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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103545
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】消火設備及び消火方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/02 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
A62C35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004122
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA03
2E189BB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】設備規模及びコストが増大することを抑制すると共に消火性能を向上させ、二酸化炭素消火設備に代替し得る設備を提供する。
【解決手段】仕切られた防護区画10内の火災を消火する消火設備は、煙感知器16や熱感知器18に基づき防護区画10内の火災が検出された場合に、窒素ヘッド12から防護区画10内全域に向けた窒息ガスの放出と帯電噴霧ヘッド14から火源側に向けた帯電水粒子の放出との各々を制御して放出することにより、高い消火効果を得て消火することを可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切られた防護区画内の火災を消火する消火設備であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内全域に向けた窒素ガスの放出と火源側に向けた帯電水粒子の放出とを各々制御して放出することを特徴とする消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、前記防護区画内に前記窒素ガスと前記帯電水粒子とを合わせて放出することを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、前記防護区画内に前記窒素ガスと前記帯電水粒子とを合わせて放出し、
前記窒素ガスと前記帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、前記防護区画内への前記帯電水粒子の放出を継続すると共に前記防護区画内への前記窒素ガスの放出を停止することを特徴とする消火設備。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、前記防護区画内に前記窒素ガスと前記帯電水粒子とを合わせて放出し、
前記窒素ガスと前記帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、前記防護区画内への前記窒素ガスの放出を継続すると共に前記防護区画内への前記帯電水粒子の放出を停止することを特徴とする消火設備。
【請求項5】
請求項1記載の消火設備であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、前記防護区画内に前記帯電水粒子を放出し、
前記帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、前記防護区画内への前記帯電水粒子の放出を継続すると共に前記防護区画内に前記窒素ガスを放出することを特徴とする消火設備。
【請求項6】
請求項1記載の消火設備であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、前記防護区画内に前記窒素ガスを放出し、
前記窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、前記防護区画内への前記窒素ガスの放出を継続すると共に前記防護区画内に前記帯電水粒子を放出することを特徴とする消火設備。
【請求項7】
請求項1記載の消火設備であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、前記防護区画内に前記窒素ガスを放出し、
前記窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、前記防護区画内への前記窒素ガスの放出を停止すると共に前記防護区画内に前記帯電水粒子を放出することを特徴とする消火設備。
【請求項8】
請求項1記載の消火設備において、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、前記防護区画内に前記帯電水粒子を放出し、
前記帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、前記防護区画内への前記帯電水粒子の放出を停止すると共に前記防護区画内に前記窒素ガスを放出することを特徴とする消火設備。
【請求項9】
請求項1、2又は4記載の消火設備であって、
前記窒素ガスを放出する窒素消火設備、前記帯電水粒子を放出する帯電噴霧消火設備、及び制御部で構成され、
前記窒素消火設備は、
前記防護区画内に設置され、前記防護区画内に前記窒素ガスを放出する窒素ヘッドと、
前記窒素ガスを充填した窒素充填容器と、
一端側が前記窒素ヘッドに接続されると共に他端側が前記窒素充填容器に接続され、前記窒素充填容器から前記窒素ヘッドに前記窒素ガスを供給する窒素配管経路と、
前記窒素配管経路に配置され、前記窒素配管経路による前記窒素ガスの供給経路を開閉する窒素開閉弁と、
を備え、
前記帯電噴霧消火設備は、
前記防護区画内に設置され、前記防護区画内に前記帯電水粒子を放出する帯電噴霧ヘッドと、
前記帯電噴霧ヘッドに所定の高電圧を印加する高圧電源部と、
水を充填した水充填容器と、
一端側が前記水充填容器内に配置されると共に他端側が前記窒素配管経路の窒素開閉弁より窒素ヘッド側に分岐接続され、前記窒素開閉弁が開作動された場合に前記窒素充填容器から前記水充填容器に前記窒素ガスを導入する加圧配管経路と、
一端側が前記帯電噴霧ヘッドに接続されると共に他端側が前記水充填容器内に配置され、前記水充填容器から前記帯電噴霧ヘッドに前記水を供給する水配管経路と、
前記水配管経路に配置され、前記水配管経路による前記水の供給経路を開閉する水開閉弁と、
を備え、
前記制御部は、
前記窒素ヘッドから前記窒素ガスを放出させる場合には、前記窒素開閉弁を開作動させ、
前記帯電噴霧ヘッドから前記帯電水粒子を放出させる場合には、前記高圧電源部を作動させると共に前記窒素開閉弁と前記水開閉弁を開作動させることを特徴とする消火設備。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れかに記載の消火設備であって、
前記窒素ガスを放出する窒素消火設備、前記帯電水粒子を放出する帯電噴霧消火設備、及び制御部で構成され、
前記窒素消火設備は、
前記防護区画内に設置され、前記防護区画内に前記窒素ガスを放出する窒素ヘッドと、
前記窒素ガスを充填した窒素充填容器と、
一端側が前記窒素ヘッドに接続されると共に他端側が前記窒素充填容器に接続され、前記窒素充填容器から前記窒素ヘッドに前記窒素ガスを供給する窒素配管経路と、
前記窒素配管経路に配置され、前記窒素配管経路による前記窒素ガスの供給経路を開閉する第1窒素開閉弁と、
前記窒素配管経路の前記第1窒素開閉弁より前記窒素ヘッド側に配置され、前記窒素配管経路による前記窒素ガスの供給経路を開閉する第2窒素開閉弁と、
を備え、
前記帯電噴霧消火設備は、
前記防護区画内に設置され、前記防護区画内に前記帯電水粒子を放出する帯電噴霧ヘッドと、
前記帯電噴霧ヘッドに所定の高電圧を印加する高圧電源部と、
水を充填した水充填容器と、
一端側が前記水充填容器内に配置されると共に他端側が前記第1窒素開閉弁と前記第2窒素開閉弁と間の前記窒素配管経路に分岐接続され、前記第1窒素開閉弁が開作動された場合に前記窒素充填容器から前記水充填容器に前記窒素ガスを導入する加圧配管経路と、
一端側が前記帯電噴霧ヘッドに接続されると共に他端側が前記水充填容器内に配置され、前記水充填容器から前記帯電噴霧ヘッドに前記水を供給する水配管経路と、
前記水配管経路に配置され、前記水配管経路による前記窒水の供給経路を開閉する水開閉弁と、
を備え、
前記制御部は、
前記窒素ヘッドから前記窒素ガスを放出させる場合には、前記第1窒素開閉弁と前記第2窒素開閉弁を開作動させ、
