(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010346
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ポリオール含有組成物、発泡性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230113BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20230113BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230113BHJP
C08G 18/20 20060101ALI20230113BHJP
C08G 18/09 20060101ALI20230113BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/22
C08G18/00 H
C08G18/76
C08G18/20
C08G18/09 020
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114424
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】栗林 星奈
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】発泡機によりポリイソシアネートと反応及び発泡させる工程において、良好な発泡性を発揮しつつ、発泡機内部のフィルターに目詰まりが発生せず、かつ難燃性の高いポリウレタン発泡体を形成可能な、ポリオール含有組成物を提供すること。
【解決手段】ポリオール、発泡剤、触媒、及び難燃剤を含有するポリオール含有組成物であって、前記触媒が、ビスマス化合物及びスズ化合物から選択される少なくとも1種の金属触媒を含み、前記難燃剤が、1分子あたり少なくとも2個のベンゼン環を含む構造を有する臭素系難燃剤を含む、ポリオール含有組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、発泡剤、触媒、及び難燃剤を含有するポリオール含有組成物であって、
前記触媒が、ビスマス塩及びスズ塩から選択される少なくとも1種の金属触媒を含み、
前記難燃剤が、1分子あたり少なくとも2個のベンゼン環を含む構造を有する臭素系難燃剤を含む、ポリオール含有組成物。
【請求項2】
前記臭素系難燃剤を構成するベンゼン環のうち、少なくとも2個のベンゼン環が、エチレン基を介して化学結合されている、請求項1に記載のポリオール含有組成物。
【請求項3】
前記臭素系難燃剤が、臭素化されたベンゼン環を少なくとも1個含む、請求項1又は2に記載のポリオール含有組成物。
【請求項4】
前記臭素系難燃剤中の臭素の含有量が、臭素系難燃剤全量基準で50質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項5】
前記臭素系難燃剤がエチレンビス(ペンタブロモフェニル)である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項6】
前記難燃剤が赤燐系難燃剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項7】
前記赤燐系難燃剤の含有量が、ポリオール含有組成物全量基準で6~36質量%である、請求項6に記載のポリオール含有組成物。
【請求項8】
前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項9】
前記触媒がイミダゾール誘導体を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項10】
前記触媒が三量化触媒を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項11】
前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含む、請求項10に記載のポリオール含有組成物。
【請求項12】
前記ポリオールの加重平均芳香族濃度が10質量%以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項13】
前記難燃剤の含有量が、ポリオール含有組成物全量基準で20~60質量%である、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項14】
前記臭素系難燃剤の含有量が、ポリオール含有組成物全量基準で20質量%以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項15】
吹き付け用途で使用される、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物、及びポリイソシアネートからなる、発泡性ウレタン樹脂組成物。
【請求項17】
前記ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートである、請求項16に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
【請求項18】
イソシアネートインデックスが300以上である、請求項16又は17に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
【請求項19】
前記発泡性ウレタン樹脂組成物を発泡してなる発泡体のコア密度が25~60kg/m3である、請求項16~18のいずれか1項に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
【請求項20】
前記発泡性ウレタン樹脂組成物を発泡してなるポリウレタン発泡体の、ISO-5660の試験方法に準拠したコーンカロリーメーター試験により、放射熱強度50kW/m2にて20分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m2未満である、請求項16~19のいずれか1項に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか1項に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物を反応及び発泡させて形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール含有組成物、発泡性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性を利用して、マンション等の集合住宅、戸建住宅、商業ビル等の建築物の天井、屋根、壁面などの建築部材の断熱や結露防止に実用されている。ポリウレタン発泡体は、各構造物の表面に、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含む発泡性ウレタン樹脂組成物を吹き付け、発泡及び硬化させることにより形成される。
【0003】
