(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103505
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】サイクルタイム推定システムおよびサイクルタイム推定方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20230720BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004031
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】相良 博喜
(72)【発明者】
【氏名】丸田 晟央
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA57
3C100AA68
3C100BB03
3C100BB14
3C100BB15
3C100BB33
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC05
5E353EE24
5E353EE62
5E353EE89
5E353GG08
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ05
(57)【要約】
【課題】他の作業装置に関する情報から作業装置のサイクルタイムを精度よく推定することができるサイクルタイム推定システムを提供する。
【解決手段】サイクルタイム推定システム(管理コンピュータ3)は、部品実装装置と部品実装装置とは異なる作業装置とを含む部品実装ラインで基板に部品を実装した実装基板を生産する際に、部品実装装置で使用される生産データ14の少なくとも一部である抽出情報を取得する抽出情報取得部11と、抽出情報に基づいて、基板に対する作業装置のサイクルタイムを算出するサイクルタイム算出部12と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装装置と前記部品実装装置とは異なる作業装置とを含む部品実装ラインで基板に部品を実装した実装基板を生産する際に、前記部品実装装置で使用される生産データの少なくとも一部である抽出情報を取得する抽出情報取得部と、
前記抽出情報に基づいて、前記基板に対する前記作業装置のサイクルタイムを算出するサイクルタイム算出部と、を備える、サイクルタイム推定システム。
【請求項2】
前記抽出情報は、前記基板の搬送方向のサイズを含み、
前記サイクルタイム算出部は、さらに前記作業装置の前記基板の搬送に関する情報に基づいて、前記サイクルタイムを算出する、請求項1のサイクルタイム推定システム。
【請求項3】
前記作業装置は、カメラで前記基板の状態を検査する検査装置であり、
前記抽出情報は、前記基板における各実装点の実装座標と実装される部品のサイズを含み、
前記サイクルタイム算出部は、さらに前記カメラの撮像視野に関する情報に基づいて、前記サイクルタイムを算出する、請求項1または2に記載のサイクルタイム推定システム。
【請求項4】
前記作業装置は、複数の開口を有するマスクに前記基板を接触させて、前記マスクの上でスキージを摺動させて前記複数の開口にペーストを押し込む印刷装置であり、
前記抽出情報は、前記基板における各実装点の実装座標と実装される部品のサイズを含み、
前記サイクルタイム算出部は、さらに前記スキージの移動に関する情報と、前記マスクから前記基板を引き離す版離れに関する情報に基づいて、前記サイクルタイムを算出する、請求項1または2に記載のサイクルタイム推定システム。
【請求項5】
前記作業装置は、コンベアで前記基板を搬送しながら加熱するリフロー装置であり、
前記サイクルタイム算出部は、さらに前記基板を前記コンベアに載せる間隔に関する情報に基づいて、前記サイクルタイムを算出する、請求項1または2に記載のサイクルタイム推定システム。
【請求項6】
部品実装装置と前記部品実装装置とは異なる作業装置とを含む部品実装ラインで基板に部品を実装した実装基板を生産する際に、前記部品実装装置で使用される生産データの少なくとも一部である抽出情報を取得し、
