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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010342
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】足場用昇降機
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20230113BHJP
   E04G 5/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G5/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114416
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】595099317
【氏名又は名称】株式会社トーテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】浅井 克則
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA00
2E174BA00
2E174CA03
2E174CA16
2E174EA03
(57)【要約】
【課題】工事等に用いられる足場用の昇降機であって、足場への設置、延長及び解体を容易とすると共に、二つのブレーキ機構を備え安全性を高めた足場用昇降機を提供する。
【解決手段】足場支柱に対し垂直に取付けられる縦長方形状の走行レールと、走行レールの上端部近傍に設けられるウィンチ用ブラケットと、走行レールに挿通されウィンチ用ブラケットに取付けられたウィンチにより上下に移動自在とした走行ガイドと、走行ガイドに一体となるように固定されると共に上下二段に荷を収納可能とする籠状の荷台と、を備え、走行ガイドは、走行レールにブレーキプレートを当接させ摩擦を生じさせることで荷台の落下を防止する第一ブレーキ機構と、ウィンチからの上方へ吊上げる力が弱まることで走行レールから地面と水平方向に延設された腕木に当接させ荷台の落下を防止する第二ブレーキ機構と、を備えたことにより課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築現場等に用いる足場に設置することで荷の揚げ降ろしを行うことができる足場用昇降機であって、
足場支柱に対し垂直に取付けられる縦長方形状の走行レールと、
前記走行レールの上端部近傍に設けられるウィンチ用ブラケットと、
前記走行レールに挿通され前記ウィンチ用ブラケットに取付けられたウィンチにより上下に移動自在とした走行ガイドと、
前記走行ガイドに一体となるように固定されると共に上下二段に荷を収納可能とする籠状の荷台と、
を備え、
前記走行ガイドは、前記走行レールにブレーキプレートを当接させ摩擦を生じさせることで前記荷台の落下を防止する第一ブレーキ機構と、
前記ウィンチからの上方へ吊上げる力が弱まることで前記走行レールから地面と水平方向に延設された腕木に当接させ前記荷台の落下を防止する第二ブレーキ機構と、
を有することを特徴とする足場用昇降機。
【請求項2】
前記荷台は、それぞれ上部を開口した上収納部と下収納部とから構成され、
前記上収納部の底板のいずれか一辺を軸として上方へ跳ね上げ固定することにより、
前記下収納部の上部開口と前記上収納部の底部を連通させることで、前記上収納部と前記下収納部を一体とした一つの大きな籠状の荷台を形成することができることを特徴とする請求項1に記載の足場用昇降機。
【請求項3】
くさび式足場のくさび部分に上方より挿入し取付けられる滑車用金具と、
前記滑車用金具に設けた滑車取付け孔に吊下げられる滑車と、により、
前記ウィンチ用ブラケットを前記走行レールの上端部近傍まで容易に揚げることを可能とする請求項1又は請求項2に記載の足場用昇降機。
【請求項4】
前記ウィンチ用ブラケットは、前記走行レールを挿通する基台部と、
前記基台部に足場側への回動を可能にする枢軸を介して設けられるウィンチ吊下げ具と、
前記ウィンチ吊下げ具の回動を防止し固定させるための係止金具と、
を備えると共に、
前記係止金具を外し前記ウィンチ吊下げ具を足場側へ回動させることにより足場上において前記ウィンチの着脱を容易とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の足場用昇降機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場等に用いる足場に設置することで荷の揚げ降ろしを行うことができる足場用昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場での資材等の荷の揚げ降ろしを行う際に、現場に組まれた足場(足場支柱)と垂直方向に平行に立設した走行レールを、電動ウィンチ等を動力とし昇降自在とした足場用昇降機が用いられている。
【0003】
このような足場昇降機は、工事現場で進捗に合わせて荷揚げの高さが変更されるため足場への設置と組み換えが容易であること、落下防止のための安全への対策が取られていることが必要である。
【0004】
そこで、足場用の昇降機の技術として、例えば、特許文献1には、足場の支柱にレール固定片を用いて設置されるレールとレールの上部に設けチェーンブロックを取付けるハンガー部材と該チェーンブロックにより上下に昇降可能としたスライド部材とスライド部材に取り付けられる荷台とからなる資材搬送リフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-152467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の資材搬送リフトは、上下に延びた一本のレール部材を足場に固定するだけで簡単に足場に設置でき、多様な足場形状に対応することができる。また、ハンガー部材に固定片と当接する保持板からなる落下防止機構と同じく固定片と当接する棒状のロック部材とを併用することでより安全性の高い資材搬送リフトとしている。
【0007】