前記帯電噴霧ヘッドから前記帯電水粒子を放出させる場合は、前記高圧電源部を作動させると共に前記第1窒素開閉弁と前記水開閉弁を開作動させることを特徴とする消火設備。
【請求項11】
仕切られた防護区画内の火災を消火する消火方法であって、
前記防護区画内の火災が検出された場合に、所定の制御に従い、窒素ガスを防護区画内全域に向けて放出させると共に火源側に向けて帯電水粒子を放出させて消火することを特徴とする消火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切られた防護区画内で発生した火災を窒素ガスと帯電水粒子の放出により消火する消火設備及び消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス系消火設備といえば、ハロン1301消火設備がその代表的な消火設備であったが、モントリオール議定書でオゾン層を破壊する物質に指定されたことから、ハロンガスの生産中止が決定し、消火剤として使用することに制限が掛けられている。
【0003】
このため、ハロン1301消火設備の代替設備として二酸化炭素消火設備が主流となったが、二酸化炭素は地球温暖化への影響度が高く、中毒性があり人体に悪影響を及ぼすことから、近年、日本国内では環境及び人体に優しい窒素消火設備が主流になりつつある。
【0004】
しかし、一度主流となった二酸化炭素消火設備は、長年消火設備としての実績があり、性能等についても知見が多く、既に広く様々な場所に設置されている。また、消火に必要な二酸化炭素の量が、ハロン1301には及ばないものの、二酸化炭素に代わるイナート系新ガスに比べて少なく済み、特にイナート系新ガスである窒素と比較した場合には1/2程度で済む。また、イナート系新ガスとしては、その他にIG-541、IG-55等の消火ガスがある。
【0005】
この容器に充填される二酸化炭素の量が少ないという利点の影響は大変大きく、二酸化炭素消火設備を窒素消火設備に置き換えようとしても、既存の二酸化炭素消火設備に設置されている二酸化炭素が充填された容器の保管施設に対して窒素が充填された容器を収納することができず、また消火するために多くの窒素が必要になることから、窒素を防護区画内に放出した際に、防護区画の内部圧力の上昇を防止するための避圧口の設置の追加が必要となり、窒素消火設備を二酸化炭素消火設備の代替設備とすることが困難となっている。また、窒素消火設備を新設する場合は、従来のハロン1301消火設備や二酸化炭素消火設備よりも、容器の保管施設を大きくすること、及び避圧口の追加設置が必要なことから、消火設備がコストアップするという課題も生じる。
【0006】
その一方で、地球温暖化の危惧からゼロカーボンを目指す社会動向からも、二酸化炭素消火設備の利点を保持した窒素等のイナート系新ガス消火設備の実現は期待されるものである。
【0007】
ところで、火災の炎との化学反応により燃焼の連鎖反応を止めることで消火するハロン系ガスやハロカーボン系新ガスでは、火災の炎と反応する前の消火ガスにあっては人体に対する安全性を謳っているものもあるが、炎と反応して燃焼の連鎖反応を止めた場合には人体に影響を及ぼす毒ガス(例えばフッ化水素)が発生することが知られている。そして、その毒ガスの発生量は、炎の大きさや炎と消火ガスとの反応時間に対して正の相関を持ち、つまり炎が大きくなるほど連鎖反応を止めるために消費する消火ガス量が多くなり、炎と消火ガスとの反応時間も長くなることから、毒ガスの発生量は炎の大きさに比例して多くなるという問題がある。
【0008】
このため、炎がなるべく小さい火災の初期段階で消火を完了させることが消火後の被害を低減させる上で重要であることから、消火ガスの放出開始を火災発生から早く、かつ放出時間が短くなるように設定され、このようなハロカーボン系新ガス消火設備では火災断定後10秒程度の間に容器に充填された消火ガスの90%を出し切って消火することを思想とする側面がある。
【0009】
これに対して、窒素消火設備の消火原理は、窒素ガスを防護区画内に放出することによって防護区画の酸素濃度を下げていくことによる窒息効果での消火であり、当該窒素消火設備にあっては、燃焼ガスの発生量を抑えること、及び対象の防護区画内からの窒素ガスの漏れとそれに伴う酸素濃度の上昇によって消火環境が維持できなくなることによる消火の失敗を防止することが重要であり、早期に酸素濃度を炎が維持できない消火濃度に到達させて消火することが求められる。つまり、消火ガスの放出開始を火災発生から早く、かつ放出時間を短くするという思想には変わりがない。また、その他のイナート系新ガス消火設備についても窒素消火設備と同様の消火原理であり、消火ガスの放出時間はイナート系新ガスの種類を問わず、原則火災断定後60秒(場合によっては120秒)程度となっている。
【0010】
また、これらのガス系消火設備においては、消火ガスを放出する噴射ヘッドは、防護区画に放出された消火ガスの濃度を防護区画の全体で極力均一の濃度とすべく、天井或いは壁近くの隅に配置されて、防護区画のどこで火災が発生しても、一定の濃度である消火ガスが防護区画内全体に行き渡るようにしている。
【0011】
さらに、特許文献1のように、窒素ガスと水微噴霧(水粒子)を放出する気液混合消火設備が提案されており、窒素ガスの放出停止後に窒素ガスを混合させた水微噴霧を放出することで、窒素ガスのみでの消火と比べて窒素ガスの放出量を数十%低減できるとされている。また、当該気液混合設備では窒素ガスを混合した水微噴霧が放出されることから、水微噴霧は混合された高圧の窒素ガスに乗って防護区画内に広く放出され、水粒子と窒素ガスが均一な混合状態で閉鎖空間を覆うことによってその消火効果を発揮するとされ、窒素ガスによる窒素効果、水による冷却効果、蒸気発生による酸素の排除に伴う燃焼酸素濃度の低下効果が相乗している。
【0012】
また、水微噴霧による消火性能は、火源に対して水微噴霧がどの程度到達するかという量的面にも依存することは、消火に必要な散水密度を水系消火設備において要求されることからも当然のことである。
【0013】
また、水微噴霧を放出する消火設備として、帯電散布ヘッドから帯電させた消火剤の噴射粒子(帯電水粒子)を散布(放出)して消火する火災防災設備(消火設備)が知られている(特許文献2)。当該火災防災設備によれば、帯電散布ヘッドから放出された消火剤の噴射粒子は、水粒子が帯電していることにより、静電気力により火源の対象物に効率よく吸着することから、消火効果が向上することが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011-072704号公報
【特許文献2】特開2009-106405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の窒素ガスと水微噴霧の気液混合消火設備では、窒素ガスのみの放出を行った後に窒素ガスを混合した水を微噴霧し、混合された高圧の窒素ガスのエネルギーを利用して防護区画内に窒素ガスと水微噴霧が広く均一に分布するようにしているが、火源に対する散水量を如何に増加させるかについては検討がされていない。また、窒素ガスと窒素ガスを混合した水微噴霧を合わせて放出することは、水微噴霧が窒素ガスの放出の勢いの影響を受けることから避けており、水微噴霧を放出できるタイミングが限られている。
【0016】
また、従来の帯電水粒子を放出する消火設備を利用しようとするにも、当該設備を窒素ガスの放出と組み合わせることについては十分に検討がされておらず、また帯電水粒子の放出については防護区画内の局所的な分布に留まり、消火対象領域となる防護区画内が広い場合には火源に対する散水量が十分な量とはならない場合が想定される。更に、帯電水粒子を防護区画内に放出するにあたり、水を加圧するためのポンプ設備が必要となり、二酸化炭素消火設備に比べてコストアップするという課題に対する解決を更に困難なものとする。
【0017】
本発明は、設備規模及びコストが増大することを抑制すると共に消火性能を向上させ、二酸化炭素消火設備に代替し得る、仕切られた防護区画内で発生した火災を窒素ガスと帯電水粒子の放出により消火する消火設備及び消火方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(消火設備)
本発明は、仕切られた防護区画内の火災を消火する消火設備であって、
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内全域に向けた窒素ガスの放出と火源側に向けた帯電水粒子の放出とを各々制御して放出することを特徴とする。
【0019】
