(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103487
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】録画装置及び車両情報処理装置等
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086694
(22)【出願日】2023-05-26
(62)【分割の表示】P 2019056853の分割
【原出願日】2019-03-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.トルクス
(71)【出願人】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(72)【発明者】
【氏名】服部 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上 三千洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇喜
(57)【要約】
【課題】車両の電気系統への電力供給の開始停止を頻繁に繰り返しても、録画されない累積時間の長大化を抑制することができる録画装置等を提供する。
【解決手段】録画装置が車両に搭載されて使用される。録画装置は、車両の電気系統に電力が供給されていない状態または車両が動作を停止している状態である第1状態になったことを検出し、第1状態になったことを検出した後も電源が投入された状態を継続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数のカメラでそれぞれ撮影された動画の複数の動画ファイルを取得する機能と、
動画を切り出すべき開始時点と終了時点とを指定させる機能と、
指定されたから開始時点から終了時点までの動画を、複数の動画ファイルから切り出し、切り出された複数の動画を時間軸で同期させて同時に閲覧可能な態様の1つの動画ファイルを生成して保存する機能と
を備えた車両情報処理装置。
【請求項2】
360度カメラで撮影して得られた円形の画像からなる動画ファイルから、画像内の一部の領域を指定させる機能と、
指定された領域を展開して矩形の画像からなる動画ファイルを生成する機能と
をさらに備えた請求項1に記載の車両情報処理装置。
【請求項3】
車両が稼働する作業場で取得した情報に基づいて、前記作業場のマップを作成する機能と、
前記作業場で稼働する車両に関してヒヤリハット事例に相当する状況が発生したことを
検知する機能と、
前記マップと、前記ヒヤリハット事例が発生した場所とを関連付けたヒヤリハットマップを作成する機能と
をさらに備えた請求項1または2に記載の車両情報処理装置。
【請求項4】
オンにすることによって電気系統に電力を供給し、オフにすることによって電気系統への電力の供給を停止する切替手段を備えた車両から、前記切替手段がオンにされている時間情報を取得する機能と、
前記切替手段がオンにされている時間の累積時間に基づいてアラームを発出する機能と
をさらに備えた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両情報処理装置。
【請求項5】
複数種類の車両から車両情報を取得する機能と、
車両の種類に応じて、表示する車両情報を異ならせて表示装置に表示させる機能と
をさらに備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両情報処理装置。
【請求項6】
車両に搭載された車載機器に装着され、前記車載機器のファームウェアのバージョンが記録されるリムーバブル記録媒体からファームウェアのバージョンを読み出し、より新しいバージョンのファームウェアが存在する場合には、より新しいバージョンのファームウェアを前記リムーバブル記録媒体に格納する機能を、さらに備えた請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両情報処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の車両情報処理装置の機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、録画装置及び車両情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されて走行中の車両の周囲を録画するドラーブレコーダ等の録画装置が知られている。この録画装置は、一般的に、車両の電気系統への電力供給を開始停止するためのスイッチ(以下、メインスイッチという。)がオンになっている期間に車両から電源の供給を受け、録画を行う。メインスイッチがオフにされると、車両から録画装置への電源の供給が停止され、録画も停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォークリフト等の作業車両においては、運転者の乗り降りに応じてメインスイッチのオンオフが頻繁に切り替えられる場合がある。一般の録画装置では、車両のメインスイッチがオンにされて電源供給が開始されたのち、実際に録画が開始されるまでに遅延時間が生じる。このため、メインスイッチがオンにされた後、この遅延時間が経過するまでの期間は、録画が行われない。メインスイッチのオンオフを頻繁に切り替えられると、録画されない期間の累積時間が長くなってしまう。
【0005】
例えば、フォークリフトで荷役作業を行っているとき、荷物を積載場所に積載した後、荷物が積載場所に正常に積載されていることを確認するために、運転者は運転席から降りる必要がある。運転席から降りるときは、安全確保のためにフォークリフトのメインスイッチをオフにすることが推奨されている。従来の録画装置では、フォークリフトのメインスイッチがオフにされて録画装置への電力供給が停止されると、録画も停止する。例えば、電源供給が開始されてから録画が開始されるまでの遅延時間が10秒程度である場合、30秒間程度メインスイッチをオンにした状態を、メインスイッチをオフにした状態を挟んで繰り返すような作業を行うと、メインスイッチをオンにしている約30秒間のうち約20秒間しか録画されないことになる。
【0006】
1台の車両に複数台のカメラが搭載されて、複数台のカメラによって複数の動画データが記録される場合がある。複数の動画データを、再生装置で時間的に同期させて再生することが可能であるが、複数のカメラで取得された動画データがそれぞれ格納された複数の動画ファイルを関連付けて取り扱うことは煩雑である。
【0007】
本発明の目的は、車両の電気系統への電力供給の開始停止を頻繁に繰り返しても、録画されない累積時間の長大化を抑制することができる録画装置等を提供することである。本発明の他の目的は、複数台のカメラで取得された動画データが格納された動画ファイルの取り扱いを容易にすることが可能な車両情報処理装置等を提供することである。
【0008】
本願の発明の目的はこれに限定されず、本明細書および図面等に開示される構成の部分から奏する効果を得ることを目的とする構成についても分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。例えば本明細書において「~できる」と記載した箇所を「~が課題である」と読み替えた課題が本明細書には開示されている。課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、この課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。課題が明細書の記載から黙字的に把握されるものであっても、本出願人は本明細書に記載の構成の一部を補正または分割出願にて特許請求の範囲とする意思を有する。またこれら独立の課題を組み合わせた課題も開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)車両に搭載されて使用され、前記車両の電気系統に電力が供給されていない状態または前記車両が動作を停止している状態である第1状態になったことを検出し、前記第1状態になったことを検出した後も電源が投入された状態を継続する録画装置とするとよい。
【0010】
車両の電気系統への電力供給が開始された時点または車両が動作を開始した時点に、録画装置の電源が投入されると、録画開始までに種々の事前準備処理、例えばキャパシタの充電、データの初期化処理等を行うために、録画開始までの経過時間が長くなる。これに対し本録画装置では、車両が第1状態になった後も電源が投入された状態が継続されるため、電源が投入された状態が維持されている期間に録画要求があると、短い経過時間で録画を開始することができる。
【0011】
録画装置が搭載される車両の一例として、昇降及び傾斜が可能な荷役用のつめ(フォーク)を車体に備えた荷役自動車であるフォークリフト等があげられる。録画装置が搭載されるフォークリフトの例として、電気式フォークリフト(バッテリフォークリフト)、内燃機関式フォークリフト、内燃機関電気併用フォークリフト等が挙げられる。内燃機関式フォークリフトでは、車両の走行、マストの傾斜動作、及びフォークの昇降動作に必要な動力が、内燃機関からの出力により賄われる。内燃機関式フォークリフトに搭載されるバッテリの電力は、内燃機関の始動のためのセルモータ、センサ類、内燃機関用の電子制御ユニット、照明等に利用される。これに対し、電気式フォークリフトでは、車両の走行、マストの傾斜動作、及びフォークの昇降動作に必要な動力が、フォークリフトに搭載されたバッテリからの出力電力により賄われる。このため、電気式フォークリフトに搭載されるバッテリの容量は、内燃機関式フォークリフトに搭載されるバッテリの容量に比べて十分大きい。
【0012】
車両が電気式フォークリフトである場合、車両の電気系統には、電子制御ユニット、走行モータ、各種センサ、灯具等が含まれる。車両の電気系統に電力が供給されていない状態には、例えば操作レバーを操作しても走行もフォークの昇降も行われない状態を含めるとよい。車両の電気系統に電力が供給されている状態には、操作レバーを操作することによって走行及びフォークの昇降を行うことができる状態を含めるとよい。
【0013】
車両が内燃機関式フォークリフトである場合、車両の電気系統には、電子制御ユニット、セルモータ、各種センサ、灯具等が含まれる。車両の電気系統に電力が供給されていない状態には、例えば操作レバーを操作しても走行もフォークの昇降も行われない状態、エンジンの始動も行われない状態を含めるとよい。車両の電気系統に電力が供給されている状態には、スタートキーを操作することによってセルモータを動作させ、エンジンを始動することができる状態を含めるとよい。エンジンが始動した状態では、操作レバーを操作することによって走行及びフォークの昇降を行うことができる。車両の電気系統に電力が供給されている状態は、例えば、通常のエンジン自動車のアクセサリスイッチがオンにされている状態に相当する。
【0014】
車両が動作を停止している状態には、例えば、フォークの昇降及び車両の走行のいずれも行っていない状態を含めるとよい。
【0015】
車両が第1状態になったことを録画装置が検出した後の電源が投入された状態として、車両のバッテリから電力の供給を受け、必要に応じて直ちに録画を開始することができる状態とするとよい。直ちに録画を開始することができる状態として、例えばカメラで取得された動画データをリングバッファに一時的に記憶させる処理が実行され、リングバッファからリムーバブル記録媒体等の不揮性メモリへ書き込む処理が行われていない状態とするとよい。その他に、直ちに録画を開始することができる状態として、例えばカメラから動画データを読み出す処理が実行されているがリングバッファに書き込む処理が行われていない状態とするとよい。
【0016】
車両が第1状態になったことを録画装置が検出した後の電源が投入された状態の期間に、録画を継続するとよい。運転者がフォークリフトから降りて第1状態になっている間に行う積荷の確認作業を録画することができる。この確認作業中に何らかの事故が発生した場合、確認作業中に撮影された動画は、事故原因を特定するための有益な情報になる。録画装置が搭載された車両が電気式フォークリフトであれば、車両に大容量のバッテリが搭載されている。このため、車両が第1状態になっている期間に車両のバッテリから直接電力の供給を受けても、車両に搭載されているバッテリの電力消費に与える影響は小さい。また、電気式フォークリフトが導入されている作業場では、その場で充電を行うことが可能である。従って、第1状態になっている期間に、車両に搭載されているバッテリから電力の供給を受けて録画を継続する処理は、特に電気式フォークリフトにおいて容易に実現することができる。従って、本録画装置は、電気式フォークリフトに搭載し、電気式フォークリフトのバッテリから電力の供給を受けるようにすると特によい。
【0017】
(2)前記車両は、オンにすることによって電気系統に電力を供給し、オフにすることによって電気系統への電力の供給を停止する切替手段を備えており、前記第1状態は、前記車両の切替手段がオフにされている状態である録画装置とするとよい。
【0018】
車両の切替手段がオフにされている第1状態であっても、電源が投入された状態が継続されている期間であれば、電源オフ状態の期間に比べて録画開始の要求があった時点から録画開始までの遅延時間を短くすることができる。この切替手段は、例えば一般的なエンジン自動車のアクセサリスイッチ(ACCスイッチ)に相当する。
【0019】
録画装置は、車両の切替手段がオンにされたことを検出すると録画を開始する機能を持つとよい。電源が投入された状態が継続されている期間に切替手段がオンにされると、短い遅延時間で録画を開始することができる。このため、動画データが欠落している期間を短くすることができる。
【0020】
切替手段がオフにされたことを検出すると、電源が投入された状態を維持し、かつ録画を停止するとよい。これにより、動画データを記録する記憶領域が重要度の低い動画データで消費されてしまうことを回避することができる。
【0021】
(3)前記切替手段のオンオフに依存せず前記車両のバッテリからの電力を外部に供給する端子に接続される録画装置とするとよい。
【0022】
録画装置に大容量のバッテリを搭載することなく、車両のバッテリから電力の供給を受けることができる。切替手段のオンオフに依存せず車両のバッテリから電力を取り出すことができる電源は、一般的に+B電源と呼ばれる。これに対し、切替手段がオンになっているときにのみ電力を取り出すことができる電源は、アクセサリ電源(ACC電源)と呼ばれる。録画装置は、ACC電源からの電力の供給の有無によって、切替手段のオンオフを判定するとよい。
