~B530bを含む。
ボタンオブジェクトB530a~B530bは、ユーザの感情の指定を受け付けるオブジェクトである。ボタンオブジェクトB530a~B530bには、感情を示すコードが割り当てられている。ユーザがボタンオブジェクトB530aを操作すると、プロセッサ52は、ボタンオブジェクトB530aに割り当てられた感情コードを受け付ける。
【0112】
ステップS530の後、化粧品提供装置50は、レシピリクエスト(S531)を実行する。
具体的には、プロセッサ52は、レシピリクエストデータをサーバ30に送信する。
レシピリクエストデータは、以下の情報を含む。
・化粧品提供装置50のマシンID
・ステップS530で受け付けられた感情コード
【0113】
ステップS531の後、サーバ30は、レシピの選択(S330)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、マシン情報データベース(図11)を参照して、レシピリクエストデータに含まれるマシンIDに関連付けられたオーナユーザIDを特定する。
プロセッサ32は、特定したオーナユーザIDに関連付けられた肌評価ログ情報データベース(図10)を参照して、最新の肌スコア(例えば、「日時」フィールドの情報が最も新しい日時を示すレコードの第1肌スコア)を特定する。
プロセッサ32は、レシピ情報データベース(図12)を参照して、特定した肌スコアが「条件」フィールドの情報に含まれるレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコードのうち、レシピリクエストデータに含まれる感情コードが「感情条件」フィールドの情報と一致するレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコード(つまり、肌スコア及び感情コードに基づくレコード)のレシピID及び各化粧料基剤の使用量を特定する。
【0114】
ステップS330の後、ステップS321、S522~S524、及び、S322が、図16と同様に実行される。
変形例1によれば、ユーザの感情に基づくレシピを選択する。これにより、その時のユーザ固有の因子に更に適合した化粧品を提供することができる。
【0115】
(5-2)変形例2
変形例2は、カートリッジCA1~CA5が交換された場合の情報処理の例である。図21は、変形例2のカートリッジの交換の処理のフローチャートである。
図21に示すように、化粧品提供装置50は、カートリッジ交換リクエスト(S540)を実行する。
具体的には、ユーザが上部50aを開放して、カートリッジスロット50aa~50ae内のカートリッジCAを交換した後、上部50aを閉鎖すると、プロセッサ52は、カートリッジ交換リクエストデータをサーバ30に送信する。
カートリッジ交換リクエストデータは、以下の情報を含む。
・化粧品提供装置50のマシンID
・新たに取り付けられたカートリッジCAのICチップCAaに格納されたカートリッジID
・新たに取り付けられたカートリッジCAのICチップCAaに格納された残量値
・新たに取り付けられたカートリッジCAのICチップCAaに格納された化粧料基剤の種類を示す情報
なお、新たに取り付けられたカートリッジCAが非純正品である場合、カートリッジ交換リクエストデータは、カートリッジID、残量値、化粧料基剤の種類を示す情報の少なくとも1つを含まないこともある。
【0116】
ステップS540の後、サーバ30は、カートリッジの判定(S340)を実行する。
具体的には、カートリッジ交換リクエストデータに含まれるカートリッジIDが所定のカートリッジIDではない場合、又は、カートリッジ交換リクエストデータがカートリッジIDを含まない場合、プロセッサ32は、新たに取り付けられたカートリッジCAは非純正品であると判定する。
【0117】
ステップS340の後、サーバ30は、データベースの更新(S341)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、マシン情報データベース(図11)を参照して、カートリッジ交換リクエストデータに含まれるマシンIDのレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコードの「カートリッジ」フィールドに、カートリッジ交換リクエストデータに含まれるカートリッジID及び残量値を格納する。
なお、プロセッサ32は、ステップS340で非純正品であると判定した場合、「カートリッジ」フィールドに非純正品を示すコードを格納してもよい。
【0118】
ステップS341の後、サーバ30は、カートリッジ交換レスポンス(S342)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、カートリッジ交換レスポンスデータを化粧品提供装置50に送信する。ステップS340で非純正品であると判定された場合、カートリッジ交換レスポンスデータは、新たに取り付けられたカートリッジCAが非純正品であることを示すメッセージを含む。
【0119】
ステップS342の後、化粧品提供装置50は、警告(S541)を実行する。
具体的には、プロセッサ52は、カートリッジ交換レスポンスデータに含まれるメッセージをディスプレイに表示する。
変形例2によれば、新たに取り付けられたカートリッジCAが非純正品であることをサーバ30に保持し、且つ、ユーザに警告することができる。
【0120】
(5-3)変形例3
変形例3は、化粧品提供装置50の構成の変形例である。
(5-3-1)
化粧品提供装置の構成変形例3の化粧品提供装置の構成について説明する。図22は、変形例3の化粧品提供装置の構成を示す概略図である。
【0121】
図22に示すように、化粧品提供装置50は、図3の構成に加えて、ミキサ55と、ヒータ56と、を有する。
ミキサ55は、カートリッジCA3~CA5に収容された化粧料基剤を混合するように構成される。例えば、撹拌子を具備する中空容器等であってよい。
プロセッサ52は、ミキサ55を制御することにより、カートリッジCA3~CA5に収容された化粧料基剤を混合してから吐出する。
なお、混合の対象となる化粧料基剤は、カートリッジCA3~CA5に収容された化粧料基剤に限られず、カートリッジCA1~CA5に収容された2以上の任意の化粧料基剤が混合の対象となってもよい。
【0122】
ヒータ56は、カートリッジCA3~CA5に収容された化粧料基剤を加熱するように構成される。例えば、電熱器等の加熱手段を備えた中空容器であってよい。
プロセッサ52は、ヒータ56を制御することにより、カートリッジCA3~CA5に収容された化粧料基剤を加熱してから吐出する。
なお、加熱の対象となる化粧料基剤は、カートリッジCA3~CA5に収容された化粧料基剤に限られず、カートリッジCA1~CA5に収容された2以上の任意の化粧料基剤が加熱の対象となってもよい。
【0123】
(5-3-2)レシピ情報データベース
図23は、変形例3のレシピ情報データベースのデータ構造を示す図である。