前記抽出情報に基づいて、前記基板に対する前記作業装置のサイクルタイムを算出する、サイクルタイム推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置のサイクルタイムを推定するサイクルタイム推定システムおよびサイクルタイム推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装した実装基板を生産する部品実装ラインは、基板にはんだを印刷する印刷装置やはんだが印刷された基板に部品を装着する部品実装装置などの複数の作業装置を備えて構成されている。部品実装ラインが生産する実装基板の生産能力を推定するシミュレーションでは、各作業装置が1枚の基板に対して作業を行う作業装置のサイクルタイム(タクトタイム)に基づいて、生産能力が推定される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1を含む従来技術では、シミュレーションによる生産能力の推定精度を向上させるためには、作業装置のサイクルタイムを精度よく予測する必要がある。しかしながら、過去の作業実績を収集したり、作業装置を作動させるためのパラメータ等を取得することができない作業装置では、サイクルタイムを経験に基づいて設定したり、固定値を設定しているため、シミュレーションによる部品実装ラインの生産能力の推定精度を向上させることが困難という問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、他の作業装置に関する情報から作業装置のサイクルタイムを精度よく推定することができるサイクルタイム推定システムおよびサイクルタイム推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のサイクルタイム推定システムは、部品実装装置と前記部品実装装置とは異なる作業装置とを含む部品実装ラインで基板に部品を実装した実装基板を生産する際に、前記部品実装装置で使用される生産データの少なくとも一部である抽出情報を取得する抽出情報取得部と、前記抽出情報に基づいて、前記基板に対する前記作業装置のサイクルタイムを算出するサイクルタイム算出部と、を備える。
【0007】
本発明のサイクルタイム推定方法は、部品実装装置と前記部品実装装置とは異なる作業装置とを含む部品実装ラインで基板に部品を実装した実装基板を生産する際に、前記部品実装装置で使用される生産データの少なくとも一部である抽出情報を取得し、前記抽出情報に基づいて、前記基板に対する前記作業装置のサイクルタイムを算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、他の作業装置に関する情報から作業装置のサイクルタイムを精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装ラインにおいて(a)部品が実装される基板の例を示す図(b)部品が実装された基板の例を示す図
【
図3】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(サイクルタイム推定システム)の情報処理系の構成を示すブロック図
【
図4】本発明の一実施の形態の部品実装ラインが備える印刷装置の要部の構成を示す(a)平面図(b)側面部分断面図
【
図5】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(サイクルタイム推定システム)による印刷装置のサイクルタイムの推定方法の説明図
【
図6】本発明の一実施の形態の部品実装ラインが備える印刷検査装置の(a)要部の構成を示す平面図(b)サイクルタイムの推定方法の説明図
【
図7】本発明の一実施の形態の部品実装ラインが備える実装検査装置の(a)要部の構成を示す平面図(b)サイクルタイムの推定方法の説明図
【
図8】本発明の一実施の形態の部品実装ラインが備えるリフロー装置の要部の構成を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を具体的に説明する前に、本発明者が課題を認識するに至った詳細を以下に説明する。上述した作業装置を作動させるためのパラメータ等を取得することができない作業装置とは、例えば、装置の製造会社が異なる作業装置であり、パラメータ等のデータが提供されなかったり、シミュレーションをするために必要なデータが不足していたり、データ形式が異なり使用できなかったりすることである。このような作業装置ではデータの取得が難しく、シミュレーションすることが困難であった。そこで、本発明は作業装置のサイクルタイムを精度よく推定する技術を提供することが目的である。
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、管理コンピュータ(サイクルタイム推定システム)、印刷装置、印刷検査装置、部品実装装置、実装検査装置、リフロー装置などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸として、基板搬送方向のX軸(
図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY軸(
図1における上下方向)が示される。
