(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103540
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】サーボ弁評価システムおよびサーボ弁評価方法
(51)【国際特許分類】
G01M 13/003 20190101AFI20230720BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20230720BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
G01M13/003
G05D7/06 Z
F16K51/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004106
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠太
【テーマコード(参考)】
2G024
3H066
5H307
【Fターム(参考)】
2G024AA18
2G024BA18
2G024CA16
2G024EA13
2G024FA06
2G024FA15
3H066AA04
3H066BA38
5H307BB05
5H307DD17
5H307EE02
5H307EE08
5H307EE12
5H307FF01
5H307HH04
(57)【要約】
【課題】サーボ弁の性能を正確に評価することができる流量データを入手可能なサーボ弁評価システムおよびサーボ弁評価方法の提供を目的とする。
【解決手段】サーボ弁評価システム1は、流量を指示する検査波形W1の指令の入力に対するサーボ弁Vの性能を評価するサーボ弁評価システム1であって、サーボ弁Vの流量を検知する流量センサ2と、サーボ弁Vを制御する制御装置3とを備え、制御装置3が、検査波形W1が指示する流量が0となる点を含む部分a2を時間的に伸長させる波形変更部3aを有し、波形変更部3aによって変更した後の変更後検査波形W2の電流指令(指令)Iをサーボ弁Vへ入力するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量を指示する検査波形の指令の入力に対するサーボ弁の性能を評価するサーボ弁評価システムであって、
前記サーボ弁の流量を検知する流量センサと、
前記サーボ弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記検査波形が指示する流量が0となる点を含む部分を時間的に伸長させる波形変更部を有し、前記波形変更部によって変更した後の変更後検査波形の指令を前記サーボ弁へ入力する
ことを特徴とするサーボ弁評価システム。
【請求項2】
前記波形変更部は、検査波形が指示する流量に反比例させて前記検査波形の全体を時間的に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のサーボ弁評価システム。
【請求項3】
前記波形変更部は、指示する流量の絶対値が第1閾値以下になる検査波形の部分である第1部分を時間的に伸長させるように変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のサーボ弁評価システム。
【請求項4】
前記波形変更部は、前記第1部分のうち、前記絶対値が前記第1閾値よりも小さな値に設定される第2閾値以下の部分を小流量部分とし、前記第2閾値を超える部分を大流量部分として、前記小流量部分を、前記大流量部分の伸長度合よりも前記小流量部分の伸長度合の方が大きくなるように、時間的に伸長させる
ことを特徴とする請求項3に記載のサーボ弁評価システム。
【請求項5】
前記流量センサは、回転子を備え、
前記回転子の回転に伴って発生するパルス信号に基づいて流量を測定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のサーボ弁評価システム。
【請求項6】
流量を指示する検査波形の指令の入力に対してサーボ弁の性能を評価するサーボ弁評価方法であって、
前記検査波形を前記検査波形が指示する流量に基づいて時間的に伸長するように変更する波形変更ステップと、
前記波形変更ステップによって変更した検査波形である変更後検査波形の指令を前記サーボ弁に与える入力ステップと、
前記入力ステップによって変更後検査波形の指令を与えた前記サーボ弁の流量を流量センサで検知する検知ステップとを含む