(第1の消火制御:窒素ガスと帯電水粒子との同時放出)
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出する。
【0020】
(第2の消火制御:窒素ガスと帯電水粒子との同時放出後に、窒素ガスの放出停止)
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、
窒素ガスと帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内への窒素ガスの放出を停止する。
【0021】
(第3の消火制御:窒素ガスと帯電水粒子との同時放出後に、帯電水粒子の放出停止)
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、
窒素ガスと帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に防護区画内への帯電水粒子の放出を停止する。
【0022】
(第4の消火制御:帯電水粒子の放出後に、窒素ガスと帯電水粒子との放出)
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、
帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内への窒素ガスを放出する。
【0023】
(第5の消火制御:窒素ガスの放出後に、窒素ガスと帯電水粒子との放出)
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、
窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出する。
【0024】
(第6の消火制御:窒素ガスの放出後に、帯電水粒子の放出)
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、
窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を停止すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出する。
【0025】
(第7の消火制御:帯電水粒子の放出後に、窒素ガスの放出)
防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、
帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を停止すると共に防護区画内に窒素ガスを放出する。
【0026】
(第1の消火設備構成)
窒素ガスを放出する窒素消火設備、帯電水粒子を放出する帯電噴霧消火設備、及び制御部で構成され、
窒素消火設備は、
防護区画内に設置され、防護区画内に窒素ガスを放出する窒素ヘッドと、
窒素ガスを充填した窒素充填容器と、
一端側が窒素ヘッドに接続されると共に他端側が窒素充填容器に接続され、窒素充填容器から窒素ヘッドに窒素ガスを供給する窒素配管経路と、
窒素配管経路に配置され、窒素配管経路による窒素ガスの供給経路を開閉する窒素開閉弁と、
を備え、
帯電噴霧消火設備は、
防護区画内に設置され、防護区画内に帯電水粒子を放出する帯電噴霧ヘッドと、
帯電噴霧ヘッドに所定の高電圧を印加する高圧電源部と、
水を充填した水充填容器と、
一端側が水充填容器内に配置されると共に他端側が窒素配管経路の窒素開閉弁より窒素ヘッド側に分岐接続され、窒素開閉弁が開作動された場合に窒素充填容器から水充填容器に窒素ガスを導入する加圧配管経路と、
一端側が帯電噴霧ヘッドに接続されると共に他端側が水充填容器内に配置され、水充填容器から帯電噴霧ヘッドに水を供給する水配管経路と、
水配管経路に配置され、水配管経路による水の供給経路を開閉する水開閉弁と、
を備え、
制御部は、
窒素ヘッドから窒素ガスを放出させる場合には、窒素開閉弁を開作動させ、
帯電噴霧ヘッドから帯電水粒子を放出させる場合には、高圧電源部を作動させると共に窒素開閉弁と水開閉弁を開作動させる。
【0027】
(第2の消火設備構成)
窒素ガスを放出する窒素消火設備、帯電水粒子を放出する帯電噴霧消火設備、及び制御部で構成され、
窒素消火設備は、
防護区画内に設置され、防護区画内に窒素ガスを放出する窒素ヘッドと、
窒素ガスを充填した窒素充填容器と、
一端側が窒素ヘッドに接続されると共に他端側が窒素充填容器に接続され、窒素充填容器から窒素ヘッドに窒素ガスを供給する窒素配管経路と、
窒素配管経路に配置され、窒素配管経路による窒素ガスの供給経路を開閉する第1窒素開閉弁と、
窒素配管経路の第1窒素開閉弁より窒素ヘッド側に配置され、窒素配管経路による窒素ガスの供給経路を開閉する第2窒素開閉弁と、
を備え、
帯電噴霧消火設備は、
防護区画内に設置され、防護区画内に帯電水粒子を放出する帯電噴霧ヘッドと、
帯電噴霧ヘッドに所定の高電圧を印加する高圧電源部と、
水を充填した水充填容器と、
一端側が水充填容器内に配置されると共に他端側が第1窒素開閉弁と第2窒素開閉弁と間の窒素配管経路に分岐接続され、第1窒素開閉弁が開作動された場合に窒素充填容器から水充填容器に窒素ガスを導入する加圧配管経路と、
一端側が帯電噴霧ヘッドに接続されると共に他端側が水充填容器内に配置され、水充填容器から帯電噴霧ヘッドに水を供給する水配管経路と、
水配管経路に配置され、水配管経路による水の供給経路を開閉する水開閉弁と、
を備え、
制御部は、
窒素ヘッドから窒素ガスを放出させる場合には、第1窒素開閉弁と第2窒素開閉弁を開作動させ、
帯電噴霧ヘッドから帯電水粒子を放出させる場合は、高圧電源部を作動させると共に第1窒素開閉弁と水開閉弁を開作動させる。
【0028】
(消火方法)
本発明は、仕切られた防護区画内の火災を消火する消火方法であって、
防護区画内の火災が検出された場合に、所定の制御に従い、窒素ガスを防護区画内全域に向けて放出させると共に火源側に向けて帯電水粒子を放出させて消火することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
(基本的な効果)
本発明の消火設備にあっては、仕切られた防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを放出することから、窒素ガスの放出による防護区画内の酸素濃度を低減させる窒息消火効果と、蒸発気化熱の吸収による火源の温度を低下させ、水蒸気発生により酸素を排除することで酸素濃度の低減させる、所謂冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により、消火性能をさらに向上させることを可能とする。また、帯電水粒子の静電気力により火源に付着する水粒子の量が増加することで、水粒子による冷却窒息消火効果は従来の消火設備よりも増大している。
【0030】
また、火源側に向けて放出される(局所的な放出となる)帯電水粒子は、防護区画内全域に向けた窒素ガスの放出を利用することで、消火対象となる防護区画が広く、帯電水粒子の放出位置から火源までが遠い場合であっても、十分な量の帯電水粒子を火源まで届けることができる。また、消火対象となる防護区画が狭い場合には、窒素ガスの放出の影響を受けないように制御して確実に火源に帯電水粒子が届かせることもでき、また窒素ガスと合わせて放出する場合であっても、帯電水粒子の静電気力により火源に水粒子が付着しやすいため、窒素ガスの放出による影響を低減させることができる。
【0031】
また、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果で消火性能を向上させているため、その分だけ窒素ガスの放出量を低減することができ、窒素を充填するための容器の数や容量を減らすことができ、その結果、容器を収納するための建屋等の保管施設を小さくでき、既設の二酸化炭素消火設備の代替として設置する可能性が高めることができる。
【0032】
また、窒素ガスの放出量が低減されることで、防護区画内の圧力上昇を抑制でき、その結果防護区画に避圧口を設ける必要性が無くなり、設備を新設する場合のコスト低減に寄与するだけでなく、避圧口がない既設の二酸化炭素消火設備に対して容易に代替することができる。
【0033】
また、窒素ガスの放出量が低減されることで、防護区画内の窒素濃度の上昇を抑制することでき、窒息による人の死亡等の事故を本質的に防止することを可能とする。
【0034】
また、帯電水粒子の放出についても、窒素ガスによる窒息効果で消火性能を向上させているため、帯電水粒子のみの消火設備に対して少量の帯電水粒子の放出で消火が可能であり、水損による被害を抑制低減することを可能とする。