図4、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ軸(
図4(b)における上下方向)が示される。
【0012】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、部品実装ラインAを通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。各部品実装ラインAは、後述するように部品実装装置を含む複数の作業装置を連結して構成され、基板に部品を実装した実装基板を生産する機能を有している。管理コンピュータ3は、部品実装ラインAが備える作業装置の稼働に必要なデータやパラメータを作成し、各作業装置に送信する機能を有している。また、管理コンピュータ3は、部品実装ラインAの生産能力を推定する生産シミュレーションに使用する作業装置のサイクルタイムを算出する機能を有している。
【0013】
次に
図1を参照して、部品実装ラインAの詳細な構成を説明する。部品実装ラインAは、基板搬送方向の上流(紙面左側)から下流(紙面右側)に向けて、印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8などの作業装置を直列に連結して構成されている。すなわち、部品実装ラインAは、部品実装装置M3~M6と部品実装装置M3~M6とは異なる作業装置とを含む、基板に部品を実装した実装基板を生産する。なお、部品実装ラインAは通信ネットワーク2を介して接続される作業装置群であって、物理的に作業装置同士が連結されていなくてもよい。
【0014】
印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。印刷装置M1は、はんだ印刷作業部によって上流から搬入された基板Bに複数の開口31aを有するマスク31を介してはんだなどのペーストPstを印刷する印刷作業を実行する(
図4参照)。印刷検査装置M2は、印刷検査カメラ37を含む印刷検査作業部によって、ペーストPstが印刷された基板Bの状態を検査する印刷検査作業を実行する(
図6参照)。なお、印刷検査装置M2は、印刷検査カメラ37の他に、レーザーを用いて基板Bの状態を検査してもよい。
【0015】
図1において、部品実装装置M3~M6は、コンベア、部品供給部、実装ヘッドを含む部品実装作業部によって基板Bの実装点に部品Dを実装する部品実装作業を実行する。実装検査装置M7は、部品検査カメラ39を含む実装検査作業部によって、部品Dが実装された基板Bの状態を検査する実装検査作業を実行する(
図7参照)。なお、実装検査装置M7は、部品検査カメラ39の他に、レーザーを用いて基板Bの状態を検査してもよい。リフロー装置M8は、装置内に搬入された基板Bをコンベア41で搬送しながら基板加熱部(ヒータH)によって加熱して、基板B上のはんだを硬化させ、基板Bの電極部(ランド)と部品Dとを接合する基板加熱作業を実行する(
図8参照)。
【0016】
次に、
図2を参照して、部品実装ラインAにおいて部品Dが実装される基板Bの例について説明する。
図2(a)は、部品Dが実装される前の基板Bを示している。
図2(b)は、部品Dが実装された基板Bを示している。基板Bの上面には、部品Dの電極とはんだ接合される電極部である複数のランドEが形成されている。印刷装置M1は、ランドEにはんだ(ペーストPst)を印刷する。部品実装装置M3~M6は、基板Bに実装座標(XY座標)として設定されている実装点Pに部品Dを実装する。基板Bは、各作業装置が備えるコンベアによりX軸(基板搬送方向)に沿って搬送される。以下、基板BのX軸方向のサイズを基板の長さLb、Y軸方向のサイズを基板の幅Wbと称する。
【0017】
次に、
図3を参照して、管理コンピュータ3の情報処理系の構成について説明する。ここでは、管理コンピュータ3(サイクルタイム推定システム)が備える複数の機能のち、部品実装ラインAが備える作業装置のサイクルタイムを推定する機能について説明する。管理コンピュータ3は、処理部10、記憶装置である記憶部13の他、入力部18、表示部19、通信部20を備えている。
【0018】
処理部10はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として抽出情報取得部11、サイクルタイム算出部12、制御部(図示せず)を備えている。なお、各内部処理部は、独立したハードウェア資産で構成しても、共通のCPUと各情報処理用のプログラムで構成してもよい。制御部は、例えばCPU(中央演算処理装置)であり、管理コンピュータ3全体を制御する。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶部13、管理コンピュータ3を構成するデータ処理装置の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0019】