【0023】
(4)さらに、前記車両に発生する加速度を検出する加速度センサを備えており、前記加速度センサの測定結果に基づいて前記車両が動作を停止している状態か否かを判定する録画装置とするとよい。
【0024】
車両に加速度が発生していない状態、すなわち車両に重力及び垂直抗力のみが作用している状態を、車両が停止している状態と判定するとよい。このような状態のときも、録画装置の電源が投入された状態を継続することにより、車両に何らかの衝撃が加わったことを検知した時点から直ちに録画を開始することができる。この動画データは、衝撃発生の原因の探索に有益な情報になる。
【0025】
(5)前記第1状態になったこと検出した後も電源が投入された状態を継続する時間を指定する継続時間情報が記憶されており、前記第1状態になったことを検出した時点から、前記継続時間情報で指定された期間が経過した後に、電源を切断する録画装置とするとよい。
【0026】
継続時間情報で指定された期間が経過するまでに録画開始の要求があると、短い遅延時間で録画を開始することができる。また、継続時間情報で指定された期間の経過後は、電源を切断することにより、電力消費を抑制することができる。
【0027】
継続時間情報は、録画装置に装着するリムーバブル記録媒体に格納しておき、録画装置がリムーバブル記録媒体から継続時間情報を読み込むようにするとよい。
【0028】
車両が第1状態になったことを録画装置が検出した後、録画装置は、継続時間情報で指定された期間が経過するまで、録画を継続するとよい。特に動画データを記録する媒体に十分な記憶容量が確保されている場合には、このように、録画を継続するとよい。これにより、車両が第1状態になった後に発生した事故や異常の原因解析に有益な動画情報を残しておくことができる。
【0029】
継続時間情報は、第1状態になったことを検出した時点からの経過時間で指定するとよい。運転者がメインスイッチをオフにしてから指定された一定の時間が経過するまでは、直ちに録画を開始できる状態、または録画が継続している状態を維持することができる。
【0030】
その他に、継続時間情報を、電源が投入された状態を終了する時刻で指定するとよい。例えば、継続時間情報として、車両が稼働している作業場の勤務時間の終了時刻(例えば夕方7時)を指定するとよい。この場合、勤務時間中は、録画装置が直ちに録画を開始することができる状態、または録画を継続する状態が維持される。録画装置は、現在時刻を表す時計を搭載するとよい。この時計用の電源は、車両の+B電源、または内蔵の電池から供給するようにするとよい。
【0031】
録画装置は、電源が投入された状態を継続する期間の開始時刻を指定する機能を持つとよい。録画装置は、指定された開始時刻になると電源が投入された状態になる機能を持つとよい。この場合、指定された開始時刻になった後に運転者がメインスイッチをオンにすると、短い遅延時間で直ちに録画を開始することができる。この開始時刻には、車両が稼働する作業場の勤務時間の開始時刻(例えば朝8時等)を設定しておくとよい。
【0032】
第1状態になったことを検出した時点から第1継続時間が経過するまでの期間は録画を継続し、第1継続時間よりも長い第2継続時間が経過するまでの期間は録画を行わず、電源が投入された状態を維持し、第2継続時間が経過した時点で電源を切断する機能を、録画装置が持つとよい。これにより、車両が第1状態になった直後の重要度の高い情報が含まれている可能性の高い動画データを残しておくことができる。第2継続時間が経過した時点で録画を停止することにより、動画データの記憶領域を節約することができる。
【0033】
継続時間情報として指定された終了時刻から、翌日の開始時刻までの間は、録画装置は電源をオフにする機能を持つとよい。この場合にも、現在時刻用の時計は動作させておくとよい。
【0034】
(6)前記第1状態になったことを検出した後も電源が投入された状態を継続している期間の消費電力が録画中の消費電力より少ない録画装置とするとよい。
【0035】
電源が投入された状態を継続している期間における電力消費量を抑制することができる。例えば、カメラから動画データを読み出す処理を実行するが、リングバッファへの書き込み処理を行わない機能を持つことにより、消費電力を少なくするとよい。または、カメラから動画データを読み出す処理、及びリングバッファへの書き込み処理を行うが、リムーバブル記録媒体等の不揮発名メモリへの動画データの記録は行わない機能を持つことにより、消費電力を少なくするとよい。
【0036】
(7)さらに、前記車両から運転者が運転席に着座しているか否かを検出する機能を有し、運転者が運転席に着座している期間は録画を行い、運転者が着座していないことの検出を契機として録画を停止し、電源が投入された状態を継続する機能を持つ録画装置とするとよい。
【0037】
運転者が着座していないことの検出を契機として録画を中止するが、電源が投入された状態が継続されるため、録画開始の要求があると、短い遅延時間で録画を開始することができる。運転者が着座しているか否かは、運転席を撮影するカメラで取得された画像を解析することにより判定するとよい。
【0038】
運転者が着座していないことの検出を契機として録画を停止する際に、録画装置は、運転者が着座していないことの検出した時点から一定の期間は録画を継続し、一定の期間が経過した時点で録画を停止する機能を持つとよい。このようにすると、運転者が運転席を離れた後、一定の期間が経過するまでに生じた事故や異常の原因究明のために、録画された画像を利用することができる。
【0039】
録画装置は、運転者が着座していないことを検出してから一定時間が経過するまでは録画を継続し、一定時間経過した時点で録画を停止する機能を持つとよい。または、車両から運転者までの距離が判定閾値を超えたら録画を停止する機能を持つとよい。録画装置は、運転者の着座を検出すると、録画を再開する機能、または録画を継続する機能を持つとよい。
【0040】
録画装置は、車両の周囲を撮影するカメラを含むとよい。このカメラとして、下向きに取り付けた半天球カメラを用いるとよい。車両がフォークリフトである場合、荷役作業において荷物が正常に積載されたか否かを確認する作業を行う範囲をこのカメラの画角に含めるようにするとよい。さらに、車両の後方を撮影するカメラを設けるとよい。これにより、車両の後方に運転者や他の人物がいるか否かを判定することができる。
【0041】
電源が投入された状態を継続するか否かの判定基準に、車両から運転者までの距離を含めるとよい。または車両の近くに人物が検出されたか否かを判定基準に含めるとよい。録画装置は、車両の近傍に運転者や他の人物が検出された場合には、録画を継続する機能を持つとよい。このときに取得された動画データは、車両の近傍にいる人物に何らかの事故が生じた場合に、事故原因の究明の有益な情報になる。車両の近傍か否かを判定する基準として、車両から人物までの距離の判定閾値を録画装置に記憶させておくとよい。
【0042】
(8)前記車両は、複数の参照マークが設置されている作業場で使用され、
前記参照マークが映り込んでいる画像を分析して、前記車両の速度を求める機能をさらに有する録画装置とするとよい。
【0043】
録画装置で取得した情報により車速が求まるため、車速を検知するための専用のセンサ等を搭載することなく、車速を求めることができる。車速を求めるために、ステレオカメラで参照マークを撮影し、得られた画像から参照マークまで距離を測定し、距離の時間変化から車速を求めるとよい。車両に搭載された2台のカメラで撮影された映像に共通の参照マークが写り込んでいるか否かを判定し、共通の参照マークが写り込んでいる場合には、2台のカメラで取得された2つの映像から距離を算出するとよい。例えば、2台のカメラとして、運転席の前に設置した半天球カメラと、運転席の後方を撮影する広角カメラを用いるとよい。
【0044】
大きさが既知の参照マークの像の大きさから、参照マークまでの距離を求めるとよい。この距離の時間変化から車速を求めるとよい。参照マークとして、距離が一定であればどの方向から見ても基準長が変化しない形状、例えば円形や球形のものを用いるとよい。参照マークとして、倉庫の天井に取り付けられた照明器具等を利用するとよい。複数の照明器具を等間隔で設置しておき、照明器具の間隔を基準長として利用するとよい。
【0045】
そのほかに、車両に搭載されたGPS受信機を用いて車両の位置を求め、この位置の時間変化から車速を求めるとよい。車速を求めるために、ドップラーセンサを車両に搭載するとよい。または、タイヤの回転速度を検出するセンサを搭載するとよい。LIDARと呼ばれる光を用いた測距装置を車両に搭載するとよい。LIDARを車両に搭載する場合には、測距用のレーザ光を走査して車両が稼働する作業場のマップを作成するとよい。
【0046】
(9)さらに、前記車両の周囲の床または地面を撮影する機能、及び撮影された床または地面のオプティカルフローを検出し、検出結果に基づいて前記車両の速度を求める機能を備えている録画装置とするとよい。
【0047】
床または地面に対する車両の相対速度を求めることができる。車両の並進移動のみならず、回転移動の回転速度も算出することができる。例えば、カメラから床までの距離が既知であり、床の特徴点のオプティカルフロー(一定時間に移動した画素数)がわかれば、床に対するカメラの相対速度が求まる。一列に参照マークを配置しておき、参照マークをオプティカルフローの特徴点として利用するとよい。
【0048】
特に、フォークリフトの天井側から下方を撮影するカメラ(例えば広角カメラ)を設け、フォークリフトの車体や運転者、及び車体の周囲の床または地面を撮影するとよい。フォークリフトが床や地面に対して相対的に移動すると、フォークリフトの周囲の床や地面のテクスチャー(アスファルトやコンクリートの模様や小石、テープ、周辺に配置された段ボール等)のオプティカルフローから移動方向及び速度を求めることができる。
【0049】
フォークリフトは、並進移動することなく同一箇所に留まって回転移動のみを行うことができる。例えば、フォークリフトが回転する場合、回転軸を中心として円弧状のオプティカルフローが得られる。この回転移動を行うときの回転中心が、カメラの画像の中心に一致するようにカメラを設置するとよい。カメラの画像の中心が回転中心に一致していない場合には、キャリブレーションすることにより、実質的に画像中心を回転中心に一致させる機能を備えるとよい。カメラとして半天球カメラを用いる場合も、同様にカメラを設置するとよい。このようにカメラを設置すると、フォークリフトの回転を容易に検出することができる。
【0050】
カメラ画像の縦横比が1:1ではない場合、例えば長方形の撮影エリアを有する一般的なカメラを用いる場合、フォークリフトの前後方向が撮影エリアの長手方向(長辺方向)に対応し、左右方向が撮影エリアの幅方向(短辺方向)に対応するようにカメラを設置するとよい。
【0051】
例えば、前進しつつ左旋回する場合には、フォークリフトの左側の速度ベクトルよりも右側の速度ベクトルの方が大きくなる。オプティカルフローそのものを矢印等で表示するとともに、車体左側、右側等の車体の部位別に速度を数値で表示する機能を、動画データのビュアーが備えるとよい。
【0052】
床や地面の特徴点、床や地面に置いてある物体等のオプティカルフローは、フォークリフトの移動方向とは逆になる。例えば、オプティカルフローを始点と終点との区別が可能な矢印等で表示し、始点と終点とをオプティカルフローの向きとは逆にするとよい。このように表示すると、表示画面に表示された矢印等を見て、フォークリフトの移動方向を直感的に把握することができる。特に、平面視におけるフォークリフトの車体の外形の辺同士が交わる位置を矢印の始点として表示するとよい。例えば、フォークリフトの車体の外形がほぼ長方形で表示される場合、長方形の4つの頂点を矢印の始点とするとよい。
【0053】
フォークリフトの車体内が写り込んでいる範囲には、人物、ハンドル、操作レバー等も写るため、人物の動きのオプティカルフローを検知する機能を、ビュアーが備えるとよい。ビュアーは、フォークリフト自体のオプティカルフローとは区別して、人物等の移動を認識する機能を備えるとよい。例えば、人物の動きを示す矢印と、フォークリフトの動きを示す矢印とを区別して認識できるようにするとよい。例えば、人物の動きを緑色の矢印で表し、フォークリフトの動きを青色の矢印で表すようにするとよい。人物の動きのオプティカルフローは、例えば、操作の正常性、頭の向きを変えて指差し点呼を行っているか否か等の判定に利用することができる。
【0054】
オプティカルフローを総合して、フォークリフトの平均速度を算出する機能を録画装置が備えるとよい。
【0055】
フォークリフトの周囲に人物や無人搬送車(AGV)等の移動物が存在すると、動画像内に部分的にオプティカルフローが発生することになる。このような部分的に発生しているオプティカルフローは、速度算出のための対象から排除する機能を持つとよい。すなわち、フォークリフトの周囲の一部分にしか発生しないオプティカルフローは、フォークリフトの移動により発生したものではないとして車速を算出する処理を行うとよい。
【0056】
ビュアーで動画を再生する際に、一部分にしか発生しないオプティカルフローを、フォークリフトの移動によるオプティカルフローと区別して表示するとよい。例えば、一部分にしか発生しないオプティカルフローを示す矢印と、フォークリフトの移動によるオプティカルフローを示す矢印とを、異なる色で表示するとよい。このようにすることで、フォークリフトの近くを移動する人物の動き等を容易に認識することができる。例えば、フォークリフトの動きを青色の矢印で表示し、フォークリフトの周辺の画像の一部にしか発生しないオプティカルフローを、フォークリフトの周辺を移動する人物の動きとして赤色の矢印で表示する機能を備えるとよい。
【0057】
動画のビュアーは、パソコンのアプリケーションプログラム(PCアプリ)、スマートフォンのアプリケーションプログラム(スマホアプリ)等で実現するとよい。または、フォークリフトに搭載された録画装置に表示装置を備え、この録画装置にビュアーの機能を持たせるとよい。さらには、オプティカルフローを用いて、フォークリフトの動きの異常、操作や運転者の異常、フォークリフトの周囲に人物が存在しており危険であること等を警報で報知する機能を備えるとよい。フォークリフトの動きの異常は、フォークリフトの動きに対応するオプティカルフローから求めた並進速度や回転速度の大きさが異常であるか否か等により検出するとよい。操作や運転者の異常は、例えば運転者が指差し点呼を行うという運転規則等を守っているか否かの判定を行うことにより検出するとよい。