ポリウレタン発泡体は、軽量であるものの、有機物であるため燃えやすい。これを改善するため、難燃性の高いポリウレタン発泡体が必要とされている。ポリウレタン発泡体の難燃性を高める為の手段として、例えば、特許文献1に記載されるように、ポリオール組成物中に臭素系難燃剤を含有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来のポリオール組成物は、発泡機を使用してポリイソシアネートと反応及び発泡させる際に、臭素系難燃剤が凝集して大粒径化することが原因で、発泡機内部のフィルターに目詰まりが発生してしまうことがある。そのような場合、ポリイソシアネートと反応及び発泡させるのに十分な量のポリオール組成物を吐出させることができず、ポリウレタン発泡体の生産効率が低下することなどが問題となる。
そこで本発明は、発泡機によりポリイソシアネートと反応及び発泡させる工程において、良好な発泡性を発揮しつつ、発泡機内部のフィルターに目詰まりが発生せず、かつ難燃性の高いポリウレタン発泡体を形成可能な、ポリオール含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を有するポリオール含有組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、下記[1]~[21]を要旨とする。
[1]ポリオール、発泡剤、触媒、及び難燃剤を含有するポリオール含有組成物であって、前記触媒が、ビスマス塩及びスズ塩から選択される少なくとも1種の金属触媒を含み、前記難燃剤が、1分子あたり少なくとも2個のベンゼン環を含む構造を有する臭素系難燃剤を含む、ポリオール含有組成物。
[2]前記臭素系難燃剤を構成するベンゼン環のうち、少なくとも2個のベンゼン環が、エチレン基を介して化学結合されている、[1]に記載のポリオール含有組成物。
[3]前記臭素系難燃剤が、臭素化されたベンゼン環を少なくとも1個含む、[1]又は[2]に記載のポリオール含有組成物。
[4]前記臭素系難燃剤中の臭素の含有量が、臭素系難燃剤全量基準で50質量%以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[5]前記臭素系難燃剤がエチレンビス(ペンタブロモフェニル)である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[6]前記難燃剤が赤燐系難燃剤を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[7]前記赤燐系難燃剤の含有量が、ポリオール含有組成物全量基準で6~36質量%である、[6]に記載のポリオール含有組成物。
[8]前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[9]前記触媒がイミダゾール誘導体を含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[10]前記触媒が三量化触媒を含む、[1]~[9]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[11]前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含む、[10]に記載のポリオール含有組成物。
[12]前記ポリオールの加重平均芳香族濃度が10質量%以上である、[1]~[11]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[13]前記難燃剤の含有量が、ポリオール含有組成物全量基準で20~60質量%である、[1]~[12]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[14]前記臭素系難燃剤の含有量が、ポリオール含有組成物全量基準で20質量%以下である、[1]~[13]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[15]吹き付け用途で使用される、[1]~[14]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[16][1]~[15]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物、及びポリイソシアネートからなる、発泡性ウレタン樹脂組成物。
[17]前記ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートである、[16]に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
[18]イソシアネートインデックスが300以上である、[16]又は[17]に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
[19]前記発泡性ウレタン樹脂組成物を発泡してなる発泡体のコア密度が25~60kg/m3である、[16]~[18]のいずれか1項に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
[20]前記発泡性ウレタン樹脂組成物を発泡してなるポリウレタン発泡体の、ISO-5660の試験方法に準拠したコーンカロリーメーター試験により、放射熱強度50kW/m2にて20分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m2未満である、[16]~[19]のいずれか1項に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
[21][16]~[20]のいずれか1項に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物を反応及び発泡させて形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発泡機によりポリイソシアネートと反応及び発泡させる工程において、良好な発泡性を発揮しつつ、発泡機内部のフィルターに目詰まりが発生せず、かつ難燃性の高いポリウレタン発泡体を形成可能な、ポリオール含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリオール含有組成物]
本発明のポリオール含有組成物は、ポリオール、発泡剤、触媒、及び難燃剤を含有する。ポリオール含有組成物は、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るために使用される。また、難燃剤は、少なくとも臭素系難燃剤を含む。
【0010】
(難燃剤)
<臭素系難燃剤>
本発明のポリオール含有組成物中に含有される臭素系難燃剤は、1分子あたり少なくとも2個のベンゼン環を含む構造を有する。臭素系難燃剤がこうした構造を有することにより、臭素系難燃剤が凝集して大粒径化することを防止することができ、発泡機により、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを反応及び発泡させる際、発泡機内部のフィルターに目詰まりが発生することを防止することができる。なお、その原理は定かではないが、本発明で使用する臭素系難燃剤は、同じ分子内に少なくとも2個のベンゼン環を含む構造を有することにより、該構造が、ベンゼン環同士が重なったり、あるいは臭素原子同士が相互作用により引き寄せられたりすることを防止する役割を果たすと考えられる。その結果として、臭素系難燃剤の凝集及び大粒径化が防止できると考えられる。
