(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103536
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】トレーサビリティ管理装置、トレーサビリティ管理方法及びトレーサビリティ管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230720BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004100
(22)【出願日】2022-01-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504381021
【氏名又は名称】株式会社JEMS
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】平沢 智史
(72)【発明者】
【氏名】章 真怡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】情報の正確性について信頼性を向上したトレーサビリティ管理装置、トレーサビリティ管理方法及びトレーサビリティ管理プログラムを提供する。
【解決手段】サプライチェーンの参加者が取り扱う商品に係る情報を取得する第1取得手段(通信部13)と、第1取得手段が取得した情報を、当該商品の前段階の商品に係る情報と紐付けて、記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121に記憶させる記憶制御手段(制御部11)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライチェーンの参加者が取り扱う商品に係る情報を取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段が取得した情報を、当該商品の前段階の商品に係る情報と紐付けて、記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
を備えることを特徴とするトレーサビリティ管理装置。
【請求項2】
前記第1取得手段が取得する情報は、前記参加者に入荷した商品である入荷商品に係る情報である入荷商品情報と、前記入荷商品の加工又は前記入荷商品からの新たな商品の製造に係る情報である製造加工情報と、前記参加者が出荷した商品である出荷商品に係る情報である出荷商品情報と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項3】
前記記憶手段はブロックチェーン台帳を備え、
前記記憶制御手段は、前記入荷商品情報、前記製造加工情報及び前記出荷商品情報のそれぞれについてブロックを形成し、一の前記参加者が出荷した商品に係る前記出荷商品情報のブロックの後に、当該商品を入荷した他の前記参加者に係る前記入荷商品情報のブロックが連結されるようにして、前記第1取得手段が取得した情報を前記ブロックチェーン台帳に記憶させることを特徴とする請求項2に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項4】
前記入荷商品情報及び前記出荷商品情報は、商品のロット番号に係る情報を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項5】
前記製造加工情報は、前記入荷商品の加工又は前記入荷商品からの新たな商品の製造によって発生する温室効果ガスに係る情報を含むことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項6】
前記記憶手段に記憶された前記商品に係る情報を、前記サプライチェーンの参加者が使用する端末へと送信手段によって送信させる送信制御手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項7】
前記送信制御手段が送信させる情報は、当該商品に至るまでに行われた製造又は加工によって発生した温室効果ガスの合計量に係る情報を含むことを特徴とする請求項6に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項8】
前記送信制御手段が送信させる情報は、当該商品に至るまでの商品の流れを示すサンキーダイアグラムを含むことを特徴とする請求項6又は7に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項9】
前記商品を特定可能な情報を含む二次元コードから読み取られた情報を取得する第2取得手段を備え、
前記送信制御手段は、前記第2取得手段が取得した情報から特定される前記商品に係る情報を、前記端末へと送信させることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項10】
サプライチェーンの参加者が取り扱う商品に係る情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した情報を、当該商品の前段階の商品に係る情報と紐付けて、記憶手段に記憶させる記憶制御ステップと、