図3において、入力部18は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部19は液晶パネルなどの表示装置であり、記憶部13が記憶する各種データを表示する他、入力部18による操作のための操作画面、入力画面などの各種情報を表示する。通信部20は、通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインAを構成する作業装置(印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8)との間でデータの送受信を行う。
【0020】
図3において、記憶部13には、生産データ14、作業装置情報15、抽出情報データ16、サイクルタイムデータ17などが記憶されている。生産データ14には、作業装置で実装基板を生産するためのデータが作業装置毎に記憶されている。例えば、部品実装装置M3~M6の生産データ14には、実装基板の生産機種名毎に、基板Bのサイズ(基板の長さLb、基板の幅Wb)、基板Bに実装される部品Dの種類(部品名)、実装点Pの実装座標(XY座標)、実装方向(図示しない回転方向)、部品Dの形状、部品Dのサイズ(部品の長さLd、部品の幅Wd)、基板Bの搬送方式(一つの搬送レーンで生産するシングルレーンもしくは複数の搬送レーンで生産するデュアルレーン)、部品実装装置M3~M6の実装モード(デュアルレーンにおいてひとつの基板Bに対してひとつ実装ヘッドで実装する独立実装モード、デュアルレーンにおいてひとつの基板Bに対して複数の実装ヘッドで実装する交互実装モード)などの情報が含まれている。
【0021】
図3において、作業装置情報15には、作業装置毎に、作業装置のサイズに関する情報、基板Bの搬送に関する情報、実装基板を生産するための作業パラメータなどが記憶されている。例えば、印刷装置M1の作業装置情報15には、コンベア30の長さ(L1+L2)、コンベア30による基板Bの搬送速度V1、スキージ35の移動速度V2などのスキージの移動に関する情報、版離れ時間など版離れに関する情報などが含まれている(
図4参照)。また、印刷検査装置M2の作業装置情報15には、コンベア36の長さ(L3+L4)、コンベア36による基板Bの搬送速度V3、印刷検査カメラ37の撮像視野S12~S14のサイズなどのカメラの撮像視野に関する情報などが含まれている(
図6参照)。
【0022】
また、実装検査装置M7の作業装置情報15には、コンベア38の長さ(L5+L6)、コンベア38による基板Bの搬送速度V4、部品検査カメラ39の撮像視野S21~S29のサイズなどのカメラの撮像視野に関する情報などが含まれている(
図7参照)。また、リフロー装置M8の作業装置情報15には、コンベア41の長さ、コンベア41による基板Bの搬送速度V5、基板Bの搬送間隔などの基板Bをコンベア41に載せる間隔(L7,L8)に関する情報などが含まれている(
図8参照)。
【0023】
図3において、抽出情報取得部11は、生産データ14、作業装置情報15に基づいて、後述する作業装置のサイクルタイムの算出に使用する抽出情報を抽出(取得)する。また、抽出情報取得部11は、抽出した抽出情報を抽出情報データ16として記憶部13に記憶する。サイクルタイム算出部12は、抽出情報データ16に含まれる抽出情報に基づいて、基板Bに対する作業装置のサイクルタイムを算出する。また、サイクルタイム算出部12は、算出したサイクルタイムを、作業装置を特定する情報と関連付けて、サイクルタイムデータ17として記憶部13に記憶させる。
【0024】
なお、管理コンピュータ3は、作業装置情報15に含まれる情報を生産データ14に含ませて記憶部13に記憶するようにしてもよい。このように、抽出情報取得部11は、部品実装装置M3~M6で使用される生産データ14の少なくとも一部である抽出情報を取得して(抽出情報取得工程)、抽出情報データ16として記憶部13に記憶させる。次いでサイクルタイム算出部12は、抽出情報データ16に含まれる抽出情報に基づいて、基板Bに対する作業装置のサイクルタイムを算出する(サイクルタイム算出工程)。
【0025】
次に、
図4、
図5を参照して、抽出情報取得部11とサイクルタイム算出部12による印刷装置M1(作業装置)のサイクルタイムの算出の例について説明する。まず、印刷装置M1の構成と印刷作業について簡単に説明する。
