(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103476
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】医薬品送達システム
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20230719BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61J1/05 313L
A61M5/31 520
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085589
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2021078452の分割
【原出願日】2013-01-30
(31)【優先権主張番号】61/593,674
(32)【優先日】2012-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/717,474
(32)【優先日】2012-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514194716
【氏名又は名称】セルタ ドース,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】カレブ ヘルナンデス
(57)【要約】
【課題】救急救命の状況において特に小児患者へ薬品を正確及び効率的に送達するための装置及び方法を改良する。
【解決手段】本開示の態様は医薬品を送達するためのシステムを開示する。1つの態様では、本開示は、様々な幅の一連のゾーンを有するラベルを含み、それらのゾーンのそれぞれが患者の身体的特徴のうちの1つと相関する薬品の所定の体積ベースの用量に対応する、医療用投与装置を対象とする。1つの特定の例では、そのラベルは、投与する薬品の最小用量が薬品を投与するための開口部の近くにある第1ゾーンに対応するように医薬品投与装置にさらに添付される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品投与装置であって、
前記医薬品投与装置に予め充填される、予め選択された薬品と、
前記医薬品投与装置の面上にあり、様々な幅を有する複数のゾーンからなる一連のゾーンと、を備え、
前記複数のゾーンのそれぞれが前記予め選択された薬品の所定の用量に対応し、前記予め選択された薬品の前記用量が患者の身体的特徴のうちの1つと相関する、医薬品投与装置。
【請求項2】
前記一連のゾーンの各ゾーンがカラーコード化されており、前記カラーコード化ゾーンのうちの少なくとも1つが前記カラーコード化ゾーンのうちの少なくとも2つ目のカラーコード化ゾーンの幅と異なる幅を有する、請求項1に記載の医薬品投与装置。
【請求項3】
前記一連のゾーンが9種のカラーコード化ゾーンを含み、各ゾーンが独自の色を有する、請求項1に記載の医薬品投与装置。
【請求項4】
各カラーコード化ゾーンの幅が投与される前記予め選択された薬品の体積によって決まり、あるカラーコード化ゾーンから次のカラーコード化ゾーンまでの体積の漸進的変化が異なる、請求項2に記載の医薬品投与装置。
【請求項5】
前記カラーコード化ゾーンの幅が、前記医薬品投与装置に予め充填される前記予め選択された薬品、前記予め選択された薬品の濃度、及び前記医薬品投与装置の容積によって決まり、前記医薬品投与装置の容積が前記医薬品投与装置に伴う独自の換算係数を有する、請求項2に記載の医薬品投与装置。
【請求項6】
前記カラーコード化ゾーンの幅が0mmから約11mmまで変化する、請求項5に記載の医薬品投与装置。
【請求項7】
様々な幅を有する前記複数のゾーンがラベルに印刷されると共に、前記医療用投与装置の外面に添付される、請求項1に記載の医薬品投与装置。
【請求項8】
前記医薬品投与装置が注射器外筒及びピストン棒を有する注射器であり、
様々な幅を有する前記一連のゾーンが前記注射器外筒の外面に存在し、それにより投与される前記薬品の最小用量が、前記予め選択された薬品を投与されるための開口部の近くにある第1ゾーンに対応し、
前記一連のゾーンの幅が、前記注射器に予め充填される前記予め選択された薬品、前記予め選択された薬品の濃度、及び前記注射器の容積によって決まり、前記注射器の容積が、前記注射器に伴う独自の換算係数を有し、前記換算係数が、少なくとも前記注射器の長さ及び幅に基づく、請求項1に記載の医薬品投与装置。
【請求項9】
選択された薬品を中に保持するための実質的に透明なベッセル容器と、
前記ベッセル容器の面上にあり、様々な幅を有する複数のゾーンからなる一連のゾーンと、
を備え、前記複数のゾーンのそれぞれが前記選択された薬品の所定の用量に対応し、前記薬品の前記所定の用量が患者の身体的特徴のうちの少なくとも1つと相関する、医薬品投与装置。
【請求項10】
前記実質的に透明なベッセル容器が注射器外筒であり、細長く、実質的に円筒形の躯体を有し、
様々な幅からなる前記一連のゾーンが、前記注射器外筒の外面に添付されるラベルに印刷され、それにより前記選択された薬品の最小用量が、前記選択された薬品が投与される開口部の近くにある第1ゾーンに対応する、請求項9に記載の医薬品投与装置。
【請求項11】
患者に投与される薬品の名称が標記される容器を備え、
前記容器は、
投与される前記薬品の名称と様々な幅の対応するカラーコード化ゾーンと関連する所定の薬品用量と、が標記される医薬品投与装置と、
投与される前記薬品を保持するベッセル容器であって、投与される前記薬品の名称が標記された前記ベッセル容器と、
前記医薬品投与装置に装着され、投与される前記薬品を前記ベッセル容器から前記医薬品投与装置に分注するための充填用針と、を保持する、救急医療キット。
【請求項12】
カラーコード化測定テープと
予め選択された薬品で予め充填され、所定の薬品用量を予め標記された医薬品投与装置であって、前記所定の薬品用量のそれぞれが、様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンの中の対応するカラーコード化ゾーンと関連する、医薬品投与装置と、
前記の予め充填され、予め標記された医薬品投与装置を使用して前記予め選択された薬品を投与するためのステップを含む使用説明書と、を備える、救急医療キット。
【請求項13】
前記の予め充填され、予め標記された医薬品投与装置を使用して前記薬品を投与するためのステップが、
患者に適したカラーコード化ゾーンであって、患者の身体的特徴のうちの1つに対応する前記カラーコード化ゾーンを複数のカラーコード化ゾーンの中から前記カラーコード化測定テープを使用して決定するステップと、
前記予め選択された薬品で予め充填され、所定の薬品用量を予め標記された前記医薬品投与装置を選択するステップであって、前記所定の薬品用量が前記医薬品投与装置に標記された関連のカラーコード化ゾーンを有する、ステップと、