ことを特徴とするサーボ弁評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボ弁評価システムおよびサーボ弁評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボ弁は、2つのポートを有するハウジングと、ハウジング内に軸方向移動自在に挿入されるスプール等の弁体と、弁体を付勢するばねと、弁体を駆動するソレノイドとを備えており、外部の制御装置から入力される電流或いは電圧でなる指令に対してソレノイドで弁体を駆動して2つのポートのうち選択したポートから供給された指令が指示する流量の流体を出力する。より詳細には、サーボ弁は、供給される指令の値の正負に応じて2つのポートの内から一方を選択し、指令の値に応じた流量の流体を出力する。
【0003】
このようなサーボ弁は、指令が指示する流量通りに流量を出力しているか否かの検査を受けて出荷されることになる。つまり、サーボ弁へ与える指令に対して検知される流量と設計上の流量との差が許容される誤差の範囲内に収まっていれば、サーボ弁が所期の性能を満足していると言える。
【0004】
一般的に、サーボ弁の性能を評価するサーボ弁評価システムおよびサーボ弁評価方法では、流量を指示する正弦波形或いは三角波形といった検査波形の電流或いは電圧を入力としてサーボ弁に与えて、サーボ弁の流量を流量センサで監視することにより行われている。また、検査波形は、指示流量が0クロスする波形となっており、繰り返しサーボ弁に与えられることにより、サーボ弁の評価が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、サーボ弁に検査波形を与えてサーボ弁の流量が0に近づけば近づくほど、流量センサが正しくサーボ弁の流量を検知できなくなるため、従来のサーボ弁評価システムおよびサーボ弁評価方法では、サーボ弁の流量が少なくなると正しい流量の検知ができなかった。
【0007】
流量センサは、センサ原理の如何によらず、所定のサンプリング周期で流量を検知して出力するが、流量が少なくなると流量センサの時間分解能が悪化して流量の変化を捉えることができなくなるため、正確に流量を検知できなくなる。
【0008】
たとえば、容積式の流量センサでは、流路中に設置された羽根車或いは互いに歯合する一対の歯車を備えており、流路を通過する流体の流れに応じて回転する羽根車或いは歯車の回転によって発生するパルス間の時間間隔によって流量を検知する。このように、容積式の流量センサは、パルス間の時間間隔で流量を検知するので、流量が少なくなると前記パルス間の時間が長くなり、流量を正確に検知するには時間がかかることになる。つまり、流量センサは、流量が少なくなると時間分解能が低下する。しかしながら、検査波形では、流量が少なくなっても流量の変化度合が小さくならないので、流量センサは正確に流量を検知できなくなる。
【0009】
したがって、従来のサーボ弁評価システムおよびサーボ弁評価方法では、サーボ弁が電流或いは電圧に対して比例する流量を出力していても、サーボ弁の流量が少なくなる領域においてサーボ弁が実際に出力している流量と流量センサで検知した流量との間に誤差が生じてしまう。よって、サーボ弁が指令通りに流量を出力していても、
図8に示すように、サーボ弁の流量が少なくなる領域において、指令に対して流量センサで検知した流量が比例しないデータしか取得できない。
【0010】
そこで、本発明は、サーボ弁の性能を正確に評価することができる流量データを入手可能なサーボ弁評価システムおよびサーボ弁評価方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明のサーボ弁評価システムは、流量を指示する検査波形の指令の入力に対するサーボ弁の性能を評価するサーボ弁評価システムであって、サーボ弁の流量を検知する流量センサと、サーボ弁を制御する制御装置とを備え、制御装置が、検査波形が指示する流量が0となる点を含む部分を時間的に伸長させる波形変更部を有し、波形変更部によって変更した後の変更後検査波形の指令をサーボ弁へ入力するように構成されている。
【0012】
このように構成されたサーボ弁評価システムでは、波形変更部によって検査波形が指示する流量が0となる点を含む部分の時間スケールを伸長させる変形を行って得た変更後検査波形の指令をサーボ弁に入力するので、サーボ弁が出力する流量が少なくなると流量の時間変化が小さくなる。流量センサは、流量が少なくなって時間分解能が悪化しても、流量を正確に計測できる時間的余裕が与えられるので、流量が少なくなる領域において正確にサーボ弁の流量を検知できる。
【0013】
また、サー弁評価方法は、流量を指示する検査波形の指令の入力に対してサーボ弁の性能を評価するサーボ弁評価方法であって、検査波形を検査波形が指示する流量に基づいて時間的に伸長するように変更する波形変更ステップと、波形変更ステップによって変更した検査波形である変更後検査波形の指令をサーボ弁に与える入力ステップと、入力ステップによって変更後検査波形の指令を与えたサーボ弁の流量を流量センサで検知する検知ステップとを含んでいる。