図4において、印刷装置M1は、X軸に沿って延びるコンベア30を備えている。コンベア30は、上流から搬入された基板Bを所定のクランプ位置まで搬送速度V1で搬送する。クランプ位置に搬送された基板Bは、基板保持部33が備える一対のクランパ32によりY軸方向の側面から挟まれて保持される。
【0026】
基板保持部33の上方には、枠部材31WによってXY平面に広がって支持されているマスク31が配置されている。マスク31には、基板Bの上面に形成されたランドEにペーストPstを印刷するための複数の開口31aと位置合わせ用のマーク31mが形成されている。基板Bを保持した基板保持部33は、基板Bとマスク31を位置合わせした後に上昇し(矢印a)、基板Bをマスク31の下面に当接させる。
【0027】
図4において、マスク31の上方には、下方にスキージ35を備える印刷ヘッド34が配置されている。印刷ヘッド34は、図示省略する印刷ヘッド移動機構により、Y軸に沿って往復移動する。印刷作業では、印刷ヘッド34はスキージ35を下降させ(矢印b)、スキージ35をマスク31の複数の開口31aが形成された領域の外の位置に当接させる。次いで印刷ヘッド移動機構は、印刷ヘッド34をY軸に沿って移動速度V2で移動させ、スキージ35をマスク31の上で摺動させる。スキージ35がマスク31の上を摺動する際に、スキージ35によりペーストPstが複数の開口31aに押し込まれる。スキージ35は、複数の開口31aが形成された領域の外の位置まで摺動しながら移動した後、上昇して(矢印c)マスク31の上面から離れる(図示省略)。
【0028】
その後、基板保持部33が下降して(矢印d)、マスク31から基板Bを引き離す版離れが行われる。これにより、基板BのランドEにペーストPstが印刷(転写)される。その後、クランパ32は基板Bを開放し、開放された基板Bはコンベア30により搬送速度V1で搬送されて印刷装置M1から搬出される。このように、印刷装置M1は、複数の開口31aを有するマスク31に基板Bを接触させて、マスク31の上でスキージ35を摺動させて複数の開口31aにペーストPstを押し込む作業装置である。
【0029】
次に、印刷装置M1のサイクルタイムT1について説明する。基板Bに対する印刷装置M1のサイクルタイムT1は、基板Bがクランプ位置まで搬送される搬入時間T11、基板Bが基板保持部33に保持されてマスク31に接触するまでの位置合わせ時間T12、スキージ35が下降してマスク31の上面に当接するまでの当接時間T13、スキージ35がマスク31の上を摺動する摺動時間T14、基板Bがマスク31から引き離される版離れ時間T15、基板Bがクランプ位置から印刷装置M1の外に搬出される搬出時間T16を合算して算出される。
【0030】
図4(a)において、搬入時間T11は、コンベア30の入口からクランプ位置に保持された基板Bの先端までの距離L1と基板Bの搬送速度V1に基づいて計算される(T11=L1/V1)。また、搬出時間T16は、クランプ位置に保持された基板Bの先端からコンベア30の出口までの距離L2と搬送速度V1に基づいて算出される(T16=L2/V1)。また、摺動時間T14は、スキージ35がマスク31の上を摺動する距離とスキージ35に移動速度V2に基づいて算出される(T14=摺動する距離/V2)。
【0031】
図5において、スキージ35がマスク31の上を摺動する距離は、スキージ35が移動するY軸方向の基板Bの上にランドEが存在する幅W1に、予め定められたマージンを加算して算出される。すなわち、摺動時間T14は、幅W1、マージン、移動速度V2から算出される(T14=(W1+マージン)/V2)。基板BにおいてY軸方向にランドEが存在する幅W1は、基板Bにおける部品Dの実装点Pの実装座標と部品Dの種類、サイズ(Ld,Wd)から算出されるランドEの存在範囲に基づいて算出される。なお、摺動時間T14は、基板Bにおける部品Dの種類によって係数値を用いて調整してもよい。例えば、部品Dに狭隣接部品や微小部品が含まれる場合、はんだを充填するための印刷圧力を高めるために印刷速度を下げる傾向がある。そのため、そのような部品Dを含む場合、摺動時間T14に係数値をかけて遅くしてもよい。
【0032】
なお、印刷装置M1がスキージ35を基板Bの幅Wbの全体を摺動するように制御されている場合は、スキージ35がマスク31の上を摺動する距離は、基板Bの幅Wbに、予め定められたマージンを加算して算出される。位置合わせ時間T12、当接時間T13、版離れ時間T15は、基板Bに依存しない固定値である。
【0033】