図23に示すように、変形例3のレシピ情報データベースは、図12の各フィールドに加えて、「ミキサ」フィールドと、「ヒータ」フィールドと、を含む。
「ミキサ」フィールドは、「混合速度」フィールドと、「混合順」フィールドと、「混合時間」フィールドとを含む。
「混合速度」フィールドには、ミキサ55による混合速度を示す値が格納される。「混合順」フィールドには、ミキサ55による混合順を示すカートリッジスロットIDが格納される。カートリッジスロットIDは、カートリッジスロット50ac~50aeを識別する情報である。
「混合時間」フィールドには、ミキサ55による混合時間を示す値が格納される。
「ヒータ」フィールドは、「加熱温度」フィールドと、「加熱時間」フィールドとを含む。
「加熱温度」フィールドには、ヒータ56の加熱温度を示す値が格納される。
「加熱時間」フィールドには、ヒータ56の加熱時間を示す値が格納される。
【0124】
(5-3-3)化粧品の提供
変形例3の化粧品の提供の処理について説明する。
図16のステップS320において、プロセッサ32は、肌スコアが「条件」フィールドの情報が示す範囲に含まれるレコードを特定した後、特定したレコードのレシピID、各化粧料基剤の使用量、ヒータ56の制御情報(加熱温度及び加熱時間)、並びに、ミキサ55の制御情報(混合速度、混合順、及び、混合時間)を特定する。
【0125】
ステップS321において、プロセッサ32は、レシピレスポンスデータを化粧品提供装置50に送信する。
レシピレスポンスデータは、以下の情報を含む。
・ステップS320で特定されたレシピID
・ステップS320で特定された各化粧料基剤の使用量
・ステップS320で特定されたミキサ55の制御情報
・ステップS320で特定されたヒータ56の制御情報
【0126】
ステップS523において、プロセッサ52は、レシピレスポンスデータに含まれる使用量及び制御情報に基づいて、各カートリッジCA3~CA5、ミキサ55、及び、ヒータ56を制御する。
変形例3によれば、ユーザは、ユーザ固有情報に基づいて混合及び加熱された化粧料基剤を受け取ることができる。
【0127】
(5-4)変形例4
変形例4は、カートリッジCAに乳液基剤及び美容液基剤が収容される例である。
変形例4のカートリッジCA1~CA2には種類の異なる乳液基剤が収容され、且つ、カートリッジCA3~CA5には種類の異なる美容液基剤が収容されてもよい。
【0128】
例えば、カートリッジCA1に収容された乳液基剤は、起床後の時間帯(例えば、6:00~8:00)に化粧品の提供の処理が実行される場合に吐出される。つまり、カートリッジCA1に収容された乳液基剤は、朝用の乳液として使用されるものである。朝用の乳液は、1日の活動前の使用に適した成分を含む。
カートリッジCA2に収容された乳液基剤は、就寝前の時間帯(例えば、22:00~24:00)に化粧品の提供の処理が実行される場合に吐出される。つまり、カートリッジCA1に収容された乳液基剤は、夜用の乳液として使用されるものである。夜用の乳液は、就寝前の使用に適した成分を含む。
カートリッジCA3~CA5に収容された美容液基剤は、レシピ情報に基づいて吐出される。
【0129】
(5-5)変形例5
変形例5は、カートリッジCAに、メーキャップに使用する製剤が収容される例である。
第1例として、カートリッジCA1には、光沢の弱い質感(いわゆる、マットな質感)を与える基剤が収容される。
カートリッジCA2には、光沢の強い質感(いわゆる、ツヤのある質感)を与える基剤が収容される。
カートリッジCA3には、モイスチャライザ基剤が収容される。モイスチャライザ基剤は、例えば、肌に潤いを与える成分、紫外線を防止する成分、又は、それらの成分の組合せを含む。
カートリッジCA4には、ユーザの肌色にあう色調(マンセル表色系における色相と彩度)であって、且つ、明度が高いファンデーション基剤が収容される。
カートリッジCA5には、ユーザの肌色にあう色調(マンセル表色系における色相と彩度)であって、且つ、明度が低いファンデーション基剤が収容される。
【0130】
ステップS320において、プロセッサ32は、オーナユーザIDを特定した後、特定したオーナユーザIDに関連付けられた肌ログ情報データベース(図9)を参照して、最新の肌色(例えば、「日時」フィールドの情報が最も新しい日時を示すレコードの肌色)を特定する。
プロセッサ32は、特定した肌色が所定の閾値より明るい色である場合、カートリッジCA4に収容された基剤の配合比率が高いレシピを選択する。
プロセッサ32は、特定した肌色が所定の閾値より暗い色である場合、カートリッジCA5に収容された基剤の配合比率が高いレシピを選択する。
【0131】
第2例は以下の点において第1例と異なる。
・カートリッジCA4に、ユーザの肌色にあう色調(マンセル表色系における色相、彩度、及び、明度)であって、且つ、カバーレベルが高いファンデーション基剤が収容される。
・カートリッジCA5に、ユーザの肌色にあう色調(マンセル表色系における色相、彩度、及び、明度)であって、且つ、カバーレベルが低いファンデーション基剤が収容される。
カバーレベルとは、肌のシミ及びそばかすを隠蔽する効果の大きさである。
【0132】
ステップS320において、プロセッサ32は、オーナユーザIDを特定した後、特定したオーナユーザIDに関連付けられた肌ログ情報データベース(図9)を参照して、最新の水分量(例えば、「日時」フィールドの情報が最も新しい日時を示すレコードの水分量)を特定する。
プロセッサ32は、特定した水分量が所定の閾値より高い場合、カートリッジCA4に収容された基剤の配合比率が高いレシピを選択する。あるいは、カートリッジCA3に収容されたモイスチャライザ基剤の配合比率が低いレシピを選択する。
プロセッサ32は、特定した水分量が所定の閾値以下の場合、カートリッジCA5に収容された基剤の配合比率が高いレシピを選択する。あるいは、カートリッジCA3に収容されたモイスチャライザ基剤の配合比率が高いレシピを選択する。
【0133】
(5-6)変形例6
変形例6は、カートリッジCAに収容された化粧料基剤の残量が少なくなった場合、ユーザに所定の通知を行う例である。図24は、変形例6のニアエンドの通知の処理のフローチャートである。
図25は、図24の情報処理において表示される画面例の図である。
図24に示すように、サーバ30は、ステップS322(図16)の後、ニアエンドの判定(S350)を行う。
具体的には、プロセッサ32は、ステップS322で更新したマシン情報データベース(図11)を参照して、「カートリッジ」フィールドの中から、化粧料基剤の残量値が所定の閾値以下であるカートリッジ(以下「ニアエンドカートリッジ」という)を特定する。
【0134】
サーバ30は、ニアエンドの通知(S351)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、ステップS320で特定したオーナユーザIDに関連付けられた化粧品提供アプリケーションがインストールされたクライアント装置10に対して、ニアエンド通知データを送信する。