しかしながら、保持板からなる落下防止機構とロック部材とは、ともにハンガー部材が落下することを防止するものであって安全に機能するものの、荷台そのものはチェーンブロックにより昇降と停止とを制御しており荷台が落下する虞については考慮されていない。
【0008】
本発明では、かかる課題を解消すべく、ウィンチにより上下に移動自在とした走行ガイドに二重の落下防止機構を有し、足場への取付けが容易な足場用昇降機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、足場支柱に対し垂直に取付けられる縦長方形状の走行レールと、走行レールの上端部近傍に設けられるウィンチ用ブラケットと、走行レールに挿通されウィンチ用ブラケットに取付けられたウィンチにより上下に移動自在とした走行ガイドと、走行ガイドに一体となるように固定されると共に上下二段に荷を収納可能とする籠状の荷台と、を備え、走行ガイドは、走行レールにブレーキプレートを当接させ摩擦を生じさせることで荷台の落下を防止する第一ブレーキ機構と、ウィンチからの上方へ吊上げる力が弱まることで走行レールから地面と水平方向に延設された腕木に当接させ荷台の落下を防止する第二ブレーキ機構と、を備えたことを特徴とした。
【0010】
また、荷台は、それぞれ上部を開口した上収納部と下収納部とから構成され、上収納部の底板のいずれか一辺を軸として上方へ跳ね上げ固定することにより、下収納部の上部開口と上収納部の底部を連通させることで、上収納部と下収納部を一体とした一つの大きな籠状の荷台を形成することができることにも特徴を有する。
【0011】
また、くさび式足場のくさび部分に上方より挿入し取付けられる滑車用金具と、滑車用金具に設けた滑車取付け孔に吊下げられる滑車と、により、ウィンチ用ブラケットを走行レールの上端部近傍まで容易に揚げることを可能としたことにも特徴を有する。
【0012】
また、ウィンチ用ブラケットは走行レールを挿通する基台部と、基台部に足場側への回動を可能にする枢軸を介して設けられるウィンチ吊下げ具と、ウィンチ吊下げ具の回動を防止し固定させるための係止金具と、を備えると共に、係止金具を外しウィンチ吊下げ具を足場側へ回動させることにより足場上においてウィンチの着脱を容易とすることにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の足場用昇降機によれば、足場支柱に走行レールを取付けることで設置が容易である。さらに、走行レールに挿通された荷台を一体とし昇降させる走行ガイドに二つの落下防止機構を備えることで、万が一ウィンチに問題が生じても荷台が足場上方から地面まで落下することなくより安全に荷の揚げ降ろしを行うことができる。
【0014】
また、落下防止機構を二つ備えたことで、第一落下防止機構のみでは停止できなかった荷台を第二落下防止機構と併用することでより確実に荷台の落下を停止し、より安全性を高めることができる。
【0015】
請求項2に記載の足場用昇降機によれば、上下二段に分かれる収納部を容易に一つの大きな収納部へ変更可能にすると共に、揚げ降ろしする荷に合わせて荷台を上下二段又は一つの大きな収納部と選択することができ荷の揚げ降ろしの効率を上げることができる。
【0016】
請求項3に記載の足場用昇降機によれば、足場に設置された走行レールよりも上方位置に滑車用金具をくさび式足場のくさび部分に取付け、滑車用金物に吊下げた滑車によりウィンチ用ブラケットを引き上げることにより、ウィンチ用ブラケットを容易に走行レールの上端部近傍まで運び上げることができることで、より足場用昇降機の設置を容易とすることができる。
【0017】
請求項4に記載の足場用昇降機によれば、従来ウィンチ用ブラケットにウィンチを取付ける際に作業員は足場外側へ身を乗り出して取付け作業を行っていたが、足場側へウィンチ吊下げ具を回動させることができるため、安全にウィンチを取付けることができると共に、走行中は係止金物によりウィンチ吊下げ具が回動しないよう固定することで安定した走行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る足場用昇降機全体を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るウィンチ用ブラケットを示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るウィンチ用ブラケットを示す平面図及び側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るウィンチ用ブラケットの掛け金具の動きを示す模式的説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る走行ガイドを示す斜視図及び詳細図である。
図6】本発明の一実施形態に係る走行ガイドを示す分解図である。
図7】本発明の一実施形態に係るブレーキ機構の動きを示す模式的説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係る荷台を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係る荷台の開閉状態、及び、上下二段に分かれる収納部を一体に形成した状態を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の要旨は、足場支柱に対し垂直に取付けられる縦長方形状の走行レールと、走行レールの上端部近傍に設けられるウィンチ用ブラケットと、走行レールに挿通されウィンチ用ブラケットに取付けられたウィンチにより上下に移動自在とした走行ガイドと、走行ガイドに一体となるように固定されると共に上下二段に荷を収納可能とする籠状の荷台と、を備え、走行ガイドは、走行レールにブレーキプレートを当接させ摩擦を生じさせることで荷台の落下を防止する第一ブレーキ機構と、ウィンチからの上方へ吊上げる力が弱まることで走行レールから地面と水平方向に延設された腕木に当接させ荷台の落下を防止する第二ブレーキ機構と、を備えたことにある。
【0020】
また、荷台は、それぞれ上部を開口した上収納部と下収納部とから構成され、上収納部の底板のいずれか一辺を軸として上方へ跳ね上げ固定することにより、下収納部の上部開口と上収納部の底部を連通させることで、上収納部と下収納部を一体とした一つの大きな籠状の荷台を形成することができることにも特徴を有する。