【0058】
フォークリフトの周辺領域を、通常の稼働中では人物等が入り込まない近傍の領域(第1領域)と、人物等が入り込む可能性があるやや遠い領域(周辺領域のうち第1領域より遠い領域)とに区分し、フォークリフトの移動速度算出のための基礎となるオプティカルフローとして、第1領域内のオプティカルフローを採用するとよい。
【0059】
(10)前記車両は、傾斜角度が可変のマスト、及び前記マストに沿って昇降するフォークを備えたフォークリフトであり、
前記マストに設けた複数のマーカを撮影するように取り付けられたマーカ用カメラを備え、複数の前記マーカが写っている画像を解析して前記マストの傾斜角を求める機能をさらに備えている録画装置とするとよい。
【0060】
荷物の受け渡しをするときにフォークが水平な状態からずれていると、荷物の脱落等の事故につながる。フォークの姿勢は、フォークが昇降可能に取り付けられているマストの傾斜角を変えることによって変化する。本録画装置においては、マストの傾斜角を求めることにより、フォークの姿勢が正常であるか否かを判定することができる。マストに複数のマーカを取り付けて画像内におけるマーカの位置を検出することにより、マストの傾斜角に関する情報を容易に取得することができる。運転者は、水平面に対するマストの傾斜角が直角であること、すなわちフォークが水平であることを確認することにより、安全に荷物の受け渡しを行うことができる。カメラを、マストやフォーク等の可動部分ではなく、車体に取りつけるため、作業中のカメラの損傷等を抑制することができる。
【0061】
フォークにもマーカを取り付けて、フォークに取り付けたマーカのオプティカルフローから、フォークの昇降速度を求める機能を録画装置が持つとよい。マーカ用カメラは、マストを横方向から撮影できる位置に取り付けるとよい。例えば、左側のマストを撮影するマーカ用カメラを車体の右側の支柱等に取り付けるとよい。
【0062】
(11)電子回路基板、前記電子回路基板を収容する筐体、及び前記筐体の開口部を塞ぐ蓋を含むメインユニットと、
カメラと、
前記カメラと前記メインユニットとを電気的に接続する第1ケーブルと
を有する録画装置とするとよい。
【0063】
カメラの取り付け箇所とは異なる箇所にメインユニットを取り付けることができる。逆に、メインユニットの取り付け箇所に制約されることなく、撮影すべき範囲に応じてカメラを望ましい箇所に取り付けることができる。
【0064】
(12)前記筐体にメディア用開口部が設けられており、
前記メインユニットは、
前記メディア用開口部を通してリムーバブル記録媒体を装着するメディア装着部と、
前記メディア用開口部を塞ぐ防水構造の防水蓋と、
前記防水蓋の外側において前記メディア用開口部を塞ぎ、対応する特定の器具を用いて開閉することができる構造を持つセキュリティ対策蓋と
を有する録画装置とするとよい。
【0065】
メディア用開口部の防水性を確保するとともに、リムーバブル記録媒体が盗難の被害を受け難くなるという優れた効果が得られる。リムーバブル記録媒体として、例えばSDカードを用いるとよい。「特定の器具」とは、一般的なプラスドライバーやマイナスドライバー以外の器具を意味する。例えば、セキュリティ対策蓋をトルクスネジで固定し、特定の器具として、トルクスドライバーを用いるようにするとよい。
【0066】
防水蓋として、例えばゴム等の弾性材料で形成されたパッキンを用いるとよい。例えば、メディア用開口部の内周面に周方向の溝を形成しておき、防水蓋の外周部をこの溝に嵌め込むことにより防水蓋を装着するようにするとよい。
【0067】
セキュリティ対策蓋に長孔を設けておき、長孔にトルクスネジ等の特殊ネジを通し、セキュリティ対策蓋を長孔の長手方向にスライドさせてメディア用開口部を塞いだ状態で締め付けることにより、セキュリティ対策蓋を筐体に固定するようにするとよい。特殊ネジを緩めてセキュリティ対策蓋をスライドさせることにより、セキュリティ対策蓋が特殊ネジの箇所を中心にして自由に回転できるようになる構成とするとよい。セキュリティ対策蓋を回転させてメディア用開口部を開放した状態で、リムーバブル記録媒体の挿入及び取り外しが可能になる。特殊ネジを緩めるだけでメディア用開口部を開放することができるため、セキュリティ対策蓋の脱落を回避することができる。
【0068】
セキュリティ対策蓋を取り付けるか否かは、ユーザが決定できるオプションとするとよい。セキュリティを考慮する必要がない環境で録画装置を使用する場合には、ユーザはセキュリティ対策蓋を使用しないという選択を行うことができる。
【0069】
セキュリティ対策蓋として、平板をL字形に折り曲げた形状にするとよい。折り曲げ箇所の一方の側の平板部分でメディア用開口部を塞ぎ、他方の平板部分を、メディア用開口部が設けられた筐体の面に対して直交する面にねじ止めして固定するとよい。メインユニットをフォークリフトに取り付ける箇所によっては、メディア用開口部が設けられた面へのアクセスが困難な場合がある。このような場合、メディア用開口部が設けられた面に対して直交する面にアクセスしてセキュリティ対策蓋を容易に固定することができる。
【0070】
防水蓋をメディア用開口部に装着した状態で、メディア用開口部の開口面から外側に突出する凸状の把手を防水蓋に設けるとよい。セキュリティ対策蓋に開口を設け、この把手をセキュリティ対策蓋の開口を通って外側まで突出させるとよい。防水蓋の弾性によって、防水蓋とセキュリティ対策蓋とが容易に分離しない構成とするとよい。セキュリティ対策蓋を固定しているネジを取り外した状態でも、セキュリティ対策蓋が防水蓋を介して筐体に支持されるため、セキュリティ対策蓋の脱落を抑制することができる。
【0071】
リムーバブル記録媒体の筐体への挿入の深さは、親指の腹で押し込むことができる程度にするとよい。例えば、リムーバブル記録媒体をメディア用開口部に挿入した状態で、リムーバブル記録媒体がメディア用開口部の開口面から0.4mm程度飛び出しているようにし、親指の腹でリムーバブル記録媒体を押し込むことによって装着が完了するようにするとよい。
【0072】
(13)前記電子回路基板によって駆動される被駆動部品が前記蓋に取り付けられており、第2ケーブルが、前記電子回路基板と前記被駆動部品とを電気的に接続しており、紐が前記筐体と前記蓋とを接続しており、前記紐がピンと張るまで前記蓋を前記筐体から遠ざけた状態で、前記第2ケーブルが弛んだ状態を維持する録画装置とするとよい。
【0073】
蓋を取り外して筐体から遠ざけても、第2ケーブルに大きな張力がかからないようになるため、第2ケーブルの断線等の損傷を抑制することができる。被駆動部品は、例えばスピーカ等である。筐体にスピーカを取り付ける余裕がない場合に、蓋にスピーカを取り付けるとよい。また、一般的に蓋の取り外しが容易なように、蓋が広い空間に面する姿勢で筐体が車体に取り付けられる。蓋にスピーカを取り付けると、スピーカが広い空間に面することになり、音の良好な放射特性が確保される。
【0074】
蓋にケーブル用のクランプを設けておき、相対的に太いケーブルの一端をこのクランプで固定し、他端を筐体側に接続し、スピーカと太いケーブルとを、相対的に細いケーブルで接続するとよい。太いケーブルが十分な機械的強度を持つ場合には、紐を省略してもよい。この場合、太いケーブルは、スピーカと筐体側の回路との電気的接続を行うとともに、蓋の落下を防止するという機能を持つ。
【0075】
(14) 前記メインユニットは、前記電子回路基板を収容する空間と、前記電子回路基板に設けられたクロックの電源となる電池を収容する空間とを仕切る仕切り部材を含んでおり、前記電子回路基板に前記電池に接続される電池用コネクタが搭載されており、前記蓋を開いた状態で、前記電子回路基板は前記仕切り部材の奥側に配置され、前記電池を収容する空間は前記仕切部材の手前側に配置されている録画装置とするとよい。
【0076】
電子回路基板にアクセスしにくい状態を保って、電池を容易に交換することができる。通常、電子回路基板は、ユーザが簡単にアクセスできない状態に維持されている。このため、電子回路基板に直接電池を固定する構造だと、ユーザが電池を交換することができない。電池が消耗して交換する必要がある場合には、装置のメンテナンス要員に連絡するか、またはメインユニットを装置のメンテナンス部門に持ち込む必要がある。本録画装置においては、ユーザが電子回路基板にアクセスしにくい状態を保ったまま、ユーザが自ら電池を交換することができる。このため、ユーザにとって利便性が向上する。
【0077】
例えば、筐体の開口部を塞いでいる蓋をユーザが開けたとしても、仕切部材によってユーザは電子回路基板の電池用コネクタ以外の箇所を見ることができない状態にするとよい。
【0078】
仕切部材に電池を収容するための凹部を設け、凹部の中に電池を収容するようにするとよい。電子回路基板を複数枚積み重ねた構造を採用し、相対的に下側の基板に相対的に背の高い部品を実装し、最も上の基板には、相対的に背の低い部品のみを実装するとよい。このような構成にすると、電池用の凹部の底と、電池用コネクタが実装されている最も上の基板の表面との高さの差を小さくする配置を採用することができる。この配置を採用することにより、電池用コネクタが深い位置に設けられている配置と比べて、ユーザは電池用コネクタにアクセスしやすくなるという効果が得られる。
【0079】
また、電子回路基板にヒューズを搭載し、ヒューズ搭載部分にユーザがアクセスできる構造を採用するとよい。例えば、ヒューズ搭載部分のインナーケースに穴をあけ、ラジオペンチ等の先端の細い工具を使用してヒューズを交換できるようにするとよい。
【0080】
(15)前記筐体に、ケーブル用開口部と、防水構造の予備穴とが設けられており、
前記筐体の中に、ケーブルと接続するための複数のコネクタが設けられており、
前記ケーブル用開口部とチューブの内部の空間を通って前記筐体の内外の空間が繋がるように、前記筐体に前記チューブが取り付けられており、前記チューブの取り付け箇所は防水構造とされており、一部の前記コネクタに接続されたケーブルが、前記ケーブル用開口部及び前記チューブの内部の空間を通って前記筐体の中から外部に引き出されている録画装置とするとよい。
【0081】
ケーブル用開口部とチューブの内部の空間を通って筐体内にケーブルを挿入し、コネクタに接続することができる。録画装置の種々のオプション機能を使用するか否かによって接続すべきケーブルの本数が異なる。接続すべきケーブルの本数が増えると、予備穴を通してケーブルを引き出すことができる。筐体の2か所からケーブルを引き出す構成とすると、筐体内でのケーブルの引き回しが容易になるという効果が得られる。予備穴が防水構造とされているため、予備穴を通してケーブルを引き出していない場合にも、筐体の防水性を維持することができる。
【0082】
予備穴として、防水構造のノック穴を採用するとよい。その他に、予備穴として、開口部、及び開口部を塞ぐ防水構造のパッキンを採用するとよい。筐体の材料として、ノック穴を開口することが困難な高強度のものを用いている場合に、予備穴を、開口部とパッキンとからなる構造とすることが有効である。
【0083】
チューブは、シリコーン等の弾性材料で形成することが好ましい。チューブの中にケーブルを通した状態でチューブを締め付け紐、タイラップ等で絞め付けることにより筐体内への水の浸入を抑制することができる。チューブの断面積が大きくなると水の浸入を抑制しにくくなる。筐体からのケーブルの引き出し箇所を2か所にし、チューブを2本配置すると、チューブの各々の断面を小さくすることができる。このため、ケーブルの本数が多くなっても、水の浸入を抑制しにくくなることはない。
【0084】
ケーブルの本数が少ない場合には、予備穴を開放することなく塞がれた状態にしておくとよい。これにより、十分な防水機能を維持することができる。
【0085】
無線LANモジュールをメインユニットとは別体とし、メインユニットと無線LANモジュールとをケーブルで接続するとよい。無線LANモジュールをメインユニットに収めると、メインユニットと無線LANアンテナとをアンテナ用ケーブルで接続しなければならない。アンテナ用ケーブルを細くすると減衰が大きくなり、減衰を抑制するためには高価格のアンテナ用ケーブルを使用しなければならない。メインユニットとLANモジュールとは、アンテナ用ケーブルより安価なUSBケーブル等で接続することができるため、コスト低減を図ることができる。
【0086】
筐体内の複数のコネクタの近傍に、それぞれ接続すべきケーブルの名称を記載しておくとよい。例えば、名称を記載したシールをコネクタの近傍に貼り付けておくとよい。これにより、ユーザは、ケーブルを接続すべきコネクタを容易に判別することができる。
【0087】
(16)前記カメラに、前記第1ケーブルをクランプするクランプ機構、及び前記第1ケーブルをタイラップで固定するための穴の両方が設けられている録画装置とするとよい。
【0088】
カメラとメインユニットとを接続する第1ケーブルの太さは、搭載するフォークリフトの機種によって異なっている。第1ケーブルとして細いケーブルを用いる場合には、クランプ機構で第1ケーブルをクランプするとよい。第1ケーブルが、クランプ機構でクランプできないような太い場合には、タイラップ用の穴に第1ケーブルをタイラップで固定するとよい。
【0089】
クランプ機構は、筐体とともに一体成形した樹脂で形成し、樹脂を弾性変形させることにより第1ケーブルをクランプする構成とするとよい。タイラップを用いて第1ケーブルを固定する場合には、樹脂製のクランプ機構を筐体から切り取って除去するとよい。
【0090】
(17)車両に搭載された複数のカメラでそれぞれ撮影された動画の複数の動画ファイルを取得する機能と、
動画を切り出すべき開始時点と終了時点とを指定させる機能と、
指定された開始時点から終了時点までの動画を、複数の動画ファイルから切り出し、切り出された複数の動画を時間軸で同期させて同時に閲覧可能な態様の1つの動画ファイルを生成して保存する機能と
を備えた車両情報処理装置とするとよい。
【0091】
複数の動画ファイルを時間的に同期させて再生するという煩雑な手順を実行することなく、1つの動画ファイルを再生するのみで、実質的に複数の動画ファイルを再生する場合とほぼ同様の内容を閲覧することができる。複数の動画ファイルのうち、1つの動画ファイルを再生しながら、動画を切り出すべき開始時点と終了時点とを指定する機能を車両情報処理装置が持つとよい。これにより、生成すべき1つの動画ファイルの開始時点と終了時点とを容易に設定することができる。例えば、複数の動画ファイルをまとめた1つの動画ファイルは、教育現場に持ち込んで教育用として利用するのに便利である。