を含むことを特徴とするトレーサビリティ管理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
サプライチェーンの参加者が取り扱う商品に係る情報を取得する取得手段、
前記取得手段が取得した情報を、当該商品の前段階の商品に係る情報と紐付けて、記憶手段に記憶させる記憶制御手段、
として機能させることを特徴とするトレーサビリティ管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーサビリティ管理装置、トレーサビリティ管理方法及びトレーサビリティ管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、環境意識の高まりに伴い、製品の原料について、トレーサビリティ、すなわち、原料の由来の追跡可能性を確保することが重要となっている。
そこで、製品の原料のトレーサビリティを確保することを目的としたシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静脈産業、すなわち、使用済み製品を回収し、再使用、再生利用等を行う産業に係るサプライチェーンにおいては、リサイクル原料を使用することから、特にトレーサビリティの確保が重要となる。そこで、入力ミス、改ざん等によって誤った情報が記憶されることを防ぎ、信頼性の高いトレーサビリティの管理を実現することが求められるが、従来のシステムは、誤った情報が記憶されることに対する対策が十分ではなく、記憶される情報の正確性について十分な信頼性が確保されたものではなかった。
【0005】
本発明の課題は、情報の正確性について信頼性を向上したトレーサビリティ管理装置、トレーサビリティ管理方法及びトレーサビリティ管理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、トレーサビリティ管理装置において、
サプライチェーンの参加者が取り扱う商品に係る情報を取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段が取得した情報を、当該商品の前段階の商品に係る情報と紐付けて、記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記第1取得手段が取得する情報は、前記参加者に入荷した商品である入荷商品に係る情報である入荷商品情報と、前記入荷商品の加工又は前記入荷商品からの新たな商品の製造に係る情報である製造加工情報と、前記参加者が出荷した商品である出荷商品に係る情報である出荷商品情報と、を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記記憶手段はブロックチェーン台帳を備え、
前記記憶制御手段は、前記入荷商品情報、前記製造加工情報及び前記出荷商品情報のそれぞれについてブロックを形成し、一の前記参加者が出荷した商品に係る前記出荷商品情報のブロックの後に、当該商品を入荷した他の前記参加者に係る前記入荷商品情報のブロックが連結されるようにして、前記第1取得手段が取得した情報を前記ブロックチェーン台帳に記憶させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記入荷商品情報及び前記出荷商品情報は、商品のロット番号に係る情報を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記製造加工情報は、前記入荷商品の加工又は前記入荷商品からの新たな商品の製造によって発生する温室効果ガスに係る情報を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記記憶手段に記憶された前記商品に係る情報を、前記サプライチェーンの参加者が使用する端末へと送信手段によって送信させる送信制御手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記送信制御手段が送信させる情報は、当該商品に至るまでに行われた製造又は加工によって発生した温室効果ガスの合計量に係る情報を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記送信制御手段が送信させる情報は、当該商品に至るまでの商品の流れを示すサンキーダイアグラムを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項6から8のいずれか一項に記載のトレーサビリティ管理装置において、
前記商品を特定可能な情報を含む二次元コードから読み取られた情報を取得する第2取得手段を備え、
前記送信制御手段は、前記第2取得手段が取得した情報から特定される前記商品に係る情報を、前記端末へと送信させることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、トレーサビリティ管理方法において、
サプライチェーンの参加者が取り扱う商品に係る情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した情報を、当該商品の前段階の商品に係る情報と紐付けて、記憶手段に記憶させる記憶制御ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、トレーサビリティ管理プログラムにおいて、
