(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103426
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】新規プロテアーゼ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/57 20060101AFI20230719BHJP
C12N 9/50 20060101ALI20230719BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230719BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230719BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230719BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230719BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230719BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C12N15/57 ZNA
C12N9/50
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C08J11/10
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023082476
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2020534479の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】17306878.4
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514245373
【氏名又は名称】キャルビオス
【氏名又は名称原語表記】CARBIOS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マルティ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥケーヌ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ギシャール,マリー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルー,マルク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,イザベル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より高い効率で分解プロセスを可能にし、それにより、生分解性プラスチック生産プロセス、生物学的ポリエステル分解プロセス及び/又は生物学的リサイクルプロセスの競争力を増強するために、改善された活性を有するプロテアーゼを提供する。
【解決手段】新規プロテアーゼ、より具体的には、特定の配列のプロテアーゼと比較して改善された活性を有するプロテアーゼ変異体、及びプラスチック製品などのポリエステル含有材料を分解するためのその使用を開示する。本発明のプロテアーゼは、ポリ乳酸及びポリ乳酸含有材料を分解するために特に適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)、好ましくはS101F/L/M/W/Yから選択される少なくとも1つの置換、より好ましくは少なくとも置換S101Fを有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、プロテアーゼ。
【請求項2】
(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)、好ましくはS101F/L/M/W/Yから選択される少なくとも1つの置換、より好ましくは少なくとも置換S101Fを有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、プロテアーゼ。
【請求項3】
S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも2つの置換、好ましくは少なくとも3つの置換を含む、請求項2に記載のプロテアーゼ。
【請求項4】
S101F/L/M/W/Y+S103L+T106I/Lから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロテアーゼ。
【請求項5】
S101F+S103L、S101F+T106I、T106I+G133K、S101F+S103L+T106I、S101F+S103L+G133K、S101F+T106I+G133K、S101F+S103L+T106L、S101F+S103L+T106I+G133K、S101F+S103L+T106I+G131Iから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせ、好ましくはS101F+S103L+T106I/Lを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロテアーゼ。
【請求項6】
pH7~10、好ましくはpH7.5及び/又はpH9で、配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロテアーゼ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項で定義されるプロテアーゼをコードする、核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む、発現カセット又はベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸又は請求項8に記載の発現カセット若しくはベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかで定義されるプロテアーゼ又は請求項9に記載の宿主細胞若しくは該プロテアーゼを含むその抽出物を含む、組成物。
【請求項11】
プロテアーゼを生産する方法であって、
(a)該プロテアーゼをコードする核酸を発現させるために適切な条件下で、請求項9に記載の宿主細胞を培養すること;及び、場合により
(b)細胞培養物から該プロテアーゼを回収すること
を含む、方法。
【請求項12】
少なくとも1つのポリエステルを含有するプラスチック製品を分解する方法であって、
(a)該プラスチック製品を、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロテアーゼ又は請求項9に記載の宿主細胞又は請求項10に記載の組成物と接触させること;及び、場合により
(b)モノマー及び/又はオリゴマーを回収すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記プラスチック製品が、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリエチレンテレフタラート(PET) ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ポリブチレンサクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)及びこれらの材料のブレンド/混合物から選択される少なくとも1つのポリエステル、好ましくはポリ乳酸を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)少なくとも1つのポリエステル、好ましくは少なくともポリ乳酸と、(ii)請求項1~6のいずれか一項に記載のプロテアーゼ又は請求項9に記載の宿主細胞若しくは該プロテアーゼを含むその抽出物又は請求項10に記載の組成物とを含有する、プラスチック化合物。
【請求項15】
前記プロテアーゼが、前記プラスチック化合物の少なくとも1つのポリエステルを分解可能である、請求項14に記載のプラスチック化合物。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のプラスチック化合物を生産するためのプロセスであって、少なくとも1つのポリエステルと、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロテアーゼ又は請求項9に記載の宿主細胞若しくは該プロテアーゼを含むその抽出物又は請求項10に記載の組成物とを、該ポリエステルが部分的又は完全に融解状態である温度で、好ましくは押出により、混合する、プロセス。
【請求項17】
ポリエステル含有材料を分解するための、好ましくはポリ乳酸含有材料を分解するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロテアーゼ又は請求項9に記載の宿主細胞又は請求項10に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規プロテアーゼに、より具体的には、親プロテアーゼと比較して改善された活性を有するプロテアーゼ、及びポリエステル又はプラスチック製品などのポリエステル含有材料を分解するためのその使用に関する。本発明のプロテアーゼは、ポリ乳酸及びポリ乳酸含有材料を分解するために特に適している。
【背景技術】
【0002】
背景
プロテアーゼは、ポリエステルを含む様々なポリマーの加水分解を触媒することができる。この文脈では、プロテアーゼは、食器洗浄及び洗濯用途のための洗剤として、バイオマス及び食品を処理するための分解酵素として、環境汚染物質の無毒化における生物触媒として、又は繊維工業におけるポリエステル布地の処理のためのものを含む多くの工業用途において有望な効果を示している。同様に、ポリ乳酸(PLA)を加水分解するための分解酵素としてのプロテアーゼの使用は特に興味深い。実際、PLAは、多数の技術分野、例えば可撓性及び剛性の包装、バッグ、マルチフィルムに、並びに衣類及びカーペットの製造に使用されるバイオ系ポリマー(すなわち、天然及び/又は再生可能資源由来のポリマー)である。したがって、埋立地におけるPLAの蓄積は、深刻化する生態系問題になる。
【0003】
プロテアーゼの中で、セリンプロテアーゼ(EC3.4.21)は、タンパク質におけるペプチドアミド結合を切断する酵素であり、その中のセリンは、酵素活性部位における求核アミノ酸として機能する。セリンプロテアーゼは、真核生物及び原核生物の両方に広範に見られる。最初はBacillusにおいて、より最近は他の中温性宿主において、多数の細菌性セリンプロテアーゼが同定されている。しかしながら、ますます多くのセリンプロテアーゼが好熱性及び超好熱性細菌から単離されている。
【0004】
生物学的分解、より具体的には酵素的分解は、プラスチック廃棄物の蓄積を減少させるための興味深い解決策と考えられる。実際、酵素は、ポリエステル含有材料、より具体的にはプラスチック製品の加水分解をモノマーレベルに至るまでも加速させることができる。更に、加水分解物(すなわち、モノマー及びオリゴマー)は、新たなポリマーの合成材料としてリサイクルされ得る。最近、プラスチック材料の少なくとも1つのポリマーを分解するために適切な生物学的実体と統合し、生分解性プラスチック製品の生産をもたらす新たなプラスチック材料が開発されている。例として、PLAから作製されたプラスチック製品であって、プロテアーゼを含むプラスチック製品が生産されている。このような生分解性プラスチックは、埋立地及び自然生息地におけるプラスチック蓄積の問題を少なくとも部分的に解決し得る。
【0005】
この文脈では、いくつかのプロテアーゼが候補分解酵素として同定されている。例えば、Actinomadura種(特許文献1)のプロテアーゼは、ポリエステル、より具体的にはポリ乳酸を分解するその能力について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、より高い効率で分解プロセスを可能にし、それにより、生分解性プラスチック生産プロセス、生物学的ポリエステル分解プロセス及び/又は生物学的リサイクルプロセスの競争力を増強するために、改善された活性を有するプロテアーゼが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、親又は野生型プロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示すプロテアーゼの新たな変異体を提供する。これらのプロテアーゼは、ポリエステル(単数若しくは複数)並びに/又はポリエステル(単数若しくは複数)を含有するプラスチック材料及び製品、例えばPLA又はポリ乳酸(PLA)を含有するプラスチック材料及び製品を分解するためのプロセスにおいて特に有用である。より具体的には、本発明は、本明細書中で親プロテアーゼ又は野生型プロテアーゼとして参照される配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有するActinomadura種のプロテアーゼの変異体を提供する。興味深いことに、野生型プロテアーゼ及び変異体は両方とも、サブチリシン様プロテアーゼと考えられる。本発明は更に、本発明の変異体を使用して、ポリエステル(単数若しくは複数)並びに/又はポリエステル(単数若しくは複数)を含有するプラスチック材料及び製品、より具体的にはポリ乳酸(PLA)及び/又はPLAを含有するプラスチック材料及び製品を分解するためのプロセスを提供する。
【0009】
これに関して、本発明の目的は、プロテアーゼ変異体であって、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、プロテアーゼ変異体を提供することである。