【0035】
(第1の消火制御による効果)
また、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出することで、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により消火性能を高めて、効率良く・早期に消火することを可能とする。
【0036】
(第2の消火制御による効果)
また、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、窒素ガスと帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内への窒素ガスの放出を停止することで、消火開始直後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により消火性能を高めて、効率良く・早期に火災の規模を減少させると共に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果で消火可能とする。
【0037】
また、第2の消火制御では、帯電水粒子の放出時間を長くすることで帯電水粒子の放出量を十分に確保しているため、窒素ガスの放出時間を短くして、窒素ガスの放出量を低減させることができ、窒素を充填するための容器の数や容量の削減、防護区画に避圧口を設ける不必要性、防護区画内の窒素濃度の上昇の抑制については顕著に効果が生じる。
【0038】
また、容器に充填される窒素量を防護区画内に放出する量と帯電水粒子を放出するために使用する量との合計としてほぼ一定にすることで、窒素を充填するための容器の数や容量が増加することを防止することができる。当該効果について、以下の第3乃至7の消火制御についても同様である。
【0039】
(第3の消火制御による効果)
また、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、窒素ガスと帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に防護区画内への帯電水粒子の放出を停止することで、消火開始直後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により消火性能を高めて、効率良く・早期に火災の規模を減少させると共に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果で消火可能とする。
【0040】
また、第3の消火制御では、窒素ガスの放出時間を長くすることで窒素ガスの放出量を十分に確保しているため、帯電水粒子の放出時間を短くして、帯電水粒子の放出量を低減させることができ、水損による被害の抑制・低減については顕著に効果が生じる。
【0041】
(第4の消火制御による効果)
また、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内に窒素ガスを放出することで、消火開始直後には、窒素ガスの放出の影響を受けることなく火源まで帯電水粒子を届け、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果により、効率良く・早期に火災の規模を減少させ、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により消火性能を高めて消火可能とする。
【0042】
また、第4の消火制御では、帯電水粒子の放出時間を長くすることで帯電水粒子の放出量を十分に確保しているため、窒素ガスの放出時間を短くして、窒素ガスの放出量を低減させることができ、窒素を充填するための容器の数や容量の削減、防護区画に避圧口を設ける不必要性、防護区画内の窒素濃度の上昇の抑制については顕著に効果が生じる。
【0043】
(第5の消火制御による効果)
また、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出することで、消火開始直後には、窒素ガスによる窒息消火効果により、効率良く・早期に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により消火性能を高めて消火可能とする。
【0044】
また、第5の消火制御では、窒素ガスの放出時間を長くすることで窒素ガスの放出量を十分に確保しているため、帯電水粒子の放出時間を短くして、帯電水粒子の放出量を低減させることができ、水損による被害の抑制・低減については顕著に効果が生じる。
【0045】
(第6の消火制御による効果)
また、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を停止すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出することで、消火開始直後には、窒素ガスによる窒息消火効果により、効率良く・早期に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出の影響を受けることなく火源まで帯電水粒子を届け、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果により消火可能とする。
【0046】
(第7の消火制御による効果)
また、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を停止すると共に防護区画内に窒素ガスを放出することで、消火開始直後には、窒素ガスの放出の影響を受けることなく帯電水粒子による冷却窒息消火効果により、効率良く・早期に火災の規模を低減させ、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果により消火可能とする。
【0047】
(第1の消火設備構成の効果)
第1の消火設備構成とすることで、第1の消火制御及び第3の消火制御を実現することを可能とする。また、帯電噴霧消火設備は、従来の帯電噴霧消火設備では水充填容器に充填された水を加圧するためにポンプを連続運転する必要があったが、本発明にあっては、窒素充填容器に充填された窒素ガスを利用することで水充填容器に充填された水を加圧できるため、ポンプ及びポンプを運転させるための電源系統は不要であり、非常電源の必要容量が大きく低減できることから、消火設備の規模及びコストを低減させることを可能とする。
【0048】
(第2の消火設備構成の効果)
第2の消火設備構成とすることで、第1の消火制御乃至第7の消火制御の全てを実現することを可能とする。また、この場合にも、窒素充填容器に充填された窒素ガスを利用することで水充填容器に充填された水を加圧できるため、ポンプ及びポンプを運転させるための電源系統は不要であり、非常電源の必要容量が大きく低減できることから、消火設備の規模及びコストを低減させることを可能とする。
【0049】
(消火方法の効果)
本発明による消火方法の効果は、前述した消火設備の効果と同様になることから、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】消火設備の第1実施形態を示した説明図である。
図2】帯電噴霧ヘッドの実施形態を示した説明図である。
図3】高圧電源部の実施形態を帯電噴霧ヘッドと共に示した説明図である。
図4】消火設備の第1実施形態による第1の消火制御を示したフロー図である。
図5】消火設備の第2実施形態を示した説明図である。
図6】第1乃至第7の消火制御による窒素ガスと帯電水粒子の放出を示したタイムチャートである。
図7】消火設備の第2実施形態による第2の消火制御を示したフロー図である。
図8】消火設備の第2実施形態による第3の消火制御を示したフロー図である。
図9】消火設備の第2実施形態による第4の消火制御を示したフロー図である。
図10】消火設備の第2実施形態による第5の消火制御を示したフロー図である。
図11】消火設備の第2実施形態による第6の消火制御を示したフロー図である。
図12】消火設備の第2実施形態による第7の消火制御を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に、本発明に係る消火設備及び消火方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0052】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に仕切られた防護区画内の火災を消火する消火設備に関するものである。