前記の決定されたカラーコード化ゾーンに対応する前記患者に投与する薬品用量を決定するステップと、
前記決定された薬品用量と関連するカラーコード化ゾーンに到達するために前記予め充填され、予め標記された医薬品投与装置からあらゆる過剰な医薬品を取り除くステップと
前記の予め充填され、予め標記された医薬品投与装置に残る前記薬品用量が正しいことを検証するステップと、
前記の決定された薬品用量を前記患者に投与するステップと、を含む、請求項12に記載の救急医療キット。
【請求項14】
医薬品投与装置を提供するステップと
前記医薬品投与装置に薬品を充填するステップと、
様々な薬品用量に対応する様々な幅を有する複数のゾーンからなる一連のゾーンを、前記医薬品投与装置に標記するステップと、を含む方法により製造される、予め充填され、予め標記された医薬品投与装置であって、
前記一連のゾーンは、
前記医薬品投与装置中の前記薬品を決定するステップと、
患者の身体的特徴のうちの1つに対応する前記一連のゾーンの各ゾーンの薬品用量を決定するステップと、を含む方法によって計算され、
前記薬品用量を決定するステップは、さらに、
前記薬品の濃度を決定するステップと、
前記医薬品投与装置の容積を決定するステップと、
前記一連のゾーンの中の各ゾーンの幅であって、前記患者の身体的特徴のうちの1つに対応する薬品用量に対応し、少なくとも1つの他のゾーンの幅と異なる各ゾーンの幅を計算するステップと、を含む、予め充填され、予め標記された医薬品投与装置。
【請求項15】
前記医薬品投与装置に標記するステップが、複数のカラーコード化ゾーンを含む前記の一連のゾーンを有するラベルを作成することと、前記予め充填され、予め標記された医薬品投与装置の外面に前記ラベルを添付することと、を含む、請求項14に記載の予め充填され、予め標記された医薬品投与装置。
【請求項16】
前記医薬品投与装置を作製するステップが、前記予め充填され、予め標記された医薬品投与装置の外面又は内面に、印刷すること、エッチングを施すこと、又は着色することを含む、請求項14に記載の予め充填され、予め標記された医薬品投与装置。
【請求項17】
医薬品投与装置を提供するステップと、
前記医薬品投与装置に充填される薬品の様々な用量に対応する様々な幅を有する複数のゾーンからなる一連のゾーンを前記医薬品投与装置に標記するステップと、
前記医薬品投与装置に前記薬品を充填するステップと、を含む方法によって製造される、予め充填され、予め標記された医薬品投与装置であって、
前記一連のゾーンは、
前記医薬品投与装置に充填される前記薬品を決定するステップと、
患者の身体的特徴のうちの1つに対応する前記の一連のゾーンの中の各ゾーンの薬品用量を決定するステップと、を含む方法によって計算され、
前記薬品用量を決定するステップは、さらに、
前記医薬品投与装置に充填される前記薬品の濃度を決定するステップと
前記医薬品投与装置の容積を決定するステップと、
前記一連のゾーンの中の各ゾーンの幅であって、前記患者の身体的特徴のうちの1つに対応する薬品用量に対応し、少なくとも1つの他のゾーンの幅と異なる各ゾーンの幅を計算するステップと、を含む、予め充填され、予め標記された医薬品投与装置。
【請求項18】
薬品を投与する方法であって、
複数のカラーコード化ゾーンの中から、患者の身体的特徴のうちの1つに対応する患者用のカラーコード化ゾーンを決定するステップと、
前記患者に投与される薬品を決定するステップと、
前記薬品を含有する、予め充填され、予め標記された医薬品投与装置であって、投与され得る薬品用量に対応する様々な幅の一連のカラーコード化ゾーンを備える前記の予め標記された医薬品投与装置を選択するステップと、
前記の決定されたカラーコード化ゾーンに対応する前記患者に投与する薬品を決定するステップと、
前記の決定された薬品用量と関連するカラーコードゾーンに到達するために前記の予め充填され、予め標記された医薬品投与装置からあらゆる過剰な医薬品を取り除くステップと、
前記の予め充填され、予め標記された医薬品投与装置に残っている前記薬品用量が正しいことを検証するステップと、
前記の決定された薬品用量を前記患者に投与するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
医薬品投与装置用の投与ラベルを作成する方法であって、前記方法は、
投与する薬品を選択するステップと、
患者の身体的特徴のうちの1つに対応する複数のカラーコード化ゾーンの薬品用量を決定するステップと、を含み、
前記薬品用量を決定するステップは、さらに、
前記薬品溶液の濃度を決定するステップと
前記医薬品投与装置の容積を決定するステップと、
複数のカラーコード化ゾーンの中のそれぞれ個々のカラーコード化ゾーンの幅を計算するステップであって、前記の個々のカラーコード化ゾーンのうちの少なくとも1つが前記のカラーコードゾーンのうちの少なくとも2つ目のカラーコード化ゾーンの幅と異なる幅を有し、それぞれ個々のカラーコード化ゾーンが前記患者の身体的特徴のうちの1つに基づく薬品用量に対応するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許協力条約(PCT)特許出願は、本明細書において参照によりここに援用される2012年2月1日に提出された「医薬品送達システム(System for Delivering Medication)」という表題の米国特許仮出願第61/593,674号と2012年10月23日に提出された「医薬品送達システム(System for Delivering Medication)」という表題の米国特許仮出願第61/717,474号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は医薬品投与装置、より具体的には標記済み医薬品投与装置及び救急救命治療の状況下で適切な用量の医薬品を投与するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
救急集中治療の状況における適切な薬品用量の正確及び効率的な投与は非常に重要である。これは小児患者が係わる救急救命治療の状況では投与の小さな誤りであっても悲惨な結果に至ることがあり得るので特に肝心である。しかしながら、薬品投与過程に含まれる多数の処置のため、最良の状況下であり、かつ医療従事者の最高の努力にもかかわらず、不注意による誤りを起こすことがある。より具体的には、典型的な状況では適切な薬品投与量が最初に決定されなければならないが、それには通常多段階算術計算が含まれる。この後に実際の薬品投与過程に含まれる複数の処置が続き、その投与過程は投与する正しい医薬品の選択又は使用する医療用投与装置の選択を含むことがあり得る。各処置が薬品投与過程の全体に過誤を引き起こす可能性を有しているので、実行しなくてはならない処置の数を減らすことでその過程の全体的な正確性と効率性を著しく上昇させることができる。
【0004】