【0010】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kからなる群より選択される少なくとも1つの置換、好ましくはS101F/L/M/W/Yから選択される少なくとも1つの置換、より好ましくは少なくとも置換S101Fを含む。
【0011】
本発明の更なる目的は、プロテアーゼ変異体であって、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)、好ましくはS101F/L/M/W/Yから選択される少なくとも1つの置換、より好ましくは少なくとも置換S101Fを有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、プロテアーゼ変異体を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、プロテアーゼであって、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)位置S101及びS103の両方において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、プロテアーゼを提供することである。このような場合、置換は、好ましくは、S101F/L/M/W/Y及びS103Lから選択される。
【0013】
より具体的には、本発明は、特定のプロテアーゼであって、配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性と、S101F+S103L、S101F+T106I、T106I+G133K、S101F+S103L+T106I、S101F+S103L+G133K、S101F+T106I+G133K、S101F+S103L+T106L、S101F+S103L+T106I+G133K、S101F+S103L+T106I+G131Iから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせ、好ましくはS101F+S103L+T106I/Lとを有する、特定のプロテアーゼを提供する。
【0014】
本発明の別の目的は、上記で定義されるプロテアーゼをコードする核酸を提供することである。本発明はまた、上記核酸を含む発現カセット又は発現ベクターに、及び上記核酸、発現カセット又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0015】
本発明の更なる目的は、上記で定義されるプロテアーゼを生産する方法であって、
(a)プロテアーゼをコードする核酸を発現させるために適切な条件下で、上記で定義される宿主細胞を培養すること;及び、場合により、
(b)細胞培養物から上記プロテアーゼを回収すること
を含む、方法を提供することである。
【0016】
本発明はまた、少なくとも1つのポリエステル、好ましくはPLAを含有するプラスチック製品を分解する方法であって、
(a)プラスチック製品を、上記で定義されるプロテアーゼ又は宿主細胞と接触させ、それにより、プラスチック製品を分解すること;並びに、場合により、
(b)モノマー及び/又はオリゴマー、好ましくは乳酸(LA)のモノマー及び/又はオリゴマーを回収すること
を含む、方法に関する。
【0017】
本発明はまた、本発明のプロテアーゼ又は宿主細胞を含むポリエステル含有材料に関する。より好ましくは、本発明は、本発明のプロテアーゼ又は宿主細胞又は組成物を含む乳酸(PLA)含有材料に関する。本発明はまた、このようなポリエステル含有材料を生産するためのプロセスであって、ポリエステル、好ましくはPLAと、本発明のプロテアーゼ又は宿主細胞又は組成物とを混合する工程を含み、混合工程を、ポリエステルが部分的又は完全に溶融状態である温度で、好ましくは押出プロセス中に、実施する、プロセスを提供する。
【0018】
本発明は更に、ポリエステル含有材料、より好ましくはPLA含有材料を分解するための上記プロテアーゼの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1A及び1B及び1Cは、45℃で5時間インキュベーションした後における、野生型プロテアーゼ(配列番号1-
図1A)及び本発明のプロテアーゼ(V8-
図1B及びV19-
図1C)の両方についての、固体形態の乳タンパク質の分解に基づく特異的プロテアーゼ活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
定義
本開示は、以下の定義を参照することにより最も良く理解される。
【0021】
本明細書では、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」という用語は、鎖を形成するアミノ酸の数にかかわらず、ペプチド結合により連結されたアミノ酸の鎖を指す。本明細書では、アミノ酸は、以下の命名法:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リシン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N:アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:トレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp)及びY:チロシン(Tyr)にしたがってそれらの1文字又は3文字コードにより表される。
【0022】
「プロテアーゼ」という用語は、酵素命名法にしたがってEC3.4として分類される加水分解酵素のクラスに属する酵素であって、ペプチド又はタンパク質中のペプチド結合の加水分解を触媒することができる酵素を指す。「セリンプロテアーゼ」という用語は、酵素委員会の命名法にしたがってEC3.4.21として分類されるプロテアーゼを指す。
【0023】
「野生型タンパク質」又は「親タンパク質」という用語は互換的に使用され、天然に見られるポリペプチドの非突然変異バージョンを指す。親プロテアーゼの例は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有するプロテアーゼである。
【0024】
「突然変異体」及び「変異体」という用語は、野生型又は親ポリペプチド由来のポリペプチドであって、1つ以上の位置において少なくとも1つの改変又は変化、すなわち置換、挿入及び/又は欠失を含む、ポリペプチドを指すために互換的に使用され得る。変異体は、当技術分野で周知の様々な技術により得られ得る。特に、野生型タンパク質をコードするDNA配列を変化させるための技術の例としては、限定されないが、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発及び合成オリゴヌクレオチド構築が挙げられる。したがって、本明細書で使用される場合、特定の位置に関して「改変」及び「変化」という用語は、少なくともこの特定の位置のアミノ酸が、野生型タンパク質のこの特定の位置のアミノ酸と比較して改変されていることを意味する。
【0025】
「置換」は、アミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置き換えられることを意味する。好ましくは、「置換」という用語は、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基、まれに天然に存在するアミノ酸残基(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリシン、6-N-メチルリシン、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロ-イソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)、及びしばしば合成的に作られる天然に存在しないアミノ酸残基(例えば、シクロヘキシル-アラニン)から選択される別のものによるアミノ酸残基の置き換えを指す。好ましくは、「置換」という用語は、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基(G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、K、R、Q、N、E、D、S及びT)から選択される別のものによるアミノ酸残基の置き換えを指す。記号「+」は、置換の組み合わせを示す。本文書では、以下の用語が、置換を指定するために使用される:Y167Rは、親配列の位置167のアミノ酸残基チロシン(Y)がアルギニン(R)で置換されることを示す。Y167V/I/Mは、親配列の位置167のアミノ酸残基チロシン(Y)が以下のアミノ酸:バリン(V)、イソロイシン(I)又はメチオニン(M)の1つで置換されることを示す。置換は、保存的置換又は非保存的置換であり得る。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン及びトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)及び小型アミノ酸(グリシン、アラニン及びセリン)のグループ内のものである。
【0026】
特に指定がない限り、本出願に開示される位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は「同一性」という用語は、2つのポリペプチド配列間の一致(同一アミノ酸残基)の数(又はパーセンテージ%として表される割合)を指す。配列同一性は、配列ギャップを最小化しながら、重複及び同一性を最大化するようにアライメントされた場合の配列を比較することにより決定される。特に、配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、多数の数学的グローバル又はローカルアライメントアルゴリズムのいずれかを使用して決定され得る。同様の長さの配列は、好ましくは、全長にわたって最適に配列をアライメントさせるグローバルアライメントアルゴリズム(例えば、Needleman and Wunsch algorithm; Needleman and Wunsch, 1970)を使用してアライメントされるが、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアライメントアルゴリズム(例えば、Smith及び Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman, 1981)又はAltschulアルゴリズム(Altschul et al., 1997; Altschul et al., 2005))を使用してアライメントされる。%アミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当技術分野における技術の範囲内の様々な方法で、例えばインターネットウェブサイト、例えばhttp://blast.ncbi.nlm.nih.gov/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/で一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含むアライメントを測定するための適切なパラメータを決定し得る。本明細書中の目的のために、%アミノ酸配列同一性値は、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して、2つの配列の最適なグローバルアライメントを作るペアワイズ配列アライメントプログラムEMBOSS Needleを使用して生成された値を指し、全ての検索パラメータは、デフォルト値、すなわち、スコアリング行列=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップエクステンド=0.5、エンドギャップペナルティ=偽、エンドギャップオープン=10及びエンドギャップエクステンド=0.5に設定される。
【0028】
「リコンビナント」という用語は、遺伝子工学により生産される核酸構築物、ベクター、ポリペプチド又は細胞を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、ポリペプチドの生産に関与する任意の工程、例えば転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾又は及び分泌を指す。
【0030】
本発明によれば、「オリゴマー」は、2~約20個のモノマーを含有する分子を指す。
【0031】
本説明では、「ポリエステル」は、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ポリブチレンサクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリ(エチレンアジパート)(PEA)及びこれらのポリマーの任意のブレンド/混合物を包含する。特定の実施態様では、「ポリエステル」はまた、ポリ(グリコール酸)(PGA)又はポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)及びこれらのポリマーの任意のブレンド/混合物を包含する。
【0032】