【0053】
ここで、「仕切られた防護区画」とは、建物の床・壁・天井・屋根等で仕切られた空間であり、防護区画内が完全に密閉されているものに限定されず、消火設備により放出される窒素ガス及び帯電水粒子を防護区画内に留めて窒素ガス及び帯電水粒子の放出による消火効果を発揮することが出来る程度に仕切られているものを含む概念である。
【0054】
また、本実施形態の「消火設備」は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内全域に向けた窒素ガスの放出と火源側に向けた帯電水粒子の放出とを各々制御して放出するものである。
【0055】
ここで、「火源側に向けた帯電水粒子の放出」とは、火災が発生した場合に火源となることが想定される位置・対象物に向けた帯電水粒子の放出であり、例えば防護区画内の床面や火源になり得る機器等側に向けた帯電水粒子の放出を含むものである。
【0056】
また、本実施形態では、窒素ガス及び帯電水粒子を放出して行う消火制御として、第1の消火制御乃至第7の消火制御がある。
【0057】
第1の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出すものである。ここで、「合わせて放出する」とは、窒素ガスの放出開始時と帯電水粒子の放出開始時が完全に一致することに限定されず、窒素ガスと帯電水粒子との放出によりそれぞれの消火効果を合わせた相乗効果が発揮できるように、窒素ガスの放出時間と帯電水粒子の放出時間が重なるように放出するものであれば良い。これは、第2の消火制御及び第3の消火制御の場合についても同様である。
【0058】
第2の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、窒素ガスと帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内への窒素ガスの放出を停止するものである。つまり、消火開始直後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により、効率良く・早期に火災の規模を減少させると共に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果で消火可能とし、帯電水粒子の放出時間を長くすることで帯電水粒子の放出量を十分に確保して、窒素ガスの放出時間を短くして、窒素ガスの放出量を低減させることができることから、窒素を充填するための容器の数や容量の削減、防護区画に避圧口を設ける不必要性、防護区画内の窒素濃度の上昇の抑制については顕著に効果が生じるものである。
【0059】
第3の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、防護区画内への窒素ガスと帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に帯電水粒子の放出を停止するものである。つまり、消火開始直後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により、効率良く・早期に火災の規模を減少させると共に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果で消火可能とし、窒素ガスの放出時間を長くすることで窒素ガスの放出量を十分に確保して、帯電水粒子の放出時間を短くして、帯電水粒子の放出量を低減させることができることから、水損による被害の抑制低減については顕著に効果が生じるものである。
【0060】
第4の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内に窒素ガスを放出するものである。つまり、消火開始直後には、窒素ガスの放出の影響を受けることなく火源まで帯電水粒子を届け、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果により、効率良く・早期に火災の規模を減少させ、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により消火可能とし、帯電水粒子の放出時間を長くすることで帯電水粒子の放出量を十分に確保して、窒素ガスの放出時間を短くして、窒素ガスの放出量を低減させることができることから、窒素を充填するための容器の数や容量の削減、防護区画に避圧口を設ける不必要性、防護区画内の窒素濃度の上昇の抑制については顕著に効果が生じるものである。
【0061】
第5の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出するものである。つまり、消火開始直後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果により、効率良く・早期に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果を合わせた相乗効果により消火可能とし、窒素ガスの放出時間を長くすることで窒素ガスの放出量を十分に確保して、帯電水粒子の放出時間を短くして、帯電水粒子の放出量を低減させることができることから、水損による被害の抑制低減については顕著に効果が生じるものである。
【0062】
第6の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、窒素ガスの放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を停止すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出するものである。つまり、消火開始直後には、窒素ガスによる窒息消火効果により、効率良く・早期に燃焼反応を抑制し、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出の影響を受けることなく火源まで帯電水粒子を届け、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果により消火可能とする。
【0063】
第7の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、帯電水粒子の放出から所定時間が経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を停止すると共に防護区画内に窒素ガスを放出するものである。つまり、消火開始直後には、窒素ガスの放出の影響を受けることなく火源まで帯電水粒子を届け、帯電水粒子による冷却窒息消火効果により、効率良く・早期に火災の規模を低減させ、消火開始から所定時間が経過した後には、窒素ガスの放出による窒息消火効果により消火可能とする。
【0064】
また、全ての消火制御について、窒素ガスの放出時間及び帯電水粒子の放出時間は任意であり、防護区画の規模・消火設備を設置できるスペース等を考慮する共に、帯電水粒子のみを放出する場合に消火に必要となる帯電水粒子の放出量よりも帯電水粒子の放出量を軽減することができる窒素ガスの放出量、及び窒素ガスのみを放出する場合に消火に必要となる窒素ガスの放出量よりも窒素ガスの放出量を軽減することができる帯電水粒子の放出量が放出可能となるように定められる。
【0065】
また、消火設備の構成として、第1の消火設備構成と第2の消火設備構成がある。「第1の消火設備構成」は、第1の消火制御及び第3の消火制御を実現するための構成であり、「第2の消火設備構成」は、第1の消火制御乃至第7の消火制御を実現するための構成であり、どちらの消火設備構成も、窒素消火設備、帯電噴霧消火設備、及び制御部で構成されるものである。
【0066】
まず「窒素消火設備」とは、防護区画内に窒素ガスを放出して火災を消火するものであり、窒素ガスの放出により防護区画内の酸素濃度を低減させる窒息消火を行うものである。また、第1の消火設備構成にあっては、窒素ヘッド、窒素充填容器、窒素配管経路及び窒素開放弁を備えるものであり、第2の消火設備構成にあっては、窒素ヘッド、窒素充填容器、窒素配管経路、第1窒素開放弁及び第2窒素開放弁を備えるものである。
【0067】
ここで、「窒素ヘッド」とは、防護区画内に設置され、窒素ガスを放出するものであり、設置される数・種類等は任意であり、例えば「窒素ノズル」等を含むものである。
【0068】
また、「窒素充填容器」とは、窒素ガスを充填しておくものであり、容器の数・容量・種類等は任意であり、防護区画の規模・消火設備を設置できるスペース等を考慮して適宜決定されるものである。