【0014】
このように構成されたサーボ弁評価方法によれば、流量センサは、流量が少なくなって時間分解能が悪化しても、流量を正確に計測できる時間的余裕が与えられて流量が少なくなる領域において正確にサーボ弁の流量を検知できる。
【0015】
さらに、サーボ弁評価システムにおける波形変更部は、検査波形が指示する流量に反比例させて検査波形の全体を時間的に変更するように構成されてもよい。このように構成されたサーボ弁評価システムでは、流量センサの時間分解能が悪化しない検査波形のうち指示流量が多い部分については時間スケールが圧縮されて、流量センサの時間分解能が悪化する検査波形のうち指示流量が少ない部分が時間的に伸長されるので、検査時間に要する時間の長大化の回避と流量が少なくなる領域での正確な流量検知とを両立できる。
【0016】
また、サーボ弁評価システムにおける波形変更部は、検査波形が指示する流量の絶対値が第1閾値以下の第1部分について時間的に伸長させて変更後検査波形を得てもよい。このように構成されたサーボ弁評価システムによれば、指示流量が少ない第1部分が時間的に伸長されるため、サーボ弁の流量が少なくなる領域において流量センサが正確に流量を検知できるようになり、サーボ弁の性能を正確に評価することができる流量データを入手できる。
【0017】
さらに、サーボ弁評価システムにおける波形変更部は、第1部分のうち、絶対値が第1閾値よりも小さな値に設定される第2閾値以下の部分を小流量部分とし、第2閾値を超える部分を大流量部分として、小流量部分を、大流量部分の伸長度合よりも小流量部分の伸長度合の方が大きくなるように、時間的に伸長させてもよい。このように構成されたサーボ弁評価システムによれば、第1閾値と第2閾値とで検査波形に対して時間的に伸長させる第1部分を小流量部分と大流量部分の二つの区分に区分けして、小流量部分と大流量部分とに個別に時間を伸長させる伸長度合を設定できるので、流量センサの時間分解能に応じて検査波形の時間の伸長を最適化でき、検査時間に要する時間の長大化を回避しつつも流量が少なくなる領域での正確な流量検知を実現できる。
【0018】
また、サーボ弁評価システムにおける流量センサが容積式流量センサであってもよく、このような容積式流量センサを用いても流量が少なくなる領域での正確な流量検知を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のサーボ弁評価方法およびサーボ弁評価システムによれば、サーボ弁の性能を正確に評価することができる流量データの入手が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施の形態におけるサーボ弁評価システムの構成図である。
【
図5】制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図6】変更後検査用波形の第一変形例を示したグラフである。
【
図7】変更後検査用波形の第一変形例を示したグラフである。
【
図8】従来のサーボ弁評価システムによって得られた指令に対するサーボ弁の流量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態におけるサーボ弁評価システム1は、サーボ弁Vの流量Qを検知する流量センサ2と、流量を指示する検査波形を与える時間を変更して変更後検査波形をサーボ弁Vに与える制御装置3とを備えている。
【0022】
以下、サーボ弁評価システム1の各部について詳細に説明する。サーボ弁Vは、
図2に示すように、中空であってポンプ50に連通される供給ポートP、流体を貯留するタンク51に連通される排出ポートT、および二つの制御ポートA,Bを備えたハウジングHと、前記ハウジングH内に軸方向移動自在に挿入されるスプールSと、スプールSを駆動するソレノイドSolと、スプールSを中立位置に位置決めするばねSpと、外部からの入力を受け取ってソレノイドSolを駆動する駆動回路Drとを備えている。
【0023】
本実施の形態では、スプールSは、2つのランド部L1,L2を備えており、ハウジングHに対する位置取りによって、制御ポートA,Bのそれぞれ供給ポートPと排出ポートTへの連通度合を変化させる。
【0024】