薬品投与量は従来、患者の体重に基づいて決定される。しかしながら、この方法は特に救急救命治療の状況下では不適切で不正確であると判断されている。第一に、患者の実際の体重の測定に必要な秤はそのような状況下では容易に利用できるものではない、又は状況の緊急的な性質を考慮すると体重の測定は単に実際的ではない。また、救急救命治療の状況で投与する薬品の大部分は除脂肪体組織にのみ分布するので、薬品投与量を患者の実際の体重に基づかせることにより過剰摂取を引き起こす場合があり得る。体重に基づく用量決定システムの欠点のいくつかを理解したことにより、特に小児救急救命治療の状況に関して、患者の身長に基づく薬品投与量の決定方法の開発に至った。
【0005】
とりわけ、薬品投与量の迅速で効率的な決定を可能にするので広く用いられてきた1つの方法は、患者の身長を測定するためのカラーコード化測定テープの使用を含む。より具体的には、ブロスロウ(Broselow、登録商標)小児救急テープは容易に得られる患者の身長を薬品投与量に相関させる周知の器具である。その器具の詳細とその器具の使用方法は、参照により本開示に援用されるブロスロウの米国特許第4,716,888号明細書と第6,132,416号明細書において開示される。概して、その方法は、患者の身長を測定し、そのテープ上に提供されるカラーゾーンのうちの1つにそれをコード化し、そして、そのカラーコード化された身長を用いて患者に投与する薬品投与量を決定することを含む。通常使用されるインチやセンチメーターではなく複数のカラーコード化ゾーンにテープを分割することによって、所与の身長の範囲に対応する各カラーゾーンを用いて患者の身長を容易に読むことができ、センチメーターやインチでの特定の測定値ではなくある特定の色であると書き留めることができる。言い換えると、それぞれのカラーコード化された身長ゾーンはメートル法又はヤードポンド法で測定された実際の身長のある特定の所定の範囲に対応する。例えば、テープ上の灰色ゾーンは42.20cmから60.79cmまでの身長の範囲に対応することができ、そして、テープ上のピンク色ゾーンは60.80cmから67.79cmまでの身長の範囲に対応することができる。したがって、身長が1番目の身長範囲内にある患者は灰色とコード化され、身長が2番目の身長範囲内にある患者はピンクとコード化される。それらの2人の患者に対する適切な薬品投与量はテープ上に記載された所定の薬品投与量のリストから選択される。
【0006】
薬品投与量を決定する段階は前述の方法を用いることで大いに簡単になったが、多くの場合、投薬過誤を引き起こす、又は医薬品投与過程を非効率的にする多数の他の問題が未だ残っている。例えば、投与する予定の医薬品の正しい用量に辿り着くためには、一旦、医薬品投与量を決定しても、例えば、その医薬品の濃度に関する計算など、他の多数の計算を実行することがまだ必要である。さらに、正しい医薬品の選択、適切な医薬品投与装置の選択又はその医薬品投与装置への正しい所定の体積の医薬品の分注はそれぞれ過誤を引き起こすことがあり得、又は患者への医薬品の投与過程を遅らせることがあり得る。医薬品投与量が従来の体重に基づくシステム以外の用量決定システム、例えば患者の年齢、体表面積又は体積に基づいている状況であっても、そのようなシステムで用いられる較正の種類に起因して用量決定の間違いを見ることがあり得る。特に、通常用いられる投与量の一定の漸進的変化は、そのようなシステムが用いられると必要な投与の正確性を失うことになり得る。
【0007】
このように、薬品投与量決定の過程と投与を簡単にするように企図されている様々な技術が利用可能であるにもかかわらず、時間的制約、及び処置が施される環境、並びに用いられている用量決定システムの種類のために過誤を起こす可能性が未だ存在する。よって、救急救命の状況において特に小児患者へ薬品を正確及び効率的に送達するための装置、及び送達する方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
選択した薬品を投与するための医薬品投与装置が本明細書に開示される。医薬品投与装置はその医薬品投与装置の表面に標記された様々な幅の一連のゾーンを含み、それらのゾーンのそれぞれは患者の身体的特徴のうちの1つと相関する所定の用量の薬品に対応する。その一連のゾーンは、投与する薬品の最小用量が薬品を投与するための開口部の近くにある第1ゾーンに対応するように標記されている。
【0009】
医薬品投与装置に添付するための投与ラベルを作成するための方法も開示される。1つの実施形態では、その方法は投与する薬品を選択するステップ、及び患者の身体的特徴のうちの1つに対応する複数のカラーコード化ゾーンの薬品用量を決定するステップを含む。薬品用量を決定するステップは薬品溶液の濃度を決定するステップ、医薬品投与装置の容積を決定するステップ、及び投与ラベルに印刷される個々のカラーコード化ゾーンの幅を計算するステップをさらに含み、それぞれ個々のカラーコード化ゾーンの幅は患者の身体的特徴のうちの1つに基づく薬品用量に対応する。
【0010】
薬品を患者へより正確及び効率的に投与する方法が本明細書に開示される。1つの実施形態では、その方法は、複数のカラーコード化ゾーンの中から患者に適したカラーコード化ゾーンであって、患者の身体的特徴のうちの1つに対応するカラーコード化ゾーンを決定すること、患者に投与する薬品を決定すること、投与する薬品で充填された容器と予め標記された医薬品投与装置であって、投与され得る薬品用量に対応する様々な幅の一連のカラーコード化ゾーンを備える予め標記された医薬品投与装置を含む医療キットを選択すること、決定されたカラーコード化ゾーンに対応する患者に投与する薬品用量を決定すること、決定された薬品用量と関連するカラーコード化ゾーンに到達するためにその薬品で充填された容器から予め標記された医薬品投与装置へ医薬品を分注すること、その薬品用量が正しいことを検証すること、及び決定された薬品用量を患者に投与することを含む。
【0011】