【0092】
複数の動画ファイル、及びまとめられた1つの動画ファイルは、例えばaviファイルとするとよい。また、これらの動画ファイルは、動画ベースの圧縮ファイルとするとよい。まとめられた1つの動画ファイルの映像は、1画面内に複数の動画ファイルの映像が配置されたものとするとよい。例えば、ピクチャーインピクチャー形式、横並び形式、マトリクス状に並んだ形式等の映像とするとよい。
【0093】
録画時には複数の動画ファイルとして作成されるため、1つの動画ファイルにまとめるときに自由にまとめ方を決めることができる。例えば、特に重要な映像を画面内に大きく表示させ、重要度の低い映像は小さく表示させることができる。どの動画ファイルの映像が重要であるかは、1つの動画ファイルを作成する時点で決めればよい。
【0094】
(18)360度カメラで撮影して得られた円形の画像からなる動画ファイルから、画像内の一部の領域を指定させる機能と、
指定された領域を展開して、矩形の画像からなる動画ファイルを生成する機能と
をさらに備えた車両情報処理装置とするとよい。
【0095】
矩形の画像からなる動画ファイルは、一般的な動画再生プログラムを用いて再生することが可能である。360度カメラで取得された動画を再生可能なプログラムで動画を再生しながら、通常の矩形の画像に展開すべき領域を指定させる機能を持つとよい。例えば、360度カメラで取得された動画ファイルの再生中に、現時点で画面に表示されている領域を、矩形の画像に展開すべき領域として指定する機能を持つとよい。矩形の画像からなる動画ファイルを、aviファイルとして保存する機能を持つとよい。
【0096】
車両に複数のカメラが搭載され、そのうちの1つが360度カメラである場合、360度カメラで取得された動画ファイルの画像の一部を展開して生成された矩形の画像からなる動画ファイルと、他のカメラで取得された動画ファイルとに基づいて、上記(17)の機能を用いて1つの動画ファイルを生成する機能を持つとよい。
【0097】
(19)車両が稼働する作業場で取得した情報に基づいて、前記作業場のマップを作成する機能と、
前記作業場で稼働する車両に関してヒヤリハット事例に相当する状況が発生したことを検知する機能と、
前記マップと、前記ヒヤリハット事例が発生した場所とを関連付けたヒヤリハットマップを作成する機能と
をさらに備えた車両情報処理装置とするとよい。
【0098】
ヒヤリハットマップは、作業場における事故削減のための有益な情報になる。マップの作成には、例えばLIDAR等を用いるとよい。ヒヤリハット事例に相当する状況の発生は、車両に搭載した加速度センサ、ジャイロセンサ等の測定結果により検出するとよい。その他に、車両に搭載されたカメラで取得された動画情報を画像解析することにより、ヒヤリハット事例に相当する状況の発生を検出するとよい。
【0099】
ヒヤリハット事例が発生した地点の位置情報は、例えば車両に搭載したGPS受信機から取得するとよい。ヒヤリハットマップ上の位置は、緯度経度情報と関連付けておくとよい。
【0100】
(20)オンにすることによって電気系統に電力を供給し、オフにすることによって電気系統への電力の供給を停止する切替手段を備えた車両から、前記切替手段がオンにされている時間情報を取得する機能と、
前記切替手段がオンにされている時間の累積時間に基づいてアラームを発出する機能とをさらに備えた車両情報処理装置とするとよい。
【0101】
車両が電気式フォークリフトである場合、切替手段がオンにされている時間の累積値から、車載バッテリの余寿命を予測することができる。ユーザは、発出されるアラームから車載バッテリの交換時期を予測することができる。また、ユーザにとっては、複数の管理対象の電気式フォークリフトを、1台の車両情報集装置でまとめて管理することができるという優れた効果も得られる。
【0102】
切替手段がオンにされている時間情報は、車載機器からリムーバブル記録媒体(例えばSDカード)を介して取得するとよい。車載機器は、切替手段がオンにされた時刻とオフにされた時刻、及び車両識別情報(車両ID)とをリムーバブル記録媒体に記録する機能を持つとよい。その他に、車載機器と車両情報処理装置とに、無線LANを介したデータ通信機能を持たせ、切替手段がオンにされている時間情報を、無線LAN経由で車載機器から車両情報処理装置が取得するようにするとよい。
【0103】
アラームは、例えば累積時間が、車載バッテリの稼働寿命時間の所定の割合(50%、80%、90%等)の時間を超えた時点で発出するとよい。または、一定時間、例えば1000時間が経過するごとにアラームを発出するとよい。
【0104】
(21)複数種類の車両から車両情報を取得する機能と、
車両の種類に応じて、表示する車両情報を異ならせて表示装置に表示させる機能と
をさらに備えた車両情報処理装置とするとよい。
【0105】
自動車、フォークリフト等の種類の異なる車両から共通の車両情報処理装置に情報を収集し、車両の種類により適した情報を表示させることができる。例えば、自動車については、GPS情報(日時情報、位置情報、速度情報等)、加速度センサで取得された加速度情報、ウィンカ操作情報、スピードパルス情報等を表示するとよい。フォークリフトについては、GPS情報、加速度センサで取得された加速度情報、ジャイロセンサで取得された角速度情報等を表示するとよい。
【0106】
車両の種類は、車載機器がリムーバブル記録媒体に記録し、車両情報処理装置がリムーバブル記録媒体から読み出すようにするとよい。
【0107】
(22)車両に搭載された車載機器に装着され、前記車載機器のファームウェアのバージョンが記録されるリムーバブル記録媒体からファームウェアのバージョンを読み出し、より新しいバージョンのファームウェアが存在する場合には、より新しいバージョンのファームウェアを前記リムーバブル記録媒体に格納する機能を、さらに備えた車両情報処理装置とするとよい。
【0108】
ユーザは、車載機器のファームウェアの新しいバージョンがリリースされているか否かを判断することなく、新しいバージョンのファームウェアを入手することができる。車載機器は、装着されたリムーバブル記録媒体に格納されているファームウェアのバージョンを読み出し、現在のファームウェアのバージョンより新しいバージョンのファームウェアがリムーバブル記録媒体に格納されている場合に、ファームウェアをリムーバブル記録媒体から読み出してファームウェアを更新する機能を持つとよい。車載機器がこの機能を持つと、ユーザにとって、ファームウェアを更新する手間を省き、常に新しいバージョンのファームウェアで車載機器を運用することができるという効果が得られる。車載機器は、リムーバブル記録媒体からファームウェアを読み出したら、リムーバブル記録媒体からファームウェアを消去する機能を持つとよい。
【0109】
車載機器は、異なる機種に対応するファームウェアが書き込まれたリムーバブル記録媒体が装着された場合には、ファームウェアの更新を行わない機能を持つとよい。また、異なる車両の車載機器に装着されていたリムーバブル記録媒体が新たに装着された場合でも、車載機器の機種が同一であればファームウェアの更新を行う機能を持つとよい。
【0110】
上記(17)から(22)までに記載した車両情報処理装置の機能をコンピュータに実行させるプログラムを提供するとよい。
【0111】
上述した(1)から(22)に示した発明は、各々単独の構成として権利取得する意思を有する。特に(11)の発明は(1)等、他の構成を備えない構成とするとよい。また(1)から(22)に示した発明は任意に組み合わせることができる。例えば、(1)に示した発明の全てまたは一部の構成に、(2)~(16)の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、(1)に示した発明に、(2)~(16)の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、例えば(11)に記載の構成に他の項に記載の構成を備える構成とするとよい。また、例えば、(17)に示した発明の全てまたは一部の構成に、(18)~(22)の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、(17)に示した発明に、(18)~(22)の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、(1)から(22)に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する
【発明の効果】
【0112】
車両が第1状態になった後も電源が投入された状態が継続されるため、車両の電気系統への電力供給が開始された時点または車両が動作を開始した時点に、録画装置の電源が投入されると、録画開始までに種々の事前準備処理、例えばキャパシタの充電、データの初期化処理等を行うために、録画開始までの経過時間が長くなる。これに対し本録画装置では、電源が投入された状態が維持されている期間に録画要求があると、短い経過時間で録画を開始することができる。
【0113】
本願の発明の効果はこれに限定されず、本明細書および図面等に開示される構成の部分から奏する効果についても開示されており、当該効果を奏する構成についても分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。例えば本明細書において「~できる」と記載した箇所などは奏する効果を明示する記載であり、また「~できる」と記載がなくとも効果を示す部分が存在する。またこのような記載がなくとも当該構成よって把握される効果が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】
図1Aは、第1実施例による記録装置が搭載された車両の一例である電気式 フォークリフトの概略側面図であり、
図1Bは、第1実施例による録画装置のブロッ ク図である。
【
図2】
図2A~
図2Cは、それぞれ第1実施例による録画装置のカメラに相対的に 太いケーブルが接続されている場合の上面図、正面図、及び底面図である。
【
図3】
図3A~
図3Dは、それぞれ第1実施例による録画装置のカメラに相対的に 太いケーブルが接続されている場合の左側面図、正面図、右側面図、及び背面図であ る。
【
図4】
図4A~
図4Cは、それぞれ第1実施例による録画装置のカメラに相対的に 細いケーブルが接続されている場合の上面図、正面図、及び底面図である。
【
図5】
図5A~
図5Dは、それぞれ第1実施例による録画装置のカメラに相対的に 細いケーブルが接続されている場合の左側面図、正面図、右側面図、及び背面図であ る。
【
図6】
図6A~
図6Fは、それぞれ第1実施例による録画装置のGPS受信機の上 面図、左側面図、正面図、右側面図、底面図、及び背面図である。
【
図7】
図7A~
図7Eは、それぞれ第1実施例による録画装置のメインユニットの 上面図、左側面図、正面図、右側面図、底面図、及び背面図である。
【
図8】
図8は、蓋(
図7C)を取り外した状態のメインユニットの正面図である。
【
図9】
図9Aは、蓋(
図7C)を取り外した状態のメインユニットの斜視図であり 、
図9Bは、メインユニットのコネクタにケーブルを接続し、蓋(
図7C)を取り外 した状態のメインユニットの斜視図である。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、メインユニットのメディア用開口部が閉じられ た状態及び開けられた状態の斜視図である。
【
図11】
図11A及び
図11Bは、変形例によるメインユニットのメディア用開口 部が閉じられた状態の斜視図である。
【
図12】
図12は、メインユニットの蓋を筐体から外した状態の斜視図である。
【
図14】
図14Aは、作業場に設置されている参照マークの正面図であり、
図14 Bは、作業場の平面図である。
【
図15】
図15は、カメラで撮影された画像の一例を示す概略図である。
【
図16】
図16Aは、フォークリフトの概略側面図であり、
図16Bは、マーカと マーカ用カメラとの相対位置関係を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施例による車両情報処理装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
[第1実施例]
図1A~
図12を参照して、第1実施例による記録装置について説明する。
図1Aは、第1実施例による記録装置が搭載された車両の一例である電気式フォークリフトの概略側面図である。フォークリフト20の車体の前部にマスト21が取り付けられており、フォーク22が運転者の操作によってマスト21に沿って昇降する。また、マスト21は、運転者の操作によって前後に傾斜する。
【0116】
フォークリフト20に、ステアリングホイール25、メインスイッチ26、操作レバー27、ペダル28が設けられている。フォークリフトに搭載された録画装置は、メインユニット41、カメラ42、GPS受信機43、加速度センサ44、ジャイロセンサ45、無線LANモジュール46を含む。メインユニット41及びカメラ42は、例えばフォークリフト20のヘッドガード23に取り付けられる。GPS受信機43、加速度センサ44、ジャイロセンサ45、及び無線LANモジュール46は、例えばヘッドガード23の支柱24に取り付けられる。
【0117】
図1Bは、第1実施例による録画装置40のブロック図である。メインユニット41は、処理部61、記憶部62、SDカードリーダ63、及びスピーカ64を含む。記憶部62に、処理部61が種々の機能を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。処理部61はマイクロコンピュータを含み、記憶部62に格納されたプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。
【0118】
フォークリフト20のメインスイッチ26がオンにされると、フォークリフト20の電気系統、例えば電子制御ユニット、走行モータ、各種センサ、灯具等に電力が供給される。車両の電気系統に電力が供給されている状態では、運転者が操作レバー27やペダル28を操作することによって走行及びフォーク22の昇降を行うことができる。さらに、スイッチ連動電源端子30から録画装置40に直流電力が供給される。
【0119】