ソレノイドSolは、詳しくは図示しないが、プッシュプル型のソレノイドとされており、駆動回路Drからの電流供給によって、スプールSに与える推力を変更できる。そして、ソレノイドSolは、スプールSの軸方向の一端側から推力を与え、ばねSpは、スプールSの軸方向の他端側から推力を与えており、ソレノイドSolへの通電がない状態では、スプールSがハウジングHの中央に位置決めされ、制御ポートA,Bを閉鎖する。また、スプールSが中立位置から変位すると、変位した方向と変位量によって制御ポートA,Bのうち一方を供給ポートPへ他方を排出ポートTへ連通し、また、これら制御ポートA,Bと供給ポートPおよび排出ポートTとの連通度合いが変化する。そして、ソレノイドSolへ供給する電流の向きと大きさによって、ソレノイドSolの推力の向きと大きさが変化するので、ソレノイドSolへ供給する電流を調節すると、スプールSのハウジングHに対する位置を所望する位置へ位置決めできる。
【0025】
よって、サーボ弁Vは、ポンプ50から供給される流体を供給ポートPから取り込んで、スプールSのハウジングHに対する位置に応じて選択される制御ポートA,Bの一方から流体を排出するとともに、この排出される流体の流量を制御する。
【0026】
本実施の形態では、サーボ弁Vは、電流指令Iが入力されるとソレノイドSolの推力を調整して、スプールSのハウジングHに対する位置を調節して、制御ポートA,Bのうち前記検査波形が指示する制御ポートを選択して、選択された制御ポートの流量を前記検査波形が指示する流量となるように調節する。なお、前述したサーボ弁Vの構造は一例であって、サーボ弁Vは、他の構造を採用するものであってもよい。なお、サーボ弁Vは、本実施の形態では電流指令Iの入力によって流量を調整するが、電圧指令の入力によって流量を調整するようになっていてもよい。
【0027】
本実施の形態では、サーボ弁Vにおける制御ポートAは、アクチュエータ10におけるシリンダ11内にピストン12で区画される一方室R1に連通されており、サーボ弁Vにおける制御ポートBは、アクチュエータ10におけるシリンダ11内にピストン12で区画される他方室R2に連通されている。よって、サーボ弁Vの制御ポートAをポンプ50に接続して制御ポートBをタンク51に接続すると、流体が一方室R1へ供給されるとともに、他方室R2の流体がタンク51へ排出されて、ピストン12が右方へ向けて駆動される。他方、サーボ弁Vの制御ポートAをポンプ50に接続して制御ポートBをタンク51に接続すると、流体が一方室R1へ供給されるとともに、他方室R2の流体がタンク51へ排出されて、ピストン12が右方へ向けて駆動される。他方、サーボ弁Vの制御ポートBをポンプ50に接続して制御ポートAをタンク51に接続すると、流体が他方室R2へ供給されるとともに、一方室R1の流体がタンク51へ排出されて、ピストン12が左方へ向けて駆動される。
【0028】
流量センサ2は、図示はしないが、流路中に設置されて流路を通過する流体の流れに応じて回転する羽根車或いは歯車等の回転子を備えており、回転子の回転によって発生するパルスに基づいて流量を測定する容積式の流量センサとされている。より、具体的には、流量センサ2は、前記回転子の回転によって発生するパルス間の時間間隔によって流量を検知する。
【0029】
本実施の形態では、流量センサ2は、サーボ弁Vの制御ポートAとシリンダ11における一方室R1とを行き来する流体の流量Qを検知して処理装置3に入力する。なお、流量センサ2は、サーボ弁Vの制御ポートBとシリンダ11における他方室R1とを行き来する流体の流量Qを検知して制御装置3に入力してもよい。
【0030】
制御装置3は、サーボ弁Vが出力すべき流量を指示する検査波形を時間的に変更する波形変更部3aと、サーボ弁Vにおける駆動回路Drへ波形変更部3aによって変更された変更後検査波形の電流指令Iを出力するとともにポンプ50を制御する制御部3bとを備えている。なお、サーボ弁Vにおける駆動回路Drは、ソレノイドSolに流れる電流を検知する図示しない電流センサを備えており、電流センサで検知する電流をフィードバックして、制御装置3から入力される変更後検査波形の電流指令I通りにソレノイドSolへ電流を与える。なお、駆動回路Drは、サーボ弁V側ではなく、制御装置3に内包されていてもよい。
【0031】
検査波形は、
図3に示すように、本実施の形態では、サーボ弁Vの性能評価試験にあたって、サーボ弁Vの制御ポートAの流量を正の流量とし、制御ポートBの流量を負の流量として、サーボ弁Vの出力である流量を0クロスして所定振幅、かつ、所定周期の正弦波で増減するように指示する多数の電流指令のデータセットとなっている。サーボ弁VのソレノイドSolへ与える電流とサーボ弁Vが出力する流量は、比例関係にあるので、検査波形の電流指令をそのままサーボ弁Vに入力すると、サーボ弁Vの流量の軌跡は正弦波形を描きながら0クロスして増減することになる。なお、検査波形は、予め制御装置3に格納しておくか、サーボ弁Vの性能評価の検査の際に制御装置3に入力するか記憶させてもよい。
【0032】