【0021】
また、くさび式足場のくさび部分に上方より挿入し取付けられる滑車用金具と、滑車用金具に設けた滑車取付け孔に吊下げられる滑車と、により、ウィンチ用ブラケットを走行レールの上端部近傍まで容易に揚げることを可能としたことにも特徴を有する。
【0022】
また、ウィンチ用ブラケットは走行レールを挿通する基台部と、基台部に足場側への回動を可能にする枢軸を介して設けられるウィンチ吊下げ具と、ウィンチ吊下げ具の回動を防止し固定させるための係止金具と、を備えると共に、係止金具を外しウィンチ吊下げ具を足場側へ回動させることにより足場上においてウィンチの着脱を容易とすることにも特徴を有する。
【0023】
[1.足場昇降機の構成について]
以下、本実施形態に係る足場用昇降機の構成について図面に基づいて説明する。なお、発明を実施するための形態として、本発明に係る足場用昇降機を、くさび式足場に設置する場合を一例として説明する。ただし、本発明に係る足場用昇降機の設置対象は、くさび式足場に限らず、単管式足場や枠組み足場であってもよい。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る足場用昇降機全体を示す斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係るウィンチ用ブラケットを示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係るウィンチ用ブラケットを示す平面図及び側面図である。図4は、本発明の一実施形態に係るウィンチ用ブラケットの掛け金具の動きを示す模式的説明図である。図5は、本発明の一実施形態に係る走行ガイドを示す斜視図及び詳細図である。図6は、本発明の一実施形態に係る走行ガイドを示す分解図である。図7は、本発明の一実施形態に係るブレーキ機構の動きを示す模式的説明図であり、図7(a)はブレーキの解除状態を図7(b)はブレーキの作動状態をそれぞれ示している。図8は、本発明の一実施形態に係る荷台を示す斜視図である。図9は、本発明の一実施形態に係る荷台の開閉状態、及び、上下二段に分かれる収納部を一体に形成した状態を示す模式的説明図である。なお、各図における方向を示す記号aは足場内側方向を、記号bは足場外方向を、記号cは足場を正面に見て右方向を、記号dは足場を正面に見て左方向を、記号eは上方向を、記号fは下方向をそれぞれ示している。
【0025】
本実施形態に係る足場用昇降機Mは、工事現場に組まれる足場支柱Sに設置して荷の揚げ降ろしを行うために用いられる。足場用昇降機Mは、図1に示すように、主に足場支柱Sと垂直方向に平行に立設されて取り付けられた走行レール100と、走行レール100の上端部近傍に設けられるウィンチ用ブラケット200と、ウィンチ用ブラケット200に吊下げられるウィンチW(電動ウインチ等)と、走行レール100に挿通されると共にウィンチWに接続されることで上下に昇降自在とした走行ガイド300と、走行ガイド300に一体に取付けられる上下二段式の籠状とした荷台400と、から構成される。なお、ウィンチWに設けられたワイヤw1の端部には後述するワイヤ接続具332との接続を可能とするフックが設けられ、フックには外れ防止の押さえ部を備えている。
【0026】
走行レール100は、図1に示すように、縦長且つ平面視で正方形状のパイプからなるレール支柱110と、レール支柱110の上端部に形成されたジョイント部120と、垂直方向に所定間隔で地面に水平に突設した腕木130と、腕木130の先端側に設けられた接続具140と、からなる。走行レール100は、水に強く高い強度を有したステンレスや鉄に亜鉛メッキとクロム塩酸でコーティングを施したユニクロ材等が好適に用いられる。
【0027】
レール支柱110は、例えば720~2700mmほどの長さとし、上端部に形成したジョイント部120をレール支柱110の下端部の開口より挿し込むことで連結を可能としている。また、レール支柱110とジョイント部120とに貫通した挿通孔をあけ抜け防止のピン等を挿通するような構成を併用してもよい。
【0028】
腕木130は、図1及び図3(a)に示すように、断面視正方形のレール支柱110の角部から水平に延設しており、腕木130先端部には、ねじを締め込むことで足場支柱Sに取付け固定可能とした接続具140としてクランプを設けている。腕木130の形状は特に限定されるものではないが、例えばステンレス又はユニクロ材からなるプレートを略工字状に形成したものが考えられる。本実施形態において接続具140は、ねじを締め込むことで固定を行うクランプを用いているが、足場支柱Sにレール支柱110を取付けて固定できるものであればよく、例えば、半円形のプレートを足場支柱に挟み込んでボルト等で固定するものであってもよい。
【0029】
以下、図2図4を参照して、ウィンチ用ブラケット200の構成を詳説する。ウィンチ用ブラケット200は、図2及び図3に示すように、上下二つの平面視略コ字状のレール挿通部211を備えた基台部210と、レール挿通部211の足場側下端部に設けた略L字状の掛け金具220と、レール挿通部211の足場外側に回動可能に枢支されるウィンチ吊下げ具230とからなる。ウィンチ用ブラケット200は、水に強く高い強度を有したステンレスや鉄に亜鉛メッキとクロム塩酸でコーティングを施したユニクロ材等が好適に用いられる。
【0030】
基台部210は、上下二つのレール挿通部211と、二つのレール挿通部211を上下に所定間隔をあけて一体に固定する固定柱部212と、固定柱部212の上端部に設けた引揚げ用滑車213とから構成されている。(以下、上下二つのレール挿通部211の上側に位置するものを上部レール挿通部211a、下側に位置するものを下部レール挿通部211bと云う)
【0031】
レール挿通部211は、平面視略正方形のプレート部材に走行レール100が挿通可能となるような挿通切欠部211cを切欠した上下二枚の挿通プレート211dと、二枚の挿通プレート211dに介在し走行レール100の四側外周面に当接して転がり、ウィンチ用ブラケット200の上下移動をガイドするガイドローラ214が回動自在に取り付けられたローラプレート215により構成される。すなわち、一つのレール挿通部211は、二枚の挿通プレート211dとレール支柱110の四面に当接してガイドする四つのガイドローラ214及びこのガイドローラ214を回動自在に軸支する四組のローラプレート215とを備えている。