本発明の文脈では、「ポリエステル含有材料」又は「ポリエステル含有製品」は、結晶性、半結晶性又は完全に非晶質の形態の少なくとも1つのポリエステルを含む製品、例えばプラスチック製品を指す。特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1つのプラスチック材料から作製された任意の物品、例えばプラスチックシート、チューブ、ロッド、プロファイル、形状、フィルム、塊状ブロック、繊維、織物などを指し、これらは、少なくとも1つのポリエステルと、場合により他の物質又は添加剤、例えば可塑剤、鉱物又は有機充填剤とを含有する。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1つのポリエステルを含む織物、布地又は繊維を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1つのポリエステルを含むプラスチック廃棄物又は繊維廃棄物を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、プラスチック製品を作製するために適切な溶融又は固体状態のプラスチック化合物又はプラスチック処方物を指す。
【0033】
本発明の文脈内では、「増加した分解活性」という用語は、配列番号1のプロテアーゼと比較して、ポリエステル、好ましくはPLA、又は少なくともポリエステル、好ましくは少なくともPLAを含むプラスチック製品若しくは材料を分解する酵素の増加した能力を示す。このような増加は、典型的には、親プロテアーゼと比較して約5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%、500%又はそれを超える。
【0034】
タンパク質の活性は、当技術分野で自体公知の方法にしたがって、当業者により評価され得る。例えば、活性は、比プロテアーゼ活性速度の測定、pNA(N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド)の加水分解の測定、ポリエステルの比脱重合活性速度の測定、アガープレート中に分散させた固体ポリエステル化合物若しくはタンパク質を分解する速度の測定、ポリエステルを含有するエマルジョンの濁度の低下の測定、又は反応器中のポリエステルの比脱重合活性速度の測定により評価され得る。
【0035】
本発明の文脈内では、ターゲットポリエステルの「比分解活性」という用語は、上記ターゲットポリエステルを含有するプラスチック製品を本発明のプロテアーゼと接触させる場合に、温度、pH及びバッファーの適切な条件下で、1時間当たり酵素1mg当たりに放出されるモノマー及び/又はオリゴマー(mg)の初期速度を表す。例として、PLAの比分解活性は、加水分解曲線の直線部分で決定されるように、1時間当たり及び酵素1mg当たりに産生される乳酸及び乳酸ダイマーのmg又は1分当たり及び酵素1mg当たりに加水分解されるPLAのμmolに対応する。
【0036】
新規プロテアーゼ
現在利用可能な酵素と比較して改善されたポリエステル分解活性を有する新規プロテアーゼの開発に取り組むことにより、本発明者らは更に、配列番号1のアミノ酸配列を有するセリンプロテアーゼを検討し、改善されたポリエステル分解活性を示すその変異体を開発することができた。特に、本発明者らは、タンパク質内の特定のアミノ酸残基であって、ポリエステル基質との接触を意図しており、ポリエステル基質とタンパク質との接触を促進するように有利に改変され得る、特定のアミノ酸残基を同定した。理論に縛られるものではないが、このような改変は、改善された分解活性をもたらすポリエステルへのプロテアーゼの吸着を増加させると考えられる。したがって、本発明者らは、配列番号1由来の新規プロテアーゼであって、より高い活性を示し、ポリエステル又はポリエステル含有製品を分解するために特に適した、新規プロテアーゼを開発することができた。興味深いことに、これらの新たなプロテアーゼは、工業プロセスにおける使用のための優れた特性を有する。新たに開発されたプロテアーゼは、分解性プラスチック製品の工業生産が実施され得る条件、及び/又はプラスチック製品の環境分解を得られ得る条件で、改善された活性を示す。
【0037】
一実施態様によれば、プロテアーゼは、配列番号1のプロテアーゼの変異体であって、配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも1つの置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有する、変異体である。
【0038】
得られるポリペプチドがプロテアーゼ活性を保持する限り、ターゲットアミノ酸(単数又は複数)は、天然に存在するアミノ酸残基、まれに天然に存在するアミノ酸残基及び天然に存在しないアミノ酸残基から選択される任意のアミノ酸で潜在的に置き換えられ得る。好ましくは、ターゲットアミノ酸(単数又は複数)は、19個の他のアミノ酸のいずれか1つで置き換えられ得る。
【0039】
或いは又は加えて、本発明のプロテアーゼは、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)、好ましくはS101F/L/M/W/Yから選択される少なくとも1つの置換、より好ましくは少なくとも置換S101Fを有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す。以下の全ての制限は、両実施態様に適用され得る。
【0040】
特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において、好ましくは位置S101又はS103において、配列番号1と比較して単一の置換を含む。好ましくは、プロテアーゼ変異体は、S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される、より好ましくはS101F又はS103Lから選択される単一の置換を含む。
【0041】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、置換S101F(V1)、S103L(V2)、T106I(V3)、G131I(V4)、G133K(V5)、S101L(V14)、S101M(V15)、S101W(V16)、S101Y(V17)又はT106L(V18)を除いて、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。
【0042】
別の特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、配列番号1と比較して2つ以上の置換を含み、少なくとも1つの置換は、S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置にある。好ましい実施態様では、変異体は、位置S101、S103又はT106において少なくとも1つの置換を含む。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される少なくとも1つの置換(a least one substitution)を含む。好ましくは、プロテアーゼ変異体は、少なくとも置換S101F、S103L又はT106I/Lを含む。
【0043】
別の特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも2つの置換を含む。有利には、プロテアーゼ変異体は、S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される少なくとも2つの置換を含む。
【0044】
或いは又は加えて、本発明のプロテアーゼは、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)位置S101及びS103の両方において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す。有利には、置換は、S101F/L/M/W/Y及びS103Lから選択され、好ましくはS101F及びS103Lにある。
【0045】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、S101F/L/M/W/Y+S103Lから選択される置換の組み合わせを除いて、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。
【0046】
或いは又は加えて、本発明のプロテアーゼは、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)位置S103及びT106の両方において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す。有利には、置換は、S103L及びT106I/Lから選択される。
【0047】
或いは又は加えて、本発明のプロテアーゼは、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)位置S101及びT106の両方において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す。有利には、置換は、S101F/L/M/W/Y及びT106I/Lから選択され、好ましくはS101F及びT106I/Lにある。
【0048】
或いは又は加えて、本発明のプロテアーゼは、(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)位置T106及びG133の両方において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有し、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す。有利には、置換は、T106I/L及びG133Kから選択される。
【0049】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、S101F+S103L、S101F+T106I、T106I+G133Kから選択される少なくとも2つの置換、好ましくは少なくとも組み合わせS101F+S103Lを含む。
【0050】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、S101F+S103L(V6)、S101F+T106I(V7)、S103L+T106L及びT106I+G133K(V9)から選択される置換の組み合わせ、好ましくは組み合わせS101F+S103Lを除いて、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。
【0051】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも3つの置換を含む。有利には、プロテアーゼ変異体は、S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される少なくとも3つの置換を含む。特定の実施態様によれば、プロテアーゼ変異体は、位置S101+S103+G133において少なくとも3つの置換、好ましくはS101F+S103L+G133Kを含む。別の特定の実施態様によれば、プロテアーゼ変異体は、位置S101+T106+G133において少なくとも3つの置換、好ましくはS101F+T106I+G133Kを含む。好ましい実施態様では、プロテアーゼ変異体は、位置S101+S103+T106において少なくとも3つの置換、好ましくはS101F+S103L+T106I/Lを含む。
【0052】
特定の実施態様によれば、プロテアーゼは、S101F+S103L+G133K、S101F+S103L+T106I、S101F+T106I+G133K、S101F+S103L+T106L、好ましくはS101F+S103L+T106I又はS101F+S103L+T106Lから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0053】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、置換の組み合わせS101F+S103L+G133K(V10)、S101F+S103L+T106I(V8)、S101F+T106I+G133K(V11)又はS101F+S103L+T106L(V19)を除いて、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。
【0054】
特定の実施態様によれば、プロテアーゼは、S101F+S103L+T106I+G133K又はS101F+S103L+T106I+G131Iから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0055】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、置換の組み合わせS101F+S103L+T106I+G133K(V12)又はS101F+S103L+T106I+G131I(V13)を除いて、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。
【0056】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、D12、L21、T175、S194、H197、G212、I217又はR247から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)、好ましくはD12C+L21C、T175C+R247C、S194P、H197D、G212N又はI217Kから選択される少なくとも1つの置換を更に含む。
【0057】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、配列番号28に記載されているアミノ酸配列と、S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも1つの置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)とを有する。好ましくは、プロテアーゼは、配列番号28に記載されているアミノ酸配列と、S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)、より好ましくはS101F/L/M/W/Yから選択される少なくとも1つの置換、より好ましくは少なくとも置換S101Fとを有する。