制御装置3は、サーボ弁Vの性能の評価のため、波形変更部3aによって検査波形を時間的に変更し、変更後に得られた変更後検査波形の電流指令Iを複数回に亘って繰り返してサーボ弁Vへ与える。波形変更部3aは、検査波形が指示する流量に基づいて、検査波形が指示する流量が0となる点を含む部分を時間的に伸長させて変更後検査波形の電流指令Iを生成する。
【0033】
検査波形は、前述した通り、所定周期Tの正弦波形の電流指令のデータセットであり、波形変更部3aは、本実施の形態では、検査波形が指示する流量に反比例させて検査波形の全体の時間を伸長させるように変更する。
【0034】
つまり、波形変更部3aは、
図4に示すように、検査波形W1が指示する流量が多い部分については当該検査波形W1を時間的に圧縮し、検査波形W1が指示する流量が0となる点を含んで少なくなる部分については検査波形W1を時間的に伸長させる。このように波形変更部3aの処理によって変更された検査波形である変更後検査波形W2は、
図4に示すように、流量が多い部分については時間的に圧縮され、流量が0となる点を含んで少なくなる部分については時間的に伸長される。なお、
図4中にて、変更後検査波形W2において時間的に圧縮された部分b1は、検査波形W1が指示する流量が多い部分a1に対応しており、変更後検査波形W2において時間的に伸長された部分b2は、検査波形W1が指示する流量が少なくなる部分a2に対応している。
【0035】
なお、検査波形W1において時間的に圧縮される部分a1と時間的に伸長される部分a2との境界の値(振幅)は、任意に設定できるが、部分a2は、検査波形W1の指示流量の絶対値が所定の振幅以下となる範囲とされる。よって、波形変更部3は、検査波形W1の電流指令が指示する流量をQrefとすると、検査波形W1の時間スケールをD/Qref倍(Dは任意の係数であって検査波形W1が指示する最大の流量の未満の値に設定される)するように変更すればよい。そして、Dの値を調整することで、検査波形W1において時間的に圧縮される部分a1と時間的に伸長される部分a2との境界を任意に設定できる。つまり、係数Dの設定によって、波形変更部3aが検査波形W1を時間的に伸長させる部分(範囲)を決定できる。なお、Dの値は、任意に設定できるが、流量センサ2の時間分解能の悪化が見込まれる流量の値に設定するとよい。
【0036】
たとえば、制御装置3の制御周期が1ミリ秒で、検査波形W1の所定周期Tが10秒であって、検査波形W1が10000個の電流指令のデータセットで構成されているケースを考える。検査波形W1中の各電流指令は、それぞれ、制御装置3がサーボ弁Vに指令を与える制御周期毎のソレノイドSolへ与える電流を指示する指令となっている。よって、たとえば、波形変更部3aは、検査波形W1中のデータセットにおいて隣り合う電流指令間の時間を、それらの電流指令の一方が指示する流量をQrefとして、制御周期にD/Qrefを乗じた値に変更するようにして検査波形W1の波形を変更後検査波形W2に変更する。なお、波形変更部3aは、前記の時間を変更する処理を検査波形W1中の全部の電流指令間の時間について行う。
【0037】
なお、前記したケースでは、波形変更部3aは、具体的にはたとえば、検査波形W1のうち時間が圧縮される部分a1については電流指令間の時間が圧縮されるため、制御装置3の制御周期で入力できない電流指令についてはデータを間引き、検査波形W1のうち時間が伸長される部分a2については電流指令間の時間が伸長されるため、線形補間や直前の電流指令の値のデータを補間するようにして変形後検査波形W2の電流指令Iのデータセットを求めればよい。
【0038】
また、検査波形W1は所定周期で流量を変化させる電流指令となっているため、波形変更部3aは、制御装置3の制御周期を基準にするのではなく、所定周期を検査波形W1中に含まれる電流指令のデータ数で除して得た電流指令間の時間間隔にD/Qrefを乗じて得た時間を求めて、各電流指令の時間間隔を当該求めた時間に変更する処理を行って変更後検査波形W2を求めてもよい。検査波形W1は所定周期で流量を変化させる電流指令となっているため、波形変更部3aは、検査波形W1の周波数を基準にして、検査波形W1のうち時間が圧縮される部分a1については波形の周波数を高くし、検査波形W1のうち時間が伸長される部分a2については波形の周波数を低くするように変更して、全体として検査波形W1の流量の反比例する変更後検査波形W2を求めてもよい。
【0039】
さらに、波形変更部3aにおける流量に反比例させて検査波形W1を時間的に変更する処理は、一例である。よって、たとえば、波形変更部3aは、前記部分a2を複数の範囲に分割して、分割した範囲毎に当該範囲の中央における流量の値に反比例させて時間的に波形を伸長させ、変更後検査波形W2における波形の伸長度合を流量が0に近づくにしたがって段階的に大きくしてもよい。