抽出情報取得部11は、作業装置情報15から抽出情報として、印刷装置M1の基板Bの搬送方向(X軸方向)のサイズ(距離L1,L2)、基板Bの搬送に関する情報(搬送速度V1)、スキージ35の移動に関する情報(移動速度V2、マージン)、版離れに関する情報(版離れ時間T15)など基板Bに依存しない固定値(位置合わせ時間T12、当接時間T13、版離れ時間T15)を抽出する。また、抽出情報取得部11は、生産データ14から抽出情報として、基板Bにおける部品Dの実装点Pの実装座標、各実装点Pに実装される部品Dのサイズ(Ld,Wd)を抽出する。そして、サイクルタイム算出部12は、取得された抽出情報に基づいて、基板Bに対する印刷装置M1のサイクルタイムT1を算出する。
【0034】
次に、
図6を参照して、抽出情報取得部11とサイクルタイム算出部12による印刷検査装置M2(作業装置)のサイクルタイムの算出の例について説明する。まず、印刷検査装置M2の構成と印刷検査作業について簡単に説明する。
図6(a)において、印刷検査装置M2は、X軸に沿って延びるコンベア36と、図示省略する印刷検査カメラ移動機構により水平方向(X軸方向、Y軸方向)に移動する印刷検査カメラ37を備えている。
【0035】
コンベア36は、上流から搬入された基板Bを所定の印刷検査作業位置まで搬送速度V3で搬送する。印刷検査カメラ37は、基板Bの上方を印刷検査カメラ37の撮像視野S11~S14を単位として移動しながら、基板BのランドEに印刷されたペーストPstを撮像する。その後、印刷検査作業位置の基板Bはコンベア36により搬送速度V3で搬送されて印刷検査装置M2から搬出される。
【0036】
次に、印刷検査装置M2のサイクルタイムT2について説明する。基板Bに対する印刷検査装置M2のサイクルタイムT2は、基板Bが印刷検査作業位置まで搬送される搬入時間T21、印刷検査カメラ37による撮像時間T22、基板Bが印刷検査作業位置から印刷検査装置M2の外に搬出される搬出時間T23を合算して算出される。
【0037】
図6(a)において、搬入時間T21は、コンベア36の入口から印刷検査作業位置に搬送された基板Bの先端までの距離L3と基板Bの搬送速度V3に基づいて計算される(T21=L3/V3)。また、搬出時間T23は、印刷検査作業位置の基板Bの先端からコンベア36の出口までの距離L4と搬送速度V3に基づいて算出される(T23=L4/V3)。また、撮像時間T22は、1回の撮像に要する単位撮像時間と印刷検査カメラ37による撮像回数に基づいて算出される(T22=撮像回数×単位撮像時間)。
【0038】
なお、撮像時間T22は上述した算出以外に、印刷検査装置M2の単位撮像時間あたりの撮像面積(cm2/sec)を用いて算出してもよい。また、印刷検査装置M2の搬送方式を部品実装装置M3~M6の搬送方式に基づいて設定し、基板Bの搬送タイミングを部品実装装置M3~M6の実装モードに基づいて設定してもよい。即ち印刷検査装置M2の搬送方式は部品実装装置M3~M6と同じ方式に設定されることが多く、特にデュアルレーンの場合は一方のレーンの基板Bを撮像した後に他方のレーンの基板Bを撮像するため、印刷検査カメラ37の移動が発生する。また、部品実装装置M3~M6の実装モードは基板Bの搬送タイミングに影響することが多く、特に交互実装の場合、基板Bに待ち時間が発生する。そのため、これらの時間も考慮して撮像時間T22が算出される。
【0039】
図6(b)において、印刷検査カメラ37による撮像回数は、基板BのランドEを包含する矩形の領域である撮像対象領域F1と、印刷検査カメラ37の撮像視野S11~S14のサイズから算出される。撮像対象領域F1は、基板Bにおける部品Dの実装点Pの実装座標と部品Dの種類、サイズ(Ld,Wd)から算出されるランドEの存在範囲に基づいて算出される。印刷検査装置M2では、撮像視野S11~S14のサイズだけX軸方向とY軸方向に、順に印刷検査カメラ37を移動させながら、撮像対象領域F1が複数の撮像視野S11~S14に含まれるように撮像される。この例では、印刷検査カメラ37による撮像回数は、4回(X軸方向に2回、Y軸方向に2回)である。
【0040】
抽出情報取得部11は、作業装置情報15から抽出情報として、印刷検査装置M2の基板Bの搬送方向(X軸方向)のサイズ(距離L3,L4)、基板Bの搬送に関する情報(搬送速度V3)、単位撮像時間、印刷検査カメラ37の撮像視野に関する情報(撮像視野S11~S14のサイズ)を抽出する。また、抽出情報取得部11は、生産データ14から抽出情報として、基板Bにおける部品Dの実装点Pの実装座標、各実装点Pに実装される部品Dの種類、部品Dのサイズ(Ld,Wd)を抽出する。また、部品実装装置M3~M6の搬送方式や実装モードを抽出する。そして、サイクルタイム算出部12は、取得された抽出情報に基づいて、基板Bに対する印刷検査装置M2のサイクルタイムT2を算出する。
【0041】
次に、
図7を参照して、抽出情報取得部11とサイクルタイム算出部12による実装検査装置M7(作業装置)のサイクルタイムの算出の例について説明する。まず、実装検査装置M7の構成と印刷検査作業について簡単に説明する。