【0058】
プロペプチド
有利には、プロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、N末端において、プロテアーゼの3Dフォールディング及び成熟に少なくとも部分的に関与する「プロペプチド」(配列番号2)として作用するアミノ酸配列を含む。
【0059】
特に、プロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、N末端において、配列番号2に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0060】
特定の実施態様によれば、プロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、N末端において、配列番号2に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、M8、D75、A76、I78又はD81から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている)を有するアミノ酸配列を含む。本発明によれば、ターゲットアミノ酸(単数又は複数)は、標準的な天然に存在するアミノ酸残基、まれに天然に存在するアミノ酸残基及び天然に存在しないアミノ酸残基から選択される他のアミノ酸残基のいずれか1つで置き換えられ得る。好ましくは、ターゲットアミノ酸(単数又は複数)は、19種の他のアミノ酸のいずれか1つで置き換えられ得る。
【0061】
ポリエステル分解活性
本発明の目的は、プロテアーゼ活性を有する新たな酵素を提供することである。
【0062】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼは、ポリエステル分解活性、好ましくはポリ乳酸分解活性を有する。好ましくは、本発明のプロテアーゼは、配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す。
【0063】
有利には、本発明のプロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、少なくとも10℃~90℃、好ましくは20℃~70℃、より好ましくは30℃~60℃の温度範囲、更により好ましくは45℃で、ポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、ポリエステル分解活性は、40℃~60℃、好ましくは50℃~60℃の温度で依然として測定可能である。別の特定の実施態様では、ポリエステル分解活性は、自然環境における平均温度に対応する10℃~30℃、好ましくは15℃~28℃の温度で依然として測定可能である。
【0064】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、所定の温度で、より具体的には20℃~80℃、より好ましくは30℃~70℃、更により好ましくは40℃~60℃、更により好ましくは45℃の温度で、配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を有する。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、45℃で、配列番号1のプロテアーゼのポリエステル分解活性よりも少なくとも5%高い、好ましくは少なくとも10%、20%、50%、100%、200%、300%、500%又はそれを超えるポリエステル分解活性を有する。
【0065】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、10~30℃、より好ましくは15℃~30℃、更により好ましくは20~30℃、更により好ましくは28℃の温度で、配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を有する。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、28℃で、配列番号1のプロテアーゼのポリエステル分解活性よりも少なくとも5%高い、好ましくは少なくとも10%、20%、50%、100%、200%、300%、500%又はそれを超えるポリエステル分解活性を有する。
【0066】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、少なくともpH5~11の範囲、好ましくはpH7~10の範囲、より好ましくはpH7.5~9の範囲、更により好ましくはpH7.5及び9の両方で、測定可能なポリエステル分解活性を示す。
【0067】
熱安定性
有利には、本発明の変異体プロテアーゼの熱安定性は、配列番号1の親プロテアーゼの熱安定性と比較して損なわれない。より有利には、変異体の熱安定性は、親プロテアーゼの熱安定性と比較して改善される。本発明の文脈内では、「改善された熱安定性」という用語は、高温で、より具体的には40℃~90℃、例えば70℃の温度で、配列番号1のプロテアーゼと比較して、その化学的及び/又は物理的構造の変化に抵抗する酵素の増加した能力を示す。特に、本発明のプロテアーゼは、40℃~90℃、例えば70℃の温度で、配列番号1のプロテアーゼと比較して増加した残存分解活性を有し得る。特に、本発明のプロテアーゼは、40℃~90℃、例えば70℃の温度で、配列番号1のプロテアーゼと比較して増加した半減期を有し得る。特に、本発明の変異体は、押出プロセス中に、より具体的には、50℃~250℃、好ましくは130℃~180℃に含まれる温度で実行される押出プロセス中に、改善された熱安定性を示す。
【0068】
タンパク質の熱安定性は、当技術分野で自体公知の方法にしたがって、当業者により評価され得る。例えば、熱安定性は、異なる温度におけるインキュベーション後の酵素の残存プロテアーゼ活性及び/又は残存ポリエステル脱重合活性(すなわち、ポリエステル分解活性)を測定することにより評価され得る。異なる温度における複数ラウンドのポリエステルの脱重合アッセイを実施する能力も評価され得る。迅速かつ定性的な試験は、ハロー直径測定による、異なる温度におけるインキュベーション後にアガープレート中に分散された固体ポリエステル化合物を分解する酵素能力の評価にあり得る。或いは又は加えて、示差走査蛍光分析(DSF)は、タンパク質/酵素の熱安定性を評価するために実施され得る。本発明の文脈では、円二色性は、タンパク質の熱変性温度の変化を定量することにより、その融解温度(Tm)を決定するために使用される。本発明の文脈では、所定のタンパク質の「融解温度(Tm)」は、当該タンパク質の半分が変性(アンフォールディング又はミスフォールディング)される温度に対応する。Tmは、実験の部で明らかされているように、円二色性を使用して測定され得る。
【0069】
有利には、本発明のプロテアーゼは、配列番号1のプロテアーゼと比較して高い又は同等の融解温度(Tm)を示す。特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼは、40℃超、好ましくは45℃超、より好ましくは50℃超の融解温度(Tm)を示す。
【0070】
核酸、発現カセット、ベクター、宿主細胞
本発明の更なる目的は、上記で定義されるプロテアーゼをコードする核酸を提供することである。
【0071】
本明細書で使用される場合、「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「ヌクレオチド配列」という用語は互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドの配列を指す。核酸は、DNA(cDNA又はgDNA)、RNA又はそれらの混合物であり得る。それは、一本鎖形態若しくは二本鎖形態又はそれらの混合物であり得る。それは、リコンビナント、人工及び/又は合成起源のものであり得、それは、例えば、改変結合、改変プリン若しくはピリミジン塩基又は改変糖を含む改変ヌクレオチドを含み得る。本発明の核酸は、単離又は精製された形態であり得、当技術分野で自体公知の技術、例えばcDNAライブラリーのクローニング及び発現、増幅、酵素合成又はリコンビナント技術により作製、単離及び/又は操作され得る。核酸はまた、例えば、Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444に記載されているように、周知の化学合成技術によりin vitroで合成され得る。
【0072】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、上記で定義されるプロテアーゼをコードする核酸にハイブリダイズする核酸を包含する。好ましくは、このようなストリンジェントな条件は、2×SSC/0.1%SDS中、約42℃で約2.5時間のハイブリダイゼーションフィルタのインキュベーション、続いて、1×SSC/0.1%SDS中、65℃で15分間の4回の同フィルタの洗浄を含む。使用されるプロトコールは、Sambrook et al. (Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor N.Y. (1988))及びAusubel (Current Protocols in Molecular Biology (1989))などの参考文献に記載されている。
【0073】
本発明はまた、本発明のプロテアーゼをコードする核酸であって、当該核酸の配列又は当該配列の一部が、少なくとも最適化されたコドン使用法を使用して操作されている、核酸を包含する。
【0074】
或いは、本発明の核酸は、本発明のプロテアーゼの配列から推定され得、コドン使用法は、核酸が転写される宿主細胞に応じて適合され得る。これらの工程は、当業者に周知の方法にしたがって行われ得、これらのいくつかは、参考マニュアルSambrook et al. (Sambrook et al., 2001)に記載されている。
【0075】
本発明の核酸は、更なるヌクレオチド配列、例えば調節領域、すなわち、選択された宿主細胞又は系においてポリペプチドの発現を引き起こすか又はレギュレーションするために使用され得るプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、ターミネーター、シグナルペプチドなどを更に含み得る。或いは又は加えて、本発明の核酸は、ポリペプチドの発現及び/又は溶解性を促進するために使用され得る融合タンパク質、例えばマルトース結合タンパク質(MBP)又はグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)をコードする更なるヌクレオチド配列を更に含み得る。
【0076】
本発明は更に、適切な宿主細胞において核酸の発現を指向する1つ以上のコントロール配列に作動可能に連結された本発明の核酸を含む発現カセットに関する。「発現カセット」という用語は、コード領域、すなわち本発明の核酸及び調節領域を含む、すなわち、1つ以上のコントロール配列(例えば、転写プロモーター及び/又は転写ターミネーター)を含む核酸構築物を表す。コントロール配列は、本発明のプロテアーゼをコードする核酸の発現のための宿主細胞又はin vitro発現系により認識されるプロモーターを含み得る。プロモーターは、酵素の発現を媒介する転写コントロール配列を含有する。プロモーターは、突然変異体、トランケート及びハイブリッドのプロモーターを含む宿主細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであり得、宿主細胞に対して同種又は異種のいずれかの細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られ得る。コントロール配列はまた、転写を終了させるために宿主細胞により認識される転写ターミネーターであり得る。ターミネーターは、プロテアーゼをコードする核酸の3’末端に作動可能に連結される。宿主細胞において機能的である任意のターミネーターが、本発明において使用され得る。典型的には、発現カセットは、転写プロモーター及び転写ターミネーターに作動可能に連結された本発明の核酸を含むか又はそれからなる。
【0077】
本発明はまた、上記で定義される核酸又は発現カセットを含むベクターに関する。
【0078】
「ベクター」という用語は、リコンビナント遺伝物質を宿主細胞に移入するためのビヒクルとして使用されるDNA又はRNAの分子を指す。ベクターは、線状又は環状一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAであり得る。ベクターは、組み込み型又は染色体外型又は自己複製型であり得る。好ましくは、発現ベクターは、線状又は環状二本鎖DNA分子である。ベクターの主なタイプは、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、ホスミド、コスミド及び人工染色体である。ベクターそれ自体は、一般に、インサート(異種核酸配列、導入遺伝子)と、ベクターの「骨格」として機能するより大きな配列からなるDNA又はRNA配列である。遺伝情報を宿主に移入するベクターの目的は、典型的には、ターゲット細胞においてインサートを単離し、増幅させ又は発現させることである。発現ベクター(発現構築物)と称されるベクターは、ターゲット細胞における異種配列の発現のために特異的に適合され、一般に、ポリペプチドをコードする異種配列の発現を駆動するプロモーター配列を有する。本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、本発明の発現カセットを含むDNA又はRNA分子を意味する。一般に、発現ベクター中に存在する調節エレメントは、転写プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター及び場合により存在するオペレーターを含む。好ましくは、発現ベクターはまた、宿主細胞における自律複製のための複製起点、選択マーカー、限られた数の有用な制限酵素部位及び高コピー数能力を含有する。発現ベクターの例は、クローニングベクター、改変クローニングベクター、特殊設計プラスミド及びウイルスである。異なる宿主において適切なレベルのポリペプチド発現を提供する発現ベクターは、当技術分野で周知である。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、ベクターが導入される宿主細胞との適合性に依存する。好ましくは、発現ベクターは、線状又は環状二本鎖DNA分子である。