コンピュータを、
サプライチェーンの参加者が取り扱う商品に係る情報を取得する取得手段、
前記取得手段が取得した情報を、当該商品の前段階の商品に係る情報と紐付けて、記憶手段に記憶させる記憶制御手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、情報の正確性について信頼性を向上したトレーサビリティ管理装置、トレーサビリティ管理方法及びトレーサビリティ管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るトレーサビリティ管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るトレーサビリティ管理システムにおけるデータ登録時の各プレイヤーによる登録処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係るトレーサビリティ管理システムにおけるデータ登録時の全体の登録の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係るトレーサビリティ管理システムにおけるデータ照会時の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係るトレーサビリティ管理システムにおける詳細情報ウェブページの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1から
図5に基づいて、本発明の実施形態であるトレーサビリティ管理システム100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0020】
[第1 構成の説明]
トレーサビリティ管理システム100は、
図1に示すように、本システムの管理者が管理するサーバである管理サーバ1と、本システムを利用するサプライチェーンの参加者(以下「プレイヤー」という。)のそれぞれが所持する端末装置であるプレイヤー端末2と、を備えて構成されている。また、各装置の間は、
図1に示すように通信ネットワークNを介して接続されている。
なお、本実施形態においてプレイヤーは、後述のように静脈産業のサプライチェーンに参加するリサイクル業者、材料メーカー、製造メーカー等である。
【0021】
[1 管理サーバ]
管理サーバ1は、例えば、本システムを管理・運営する企業等が保有するPC(Personal Computer)、WS(Work Station)等の情報機器であり、後述のように、プレイヤー端末2によって入力された情報のブロックチェーン台帳121への記憶等を行う。
管理サーバ1は、
図1に示すように、例えば、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、を備えて構成されている。
【0022】
制御部11は、管理サーバ1の動作を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、CPUと、記憶部12に記憶されたプログラム等との協働により、管理サーバ1の各部を統括制御する。
【0023】
記憶部12は、管理サーバ1の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等により構成され、プログラムデータ等の管理サーバ1の運用に必要となるデータを、制御部11から読み書き可能に記憶する。
【0024】
記憶部12には、後述のようにプレイヤー端末2によって入力された情報を記憶するためのブロックチェーン台帳121と、プレイヤーが情報の入力時に使用するテンプレートが記憶されたテンプレートデータベース122と、が備えられている。
【0025】
ブロックチェーン台帳121は、ハッシュ値を有するブロックが連結された一般的なブロックチェーンとしての構造を有する台帳である。
ただし、不特定の参加者が書き込むことができるパブリック型のチェーンではなく、管理者からの許可を得たものしか書き込むことができないコンソーシアム型のチェーンであることが好ましい。
【0026】
テンプレートデータベース122は、後述のように製造/加工登録で使用するテンプレートが記憶されたデータベースである。
【0027】
また、記憶部12には、管理サーバ1を動作させるための制御部11への各種命令を含むプログラムが記憶され、後述の動作の説明において述べる管理サーバ1の動作は、このようなプログラムと制御部11との協働によって実現されることとなる。
【0028】
通信部13は、管理サーバ1と、プレイヤー端末2との間の通信に用いられる部分であり、例えば、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタなどを有する通信インターフェイスであり、制御部11の制御の元、所定の通信プロトコルを用いて、通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。
【0029】
[2 プレイヤー端末]