【0135】
クライアント装置10は、ニアエンド通知データに基づいて画面表示(S150)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、画面P150をディスプレイに表示する。
【0136】
画面P150は、表示オブジェクトA150と、ボタンオブジェクトB150a~B150bと、を含む。表示オブジェクトA150は、ステップS350でニアエンドカートリッジとして特定されたカートリッジを示すメッセージを示す。
ボタンオブジェクトB150aには、ニアエンドカートリッジとして特定されたカートリッジと同種のカートリッジを購入するための購入サイトのURL(Uniform Resource Locator)が割り当てられている。ユーザがボタンオブジェクトB150aを操作すると、プロセッサ12は、ボタンオブジェクトB150aに割り当てられたURLにアクセスする。
ボタンオブジェクトB150bには、ユーザにとって推奨されるカートリッジを購入するための購入サイトのURLが割り当てられている。ユーザがボタンオブジェクトB150bを操作すると、プロセッサ12は、ボタンオブジェクトB150bに割り当てられたURLにアクセスする。
【0137】
変形例6では、サーバ30は、ニアエンドの通知(S351)に代えて、ニアエンドカートリッジとして特定されたカートリッジの購入及び配送の処理を実行してもよい。
この場合、ユーザは、一切の操作をすることなく、新しいカートリッジを受け取ることができる。
変形例6によれば、ユーザは、カートリッジの残量を気にせず、化粧品提供装置50を使用することができる。
【0138】
(5-7)変形例7
変形例7は、予測情報提供サーバ70に記憶された情報に基づいてレシピを選択する例である。図26は、変形例7の化粧品の提供の処理のフローチャートである。
図26に示すように、ステップS521(図16)の後、サーバ30は、予測情報リクエスト(S360)を実行する。
具体的には、プロセッサ32は、マシン情報データベース(図11)を参照して、レシピリクエストデータに含まれるマシンIDに関連付けられたオーナユーザIDを特定する。
予測情報提供サーバ70には、ユーザIDと、環境予測情報と、行動予測情報と、心身予測情報と、が互いに関連付けて記憶されている。
プロセッサ32は、予測情報リクエストデータを予測情報提供サーバ70に送信する。予測情報リクエストデータは、特定したオーナユーザIDを含む。
【0139】
ステップS360の後、予測情報提供サーバ70は、予測情報の特定(S760)を実行する。
具体的には、予測情報提供サーバ70は、予測情報リクエストデータに含まれるユーザIDに関連付けられた予測情報(環境予測情報、行動予測情報、及び、心身予測情報の少なくとも1つ)を特定する。
【0140】
ステップS760の後、予測情報提供サーバ70は、予測情報レスポンス(S761)を実行する。
具体的には、予測情報提供サーバ70は、予測情報レスポンスデータをサーバ30に送信する。予測情報レスポンスデータは、ステップS760で特定された予測情報を含む。
【0141】
ステップS761の後、サーバ30は、レシピの選択(S361)を実行する。
第1例として、プロセッサ32は、最新の肌スコアを特定した後、予測情報レスポンスデータに含まれる予測情報に基づいて、肌スコアを補正する。
一例として、予測情報が雨予報を示す環境予測情報である場合、プロセッサ32は、湿度が高い環境にユーザが行くことを想定して肌スコアを補正する。
別の例として、予測情報が運動を示す行動予測情報である場合、プロセッサ32は、ユーザが運動することを想定して肌スコアを補正する。
別の例として、予測情報が心身に関する心身予測情報である場合、プロセッサ32は、皮脂分泌量が多くなること(つまり、肌状態の悪化)を想定して肌スコアを補正する。
【0142】
プロセッサ32は、レシピ情報データベース(図12)を参照して、補正した肌スコアが「条件」フィールドの情報が示す範囲に含まれるレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコードのレシピID及び各化粧料基剤の使用量を特定する。
【0143】
第2例として、カートリッジCA1~CA5には、変形例5の第1例と同様の基剤が格納される。
レシピ情報データベース(図12)の「条件」フィールドには、レシピ情報を選択するときの基準となる予測情報の内容が格納される。予測情報の内容は、肌状態に影響を与えない事象を示す。
プロセッサ32は、レシピ情報データベース(図12)を参照して、「条件」フィールドの情報が予測情報と一致するレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコードのレシピID及び各化粧料基剤の使用量を特定する。
【0144】
一例として、行動予測情報が、ツヤのあるメークが好まれる行動(例えば、パーティへの参加)を示す場合、プロセッサ32は、カートリッジCA2に収容された基剤の配合比率がカートリッジCA1に収容された基剤の配合率より高いレシピを選択する。
別の例として、行動予測情報が、コンサバティブなメークが好まれる行動(ビジネスミーティングへの参加)を示す場合、プロセッサ32は、カートリッジCA1に収容された基剤の配合比率がカートリッジCA2に収容された基剤の配合率より高いレシピを選択する。
【0145】
変形例7によれば、ユーザログ情報(つまり、過去のユーザ固有の因子)及び予測情報(つまり、未来のユーザ固有の因子)の両方に適合したカスタマイズド化粧品をユーザに提供することができる。
【0146】
(5-8)変形例8
変形例8は、予測情報を更に考慮して、レシピを選択する例である。
ステップS320(図16)において、プロセッサ32は、オーナユーザIDを特定した後、処理の実行時間に応じて第1肌スコア又は第2肌スコアの何れかを特定する。例えば、処理の実行時間が6:00~8:00の場合、プロセッサ32は、最新の第1肌スコアを特定する。処理の実行時間が22:00~24:00の場合、プロセッサ32は、最新の第2肌スコアを特定する。
プロセッサ32は、レシピ情報データベース(図12)を参照して、特定した肌スコア(第1肌スコア又は第2肌スコア)が「条件」フィールドの情報が示す範囲に含まれるレコードを特定する。
プロセッサ32は、特定したレコードのレシピID及び各化粧料基剤の使用量を特定する。
【0147】
変形例8によれば、ユーザが化粧品提供装置50を使用する時間に応じて、レシピの選択のために参照する肌スコアを切り替える。特に、起床後は過去のユーザ固有情報に基づく第1肌スコアを参照してレシピを選択する。就寝前は過去のユーザ固有情報及び未来のユーザ固有情報に基づく第2肌スコアを参照してレシピを選択する。
これにより、ユーザの生活習慣に適合したカスタマイズド化粧品を提供することができる。
【0148】
(5-9)変形例9