上記構造を有する臭素系難燃剤としては、具体的に、ポリブロモビフェニル、1-ベンジルオキシ-4-ブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
【0011】
本発明で使用する臭素系難燃剤は、該難燃剤を構成するベンゼン環のうち、少なくとも2個のベンゼン環が、エチレン基を介して化学結合されていることが好ましい。エチレン基を介して化学結合されていることにより、ベンゼン環間の結合軸の回転の自由度が高くなり、立体的な構造を有しやすくなることから、臭素系難燃剤の凝集及び大粒径化をより効果的に防止しやすくなる。
また、臭素系難燃剤を構成するベンゼン環は、少なくとも1個が臭素化されたものであることが好ましい。ここで、臭素化されたとは、ベンゼン環中の、上記エチレン基に置換された水素原子を除く水素原子のうち、少なくとも1個が臭素原子に置換されたことを意味する。臭素系難燃剤を構成するベンゼン環は、いずれか1個のベンゼン環が臭素化されていてもよいし、2個以上のベンゼン環が臭素化されていてもよいが、後述の、臭素系難燃剤中の臭素の含有量が所望の範囲となるようにする観点から、2個以上のベンゼン環が臭素化されていることがより好ましい。また、臭素化されたベンゼン環は、2個以上の水素原子が臭素原子に置換されていることがより好ましく、すべての水素原子が臭素原子に置換されていることがさらに好ましい。
【0012】
本発明で使用する臭素系難燃剤中の臭素の含有量(以下、「臭素含有率」と記載する場合がある。)は、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、臭素系難燃剤全量基準で50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。他方、臭素含有率の上限は、特に限定されるものではないが、例えば100質量%未満、好ましくは90質量%以下である。
臭素系難燃剤については以上の観点から、本発明で使用する臭素系難燃剤は、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)であることが特に好ましい。
【0013】
臭素系難燃剤の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下がより好ましく、17質量%以下がさらに好ましい。臭素系難燃剤の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオール含有組成物の粘度の数値を適切な範囲に調整しやすくなり、取り扱い性及び発泡性に優れる。臭素系難燃剤の含有量は、特に限定されないが、難燃性の観点から、3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、9質量%以上がさらに好ましい。
【0014】
本発明のポリオール含有組成物は、ポリウレタン発泡体の難燃性をより効果的に高める観点から、上記した臭素系難燃剤に加え、臭素系難燃剤以外の固体難燃剤を含有することが好ましい。固体難燃剤は23℃、1気圧で固体となる難燃剤である。固体難燃剤としては、赤燐系難燃剤、ホウ素系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、針状フィラー、及び金属水酸化物等が挙げられる。
【0015】
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等を適宜選択して使用するとよい。
【0016】
<ホウ素系難燃剤>
ホウ素系難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素系難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素系難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0017】
<リン酸塩含有難燃剤>
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
周期律表IA族~IVB族の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0018】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから一種もしくは二種以上を併用して使用してもよい。
【0019】
<塩素含有難燃剤>
塩素含有難燃剤は、ポリウレタン発泡体に通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン等が挙げられる。
【0020】
<アンチモン含有難燃剤>
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。
本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
【0021】
<針状フィラー>
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、スラグ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。
【0022】
<金属水酸化物>
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。
【0023】
臭素系難燃剤以外の固体難燃剤の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、好ましくは7~51質量%、より好ましくは9~40質量%、さらに好ましくは12~22質量%である。臭素系難燃剤以外の固体難燃剤の含有量が上記下限値以上であることにより、ポリウレタン発泡体の難燃性を高めることができる。一方、臭素系難燃剤以外の固体難燃剤の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオール含有組成物の粘度の数値を適切な範囲に調整しやすくなったり、発泡剤に対する含有量が多くなりすぎることを防止しやすくなったりして、取り扱い性及び発泡性に優れる。
【0024】
臭素系難燃剤以外の固体難燃剤としては、難燃性をより効果的に高める観点から、上記したものの中では、赤燐系難燃剤を少なくとも含有することが好ましい。
赤燐系難燃剤の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、6~36質量%であることが好ましく、8~30質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましい。赤燐系難燃剤の含有量が上記下限値以上であることにより、ポリウレタン発泡体の難燃性を高めることができる。一方、赤燐系難燃剤の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオール含有組成物の粘度の数値を適切な範囲に調整しやすくなったり、発泡剤に対する含有量が多くなりすぎることを防止しやすくなったりして、取り扱い性及び発泡性に優れる。
【0025】