【0079】
本発明の別の目的は、上記核酸、発現カセット又はベクターを含む宿主細胞を提供することである。したがって、本発明は、宿主細胞をトランスフォーメーション、トランスフェクション又はトランスダクションするための、本発明の核酸、発現カセット又はベクターの使用に関する。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、それが導入されなければならない宿主細胞との適合性に依存する。
【0080】
本発明によれば、宿主細胞は、一過性的又は安定的にトランスフォーメーション、トランスフェクション又はトランスダクションされ得る。本発明の発現カセット又はベクターは、カセット又はベクターが染色体組み込み体として又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように宿主細胞に導入される。「宿主細胞」という用語はまた、複製中に生じる突然変異のために親宿主細胞と同一ではない親宿主細胞の任意の子孫を包含する。宿主細胞は、本発明の変異体の生産に有用な任意の細胞、例えば原核生物又は真核生物であり得る。原核生物宿主細胞は、任意のグラム陽性又はグラム陰性細菌であり得る。宿主細胞はまた、真核細胞、例えば酵母、真菌、哺乳動物、昆虫又は植物細胞であり得る。特定の実施態様では、宿主細胞は、Escherichia coli、Bacillus、Streptomyces、Trichoderma、Aspergillus、Saccharomyces、Pichia、Thermus、Actinomadura又はYarrowiの群から選択される。
【0081】
本発明の核酸、発現カセット又は発現ベクターは、当業者に公知の任意の方法、例えばエレクトロポレーション、接合、トランスダクション、コンピテント細胞トランスフォーメーション、プロトプラストトランスフォーメーション、プロトプラスト融合、バイオリスティック「遺伝子銃」トランスフォーメーション、PEG媒介トランスフォーメーション、脂質補助トランスフォーメーション又はトランスフェクション、化学的媒介トランスフェクション、酢酸リチウム媒介トランスフォーメーション、リポソーム媒介トランスフォーメーションにより、宿主細胞に導入され得る。
【0082】
場合により、1コピーを超える本発明の核酸、カセット又はベクターを宿主細胞に挿入して、変異体の産生を増加させ得る。
【0083】
特定の実施態様では、宿主細胞は、リコンビナント微生物である。実際、本発明は、ポリエステル含有材料を分解する改善された能力を有する微生物の操作を可能にする。例えば、株能力を改善し及び/又は増加させるために、本発明の配列を使用して、ポリエステルを分解することができることが既に公知の真菌又は細菌の野生型株を補完し得る。
【0084】
プロテアーゼ変異体の生産
本発明の別の目的は、本発明のプロテアーゼ変異体を生産する方法であって、当該プロテアーゼをコードする核酸を発現させること、及び場合により当該プロテアーゼを回収することを含む、方法を提供することである。
【0085】
特に、本発明は、本発明のプロテアーゼを生産するin vitro方法であって、(a)本発明の核酸、カセット又はベクターをin vitro発現系と接触させること、及び(b)産生されたプロテアーゼを回収することを含む、in vitro方法に関する。in vitro発現系は当業者に周知であり、市販されている。
【0086】
好ましくは、生産方法は、
(a)核酸を発現させるために適切な条件下で、本発明のプロテアーゼをコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること;及び、場合により、
(b)細胞培養物から上記プロテアーゼを回収すること
を含む。
【0087】
有利には、宿主細胞は、リコンビナントBacillus、リコンビナントE. coli、リコンビナントAspergillus、リコンビナントTrichoderma、リコンビナントStreptomyces、リコンビナントSaccharomyces、リコンビナントPichia、リコンビナントThermus、リコンビナントActinomadura又はリコンビナントYarrowiaである。好ましくは、宿主細胞は、リコンビナントBacillusである。
【0088】
宿主細胞は、当技術分野で公知の方法を使用して、ポリペプチドの産生に適切な栄養培地中で培養される。例えば、適切な培地中、酵素を発現させ及び/又は単離することを可能にする条件下、実施される実験室又は工業発酵槽において、振盪フラスコ培養又は小規模若しくは大規模発酵(連続、バッチ、フェドバッチ又は固体状態発酵を含む)により、細胞は培養され得る。培養は、商業的供給業者から若しくは(例えば、American Type Culture Collectionのカタログに)公開されている組成にしたがって調製された適切な栄養培地又は細胞増殖に適した任意の他の培養培地中で行う。
【0089】
プロテアーゼが栄養培地中に排出される場合、プロテアーゼは、培養上清から直接回収され得る。逆に、プロテアーゼは、細胞ライゼートから又は透過処理後に回収され得る。プロテアーゼは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して回収され得る。例えば、プロテアーゼは、限定されないが、収集、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿を含む従来の手順により、栄養培地から回収され得る。場合により、実質的に純粋なポリペプチドを得るために、プロテアーゼは、限定されないが、熱ショック(thermal chock)、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動手順(例えば、調製用等電点電気泳動)、示差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE又は抽出を含む当技術分野で公知の様々な手順により部分的又は全体的に精製され得る。
【0090】
プロテアーゼはそのままで、精製形態で、単独で、又はポリエステル(単数若しくは複数)及び/若しくはポリエステル含有材料、例えばポリエステルを含有するプラスチック製品の分解及び/若しくはリサイクルに関与する酵素反応を触媒するための更なる酵素と組み合わせて使用され得る。プロテアーゼは、可溶性形態又は固相上にあり得る。特に、それは、細胞膜若しくは脂質小胞に、又は合成支持体、例えばガラス、プラスチック、ポリマー、フィルタ、膜、例えばビーズ、カラム、プレートなどの形態で、結合され得る。
【0091】
組成物
本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ又は宿主細胞若しくはその抽出物を含む組成物を提供することである。本発明の文脈では、「組成物」という用語は、本発明のプロテアーゼ又は宿主細胞を含む任意の種類の組成物を包含する。特定の実施態様では、プロテアーゼは、単離された又は少なくとも部分的に精製された形態である。
【0092】
組成物は、液体又は乾燥物、例えば粉末の形態であり得る。いくつかの実施態様では、組成物は、凍結乾燥物である。例えば、組成物は、本発明のプロテアーゼ及び/又はプロテアーゼをコードする宿主細胞若しくは当該プロテアーゼを含有するその抽出物と、場合により賦形剤及び/又は試薬などとを含み得る。適切な賦形剤は、生化学において一般に使用されるバッファー、pHを調節するための薬剤、保存剤(例えば安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウム)、保存剤、保護剤又は安定化剤(例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム、塩、糖、例えばソルビトール、トレハロース又はラクトース、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリエテングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、二価イオン、例えばカルシウム)、金属イオン封鎖剤(例えばEDTA)、還元剤、アミノ酸、担体(例えば溶媒又は水溶液)などを包含する。本発明の組成物は、プロテアーゼを1つ又はいくつかの賦形剤と混合することにより得られ得る。
【0093】
本発明の組成物は、0.1重量%~99.9重量%、好ましくは0.1重量%~50重量%、より好ましくは0.1重量%~30重量%、更により好ましくは0.1重量%~5重量%の本発明のプロテアーゼと、0.1重量%~99.9重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、より好ましくは70重量%~99.9重量%、更により好ましくは95重量%~99.9重量%の賦形剤(単数又は複数)とを含み得る。好ましい組成物は、0.1~5重量%の本発明のプロテアーゼを含む。別の実施態様では、本発明の組成物は、0.1重量%~40重量%、より好ましくは1重量%~30重量%、更により好ましくは5重量%~25重量%の本発明のプロテアーゼと、60重量%~99.9重量%、好ましくは70重量%~99重量%、より好ましくは75重量%~95重量%の賦形剤(単数又は複数)とを含み得る。
【0094】
特定の実施態様では、組成物は、酵素活性を示す更なるポリペプチド(単数又は複数)を更に含み得る。本発明のプロテアーゼの量は、例えば、分解すべきポリエステル及び/若しくはポリエステル含有材料の性質並びに/又は組成物に含まれる更なる酵素/ポリペプチドに応じて、当業者により容易に適合される。
【0095】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼは、1つ又はいくつかの賦形剤、特に、ポリペプチドを安定化することができるか又は分解から保護することができる賦形剤と一緒に、水性媒体中に可溶化される。例えば、本発明のプロテアーゼは、最終的には、更なる成分、例えばグリセロール、ソルビトール、デキストリン、デンプン、グリコール、例えばプロパンジオール、塩などと共に水中に可溶化され得る。次いで、得られた混合物は、粉末を得るために乾燥され得る。このような混合物を乾燥させるための方法は当業者に周知であり、限定されないが、凍結乾燥、フリーズドライ、噴霧乾燥、超臨界乾燥、ダウンドラフト蒸発、薄層蒸発、遠心蒸発、コンベヤー乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0096】
更なる特定の実施態様では、本発明の組成物は、本発明のプロテアーゼを発現する少なくとも1つの宿主細胞又はその抽出物を含む。「細胞の抽出物」は、細胞から得られた任意の画分、例えば細胞上清、細胞破片、細胞壁、DNA抽出物、酵素若しくは酵素調製物又は化学的、物理的及び/若しくは酵素的処理により細胞から得られた任意の調製物を表し、これは、生細胞を本質的に含まない。好ましい抽出物は、酵素活性抽出物である。本発明の組成物は、1つ又はいくつかの本発明の宿主細胞又は本発明のプロテアーゼを含有するその抽出物と、場合により1つ又はいくつかの更なる細胞とを含み得る。
【0097】
特定の実施態様では、組成物は、本発明のプロテアーゼを発現及び/又は分泌するリコンビナント微生物の凍結乾燥培養培地からなるか又はそれを含む。特定の実施態様では、粉末は、本発明のプロテアーゼと、安定化/可溶化量のグリセロール、ソルビトール又はデキストリン、例えばマルトデキストリン及び/若しくはシクロデキストリン、デンプン、アラビアゴム、グリコール、例えばプロパンジオール、及び/又は塩とを含む。
【0098】
プロテアーゼの使用
本発明の更なる目的は、好気性又は嫌気性条件で、ポリエステルから作製された若しくはそれを含有するプラスチック製品のようなポリエステル及び/若しくはポリエステル含有材料を分解及び/若しくはリサイクルし、並びに/又はポリエステルを含有する生分解性プラスチック製品を生産するために、本発明のプロテアーゼを使用する方法を提供することである。本発明のプロテアーゼは、PLAを含有する生分解性プラスチック製品を生産するために、並びに/又はPLA及びPLAを含むプラスチック製品を分解するために特に有用である。
【0099】
したがって、本発明の目的は、ポリエステル又はポリエステル含有材料、例えばPLA又はPLA含有材料の酵素的分解のために、本発明のプロテアーゼ又は対応する宿主細胞若しくはこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物又は組成物を使用することである。
【0100】
本発明の別の目的は、ポリエステル又は少なくとも1つのポリエステルを含有するプラスチック製品を分解するための方法であって、当該ポリエステル又は当該プラスチック製品を本発明のプロテアーゼ又は宿主細胞又は組成物と接触させる、方法を提供することである。有利には、ポリエステル(単数又は複数)及び/又はポリエステル含有材料のポリエステル(単数又は複数)は、モノマー及び/又はオリゴマーまで脱重合される。分解方法の一実施態様では、少なくとも1つのポリエステルが分解されて、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーが得られ、有利には、使用するためにこれらを回収する。分解方法の好ましい実施態様では、少なくともPLAが分解されて、乳酸(LA)の再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーが得られ、有利には、例えばPLAの新たなポリマーを生産するために使用するためにこれらを回収する。