変形例9は、化粧品提供装置50が提供する化粧品の量をユーザ毎に調整する例である。
ユーザ情報データベース(図5)には、更に、化粧品を塗布すべき部位(例えば、顔)のサイズを示すサイズ情報が格納されている。サイズ情報は、ユーザ指示に基づいて決定してもよいし、当該部位の画像から推定してもよい。
【0149】
ステップS321(図16)において、サーバ30は、ステップS320で特定したオーナユーザIDに関連付けられたサイズ情報を特定する。
サーバ30は、レシピレスポンスデータを化粧品提供装置50に送信する。
レシピレスポンスデータは、以下の情報を含む。
・ステップS320で特定されたレシピID
・ステップS320で特定された各化粧料基剤の使用量
・特定されたサイズ情報
【0150】
ステップS523において、化粧品提供装置50は、レシピレスンポンスデータに含まれるサイズ情報に基づいて、提供すべき化粧料基剤の使用量を決定する。
具体的には、プロセッサ52は、サイズ情報に基づいて、化粧料基剤の使用量を決定する。
プロセッサ52は、決定した使用量の分だけ、各カートリッジCA1~CA5に収容された化粧料基剤が吐出されるように、各カートリッジCA1~CA5を制御する。
化粧料基剤の使用量は、カートリッジCA1~CA5のそれぞれの吐出量とすることもできるし、カートリッジCA1~CA5から吐出される化粧料基剤の合計量とすることもできる。
変形例9によれば、ユーザに合わせた量のカスタマイズド化粧品を提供することができる。
【0151】
(6)上記実施形態の小括
上記実施形態の第1態様は、複数の化粧料基剤のそれぞれの使用量を示すレシピ情報(図12)に基づいて複数の化粧料基剤の少なくとも1つを提供する化粧品提供装置50と通信可能な情報処理装置(例えば、サーバ30)であって、
ユーザに固有のユーザ固有情報(図5図10の少なくとも1つ)を取得する手段(例えば、ステップS320の処理を実行するプロセッサ32)を備え、
ユーザ固有情報は、ユーザの属性に関するユーザ属性情報、ユーザの環境に関する環境情報、ユーザの行動に関する行動情報、ユーザの心身に関する心身情報、及び、ユーザの肌に関する肌情報、ユーザが使用している化粧品に関する情報の少なくとも1つを含み、
複数のレシピ情報の中から、ユーザ固有情報に基づくレシピ情報を選択する手段(例えば、ステップS320の処理を実行するプロセッサ32)を備え、
選択されたレシピ情報を化粧品提供装置50に送信する手段(例えば、ステップS321の処理を実行するプロセッサ32)を備える、情報処理装置である。
この第1態様によれば、ユーザ固有の因子に適合したカスタマイズド化粧品を提供することができる。
特に、ユーザ属性、ユーザの環境、ユーザの行動、ユーザの心身、ユーザの肌、及び、ユーザが使用している化粧品の少なくとも1つに適合したカスタマイズド化粧品を提供することができる。
【0152】
上記実施形態の第2態様では、ユーザ属性情報は、ユーザの年齢、性別、及び、住所の少なくとも1つを示す情報を含む。
【0153】
上記実施形態の第3態様では、環境情報は、ユーザの環境の温度、湿度、及び、紫外線曝露量の少なくとも1つを示す情報を含む。
【0154】
上記実施形態の第4態様では、行動情報は、ユーザの食事、運動、及び、睡眠、消費エネルギ、及び、位置の少なくとも1つを示す情報を含む。
【0155】
上記実施形態の第5態様では、心身情報は、ユーザの脈拍値、性周期、ストレスの指標、及び、マインドフルネスの指標、身長、体重、体脂肪、肌の保湿のレベル、肌のしわのレベル、及び、肌のシミのレベルの少なくとも1つを示す情報を含む。
【0156】
上記実施形態の第6態様では、レシピ情報は、各カートリッジに収容された化粧料基剤の使用量、又は、配合比率を示す情報を含む。
【0157】
上記実施形態の第7態様では、ユーザ固有情報は、ユーザ固有情報の履歴を示すユーザログ情報(図6図10)を含む。
【0158】
上記実施形態の第8態様では、化粧料基剤を収容するカートリッジCAに関するカートリッジ情報と、化粧品提供装置50を識別するマシンIDとを関連付けて記憶する手段(例えば、ステップS341の処理を実行するプロセッサ32)を備える。
【0159】
上記実施形態の第8態様によれば、サーバ30は、化粧品提供装置50にセットされたカートリッジCAの情報(図11)を管理することができる。
【0160】
上記実施形態の第9態様では、カートリッジ情報は、カートリッジに収容された化粧料基剤の残量を示す情報(図11)を含む。
【0161】
上記実施形態の第9態様によれば、サーバ30は、化粧品提供装置50にセットされたカートリッジCAに収容された化粧料基剤の残量を管理することができる。
【0162】
上記実施形態の第10態様は、情報処理装置(例えば、サーバ30)と通信可能な化粧品提供装置50であって、
複数のカートリッジスロット50aa~50aeを備え、
各カートリッジスロット50aa~50aeは、化粧料基剤を収容するカートリッジCAを着脱可能に保持し、
情報処理装置(例えば、サーバ30)から送信されたレシピ情報に基づいて、複数のカートリッジスロット50aa~50aeに保持された各カートリッジCAに収容された化粧料基剤を吐出することによって、レシピ情報に基づくカスタマイズド化粧品を提供する手段(例えば、ステップS522の処理を実行するプロセッサ52)を備える、化粧品提供装置50である。
【0163】
上記実施形態の第11態様では、提供する手段は、レシピ情報に基づいて、各カートリッジCAに収容された化粧料基剤を吐出する。
【0164】
上記実施形態の第12態様では、提供する手段は、レシピ情報に基づいて、複数のカートリッジに収容された化粧料基剤を混合して吐出する。
【0165】
上記実施形態の第13態様では、カートリッジスロット50aa~50aeに保持されたカートリッジCAに関するカートリッジ情報を情報処理装置(例えば、サーバ30)に送信する手段(例えば、ステップS523の処理を実行するプロセッサ52)を備える。
【0166】
上記実施形態の第14態様では、カートリッジ情報は、カートリッジCAに収容された化粧料基剤の残量を示す情報を含む。
【0167】
(7)その他の変形例
記憶装置11は、ネットワークNWを介して、クライアント装置10と接続されてもよい。記憶装置31は、ネットワークNWを介して、サーバ30と接続されてもよい。記憶装置51は、ネットワークNWを介して、化粧品提供装置50と接続されてもよい。
【0168】
上記の情報処理の各ステップは、クライアント装置10、サーバ30、及び、化粧品提供装置50の何れでも実行可能である。
レシピ情報データベース(図12)は、「使用量」フィールドに代えて、「配合比率」フィールドを含んでもよい。
「配合比率」フィールドには、各カートリッジCA1~CA5に収容された化粧料基剤の配合比率を示す情報が格納される。
【0169】
ステップS523(図16)において、プロセッサ52は、配合比率を示す情報に基づく割合で、吐き出される化粧料基剤の合計量が一定量になるように、各カートリッジCA1~CA5に収容された化粧料基剤を吐出する。