【0069】
また、「窒素配管経路」とは、一端側が窒素ヘッドに接続されると共に他端側が窒素充填容器に接続され、窒素充填容器から窒素ヘッドに窒素ガスを供給するための経路であり、窒素ガスを窒素充填容器から窒素ヘッドまで供給することができるのであれば、その配管の構造・種類等は任意である。
【0070】
また「窒素開放弁」とは、窒素配管経路に配置され、窒素配管経路による窒素ガスの供給経路を開閉するものであり、窒素ガスの供給経路を開閉できるものであれば、その構造・種類等は任意であるが、例えば遠隔制御可能な電磁弁等を含むものである。また、第2の消火設備構成にあっては、「第1の窒素開放弁」と「第2の窒素開放弁」を備えることで、第1の消火制御乃至第7の消火制御の全ての消火制御を可能としている。
【0071】
続いて、「帯電噴霧消火設備」とは、防護区画内に帯電水粒子を放出して火災を消火するものであり、帯電水粒子の静電気力により火源に付着する水粒子の量を増加させて蒸発気化熱の吸収による温度低下、水蒸気発生による酸素の排除に伴う酸素濃度の低減による冷却窒息消火を行うものである。また、第1の消火設備構成及び第2の消火設備構成共に、帯電噴霧ヘッド、高圧電源部、水充填容器、加圧配管経路、水配管経路、水開放弁を備えるものである。
【0072】
ここで、「帯電噴霧ヘッド」とは、防護区画内に設置され、帯電水粒子を放出するものであり、設置される数・種類等は任意であり、「帯電噴霧ノズル」を含むものである。
【0073】
また、「帯電水粒子」とは、帯電噴霧ヘッドから放出される水粒子を帯電させたものであり、例えば帯電噴霧ヘッドが備える2つの電極間に所定の電圧を印加することにより水粒子を帯電させて放出するものであり、より具体的には高圧電源部から帯電噴霧ヘッドに印加された所定の高電圧により発生した高電界中を通過させる誘導帯電方式で帯電させた水粒子である。なお、「帯電水粒子」とは、「帯電噴霧」、「帯電微噴霧」、「帯電水微噴霧」等を含む概念である。
【0074】
また、「高圧電源部」とは、帯電噴霧ヘッドに所定の高電圧を印加するものであり、「所定の高電圧」とは、水粒子を帯電させることが可能な電圧を含まれたものであれば、その電圧範囲・種類は任意であり、例えば直流電圧、交流電圧、パルス電圧等を含むものである。
【0075】
また、「水充填容器」とは、水を充填しておくものであり、容器の数・容量・種類等は任意であり、防護区画の規模・消火設備を設置できるスペース等を考慮して適宜決定されるものである。また、充填される水は、水のみであることに限定されず水の成分が含まれているものであれば良く、例えば消火効果を向上させるために、水に消火剤を含んだものであっても良い。
【0076】
また、「加圧配管経路」とは、窒素充填容器から水充填容器に窒素ガスを導入するための経路であり、窒素ガスを窒素充填容器から水充填容器まで導入することができるのであれば、その配管の構造・種類等は任意である。
【0077】
また、「水配管経路」とは、一端側が帯電噴霧ヘッドに接続されると共に他端側が水充填容器内に配置され、水充填容器から帯電噴霧ヘッドに水を供給するための経路であり、水を水充填容器から帯電噴霧ヘッドまで供給することができるのであれば、その配管の構造・種類等は任意である。
【0078】
また「水開放弁」とは、水配管経路に配置され、水配管経路による水の供給経路を開閉するものであり、水の供給経路を開閉できるものであれば、その構造・種類等は任意であるが、例えば遠隔制御可能な電磁弁等を含むものである。
【0079】
また、「制御部」とは、防護区画内の火災が検出された場合に、窒素消火設備を制御して窒素ヘッドから窒素ガスを放出させると共に、帯電噴霧消火設備を制御して帯電噴霧ヘッドから帯電水粒子を放出させる制御を行うものであり、これにより第1の消火制御乃至第7の消火制御を行うものである。
【0080】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「仕切られた防護区画」が「建物の防護区画」であり、「第1の消火設備構成」を「消火設備の第1実施形態」とし、「第2の消火設備構成」を「消火設備の第2実施形態」とし、「防護区画内に複数の窒素ヘッドと帯電噴霧ヘッドが配置された」場合について、具体的内容を説明する。
【0081】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の具体的内容について、以下のように分けて説明する。
a.消火設備の第1実施形態
a1.窒素消火設備
a2.帯電噴霧消火設備
a3.帯電噴霧ヘッド
a4.高圧電源部
a5.制御盤
b.第1の消火制御
c.消火設備の第2実施形態
d.第2の消火制御
e.第3の消火制御
f.第4の消火制御
g.第5の消火制御
h.第6の消火制御
i.第7の消火制御
j.本発明の変形例
【0082】
[a.消火設備の第1実施形態]
消火設備の第1実施形態について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火設備の第1実施形態を示した図1を参照する。
【0083】
図1に示すように、建物の防護区画10には、窒素消火設備の窒素ヘッド12と帯電噴霧消火設備の帯電噴霧ヘッド14が例えば2基ずつ設置されている。
【0084】
(a1.窒素消火設備)
窒素消火設備について、より詳細に説明する。本実施形態に設けられた窒素消火設備は、窒素ヘッド12、窒素充填容器20、窒素供給配管24及び窒素開閉弁30で構成される。
【0085】
窒素ヘッド12は火災発生時に防護区画10内に窒素ガスを放出するものであり、例えば防護区画10の天井面の上隅の相対する位置に放出方向を水平乃至斜め下向きにして配置され、窒素ガスを防護区画10内全域に放出することで、放出した窒素ガスを防護区画10内全域に均一に分布させる。
【0086】
窒素充填容器20は窒素ガスを、例えば30MPaの加圧状態で充填しており、防護区画10の酸素濃度を消火濃度以下に低下させるに必要な量の窒素ガスを充填するものであるが、本実施形態にあっては、窒素ガスの放出による消火に加えて帯電噴霧消火設備の帯電水粒子の放出による消火を組み合わせて行うことから、窒素充填容器20の窒素ガスの充填量は、窒素ガスのみを放出して消火する際に必要となる充填量より少ない量、例えばその半分の充填量としている。
【0087】
窒素供給配管24は、窒素配管経路を形成するものであり、その一端が防護区画10内に配置された窒素ヘッド12に接続され、他端が防護区画10外の保管施設に配置された窒素充填容器20に接続され、窒素充填容器20から窒素ヘッド12に窒素ガスを供給する。
【0088】
窒素開閉弁30は、窒素供給配管24の窒素充填容器20側に配置され、窒素充填容器20から窒素ヘッド12への窒素ガスの供給経路を開閉する弁であり、その構造や種類は任意であるが、例えば遠隔制御可能な電磁弁等が使用される。本実施形態にあっては、窒素開閉弁30は制御盤34からの制御信号により開作動又は閉作動するものであり、窒素開閉弁30は通常時には閉鎖状態にある。
【0089】
(a2.帯電噴霧消火設備)
帯電噴霧消火設備について、より詳細に説明する。本実施形態に設けられた帯電噴霧消火設備は、帯電噴霧ヘッド14、水充填容器22、水供給配管26、加圧配管28、水開閉弁32、高圧電源部38及び高圧ケーブル40で構成される。
【0090】
帯電噴霧ヘッド14は、火災発生時に防護区画10内に帯電水粒子を放出するものであり、例えば防護区画10の天井面の2箇所に放出方向を下向きにして配置されて局所放出となるが、窒素ヘッド12からの防護区画10内全域に放出される窒素ガスを利用することによって防護区画10内全域に均一に水粒子を分布させることを可能とする。
【0091】
水充填容器22は、帯電噴霧ヘッド14に供給する水を充填するものであり、水の充填量は任意であるが、以下に詳細を説明する第1の消火制御乃至第7の消火制御により帯電水粒子を放出することができる十分な量とする。また、本実施形態にあっては、帯電水粒子の放出による消火に加えて窒素消火設備の窒素ガスの放出による消火を組み合わせて行うことから、水充填容器22の水の充填量は、帯電水粒子のみを放出して消火する際に必要となる充填量より少ない量となる。
【0092】
水供給配管26は、水配管経路を形成するものであり、その一端が防護区画10に配置された帯電噴霧ヘッド14に接続され、他端が防護区画10外の保管施設に配置された充填容器22に充填している水に浸漬された状態とされ、水充填容器22から帯電噴霧ヘッド14に水を供給する。
【0093】