【0101】
一実施態様では、ポリエステル(単数又は複数)及び/又はポリエステル含有材料のポリエステル(単数又は複数)は、完全に分解される。
【0102】
特定の実施態様では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ポリブチレンサクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)及びそれらのブレンド/混合物から選択され、好ましくはポリ乳酸である。
【0103】
特定の実施態様では、プラスチック製品は、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ポリブチレンサクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)及びこれらの材料のブレンド/混合物から選択される少なくとも1つのポリエステル、好ましくはポリ乳酸を含む。
【0104】
特定の実施態様では、PLA又はPLAを含有するプラスチック製品を本発明のプロテアーゼ又は宿主細胞と接触させ、PLAを乳酸のモノマー及び/又はオリゴマーに分解する。好ましい実施態様では、乳酸のモノマー及び/又はオリゴマーは、例えば、リサイクルし、PLAを重合し又はメタン化するために回収される。
【0105】
本発明はまた、ポリエステル又はポリエステル含有材料からモノマー及び/又はオリゴマーを生産する方法であって、ポリエステル又はポリエステル含有材料を本発明のプロテアーゼ又は対応する宿主細胞若しくはその抽出物又は組成物に曝露すること、並びに場合によりモノマー及び/又はオリゴマーを回収することを含む、方法に関する。本発明の方法は、PLAを含有するプラスチック製品から乳酸などのモノマーを生産するために特に有用である。
【0106】
ポリエステル又はポリエステル含有材料を分解するために必要な時間は、ポリエステル又はポリエステル含有材料自体(すなわち、プラスチック製品の性質及び起源、その組成、形状など)、使用されるプロテアーゼのタイプ及び量並びに様々なプロセスパラメータ(すなわち、温度、pH、更なる薬剤など)に応じて変動し得る。当業者は、プロセスパラメータをポリエステル含有材料に容易に適合させ得る。
【0107】
有利には、分解プロセスは、10℃~90℃、好ましくは20℃~70℃、より30℃~60℃に含まれる温度、更により好ましくは45℃で実行される。より一般には、温度は、プロテアーゼが不活性化される及び/又はリコンビナント微生物がもはやプロテアーゼを合成しない温度に対応する不活性化温度未満に維持される。好ましくは、温度は、ポリエステル含有材料中のポリエステルのガラス転移点(Tg)未満に維持される。この実施態様では、分解プロセスは、80℃未満、好ましくは70℃未満、より好ましくは60℃未満、より好ましくは50℃未満に含まれる温度、更により好ましくは45℃で実行される。より具体的には、当該プロセスは、プロテアーゼが複数回使用及び/又はリサイクルされ得る温度で、連続的な方法で実行される。
【0108】
有利には、分解プロセスは、5~11に含まれるpH、好ましくはpH7~10、より好ましくはpH7.5~9、更により好ましくはpH7.5又はpH9で実行される。
【0109】
特定の実施態様では、ポリエステル又はポリエステル含有材料は、プロテアーゼと接触させる前に、その構造を物理的に変化させて、ポリエステルと酵素との間の接触表面を増加させるために、前処理され得る。
【0110】
場合により、脱重合から生じるモノマー及び/又はオリゴマーは、逐次的に又は連続的に回収され得る。単一のタイプのモノマー及び/若しくはオリゴマー又はいくつかの異なるタイプのモノマー及び/若しくはオリゴマーは、出発ポリエステル含有材料に応じて、回収され得る。
【0111】
回収されたモノマー及び/又はオリゴマーは、全ての適切な精製方法を使用して更に精製され得、再重合可能な形態にコンディショニングされ得る。精製方法の例としては、組み合わせ又は非組み合わせで、ストリッピングプロセス、水溶液による分離、水蒸気選択的凝縮、バイオプロセス後の培地の濾過及び濃縮、分離、蒸留、真空蒸発、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、沈殿、結晶化、濃縮並びに酸添加脱水及び沈殿、ナノ濾過、酸触媒処理、半連続モード蒸留又は連続モード蒸留、溶媒抽出、蒸発濃縮、蒸発結晶化、液/液抽出、水素化、共沸蒸留プロセス、吸着、カラムクロマトグラフィ、単純な真空蒸留並びに微小濾過が挙げられる。
【0112】
次いで、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーは、例えば、ポリエステルを合成するために使用され得る。有利には、同じ性質のポリエステルが再重合される。しかしながら、例えば、新たなコポリマーを合成するために、回収されたモノマー及び/又はオリゴマーを他のモノマー及び/又はオリゴマーと混合することが可能である。或いは、回収されたモノマーは、目的の新たな化合物を生産するために、化学中間体として使用され得る。
【0113】
本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ並びに/又は当該プロテアーゼを発現及び/若しくは分泌するリコンビナント微生物及び/若しくはこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物、並びに/又は本発明の組成物が含まれる、ポリエステル又はポリエステル含有材料を提供することである。特定の実施態様では、このようなポリエステル含有材料は、プラスチック化合物、マスターバッチ組成物及び/又はプラスチック製品であり得る。本発明の文脈では、「マスターバッチ組成物」は、所望の特性を付与するために、選択された成分(例えば、活性剤、添加剤など)をプラスチック化合物又は製品に導入するために使用され得る当該成分の濃縮混合物を指す。マスターバッチ組成物は、固体又は液体であり得る。好ましくは、本発明のマスターバッチ組成物は、少なくとも10重量%の活性成分、より好ましくは本発明のプロテアーゼ又は組成物を含有する。
【0114】
したがって、本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ並びに/又は当該プロテアーゼを発現及び/若しくは分泌するリコンビナント微生物若しくはこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物並びに/又は本発明の組成物と、少なくとも1つのポリエステルとを含有する、プラスチック化合物を提供することである。特定の実施態様では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、好ましくはポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)又はポリ(DL-乳酸)(PDLLA)である。特定の実施態様では、プラスチック化合物は、ポリエステル、例えばPBAT、PCL、PET;ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン又は天然ポリマー、例えばデンプン、セルロース若しくは小麦粉;及びそれらのブレンド/混合物から好ましくは選択される、更なるポリマーを含有し得る。より具体的には、プラスチック化合物は、PBAT、小麦粉又はデンプンから選択される更なるポリマーを含有し得る。別の特定の実施態様では、ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)である。
【0115】
したがって、本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ並びに/又は当該プロテアーゼを発現及び/若しくは分泌するリコンビナント微生物若しくはこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物並びに/又は本発明の組成物と、少なくとも1つのポリエステルとを含有する、マスターバッチ組成物を提供することである。特定の実施態様では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、好ましくはポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)又はポリ(DL-乳酸)(PDLLA)である。別の特定の実施態様では、ポリエステルは、好ましくは、ポリカプロラクトン(PCL)である。
【0116】
特に、本発明は、このようなポリエステル含有材料(すなわち、プラスチック化合物、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)を生産するためのプロセスであって、プロテアーゼ/微生物がポリエステル含有材料のまさに構造中に統合されるように、ポリエステルが部分的又は完全に溶融状態にある温度で、ポリエステルと、当該ポリエステルを分解することができる本発明のプロテアーゼ並びに/又はリコンビナント微生物若しくはこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物並びに/又は本発明の組成物とを混合する工程を含む、プロセスに関する。特定の実施態様では、当該プロセスは、押出プロセスである。
【0117】
例えば、本発明のプロテアーゼ及び/若しくは組成物とポリエステルとは、当該ポリエステルのガラス転移点~融点の温度で混合され得る。或いは、本発明のプロテアーゼ/組成物とポリエステルとは、当該ポリエステルの融点に対応する温度又はそれを超える温度で混合され得る。特定の実施態様では、プロテアーゼ/組成物とポリエステルとは、40℃~250℃、好ましくは50℃~180℃の温度で混合される。或いは、ポリペプチド/組成物とポリエステルとは、40℃超、好ましくは50℃超、更により好ましくは60℃超の温度で混合される。
【0118】
好ましい実施態様では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)から選択され、プロテアーゼ/組成物とPLAとは、60℃~250℃、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは130℃~180℃、更により好ましくは140℃~160℃の温度で混合される。或いは、プロテアーゼ/組成物とPLAとは、80℃超、好ましくは100℃超、更により好ましくは130℃超、かつ180℃未満の温度で混合される。
【0119】
別の好ましい実施態様では、ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)から選択され、プロテアーゼ/組成物とPCLとは、40℃~100℃、好ましくは50℃~80℃の温度で混合される。或いは、プロテアーゼ/組成物とPCLとは、40℃超、好ましくは50℃超、更により好ましくは55℃超、かつ80℃未満の温度で混合される。
【0120】
より好ましくは、混合工程は、押出、二軸押出、一軸押出、射出成形、鋳造、熱成形、回転成形、圧縮、カレンダー加工、アイロン掛け、コーティング、層化、膨張、引抜成形、押出ブロー成形、押出-膨潤、圧縮-造粒、水中油中水型二重エマルジョン蒸発、3D印刷又は当業者に公知の任意の技術を使用して実施される。
【0121】
得られたプラスチック化合物、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品は、化合物、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品の塊に包埋された本発明のプロテアーゼ/微生物又は組成物を統合する。
【0122】
有利には、このようなプラスチック化合物、マスターバッチ組成物は、このように本発明のポリペプチドを含むようになるポリエステル含有材料及び/又はプラスチック品の生産に使用され得る。
【0123】
特定の実施態様では、得られたプラスチック化合物、マスターバッチ組成物又はプラスチック品は、当業者に公知の関連する標準及び/又はラベル、例えば標準EN13432、標準ASTM D6400、OK Biodegradation Soil (Label Vincotte)、OK Biodegradation Water (Label Vincotte)、OK Compost (Label Vincotte)、OK Home Compost (Label Vincotte)の少なくとも1つに準拠する生分解性プラスチック化合物、マスターバッチ組成物又はプラスチック品である。
【0124】
有利には、ポリエステル含有材料(すなわち、プラスチック化合物、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)の分解プロセスは、10℃~50℃、好ましくは15℃~40℃、より好ましくは20℃~30℃、より好ましくは28℃+/-2℃に含まれる温度で実行される。
【0125】
或いは、ポリエステル含有材料(すなわち、プラスチック化合物、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)の分解プロセスは、50℃~60℃、より好ましくは55℃+/-2℃に含まれる温度で実行される。
【0126】
興味深いことに、配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼは、上記で引用されている用途において使用され得る。
【0127】