【0040】
制御部3bは、波形変更部3aによって変更された変更後検査波形W2の電流指令Iをサーボ弁Vの駆動回路Drへ電流指令Iを出力して、サーボ弁Vを駆動するともに、ポンプ50を一定の回転速度で駆動するよう制御する。
【0041】
また、制御部3bは、流量センサ2が出力する流量を示す信号を取り込んで電流指令Iの入力に対するサーボ弁Vの出力である流量とを関連付けして順次記憶する。制御部3bは、サーボ弁Vに対して変更後検査波形W2の電流指令Iを複数回に渡り継続的に繰り返して入力し、電流指令Iの入力が終了するまで絶えず電流指令Iと取り込んだ流量のデータとを関連付けして記憶する。なお、制御部3bは、サーボ弁Vの検査の終了後に記憶したデータ群をレコードとしたCSVファイルを生成してもよい。また、制御装置3は、電流指令Iとは関連付けせずに、流量データを順次時系列的に記憶してもよい。
【0042】
なお、制御装置3は、ハードウェアとしてはたとえば、
図5に示すように、演算処理装置31と、制御装置3の制御と処理に必要なプログラムを記憶するとともに演算処理装置31が当該プログラムの実行に必要となる記憶領域を提供する記憶装置32と、流量センサ2、駆動回路Drおよびポンプ50との信号のやり取りを行うインターフェース33と、これら装置を互いに通信可能に接続するバス34とを備えており、演算処理装置31がプログラムを実行することで波形変更部3aおよび制御部3bとして機能する。なお、制御装置3のハードウェア構成は、一例であって、波形変更部3aおよび制御部3bとして機能できれば前記構成に限定されない。
【0043】
また、制御装置3は、表示装置やプリンタを備えていてもよく、電流指令Iとサーボ弁Vの流量とを関連付けしたデータを表示装置に表示させたり紙媒体等へ印刷できるようになっていてもよい。
【0044】
なお、流量センサ2が出力する信号を制御装置3以外の機器に受け取らせて、流量データを当該機器に記憶させたり、分析させたりしてもよい。
【0045】
このようにして、本実施の形態のサーボ弁評価システム1によってサーボ弁Vの検査を行うと、前述した通り、検査波形W1は波形変更部3aによって指示する流量が少なくなる部分a2を時間的に伸長するように変更して変更後検査波形W2を得て、変更後検査波形W2の電流指令Iをサーボ弁Vに入力する。
【0046】
サーボ弁Vの流量が少なくなると流量センサ2の時間分解能が悪化するものの、流量が少なくなる部分a2における時間スケールが伸長されるので、変更後検査波形W2の電流指令Iが入力されたサーボ弁Vが出力する流量が少なくなると当該流量の時間変化が小さくなる。よって、流量センサ2は、正確に流量を計測できる時間的余裕が与えられるようになって、流量が少なくなる領域において正確にサーボ弁Vの流量を検知できるようになる。波形変更部3aは、検査波形W1が指示する流量が少なくなる部分を時間的に伸長させて波形を変更し、このように波形変更部3aが検査波形W1の流量が少なくなる部分を時間的に伸長させれば、流量センサ2は、流量が少なくなる領域において正確にサーボ弁Vの流量を検知できるようになる。よって、検査波形W1は、正弦波に限定されるものではなく、流量が0となる部分を含んでいる波形であれば三角波やその他の波形とされてもよいし、ランダムな波形であってもよい。
【0047】
サーボ弁評価システム1は、以上のように構成されており、以下にサーボ弁評価システム1でサーボ弁Vを検査する手順について説明する。まず、サーボ弁Vの検査に必要な検査波形W1を用意する。予め制御装置3に複数の形状の検査波形W1を記憶させている場合には、サーボ弁評価システム1のユーザがサーボ弁Vの検査に使用する複数種類の検査波形W1から今回の検査に使用する検査波形W1を選択すればよい。なお、この場合、制御装置3にユーザの操作を受け付ける入力装置や操作を補助するための表示装置等を設けておけばよい。また、サーボ弁Vの検査にあたって、ユーザが所望する検査波形W1を図外の上位の制御装置等から制御装置3に入力するようにしてもよい。
【0048】
つづいて、検査波形W1のユーザによる選択或いは制御装置3への検査波形W1の入力が済むと、制御装置3は、前述したように、検査波形W1を検査波形W1が指示する流量に基づいて時間的に伸長するように変更して変更後検査波形W2を得る(波形変更ステップ)。
【0049】