薬品を患者へより正確及び効率的に投与する方法は、複数のカラーコード化ゾーンの中から患者に適したカラーコード化ゾーンであって、患者の身体的特徴のうちの1つに対応するカラーコード化ゾーンを決定するステップ、患者に投与する薬品を決定するステップ、その薬品を含有する、予め充填され予め標記された医薬品投与装置であって、投与され得る薬品用量に対応する様々な幅の一連のカラーコード化ゾーンを備える予め充填され、予め標記された医薬品投与装置を選択するステップ、決定されたカラーコード化ゾーンに対応する患者に投与する薬品用量を決定するステップ、決定された薬品用量と関連するカラーコード化ゾーンに到達するために予め充填され、予め標記された医薬品投与装置からあらゆる過剰な医薬品を取り除くステップ、予め充填され、予め標記された医薬品投与装置に残っている薬品用量が正しいことを検証するステップ、及び決定された薬品用量を患者に投与するステップを代わりに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本開示の1つの実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図1B】本開示の1つの実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図1C】本開示の1つの実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図1D】本開示の1つの実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図2A】本開示の別の実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図2B】本開示の別の実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図2C】本開示の別の実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図2D】本開示の別の実施形態による医薬品投与装置の透視図である。
【
図3A】カラーコード化医薬品用量を有するラベルの平面図である。
【
図3B】カラーコード化医薬品用量を有するラベルの平面図である。
【
図3C】カラーコード化医薬品用量を有するラベルの平面図である。
【
図3D】カラーコード化医薬品用量を有するラベルの平面図である。
【
図4】カラーコード化医薬品用量ラベルを決定及び印刷する方法を示す流れ図である。
【
図5】本開示の予め充填され、標記された医薬品投与装置を使用して医薬品を投与する方法を示す流れ図である。
【
図6】患者のカラーコード化された身長を決定するために使用される測定器具を示す図である。
【
図7A】予め標記された医薬品投与装置を含む本開示の救急医療キットを使用して医薬品を投与する方法を示す図である。
【
図7B】本開示の1つの実施形態による医薬品の投与のための救急医療キットを示す図である。
【
図8A】本開示のシステム及び方法を用いる薬品送達における改善点を示すデータを含む図である。
【
図8B】本開示のシステム及び方法を用いる薬品送達における改善点を示すデータを含む図である。
【
図8C】本開示のシステム及び方法を用いる薬品送達における改善点を示すデータを含む図である。
【
図8D】本開示のシステム及び方法を用いる薬品送達における改善点を示すデータを含む図である。
【
図8E】本開示のシステム及び方法を用いる薬品送達における改善点を示すデータを含む図である。
【
図8F】本開示のシステム及び方法を用いる薬品送達における改善点を示すデータを含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願は患者に適切な医薬品用量を投与するための装置及び方法を説明する。とりわけ、特に救急救命治療の状況において医薬品投薬過誤を最小にするため、並びに医薬品の投与の全体的な正確性及び効率性を改善するために企図される予め標記された医薬品投薬/投与装置が提供される。
【0014】
以下で詳細に解説するように、1つの実施形態では、医薬品投与装置10は、所定の色でコード化された体積ベースの医薬品用量100が標記された細長い外筒30とピストン棒50を含む注射器15である。その医薬品投与装置はさらに、1つの実施形態によれば、患者に投与する医薬品に対応する液体105で予め充填されてもよい。様々な因子に基づいて複数の医薬品の特定の体積ベースの用量を決定するための方法も開示される。特に、1つの実施形態によれば、その方法はラベルを作成すること、又は、例えば医療用投与装置の容積及び/又は薬品の濃度に基づいて決定される用量を医療用投与装置に標記することを含む。
【0015】
また、予め標記された医薬品投与装置を使用して適切な医薬品用量を投与するための方法が詳細に示される。開示される方法は、患者への医薬品の用量を決定し、投与するのに必要な時間を大いに減少させ、同時にそのような用量が誤って計算されるリスク、そうでない場合は誤って投与されるリスクを減少させる。
【0016】
装置
標記済み医薬品投薬/投与装置10の第1の実施形態の詳細な解説のために
図1A~1Dに対する言及をこれより行う。
図1Aに示されるように、医薬品投与装置10は、1つの実施形態によれば、近位末端25と近位末端の反対に遠位末端20を含む注射器15である。その注射器は、投与する医薬品を中に保持するための遠位末端にある注射器外筒30等のベッセル容器、及び注射器外筒の近位末端35に位置する開口部36から近位末端25にあるピストン棒の近位末端55へ近位方向に向かって伸長するピストン棒50を含む。注射器外筒とピストン棒は両方ともプラスチック、ガラス、又は不活性であるか、若しくは内部の液体の化学均衡を崩さない他の適切な透明な医療用等級の材料等の材料から作製される。
【0017】
図1Bに示されるように、注射器外筒30は細長くて実質的に円筒形であり、そして、遠位末端31と近位末端35を含む。注射器外筒は外周面37と内周面38をさらに含む。ピストン棒を受容し、液体を中に保持することができる薬室32は遠位末端31と近位末端35の間にある外筒の内周面38によって限定される。つば部33は注射器の扱いをより簡単にするための摘みとして役立ち得るが、それは外筒の近位末端と一体成形されており、そして、ピストン棒を受容するための開口部36を限定する。外筒の内面に沿って開口部36の近位に
図1Cに示される隆線34が存在し、それは、ピストン棒が外筒に一度はめ込まれたら、ピストン棒が外筒から滑り出ることを防ぐ。
【0018】
開口部36は薬室32と通じており、そして、オリフィス39は注射器外筒の遠位末端20に位置する。注射器外筒30内に含まれる液体を排出するための針、口金、又はチューブを装着するための先端部40は外筒の遠位末端20と一体成型されており、そして、オリフィス39と通じている。その先端部は同軸上に位置する内側部材41及び外側部材42を含んでもよい。1つの実施形態によれば、その先端部はルアーテーパー接続部を含んでもよい。
【0019】
ピストン棒50は、
図1Bに示される1つの実施形態によれば、ピストン棒桿体51とピストン棒桿体の遠位末端56に装着されたゴム製又はプラスチック製のガスケット又はストッパー52を含む。そのガスケットは、注射器の中身が注射器の奥から漏れることを防ぐために外筒の内面とピストン棒の間に密封状態を作り出す。環状のつば部53はピストン棒桿体の近位末端55と一体成形されている。ピストン棒50は薬室30と相補的な細長い形状を有しており、そして、薬室に沿って(円筒形の外筒又は管の内部で)押されて注射器に外筒の遠位末端にある先端部40又はオリフィス39から液体を排出させることができるように設計されている。あるいは、ピストン棒は薬室30の内部から先端部40又はオリフィス39を介して液体を押し出すことを可能にする他のあらゆる構造を含み得る。
【0020】