古典的には、本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼは、洗剤、食品、動物飼料及び医薬用途において使用され得る。
【0128】
より具体的には、本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼは、洗剤組成物の成分として使用され得る。
【0129】
洗剤組成物としては、限定されないが、手洗い又は機械洗濯の洗剤組成物、例えば、汚れた布地の前処理に適切な洗濯添加剤組成物及びすすぎに添加される布地柔軟剤組成物、一般家庭用硬質表面洗浄作業に使用するための洗剤組成物、手洗い又は機械の食器洗い作業のための洗剤組成物が挙げられる。
【0130】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼは、洗剤添加剤として使用され得る。したがって、本発明は、本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを含む洗剤組成物を提供する。
【0131】
本発明はまた、本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを動物飼料中で使用するための方法、並びに本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを含む飼料組成物及び飼料添加剤に関する。「飼料」及び「飼料組成物」という用語は、動物による摂取に適切な又はそれを目的とする任意の化合物、調製物、混合物又は組成物を指す。別の特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼは、タンパク質を加水分解するため、そしてペプチドを含む加水分解物を生成するために使用される。このような加水分解物は、飼料組成物又は飼料添加剤として使用され得る。
【0132】
本発明はまた、ポリエステル含有材料の表面加水分解又は表面官能化の方法であって、ポリエステル含有材料を、本発明のプロテアーゼ又は配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼ又は対応するリコンビナント細胞若しくはその抽出物又は組成物に曝露することを含む、方法に関する。本発明の方法は、ポリエステル材料の親水性又は吸水性を増加させるために特に有用である。このような親水性の増加は、織物の生産、電子工学及び生物医学的用途において特に興味深いものであり得る。
【実施例0133】
実施例1-プロテアーゼの構築、発現及び精製
- 1.1 構築
非成熟親プロテアーゼ(配列番号2+配列番号1に対応する配列番号4)をコードする遺伝子(核配列番号5)を、当該遺伝子の上流のPelBシグナルペプチド(配列番号3 MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA)及び当該遺伝子の下流の6×ヒスチジンタグ(配列番号6 LEHHHHHH)をコードする配列とインフレームで、プラスミドpET26b+(EMD Millipore, Billerica, Massachusetts, USA)中にクローニングした。E. coli One Shot(登録商標)BL21 DE3 (Life technologies, Carlsbad, California, USA)を、構築したプラスミドでトランスフォーメーションした。得られた株は、タンパク質のN末端にPelBリーダー配列及びC末端に6×ヒスチジンタグを有する野生型プロテアーゼを発現する。QuikChange II部位特異的突然変異誘発キットを供給業者の推奨にしたがって使用して、変異体を構築した(Santa Clara, California, USA)。表1は、部位特異的突然変異誘発に使用したフォワード及びリバースプライマーを示す。
【0134】
【0135】
- 1.2 プロテアーゼの発現及び精製
野生型プロテアーゼとその変異体を発現する株のリコンビナント発現を、TB培地 100mL中、37℃で4時間行い、次いで、最終濃度1mMのIPTG添加後に21℃で行った(Tartoff K. D. and Hobbs C. A., 1987, Improved Media for Growing Plasmid and Cosmid Clones, Bethesda Res. Lab. Focus, 9:12.)。Avanti J-26 XP遠心分離機(Beckman Coulter, Brea, USA)で遠心分離(8000rpm、10℃で20分)により、培養を停止させた。細胞を-80℃で少なくとも2.5時間凍結させ、次いで、トリスHClバッファー(トリス0.1M、pH9)10mLに懸濁した。Lysonase(商標)Bioprocessing Reagent (EMD Millipore)を使用して、供給業者の推奨にしたがって、細胞を溶解した。次いで、細胞懸濁液を11000rpm及び10℃で30分間遠心分離した。可溶性画分を回収し、Talon(登録商標)Metal親和性樹脂(Clontech, CA, USA)を使用して、コバルトアフィニティークロマトグラフィーに供した。タンパク質を、20mM トリス-HCl、300mM NaCl、pH8.0中100mM イミダゾールで溶出した。トリスHClバッファー(トリス0.1M、5mM CaCl2、45℃でレギュレーションしたpH7.5又はpH9)に対する透析工程後に、精製抽出物からイミダゾールを除去した。製造業者の説明書(Lifescience Bio-Rad, France)にしたがってBio-Rad Bradfordタンパク質アッセイを使用して、精製タンパク質を定量し、+4℃で保存した。TCA沈殿後のSDS-PAGE上で精製の質を評価し、予想されるタンパク質サイズは約29kDaであった。
【0136】
得られたプロテアーゼ(すなわち、配列番号1の変異体)は、以下の表2及び3に掲載されている特定の置換を除いて、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0137】
実施例2-プロテアーゼの分解活性の評価
野生型プロテアーゼ及びその変異体の比分解活性をPLA加水分解中に決定した。500μm PLA粉末(PLLA 001 - Natureplast) 50mgを計量し、透析チューブに導入した。掲載されているように、変異体は、特定の置換を除いて、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。次いで、酵素サンプル(正確な比活性を測定するために、一定濃度2.5、5、10又は15mg/Lの酵素を含有するプロテアーゼ調製物1.5mL)を透析チューブに添加してからそれを閉じ、この後者を、0.1M トリス-HClバッファーpH9又はpH7.5(45℃でレギュレーション)25mLを含有するガラスボトルに導入した。野生型プロテアーゼ(配列番号1)をコントロールとして使用した。
【0138】
Max Q 4450インキュベーター(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)中で、各サンプルを45℃及び170rpmでインキュベーションすることにより、脱重合を開始させた。
【0139】
1時間当たり酵素1gに生成された乳酸及び/又は乳酸ダイマーの脱重合反応の初期速度を、最初の24時間の異なる時間に実施したサンプリングにより決定し、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析した。必要に応じて、サンプルを0.1M トリス-HClバッファーpH9又はpH7.5(45℃でレギュレーション)中に希釈した。0.45μmシリンジフィルタで濾過した後、サンプルをUHPLCにロードして、乳酸及び乳酸ダイマーの遊離をモニタリングした。使用したクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、50℃に温度調節されたカラムオーブン及び210nmのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)であった。使用したカラムは、プレカラム(Supelco, Bellefonte, USA)を備えるAminex HPX-87H(300mm×7.8mm)であった。流速0.5mL/分で移動相5mM H
2SO
4を使用して、乳酸及び乳酸ダイマーを分離した。注入は、サンプル20μLであった。市販の乳酸(Sigma-Aldrich L1750-10G)から作成した検量線にしたがって乳酸及び乳酸ダイマーを測定し、サンプルと同じ条件で乳酸ダイマーをインハウスで合成した。当量の乳酸のPLA加水分解の比分解活性(g)(すなわち、酵素1g当たり1時間当たりの乳酸及び乳酸ダイマーのg)を、加水分解曲線の直線部分で決定した。異なる実験の結果を、以下の表2及び表3に示す。
【表2】
【0140】
これらの結果により、本発明のプロテアーゼが、pH7.5で、配列番号1の親プロテアーゼと比較して増加した分解活性を有することが確認された。本発明のプロテアーゼは、環境条件(中性pH)下で大きな分解活性を示すので、これは、生分解性プラスチック品の1つ以上のポリエステルを分解することができるプロテアーゼを組み込んだ生分解性プラスチック品を生産するために特に興味深い。
【0141】
V3、V18、V6、V13、V8又はV19、より具体的にはV8又はV19に従うプロテアーゼは、生分解性PLA含有プラスチック品を生産するために特に興味深いであろう。pH7.5でV1、V2、V4、V5、V7、V9、V10、V11、V12、V14、V15、V16及びV17に対して実施した同様の試験によりまた、本発明のこのようなプロテアーゼが、pH7.5で、配列番号1の親プロテアーゼと比較して増加した分解活性を有することが確認された(データ示さず)。
【表3】
【0142】
これらの結果により、分解工程をpH9で実行し得る様々な工業プロセス、例えばポリエステル分解プロセスにおいて、本発明のプロテアーゼを使用し得ることが確認された。pH9でV18及びV19に対して実施した同様の試験によりまた、本発明のこのようなプロテアーゼが、pH9で、配列番号1の親プロテアーゼと比較して増加した分解活性を有することが確認された(データ示さず)。
【0143】
実施例3-本発明のプロテアーゼの活性の評価
本発明のプロテアーゼの比分解活性を決定し、配列番号1の野生型プロテアーゼの比活性と比較した。
【0144】
比活性を評価するための複数の方法論を使用した。
(1)pNA加水分解に基づく比活性
(2)固体形態のポリエステルの分解に基づく比分解活性
(3)固体形態のタンパク質の分解に基づく比活性
(4)PLA含有エマルジョンの濁度の減少に基づく比分解活性
(5)反応容器中のPLA加水分解に基づく比分解活性
【0145】
3.1 pNA加水分解
溶液中タンパク質 20μLを、トリスHClバッファー、0.1M pH7.5中5mM N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド(pNA) 180μLに合わせた。酵素反応を、撹拌下、30℃で少なくとも15分間実施し、マイクロプレート分光光度計(Versamax, Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)により、405nmの吸光度を取得した。加水分解曲線の直線部分で、比活性(酵素1mg当たり1分当たりに放出されたpニトロアニリドのμmolで表される初速度)を決定し、これを使用して、野生型プロテアーゼの活性を変異体の活性と比較した。
【0146】
3.2 固体形態のポリエステル分解
酵素調製物20μLを、PLA含有アガロースプレートに作ったウェルに堆積させた。ジクロロメタン(DCM)10mL中PLA450mgを可溶化し、ボルテックスでホモジナイズすることにより、アガロースプレートの調製を達成した。0.1M トリスHClバッファー(pH7~9)90mLを添加し、続いて、超音波処理工程(Fisher Scientific(商標)Model 705 Sonic Dismembrator、最大出力の30%)を行った後、DCMを50℃で蒸発させた。得られた溶液を濾過して、未溶解残留物を除去した。最後に、0.5%PLAエマルジョン12mLを1MトリスHClバッファー(pH9)(45℃でレギュレーション)3mL及び2%アガロース15mLと混合して、各omnitrayを調製した(4℃で保存)。
【0147】
野生型プロテアーゼ及び変異体によるポリエステル分解により形成されたハローの直径を、45℃で4~24時間後に測定し比較した。
【0148】
3.3 固体形態のタンパク質の分解
酵素調製物20μLを、牛乳を含有する寒天プレートに作ったウェルに堆積させた。粉乳の28g/L(Regilait(商標))水溶液を調製することにより、寒天プレートの調製を行った。次いで、牛乳15mLを15g/L寒天15mLと混合して、各omnitrayを調製した(4℃で保存)。
【0149】
酵素的な乳タンパク質分解により形成されたハローの直径を、45℃で4~24時間後に測定し比較した。5時間後の結果を
図1A、1B及び1Cに示し、この結果により、野生型プロテアーゼ(
図1A)並びに両プロテアーゼ変異体V8(
図1B)及びV19(
図1C)がプロテアーゼ活性を示すことが確認された。
【0150】
3.4 PLA含有エマルジョンの濁度の減少に基づく比活性
(最大出力の30%でSonic Dismembratorを使用して)100mM トリス-HClバッファー(pH9(45℃でレギュレーション))中最終濃度0.1%(w/v)の乳化PLAを用いて、波長630nmでの濁度の減少に基づいて、PLA分解活性を45℃で30分間pH9で、アッセイした。1単位のPLA分解活性を、記載されているアッセイ条件下における1分当たりの光学密度の1単位の減少として定義した。
【0151】
3.5 反応容器中におけるPLA加水分解