この例は、変形例5のように、カートリッジCAに、メーキャップに使用する基剤が収容される場合に特に好ましい。
【0170】
サーバ30は、ウェアラブルデバイス90以外の装置(例えば、外部サーバ)から、ユーザログ情報(環境ログ情報、行動ログ情報、及び、心身ログ情報の少なくとも1つ)を取得してもよい。この場合、外部サーバには、ユーザIDとユーザログ情報とが関連付けて記憶されている。
【0171】
心身ログ情報は、更に、以下の情報を含んでもよい。
・ユーザの身長・ユーザの体重
・ユーザの体脂肪
【0172】
肌ログ情報は、更に、以下の情報を含んでもよい。
・肌の保湿レベルを示す情報
・肌のしわのレベルを示す情報
・肌のシミのレベルを示す情報
【0173】
サーバ30は、更に、以下の少なくとも1つに基づいてレシピを選択してもよい。
・ユーザ属性情報(図5)・使用化粧品ID(図5
・問診(図5
【0174】
図9の肌ログ情報データベースには、「肌色」フィールド、「水分量」フィールド、及び、「皮脂量」フィールドには、計測装置により測定された測定値が格納されてもよい。
【0175】
以上詳細に述べたような情報処理システム等を用いて、ユーザ固有情報に基づいてカスタマイズされた化粧品は、例えば、図2Aに示した化粧品提供装置の吐出口50baからユーザに提供される。図2Aの例では、吐出口50baにユーザが手を差し入れることにより、手の上に化粧料基剤が吐出される。
【0176】
具体的な吐出の態様としては、各カートリッジに収容された化粧料基剤が、各カートリッジに接続された複数の吐出口(ノズル等)から各化粧料基剤が別々に吐出される態様、各カートリッジから吐出口まで化粧料基剤を輸送する管状部材を装置内(例えば吐出口の近傍)で連通させ、混合された化粧料基剤が1つの吐出口から吐出される態様がある。あるいは、情報処理システムから取得したレシピ情報に従って、ユーザが各カートリッジから所定の化粧料基剤を所定量採取して自ら混合する態様も可能である。
【0177】
前記いずれの態様においても、ユーザは、最終的に、化粧料基剤又は基剤混合物を手の上で適宜混ぜ合わせて使用することになる。その際、化粧料基剤が互いに混ざり難いと、そのことがユーザの感情に影響を及ぼすことがある。即ち、その日その時のユーザに適した組成の化粧料基剤が提供されても、当該基剤を混合する際にユーザのストレス指標が変化することにより、当該化粧品が使用時のユーザの感情に適合しなくなる場合もある。従って、カスタマイズド化粧品を構成する化粧料基剤、即ち、上記のカートリッジCA1~CA5に収容される化粧料基剤は、互いに良好に混合できるように調製することが重要である。
【0178】
本発明に係る化粧料キットは、複数の化粧料基剤を含み、当該化粧料基剤が互いに混合し易い。従って、ユーザはストレスを感じることなく基剤を混合して、カスタマイズド化粧品を使用できる。
【0179】
本発明では、基剤の混ざり易さを表す新たな指標を設定し、当該指標に基づく条件を満たす基剤を混ざりやすい(均質化しやすい)と定義する。
具体的には、少なくとも2種類の基剤を充填した容器を所定速度で回転させながら前記容器内の混合物の吸光度を測定したとき、前記吸光度の単位時間当たりの変化率が±5%以下となるまでの時間をパラメータとし、その値が35分以内であるか否かを、基剤が互いに混ざりやすい(均質化しやすい)か否かの指標とする。
【0180】
前記の指標は、例えば、以下のようにして測定することができる。
ABB社製の近赤外測定装置(MB3600)へ拡散反射測定アクセサリー(ACC101)を取り付ける。
スクリュー管(20ml)に合計で8gを充填した基剤サンプルを、前記ACC101に付属された回転装置に設置し、3RPMにて回転させながら、スクリュー管内の基剤サンプルの近赤外線吸収を測定する。測定は、波数領域:4000~10000K(K=cm-1)、分解能:8K、スキャン回数:16回の測定条件にて実施した。
【0181】
1回の測定で得られる4000~10000Kの吸光度曲線をf(K)としたとき、1回の測定に対する吸光度の積算値(A)は下記の式(1)で表される。
【数1】
【0182】
上記の回転を継続しながら30秒に1回の頻度で測定を実施する。n回目の測定における吸光度の積分値(式(1))を「An」とすると、n回目の測定とn+1回目の測定における吸光度の積分値の変化率(Rn)は以下の式で表される。
【数2】
【0183】
本発明では、前記の変化率(Rn)が少なくとも2回連続して95%~105%(100%±5%)の範囲に入るまでに要する時間(T)を混ざり易さの指標とする。即ち、RnとRn+1が初めて連続して95~105%の範囲内となったときは、n回目の測定までの時間(T)が指標となる。
実際に、Rnが95%<R<105%となった混合物は外観上も均質となっており、Rnが100%±5%の範囲に入らない混合物は目視観察でも不均質であることが確認された。
【0184】
本発明の化粧料キットは、複数の化粧料基剤を含んでおり、当該各化粧料基剤を少なくとも2種混合させるときに測定した上記の時間(T)が35分以内、好ましくは30分以内である。このような条件を満たすように調製された化粧料基剤は、ユーザが容易にストレスなく混ぜ合わせることが可能である。
【0185】
なお、上記の手法、即ち、近赤外線測定を利用した均質化の判定方法は、本発明における化粧料基剤以外の任意の物質の混ざりやすさの判定に応用することができる。
即ち、少なくとも2種類の物質の混ざり易さを判定する方法であって、前記少なくとも2種類の物質を同一の容器に収容し、適宜撹拌しながら前記物質の近赤外線測定を実施し、n回目の測定において初めて、吸光度(An)に対する前回の測定における吸光度(An-1)の変化率[(An/An-1)×100]が95%から105%となり、なおかつ次回の測定における吸光度(An+1)に対する変化率[(An+1/An)×100]が95%から105%となった場合、n-1回目の測定までに要した時間(T)を指標とする判定方法として使用できる。
【0186】
前記の撹拌を実施する方法としては、例えば、物質を収容した容器の回転、振動、揺動、あるいは容器内に設けた撹拌子での撹拌等がある。判定される物質としては、液体に限られず、流動性のある粉体であってもよい。また、撹拌と同時に容器内の物質を加熱することも可能であり、それにより、熱可塑性物質やワックス等の常温で固体の物質の混合し易さも判定できる。
【0187】
吸光度を測定する波長範囲は、近赤外線の波長範囲(750nm~2500nm)であれば特に限定されない。
「混ざり易さ」の指標となる時間(T)は、要求される混合状態に応じて任意に設定できる。液状の物質間の混ざり易さについては、例えば60分、50分、40分、あるいは30分程度を混ざり易さの閾値とすることが可能である。
【0188】
本発明の化粧料キットに含まれる化粧料基剤は、前記の「混ざりやすさ」に加えて、基剤を混合して調製されるカスタマイズド化粧料の合計量が所定範囲内になるように設定するのが好ましい。これは、最終的なカスタマイズド化粧品の量が使用感に影響を与える可能性があることによる。