また、固体難燃剤としては、赤燐系難燃剤と共にホウ酸系難燃剤などの赤燐系難燃剤以外の固体難燃剤を併用する態様も好ましい。ホウ素系難燃剤の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、1~15質量%であることが好ましく、1.5~10質量%がより好ましく、2~7質量%がさらに好ましい。ホウ素系難燃剤の含有量が上記下限値以上であることにより、ポリウレタン発泡体の難燃性を高めることができる。一方、ホウ素系難燃剤の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオール含有組成物の粘度の数値を適切な範囲に調整しやすくなったり、発泡剤に対する含有量が多くなりすぎることを防止しやすくなったりして、取り扱い性及び発泡性に優れる。
【0026】
<リン酸エステル系難燃剤>
本発明のポリオール含有組成物は、さらに液状難燃剤を含有してもよい。液状難燃剤は23℃、1気圧で液体となる難燃剤である。液状難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤を含有することが好ましい。リン酸エステルを使用することで、ポリオール含有組成物の流動性を低下させることなく、ポリウレタン発泡体の難燃性を高めやすくなる。
【0027】
リン酸エステル系難燃剤としては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0028】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0029】
リン酸エステル系難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール含有組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
ポリオール含有組成物におけるリン酸エステル系難燃剤の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、1~15質量%であることが好ましく、1.5~10質量%がより好ましく、2~7質量%がさらに好ましい。リン酸エステル系難燃剤の含有量が上記下限値以上であることにより、ポリウレタン発泡体の難燃性を有効に高めることができる。一方、リン酸エステル系難燃剤の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオール含有組成物の粘度を一定以上に保つことができ、取り扱い性に優れる。
【0030】
本発明のポリオール含有組成物の難燃剤の含有量(合計含有量)は、ポリオール含有組成物全量基準で、20~60質量%が好ましく、30~55質量%がより好ましく、35~50質量%がさらに好ましい。難燃剤の含有量が上記下限値以上であることにより、ポリオール含有組成物の難燃性を効果的に高めることができる。また、難燃剤の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオール含有組成物の粘度の数値を適切な範囲に調整しやすくなったり、発泡剤に対する含有量が多くなりすぎることを防止しやすくなったりして、取り扱い性及び発泡性に優れる。
【0031】
(触媒)
<ウレタン化触媒>
本発明のポリオール含有組成物は、ウレタン化触媒として、ビスマス塩及びスズ塩から選択される少なくとも1種の金属触媒を含有する。これら金属触媒を含有することにより、ウレタン樹脂組成物の初期活性が良好となり、それに伴い、該組成物の発泡性も良好になる。そのため、発泡後の液だれなども発生しにくくなり、ポリウレタン発泡体の難燃性なども良好となる。また、ポリオール含有組成物を長期保管しても失活しにくくなる。
該触媒は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸等が挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のビスマス塩、カルボン酸の錫塩が好ましく、中でもオクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸錫塩はジアルキル錫カルボン酸塩等であってもよく、好ましくはジオクチル錫カルボン酸塩等である。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチル酸スズ等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
【0032】
金属触媒の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、0.1~2.5質量%であることが好ましく、0.2~2質量%がより好ましく、0.5~1.5質量%がさらに好ましい。金属触媒の含有量が上記下限値以上であることにより、発泡性ウレタン樹脂組成物の初期活性が良好となり、それに伴い、該組成物の発泡性も良好になる。一方、金属触媒の含有量が上記上限値以下であることにより、発泡性ウレタン樹脂組成物を適切な速度で反応及び発泡させることができる。
【0033】
本発明のポリオール含有組成物に使用されるウレタン化触媒は、上記金属触媒に加え、アミン触媒を含有することが好ましく、ウレタン化アミン触媒として、イミダゾール誘導体を含有することがより好ましい。
イミダゾール誘導体は、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、ポリオール含有組成物の安定性を高めつつポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくする。したがって、ポリオール含有組成物は、上記した金属触媒に加えて、イミダゾール誘導体を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートの反応性が高められ、発泡性がさらに良好となる。
イミダゾール誘導体は、好ましくは1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。イミダゾール誘導体の好適な具体例は、下記一般式(1)で表される。
【0034】
【化1】
(一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
【0035】
一般式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
R1及びR2のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィン等の発泡剤の影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R1及びR2のアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になり、発泡性も良好となる。
これらの観点から、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0036】
一般式(1)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがより好ましい。
【0037】
ポリオール含有組成物中のイミダゾール誘導体の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、0.5~8質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましく、1.5~3質量%がさらに好ましい。イミダゾール誘導体の含有量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行し、かつ発泡性が良好となる。一方、イミダゾール誘導体の含有量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