PLA5gと、プロテアーゼ2.5~10mgを含有する100mM トリス-HClバッファーpH7.5(45℃でレギュレーション)100mLとを用いて、Minibio 500バイオリアクター(Applikon Biotechnology B.V., Delft, The Netherlands)を開始させた。マリンインペラーを使用して、撹拌を250rpmに設定した。外部水浴への浸漬により、バイオリアクターを45℃で温度調節した。3M KOHの添加により、pHを7.5にレギュレーションした。BioXpertソフトウェアV2.95により、異なるパラメータ(pH、温度、撹拌、塩基の添加)をモニタリングした。反応媒体500μLを定期的にサンプリングした。
【0152】
実施例2に記載されているように、HPLCにより、LA及びLAダイマーの量を決定した。
【0153】
比活性は分解の比速度に対応し、1時間当たり及び酵素1mg当たりに遊離されたLA及びLAダイマーの合計のmgで計算する。
【0154】
実施例4-プロテアーゼ変異体の熱安定性の評価
異なる方法論を使用して、熱安定性を推定した。
(1)温度、時間及びバッファーの所定の条件下におけるタンパク質のインキュベーション後の残存ポリエステルの脱重合活性
(2)溶液中のタンパク質の円二色性
【0155】
4.1 残存ポリエステル分解活性
熱ショック後に回収された残存比分解活性(実施例2に記載されているPLA加水分解)の測定により、野生型プロテアーゼ及び変異体の熱安定性を決定した。熱ショックを以下のように実施した:0.1Mトリス-HClバッファーpH7.5(45℃でレギュレーション)、20mM CaCl2中に一定の酵素濃度(0.15g/L)を含有する酵素サンプルを、70℃に調整された水浴に所定の時間(30又は60分間)浸漬した。熱ショック後、サンプルを氷上に直ぐに置いた。酵素の希釈工程(0.05g/Lまで)後、実施例2に詳述されているように(バッファー:トリス-HCl 0.1M pH7.5(45℃でレギュレーション))、熱ショック後及び非熱ショックのサンプルから回収された比分解活性(PLA加水分解)を測定した。残存分解活性の結果は、非熱ショックサンプルの比活性のパーセンテージとして表されている。
【0156】
熱ショック条件、及び熱ショック後の残存分解活性の結果を表4に示す。
【表4】
【0157】
表4は、70℃で30~60分間処理した後に、プロテアーゼ変異体V8が、野生型プロテアーゼよりも大きな分解活性を保持していることを示している。
【0158】
4.2 円二色性
J-815 CD分光計(JASCO)で円二色性(CD)を実施して、配列番号1のプロテアーゼ及び本発明のプロテアーゼ変異体の融解温度(Tm)を決定及び比較した。Tmは、タンパク質の50%が変性する温度に相当する。
【0159】
100mMトリス-HCl pH7.5を含有するバッファー中で、タンパク質サンプルを0.2mg/mLで調製した。1mm光路石英キュベット(Starna Scientific Ltd, UK)で実験を実施し、遠UV(195~260)CDスペクトルを最初に測定して、タンパク質の正しいフォールディングに対応するCDの2つの最大強度を決定した。
【0160】
温度を上昇させるにつれて、220nmのCD値の変化をモニタリングすることにより、タンパク質の熱変性曲線を得た。温度上昇の速度は1.5℃/分であった。Sigmaplotバージョン11.0ソフトウェアを使用して最小二乗分析に基づいて、得られたCD値対温度データの曲線フィッティングにより、転移の中間点の温度Tmを計算した。
【0161】
得られたTmは、所定のタンパク質の熱安定性を反映する。Tmが高いほど、変異体は高温でより安定である。
【0162】
CaCl2を添加せずに、配列番号1の野生型プロテアーゼのTmを49.2+/-0.4℃で評価した。プロテアーゼ変異体V8及びV19のTmをそれぞれ、51.3℃+/-0.40℃(+2.10℃)及び53.4℃+/-0.30℃(+4.2℃)で評価したところ、配列番号1のエステラーゼのTmと比較して、それぞれ2.1℃及び4.2℃のTmの増加が示された。
【0163】
配列番号1の野生型プロテアーゼ及びプロテアーゼ変異体V8のTmを両方とも、70.4+/-0.2、CaCl2濃度5mMで評価した。
【0164】
実施例5-本発明のプロテアーゼを含有する生分解性ポリエステル材料
-
5.1 押出プロセスによるプラスチック化合物の調製
本発明のプロテアーゼ変異体を含むプラスチック化合物処方を調製し、市販の酵素(Savinase(登録商標))を含むプラスチック化合物処方と比較した。両処方を表5に掲載する。パーセンテージは、処方の総重量に基づいて重量比で示されている。
【表5】
【0165】
処方Bは、本発明の変異体V8(S101F+S103L+T106I)を含有するプラスチック化合物に相当する。処方Aは、市販の酵素(NovozymeからのSavinase(登録商標)16L、固体形態、PLAを分解することが公知;Degradation of Polylactide by commercial proteases; Y.Oda et al. 2000)を含有するコントロールに相当する。
【0166】
結果を比較するために、各酵素処方は、同じ量の純粋な酵素(酵素処方の総重量に基づいて2.1重量%)を含有する。
【0167】
以下を使用して、処方を調製した:
-液体窒素に浸漬し、Ultra Centrifugal Mill ZM 200システムを使用して微粉化したPLAペレットから得られた粉末形態(<1mm)のPLA(ポリ乳酸ポリマー、NatureWorks製のPLA 4043D)、
-3.5kDa膜の限外濾過、透析濾過、アラビアゴム(Nexira製)の添加及び凍結乾燥による乾燥により、商業的液体形態から得られた固体形態のSavinase(登録商標)16L、
-発酵プロセス、続いて、コバルトカラムでの精製、透析濾過、アラビアゴムの添加及び凍結乾燥による乾燥から得られた固体形態の変異体V8
【0168】
これらの処方に基づいて、押出プロセスにより、生分解性ポリ乳酸系プラスチック組成物を調製した。コンパウンディングマシン又は同時回転二軸押出機を使用した(“Haake MiniLab II ThermoFisher”)。このコンパウンディングマシンは、手動供給エレメントと、2つの同時回転軸と、二軸のヘッドとを連続的に含んでいた。
【0169】
コンパウンディングマシンへの導入前に、手動で振盪することにより、全ての粉末を一緒に混合した。次いで、混合物を供給ゾーンに導入し、手動で圧力を適用して、スクリュー押出機に押し込んだ。80RPMの二軸の回転速度を使用して、混合物を同時回転スクリューに通した。押出温度を165℃に固定した。次いで、PLAとプロテアーゼとの混合物を、直径0.4mmの1つの穴を備えるスクリューヘッドに到達させ、ここで、ストリップ形状を形成するためにこの混合物を押し込んだ。次いで、切断プライヤーを用いてこの押出物を切断して、顆粒形態のプラスチック組成物、すなわち、プラスチック化合物を得た。
【0170】
- 5.2 プラスチック組成物の生分解性の試験
上記で得られたプラスチック化合物の生分解性を評価した。
【0171】
各顆粒状サンプルA及びB100mgを計量し、透析チューブに導入した。0.1Mトリス-HClバッファーpH8 3mLを透析チューブに添加してから、それを閉じた。次いで、透析チューブを、0.1Mトリス-HClバッファーpH8 50mLを含むプラスチックボトルに導入した。
【0172】
Infors HT Multitron Proインキュベーションシェーカー中で、各サンプルを28℃又は45℃、150rpmでインキュベーションすることにより、脱重合を開始させた。バッファーの1mLアリコートを定期的にサンプリングし、0.22μmシリンジフィルタで濾過し、Aminex HPX-87Hカラムを備える高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析して、乳酸(LA)及び乳酸ダイマー(DP2)の遊離をモニタリングした。使用したクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、50℃に温度調節されたカラムオーブン及び220nmのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)であった。溶出液は5mM H2SO4であった。注入はサンプル 20μLであった。市販の乳酸(Sigma-Aldrich L1750-10G)から作成した検量線にしたがって、乳酸及び乳酸ダイマーを測定し、サンプルと同じ条件で乳酸ダイマーをインハウスで合成した。
【0173】
遊離したLA及びLAダイマーに基づいて、プラスチック品の加水分解を計算した。プラスチック組成物中のPLAに最初に含まれていたLAに対する、所定時間におけるLA+DP2に含まれるLAのモル比により、分解のパーセンテージを計算した。28℃における10日間の反応後、又は45℃における24時間の反応後の脱重合の結果を表6に示す。
【表6】
【0174】
この試験により、プロテアーゼ変異体V8を含有するプラスチック組成物Bの分解速度が、市販の酵素を含有するプラスチック組成物Aと比較して高いことが確認された。10日後、組成物Bの分解速度は、組成物Aの分解速度よりも10倍高い。
【0175】
興味深いことに、これらの結果は、本発明の変異体が、市販の酵素と比較して高いPLA分解活性及び/又は高い熱安定性を有することを示している。
(i)配列番号1に記載されている全長アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)S101、S103、T106、G131又はG133から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている、(iii)配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、プロテアーゼ。
S101F/L/M/W/Y、S103L、T106I/L、G131I又はG133Kから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換、好ましくはS101F/L/M/W/Yから選択される少なくとも1つの置換、より好ましくは少なくとも置換S101Fを有し、該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている、請求項1に記載のプロテアーゼ。
S101F/L/M/W/Y+S103L+T106I/Lから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロテアーゼ。
S101F+S103L、S101F+T106I、T106I+G133K、S101F+S103L+T106I、S101F+S103L+G133K、S101F+T106I+G133K、S101F+S103L+T106L、S101F+S103L+T106I+G133K、S101F+S103L+T106I+G131Iから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせ、好ましくはS101F+S103L+T106I/Lを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロテアーゼ。
D12、L21、T175、S194、H197、G212、I217又はR247から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換(ここで、当該位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている);好ましくはD12C+L21C、T175C+R247C、S194P、H197D、G212N又はI217Kから選択される少なくとも1つの置換
を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロテアーゼ。
pH7~10、好ましくはpH7.5及び/又はpH9で、配列番号1のプロテアーゼと比較して増加したポリエステル分解活性を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロテアーゼ。
前記プラスチック製品が、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリエチレンテレフタラート(PET) ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ポリブチレンサクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)及びこれらの材料のブレンド/混合物から選択される少なくとも1つのポリエステル、好ましくはポリ乳酸を含む、請求項13に記載の方法。
(i)少なくとも1つのポリエステル、好ましくは少なくともポリ乳酸と、(ii)請求項1~7のいずれか一項に記載のプロテアーゼ又は請求項10に記載の宿主細胞若しくは該プロテアーゼを含むその抽出物又は請求項11に記載の組成物とを含有する、プラスチック化合物。
請求項15又は16に記載のプラスチック化合物を生産するためのプロセスであって、少なくとも1つのポリエステルと、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロテアーゼ又は請求項10に記載の宿主細胞若しくは該プロテアーゼを含むその抽出物又は請求項11に記載の組成物とを、該ポリエステルが部分的又は完全に融解状態である温度で、好ましくは押出により、混合する、プロセス。
ポリエステル含有材料を分解するための、好ましくはポリ乳酸含有材料を分解するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロテアーゼ又は請求項10に記載の宿主細胞又は請求項11に記載の組成物の使用。