【0189】
即ち、互いに混ざりやすい基剤を混合して調製する場合であっても、その合計量が0.3ml未満あるいは1.35mlを超える量であると、得られたカスタマイズド化粧品の使用感が低下する場合がある。主に顔用に調製されるカスタマイズド化粧品の場合には、前記範囲内の量となるようにするのが好ましい。
【0190】
カスタマイズド化粧品の合計量を所定範囲内に制御することは、例えば、上記したような情報処理システムを使用する場合には、前記の変形例9におけるように、吐出される化粧料基剤の合計量を予め設定しておくことにより容易に実施することができる。
【0191】
以上のように、複数の化粧料基剤を含み、当該各基剤が独自の特性を有し、なおかつ互いに混ざりやすいという特徴を有する本発明の化粧料キットは、ユーザ固有情報に基づいたレシピ情報に従ってカスタマイズド化粧料を調製するシステムで使用するのに特に適している。
【0192】
本発明の化粧料キットに含まれる化粧料基剤は、水性、油性、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、多重エマルジョン等の形態をとることができる。各基剤は、その形態に応じて好ましい配合成分が含まれる。それらの基剤を混合して得られる化粧品は、最終的な配合成分の種類や量(又は配合比率)によって使用感が変化し、それに伴い肌に塗布した際にユーザに与える心理的効果も変化する。よって、ユーザ固有情報に基づいて選択されるレシピ情報に従って調製されたカスタマイズド化粧品は、その日その時のユーザに適した化粧品として機能する。
【0193】
本発明の化粧料キットにおいて、各化粧料基剤は別々の容器に収容されて提供するのが好ましい。より好ましくは、各化粧料基剤は、前記したような化粧品提供装置のスロットに保持可能なカートリッジに収容して提供する。
【0194】
化粧料基剤を混合して調製される化粧品においては、配合されている増粘剤の種類によって使用感が変化する場合がある。さらに、同一の増粘剤を配合した基剤同士は混合しやすく、異なる増粘剤を含む基剤は混合し難い傾向があると考えられている。
しかしながら本発明では、近赤外線を用いた判定方法を利用して混ざり易さの指標(T)が35分以内となるように各基剤が調製されているので、例えば、第1の基剤と第2の基剤に配合する増粘剤を異なるものとしても、混合して得られるカスタマイズド化粧料は優れた使用性を有している。
【0195】
従って、本発明の化粧料キットは、複数の基剤を備え、その中の第1の基剤は第1の増粘剤を含有し、第2の基剤は第2の増粘剤を含有し、かつ前記第1の増粘剤と前記第2の増粘剤とが異なる物質からなるという態様を含む。このような態様とすることにより、各基剤に応じた独特の使用感をユーザに与えることができる。
【0196】
本発明の基剤に配合される増粘剤は、化粧品に通常使用されているものであればよく、特に限定されない。例えば、アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、ジェランガム、カラギーナン、クインスシード(マルメロ)等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、カゼインナトリウム、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテート共重合物、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アルカノールアミン、アルキルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレート共重合物、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウム等のアクリル系高子等が挙げられる。
【0197】
また、増粘剤に加えて、配合する界面活性剤も基剤の使用感に影響を与えることがある。従って、本発明の各基剤に配合する増粘剤と界面活性剤との組み合わせを特定するのが好ましい場合もある。本発明で使用しうる界面活性剤は特に限定されず、以下に例示するものから選択することができる。
【0198】
親油性非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタンの脂肪酸エステル類、グリセリンモノステアレート、グリセリンオレエートピログルタメート、グリセリンモノステアレートのリンゴ酸エステル等のグリセリン又はポリグリセリンの脂肪酸エステル類、プロピレングリコールモノステアレート等のプロピレングリコールの脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0199】
親水性非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビットモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビットの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアレート等のポリオキシエチレングリセリンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2-オクチルドデシル)エーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等のポリオキシエチレンのアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンのアルキルフェニルエーテル類、プルロニック等のプルロニック型界面活性剤、(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)セチルエーテル、(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)2-デシルテトラデシルエーテル、(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)ブチルエーテル、水添ラノリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンとグリセリンのエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのアルキルエーテル類、テトロニック等のポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンとエチレンジアミンの縮合物類、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノピログルタメートモノイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレエート等のポリオキシエチレンヒマシ油又