【0032】
ガイドローラ214は、走行レール100の四面に当接し転がることにより、ウィンチ用ブラケット200をレール支柱110の外周面に沿うように真っ直ぐ上昇又は可能させることができ、後述する滑車用金具500により走行レール100の上端部近傍までスムーズに運び揚げることができる。また、挿通プレート211dの足場外側の二箇所の角部近傍には、後述するウィンチ吊下げ具230の取付けプレート232を固定するボルトナット又は係止金具233を挿通するための挿通孔211eを穿設している。
【0033】
固定柱部212は、上部レール挿通部211aと下部レール挿通部211bとを所定間隔をあけ一体に固定するものである。また、固定柱部212は、上部レール挿通部211aを貫通し上方に延出されると共に、その上端部に引揚げ用滑車213が設けられている。
【0034】
引揚げ用滑車213は、図1に示すように、くさび式足場の足場支柱Sのくさび部分s1に取付けられる滑車用金具500に吊下げた滑車PとロープRを介して連結することでウィンチ用ブラケット200を容易に走行レール100の上端部近傍まで持ち揚げることができる。このように引揚げ用滑車213を備え、走行レール100の上端部近傍まで運び揚げ可能としたことで、足場用昇降機Mの設置が容易になることは勿論、足場や走行レール100を工事の進捗に合わせ上方へ延長していく際にもウィンチ用ブラケット200を取外す必要がなく容易に延長作業が可能となる。
【0035】
掛け金具220は、基台部210を形成する上部レール挿通部211aの足場側下端部且つ通常時において挿通切欠部221cに架け渡すように設けられる略L字状の制限プレート221と、上部レール挿通部211aと制限プレート221とに介在して設けられるコイルばね部222と、上述した滑車Pと引揚げ用滑車213とに介在させたロープRの操作用端部r1を通し制限プレート221を操作用端部r1と連動して回動させる連動部223と、からなる。
【0036】
図4に示すように、制限プレート221は、略L字の直交する角部に挿通部を穿設し、上部レール挿通部211aに形成した取付け舌片211fに枢軸224によって上下逆L字状に枢支されている。コイルばね部222は、上部レール挿通部211aと制限プレート221との間に設けられたねじりコイルばねからなり、制限プレート221を反時計回りに応力を伝えている。すなわち、制限プレート221は、逆L字状に枢支されているため地面と水平を成す辺が挿通切欠部221cの一部に跨るように上部レール挿通部211aを形成する下側の挿通プレート211dに常に当接されることとなる。
【0037】
上述したような構成とすることで、ロープRを引くことでウィンチ用ブラケット200を運び揚げる際に、走行レール100の腕木130と上方から接触した制限プレート221は時計回りに回動し腕木130を躱すことができると共に、躱し終えるとコイルばね部の応力により再び逆L字状の体勢に戻ることとなる。この逆L字状の体勢となっているときは、挿通プレート211dと当接し反時計回りへの回動に制限されるため、走行レール100の腕木130が下方から接触した場合には回動しない。このため、ウィンチ用ブラケット200の設置方法として制限プレート221を腕木130に下方から当接させることにより行うことができる。
【0038】
連動部223は、図4に示すように、上述した逆L字状の制限プレート221の下端部に設けられた環状の部材であり、引揚げ操作を行うロープRの操作用端部r1を環状内部に通すことで、操作用端部r1を斜め方向に引くことで制限プレート221を時計回りに回動させることができる。この連動部223による回動動作によって制限プレート221は下方から当接している腕木130を躱すことができ、ウィンチ用ブラケット200を地上に降ろす際に走行レール100から解体する必要がなく、走行レール100からの脱出が容易にできる効果が得られる。
【0039】
図2及び図3に示すように、ウィンチ吊下げ具230は、L字状に溶接された角パイプと溶接箇所を補強する補強板材からなる吊下げ具本体231と、L字状の吊下げ具本体231を上下反転させた状態で基台部210に取付けを行う取付けプレート232と、吊下げ具本体231の水平部231aの先端部近傍に設けたU字状のウィンチ吊り部231cとからなる。吊下げ具本体231は、本実施形態では角パイプを溶接し形成しているが、角パイプに限定されるものではなく丸パイプやシャフト等で形成されたものであってもよい。その際補強板材は必要に応じて用いられるものであってよい。
【0040】
取付けプレート232は、吊下げ具本体231の垂直部231bに上下二枚設けられた略コ字板状の部材であり、ウィンチ吊下げ具230を、上部レール挿通部211aの上部の挿通プレート211d及び下部レール挿通部211bの上部の挿通プレート211dのそれぞれ取付けるためのものである。取付けプレート232のコ字状の一方端部付近にボルト挿通孔232aをもう一方の端部付近に係止金具挿通孔232bがそれぞれ穿設されている。ウィンチ吊下げ具230の基台部210への取付けは、上述した挿通プレート211dに穿設された挿通孔211eと取付けプレート232に穿設したボルト挿通孔232aとをボルトナットを用いて回動自在に取付ける。取付けプレート232に穿設された係止金具挿通孔232bは、例えばアイボルト等の棒状且つ頭が大きい部材からなる係止金具233を挿通プレート211dに穿設されたもう片方の挿通孔211eと位置を合わせ上方から挿し込むことで、ウィンチ吊下げ具230を回動しないよう係止することができる。
【0041】
上述したような構成としたことで、図3(a)に示すように、ウィンチ吊り部231cにウィンチWを取付ける場合には、ウィンチ吊下げ具230を足場内側へ回動させてウィンチWの着脱を容易とすると共に、より安全に行えるようにすることができる。また、係止金具233によってウィンチ吊下げ具230を係止することで、足場用昇降機Mの作動時にはウィンチ吊下げ具230が回動しないようにすることができる。
【0042】