【0038】
<三量化触媒>
本発明のポリオール含有組成物は、上記ウレタン化触媒に加え、三量化触媒を含有することが好ましい。三量化触媒は、イソシアヌレート結合を形成する三量化を促進する触媒であり、ポリオール含有組成物において、三量化が促進されることで、ポリウレタン発泡体の難燃性や燃え拡がりにくさが向上する。
三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、ギ酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、2-エチルアジリジン等のアジリジン類、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ナトリウムメトキシド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の第三級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができる。これらの中では、4級アンモニウム塩が好ましい。4級アンモニウム塩を使用すると、発泡剤にハイドロクロロフルオロオレフィンなどのハイドロフルオロオレフィン化合物を使用しても、触媒活性が良好に維持されることで、三量化が適切に進行し難燃性などが向上する。
三量化触媒は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよいが、ポリウレタン発泡体の難燃性を十分高める観点から、二種以上を併用して使用することが好ましい。二種以上を併用して使用する場合、アルカリ金属塩と4級アンモニウム塩を使用することが好ましく、2-エチルヘキサン酸カリウムとテトラメチルアンモニウム塩を使用することがより好ましい。
【0039】
三量化触媒として4級アンモニウム塩を含有する場合、4級アンモニウム塩の含有量は、特に限定されないが、ポリオール含有組成物全量基準で、0.5~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましく、1.5~3質量%がさらに好ましい。三量化触媒の含有量を上記範囲内とすることで、イソシアヌレート結合が適度に形成され、難燃性が向上する。
【0040】
また、三量化触媒としてアルカリ金属塩を含有する場合、アルカリ金属塩の含有量は、特に限定されないが、ポリオール含有組成物全量基準で、0.1~3質量%であることが好ましく、0.5~2.5質量%がより好ましく、0.8~2質量%がさらに好ましい。三量化触媒の含有量を上記範囲内とすることで、イソシアヌレート結合が適度に形成され、難燃性が向上する。
【0041】
三量化触媒の含有量は特に限定されないが、ポリオール含有組成物全量基準で、0.6~13質量%が好ましく、1.5~7.5質量%がより好ましく、2.3~5質量%がさらに好ましい。三量化触媒の含有量を上記範囲内とすることで、イソシアヌレート結合が適度に形成され、難燃性が向上する。
【0042】
(ポリオール)
本発明に用いるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0043】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0044】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、o-フタル酸(フタル酸)、ナフタレンジカルボン酸及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0045】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールなどの活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも一種が挙げられる。
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0047】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。また、水酸基を2個有するポリオール化合物が好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、芳香族環を有するポリエステルポリオールである芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。その場合、ポリオールの加重平均芳香族濃度が10質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましい。
ここで、芳香族濃度とは、ポリオール中の芳香環を構成する炭素原子及び水素原子の合計の質量%により得られたものであり、加重平均芳香族濃度は、前記芳香環の炭素原子及び水素原子の各含有量から加重平均により求めた芳香族濃度である。
芳香族ポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性、特に燃え拡がらない性能を高める観点から、芳香族ポリエステルポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオール、及び、о-フタル酸とグリコールの縮合物である、о-フタル酸系ポリエステルポリオールから選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0048】
ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリオール含有組成物中のポリオール化合物100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることがさらに好ましい。
【0049】
ポリオールの加重平均水酸基価は、20~350mgKOH/gが好ましく、30~300mgKOH/gがより好ましく、50~250mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール含有組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタン発泡体の架橋密度が上がることにより強度が高くなり、かつ吹き付けの際の施工性が良好になる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0050】
ここで、ポリオールの加重平均水酸基価は、ポリオールを構成する個々のポリオールの水酸基価と、該個々のポリオールのポリオール中の質量分率との積の総和により求められる。例えば、ポリオール化合物として、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX1、配合量をm1、ポリオール(d2)の水酸基価をX2、配合量をm2とすると、加重平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合量m1及びm2は、ポリオール化合物100質量部中の質量部数である。
加重平均水酸基価(mgKOH/g)=X1×(m1/(m1+m2))+X2×(m2/(m1+m2))