本開示の1つの実施形態によれば、医薬品投与装置は予備選択した薬品で予め充填されてもよい。最初に、医薬品投与装置が予め充填されており、注射器が前医薬品投与位置にあるとき、ピストン棒桿体の実際の長さは注射器外筒の外側へ長手方向に伸長する。言い換えると、
図1Aに示されるように医薬品の投与前にはピストン棒桿体のガスケット52と遠位末端56だけが最初に外筒の近位末端35で注射器外筒の内側にあり、ピストン棒の全長の残りの部分は、ピストン棒桿体の近位末端55がその最も伸長した構成であるように、外筒の外側にある。あるいは、医薬品投与装置が、同梱の医薬品ベッセル容器内に提供される薬品が薬品投与過程の直前に医薬品投与装置に分注されることを必要とするキットの一部になっている例では、ピストン棒桿体は、薬品が注射器に分注されるまで注射器外筒の内部に留まっていてもよい。
【0021】
図2Aに示される別の実施形態によれば、注射器15は細長い外筒70と所定の色でコード化された体積ベースの医薬品用量100が標記されたピストン棒80を含み、患者に投与する医薬品に対応する液体105で予め充填されてもよい。この構成では、
図2Cに示されるように注射器外筒は概してより大きい直径を有する円筒形の外筒と同軸上に配置される内部筒体75を含む。内部筒体は、その内部筒体の内側で同軸上に位置し、その内部筒体と共に長手方向に配置されている針76を有する。ピストン棒80は
図2Dに示されており、実質的に円筒形の部材又はバイアル81とストッパー82を含む。注射器外筒とピストン棒は、最初は
図2Bに示されるように医薬品の投与前に分かれているので、ストッパー82が完全に内部筒体75及び針76とかみ合うように注射器外筒の近位末端35にピストン棒80を挿入することが必要である。
【0022】
本開示のさらに別の実施形態によれば、外筒に含有される医薬品に基づいてピストン棒及び/又はピストン棒ストッパーをカラーコード化することができる。ピストン棒のそのようなカラーコード化は医薬品を投与する効率をさらに上昇させることができ、投与する医薬品が正しいことをピストン棒の目視検査により迅速に検証することができるので、投与をさらに間違いにくいものにすることができる。
【0023】
あるいは、医薬品投与装置は、所望の医薬品を内部に含有することができ、そして、中から排出することができる、例えば、チューブ、バイアル瓶、バッグ、又は瓶のようなあらゆるベッセル容器を含むことができる。例えば、医薬品投与装置は静脈内投与(IV)液を含有するバッグであり得るだろう。この実施形態によれば、伝統的な体積の標記と共に一連のカラーコード化ゾーンをバッグに標記することができる。伝統的な体積の標記と組み合わせて使用するとき、カラーコード化ゾーンは、患者のカラーゾーンに基づいて患者に投与され得る各医薬品の正しい体積を医療従事者に思い出させるものとして役立ち得るだろう。所与の医薬品のための静脈内投与(IV)ポンプに分配される正しい総体積を入力するためのキーとしてカラーコード化ゾーンを用いることもできる。
【0024】
次に医薬品投与装置の表面上の標記について説明する。注射器の場合、標記は注射器外筒又はピストン棒の周面に沿って配置され得る。
図1~3に示されるように、標記は患者に投与され得る医薬品用量を示す一連の実質的に半透明なバンド又はゾーン100を含む。図に示されている標記は一連のカラーコード化ゾーンを含むが、それらの標記は異なる模様、質感等を有するゾーンを含むこともできるだろう。使用する標記の種類に関係なく、医薬品投与装置の内面又は外面に標記を直接印刷、ペイント、エッチング、又は着色するか、又は、医薬品投与装置の外面に添付又は配置することができるラベル又はスリーブを作成してもよい。適用される標記は、一旦、装置が充填されると標記を通して液体レベルを容易に見ることができるようなものである。
【0025】
図3Aは本開示の1つの実施形態に従う複数のラベルを示す。各ラベル300は実質的に長方形であり、ラベルが添付される医療用投与装置の容積に基づく大きさに成形される。言い換えると、医薬品投与装置間の体積の違いのため、及びそのような装置の外周面の違いの結果として、ラベルの寸法又は面積をそれに応じて調節してラベルが医療用投与装置の外面を適切に覆うことを確実にする。例えば、2つの異なる外筒容積を有する注射器にラベルを作成するとき、外筒の外面の変化に対応するためにラベルの寸法を縦と横の両方で増加又は減少させる。
【0026】
ラベルに印刷されるカラーバンド又はカラーゾーンの幅への適切な対応する変更もラベルの寸法の変更と共に、医薬品を投与するために使用される医薬品投与装置に基づいて行われる。より具体的には、医薬品投与装置の体積の違いを考慮して、様々な医薬品投与装置にわたって同じ体積ベースの医薬品用量を維持するためにカラーバンド又はカラーゾーンの幅を変更する必要がある。例えば、
図3Bに示されるように、10ccの医薬品投与装置と5ccの投与装置へ負荷される同じ医薬品のためのラベルは、両方の医薬品投与装置について医薬品用量を同一に保つために各カラーバンド又はカラーゾーンについて2つの異なる幅を有する。言い換えると、5ccの投与装置を使用して投与することと比べて10ccの投与装置を使用して同量の医薬品を投与するため、10cc装置用のラベル310上のカラーバンド351A~359Aの幅は、患者に同量の医薬品を送達するために5ccの投与装置用のラベル305上のカラーバンド351B~359Bよりも小さいだろう。
【0027】
同様に、使用する医薬品の濃度もラベルに印刷されるカラーバンド又はカラーゾーンの幅に影響する。より具体的には、カラーバンド又はカラーゾーンの幅は医薬品の濃度に基づいて決定され、より高い濃度の医薬品はより低い濃度の医薬品よりも小さい体積ベースの用量、又は小さいバンドの幅に対応する。
【0028】
図3Cに示されるように、ラベル300は対立する平行な辺315及び320と対立する平行な末端325及び330を有し、そして、上で考察したカラーコード化された患者の身長の範囲のそれぞれに対する医薬品用量に対応する様々な幅の一連の連続的なカラーバンド又はカラーゾーン351~359を含む。より具体的には、各カラーバンドはラベルの対立する末端325及び330に対して平行である前縁335と後縁340で限定される幅を有し、一旦、そのラベルが医薬品投与装置に添付されると、その各カラーバンドは、所定のカラーコード化範囲内にある身長又は患者の他のあらゆる生理的特徴を有する患者に適切な所定の用量の医薬品の体積に対応する。言い換えると、ラベル上の各カラーバンド又はカラーゾーンはカラーコード化された身長の範囲又は他の生理的特徴のそれぞれと相関する医薬品用量を表す。
【0029】
さらに
図3Cに言及すると、1つの実施形態によれば、9種の別個のカラーバンド351~359を使用して9種の別個のカラーコード化された患者の身長の範囲に対応する9種の異なる用量の医薬品を区別することができる。より具体的には、色のそれぞれが特定の医薬品の9種の異なる投与量のうちの1つに対応する。