逆に、メインスイッチ26がオフにされているときには、フォークリフト20の電気系統に電力が供給されておらず、例えば操作レバー27やペダル28を操作しても走行もフォーク22の昇降も行われない。スイッチ連動電源端子30から録画装置40に直流電力は供給されない。なお、+B端子29からは、メインスイッチ26のオンオフにかかわらず、フォークリフト20のバッテリから録画装置40に常時直流電力が供給される。
【0120】
処理部61は、カメラ42で撮影された映像をSDカードリーダ63に装着されているSDカードに常時記録する機能を持つ。さらに、加速度センサ44及びジャイロセンサ45の測定結果に基づいて、何らかの衝撃がフォークリフト20に加わった(イベントが発生した)と判定した場合は、衝撃が加わった時点を含む所定の期間の映像を常時記録とは別に記録する機能を持つ。
【0121】
処理部61は、さらに内部にリアルタイムクロックを有しており、GPS受信機43から取得した現在時刻情報に基づいて、リアルタイムクロックの時刻補正を行う。また、GPS受信機43から取得した現在位置情報を、映像と共にSDカードに記録する機能を持つ。無線LANモジュール46は、無線LANを介して管理センタのサーバとデータ通信を行う。
【0122】
処理部61は、メインスイッチ26がオフにされてスイッチ連動電源端子30からの電力供給が停止したことを検出する。スイッチ連動電源端子30からの電力供給が停止したことが検出された後も、録画装置40は、+B端子29から電力の供給を受け、所定の時間が経過するまで電源が投入された状態を継続する。この所定の時間は、SDカードに格納される継続時間情報によって指定される。
【0123】
メインスイッチ26がオフにされた後の電源が投入された状態では、処理部61はカメラ42から画像データを読み込み、読み込んだ画像データを処理部61内のリングバッファに書き込むが、SDカードには記録しない(録画しない)。このため、メインスイッチ26がオフにされた後も録画装置40の電源が投入された状態を継続している期間における録画装置40の消費電力は、録画中の消費電力より少ない。
【0124】
録画装置40は、スイッチ連動電源端子30からの電力の供給が開始されることによってフォークリフト20のメインスイッチ26がオンにされたことを検出すると、SDカードへの画像データの記録を開始する。
【0125】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
メインスイッチ26がオフにされた時点に録画装置40の電源もオフにされ、メインスイッチ26がオンにされた時点で録画装置40の電源が投入されると、メインスイッチ26のオンを契機として録画を開始する際に、種々の事前準備処理、例えばキャパシタの充電、データの初期化処理等を行うために、録画開始までの経過時間が長くなる。これに対し、第1実施例では、フォークリフト20のメインスイッチ26がオフにされた後も録画装置40の電源が投入された状態が継続され、画像データがリングバッファに書き込まれているため、この期間に録画要求があると、例えばメインスイッチ26がオンにされると、短い経過時間で直ちにSDカードへの記録を開始することができる。このため、動画データが欠落している期間を短くすることができる。
【0126】
第1実施例では、録画装置40が搭載された車両が電気式フォークリフトであるため、フォークリフト20に大容量のバッテリが搭載されている。このため、メインスイッチ26がオフにされている期間に+B端子29を介してフォークリフト20のバッテリから直接電力の供給を受けても、フォークリフト20に搭載されているバッテリの電力消費に与える影響は小さい。また、電気式フォークリフトが導入されている作業場では、その場で充電を行うことが可能である。従って、メインスイッチ26がオフにされている期間に、フォークリフト20に搭載されているバッテリから電力の供給を受けて録画を継続する処理は、特に電気式フォークリフトにおいて容易に実現することができる。
【0127】
第1実施例では、無線LANモジュール46とメインユニット41とが、USBケーブルで接続される。無線LANモジュールをメインユニットに収めると、メインユニットと無線LANアンテナとをアンテナ用ケーブルで接続しなければならない。アンテナ用ケーブルを細くすると減衰が大きくなり、減衰を抑制するためには高価格のアンテナ用ケーブルを使用しなければならない。これに対し、第1実施例では、無線LANモジュール46がメインユニット41とは別体とされ、両者がアンテナ用ケーブルより安価なUSBケーブルで接続されるため、コスト低減を図ることができる。
【0128】
次に、上述の機能について、第1実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、フォークリフト20のメインスイッチ26がオフにされた後に、録画装置40の電源が投入された状態の期間に、SDカードへの記録を停止させるが、本変形例では、SDカードへの記録を継続する。これにより、例えば運転者がメインスイッチ26をオフにしてフォークリフト20から降りて行う積荷の確認作業を録画することができる。この確認作業中に何らかの事故が発生した場合、確認作業中に撮影された動画は、事故原因を特定するための有益な情報になる。
【0129】
これに対し、第1実施例ではメインスイッチ26がオフにされたことを検出すると録画を停止するため、SDカードの記憶領域がメインスイッチオフ時の重要度の低い動画データで消費されてしまうことを回避することができる。録画を停止させるか否かは、メインスイッチ26をオフにした後の映像の必要性、及びSDカードの記録容量により決定するとよい。
【0130】
第1実施例による録画装置40は、メインスイッチ26がオフにされている期間も、電源が投入されている状態を継続する機能を持っている。その他に、処理部61が、フォークリフト20が動作を停止していることを検出する機能を持ち、フォークリフト20が動作を停止している期間にも、録画装置40が、電源が投入されている状態を継続する機能を持つとよい。フォークリフト20が動作を停止している状態には、例えば、フォーク22の昇降及び車両の走行のいずれも行っていない状態を含めるとよい。処理部61は、加速度センサ44の測定結果に基づいてフォークリフト20が動作を停止している状態か否かを判定する機能を持つとよい。
【0131】
フォークリフト20に加速度が発生していない状態、すなわち車両に重力及び垂直抗力のみが作用している状態を、フォークリフト20が停止している状態と判定するとよい。このような状態のときも、録画装置40の電源が投入された状態を継続することにより、フォークリフト20に何らかの衝撃が加わったことを検知した時点から直ちに録画を開始することができる。この動画データは、衝撃発生の原因の探索に有益な情報になる。
【0132】
第1実施例では、録画装置40を電気式フォークリフト(バッテリフォークリフト)に搭載しているが、内燃機関式フォークリフト、内燃機関電気併用フォークリフト等に搭載してもよい。内燃機関式フォークリフトでは、車両の走行、マストの傾斜動作、及びフォークの昇降動作に必要な動力が、内燃機関からの出力により賄われる。
【0133】
フォークリフト20が内燃機関式フォークリフトである場合、フォークリフト20の電気系統には、電子制御ユニット、セルモータ、各種センサ、灯具等が含まれる。フォークリフト20のメインスイッチ26がオフにされている状態では、例えば操作レバーを操作しても走行もフォークの昇降も行われず、エンジンの始動も行われない。メインスイッチ26がオンにされている状態では、スタートキーを操作することによってセルモータを動作させ、エンジンを始動することができる。エンジンが始動した状態では、操作レバーを操作することによって走行及びフォークの昇降を行うことができる。メインスイッチ26がオンにされている状態は、例えば、通常のエンジン自動車のアクセサリスイッチがオンにされている状態に相当する。
【0134】
内燃機関式フォークリフトに搭載されるバッテリの電力は、内燃機関の始動のためのセルモータ、センサ類、内燃機関用の電子制御ユニット、照明等に利用される。録画装置40を内燃機関式フォークリフトに搭載する場合には、内燃機関が停止している期間に、フォークリフト20のバッテリから録画装置40に電力を供給する状態を継続には、フォークリフト20のバッテリの容量が十分ではない。このため、録画装置40に電力を供給するための補助バッテリを搭載するとよい。
【0135】
これに対し、電気式フォークリフトでは、車両の走行、マスト21の傾斜動作、及びフォーク22の昇降動作に必要な動力が、フォークリフトに搭載されたバッテリからの出力電力により賄われる。このため、電気式フォークリフトに搭載されるバッテリの容量は、内燃機関式フォークリフトに搭載されるバッテリの容量に比べて十分大きい。このため、第1実施例による録画装置を電気式フォークリフトに搭載する場合には、フォークリフト20のバッテリ以外の補助バッテリを搭載する必要はない。
【0136】
第1実施例では、フォークリフト20のメインスイッチ26がオフにされた後であって、録画装置40の電源が投入された状態のときに、カメラ42で取得された動画データを処理部61のリングバッファに一時的に記憶させる処理を実行し、リングバッファからSDカードへ書き込む処理を行わないこととしているが、例えばカメラ42から動画データを読み出す処理を実行するが、リングバッファに書き込む処理を実行しないようにしてもよい。これにより、消費電力をより低減させることができる。
【0137】
メインスイッチ26がオフにされた時点から第1継続時間が経過するまでの期間は録画を継続し、第1継続時間よりも長い第2継続時間が経過するまでの期間は録画を行わず、電源が投入された状態を維持し、第2継続時間が経過した時点で電源を切断する機能を、録画装置40が持つとよい。これにより、メインスイッチ26がオフにされた直後の重要度の高い情報が含まれている可能性の高い動画データを残しておくことができる。第2継続時間が経過した時点で録画を停止することにより、動画データの記憶領域を節約することができる。
【0138】
第1実施例では、継続時間情報をメインスイッチ26がオフにされた時点からの経過時間で指定するが、その他に、継続時間情報を、電源が投入された状態を終了する時刻で指定するとよい。例えば、継続時間情報として、フォークリフト20が稼働している作業場の勤務時間の終了時刻(例えば夕方7時)を指定するとよい。この場合、勤務時間中は、録画装置40が直ちに録画を開始することができる状態、または録画を継続する状態が維持される。録画装置40は、現在時刻情報をリアルタイムクロックから取得するとよい。このリアルタイムクロック用の電源は、車両の+B電源、または内蔵の電池から供給するようにするとよい。
【0139】
録画装置40は、電源が投入された状態を継続する期間の開始時刻を指定する機能を持つとよい。録画装置40は、指定された開始時刻になると電源が投入された状態になる機能を持つとよい。この場合、指定された開始時刻になった後に運転者がメインスイッチ26をオンにすると、短い遅延時間で直ちに録画を開始することができる。この開始時刻には、車両が稼働する作業場の勤務時間の開始時刻(例えば朝8時等)を設定しておくとよい。
【0140】
継続時間情報として指定された終了時刻から、翌日の開始時刻までの間は、録画装置40は電源をオフにする機能を持つとよい。この場合にも、現在時刻用のリアルタイムクロックは動作させておくとよい。
【0141】
他の変形例では、処理部61は、フォークリフト20から運転者が運転席に着座しているか否かを検出する機能を有し、運転者が運転席に着座している期間は録画を行い、運転者が着座していないことの検出を契機として録画を停止し、録画装置40に電源が投入された状態を継続する機能を持つとよい。
【0142】
運転者が着座していないことの検出を契機として録画を中止するが、電源が投入された状態が継続されるため、録画開始の要求があると、短い遅延時間で録画を開始することができる。運転者が着座しているか否かは、運転席を撮影するカメラを設け、このカメラで取得された画像を解析することにより判定するとよい。
【0143】
録画装置40は、運転者が着座していないことを検出してから一定時間が経過するまでは録画を継続し、一定時間経過した時点で録画を停止する機能を持つとよい。または、フォークリフト20から運転者までの距離が判定閾値を超えたら録画を停止する機能を持つとよい。録画装置40は、運転者の着座を検出すると、録画を再開する機能、または録画を継続する機能を持つとよい。
【0144】
録画装置40は、車両の周囲を撮影するカメラを含むとよい。このカメラとして、下向きに取り付けた半天球カメラを用いるとよい。荷役作業において荷物が正常に積載されたか否かを確認する作業を行う範囲をこのカメラの画角に含めるようにするとよい。さらに、車両の後方を撮影するカメラを設けるとよい。これにより、車両の後方に運転者や他の人物がいるか否かを判定することができる。
【0145】
録画装置40の電源が投入された状態を継続するか否かの判定基準に、フォークリフト20から運転者までの距離を含めるとよい。またはフォークリフト20の近くに人物が検出されたか否かを判定基準に含めるとよい。録画装置40は、フォークリフト20の近傍に運転者や他の人物が検出された場合には、録画を継続する機能を持つとよい。このときに取得された動画データは、フォークリフト20の近傍にいる人物に何らかの事故が生じた場合に、事故原因の究明の有益な情報になる。フォークリフト20の近傍か否かを判定する基準として、フォークリフト20から人物までの距離の判定閾値を録画装置に記憶させておくとよい。
【0146】
[録画装置のカメラ]
次に、
図2A~
図5Dを参照して、第1実施例による録画装置のカメラ42について説明する。
【0147】
図2A~
図2Cは、それぞれカメラ42の上面図、正面図、底面図であり、
図3A~
図3Dは、それぞれカメラ42の左側面図、正面図、右側面図、及び背面図である。
図2Bと
図3Bとは同一の図である。
図4A~
図4Cは、それぞれカメラ42の上面図、正面図、底面図であり、
図5A~
図5Dは、それぞれカメラ42の左側面図、正面図、右側面図、及び背面図である。
図4Bと
図5Bとは同一の図である。なお、
図4A~
図5Dは、
図2A~
図3Dに示した状態と比べて、より細いケーブルをカメラ42接続した状態を示している。
【0148】
カメラ42は、カメラケース70、広角レンズ71、取付部材72を含む。カメラケース70に、クランプ機構73(
図5A~
図5C)及びタイラップ用の穴74が設けられている。
【0149】
取付部材72をフォークリフト20の構成部分にネジ止めすることにより、カメラ42をフォークリフト20に取り付ける。カメラケース70は、取付部材72に対して1つの回転軸のまわりにある角度範囲内で回転可能であり、回転可能な角度範囲内の任意の位置において固定することができる。