加圧配管28は、加圧配管経路を形成するものであり、その一端が水充填容器22に引き込まれ、水充填容器22に充填している水の上部の空間に位置するように配置され、他端が窒素供給配管24の窒素開閉弁30より窒素ヘッド12側に分岐接続されている。このため、窒素開閉弁30が開動作すると、窒素ガスが窒素充填容器20から加圧配管28を経由して水充填容器22の容器内上部の空間に導入されて水充填容器22に充填されている水を加圧することになり、窒素充填容器20から水充填容器22への窒素ガスの導入がポンプによる加圧と同等に機能することから、従来の帯電噴霧消火設備のポンプ設備を不要とする。
【0094】
水開閉弁32は、水供給配管26の水充填容器22側に配置され、水充填容器22から帯電噴霧ヘッド14への水の供給経路を開閉する弁であり、その構造や種類は任意であるが、例えば遠隔制御可能な電磁弁等が使用される。本実施形態にあっては、水開閉弁32は制御盤34からの制御信号により開作動又は閉作動するものであり、水開閉弁32は通常時には閉鎖状態にある。
【0095】
(a3.帯電噴霧ヘッド)
帯電噴霧消火設備の帯電噴霧ヘッドについて、より詳細に説明する。当該説明は帯電噴霧ヘッドを取り出して示した図2を参照する。なお、図2(A)は帯電噴霧ヘッドを放出側から見た斜視図を示し、図2(B)は側面からみた断面図を示す。
【0096】
図2に示すように、帯電噴霧ヘッド14は、帯電水粒子を放出するものであり、その構成や構造は任意であるが、一例としてボディー54、噴霧ノズル部56、電極保持部58、誘導電極部60、水側電極部62、及び給水接続部64で構成されるものである。ボディー54、噴霧ノズル部56、電極保持部58及び給水接続部64は絶縁材質で作られている。
【0097】
ボディー54の内部には噴霧軸55の方向に貫通穴が形成され、ボディー54に対して下側(放出側)から導電性の水側電極部62が嵌め込まれ、水側電極部62の上側に給水接続部64が嵌め込まれ、水側電極部62の電極接続部62aに外部から高圧ケーブルのアースケーブルが接続される。また給水接続部64には加圧された水が供給される。水側電極部62の下側には噴霧ノズル部56が設けられ、例えば平均粒子径が100~300μm程度の水粒子を放出する。
【0098】
噴霧ノズル部56の下側の開放空間には、電極保持部58によりリング形状の誘導電極部60が配置される。誘導電極部60の構成や構造は任意であるが、例えば導電性の電極心材を絶縁被覆して形成されている。誘導電極部60のケーブル接続部60aには外部から高圧ケーブルの電圧印加ケーブルが接続される。
【0099】
誘導電極部60と水側電極部62との間には、図1に示した高圧電源部38から、例えば水粒子を帯電させることが可能な電圧範囲中の所定調整範囲(例えば0.5kV~20kV)内で調整された所定電圧(例えば10kVの直流電圧)が印加される。この印加電圧により、誘導電極部60のリング部の周囲に所定の外部電界が形成され、誘導帯電方式により噴霧ノズル部56から放出された水粒子が誘導電極部60のリング部を通過することで帯電される。
【0100】
ここで、所定調整範囲は、水粒子を帯電させることのできない電圧範囲を含んでいても良く、その上で水粒子を帯電させることが可能な所定電圧に調整できれば良いものである。また、印加電圧の極性(プラス/マイナス)は、高圧電源部38で切り替える。
【0101】
帯電噴霧ヘッド14による水粒子の帯電は、例えば水側電極部62を基準電位(アース電位、0V)として誘導電極部60の電位がプラスとなるように所定の直流電圧を印加す
ると、噴霧ノズル部56から放出される水粒子はマイナス極性に帯電される。また水側電極部62を基準電位(アース電位、0V)として誘導電極部60の電位がマイナスとなる
ように所定の直流電圧を印加すると、噴霧ノズル部56から放出される水粒子はプラス極性に帯電される。また、誘導電極部60と水側電極部62との間に印加する電圧の絶対値を、例えば0.5kV~20kVの範囲にすると、火花放電の発生が防止され、安全を確保しながら帯電した水粒子の噴霧流が生成される。
【0102】
なお、帯電噴霧ヘッド14の構成や構造は任意であり、図2に限定されず、水粒子を生成すると共に生成した水粒子を帯電させて帯電水粒子を放出できる適宜の構造や公知の構造を含むものである。
【0103】
(a4.高圧電源部)
高圧電源部38について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、高圧電源部の実施形態を帯電噴霧ヘッドと共に示した図3を参照する。
【0104】
高圧電源部38は、帯電噴霧ヘッド14にて帯電水粒子を生成するための高電圧を高圧ケーブル40により供給するものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば図3に示すように、電圧調整部として機能する高電圧可変回路42と、極性切替部として機能する転極回路44を備えるものである。また図3では、高圧ケーブル40は、誘導電極部60側に接続されるケーブルを電圧印加ケーブル40aとし、水側電極部62側に接続されるケーブルをアースケーブル40bとしている。
【0105】
高圧電源部38からの電圧印加ケーブル40aは帯電噴霧ヘッド14ごとに分岐し、電流制限抵抗46を介して各帯電噴霧ヘッド14の誘導電極部60に接続され、各帯電噴霧ヘッド14の水側電極部62側は共通接続され、そこに高圧電源部38からのアースケーブル40bが接続されることにより、誘導電極部60と水側電極部62の間に高電圧を印加した場合に帯電噴霧ヘッド14から放出される水粒子を帯電させる。ここで、電圧印加ケーブル40aとアースケーブル40bは、絶縁性の高い耐圧ケーブルを使用するが、直流電圧のみを印加する場合は、正極側のケーブルを耐圧ケーブルとし、負極側のケーブルは通常の低圧ケーブルとしても良い。
【0106】
高電圧可変回路42は、制御盤34からの制御信号に応じて、誘導電極部60と水側電極部62との間に印加する電圧を調整するものであり、これにより帯電噴霧ヘッド14から火災の消火に適した帯電量の帯電水粒子を放出することができる。また、印加電圧の絶対値を下げることによって帯電量を減らした帯電水粒子とすることで、帯電し易い消火対象に対して帯電水粒子による帯電量が増えることによって起きる可能性がある放電事故を未然に防ぐことを可能とする。
【0107】
転極回路44は、制御盤34からの制御信号に応じて、誘導電極部60と水側電極部62との間に印加する電圧の極性を切替えるものであり、これにより帯電噴霧ヘッド14から放出する帯電水粒子の帯電極性をプラス極性又はマイナス極性に切替え、消火に適した帯電極性の帯電水粒子を放出することができる。例えば、消火対象の帯電極性に対し、反対の極性に帯電した帯電水粒子を含有した帯電水粒子気流を放出することで、より高い消火効果が期待できる。
【0108】
(a5.制御盤)
制御盤34について、より詳細に説明する。制御盤34は、防護区画10内で火災が発生した場合に、窒素消火設備を制御して窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させると共に、帯電噴霧消火設備を制御して帯電噴霧ヘッド14から帯電水粒子を放出させて、火災を消火するものである。また、制御盤34は自動モード又は手動モードが設定される。
【0109】
図1に示すように、防護区画10外に操作箱36が設置され、操作箱36は制御盤34に信号線で接続されている。また、操作箱36には起動スイッチ(図示せず)と起動スイッチを保護する扉(図示せず)が備えられている。
【0110】
操作箱36の起動スイッチが操作された場合には、制御盤34は、防護区画10外の出入口付近に設置された放出表示灯(図示せず)を作動させ、防護区画10内に窒素ガスと帯電水粒子が放出されていることを表示し、人が防護区画10内に入らないように知らせる。また、制御盤34は、防護区画10内に設置しているスピーカ(図示せず)から窒素ガスと帯電水粒子が放出されることを示す注意警報と退避警報を含むガス放出警報音を出力させ、人が防護区画10内に存在する場合は直ちに避難することを促す。
【0111】
また、防護区画10内には、火災を監視するための火災感知器が設置されている。火災感知器の数、機能、種類は任意であるが、例えば煙感知器16と熱感知器18が配置され、制御盤34からの感知器回線にそれぞれが接続されている。
【0112】