図3Cに示されるように、1つの特定の実施例では、バンドの色は灰色351、ピンク352、赤353、紫354、黄色355、白356、青357、オレンジ358及び緑359を含むことができ、灰色のカラーバンドは最小用量の医薬品に対応し、緑色のカラーバンドは送達され得る最大用量の医薬品に対応する。下でより詳細に考察するように、薬品投与の過程を容易にするために様々なカラーバンド又はカラーゾーンの間の境界に黒色の実線365を利用することができる。
図3A~3Cに示される特定の色を参照して考察を行うが、他の色又は標記を使用することができることが容易に理解され得る。あるいは、色に加えて、又は色の代わりに色の名称をバンド又はゾーンの幅の内側に印刷してもよい。
【0030】
図3Dに示されるさらに別の実施形態によれば、ラベルは10種の異なるカラーバンドを含むことができ、10番目のバンド360は送達され得る最大用量の医薬品に対応する。この特定の実施形態では最大用量は、これまでに開示した色づけられた身長の範囲の外にある身長を有するあらゆる患者に送達され得る普遍的な用量に対応し得る。例えば、小児患者と成人患者の両方に使用することができ、したがって、2つの異なる患者群のために2つの別々の医薬品用量決定システムを有する必要性を排除する普遍的な医薬品投与装置にこの実施形態に従うユニバーサルラベルを取り付けることができる。上で提供された例では特定の数のカラーバンドが考察されたが、より正確な医薬品の投与を可能にするあらゆる数のカラーバンドを使用することができることが留意されるべきである。例えば、いくつかの事例では、必要に応じてこれまでに定義したバンド又はゾーンをサブバンド又はサブゾーンにさらに細分してより正確な医薬品の投与を可能にすることができる。
【0031】
また、本開示の別の実施形態に従って、及び
図3Cに示されるようにラベルの縁のうちの1つは、ラベルが注射器又はピストン棒に正しく添付又は配置されることを確実にするのに役立つだろう印370を含むことができる。例えば、ラベルを逆方向で外筒に添付し、そうして後になって誤った用量が投与されることを防ぐために注射器外筒の遠位末端に配置される予定のラベルの縁に印をつけることができる。例えば、最小用量に対応するカラーバンドを有するラベルの縁は、注射器外筒の遠位末端とのラベルの整列を容易にする印をその前縁に含むことができる。
【0032】
さらに、
図3Aに示される別の実施形態に従うと、ラベルは投与する医薬品の名称又は正しい医薬品が患者に投与されることを確実にするために重要であり得る他のあらゆる情報を含んでもよい。特に、医薬品の名称をラベルの長手方向に、又は医薬品投与装置中の医薬品が正しいことを容易に検証することができる限り他のあらゆる位置に刻印することができる。
【0033】
投与情報の決定及び作成法
次に複数の医薬品及び医薬品投与装置の医薬品用量を決定するための方法400を考察する。
図4に示される1つの特定の例では、その方法は選択した医療用投与装置に取り付けることができるカラーコード化用量ラベルを作成し得る。
図4に示されるように、方法400は、投与ラベルが作成される予定の医薬品を選択するステップ401で始まる。救急救命治療の状況に関して最も一般に使用される医薬品のいくつかには、ほんのわずかな例を挙げると、例えば、アトロピン、リドカイン、フェンタニール、エピネフリン、エトミデート、ケタミン、サクシニルコリン、ロクロニウム、及びミダゾラムが含まれる。しかしながら、その方法は本開示の医薬品投与装置を使用して投与され得る他のあらゆる医薬品に等しく適用され得ることが理解されるべきである。一旦、ラベルを作成する予定の医薬品を特定すると、これまでに考察したカラーコード化された身長ゾーンのそれぞれに対する薬品の用量をステップ402で決定する。下の表1は上に記載された薬品のうちのいくつかについてmg単位で投与量を提供する。表1中に見ることができるように各薬品の投与量は薬品の種類によって異なるだけではなく、患者の身長によっても異なる。したがって、例えば表1に示されるように、黄色カラーコード化された身長ゾーンの範囲内にある患者への用量はサクシニルコリンについては16mgであり、ロクロニウムについては13mgである。同じ薬品が異なるカラーコード化された身長の範囲内にある身長を有する2人の異なる患者に投与される場合では、示されるように2つの異なる医薬品用量が使用されるだろう。例えば、患者の身長のうちの一方が赤とコード化され、他方が青とコード化されるエピネフリンの場合では、各患者に投与される医薬品の用量はそれぞれ0.085mgと0.21mgだろう。あるいは、その薬品の用量は患者の身長に基づくもの以外の投与勧告に基づいて決定されてもよい。
【0034】
ステップ402において患者に投与する用量を決定した後に次いでステップ401において選択された薬品の薬品濃度をステップ403において決定する。薬品の濃度は投与する必要がある体積と直接的に関連がある。言い換えると、より低い濃度を有する溶液よりもより高い濃度を有する溶液についてより小さい体積の同じ医薬品を投与する必要がある。
【0035】
次のステップであるステップ404はラベルを取り付ける医薬品投与装置の選択を伴う。上で説明したように医薬品投与装置の容積は様々であるので、ラベルが作成される予定の様々な医薬品投与装置の寸法及び/又は形状の違いを考慮するために医薬品投与装置の長さと幅及び/又は医薬品の濃度に基づく医薬品投与装置の換算係数を使用することができる。したがって、一旦、特定の体積を有する医薬品投与装置が選択した医薬品の投与用に選択されると、表1に記載される対応する換算係数を使用して所定の医薬品用量に対応する個々のカラーバンド/ゾーンの幅と総合的なバンドの幅の両方を計算することができる(ステップ405)。より具体的には、所定の医薬品用量に対応する各カラーバンド/ゾーンの幅は投与する薬品の用量、溶液濃度及び医薬品投与装置の容積に基づいて計算される。1つの実施形態によれば、コンピューター処理装置(CPU)が使用者によって提供された入力値に応答してそれらの計算の全てを実行することができる。
【0036】
一旦、各カラーバンド又はカラーゾーンの幅が決定され、ラベルが印刷されると、そのラベルを医薬品投与装置へ取り付けることができる。例えば、外筒とピストン棒を有する注射器であって、投与する予定の医薬品を保持することが企図されている外筒を有する注射器にラベルが取り付けられる予定であるとき、最小の投与のカラーバンドに対応するラベルの縁のうちの1つを医薬品投与装置10の注射器外筒の遠位にある縁と整列させることによって外筒の外周面に沿ってそのラベルを配置することができる。あるいは、ピストン棒が医薬品を保持するためのベッセル容器として役立つ注射器では、最小の投与のカラーバンドに対応するラベルの縁のうちの1つを医薬品投与装置の近位末端と整列させることによってピストン棒の外周面に沿ってそのラベルを配置することができる。
【0037】