プレイヤー端末2は、例えば、本システムを利用するサプライチェーンの参加者であるプレイヤーのそれぞれが所持するPC、スマートフォン、タブレット端末等の情報機器であり、後述のように、管理サーバ1の記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121への情報の入力等に用いられる。
プレイヤー端末2は、
図1に示すように、例えば、管理サーバ1と同様に、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、を備えると共に、さらに、表示部24と、操作部25と、を備えて構成されている。
【0030】
制御部21及び通信部23の構成は、それぞれ管理サーバ1における制御部11及び通信部13と変わるところはない。
記憶部22には、後述の動作の説明において述べるようにプレイヤー端末2を動作させるための制御部21への各種命令を含むプログラムが記憶されている。
【0031】
表示部24は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイを備え、制御部21から出力された表示制御信号に基づいた画像をディスプレイに表示する。
【0032】
操作部25は、例えば、文字入力キー、数字入力キー、その他各種機能に対応付けられたキーを有するキーボード等を備え、プレイヤー端末2の使用者からの操作入力を受け付けて、操作入力に応じた操作信号を制御部21へと出力する。操作部25は、例えば、表示部24と一体的に形成されたタッチパネル等であってもよく、プレイヤー端末2の使用者による操作入力を受け付けることができるものであれば特に限定されない。
【0033】
[3 通信ネットワーク]
通信ネットワークNは、例えば、インターネット、電話回線網、携帯電話通信網、無線LAN通信網等であり、
図1に示すように、トレーサビリティ管理システム100を構成する各装置の間を接続する。
通信ネットワークNとしては、上記のように各装置間を繋ぎ、これらの間でデータの送受信を行うことが可能なものであれば特に限定されない。
【0034】
[第2 動作の説明]
以下、本実施形態に係るトレーサビリティ管理システム100の使用時の動作について説明する。
【0035】
[1 ステップS1:データ登録]
プレイヤーが、当該プレイヤーが取り扱う廃棄物、材料、製品等に係る情報を、管理サーバ1の記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121に登録する際の本システムの動作について、
図2及び
図3のフローチャートに従って説明する。
なお、本実施形態においては、各プレイヤーが取り扱い、他のプレイヤーとの間で取り引きされる物品を、廃棄物、材料、製品等の種別を問わず広く「商品」という。
【0036】
なお、情報の登録時には、いずれのプレイヤーが登録する場合も、プレイヤーがプレイヤー端末2の操作部25を用いて入力した情報が、通信部23から通信ネットワークNを介して管理サーバ1へと送信され、通信部13によってプレイヤー端末2から送信された情報を受信した管理サーバ1において、制御部11が、受信した情報を、記憶部12のブロックチェーン台帳121に書き込むこととなる。
【0037】
また、制御部11が記憶部12のブロックチェーン台帳121に書き込む前に、登録される情報についての承認処理がなされ、承認処理を経て登録を承認された情報のみが、ブロックチェーン台帳121に書き込まれることとなる。
【0038】
承認を行う者は特に限定されず、例えば、プレイヤーの内の特定のものを代表者として当該代表者が承認を行うようにしてもよいし、プレイヤーの内の所定の割合(2/3等)が賛成した場合に登録が承認されるようにしてもよい。
【0039】
なお、プレイヤーによる情報の入力は、必ずしも本システムによって提供されるUI(User Interface)を利用して直接なされることを要せず、他のシステムにおいて入力された情報を、Web-API等を利用したデータ連携によって管理サーバ1が取得するようにしてもよい。
【0040】
[(1) 各プレイヤーによる登録処理の流れ]
まず、各プレイヤーによる登録処理(入荷登録、在庫登録、製造/加工登録及び出荷登録)の流れについて説明する。
【0041】
なお、管理サーバ1の制御部11は、通信部13によって情報を受信した際に、入荷登録時に入力された情報、在庫登録時に入力された情報、製造/加工登録時に入力された情報及び出荷登録時に入力された情報のそれぞれについて個別にブロックを形成し、これらが登録された順に連結されるようにして、ブロックチェーン台帳121に記憶させることとなる。
また、特定の商品についてあるプレイヤー(プレイヤーAとする。)が出荷登録まで行い、他のプレイヤー(プレイヤーBとする)が当該商品を入荷し、入荷登録を行う場合、制御部11は、プレイヤーAによる出荷登録に係るブロックの後に、プレイヤーBによる入荷登録に係るブロックが連結されるようにして、ブロックチェーン台帳に記憶させる。これによって、プレイヤーBによる製造又は加工によって生成された商品と、その前段階の商品であるプレイヤーAが出荷した商品と、を紐づけることができる。
【0042】
[ア ステップS1-a:入荷登録]