【0051】
(発泡剤)
発泡剤の具体例としては、例えば、水、低沸点の炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素化合物、フッ素化合物、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ハイドロフルオロカーボン、エーテル化合物、ハイドロフルオロオレフィンなどが挙げられる。さらに、発泡剤としては、これらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
上記低沸点の炭化水素としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
上記塩素化脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
上記フッ素化合物としては、例えば、CHF3、CH2F2、CH3F等が挙げられる。
上記ハイドロクロロフルオロカーボン化合物としては、例えば、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等が挙げられる。
上記エーテル化合物としては、例えば、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、HFO-1233zd(E)(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)、HFO-1336mzz(Z)(シス―1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン)、HFO-1224yd(Z)等が挙げられる。
【0052】
上記した中でも、発泡剤としては、ハイドロフルオロオレフィンを含有することが好ましく、ハイドロフルオロオレフィン及び水を併用することがより好ましい。
発泡剤の含有量は、発泡体のコア密度を所望の範囲に調整する観点から、ポリオール含有組成物全量基準で、5~26質量%が好ましく、8~20質量%がより好ましく、10~15質量%が更に好ましい。
【0053】
発泡剤として使用するハイドロフルオロオレフィンの含有量は、ポリウレタン発泡体のコア密度を所望の範囲とする観点から、ポリオール含有組成物全量基準で、5~25質量%が好ましく、8~20質量%がより好ましく、10~15質量%が更に好ましい。
【0054】
発泡剤として使用する水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水などを適宜用いることができる。この中では、イオン交換水を用いることが好ましい。水の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、0.05~1質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましく、0.2~0.3質量%が更に好ましい。水の含有量を上記範囲内とすることで、難燃性と発泡性のバランスが良好となる。
【0055】
(整泡剤)
本発明のポリオール含有組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤を含有することでポリウレタンフォームの発泡性を良好にでき、例えば、スプレー噴霧においてポリイソシアネートと反応させる際、発泡を促進できる。
整泡剤としては、具体的には界面活性剤、より具体的には、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等を例示することができる。非イオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等が挙げられる。本発明で使用する整泡剤は特に限定されないが、発泡性の観点からシリコーン整泡剤が好ましい。整泡剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0056】
本発明のポリオール含有組成物中の整泡剤の含有量は、ポリオール含有組成物全量基準で、0.3~2質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましく、0.7~1.2質量%が更に好ましい。整泡剤の含有量が前記下限値以上であるとポリオール含有組成物とポリイソシアネートとの混合物を発泡させやすくなるため均質なポリウレタンフォームを得ることが可能になる。また、整泡剤の含有量が前記上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが最適になる。
【0057】
(その他成分)
ポリオール含有組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、染料、固体難燃剤以外の充填材等から選択される1種以上を含むことができる。
【0058】
(製造方法)
本発明のポリオール含有組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、各成分を室温程度でホモディスパー等を用いて30秒~20分程度撹拌することにより製造することができる。本発明のポリオール含有組成物は、該組成物中に、所定の構造を有する臭素系難燃剤を含有することにより、該組成物の製造時においても、臭素系難燃剤が凝集することを防止することができるため、製造時の取扱い性が良好である。
【0059】
[発泡性ウレタン樹脂組成物及びポリウレタン発泡体]
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを含む。発泡性ウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを混合することにより得られる。
【0060】
(ポリイソシアネート)
本発明において、ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等が挙げられる。
【0061】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0062】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、又はこれらの混合物がより好ましく、中でもジフェニルメタンジイソシアネートがさらに好ましく、特に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ポリイソシアネートは、ポリオール含有組成物と混合する前に、ポリイソシアネートに配合される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0064】
なお、ポリオール含有組成物と、ポリオール含有組成物に混合されるポリイソシアネートは、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール含有組成物に対する、ポリイソシアネートの体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
【0065】
(イソシアネートインデックス)