図7(a)において、実装検査装置M7は、X軸に沿って延びるコンベア38と、図示省略する実装検査カメラ移動機構により水平方向(X軸方向、Y軸方向)に移動する部品検査カメラ39を備えている。
【0042】
コンベア38は、上流から搬入された基板Bを所定の部品検査作業位置まで搬送速度V4で搬送する。部品検査カメラ39は、基板Bの上方を部品検査カメラ39の撮像視野S21~S29を単位として移動しながら、基板Bに実装された部品Dを撮像する。その後、実装検査作業位置の基板Bはコンベア38により搬送速度V4で搬送されて実装検査装置M7から搬出される。
【0043】
次に、実装検査装置M7のサイクルタイムT3について説明する。基板Bに対する実装検査装置M7のサイクルタイムT3は、基板Bが実装検査作業位置まで搬送される搬入時間T31、部品検査カメラ39による撮像時間T32、基板Bが実装検査作業位置から実装検査装置M7の外に搬出される搬出時間T33を合算して算出される。
【0044】
図7(a)において、搬入時間T31は、コンベア38の入口から実装検査作業位置に搬送された基板Bの先端までの距離L5と基板Bの搬送速度V4に基づいて計算される(T31=L5/V4)。また、搬出時間T33は、実装検査作業位置の基板Bの先端からコンベア38の出口までの距離L6と搬送速度V4に基づいて算出される(T33=L6/V4)。また、撮像時間T32は、1回の撮像に要する単位撮像時間と部品検査カメラ39による撮像回数に基づいて算出される(T32=撮像回数×単位撮像時間)。
【0045】
なお、撮像時間T32は、上述した算出以外に実装検査装置M7の単位撮像時間あたりの撮像面積(cm2/sec)を用いて算出してもよい。また、実装検査装置M7の搬送方式を部品実装装置M3~M6の搬送方式に基づいて設定し、基板Bの搬送タイミングを部品実装装置M3~M6の実装モードに基づいて設定してもよい。即ち実装検査装置M7の搬送方式は部品実装装置M3~M6と同じ方式に設定されることが多く、特にデュアルレーンの場合は一方のレーンの基板Bを撮像した後に他方のレーンの基板Bを撮像するため、部品検査カメラ39の移動が発生する。また、部品実装装置M3~M6の実装モードは基板Bの搬送タイミングに影響することが多く、特に交互実装の場合、基板Bに待ち時間が発生する。そのため、これらの時間も考慮して撮像時間T32が算出される。
【0046】
図7(b)において、部品検査カメラ39による撮像回数は、基板Bに実装された部品Dを包含する矩形の領域である撮像対象領域F2と、部品検査カメラ39の撮像視野S21~S29のサイズから算出される。撮像対象領域F2は、基板Bにおける部品Dの実装点Pの実装座標と部品Dの種類、サイズ(Ld,Wd)から算出される部品Dの存在範囲に基づいて算出される。実装検査装置M7では、撮像視野S21~S29のサイズだけX軸方向とY軸方向に、順に部品検査カメラ39を移動させながら、撮像対象領域F2が複数の撮像視野S21~S29に含まれるように撮像される。この例では、部品検査カメラ39による撮像回数は、9回(X軸方向に3回、Y軸方向に3回)である。
【0047】
抽出情報取得部11は、作業装置情報15から抽出情報として、実装検査装置M7の基板Bの搬送方向(X軸方向)のサイズ(距離L5,L6)、基板Bの搬送に関する情報(搬送速度V4)、単位撮像時間、部品検査カメラ39の撮像視野に関する情報(撮像視野S21~S29のサイズ)を抽出する。また、抽出情報取得部11は、生産データ14から抽出情報として、基板Bにおける部品Dの実装点Pの実装座標、各実装点Pに実装される部品Dの種類、部品Dのサイズ(Ld,Wd)を抽出する。そして、サイクルタイム算出部12は、取得された抽出情報に基づいて、基板Bに対する実装検査装置M7のサイクルタイムT3を算出する。
【0048】
次に、
図8を参照して、抽出情報取得部11とサイクルタイム算出部12によるリフロー装置M8(作業装置)のサイクルタイムの算出の例について説明する。まず、リフロー装置M8の構成と基板加熱作業について簡単に説明する。
図8において、リフロー装置M8は、基台40上にX軸に沿って延びるコンベア41と、複数のヒータHを備えている。搬入口42からリフロー装置M8に投入された基板Bは、コンベア41により搬送速度V5で移動しながらヒータHで加熱され、搬出口43から搬出される。コンベア41には、複数の基板Bの先端の距離が一定の搬送間隔L7で載置され、順にヒータHで加熱される。
【0049】