変更後検査波形W2が得られると、制御装置3は、波形変更ステップによって変更した変更後検査波形W2の電流指令Iをサーボ弁Vに与えて(入力ステップ)、サーボ弁Vを駆動する。なお、制御装置3は、サーボ弁Vの検査時には、ポンプ50を所定の回転速度で駆動して一定の流量の流体をサーボ弁Vの供給ポートPへ継続して送り込む。このように制御装置3がサーボ弁Vに変更後検査波形W2の電流指令Iを入力すると、サーボ弁Vは変更後検査波形W2が指示する流量を変動させながら出力するが、流量が少なくなると流量の変化が小さくする。
【0050】
そして、流量センサ2は、入力ステップによって変更後検査波形の指令を与えたサーボ弁Vの流量を流量センサ2で検知し(検知ステップ)、検知した流量に応じた信号を制御装置3に出力する。制御装置3は、入力した電流指令Iと検知した流量とを関連付けして順次流量データを記憶する。
【0051】
このような処理によってサーボ弁Vの電流指令Iを与えると、サーボ弁Vの流量が少なくなって流量センサ2の時間分解能が悪化しても、流量センサ2が正確に流量を検知できるようになるので、サーボ弁Vの性能を正確に評価することができる流量データを入手できる。
【0052】
以上、本実施の形態のサーボ弁評価システム1は、流量を指示する検査波形W1の指令の入力に対するサーボ弁Vの性能を評価するサーボ弁評価システムであって、サーボ弁Vの流量を検知する流量センサ2と、サーボ弁Vを制御する制御装置3とを備え、制御装置3が、検査波形W1が指示する流量が0となる点を含む部分a2を時間的に伸長させる波形変更部3aを有し、波形変更部3aによって変更した後の変更後検査波形W2の電流指令(指令)Iをサーボ弁Vへ入力するように構成されている。
【0053】
このように構成されたサーボ弁評価システム1では、波形変更部3aによって検査波形W1が指示する流量が0となる点を含む部分a2の時間スケールを伸長させる変形を行って得た変更後検査波形W2の電流指令(指令)Iをサーボ弁Vに入力するので、サーボ弁Vが出力する流量が少なくなると流量の時間変化が小さくなる。流量センサ2は、流量が少なくなって時間分解能が悪化しても、流量を正確に計測できる時間的余裕が与えられるので、流量が少なくなる領域において正確にサーボ弁Vの流量を検知できる。
【0054】
よって、本実施の形態のサーボ弁評価システム1によれば、流量センサ2が正確にサーボ弁Vの流量を検知できるので、流量が少なくなる領域においてもサーボ弁Vの性能を正確に評価することができる流量データを入手できる。
【0055】
なお、波形変更部3aは、検査波形W1の全部を時間的に伸長させてもよいが、本実施の形態のサーボ弁評価システム1では、波形変更部3aは、検査波形W1が指示する流量に反比例させて検査波形W1の全体を時間的に変更するように構成されている。このように構成されたサーボ弁評価システム1では、検査波形W1が指示する流量に反比例させて検査波形W1の全体を時間的に変更するので、検査波形W1のうち指示流量が多い部分a1については時間スケールを圧縮し、検査波形W1のうち指示流量が少ない部分a2については時間スケールを伸長させて、検査波形W1を変更する。よって、流量センサ2の時間分解能が悪化しない検査波形W1のうち指示流量が多い部分a1については時間スケールが圧縮されて、当該部分a1に対応する変更後検査波形W2の電流指令Iをサーボ弁Vへ入力するのに要する時間は短縮される一方で、流量センサ2の時間分解能が悪化する検査波形W1のうち指示流量が少ない部分a2のみが時間的に伸長されて、流量が少なくなる領域においては流量センサ2が正確に流量を検知できるようになる。以上より、このように構成されたサーボ弁評価システム1によれば、検査波形W1の全体の時間を伸長させた場合に比較して、変更後検査波形W2の電流指令(指令)Iの全てをサーボ弁Vへ与えるのに要する時間が短縮されるので、検査時間に要する時間の長大化の回避と流量が少なくなる領域での正確な流量検知とを両立できる。
【0056】
また、波形変更部3aは、検査波形W1が指示する流量が0を含んで少なくなる部分について時間的に伸長させればよいので、検査波形W1が指示する流量の絶対値が第1閾値以下の第1部分について時間的に伸長させて変更後検査波形W3を得てもよい。この場合、波形変形部3aは、検査波形W1が指示する流量の絶対値が第1閾値以下の第1部分の時間をE倍(Eは1より大きな値)に伸長させてもよいし、流量に反比例させて時間を伸長させてもよいし、流量が少なくなるほど段階的或いは無段階に伸長度合を大きくするようにしてもよい。なお、波形変形部3aは、検査波形W1が指示する流量の絶対値が第1閾値を超える部分の時間については変更を行わなくてもよいし、圧縮するようにしてもよい。なお、第1閾値は、任意に設定可能であるが、流量センサ2の時間分解能の悪化が見込まれる流量の値に設定するとよい。
【0057】
たとえば、Eの値を3として、波形変更部3aが検査波形W1を変更すると、検査波形W1は、