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、ポリオキシエチレンプロピレングリコールの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンのアルキルアミン類、ポリオキシエチレンの脂肪酸アミド、ショ糖の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェノールとホルムアルデヒドの縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0200】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸とトリエタノールアミンの塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステルの塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等の高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム等のN-アシルグルタミン酸、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステルの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステルの塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステルの塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸、ジトリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸コラーゲン加水分解アルカリ塩等が挙げられる。
【0201】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル4級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミンの脂肪酸誘導体、アミルアルコ-ルの脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、カチオンポリマー、アクリル酸β-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニオエチル塩化ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0202】
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N,N-トリス(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチルオキシジナトリウム等のイミダゾリン系両性界面活性剤、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。
【0203】
各基剤の特性に応じた増粘剤と界面活性剤の組み合わせとして、例えば、「(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー」(増粘剤)と「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー」(界面活性剤)との組み合わせ、「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」(増粘剤)と「直鎖ポリエーテル変性シリコーン」(界面活性剤)との組み合わせ、「カルボマー」(増粘剤)と「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」(界面活性剤)との組み合わせ等を好ましい例として挙げることができるが、これらに限定されない。増粘剤が互いに異なる本発明の第1の基剤及び第2の基剤の各々に配合する増粘剤と界面活性剤との組み合わせとして、上記の組み合わせの例から2種類を選択してもよいし、別の組み合わせを採用してもよい。
【0204】
本発明の基剤には、上記の増粘剤及び界面活性剤以外に、各基剤が意図する特性等に基づいて、化粧品に通常用いられ得る他の成分、例えば、保湿剤、油分(シリコーン油、炭化水素油、エステル油などを含む)、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、各種薬剤、酸化防止剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合できる。
【0205】
各基剤には、各々の目的(意図する特性)に応じて、抗酸化剤、抗しわ剤、美白剤、肌荒れ改善剤等の薬剤を少なくとも1種配合するのが好ましい。
【0206】
薬剤としては、例えば、L-アスコルビン酸およびその誘導体の塩、トラネキサム酸およびその誘導体の塩、アルコキシサリチル酸およびその誘導体の塩、グルタチオンおよびその誘導体の塩などが挙げられる。より具体的には以下の通りである。
L-アスコルビン酸誘導体としては、L-アスコルビン酸モノステアレート、L-アスコルビン酸モノパルミテート、L-アスコルビン酸モノオレートなどのL-アスコルビン酸モノアルキルエステル類;L-アスコルビン酸モノリン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルなどのL-アスコルビン酸モノエステル類;L-アスコルビン酸ジステアレート、L-アスコルビン酸ジパルミテート、L-アスコルビン酸ジオレートなどのL-アスコルビン酸ジアルキルエステル類;L-アスコルビン酸トリステアレート、L-アスコルビン酸トリパルミテート、L-アスコルビン酸トリオレートなどのL-アスコルビン酸トリアルキルエステル類;L-アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのL-アスコルビン酸トリエステル類;L-アスコルビン酸2-グルコシドなどのL-アスコルビン酸グルコシド類などが挙げられる。
【0207】
トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体、(例えば、塩酸トランス-4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’-ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2-(トランス-4-アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)-5-ヒドロキシ安息香酸、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミド、トランス-4-(p-メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、トランス-4-グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)などが挙げられる。