【0150】
カメラ42とメインユニット41とを接続するケーブル75の太さは、搭載するフォークリフト20の機種によって異なっている。ケーブル75として相対的に細いケーブルを用いる場合(
図4A~
図5D)には、クランプ機構73でケーブル75をクランプするとよい。ケーブル75が、クランプ機構73でクランプできないような太い場合(
図2A~
図3D)には、タイラップ用の穴74にケーブル75をタイラップで固定するとよい。
【0151】
クランプ機構73は、カメラケース70とともに一体成形した樹脂で形成し、樹脂を弾性変形させることによりケーブル75をクランプする構成とするとよい。タイラップを用いてケーブル75を固定する場合には、樹脂製のクランプ機構73をカメラケース70から切り取って除去するとよい。
【0152】
カメラ42とメインユニット41とをケーブル75で接続するため、カメラ42の取り付け箇所とは異なる箇所にメインユニット41を取り付けることができる。逆に、メインユニット41の取り付け箇所に制約されることなく、撮影すべき範囲に応じてカメラ42を望ましい箇所に取り付けることができる。
【0153】
[録画装置のGPS受信機]
次に、
図6A~
図6Fを参照して、第1実施例による録画装置のGPS受信機43について説明する。
【0154】
図6A~
図6Fは、それぞれGPS受信機43の上面図、左側面図、正面図、右側面図、底面図、及び背面図である。GPS受信機43は、薄い直方体状の筐体の一つの面から、メインユニット41に接続するためのケーブルがひきだされている。
【0155】
[録画装置のメインユニット]
次に、
図7A~
図12を参照して第1実施例によるメインユニット41について説明する。
【0156】
図7A~
図7Fは、それぞれメインユニット41の上面図、左側面図、正面図、右側面図、底面図、及び背面図である。メインユニット41は、筐体79及び蓋80を含む。筐体79は、正面図(
図7C)において奥行き方向の寸法が縦方向及び横方向の寸法より小さく、手前に向かって開放されている。筐体79の奥行き方向を高さ方向ということとする。開放部分に対向する面を底面といい、底面から立ち上がった面を側面ということとする。蓋80は筐体79の開放部分を塞いでいる。
【0157】
筐体79の1つの側面(
図7Aの上面図に現れている側面)に、SDカードを挿入するためのメディア用開口部81が設けられている。筐体79の他の側面(
図7Eの底面図に現れている側面)に、ケーブル引出用の2つのケーブル用開口部84、85が設けられている。ケーブル用開口部84、85に、それぞれチューブ82、83が取り付けられている。筐体79内の空間が、ケーブル用開口部84、85を介してそれぞれチューブ82、83の内部の空間に繋がっている。筐体79へのチューブ82、83の取り付け箇所は防水構造とされている。
【0158】
ケーブル用開口部84、85及びチューブ82、83の内部を通って、筐体79内から外部にケーブルが引き出される。初期状態では、一方のケーブル用開口部85の一方は防水構造を持つノック穴とされており、塞がれている。ケーブルの本数が少なく、1つのケーブル用開口部84のみからケーブルを引き出すことができる場合は、ノック穴とされているもう一方のケーブル用開口部85は開口されず、防水構造のまま塞がれている。ケーブルの本数が多く、1つのケーブル用開口部84のみからすべてのケーブルを引き出すことが困難である場合、ノック穴を開口させ、もう一方のケーブル用開口部85からもケーブルを引き出す。
【0159】
蓋80にスピーカからの音を通過させるための穴99が設けられている。この穴99は、防水機能を持つスピーカで塞がれており、防水性が維持される。
【0160】
次に、
図7A~
図7Fに示した構造を採用することにより得られる優れた効果について説明する。
【0161】
ケーブル用開口部84、85とチューブ82、83の内部の空間を通って筐体79内にケーブルを挿入し、コネクタに接続することができる。録画装置40の種々のオプション機能を使用するか否かによって接続すべきケーブルの本数が異なる。接続すべきケーブルの本数が増えると、ノック穴を開口してケーブルを引き出すことができる。筐体79の2か所からケーブルを引き出す構成とすると、筐体79内でのケーブルの引き回しが容易になるという効果が得られる。ノック穴が防水構造とされているため、ノック穴を開口しない場合にも、筐体の防水性を維持することができる。
【0162】
チューブ82、83は、シリコーン等の弾性材料で形成することが好ましい。チューブ82、83の中にケーブルを通した状態でチューブを締め付け紐、タイラップ等で絞め付けることにより筐体79内への水の浸入を抑制することができる。チューブ82、83の断面積が大きくなると水の浸入を抑制しにくくなる。筐体79からのケーブルの引き出し箇所を2か所にし、2本のチューブ82、83を配置すると、チューブ82、83の各々の断面を小さくすることができる。このため、ケーブルの本数が多くなっても、水の浸入を抑制しにくくなることはない。ケーブルの本数が少ない場合には、ノック穴を開口ることなく塞がれた状態にしておくとよい。これにより、十分な防水機能を維持することができる。
【0163】
予備穴として、防水構造のノック穴を採用する代わりに、開口部、及び開口部を塞ぐ防水構造のパッキンを採用するとよい。筐体79の材料として、ノック穴を開口することが困難な高強度のものを用いている場合に、予備穴を、開口部とパッキンとからなる構造とすることが有効である。
【0164】
図8は、蓋80(
図7C)を取り外した状態のメインユニット41の正面図である。
図9Aは、蓋80(
図7C)を取り外した状態のメインユニット41の斜視図であり、
図9Bは、メインユニット41のコネクタにケーブルを接続し、蓋80(
図7C)を取り外した状態のメインユニット41の斜視図である。
【0165】
筐体79内に仕切部材86が配置されている。仕切部材86は、メインユニット41内の空間を、電子回路基板を収容する空間と、電子回路基板に設けられたクロックの電源となる電池を収容する空間とを仕切る。蓋80(
図7C)を開いた状態で、電子回路基板は仕切部材86の奥側に配置され、電池88を収容する空間は仕切部材の手前側に配置されている。電子回路基板に電池用コネクタ87が実装されている。筐体79の開放部を塞いでいる蓋80(
図7C)を取り外した状態で、仕切部材86によってユーザは電子回路基板の電池用コネクタ87以外の箇所を見ることができない。
【0166】
仕切部材86に電池88を収容するための凹部が設けられており、この凹部の中に電池88が収容される。電池88は電池用コネクタ87に接続される。
【0167】
仕切部材86は、さらに、メインユニット41内の空間を、チューブ82、83が取り付けられる側面側の空間89と、その反対側の空間90とに区分している。電子回路基板は、空間90内に配置されている。仕切部材86は、一方の空間89と他方の空間90とを仕切る仕切壁を含んでおり、この仕切壁に複数のコネクタ91が取り付けられている。複数のケーブル92が、チューブ82、83内の空間、及びケーブル用開口部84、85を通って空間89内に導入され、これらのコネクタ91に接続される。
【0168】
次に、
図8~
図9Bに示したメインユニット41の構造を採用することにより得られる優れた効果について説明する。
【0169】
図8~
図9Bに示したメインユニット41の構造を採用することにより、電子回路基板にアクセスしにくい状態を保って、電池88を容易に交換することができる。通常、電子回路基板は、ユーザが簡単にアクセスできない状態に維持されている。このため、電子回路基板に直接電池を固定する構造だと、ユーザが電池を交換することができない。電池が消耗して交換する必要がある場合には、装置のメンテナンス要員に連絡するか、またはメインユニットを装置のメンテナンス部門に持ち込む必要がある。第1実施例による録画装置40においては、ユーザが電子回路基板にアクセスしにくい状態を保ったまま、ユーザが自ら電池88を交換することができる。このため、ユーザにとって利便性が向上する。
【0170】
次に、
図8~
図9Bに示したメインユニット41の構造の変形例について説明する。
電子回路基板を複数枚積み重ねた構造を採用し、相対的に下側の基板に相対的に背の高い部品を実装し、最も上の基板には、相対的に背の低い部品のみを実装するとよい。このような構成にすると、電池用の凹部の底と、電池用コネクタ87が実装されている最も上の基板の表面との高さの差を小さくする配置を採用することができる。この配置を採用することにより、電池用コネクタ87が深い位置に設けられている配置と比べて、ユーザは電池用コネクタ87にアクセスしやすくなるという効果が得られる。
【0171】
また、電子回路基板にヒューズを搭載し、ヒューズ搭載部分にユーザがアクセスできる構造を採用するとよい。例えば、ヒューズ搭載部分のインナーケースに穴をあけ、ラジオペンチ等の先端の細い工具を使用してヒューズを交換できるようにするとよい。
【0172】
筐体79内の複数のコネクタ91の近傍に、それぞれ接続すべきケーブル92の名称を記載しておくとよい。例えば、名称を記載したシールをコネクタ91の近傍に貼り付けておくとよい。これにより、ユーザは、ケーブル92を接続すべきコネクタ91を容易に判別することができる。
【0173】
[録画装置のメインユニットのメディア開口部]
次に、
図10A~
図10Bを参照して第1実施例によるメインユニット41のメディア用開口部81について説明する。
【0174】
図10A及び
図10Bは、メディア用開口部81が閉じられた状態及び開けられた状態の斜視図である。メディア用開口部81を通してSDカードを装着するメディア装着部が、電子回路基板に設けられている。メディア用開口部81は、防水構造の防水蓋と、防水蓋の外側においてメディア用開口部を塞ぐセキュリティ対策蓋93とで二重に塞がれる。セキュリティ対策蓋93に設けられた長孔を通ってトルクスネジ94が筐体79のネジ穴に挿入されている。
【0175】
トルクスネジ94を緩めると、セキュリティ対策蓋93を、長孔の長手方向に、筐体79の側面に沿ってスライドさせ、かつトルクスネジ94を中心として回転させることが可能になる。セキュリティ対策蓋93を筐体79に設けられたストッパ95に嵌め込んでトルクスネジ94を締め付けると、セキュリティ対策蓋93が筐体79に固定される。トルクスネジ94を緩めてセキュリティ対策蓋93をスライドさせてストッパ95から引き離すと、セキュリティ対策蓋93を回転させることができるようになる。セキュリティ対策蓋93を回転させると、メディア用開口部81が露出する。
【0176】
防水蓋として、ゴム等の弾性部材で形成されたパッキンが用られる。メディア用開口部81の内周面に周方向の溝を形成しておき、防水蓋の外周部をこの溝に嵌め込むことにより防水蓋が装着される。セキュリティ対策蓋93を回転させてメディア用開口部81を開放し、防水蓋を取り外すと、SDカードの装着及び取り外しが可能になる。
【0177】
次に、
図10A及び
図10Bに示した構造を採用することにより得られる優れた効果について説明する。
【0178】
セキュリティ対策蓋93を開けるためには、トルクスドライバーが必要であり、一般的なプラスドライバーやマイナスドライバーでセキュリティ対策蓋93を開けることはできない。このため、SDカードが盗難の被害を受け難くなるという優れた効果が得られる。トルクスネジ94を緩めるだけでメディア用開口部81を開放することができるため、セキュリティ対策蓋93の脱落を回避することができる。さらに、防水蓋によりメディア用開口部81の防水性を確保することができる。
【0179】
セキュリティ対策蓋93を取り付けるか否かは、ユーザが決定できるオプションとするとよい。セキュリティを考慮する必要がない環境で録画装置40を使用する場合には、ユーザはセキュリティ対策蓋93を使用しないという選択を行うことができる。
【0180】
SDカードの、筐体79への挿入の深さは、親指の腹で押し込むことができる程度にするとよい。例えば、SDカードをメディア用開口部81に挿入した状態で、SDカードがメディア用開口部81の開口面から0.4mm程度飛び出しているようにし、親指の腹でSDカードを押し込むことによって装着が完了するようにするとよい。
【0181】
次に、
図11A~
図11Bを参照して第1実施例によるメインユニット41のメディア用開口部81の他の構成例について説明する。
【0182】
図11A及び
図11Bは、メディア用開口部81が閉じられた状態の斜視図である。セキュリティ対策蓋93として、平板をL字形に折り曲げた形状のものが用いられる。折り曲げ箇所の一方の側の平板部分でメディア用開口部81を塞ぎ、他方の平板部分が、メディア用開口部81が設けられた側面に対して直交する底面に、トルクスネジ94でネジ止めして固定される。
【0183】
防水蓋をメディア用開口部81に装着した状態で、メディア用開口部81の開口面から外側に突出する凸状の把手96が防水蓋に設けられている。セキュリティ対策蓋93に開口が設けられており、この把手96がセキュリティ対策蓋93の開口を通って外側まで突出している。防水蓋の弾性によって、防水蓋とセキュリティ対策蓋93とが容易に分離しない構成とされている。
【0184】
次に、
図11A及び
図11Bの構造を採用することにより得られる優れた効果について説明する。
【0185】
メインユニット41をフォークリフト20に取り付ける箇所によっては、メディア用開口部81が設けられた面へのアクセスが困難な場合がある。このような場合、メディア用開口部81が設けられた側面に対して直交する底面にアクセスしてセキュリティ対策蓋93を容易に固定することができる。なお、メディア用開口部81が設けられた側面と、トルクスネジ94でセキュリティ対策蓋93を固定する底面とが直交する必要はなく、両者が交差した位置関係でも、同様の優れた効果が得られる。
【0186】
セキュリティ対策蓋93を固定しているトルクスネジ94を取り外した状態でも、セキュリティ対策蓋93が防水蓋を介して筐体79に支持されるため、セキュリティ対策蓋93の脱落を抑制することができる。
【0187】
[録画装置のメインユニットの筐体と蓋]
次に、
図12及び
図13を参照して、第1実施例による録画装置40のメインユニット41の筐体79と蓋80とに関連する構成について説明する。
【0188】