他のプレイヤーから商品が入荷した場合、商品が入荷したプレイヤーは、まず入荷登録を行う。入荷登録においては、入荷した商品について、例えば、当該商品の種別(廃棄物、材料、製品等の区別)、名称、入荷数、入荷日等の情報に加えて、入荷した商品のロット番号を登録する。
【0043】
[イ ステップS1-b:在庫登録]
続いてプレイヤーは、在庫登録を行う。在庫登録においては、例えば、入荷した商品について、同一のロット番号の商品の入荷後の在庫数(入荷数と元々の在庫数を合算した数)等を登録する。
【0044】
[ウ ステップS1-c:製造/加工登録]
プレイヤーは、入荷した商品を加工し、又は入荷した商品から新たな商品を製造する場合に、実施する製造又は加工に係る登録(製造/加工登録)を行う。製造/加工登録は、以下流れで行われる。
【0045】
[(ア) ステップS1-c-1:テンプレート選択]
製造/加工登録を行う場合、まず、プレイヤーは、使用するテンプレートを選択する。
すなわち、管理サーバ1の記憶部12には、過去に登録されたことのある商品について、ロット情報と組成情報とを紐付けたテンプレートが網羅的に記憶されたテンプレートデータベース122が備えられており、プレイヤーは、テンプレートデータベース122に記憶されたテンプレートから、使用するテンプレートを選択すればよい。テンプレートが選択された場合、ロット登録(ステップS1-c-2)及び組成登録(ステップS1-c-3)において登録することを要する情報のうち、テンプレートに含まれる情報については、自動的に入力されることとなる。
【0046】
なお、プレイヤーは、テンプレートを使用せず手入力することを選択することも可能である。過去に登録されたことがなくテンプレートが存在しない商品については、必然的に手入力を行うこととなる。
【0047】
[(イ) ステップS1-c-2:ロット登録]
続いてプレイヤーは、ロット情報の登録を行う。具体的には、製造/加工方式、製品情報及び製造情報を登録する。
【0048】
製造/加工方式としては、製造又は加工時に使用する具体的な方式(例えば、ブロー成形、押出成形等)について登録する。
製品情報としては、製造又は加工によって新たに生成される商品の種別、名称、品番等について登録する。製造又は加工を行ったメーカーや、画像の登録を行うようにしてもよい。
製造情報としては、製造又は加工によって新たに生成された商品について、製造日、ロット番号及び総重量等を登録する。
【0049】
[(ウ) ステップS1-c―3:組成登録]
続いてプレイヤーは、組成情報の登録を行う。具体的には、当該製造又は加工に使用する材料及び当該製造又は加工で生じる副産物又は廃棄物を登録する。
【0050】
また、組成登録時に、プレイヤーは、当該製造又は加工によって生じるCO2等のGHG(温室効果ガス)の排出量も登録する。これによって、管理サーバ1は、プレイヤーによって製造又は加工が行われる度に、当該製造又は加工によって発生するGHGに係る情報を取得することが可能となる。
なお、GHGの排出量は、プレイヤー自ら算出の上、入力するようにしてもよいし、製造/加工方式等の入力されたその他のデータを使用して、管理サーバ1の制御部11が自ら算出することで取得するようにしてもよい。
【0051】
[(エ) ステップS1-c-4:書類登録]
続いてプレイヤーは、検査証明書、取引証明書等の書類のデータの登録を行う。
【0052】
[エ ステップS1-d:出荷登録]
製造又は加工によって新たに生成された商品を出荷する場合、商品を出荷するプレイヤーは、出荷登録を行う。出荷登録においては、出荷する商品について、例えば、当該商品の種別(廃棄物、材料、製品等の区別)、名称、出荷数、出荷日等の情報に加えて、出荷した商品のロット番号を登録する。
このように、入荷登録及び出荷登録の両者において、登録される情報がロット番号に係る情報を含むことで、複数のプレイヤーによる登録内容を、ロット番号によっても紐付けることが可能となる。
【0053】
[(2) 全体の流れ]
本システムを利用して、静脈産業におけるトレーサビリティの管理を行う場合の全体の流れ、すなわち、いかなるプレイヤーがいかなる順で登録を行うかについて、プラスチック製品のリサイクルが行われる場合を一例として説明する。
なお、この場合、各プレイヤーが、上記ステップS1-aからステップS1-dの過程を経て情報を登録することとなる。
【0054】
プラスチック製品のリサイクルが行われる場合、まず、リサイクル業者が登録を行う(ステップS1-1)。
具体的には、例えば、廃棄物の入荷、廃棄物の在庫、廃棄物に対して実施した加工及び加工後の再生材の出荷についての登録を行う。
【0055】
続いて、第1の材料メーカーが登録を行う(ステップS1-2)。
具体的には、例えば、リサイクル業者から出荷された再生材の入荷、当該再生材の在庫、当該再生材に対して実施した加工及び加工後の材料の出荷についての登録を行う。
【0056】
続いて、第2の材料メーカーが登録を行う(ステップS1-3)。
具体的には、例えば、第1の材料メーカーから出荷された材料の入荷、当該材料の在庫、当該材料に対して実施した加工及び加工後の材料の出荷についての登録を行う。
【0057】
続いて、製造メーカーが登録を行う(ステップS1-4)。