選択した医薬品、医薬品投与装置の容積及び溶液濃度のそれぞれについて予め計算されたバンド/ゾーンの幅をその医薬品投与装置に取り付けることができるラベルに印刷することができるが、医薬品投与装置に投与情報を直接刻印、エッチング、着色、又はペイントすることもできる。あるいは、医薬品投与装置の上に配置することができるスリーブに投与情報を印刷することができる。
【0038】
実施形態に応じて、適切に標記された医薬品投与装置に、例えば、最大身長ゾーンの範囲内にある身長を有する患者に投与され得る最大用量に対応する液量を有する所望の医薬品を予め充填することができる。医薬品投与単位に選択した医薬品を予め充填するとき、医薬品投与装置が充填される前か後にラベルを取り付けることができる。医薬品投与装置が医療用投与装置及び投与する薬品を充填されたベッセル容器を含むキットの一部として含まれる事例のように、医薬品投与過程の直前に選択した医薬品を医薬品投与装置に充填する場合では空の標記済み医薬品投与装置を使用のために供給する。よって、所与の患者に対する所定の用量に対応する液量を薬品投与の直前に容器から標記済み医薬品投与装置に分注することができる。
【0039】
【0040】
薬品投与方法
上で考察したステップに従って組み立てられる医薬品投与装置を使用して薬品を安全、且つ、効率的に送達することができる。
図5は1つの実施形態による本開示の医薬品投与装置10を使用する患者への薬品の投与方法の流れ
図500である。この特定の例では本開示の方法は、予め充填され、予め標記された医薬品投与装置から患者へ選択した医薬品を効率的に投与するためのステップを提供する。図に示されるように、その方法はカラーコード化された身長又は他のあらゆる患者の身体的特徴を決定するステップ501で始まる。身長の場合はブロスロウテープ又はカラーコード化された身長の範囲を提供する他のあらゆる類似の種類の器具をこのステップで使用することができる。
図6に示されるように、テープ601に沿って患者600を配置し、そして、テープ上の患者のカラーコード化された身長を記録することによってカラーコード化された身長を得ることができる。あるいは、カラーコード化することができ、医薬品投与量と相関させることができる、例えば、体表面積又は体積等の他のあらゆる生理的特徴を使用することができる。一旦、患者の身長又は他のあらゆる生理的特徴を決定、及び/又は特定の色範囲にコード化したら、投与する医薬品を含有する予め充填された医薬品投与装置10をステップ502において選択する。医薬品の選択は、上で考察されたように、予め充填された医薬品投与装置の外面に沿って刻印された医薬品の名称を読むか、又はピストン棒桿体の色を確かめることによって検証される。患者の身長についてのカラーコードを決定及び記録し、そして、投与する医薬品が正しいことを検証した後で、次いで投与する適切な用量の医薬品又はその対応する体積をステップ503において決定する。例えば、患者の身長が測定テープ上の青色の範囲内にあると決定された場合、患者に投与する医薬品の体積は医薬品投与装置上の青カラーバンド又はカラーゾーンに対応する体積になる。したがって、医薬品投与単位は医薬品を予め充填されているので、ステップ504において示されるように医薬品が所望の体積になるまであらゆる過剰な医薬品を予め充填された注射器から取り除くことによって適切な用量の医薬品を得ることができる。言い換えると、予め充填された体積が患者に投与され得る最大用量に対応し、患者の身長が最大可能用量の範囲内にないと判断された場合、その予め充填された医薬品投与装置から薬品の投与前に医薬品をいくらか取り除かなくてはならない。したがって、1つの実施形態によれば、所望の投与バンド又は投与ゾーンの後縁に対応する、2つの異なるバンド又はゾーンの間の境界にある実線とピストン棒54の近位末端が整列するまで、ピストン棒を外筒の内側に沿って外筒の遠位末端31に向かって押す。例えば、青色にコード化された身長を有する前述の患者の場合では、外筒の遠位末端の近くに前縁を有し、外筒の近位末端の近くに後縁を有する青色のバンドに関して、ピストン棒の遠位末端が青色のバンドの後縁と整列するまで外筒の遠位末端に向かってピストン棒を押す。一旦、予め充填された投与装置から全ての過剰な液体がステップ504で取り除かれると、ステップ505において医薬品用量が正しいことが検証され、その後、ステップ506においてその医薬品が患者に投与される。
【0041】
あるいは、別の実施形態によれば、医薬品投与装置を使用して
図7Aに示される方法に従って患者に薬品を投与することができる。特に、薬品を投与するための方法は患者に投与する薬品を含む救急医療キットの選択で始まり得る(ステップ701)。
図7Bに示されるように、医療キットは、箱、バッグ、ポーチ、又は中に医薬品投与装置を保持することができる他のあらゆる適切な容器等の容器であって、何よりもその容器の中に含有される医薬品の名称を外面にラベルされた容器を含むことができる。例えば、1つの実施形態によれば、薬品の名称がラベル上に記載されることに加えて、そのラベルはその薬品の濃度についての情報、及び/又はその薬品を投与するためのキットの使用法についての指示も含み得る。医療キットは、選択した薬品の様々な薬品用量について較正されたカラーコード化ゾーンを有する、例えば、注射器等の予め標記された医薬品投与装置をさらに含み得る。注射器の標記は送達する予定の薬品の名称、又は薬品を患者に正しく送達することを確実にする点で役立ち得る他のあらゆる情報も含み得る。医療キットは、注射器への薬品の分注を容易にするための、プラスチック又は他のあらゆる適切な材料からできている可能性がある針先が鋭くない充填用針等の針も含み得る。医療キットは、瓶、バイアル瓶等のような薬品を保持するための容器であって、その容器の外側に薬品の名称が標記されている容器も含み得る。その容器はその容器の内側に薬品を含むのに役立つストッパー又は蓋を含み得る。そのストッパー又は蓋は、容器からの薬品を医薬品投与装置に容易に分注することができるように、例えば、ゴム又は充填用針で容易に穴を開けることができる他のあらゆる適切な材料から作製され得る。
【0042】
薬品用量が患者の身長に基づく場合、ブロスロウテープ、又は
図6を参照して上で考察された、カラーコード化された身長の範囲を提供する他のあらゆる類似の種類の装置等の器具を使用して患者のカラーコード化された身長を決定することができる(ステップ702)。その後、カラーコード化された患者の身長に基づいて投与する薬品の適切な体積を決定することができる(ステップ703)。次に決定された薬品体積を医薬品投与装置に分注することができる(ステップ704)。特に、医薬品投与装置上の所望のカラーゾーンに到達するまでその医薬品投与装置に薬品を分注することができる。一旦、適切な用量の薬品が医薬品投与装置に分注され、検証されたら(ステップ705)、次にその薬品を患者に投与することができる(ステップ706)。
図7Bに示される1つの実施形態によれば、医薬品投与装置が装着済みの充填用針を有する注射器であるとき、医薬品の投与前にその充填用針を取り外してもよい。
【0043】