図12は、メインユニット41の蓋80を筐体79から外した状態の斜視図である。蓋80にスピーカ64が取り付けられている。スピーカ64は、ケーブル98を介して、筐体79内の電子回路基板に電気的に接続されている。筐体79と蓋80とが、紐97により機械的に接続されている。紐97がピンと張るまで蓋80を筐体79から遠ざけた状態で、ケーブル98が弛んだ状態になるように、紐97とケーブル98との長さが調整されている。例えば、紐97はケーブル98より短い。
【0189】
次に、
図12の構造を採用することにより得られる優れた効果について説明する。
蓋80を筐体79から取り外して筐体79から遠ざけても、ケーブル98に大きな張力がかからないようになるため、ケーブル98の断線等の損傷を抑制することができる。筐体79にスピーカ64を取り付ける空間的な余裕がない場合に、蓋80にスピーカ64を取り付けるとよい。また、一般的に蓋80の取り外しが容易なように、蓋80が広い空間に面する姿勢で筐体79が車体に取り付けられる。蓋80にスピーカ64を取り付けると、スピーカ64が広い空間に面することになり、音の良好な放射特性が確保される。
【0190】
その他の構成例として、蓋80にケーブル98用のクランプを設けておき、相対的に太いケーブルの一端をこのクランプで固定し、他端を筐体側に接続し、スピーカ64と太いケーブルとを、相対的に細いケーブルで接続するとよい。太いケーブルが十分な機械的強度を持つ場合には、紐97を省略してもよい。この場合、太いケーブルは、スピーカ64と筐体79側の回路との電気的接続を行うとともに、蓋80の落下を防止するという機能を持つ。
【0191】
図13Aは、筐体79と紐97との接続部の斜視図である。筐体79の内面に門型の結束部110が設けられている。紐97として、中空のシリコンゴム紐が用いられる。結束部110と紐97とを合わせて結束バンド111で結束することにより、紐97の一方の端部が筐体79に固定される。
【0192】
門型の結束部110を正面から見た状態で、結束部110の奥側に結束部110とほぼ等しい高さの段差112が設けられている。段差112の、結束部111に対応する位置に、段差部分が結束部110から遠ざかる方向に後退した後退部113が設けられている。後退部113が設けられていない場合には、結束バンド111を結束部110に通すと結束バンド111の先端が段差112に突き当たるため、結束作業が煩雑になる。本実施例では段差112に後退部113を設けられているため、結束バンド111を結束部110に通したとき結束バンド111の先端が後退部113に進入する。結束バンド111をさらに深く押し込むと、結束バンド111の柔軟性により先端が浮き上がる。このため、結束バンド111による結束作業を容易に行うことができる。
【0193】
図13Bは、蓋80と紐97との接続部の斜視図である。蓋80の内面に、板状突起120が設けられている。板状突起120に開口部121が設けられている。開口部121の一部は、紐97が余裕をもって通過する大きさを持ち、開口部121の他の一部は、紐97より細い幅を持つ。紐97を蓋80に取り付ける際には、まず紐97を開口部121の相対的に大きな部分に通す。その後、紐97を幅の細い部分に移動させる。このとき、紐97は開口部121の幅に合うように太さ方向に押しつぶされる。中空のシリコンゴムからなる紐97の復元力によって紐97と開口部121の縁との間に摩擦力が発生する。この摩擦力によって、紐97の端部が蓋80に固定される。これにより、結束等の作業を行うことなく、容易に紐97の端部を蓋80に固定することができる。
【0194】
紐97として、中空のシリコンゴム紐の他に、十分な弾性を持つ材料からなる紐を用いるとよい。また、筐体79と紐97との接続構造(
図13A)を蓋80と紐97との接続に採用してもよい。その逆に、蓋80と紐97との接続構造(
図13B)を筐体79と紐97との接続に採用してもよい。
【0195】
[録画装置の車速測定機能]
次に、
図14A及び
図14Bを参照して、第1実施例による録画装置の車速測定機能について説明する。この車速測定機能は、第1実施例による録画装置40が搭載されたフォークリフト20が、参照マークが設置されている作業場で使用される場合に有効になる。
【0196】
図14Aは、作業場に設置されている参照マーク50の正面図である。参照マーク50は円形の外形を持ち、中心角が直角の4つの扇形に4等分されている。相互に隣り合う扇形には異なる色が付されている。
【0197】
図14Bは、作業場の平面図である。作業場には、フォークリフト20が走行する複数の通路51が画定されている。通路51を走行するフォークリフト20の前方に、少なくとも1つの参照マーク50が設置されている。複数の参照マーク50の大きさは同一であり、参照マーク50の大きさは、予め録画装置40の記憶部62(
図1B)に記憶されている。
【0198】
録画装置40の処理部61は、参照マーク50が映り込んでいる画像を分析して、フォークリフト20の速度を求める機能を有する。例えば、画像に写り込んでいる参照マーク50の大きさから、参照マーク50までの距離を求める。この距離の時間変化から、フォークリフト20の車速を求める。
【0199】
次に、
図14A及び
図14Bで説明した機能による優れた効果について説明する。
録画装置40で取得した情報により車速が求まるため、車速を検知するための専用のセンサ等を搭載することなく、車速を求めることができる。参照マーク50の外形が円形であるため、参照マーク50を斜め方向から撮影した場合でも参照マーク50の直径(基準長)を正確に求めることができる。
【0200】
次に、車速測定機能の他の構成例について説明する。
車速を求めるために、ステレオカメラで参照マーク50を撮影し、得られた画像から参照マーク50まで距離を測定し、距離の時間変化から車速を求めるとよい。車両に搭載された2台のカメラで撮影された画像に共通の参照マーク50が写り込んでいるか否かを判定し、共通の参照マーク50が写り込んでいる場合には、2台のカメラで取得された2つの映像から距離を算出するとよい。例えば、2台のカメラとして、運転席の前に設置した半天球カメラと、運転席の後方を撮影する広角カメラを用いるとよい。この場合には、参照マーク50として、任意の外形のものを使用することができる。
【0201】
参照マークとして、倉庫の天井に取り付けられた照明器具等を利用するとよい。複数の照明器具を等間隔で設置しておき、照明器具の間隔を、車速計算のための基準長として利用するとよい。
【0202】
そのほかに、フォークリフト20に搭載されたGPS受信機43を用いてフォークリフト20の位置を求め、この位置の時間変化から車速を求めるとよい。車速を求めるために、ドップラーセンサをフォークリフト20に搭載するとよい。または、タイヤの回転速度を検出するセンサを搭載するとよい。LIDARと呼ばれる光を用いた測距装置をフォークリフト20に搭載するとよい。LIDARを車両に搭載する場合には、測距用のレーザ光を走査してフォークリフト20が稼働する作業場のマップを作成するとよい。
【0203】
[オプティカルフローを利用して車速を求める機能]
次に、
図15を参照して、オプティカルフローを利用して車速を求める機能について説明する。
【0204】
録画装置40は、フォークリフト20の周囲の床または地面を撮影するカメラ、及び撮影された床または地面のオプティカルフローを検出し、検出結果に基づいてフォークリフト20の速度を求める機能を備えている。
【0205】
図15は、カメラで撮影された画像55の一例を示す概略図である。画像55の中央部にフォークリフト20の車体及びフォーク22が写り込んでいる。その周囲に、床または地面56が写り込んでいる。
【0206】
この機能により、床または地面56に対するフォークリフト20の相対速度を求めることができる。フォークリフト20の並進移動のみならず、回転移動の回転速度も算出することができる。例えば、カメラから床または地面56までの距離が既知であり、床または地面56の特徴点のオプティカルフロー(一定時間に移動した画素数)がわかれば、床または地面56に対するカメラの相対速度が求まる。一列に参照マークを配置しておき、参照マークをオプティカルフローの特徴点として利用するとよい。
【0207】
特に、フォークリフト20のヘッドガード23から下方を撮影するカメラ(例えば広角カメラ)を設け、フォークリフト20の車体や運転者、及び車体の周囲の床または地面56を撮影するとよい。フォークリフト20が床または地面56に対して相対的に移動すると、フォークリフト20の周囲の床または地面56のテクスチャー(アスファルトやコンクリートの模様や小石、テープ、周辺に配置された段ボール等)のオプティカルフローから移動方向及び速度を求めることができる。
【0208】
フォークリフト20は、並進移動することなく同一箇所に留まって回転移動のみを行うことができる。例えば、フォークリフト20が回転する場合、回転軸を中心として円弧状のオプティカルフローが得られる。この回転移動を行うときの回転中心が、カメラの画像の中心に一致するようにカメラを設置するとよい。カメラの画像の中心が回転中心に一致していない場合には、キャリブレーションすることにより、実質的に画像中心を回転中心に一致させる機能を備えるとよい。カメラとして半天球カメラを用いる場合も、同様にカメラを設置するとよい。このようにカメラを設置すると、フォークリフト20の回転を容易に検出することができる。
【0209】
カメラ画像の縦横比が1:1ではない場合、例えば長方形の撮影エリアを有する一般的なカメラを用いる場合、フォークリフト20の前後方向が撮影エリアの長手方向(長辺方向)に対応し、左右方向が撮影エリアの幅方向(短辺方向)に対応するようにカメラを設置するとよい。
【0210】
例えば、前進しつつ左旋回する場合には、フォークリフト20の左側の速度ベクトルよりも右側の速度ベクトルの方が大きくなる。オプティカルフローそのものを矢印等で表示するとともに、車体左側、右側等の車体の部位別に速度を数値で表示する機能を、動画データのビュアーが備えるとよい。
【0211】
床または地面56の特徴点、床または地面56に置いてある物体等のオプティカルフローは、フォークリフト20の移動方向とは逆になる。例えば、オプティカルフローを始点と終点との区別が可能な矢印等で表示し、始点と終点とをオプティカルフローの向きとは逆にするとよい。このように表示すると、表示画面に表示された矢印等を見て、フォークリフト20の移動方向を直感的に把握することができる。特に、平面視におけるフォークリフト20の車体の外形の辺同士が交わる位置を矢印の始点として表示するとよい。例えば、フォークリフト20の車体の外形がほぼ長方形で表示される場合、長方形の4つの頂点を矢印の始点とするとよい。
【0212】
フォークリフト20の車体内が写り込んでいる範囲には、人物、ハンドル、操作レバー等も写るため、人物の動きのオプティカルフローを検知する機能を、ビュアーが備えるとよい。ビュアーは、フォークリフト20自体のオプティカルフローとは区別して、人物等の移動を認識する機能を備えるとよい。例えば、人物の動きを示す矢印と、フォークリフト20の動きを示す矢印とを区別して認識できるようにするとよい。例えば、人物の動きを緑色の矢印で表し、フォークリフト20の動きを青色の矢印で表すようにするとよい。人物の動きのオプティカルフローは、例えば、操作の正常性、頭の向きを変えて指差し点呼を行っているか否か等の判定に利用することができる。
【0213】
オプティカルフローを総合して、フォークリフト20の平均速度を算出する機能を録画装置40が備えるとよい。
【0214】
フォークリフト20の周囲に人物や無人搬送車(AGV)等の移動物が存在すると、動画像内に部分的にオプティカルフローが発生することになる。このような部分的に発生しているオプティカルフローは、速度算出のための対象から排除する機能を持つとよい。すなわち、フォークリフト20の周囲の一部分にしか発生しないオプティカルフローは、フォークリフト20の移動により発生したものではないとして車速を算出する処理を行うとよい。
【0215】
ビュアーで動画を再生する際に、一部分にしか発生しないオプティカルフローを、フォークリフト20の移動によるオプティカルフローと区別して表示するとよい。例えば、一部分にしか発生しないオプティカルフローを示す矢印と、フォークリフト20の移動によるオプティカルフローを示す矢印とを、異なる色で表示するとよい。このようにすることで、フォークリフト20の近くを移動する人物の動き等を容易に認識することができる。例えば、フォークリフト20の動きを青色の矢印で表示し、フォークリフト20の周辺の画像の一部にしか発生しないオプティカルフローを、フォークリフト20の周辺を移動する人物の動きとして赤色の矢印で表示する機能を備えるとよい。
【0216】
動画のビュアーは、パソコンのアプリケーションプログラム(PCアプリ)、スマートフォンのアプリケーションプログラム(スマホアプリ)等で実現するとよい。または、フォークリフト20に搭載された録画装置40に表示装置を備え、この録画装置40にビュアーの機能を持たせるとよい。さらには、オプティカルフローを用いて、フォークリフト20の動きの異常、操作や運転者の異常、フォークリフト20の周囲に人物が存在しており危険であること等を警報で報知する機能を備えるとよい。フォークリフト20の動きの異常は、フォークリフト20の動きに対応するオプティカルフローから求めた並進速度や回転速度の大きさが異常であるか否か等により検出するとよい。操作や運転者の異常は、例えば運転者が指差し点呼を行うという運転規則等を守っているか否かの判定を行うことにより検出するとよい。
【0217】
フォークリフト20の周辺領域を、通常の稼働中では人物等が入り込まない近傍の領域(第1領域)と、人物等が入り込む可能性があるやや遠い領域(周辺領域のうち第1領域より遠い領域)とに区分し、フォークリフト20の移動速度算出のための基礎となるオプティカルフローとして、第1領域内のオプティカルフローを採用するとよい。
【0218】
[マストの傾斜角を検出する機能]
次に、
図16A及び
図16Bを参照して、第1実施例による録画装置の、マストの傾斜角を検出する機能について説明する。
【0219】
図16Aは、フォークリフト20の概略側面図である。傾斜角度が可変のマスト21に沿ってフォーク22が昇降する。マスト21に複数のマーカ31が設けられている。ヘッドガード23の支柱32に、マーカ用カメラ47が取り付けられている。マーカ用カメラ47は、複数のマーカ31が画角内に収まるように支柱32に取りつけられている。録画装置40の処理部61(
図1B)は、複数のマーカ31が写っている画像を解析してマスト21の傾斜角を求める機能を備えている。
【0220】