図6に示すように、第1閾値以下の部分の時間スケールが3倍に引き伸ばされた変更後検査波形W3が得られる。このようにして得られた変更後検査波形W3の電流指令Iをサーボ弁Vに入力しても、指示流量が少ない第1部分が時間的に伸長されるため、サーボ弁Vの流量が少なくなる領域において流量センサ2が正確に流量を検知できるようになり、サーボ弁Vの性能を正確に評価することができる流量データを入手できる。
【0058】
さらに、波形変更部3aは、検査波形W1が指示する流量が0を含んで少なくなる第1部分について時間的に伸長させればよいので、検査波形W1が指示する流量の絶対値が第1閾値以下の第1部分について、第1部分のうち、絶対値が第1閾値よりも小さな値に設定される第2閾値以下の部分を小流量部分とし、第2閾値を超える部分を大流量部分として、小流量部分を、大流量部分の伸長度合よりも小流量部分の伸長度合の方が大きくなるように時間的に伸長させてもよい。
【0059】
この場合、波形変形部3aは、検査波形W1が指示する流量の絶対値が第2閾値以下の小流量部分の時間をF倍(Fは1より大きな値)に伸長させ、検査波形W1が指示する流量の絶対値が第2閾値より大きく第1閾値以下の第流量部分の時間をG倍(Gは1より大きくFよりも小さな値)に伸長させる。なお、波形変更部3aは、小流量部分の時間の伸長度合が第流量部分の時間の伸長度合よりも大きければ、小流量部分および第流量部分の時間の伸長に関し、流量に反比例させて時間を伸長させてもよいし、流量が少なくなるほど段階的或いは無段階に伸長度合を大きくするようにしてもよい。なお、第1閾値は、任意に設定可能であるが流量センサ2の時間分解能の悪化が見込まれる流量の値に設定するとよく、第2閾値は、第1閾値よりも小さな値であれば任意に設定可能であるが、流量センサ2の時間分解能が特に悪化する流量の値に設定するとよい。なお、波形変形部3aは、検査波形W1の第1部分以外の部分の時間については変更を行わなくてもよいし、圧縮するようにしてもよい。
【0060】
たとえば、Fの値を4として、Gの値を3として、波形変更部3aが検査波形W1を変更すると、
図7に示すように、図中破線で示した検査波形W1は、第2閾値以下の小流量部分の時間スケールが4倍に引き伸ばされるともに、第2閾値より大きく第1閾値以下の大流量部分の時間スケールが3倍に引き伸ばされた変更後検査波形W4が得られる。このようにして得られた変更後検査波形W4の電流指令Iをサーボ弁Vに入力しても、指示流量が少ない部分が時間的に伸長されるため、サーボ弁Vの流量が少なくなる領域において流量センサ2が正確に流量を検知できるようになり、サーボ弁Vの性能を正確に評価することができる流量データを入手できる。
【0061】
また、第1閾値と第2閾値とで検査波形W1の第1部分に対して時間的伸長度合が異なる小流量部分および大流量部分を設定して、小流量部分と大流量部分とに個別に時間を伸長させる伸長度合を設定できるので、流量センサ2の時間分解能に応じて検査波形W1の時間の伸長を最適化でき、検査時間に要する時間の長大化を回避しつつも流量が少なくなる領域での正確な流量検知を実現できる。
【0062】
さらに、流量センサ2が流路中に設置されて流路を通過する流体の流れに応じて回転する回転子を備え、前記回転子の回転によって発生するパルスに基づいて流量を測定するセンサである場合、サーボ弁Vの流量が少なくなると流量センサ2の時間分解能の悪化が顕著となるが、このような容積式の流量センサを用いても流量が少なくなる領域での正確な流量検知を実現できる。
【0063】
また、サー弁評価方法は、流量を指示する検査波形W1の指令の入力に対してサーボ弁Vの性能を評価するサーボ弁評価方法であって、検査波形W1を検査波形W1が指示する流量に基づいて時間的に伸長するように変更する波形変更ステップと、波形変更ステップによって変更した検査波形である変更後検査波形W2の電流指令(指令)Iをサーボ弁Vに与える入力ステップと、入力ステップによって変更後検査波形W2の指令を与えたサーボ弁Vの流量を流量センサ2で検知する検知ステップとを含んでいるので、流量センサ2は、流量が少なくなって時間分解能が悪化しても、流量を正確に計測できる時間的余裕が与えられて流量が少なくなる領域において正確にサーボ弁Vの流量を検知できる。
【0064】
よって、本実施の形態のサーボ弁評価方法によれば、流量センサ2が正確にサーボ弁Vの流量を検知できるので、流量が少なくなる領域においてもサーボ弁Vの性能を正確に評価することができる流量データを入手できる。
【0065】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
【符号の説明】
【0066】
1・・・サーボ弁評価システム、2・・・流量センサ(センサ)、3・・・制御装置