以下、図5図7を参照して走行ガイド300の構成を詳説する。走行ガイド300は、図5及び図6に示すように、主に上下二つの平面視略コ字状のレールガイド部311を備えたガイド基台部310と、ガイド基台部310の略中央に設けられる第一ブレーキ機構320と、第一ブレーキ機構320の下方位置に設けられるブレーキ補助部材330と、ブレーキ補助部材330の下部とガイド基台部310の下部とに設けられた第二ブレーキ機構340と、から構成される。
【0043】
ガイド基台部310は、走行レール100のガイドを行う上レールガイド部311a及び下レールガイド部311bと、レールガイド部311をそれぞれ上下位置に固定する固定部材312と、上レールガイド部311aに設けたL字棒状の仮置き金具313と、下レールガイド部311bの足場外側縁部に設けた四角柱状のブレーキ補助部材330を挿通する挿通柱311cと、下レールガイド部311bの下部に設けた第二ブレーキ機構340を枢支する枢支片311dと、からなる。
【0044】
固定部材312は、平面視方形状の二本の棒状部材を垂直方向に平行に併設した形状としており、固定部材312の上端部と下端部とにそれぞれ上レールガイド部311a及び下レールガイド部311bを足場に向かって右側方縁に固定している。また、固定部材312の略中央部分には、後述する第一ブレーキ機構320を取り付けるためのボルト孔312bを穿設したブレーキ取付け片312aと第一ブレーキ機構320に備えた引張りばね部322の一端部を固定するばね固定片312cを備えている。なお、本実施形態では、平面視正方形の棒状部材を二本併設した形状としているが、これに限ったものではなく縦長状の部材であって上レールガイド部311a及び下レールガイド部311bを固定できるものであればよい。
【0045】
上レールガイド部311aは、平面視略方形状のプレート部材に走行レール100が挿通可能となるようなレール切欠部311fを切欠した上下二枚のガイドプレート311eと、二枚のガイドプレート311eに介在し走行レール100上を転がり上下移動をガイドするガイドローラ214を回動自在に取り付けたローラプレート215と、二枚のガイドプレート311eの足場に向かって左側方縁に設けた荷台固定片311gと、より構成される。また、上レールガイド部311aの上面には、レール切欠部311fの一部を跨ぐように設けられるL字棒状の仮置き金具313を挿通取付け可能な仮置き金具取付け片311hを備えている。
【0046】
下レールガイド部311bは、上レールガイド部311aと同様に、平面視略方形状のプレート部材に走行レール100が挿通可能となるようなレール切欠部311fを切欠した上下二枚のガイドプレート311eと、二枚のガイドプレート311eに介在し走行レール100上を転がり上下移動をガイドするガイドローラ214を回動自在に取り付けたローラプレート215と、二枚のガイドプレート311eの足場外側に設けた荷台固定片311gと、より構成される。
【0047】
また、下レールガイド部311bの上部のガイドプレート311eの足場外側縁部表面には四角柱状の挿通柱311cが設けられており、後述するブレーキ補助部材330に設けた挿通部331に挿通することができる。挿通柱311cの下部にはブレーキ補助部材330との間に介在し、ブレーキ補助を行うブレーキ補助ばね332cを取り付けるばね取付け片311iを備えている。また、下レールガイド部311bの下部には第二ブレーキ機構340を枢支可能とする枢支片311dを備えている。
【0048】
第一ブレーキ機構320は、ブレーキ補助部材330に設けられる押し材333に対応する受け材321と受け材321に穿設された枢軸通し孔321aと、受け材321の上縁部付近に設けられる引張りばね部322と、走行レール100を挿通可能な一部切欠のロ字状のブレーキ本体323とからなる。第一ブレーキ機構320は、固定部材312の略中央に備えたブレーキ取付け片312aに穿設したボルト孔312bと受け材321に穿設した枢軸通し孔321aとに枢軸となるボルトナットにより回動自在に取付けられる。また、第一ブレーキ機構320に設けた引張りばね部322の端部をばね固定片312cへ固定させる。
【0049】
上述のような構成としたことで、第一ブレーキ機構320は引張りばね部322の張力によって上方へ向けて回動し第一ブレーキ機構320を斜めに維持する力が加わることとなる。また、第一ブレーキ機構320のブレーキ本体323は、図5(c)に示すように、ステンレスのプレートを積層させて形成されると共に、受け材321の上下に二つ設けられる。更に上部側に設けたブレーキ本体323はやや上向き傾斜状態で受け材321に設けられている。そうすることで、後述するブレーキ動作時において走行レール100との間に生じる摩擦を高め、よりブレーキ性を向上させることができる。ただし、ブレーキ本体323は必ずしも積層させて形成する必要はなく、一枚のプレート材から形成されてものであってもよいし、材料としてステンレスの代わりにユニクロ材等を用いてもよい。
【0050】
ブレーキ補助部材330は、主にレールガイド部311と同様に、平面視略方形状のプレート部材に走行レール100が挿通可能となるようなレール切欠部311fを切欠した上下二枚のガイドプレート311eと、二枚のガイドプレート311eに介在し走行レール100上を転がり上下移動をガイドするガイドローラ214を回動自在に取り付けたローラプレート215と、から構成されると共に、足場外側縁部に設けた挿通部331と、挿通部331のさらに外側に設けたワイヤ接続具332と、足場に向かって右側方縁に設けた押し材333と、押し材333の下方に設けた第二ブレーキ取付け片334と、から構成される。ブレーキ補助部材330は、下レールガイド部311bに設けた挿通柱311cに挿通部331から挿通されることで取付けられる
【0051】
ワイヤ接続具332は、図5(b)に示すように、ウィンチWのワイヤw1との接続を行う接続部332aを有し、ワイヤ接続具332の下部にはブレーキ補助ばね332cを取付ける補助ばね接続部332bを穿設している。ブレーキ補助ばね332cは、引張りコイルばねからなり、一端をワイヤ接続具332の下部に、もう一端を挿通柱311cの下部に設けたばね取付け片311iにそれぞれ取付けられる。
すなわち、挿通柱311cに挿通され取付けられるブレーキ補助部材330は、ブレーキ補助ばね332cの張力により下向きに向かう力がかかり下レールガイド部311bの上面に当接した状態を維持しようとする。
【0052】