図16Bは、マーカ31とマーカ用カメラ47との相対位置関係を示す図である。フォークリフト20の左側のマスト21に複数のマーカ31が設けられており、右側の支柱32にマーカ用カメラ47が取り付けられている。マーカ用カメラ47は、フォークリフト20の左側を向く姿勢で支柱32に取り付けられており、複数のマーカ31を撮影することができる。
【0221】
次に、
図16A及び
図16Bに示した構成を採用することにより得られる優れた効果について説明する。
【0222】
荷物の受け渡しをするときにフォーク22が水平な状態からずれていると、荷物の脱落等の事故につながる。フォーク22の姿勢は、フォーク22が昇降可能に取り付けられているマスト21の傾斜角を変えることによって変化する。第1実施例による録画装置40においては、マスト21の傾斜角を求めることにより、フォーク22の姿勢が正常であるか否かを判定することができる。マスト21に取り付けられた複数のマーカ31の、画像内における相対的位置関係を検出することにより、マスト21の傾斜角に関する情報を容易に取得することができる。運転者は、水平面に対するマスト21の傾斜角が直角であること、すなわちフォーク22が水平であることを確認することにより、安全に荷物の受け渡しを行うことができる。マーカ用カメラ47を、マスト21やフォーク22等の可動部分ではなく、車体の支柱32に取りつけるため、作業中のマーカ用カメラ47の損傷等を抑制することができる。
【0223】
フォーク22にもマーカ31を取り付けて、フォーク22に取り付けたマーカのオプティカルフローから、フォーク22の昇降速度を求める機能を録画装置40が持つとよい。
【0224】
[第2実施例]
次に、
図17を参照して、第2実施例による車両情報処理装置について説明する。
図17は、第2実施例による車両情報処理装置100のブロック図である。車両情報処理装置100は、フォークリフト20に搭載された録画装置40(
図1A、
図1B)及びその他の車両に搭載される録画装置で取得された動画データ等の車両情報の処理を行う。
【0225】
車両情報処理装置100は、処理装置101、ディスプレイ102、記憶装置103、通信装置104、SDカードリーダ105、ポインティングデバイス106、及びキーボード107を含む。処理装置101は、例えばマイクロコンピュータを含み、記憶装置103に格納されているコンピュータプログラムを実行することによって、種々の機能を実現する。
【0226】
さらに、処理装置101は、処理結果をディスプレイ102に表示する。また、ユーザにコマンドやデータの入力を促す情報をディスプレイ102に表示する。通信装置104は、車両に搭載された録画装置40等とデータ通信を行う。SDカードリーダ105に、録画装置40(
図1A、
図1B)によって車両情報が記録されたSDカードが装着され、SDカードから、車両情報を読み込むとともに、種々のデータをSDカードに書き込む機能を提供する。ポインティングデバイス106はユーザに操作されて、ディスプレイ102に表示されているポインタの位置を移動するとともに、ディスプレイ102に表示されているボタンを選択する機能を提供する。キーボード107は、ユーザによって操作されて、処理装置101にコマンドやデータを入力する機能を提供する。
【0227】
[動画ファイル生成機能]
処理装置101は、車両に搭載された複数のカメラでそれぞれ撮影された動画の複数の動画ファイルを取得する機能と、動画を切り出すべき開始時点と終了時点とを指定させる機能と、指定された開始時点から終了時点までの動画を、複数の動画ファイルから切り出し、切り出された複数の動画を時間軸で同期させて同時に閲覧可能な態様の1つの動画ファイルを生成して保存する機能とを備えている。
【0228】
この機能により、複数の動画ファイルを時間的に同期させて再生するという煩雑な手順を実行することなく、この機能によって生成された1つの動画ファイルを再生するのみで、実質的に複数の動画ファイルを再生する場合とほぼ同様の内容を閲覧することができる。
【0229】
処理装置101は、複数の動画ファイルのうち、1つの動画ファイルを再生しながら、動画を切り出すべき開始時点と終了時点とを指定する機能を持つ。これにより、生成すべき1つの動画ファイルの開始時点と終了時点とを容易に設定することができる。例えば、複数の動画ファイルをまとめた1つの動画ファイルは、教育現場に持ち込んで教育用として利用するのに便利である。
【0230】
複数の動画ファイル、及びまとめられた1つの動画ファイルは、例えばaviファイルである。また、これらの動画ファイルは、動画ベースの圧縮ファイルである。まとめられた1つの動画ファイルの映像は、1画面内に複数の動画ファイルの映像が配置されたものである。例えば、ピクチャーインピクチャー形式、横並び形式、マトリクス状に並んだ形式等の映像とするとよい。
【0231】
録画時には複数の動画ファイルとして作成されるため、1つの動画ファイルにまとめるときに自由にまとめ方を決めることができる。例えば、まとめられた1つの動画ファイルにおいて、特に重要な映像を画面内に大きく表示させ、重要度の低い映像は小さく表示させることができる。どの動画ファイルの映像が重要であるかは、1つの動画ファイルを作成する時点で決めればよい。
【0232】
[円形画像から矩形画像の動画ファイルを生成する機能]
処理装置101は、360度カメラで撮影して得られた円形の画像からなる動画ファイルを読み込み、画像内の一部の領域を指定させる機能と、指定された領域を展開して、矩形の画像からなる動画ファイルを生成する機能とを備えている。
【0233】
矩形の画像からなる動画ファイルは、一般的な動画再生プログラムを用いて再生することが可能である。処理装置101は、360度カメラで取得された動画を再生可能なプログラムで動画を再生しながら、通常の矩形の画像に展開すべき領域を指定させる機能を持つ。例えば、360度カメラで取得された動画ファイルの再生中に、現時点で画面に表示されている領域を、矩形の画像に展開すべき領域として指定する機能を持つとよい。矩形の画像からなる動画ファイルを、aviファイルとして保存する機能を持つとよい。
【0234】
車両に複数のカメラが搭載され、そのうちの1つが360度カメラである場合、360度カメラで取得された動画ファイルの画像の一部を展開して生成された矩形の画像からなる動画ファイルと、他のカメラで取得された動画ファイルとに基づいて、動画ファイル生成機能を用いて1つの動画ファイルを生成する機能を持つとよい。
【0235】
[ヒヤリハットマップ作成機能]
処理装置101は、車両が稼働する作業場で取得した情報に基づいて、作業場のマップを作成する機能と、作業場で稼働する車両に関してヒヤリハット事例に相当する状況が発生したことを検知する機能と、マップと、ヒヤリハット事例が発生した場所とを関連付けたヒヤリハットマップを作成する機能とを備えている。
【0236】
ヒヤリハットマップは、作業場における事故削減のための有益な情報になる。マップは、例えばLIDAR等を用いて作成する。ヒヤリハット事例に相当する状況の発生は、車両に搭載した加速度センサ、ジャイロセンサ等の測定結果により処理装置101が検出する。その他に、車両に搭載されたカメラで取得された動画情報を画像解析することにより、ヒヤリハット事例に相当する状況の発生を検出する機能を持つとよい。
【0237】
ヒヤリハット事例が発生した地点の位置情報は、例えば車両に搭載したGPS受信機43で取得された位置情報を動画データや加速度データに関連付けてSDカードに記録しておくことにより、SDカードを介して取得する。ヒヤリハットマップ上の位置は、緯度経度情報と関連付けられている。処理装置101は、GPS受信機43から取得された位置情報と、ヒヤリハットマップ上の位置情報とに基づいて、ヒヤリハットマップ上でヒヤリハット事例が発生した地点を特定する。
【0238】
[バッテリの余寿命予測機能]
車両から入手される車両情報は、オンにすることによって電気系統に電力を供給し、オフにすることによって電気系統への電力の供給を停止する切替手段を備えた車両において、前記切替手段がオンにされている時間情報を含む。処理装置101は、切替手段がオンにされている時間の累積時間に基づいてアラームを発出する機能を備えている。
【0239】
車両が電気式フォークリフトである場合、切替手段がオンにされている時間の累積値から、車載バッテリの余寿命を予測することができる。ユーザは、発出されるアラームから車載バッテリの交換時期を予測することができる。また、ユーザにとっては、複数の管理対象の電気式フォークリフトを、1台の車両情報集装置でまとめて管理することができるという優れた効果も得られる。
【0240】
切替手段がオンにされている時間情報は、録画装置40等の車載機器からSDカードを介して取得するとよい。車載機器は、切替手段がオンにされた時刻とオフにされた時刻、及び車両識別情報(車両ID)とをSDカードに記録する機能を持つとよい。その他に、車載機器と車両情報処理装置とに、無線LANを介したデータ通信機能を持たせ、切替手段がオンにされている時間情報を、無線LAN経由で車載機器から車両情報処理装置が取得するようにするとよい。
【0241】
アラームは、例えば累積時間が、車載バッテリの稼働寿命時間の所定の割合(50%、80%、90%等)の時間を超えた時点で発出するとよい。または、一定時間、例えば1000時間が経過するごとにアラームを発出するとよい。
【0242】
[車両情報表示機能]
車両情報処理装置100は、複数種類の車両から車両情報を取得する機能と、車両の種類に応じて、表示する車両情報を異ならせて表示装置に表示させる機能とを備えている。
【0243】
この機能により、自動車、フォークリフト等の種類の異なる車両から共通の車両情報処理装置に情報を収集し、車両の種類により適した情報を表示させることができる。例えば、自動車については、GPS情報(日時情報、位置情報、速度情報等)、加速度センサで取得された加速度情報、ウィンカ操作情報、スピードパルス情報等を表示するとよい。フォークリフトについては、GPS情報、加速度センサで取得された加速度情報、ジャイロセンサで取得された角速度情報等を表示するとよい。
【0244】
車両の種類は、車載機器がリムーバブル記録媒体に記録し、車両情報処理装置がリムーバブル記録媒体から読み出すようにするとよい。
【0245】
[車載機器のファームウェア更新機能]
車両に搭載された車載機器は、車載機器のファームウェアのバージョンをSDカードに記録する。車両情報処理装置100は、このSDカードからファームウェアのバージョンを読み出し、より新しいバージョンのファームウェアが存在する場合には、より新しいバージョンのファームウェアをSDカードに格納する機能を備えている。
【0246】
ユーザは、車載機器のファームウェアの新しいバージョンがリリースされているか否かを判断することなく、新しいバージョンのファームウェアを入手することができる。車載機器は、装着されたSDカードに格納されているファームウェアのバージョンを読み出し、現在のファームウェアのバージョンより新しいバージョンのファームウェアがSDカードに格納されている場合に、ファームウェアをSDカードから読み出してファームウェアを更新する機能を持つとよい。車載機器がこの機能を持つと、ユーザにとって、ファームウェアを更新する手間を省き、常に新しいバージョンのファームウェアで車載機器を運用することができるという効果が得られる。車載機器は、SDカードからファームウェアを読み出したら、SDカードからファームウェアを消去する機能を持つとよい。
【0247】
車載機器は、異なる機種に対応するファームウェアが書き込まれたSDカードが装着された場合には、ファームウェアの更新を行わない機能を持つとよい。また、異なる車両の車載機器に装着されていたSDカードが新たに装着された場合でも、車載機器の機種が同一であればファームウェアの更新を行う機能を持つとよい。
【0248】
本発明の範囲は,明細書に明示的に説明された構成や限定されるものではなく,本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも,その範囲に含むものである。本発明のうち,特許を受けようとする構成を,添付の特許請求の範囲に特定したが,現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても,本明細書に開示される構成を,将来的に特許請求の範囲とする意思を有する。
【0249】
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と,発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【0250】
また,意匠出願への変更出願により,全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが,全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと,部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては,装置の一部の部材としても良いし,その部材の部分としても良い。全体意匠はもちろんのこと,図面の実線部分のうち任意の部分を破線部分とした部分意匠を,権利化する意思を有する。
【符号の説明】
【0251】
20 フォークリフト
21 マスト
22 フォーク
23 ヘッドガード
24 支柱
25 ステアリングホイール
26 メインスイッチ
27 操作レバー
28 ペダル
29 +B端子
30 スイッチ連動電源端子
31 マーカ
32 支柱
40 録画装置
41 メインユニット
42 カメラ
43 GPS受信機
44 加速度センサ
45 ジャイロセンサ
46 無線LANモジュール
47 マーカ用カメラ
50 参照マーク
51 通路
55 画像
56 床または地面
61 処理部
62 記憶部
63 SDカードリーダ
64 スピーカ
70 カメラケース
71 レンズ
72 取付部材
73 クランプ機構
74 タイラップ用の穴
75 ケーブル
79 筐体
80 蓋
81 メディア用開口部
82、83 チューブ
84、85 ケーブル用開口部
86 仕切部材
87 電池用コネクタ
88 電池
89、90 空間
91 コネクタ
92 ケーブル
93 セキュリティ対策蓋
94 トルクスネジ
95 ストッパ
96 防水蓋の把手
97 紐
98 ケーブル
99 穴
100 車両情報処理装置
101 処理装置
102 ディスプレイ
103 記憶装置
104 通信装置
105 SDカードリーダ
106 ポインティングデバイス
107 キーボード
110 結束部
111 結束バンド
112 段差
113 後退部
120 板状突起
121 開口部