具体的には、例えば、第2の材料メーカーから出荷された材料の入荷、当該材料の在庫、当該材料を用いて行った製品の製造及び製造後の製品の出荷についての登録を行う。
【0058】
続いて、ブランドメーカーが登録を行う(ステップS1-5)。
具体的には、例えば、製造メーカーから出荷された製品の入荷、当該製品の在庫、当該製品を用いて行った製品の製造及び製造後の製品の出荷についての登録を行う。
【0059】
続いて、小売店が登録を行う(ステップS1-6)。
具体的には、例えば、ブランドメーカーから出荷された製品の入荷及び当該製品の在庫についての登録を行う。
【0060】
なお、材料メーカーは、第1、第2の2社に限られず、3社以上の材料メーカーを経由するようにしてもよい。
【0061】
上記の過程を経ることで、プラスチック製品のリサイクル時に、廃棄物に係る情報から小売店で販売される製品に係る情報までが紐付けられて、管理サーバ1の記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121に記憶されることとなる。
【0062】
[2 ステップS2:データ照会]
続いて、プレイヤーが、管理サーバ1の記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121に登録された商品について由来の照会を行う際の本システムの動作について、
図4のフローチャートに従って説明する。
【0063】
プレイヤーが、管理サーバ1の記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121に登録された商品について由来の照会を行う場合、まず、プレイヤー端末2から通信ネットワークNを介して管理サーバ1にアクセスし、記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121に記憶された商品の在庫に係る情報から、由来の照会を行う対象とする商品を選択する(ステップS2-1)。
【0064】
管理サーバ1の記憶部12に備えられたブロックチェーン台帳121には、各商品の在庫について、ロット番号ごとに情報が記憶されていることから、プレイヤーは、例えば、ブロックチェーン台帳121に記憶された商品の在庫の一覧が表示される所定のウェブページにおいて、照会対象とする商品を選択するようにすればよい。
【0065】
また、例えば、商品毎(ロット番号毎)に、当該商品を特定可能な識別子等の情報を含むQRコード(登録商標)等の二次元コードを予め付与しておき、印刷された二次元コードを、プレイヤーがプレイヤー端末2を用いて読み取らせることで、照会対象とする商品を選択するようにしてもよい。
この場合、プレイヤー端末2が、二次元コードから読み取られた情報を通信部23から通信ネットワークNを介して管理サーバ1へと送信し、当該情報を通信部13によって受信した管理サーバ1において、制御部11が、受信した情報から照会対象とする商品を特定の上、特定した商品に係る情報を、プレイヤー端末2へと送信させることとなる。
【0066】
プレイヤーによって照会対象とする商品の選択がなされると、管理サーバ1の制御部11は、当該商品に関する情報を、通信部13から通信ネットワークNを介して、プレイヤー端末2へと送信する(ステップS2-2)。
【0067】
管理サーバ1がプレイヤー端末2へと送信する情報は、当該商品の種別、名称、ロット番号等の基本情報に加え、当該商品の由来(当該商品に至るまでに経由した商品の流れ)及び当該商品に至るまでに実施された製造又は加工によって発生したGHGの合計量に係る情報を含む。
GHGの合計量としては、当該商品に至るまでに、製造/加工登録時に登録されたGHG排出量を合計した値を用いればよい。
【0068】
具体的には、例えば、
図5に示すような商品に係る詳細情報が記載されたウェブページ(詳細情報ウェブページP1)に係るデータを、プレイヤー端末2へと送信すればよい。
【0069】
詳細情報ウェブページP1には、
図5に示すように、ステップS2-1で選択された商品について、まず、廃棄物、材料、製品等の種別、メーカー、名称、品番、ロット番号、製造日、在庫の総重量等の基本的な情報が表示される基本情報表示部P11が設けられている。
また、検査証明書、取引証明書等のステップS1-c-4で登録された書類についての情報が表示される登録書類情報表示部P12が設けられている。
【0070】
さらに、詳細情報ウェブページP1には、供給履歴表示部P13に、当該商品の由来を示すダイアグラムである供給履歴ダイアグラムD1が表示されている。
【0071】
供給履歴ダイアグラムD1は、矢印の太さが流れの量を示すいわゆるサンキーダイアグラムであり、
図5に示すように、当該商品に至る各商品について、各商品がいかなる商品から生成され、その後にいかなる商品の生成に利用されたかが、その使用量と共に示されている。
【0072】
また、供給履歴ダイアグラムD1には、
図5に示すように、各商品に係るGHGの排出量についても表示されている。
【0073】
管理サーバ1から送信された情報を通信部23によって受信したプレイヤー端末2においては、制御部21が、受信した情報を、表示部24に表示させる(ステップS2-3)。