したがって、全ての図を参照して開示されるように、標記済み医薬品投与装置とその医薬品投与装置の作製及び使用方法は現在使用されているシステム及び方法に優るいくつかの利点を提供する。第1に、予め標記された医薬品投与装置は、現在利用可能なシステムのうちのいずれかと比べてより正確に医薬品を投与することを可能とする。さらに、
図8A及び
図8Bに示されるように、高ストレス環境において実施することが必要な投与量の計算ステップを排除すること、並びに適切な医薬品投与装置の選択ステップを排除することが、従来の装置及び方法を用いるときに通常生じる、重大な過剰量投与過誤又は重大な過少量投与過誤等の重大な投薬過誤の排除に役立つ。また、重大でない過誤の頻度と重大性は伝統的な方法と比べて
図8C及び8Dに示されるように低下し得る。最後に、
図8E及び
図8Fに示されるように、医薬品を準備し、送達するための時間、並びに迅速連続気管挿管(RSI)を準備するときの医薬品を送達するための時間は、本開示に従う医薬品投与装置を使用すると、従来の装置と比べて大いに減少し得る。したがって、本開示の実施形態に従って設計及び使用される標記済み医薬品投与装置は救急救命治療の状況においてより簡単、正確で、効率的な薬品送達を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品の投与情報を生成するための方法において、
前記方法は、
複数の異なる薬品の中から一つの薬品を選択し、選択された薬品を作成することと、
複数の異なる寸法の医薬品投与装置の中から特定の容積を有する医薬品投与装置を選択することであって、前記特定の容積は前記医薬品投与装置の長さ及び幅に基づいて決定され、前記医薬品投与装置は、前記選択された薬品を中に保持するための透明なベッセル容器を備える、特定の容積を有する医薬品投与装置を選択することと、
前記特定の容積に基づく換算係数を用いて、様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンの各々の幅を計算し、前記一連のカラーコード化ゾーンの各々は、患者の1つ以上の身体的特徴に対応する適切な薬品用量を表す、様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンの各々の幅を計算することと、
前記透明なベッセル容器の表面に表記するために前記様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンを印刷することであって、前記一連のカラーコード化ゾーンは、前記一連のカラーコード化ゾーンの中で体積表記を含み、前記一連のカラーコード化ゾーンの各々の前記幅は、前記選択された薬品と、前記選択された薬品の濃度との各々に基づいて、さらに計算されている、前記様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンを印刷することとを備える、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の身体的特徴は、患者の身長、患者の年齢、患者の体重、体表面積又は堆積のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記透明なベッセル容器は、細長く実質的に円筒形の躯体を有する、注射器外筒であり、前記選択された薬品の最小用量が、前記選択された薬品が投与される開口部の近くにある第1ゾーンに対応するように、前記様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンが、別個のラベルが印刷された後に前記注射器外筒の外面に添付される前記別個のラベルに印刷される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
特定の用量に対応する計算された体積の前記選択された薬品を前記透明なベッセル容器に充填することと、
前記透明なベッセル容器の中の調節された体積の前記選択された薬品が前記様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンの内の1つの中にあるように、前記透明なベッセル容器から過剰な量の前記選択された薬品を取り除くこととをさらに有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記別個のラベルは、薬品の名称と、前記薬品の濃度とをさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記一連のカラーコード化ゾーンの各々が、前記透明なベッセル容器に添付されるラベルに含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ラベルは、ピストン棒の外周面に沿って配置されるように構成されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記様々な幅を有する一連のカラーコード化ゾーンは、前記透明なベッセル容器の外面にわたって配置されるように構成されているスリーブであるラベル上に印刷される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の身体的特徴は患者の身長であり、
前記一連のカラーコード化ゾーンの各々は、前記一連のカラーコード化ゾーンの対応するゾーンについての前記患者の身長の値の範囲の中で、最も低い患者身長については、最大許容用量までしか延びない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の身体的特徴は患者の体重であり、
前記一連のカラーコード化ゾーンの各々は、前記一連のカラーコード化ゾーンの対応する前記患者の体重の値の範囲の中で、最も軽い患者体重については、最大許容用量までしか延びない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記透明なベッセル容器は、外筒とピストン棒とを有し、
前記ラベルは、前記外筒の外面にわたって配置されるように構成されている、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記透明なベッセル容器の前記容積が前記ラベルに印刷されている、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記一連のカラーコード化ゾーンは半透明である、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記透明なベッセル容器の前記容積に少なくとも部分的に依って前記ラベルの寸法を調節することをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記ラベルが前記透明なベッセル容器に添付される時に前記ラベルの整列を保証するように構成された、少なくとも1つの整列用印を、前記ラベルに当てることをさらに備える、請求項3に記載の方法。