【0208】
アルコキシサリチル酸は、サリチル酸の3位、4位または5位のいずれかの水素原子がアルコキシ基にて置換されたものであり、置換基であるアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基のいずれかであり、さらに好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。具体的に化合物名を例示すれば、3-メトキシサリチル酸、3-エトキシサリチル酸、4-メトキシサリチル酸、4-エトキシサリチル酸、4-プロポキシサリチル酸、4-イソプロポキシサリチル酸、4-ブトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸、5-エトキシサリチル酸、5-プロポキシサリチル酸などが挙げられる。
【0209】
上記薬剤の塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩のほか、アンモニウム塩、アミノ酸塩等の塩が挙げられる。
【0210】
また、ビタミンA、ビタミンAパルミテート、ビタミンAアセテート等のビタミンA誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、アルブチン、セファランチン等の各種薬剤、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、オウゴン、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サクラリーフ等の植物の抽出物、β-カロチン等の色素等も薬剤の例として挙げることができる。
【実施例0211】
以下に実施例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り全量に対する質量%である。
【0212】
下記の表1~4に示す処方の基剤を調製した。実施例1(表1)を第1の基剤、実施例2(表2)を第2の基剤、実施例3(表3)を第3の基剤、比較例1(表4)を第4の基剤とする。これらの基剤を、図4に記載した化粧品提供装置の4つのカートリッジに別々に収容し、プロセッサを介して所定量吐出させることにより化粧品を製造した。
【0213】
【表1】
【0214】
【表2】
【0215】
【表3】
【0216】
【表4】
【0217】
実施例1~3及び比較例1の基剤を用いて、合計量が8gとなるように、以下の表5に示す比率で混合した際の混ざりやすさ(均質化に要する時間:T)を段落0180~0184に記載した方法で測定し、得られた混合物(カスタマイズド化粧品)の使用感(のびの重さ、なじみの早さ、べたつき)を専門パネルが評価した。
使用感の評価基準は次の通りである。
A:使用感に優れていると評価した専門パネルが8名中4名以上
B:使用性に優れていると評価した専門パネルが8名中3名以下
【0218】
【表5】
【0219】
表5に示すように、基剤が互いに混ざりやすく、段落0180~0184に記載した方法で測定した均質化に要する時間(T)が35分以内である場合は、混合して得られた化粧品は使用性に優れている。一方、混ざりにくい基剤の組み合わせ(均質化に要する時間が120分)の試料3では、得られた化粧品の使用性が不十分であった。
【0220】
基剤を混合して化粧品を調製する際、その合計量による使用性の変化を確認した。結果を表6に示す。
なお、混合する基剤としては、実施例1、実施例2及び実施例3の基剤を使用し、それらから選択した2種又は3種を複数の比率で混合したが、合計量が同一であれば同様の使用性を示した。即ち、特に顔用の化粧品においては、優れた使用性が確認された合計量範囲(0.3~1.35mlの範囲)とするのが好ましい。
【0221】
【表6】
【0222】
以下に、本発明のキットに使用するのに適した化粧料基剤の処方の一例を示す。
【表7】
【符号の説明】
【0223】
1:情報処理システム
10:クライアント装置
11:記憶装置
12:プロセッサ
13:入出力インタフェース
14:通信インタフェース
15:GPSモジュール
16:カメラ
30:サーバ
31:記憶装置
32:プロセッサ
33:入出力インタフェース
34:通信インタフェース
50:化粧品提供装置
51:記憶装置
52:プロセッサ
53:入出力インタフェース
54:通信インタフェース
55:ミキサ
56:ヒータ
70:予測情報提供サーバ
90:ウェアラブルデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図26
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器に各々収容された複数の化粧料基剤を含み、ユーザ固有情報に基づいて決定されたレシピ情報に従って前記複数の化粧料基剤を混合して調製されるカスタマイズド化粧品に使用するための化粧料キットの製造方法であって、
前記複数の化粧料基剤から選択される少なくとも2種類の化粧料基剤の混合物を収容した容器を所定速度で回転させながら同容器内の前記混合物の近赤外線吸光度測定を所定時間間隔で実施し、n回目の測定において初めて、n回目の測定の吸光度と前回(n-1回目)の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%であり、なおかつ次回(n+1)回目の測定の吸光度に対する変化率が100%±5%となるn回目の測定、までに要する時間(T)が35分以内となる処方で前記複数の化粧料基剤を調製し、
前記複数の化粧料基剤の各々を前記複数の容器に各々収容することを含む、化粧料キットの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも2種類の化粧料基剤が、前記レシピ情報に従って選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ユーザ固有情報は、ユーザの属性に関するユーザ属性情報、ユーザの環境に関する環境情報、ユーザの行動に関する行動情報、ユーザの心身に関する心身情報、及び、ユーザの肌に関する肌情報、ユーザが使用している化粧品に関する情報の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記レシピ情報が、各化粧料基剤の使用量、配合比率および/または合計量を示す、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記吸光度が、波数4000~10000Kの近赤外線に対する吸光度の積算値である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記容器の回転速度が3PRMであり、近赤外線吸光度測定の間隔が30秒である、請求項1又は2に記載の製造方法。