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物におけるイソシアネートインデックスに特に制限はないが、300以上が好ましい。イソシアネートインデックスが当該下限値以上であると、ポリオールに対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。また、難燃性を付与することも可能になる。さらに、上記下限値以上とすると、上記した各種触媒を併用することも相俟って、イソシアヌレート結合を十分に有するポリウレタン発泡体、すなわち、難燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタン発泡体を製造しやすい。これらの観点から、イソシアネートインデックスは、350以上がより好ましく、400以上がさらに好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、600以下がさらに好ましい。イソシアネートインデックスが前記上限値以下であると、製造コストに十分見合った難燃性が得られる。
【0066】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56,100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0067】
(総発熱量)
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物からなるポリウレタン発泡体は、ISO-5660の試験方法に準拠して、コーンカロリーメーター試験をしたときの総発熱量が8MJ/m2未満であることが好ましい。総発熱量が8MJ/m2未満であることにより、本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物からなるポリウレタン発泡体は、所定の難燃性を有する。
該発泡体の難燃性をより向上させる観点から、上記総発熱量は、7.8MJ/m2未満であることがより好ましく、7.5MJ/m2未満であることがさらに好ましい。総発熱量は低ければ低いほどよく、理想的には0MJ/m2であるが、通常は1MJ/m2以上である。
総発熱量は、発泡性ウレタン樹脂組成物の組成の調整、一般的に難燃剤の含有量の調整などにより、上記した所望の値に調整しやすくなる。
なお、上記コーンカロリーメーター試験は、放射熱強度50kW/m2にて20分間加熱することにより行うこととする。コーンカロリーメーター試験を行うポリウレタン発泡体は、発泡性ウレタン樹脂組成物から実施例に記載する方法により形成される。
【0068】
(コア密度)
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物からなるポリウレタン発泡体のコア密度は、特に限定されないが、25~60kg/m3の範囲であることが好ましい。密度を60kg/m3以下とすることで、ポリウレタン発泡体が軽量となり、構造物への施工性が高まる。また、25kg/m3以上とすることで、所望の難燃性を発現しやすくなる。これら観点から、ポリウレタン発泡体のコア密度は、25~55kg/m3の範囲であることがより好ましく、30~50kg/m3の範囲であることがさらに好ましい。コア密度は、実施例に記載する方法にて発泡性ウレタン樹脂組成物から発泡体を形成して、その発泡体に対してコア密度を測定することで求められることができる。
【0069】
ポリウレタン発泡体の製造方法に特に制限はないが、ポリオール含有組成物を、発泡機などにおいて、ポリイソシアネートと混合させ、得られた混合液(発泡性ウレタン樹脂組成物)を反応及び発泡させることで、ポリウレタン発泡体を製造するとよい。
【0070】
発泡機には、ポリオール含有組成物に含有される塵埃を除去するためのフィルターが設けられるとよい。フィルターは、メッシュ状のフィルターなどであればよく、ポリオール含有組成物に含有される固体難燃剤などを通過させるが、塵埃などを除去するものである。フィルターは、ポリイソシアネートに混合する前段の位置に設置されるとよい。
ポリオール含有組成物は、発泡機に送液され、別の容器などから送液されたポリイソシアネートと発泡機内部にて衝突混合させるとよい。このとき、ポリオール含有組成物中に含有されている臭素系難燃剤が所定の構造を有していることから、臭素系難燃剤の凝集が発生せず、発泡機内部のフィルターの目詰まりを防止することができる。
【0071】
ポリオール含有組成物及び発泡性ウレタン樹脂組成物は、吹き付け用途で使用されることが好ましい。したがって、発泡機としては、スプレーガンを有するスプレー装置等を用いることが好ましい。スプレー装置を用いる場合、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを衝突混合して得られた混合液(発泡性ウレタン樹脂組成物)は、スプレーガンなどの吐出口から吐出させ、吐出された発泡性ウレタン樹脂組成物によりポリウレタンフォームを成形するとよい。
スプレー装置から吐出された混合液は、施工対象面に一定の吐出圧力で吹き付け、発泡させることにより、施工対象面上にポリウレタン発泡体を成形するとよい。ポリウレタン発泡体は、壁、天井、屋根、床等などを吹付対象面としてポリウレタン発泡体を成形するとよい。また、吹き付けは、発泡原液のイソシアネートとポリオール含有組成物の容量比を均等に反応させて吹付けるので、発泡原液は容量比でイソシアネートが1.0に対し、ポリオール含有組成物が0.8~1.2の範囲で反応させることができる。
より具体的な手法としては、吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入った吹き付け用ポリオール含有組成物とポリイソシアネートを吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。
なお、吹き付け装置及びスプレーガンは、上記の通り、公知のものであり、市販品を使用することができる。また、原液温度設定、圧力等は一般的なポリウレタン発泡体の吹き付け条件が適応できる。
【実施例0072】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0073】
各実施例及び比較例において使用した各成分の詳細は次の通りである。
(ポリイソシアネート)
・ポリイソシアネート(MDI、住化コベストロウレタン株式会社製、商品名:スミジュール44V20)
【0074】
(ポリオール)
・芳香族ポリエステルポリオール p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名「マキシモールRLK-087」、芳香族濃度8質量%、水酸基価=200mgKOH/g)
・芳香族ポリエステルポリオール p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名「マキシモールRFK-509」、芳香族濃度24%、水酸基価=200mgKOH/g)
【0075】
(整泡剤)
・シリコーン系整泡剤(ダウ・東レ社製、製品名「SH-193」)
【0076】
(触媒)
(1)三量化触媒
・アルカリ金属塩:2-エチルヘキサン酸カリウム(エボニック社製、製品名「DABCO K-15」)濃度70~80質量%
・4級アンモニウム塩:2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エボニック社製、製品名「DABCO TMR7」)濃度45~55質量%
(2)ウレタン化触媒
・アミン触媒1:1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70)濃度65~75質量%