押し材333は、第一ブレーキ機構320に設けた受け材321を下方から押し上げ、引張りばね部322により斜めに保持されていたブレーキ本体323を地面と略水平の状態にするためのものである。
第一ブレーキ機構320の動作の説明としては、図7(a)に示すように、ブレーキ補助部材330がウィンチWにより上方へ引き上げられると、ブレーキ補助部材330に設けた押し材333が第一ブレーキ機構320の受け材321を下方から押し上げることとなる。受け材321は下方から押し上げられることで引張りばね部322を引っ張りつつ時計回りに回動する。受け材321が時計回りに回動することで、受け材321に一体に設けられたブレーキ本体323は地面に対して略水平の状態となり、ブレーキ解除状態としてブレーキ本体323の開口部に走行レール100が挿通可能な状態とすることができる。
ブレーキの作動状態としては、ウィンチWの故障等でワイヤw1から上方へ引き上げるある一定の張力がブレーキ補助部材330へかからなくなった際に、ブレーキ補助部材330はブレーキ補助ばね332cにより下方へ引き下げられる。ブレーキ補助部材330が下方に変位すると押し材333により押し上げられていた受け材321は引張りばね部322の張力によって図7(b)に示すように、反時計回りに回動するように引っ張り上げられる。受け材321が反時計回りに回動することにより一体に設けられたブレーキ本体323は斜めに傾き走行レール100に当接することとなる。走行レール100に当接することでブレーキ本体323との間に摩擦が生じ落下する荷台400を徐々に速度を落とし最終的に停止させ落下を防止することができる。
【0053】
第二ブレーキ機構340は、ブレーキ補助部材330に設けた第二ブレーキ取付け片334に取付けられるブレーキガイド杆341と、ブレーキガイド杆341に遊嵌されると共に下レールガイド部311bの枢支片311dに枢支されるブレーキ杆342と、からなる。
すなわち、第二ブレーキ機構340は、ブレーキガイド杆341が上方へ引き上げられるとブレーキ杆342が地面に対して略垂直の状態となり、ブレーキガイド杆341が下方へ押し下げられるとブレーキ杆342が地面に対して水平な状態となるリンク機構343を形成している。
第二ブレーキ機構340の動作の説明としては、図7(a)に示すように、ワイヤ接続具332に接続されたウィンチWのワイヤw1によりブレーキ補助部材330が上方に引揚げられた状態においては、ブレーキ補助部材330の下方に設けたブレーキガイド杆341も一体となり上方へ引き上げられ、第二ブレーキ機構340のリンク機構343によりブレーキ杆342が地面に対して略垂直に垂れ下がりブレーキ解除状態として荷台400の昇降を自在としている。
ブレーキの作動状態としては、ウィンチWの故障等でワイヤw1から上方へ引き上げるある一定の張力がブレーキ補助部材330へかからなくなった際に、ブレーキ補助部材330はブレーキ補助ばね332cにより下方へ引き下げられる。ブレーキ補助部材330が下方へ引き下げられることで一体に設けられたブレーキガイド杆341も下方へ変位することとなる。ブレーキガイド杆341が下方へ変位すると、上述したリンク機構343によりブレーキ杆342は図7(b)に示すように、反時計回りに回動して地面に対して水平になるように変位する。地面に対して水平になったブレーキ杆342はブレーキ作動状態として、走行レール100を足場支柱Sへ取付けるために設けられた腕木130に上方から接触し、強制的に落下動作を止めることができる。
【0054】
荷台400は、図8及び図9に示すように、上下二段の収納部430を有する上部開口の籠状に形成され、レールガイド部311に設けられた荷台固定片311gにより走行ガイド300と一体に固定される。荷台400は、水に強く高い強度を有したステンレスや鉄に亜鉛メッキとクロム塩酸でコーティングを施したユニクロ材等から形成される。
【0055】
荷台は、主に平面視四角形の角部に立設される荷台支柱410と、荷台支柱410の略3分の1の高さの方形状の網からなる荷台壁420により荷台支柱410の下部を四方囲うことでなる下収納部431と、下収納部431の内側底面を塞ぐ下収納底部と、下収納部431と同じように荷台壁420により荷台支柱410の上部を四方囲うことでなる上収納部432と、上収納部432の底面を塞ぐと共に四辺のうち一辺を軸として上方へ回動自在とした上収納底部440とからなる。
【0056】
荷台支柱410のいずれか一つには、レールガイド部311に設けられた荷台固定片311gと対応する走行ガイド固定片411を備え、ボルトナット等の固定手段を用いて走行ガイド300に一体として固定することができる。
また、上収納部432の足場を正面に見て左側面手前に位置する支柱410aと足場内側面の右側に位置する支柱410bと下収納部の足場を正面に見て左側面手前に位置する支柱410aとには、ロックピン挿入片412が設けられている。
【0057】
下収納部431は、図9(a)に示すように、方形メッシュ状の荷台壁420を荷台支柱410の下部四方を囲うようにして上部開口の籠状に設けられると共に、足場外側面の荷台壁420に方形箱型の持ち手421と、持ち手421の内部に横摺動自在としたロックピン422と、を備え足場外側面を開閉自在としている。
すなわち足場外側面の荷台壁420は、下収納部431の扉として機能し、持ち手421内部に設けたロックピン422を対応するロックピン挿入片412に挿入することで足場用昇降機Mが上昇又は下降時に扉が開かないようにすることができる。
【0058】
上収納部432は、図9(a)に示すように、方形メッシュ状の荷台壁420を荷台支柱410の上部四方を囲うようにして上部開口の籠状に設けられると共に、足場外側面の荷台壁420及び足場に向かって左側面の荷台壁420に方形箱型の持ち手421と、持ち手421の内部に横摺動自在としたロックピン422と、を備え足場外側面及び足場に向かって左側面を開閉自在としている。
すなわち足場外側面の荷台壁420及び足場に向かって左側面の荷台壁420は、上収納部432の扉として機能し、持ち手421内部に設けたロックピン422を対応するロックピン挿入片412に挿入することで足場用昇降機Mが上昇又は下降時に扉が開かないようにすることができる。また、上収納部432の足場に向かって右側面の荷台壁420上部には長物を立掛けるための立掛け具450を備えている。立掛け具450は、長物が昇降中に荷台400の内部で移動しないように保持するための半円弧状の立掛け切欠部451を連続して形成している。