次に、リフロー装置M8のサイクルタイムT4について説明する。基板Bに対するリフロー装置M8のサイクルタイムT4は、複数の基板Bをコンベア41に載せる搬送間隔L7と基板Bの搬送速度V5に基づいて算出される(T4=L7/V5)。すなわち、搬送間隔L7でコンベア41に載せられた基板Bは、サイクルタイムT4毎に搬出口43から搬出される。なお、基板Bのコンベア41への搭載が、先行する基板Bの後端と搭載する基板Bの先端の距離(搬送間隔L8)で定義されている場合、サイクルタイムT4は、搬送間隔L8、基板Bの長さLb、搬送速度V5に基づいて算出される(T4=(L8+Lb)/V5)。
【0050】
なお、搬送速度V5は、基板Bにおける部品Dの種類によって係数値を用いて調整してもよい。例えば、部品Dに熱に弱い部品が含まれる場合、熱による部品Dへのダメージを避けるために搬送速度V5を上げる傾向がある。そのため、そのような部品Dを含む場合、搬送速度V5に係数値をかけて速度を速くしてもよい。
【0051】
抽出情報取得部11は、作業装置情報15から抽出情報として、リフロー装置M8の基板Bの搬送に関する情報(搬送速度V5と基板Bをコンベア41に載せる搬送間隔L7、または、搬送間隔L8)を抽出する。そして、サイクルタイム算出部12は、取得された抽出情報に基づいて、基板Bに対するリフロー装置M8のサイクルタイムT4を算出する。
【0052】
上記のように、基板Bをコンベア30,36,38で作業位置まで搬送して作業を行う印刷装置M1、印刷検査装置M2、実装検査装置M7では、搬入時間T11,T21,T31と搬出時間T16,T23,T33を含むサイクルタイムT1,T2,T3が算出される。なお、上記は、搬出時間T16,T23,T33を基板Bの先端がコンベア30,36,38の出口に到達する時間で定義されているが、これに限定されることはない。例えば、搬出時間を基板Bの後端がコンベアの出口から排出される時間で定義する場合は、搬出時間T16,T23,T33に基板Bの長さLbと基板Bの搬送速度V1,V3,V4に基づいて算出される時間(Lb/V1、Lb/V3、Lb/V4)を加算してサイクルタイムT1,T2,T3が算出される。
【0053】
その場合、抽出情報は、基板Bの搬送方向のサイズ(基板Bの長さLb)を含み、サイクルタイム算出部12は、作業装置の基板Bの搬送に関する情報(基板Bの搬送速度V1,V3,V4)に基づいて、サイクルタイムT1,T2,T3を算出する。
【0054】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、部品実装装置M3~M6と部品実装装置M3~M6とは異なる作業装置(印刷装置M1、印刷検査装置M2、実装検査装置M7、リフロー装置M8)とを含む部品実装ラインAで基板Bに部品Dを実装した実装基板を生産する際に、部品実装装置M3~M6で使用される生産データ14の少なくとも一部である抽出情報を取得する抽出情報取得部11と、抽出情報に基づいて、基板Bに対する部品実装装置M3~M6とは異なる作業装置のサイクルタイムT1~T4を算出するサイクルタイム算出部12と、を備える、サイクルタイム推定システムである。
【0055】
これによって、他の作業装置(部品実装装置M3~M6)に関する情報から作業装置(印刷装置M1、印刷検査装置M2、実装検査装置M7、リフロー装置M8)のサイクルタイムを精度よく推定することができる。
【0056】
なお、上述した固定値はオペレータが入力してもよいが、作業装置を製造する製造会社が提供する装置仕様で設定されるスペック値を用いてもよい。即ち、記憶部13に製造会社毎の作業装置のスペック値を機種情報として記憶させて、オペレータが生産に使用する作業装置の機種を設定することで、自動的に固定値が設定されるようにしてもよい。このようにすることで、固定値の入力時間を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のサイクルタイム推定システムおよびサイクルタイム推定方法は、他の作業装置に関する情報から作業装置のサイクルタイムを精度よく推定することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0058】
3 管理コンピュータ(生産能力推定システム)
30、36、38、41 コンベア
31 マスク
31a 開口
35 スキージ
37 印刷検査カメラ(カメラ)
39 部品検査カメラ(カメラ)
B 基板
D 部品
L1~L6 距離(作業装置の基板の搬送方向のサイズ)
L7、L8 搬送間隔(基板をコンベアに載せる間隔)
Ld 長さ(部品のサイズ)
M1 印刷装置(作業装置)
M2 印刷検査装置(作業装置)
M3~M6 部品実装装置(作業装置)
M7 実装検査装置(作業装置)
M8 リフロー装置(作業装置)
P 実装点
Pst ペースト
S11~S14、S21~S29 撮像視野
Wd 幅(部品のサイズ)