詳細情報ウェブページP1に係るデータを受信した場合には、プレイヤー端末2の制御部21は、詳細情報ウェブページP1を表示部24に表示させればよい。
【0074】
[第3 効果の説明]
次に、本実施形態に係るトレーサビリティ管理システム100の効果について説明する。
【0075】
本実施形態に係るトレーサビリティ管理システム100によれば、管理サーバ1において、プレイヤーが取り扱う廃棄物、材料、製品等の商品に係る情報を取得した上で、取得した情報を、当該商品を構成する前段階の商品、すなわち、例えば、当該商品に加工される前の材料、当該商品の製造に使用された材料、製品等に係る情報と紐付けて、記憶部12のブロックチェーン台帳121に記憶させる。
これによって、管理サーバ1において、各商品に係る情報が、自動的に前段階の商品に係る情報と紐付けられて記憶部12に記憶されることから、各商品の紐付けについて入力ミス等によって誤りが生じるおそれが小さくなり、トレーサビリティの管理に関し、記憶された情報の信頼性を向上させることができる。
【0076】
また、管理サーバ1において、取得した情報を記憶する記憶手段がブロックチェーン台帳121であることで、記憶された情報の改ざんが困難となり、トレーサビリティの管理に関し、記憶された情報の信頼性を一層向上させることができる。
【0077】
また、管理サーバ1が取得する商品に係る情報が、商品の入荷に係る情報と、入荷した商品の加工又は入荷した商品からの新たな商品の製造に係る情報と、入荷した商品が加工され又は入荷した商品から製造された商品の出荷に係る情報と、を含み、ブロックチェーン台帳121に、各情報のそれぞれについて個別にブロックを形成し、あるプレイヤーによる商品の出荷に係る情報のブロックの後に、当該商品を入荷した他のプレイヤーによる商品の入荷に係る情報のブロックが連結されるようにして、ブロックチェーン台帳121に記憶させることで、商品を出荷するプレイヤーと、商品を入荷するプレイヤーとの間で、商品を紐付けて記憶させることができる。
【0078】
また、管理サーバ1が取得する商品に係る情報が、商品の入荷に係る情報と、入荷した商品の加工又は入荷した商品からの新たな商品の製造に係る情報と、入荷した商品が加工され又は入荷した商品から製造された商品の出荷に係る情報と、を含み、商品の入荷に係る情報及び商品の出荷に係る情報が、共に商品のロット番号に係る情報を含むことによって、商品を出荷するプレイヤーと、商品を入荷するプレイヤーとの間で、ロット番号によっても商品を紐付けて記憶させることができる。
【0079】
また、管理サーバ1が取得する入荷した商品の加工又は入荷した商品からの新たな商品の製造に係る情報が、商品の加工又は新たな商品の製造によって発生する温室効果ガスに係る情報を含むことで、管理サーバ1において、各商品について、その製造に至るまでに排出された温室効果ガスの合計量に係る情報を集計することが可能となる。
【0080】
また、管理サーバ1において、記憶部12のブロックチェーン台帳121に記憶された商品に係る情報を、プレイヤーからの要求に応じて、商品単位でプレイヤー端末2へと送信することで、プレイヤーが、ブロックチェーン台帳121に記憶された情報を照会することが可能となる。
【0081】
また、管理サーバ1からプレイヤー端末2へと送信される情報が、照会対象となる商品に至るまでに行われた製造又は加工によって発生した温室効果ガスの合計量に係る情報を含むことで、プレイヤーは、各商品の製造に至るまでに各プレイヤーによって排出された温室効果ガスの合計量に係る情報を取得することが可能となる。
【0082】
また、管理サーバ1からプレイヤー端末2へと送信される情報が、照会対象となる商品に至るまでの商品の流れを示すサンキーダイアグラムを含むことで、プレイヤーは、当該商品に至るまでの商品の流れ及びその流量に係る情報を、一覧的に把握することが可能となる。
【0083】
また、予め、記憶部12のブロックチェーン台帳121に記憶された商品について、商品ごとに付された識別子等の当該商品を特定可能な情報を含む二次元コードを発行した上で、管理サーバ1において、当該二次元コードから読み取られた情報を取得した場合に、当該二次元コードから読み取られた情報から特定される商品に係る情報をプレイヤー端末2へと送信することで、二次元コードを用いて商品を特定することが可能となる。
これによって、例えば、商品を出荷するプレイヤーにおいて当該商品を特定する情報を含む二次元コードを貼付して商品を出荷することで、商品を入荷するプレイヤーにおいて、プレイヤー端末2を用いて当該商品に貼付された二次元コードを読み取るのみで、入荷した商品に係る情報を取得することが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
100 トレーサビリティ管理システム
1 管理サーバ(トレーサビリティ管理装置)
11 制御部(記憶制御手段、送信制御手段)
12 記憶部(記憶手段)
121 ブロックチェーン台帳
13 通信部(第1取得手段、送信手段、第2取得手段)
2 プレイヤー端末(端末)
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 表示部
25 操作部
N 通信ネットワーク