【0059】
上収納部432の底面となる上収納底部440は、扉となる面以外の荷台壁420と対応する辺、例えば足場に向かって右側となる辺を枢軸として上方へ跳ね上げることができる。跳ね上げた状態で対応する面には上収納底部440を保持するための保持具460を備えている。このような構成とすることで、図9(b)に示すように、荷台400は通常時上下二段の収納部430を有したものとして使用可能とし、例えば、足場支柱Sや走行レール100といった長物を積載する際には、上収納底部440を跳ね上げ保持し、上収納部432下方と下収納部431上方を連通状態とすることで一つの大きな収納部を有した荷台とすることができる。その際、足場支柱Sや走行レール100といった長物は立掛け具450に立掛けることで荷台400の内部で荷を安定させて昇降時に重心の変化を防ぐことで安全に揚げ降ろしを行うことができる。
【0060】
荷台400は、本実施形態において下収納部431に扉を一箇所設けたものとして説明したが、これに限ったものではなく、上収納部432と同じように二箇所の扉を備えた形状とすることも考えられる。また、本実施形態において荷台壁420は、メッシュ状としているがこれに限定されるものではなく、例えば、方形板状の部材から形成されたものであってもよい。
【0061】
[2.走行ガイドに備えたブレーキ機構について]
次に、本実施形態に係る足場用昇降機に備えた二つのブレーキ機構について図面に基づいてより詳しく説明する。
【0062】
足場用昇降機Mは、図1に示すように、ウィンチ用ブラケット200に吊下げた電動ウィンチWの動力により走行レール100に沿って荷台400を昇降自在としており、通常時、走行レール100上での停止動作にはウィンチWの巻上げ具合により制御される。しかしながら、電動ウィンチWによる巻上げに異常が発生したりウィンチWが故障してしまったりした際に、本発明の足場用昇降機Mには二つのブレーキ機構320,340(図5図7参照。)を備えることで確実に落下事故を防ぐことができる。
【0063】
二つのブレーキ機構320,340は、上述したように、荷台400を一体として上昇及び下降させる走行ガイド300に設けられている。
【0064】
第一ブレーキ機構320は、略ロ字状のブレーキ本体323を傾斜させることで走行レール100に当接させ摩擦により落下する荷台400を減速及び停止することができる。
【0065】
具体的な動作としては、走行ガイド300に設けられるブレーキ補助部材330にウィンチWのワイヤw1を取付け、走行ガイド300と一体として荷台400を上昇または下降させる。この時、ブレーキ補助部材330に設けられた押し材333は第一ブレーキ機構320に設けられた受け材321を下方から押し上げ、受け材321を時計回りに回動させて一体に設けたブレーキ本体323を地面に対して略水平の状態にすることにより走行レール100と接触することなく昇降を可能としている。
【0066】
ブレーキ補助ばね332cは、ウィンチWの故障等によりワイヤw1を介して接続されたブレーキ補助部材330への上方へのある一定の張力が失われる(例えばワイヤw1が破断するなどが考えられる)とブレーキ補助部材330を下方へ引き下げることとなる。ブレーキ補助部材330が引き下げられることで、一体に設けられた押し材333は第一ブレーキ機構320に設けられた受け材321を下方から押し上げる力が弱まり受け材321及びブレーキ本体323は引張りばね部322により斜め上方へ引っ張られる。そうすることで受け材321及びブレーキ本体323は反時計回りに回動しブレーキ本体323の開口部が走行レール100に当接することとなり、走行レール100とブレーキ本体323との間に摩擦が生じて落下の速度を減速させると共に最終的に停止させることができる。
【0067】
第二ブレーキ機構340は、走行レール100を足場支柱Sに設置するために設けた腕木130に対して直交するブレーキ杆342により、腕木130と接触させることで強制的に落下を停止させることができる。
【0068】
具体的な動作としては、第二ブレーキ機構340は上述したようにブレーキガイド杆341とブレーキ杆342とでリンク機構343を形成しており、ワイヤw1を介してウィンチWと接続されたブレーキ補助部材330に上方へのある一定の張力が働いているときには、ブレーキ杆342を地面に対して略垂直の状態としてブレーキ杆342は何にも干渉することなく走行ガイド300と一体に荷台400の昇降を可能としている。
【0069】
ブレーキ補助ばね332cは、ウィンチWの故障等によりワイヤw1を介して接続されたブレーキ補助部材330への上方へのある一定の張力が失われる(例えばワイヤw1が破断するなどが考えられる)とブレーキ補助部材330を下方へ引き下げることとなる。ブレーキ補助部材330が下方へ引き下げられることで、ブレーキ杆342はリンク機構343の動作により反時計回りに回動することとなる。反時計回りに回動したブレーキ杆343は、地面に対して水平の状態となることにより足場支柱Sに走行レール100を取付けるために設けられた腕木130に上方から接触することで走行ガイド300と一体として荷台400の落下を強制的に停止させることができる。
【0070】
上述してきた二重のブレーキ機構320,340を備えることで、万が一荷台400を昇降させるウィンチWやワイヤw1に異常が発生した場合に、第一ブレーキ機構320が作動し落下する荷台400の速度を減速させ、最終的に停止させることができる。
また、落下した際には第一ブレーキ機構320と同時に第二ブレーキ機構340も作動し、例えば、第一ブレーキ機構320の引張りばね部322が故障した場合でも第二ブレーキ機構340により確実に落下を止めることができる。
【0071】
[3.使用方法について]
次に、本実施形態に係る足場用昇降機Mの使用方法について説明する。
本実形態に係る足場用昇降機Mは、足場支柱Sに走行レール100を取付けることで、昇降可能とし荷台400に収納して荷の揚げ降ろしを行うことができる。
【0072】