・金属触媒:ビスマストリオクテート(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-600)濃度55~58質量%
(3)泡化触媒
・アミン系触媒2:ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、製品名「NIAX CATALYST A-1」)濃度約70質量%
【0077】
(難燃剤)
・赤燐系難燃剤(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
・リン酸エステル系難燃剤:トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
・ホウ素系難燃剤:ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名:FirebrakeZB)
・臭素系難燃剤1:エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール社製、製品名:SAYTEX 8010、臭素含有率82質量%)
・臭素系難燃剤2:ヘキサブロモベンゼン(日宝化学社製、製品名:FR-B、臭素含有率87質量%)
・臭素系難燃剤3:テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモ2-メチルプロピル)エーテル(第一製薬工業社製、製品名:ピロガードSR-130、臭素含有率65質量%)
・臭素系難燃剤4:テトラブロモビスフェノールA(東ソー社製、製品名:フレームカット 120G、臭素含有率59質量%)
【0078】
[実施例1~7、比較例1~3]
吹き付け装置にポリオール含有組成物及びポリイソシアネートをそれぞれ充填した。充填されたポリオール含有組成物及びポリイソシアネートを該吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンを利用して、表1に記載の配合でポリオール含有組成物及びポリイソシアネートを衝突混合させて得られた発泡性ウレタン樹脂組成物を、石膏ボードに対しミスト状に吹き付けて発泡させることで、ポリウレタン発泡体を得た。なお、吹き付け機及びスプレーガンはいずれも市販品を利用した。
【0079】
ポリウレタン発泡体の各物性の測定、及びポリオール含有組成物の各性状の評価の方法は、以下のとおりである。
[総発熱量]
各実施例及び比較例で作製したポリウレタン発泡体の総発熱量は、以下の方法により評価した。
(1)総発熱量を測定する為の試験体を得る為に、各実施例、比較例で得た発泡性ウレタン樹脂組成物を、上記した吹付機により、厚さ12.5mmの石膏ボードに対し、厚さ10mmとなるように吹き付け、1層目のポリウレタン発泡体を得た。
(2)1層目のポリウレタン発泡体上に、発泡性ウレタン樹脂組成物を、厚さ20mmとなるように吹き付け、2層目のポリウレタン発泡体を得た。したがって、この時点で、1層目から2層目に至るポリウレタン発泡体の厚さは、合計で30mmである。
以上(1)~(2)の方法により得られたポリウレタン発泡体の試験体を、コーンカロリーメーター試験用サンプルとして準備した。該サンプルを、ISO-5660の試験方法に準拠したコーンカロリーメーター試験により、放射熱強度50kW/m2にて20分間加熱したときの総発熱量を測定した。
【0080】
[コア密度]
総発熱量を測定した際と同様の、ポリウレタン発泡体の試験体を準備した。該試験体の2層目から、スキン層を含まないように、概ね縦100mm×横50mm×高さ10mmの直方体からなる試験体を切り出し、切り出した試験体の質量及び体積を測定し、測定した質量及び体積からコア密度を測定した。
【0081】
[フィルター目詰まり]
メッシュ(網目の粗さ)の異なる発泡機用フィルターを2種類(40ミクロンメッシュ、80ミクロンメッシュ)用意した。各フィルターを発泡機内のポリオール含有組成物が通過する経路上に装填し、ポリオール含有組成物及びポリイソシアネートを混合させて得た発泡性ウレタン樹脂組成物を発泡機から約10L吐出させた後のフィルターの目詰まりの有無を目視により確認した。フィルターの目詰まりの評価基準は以下の通りである。
〇:40ミクロンメッシュのフィルターを装填し、目詰まりが発生しなかった。
△:40ミクロンメッシュのフィルターの装填時には目詰まりが発生したが、80ミクロンメッシュのフィルターの装填時には目詰まりが発生しなかった。
×:80ミクロンメッシュのフィルターを装填し、目詰まりが発生した。
【0082】
[液だれ]
ポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを表1に記載の配合にて混合させ、上記したポリウレタン発泡体の製造条件にて、吹付機により、基材(石膏ボード)に対し、ポリウレタンフォームの厚みが30mm以下になるように、飛散させるように吹き付け、液だれの有無を目視にて確認した。液だれの評価基準は以下の通りである。
〇:液だれが発生しなかった。
△:部分的に液だれが発生した。
×:全体的に液だれが発生した。
【0083】
[難燃性]
上記の方法により測定された総発熱量に基づき、ポリウレタン発泡体の難燃性の評価をした。難燃性の評価基準は以下の通りである。
〇:8MJ/m2未満
△:8MJ/m2以上10MJ/m2未満
×:10MJ/m2以上
【0084】
[失活性]
ポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを表1に記載の配合にて混合させて発泡性ウレタン樹脂組成物を得た。その後、上記したポリウレタン発泡体の製造条件にて、吹付機により、基材(石膏ボード)に対し、ポリウレタン発泡体の厚みが5mm以下になるように、飛散させるようにして該組成物を吹き付け、吹き付け後の表面硬化時間であるタックフリータイム(TFT)を測定した。
なお、この際、ポリオール含有組成物について、60℃下にて加速劣化試験を1週間実施した。該加速劣化試験の前後に、上記吹付作業及びTFTの測定をそれぞれ実施した。該加速劣化試験前のTFTと、該加速試験後のTFTとの差に基づき、発泡性ウレタン樹脂組成物の失活性を評価した。失活性の評価基準は以下の通りである。
〇:加速劣化試験に伴うTFTの増加率が、3割未満
×:加速劣化試験に伴うTFTの増加率が、3割以上
【0085】
得られたポリウレタン発泡体を用いて、上記した各評価を実施した。各項目の評価結果を表1に示した。
【0086】
【0087】
なお、各触媒の質量部は製品としての質量部である。
【0088】
以上の通り、各実施例で作製したポリオール含有組成物は、いずれも良好な発泡性が得られ、かつ発泡機内部のフィルターの目詰まりの発生を防止することができた。そして、該組成物をポリイソシアネートと反応及び発泡させて形成されたポリウレタン発泡体は、いずれも難燃性に優れていた。
これに対し、比較例1で作製したポリオール含有組成物は、所定の構造を有する臭素系難燃剤を含有していなかったため、発泡機内部のフィルターの目詰まりが発生し、十分な量のポリオール含有組成物を吐出させることができなかった。また、比較例2及び3で作製したポリオール含有組成物は、発泡機内部のフィルターの目詰まりの発生を防止することができたが、該組成物の発泡性、該組成物から形成されたポリウレタン発泡体の難燃性のうち少なくともいずれかが損なわれていた。