具体的な設置方法の手順としては、建築物等の周囲を囲うように組み立てられたくさび式足場の足場支柱Sにウィンチ用ブラケット200及び荷台400を固定した走行ガイド300を挿通させた走行レール100を接続具140によって垂直に固定する。
固定した走行レール100の上方に位置するくさび式足場のくさび部分s1に滑車用金具500を上方から挿し込み固定する。
固定した滑車用金具500に滑車Pを吊下げ、滑車PのロープRをウィンチ用ブラケット200の上端部に設けられた引揚げ用滑車213と接続すると共にロープRの自由端である操作用端部r1をウィンチ用ブラケット200の連動部223に挿通し操作用端部r1を引くことでウィンチ用ブラケット200を走行レール100の上端部近傍まで上昇させる。
上昇させたウィンチ用ブラケット200は、掛け金具220が走行レール100の腕木130に載せかけることで取付けが完了する。
【0073】
次に、取付けが完了したウィンチ用ブラケット200のウィンチ吊下げ具230にウィンチWを吊下げる。
この時従来の昇降機では、足場の外側に向いたウィンチ吊下げ具に対して足場の外に身を乗り出して吊下げる必要があったが、本実施形態に係る足場用昇降機Mは、ウィンチ吊下げ具230の取付けプレート232を係止する係止金具233を引き抜くことでウィンチ吊り部231cを足場の内方向へ回動させることができ、足場の外へ身を乗り出すことなくウィンチWを吊下げることができる。
ウィンチWの吊下げが完了したら再びウィンチ吊り部231cを足場外方向へ回動させ係止金具233を挿し込み回動を制御する。
【0074】
最後に、吊下げたウィンチWのワイヤw1を走行ガイド300のブレーキ補助部材330に設けたワイヤ接続具332に接続する。
以上の方法で、足場への本実施形態に係る足場用昇降機Mの設置が完了する。
【0075】
また、上述してきたように荷の揚げ降ろし以外にも、足場の拡大による走行レール100の上方への延長時においても、設置状態を維持しつつ延長させることができる。
【0076】
具体的な手順としては、走行レール100上端からさらに上方へ延長されたくさび式足場のくさび部分s1に滑車用金具500を挿し込み固定する。
荷台400に延長する分の走行レール100を積載し、今時点での走行レール100上端まで運び揚げる。
運び揚げた荷台400は、走行ガイドの上部に設けた仮置き金具313を仮置き金具取付け片311hに挿通し取り付ける。こうすることで、仮置き金具313が走行レール100の腕木130と接触し、走行レール100上で荷台400の仮置きが可能となる。
荷台400を仮置きしたら、ブレーキ補助部材330に接続したウィンチWのワイヤw1を外すと共に、運び揚げた延長用の走行レール100を既設の走行レール100の上端部に設けたジョイント部120に挿し込み走行レール100を任意の高さまで延長させていく。
【0077】
走行レール100の延長が完了したら、滑車Pから延びるロープRの操作用端部r1を引き、ウィンチ用ブラケット200を走行レール100の上端部付近まで上昇させ、設置時と同じように固定させる。
次に、ウィンチWのワイヤw1を再びブレーキ補助部材330のワイヤ接続具332に接続し、仮置き金具を抜く。
以上の方法で、走行レール100の上方への延長を容易にすることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る足場用昇降機Mは、設置した足場から外し解体する際にも作業を容易にすることができる。
【0079】
具体的な手順としては、荷台400を取外す走行レール100の下方位置まで上昇させ仮置き金具313を用いて待機させておく。
ウィンチ用ブラケット200の連動部223に通した操作用端部r1を斜めに引きつつ滑車Pと引揚げ用滑車213に介在するロープRを緩める。そうすることでウィンチ用ブラケット200の取り付けに機能していた制限プレート221が時計回りに回動し腕木130を躱しつつ走行レール100に沿ってウィンチ用ブラケット200の位置を下げることができる。
ウィンチ用ブラケット200を走行レール100の延長部分、すなわちジョイント部120よりも下方位置まで下げたところで、延長していた走行レール100を上方へ引き抜き荷台400に積載させる。
次に、ウィンチ用ブラケット200を下げることで撓んだウィンチWの余剰ワイヤw1を巻上げ、仮置き金具313が当接した腕木130から浮いた状態となるまで荷台400を上昇させて仮置き金具313を解除する。
以上の動作を繰り返すことで、延長した走行レール100を足場支柱Sから外し、外した走行レール100を荷台400によって回収しながら解体していくことが可能となる。
【0080】
上述してきたように、本実施形態に係る足場用昇降機Mは、工事現場等に組み立てられた足場への設置、延長及び解体が容易且つ安全に行うことが可能となるものである。
さらに、走行レール100に当接し摩擦を生じさせることで落下する荷台400の減速と停止を行う第一ブレーキ機構320と、足場支柱Sに走行レール100を設置するために設けた腕木130に対し上方から当接し落下する荷台400を強制的に停止させる第二ブレーキ機構340の二つのブレーキ機構320,340を備えることで高い安全性を付与可能としたものである。
【0081】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る足場用昇降機は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、あくまで例示に過ぎず、本発明による効果は、本実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
S 足場支柱
s1 くさび部分
P 滑車
R ロープ
r1 操作用端部
W ウィンチ
w1 ワイヤ
M 足場昇降機
100 走行レール
110 レール支柱
120 ジョイント部
130 腕木
140 接続具
200 ウィンチ用ブラケット
210 基台部
220 掛け金具
230 ウィンチ吊下げ具
300 走行ガイド
310 ガイド基台部
320 第一ブレーキ機構
330 ブレーキ補助部材
340 第二ブレーキ機構
400 荷台
410 荷台支柱
420 荷台壁
430 収納部
440 上収納底部
450 立掛け具
460 保持具
500 滑車用金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9