制御盤34は、自動モードが設定されている場合には、例えば煙感知器16と熱感知器18の両方で火災が検出されて発報する、2回線発報となるAND条件が煙感知器16と熱感知器18の両方から送信される火災発報信号により得られたときに、火災と断定して消火起動条件が成立したと判断し、所定時間のカウントダウンを開始するとともに、スピーカから窒素ガスと帯電水粒子が放出されることを示す注意警報と退避警報のガス放出警報音を出力させる。なお、煙感知器16の発報信号は、別途設けられた火災報知設備の受信機へ移報され、受信機側で火災警報が出力される。
【0113】
そして、制御盤34でカウントダウンが終了すると、窒素消火設備を制御して窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させると共に、帯電噴霧消火設備を制御して帯電噴霧ヘッド14から帯電水粒子を放出させる消火制御が行われる。
【0114】
また制御盤34及び操作箱36には、例えば2桁表示の7セグメント表示器が設けられており、カウントダウンを開始すると、残り時間の秒数を順次表示し、カウントダウン終了で零秒を表示する。
【0115】
また制御盤34は、手動モードに設定されている場合には、監視員が目視又は煙感知器16の発報による火災警報から防護区画10での火災を発見し、防護区画10外に設置している操作箱36の起動スイッチを押すことで起動信号を制御盤34に送信する。
【0116】
制御盤34は、操作箱36からの起動信号の受信により、火災と断定して消火起動条件が成立したと判断し、自動モードが設定されている場合と同様に、カウントダウンを開始すると共にスピーカから窒素ガスと帯電水粒子が放出されることを示す注意警報と退避警報のガス放出警報音を出力させ、カウントダウンが終了すると、窒素消火設備を制御して窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させると共に、帯電噴霧設備を制御して帯電噴霧ヘッド14から帯電水粒子を放出させる消火制御を行う。
【0117】
[b.第1の消火制御]
図1に示した消火設備の第1実施形態に設けた制御盤34により行われる第1の消火制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、図1の消火設備による第1の消火制御のフローの一例を示した図4を参照する。
【0118】
制御盤34による第1の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子を合わせて放出するというものであり、その詳細は次のようになる。
【0119】
図4に示すように、図1の防護区画10内で火災が発生して(S1)、煙感知器16が火災による煙を検出した場合には煙感知器16が火災発報し(S2)、熱感知器18が火災による熱気流を受けた場合には熱感知器18が火災発報し(S3)、煙感知器16の火災発報に伴う火災警報から担当者が火災を発見して操作箱36の起動操作が行われることになる(S4)。そして、制御盤34は、火災による煙を検出した煙感知器16からの火災発報信号、火災による熱気流を受けた熱感知器18からの火災発報信号、起動操作された操作箱36からの起動信号の各信号を受信する(S5)。
【0120】
制御盤34が自動モードに設定されている場合には、例えば煙感知器16と熱感知器18の2回線から火災発報信号を受信したときに火災と断定し、消火起動条件が成立したと判断する(S6)。また、制御盤34が手動モードに設定されている場合には、操作箱36から起動信号を受信すると火災と断定し、消火起動条件が成立したと判断する(S6)。
【0121】
制御盤34は火災と断定して消火起動条件が成立したと判断すると、窒素開閉弁30を開作動させる(S7)。窒素開閉弁30が開作動すると、窒素ガスが窒素充填容器20から窒素供給配管24を経由して窒素ヘッド12に供給され、防護区画10内に窒素ガスが放出される。また、窒素開閉弁30が開作動されたときに、窒素ガスが窒素充填容器20から加圧配管28を経由して水充填容器22に導入され、水充填容器22に充填されている水を加圧する。
【0122】
続いて、制御盤34は高圧電源部38を作動させて帯電噴霧ヘッド14に所定の高電圧を印加させ(S8)、水開閉弁32を開作動させることで(S9)、加圧配管28を経由した窒素ガスの導入により加圧された水が水充填容器22から水供給配管26を経由して帯電噴霧ヘッド14へ供給され、帯電噴霧ヘッド14により水粒子を帯電させて、防護区画10内に帯電水粒子を放出させる。
【0123】
この結果、窒素ヘッド12からの窒素ガスの放出開始から間隔を空けることなく帯電噴霧ヘッド14からの帯電水粒子の放出が開始されるため、窒素ガスと帯電水粒子を合わせて放出することとなる(S10)。窒素ヘッド12からの窒素ガスの放出は、所定時間、例えば1~2分間で終了し、窒素ガスの放出終了に伴い帯電噴霧ヘッド14からの帯電水粒子の放出も終了する。
【0124】
このため、窒素ガスの放出による酸素濃度を低減させる窒息消火効果と、帯電水粒子の放出による蒸発気化熱の吸収による温度低下及び水蒸気発生による酸素の排除に伴う酸素濃度の低減による冷却窒息消火効果とを合わせた相乗効果により、高い消火効果を得ることを可能とする。
【0125】
また放出される水粒子は帯電していることから、火源周りに障害物があったとしても静電気力により火源に帯電水粒子が引きつけられるため、障害物等に妨げられることなく火源に対する帯電水粒子の到達量を増やすことができる。また、防護区画10内全域に放出される窒素ガスの放出に合わせて帯電水粒子が放出されるため、帯電噴霧ヘッド14から火源の位置までが遠い場合であっても火源まで帯電水粒子を到達させることを可能とする。また、火源に対して帯電噴霧ヘッド14からの帯電水粒子の放出が十分に届く距離であっても、帯電水粒子の静電気力により火源に水粒子が引きつけられるため、防護区画10内全域に放出される窒素ガスの影響を受けにくく、火源まで帯電水粒子を到達させることを可能とする。
【0126】
また、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果とを合わせた相乗効果による高い消火効果を得ているため、窒素充填容器20及び水充填容器22の容量や数を抑えることができる。また、水充填容器22に充填された水を加圧するためのポンプ設備の機能を窒素充填容器20からの窒素ガスの導入で実現することで、ポンプ設備及びポンプ設備に必要な電源系統を不要として設備規模を削減することできる。この結果、従来の窒素消火設備よりも必要な設備規模及び設備コストを抑えることができ、二酸化炭素消火設備の代替として窒素消火設備を設置する可能性を高めることができる。
【0127】
また、窒素ガスの放出量を従来の窒素ガスを用いた消火設備よりも減らすことができるため、窒素ガスの放出による防護区画10内に対する加圧を低減させ、防護区画10に避圧口を設置する必要がなくなることからも、従来の窒素ガスを用いた消火設備よりも設備コストを抑えることができ、二酸化炭素消火設備の代替として窒素消火設備を設置する可能性をより高めることができる。
【0128】
[c.消火設備の第2実施形態]
消火設備の第2実施形態について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火設備の第2実施形態を示した図5を参照する。
【0129】
図5に示すように、建物の防護区画10には、窒素消火設備の窒素ヘッド12と帯電噴霧消火設備の帯電噴霧ヘッド14が例えば2基ずつ設置されている。
【0130】
本実施形態の窒素消火設備は、窒素ヘッド12、窒素充填容器20、窒素供給配管24、第1窒素開閉弁30(30-1)及び第2窒素開閉弁30(30-2)で構成される。窒素ヘッド12、窒素充填容器20、窒素供給配管24は、図1の第1実施形態と同様であることから、その説明は省略する。
【0131】
図1の第1実施形態との相違点は、窒素開閉弁30の代わりに第1窒素開閉弁30(30-1)と第2窒素開閉弁30(30-2)が窒素供給配管24に配置されている点である。また、第1窒素開閉弁30(30-1)と第2窒素開閉弁30(30-2)は、その構造や種類は任意であるが、例えば遠隔制御可能な電磁弁などが使用される。
【0132】
本実施形態の帯電噴霧消火設備は、帯電噴霧ヘッド14、水充填容器22、水供給配管26、加圧配管28、水開閉弁32、高圧電源部38及び高圧ケーブル40で構成される。帯電噴霧ヘッド14、水充填容器22、水供給配管26、水開閉弁32、高圧電源部38及び高圧ケーブル40は、図1の第1実施形態と同様であることから、その説明は省略する。
【0133】
図1の第1実施形態との相違点は、加圧配管28が第1窒素開閉弁30(30-1)と第2窒素開閉弁30(30-2)の間の窒素供給配管24に分岐接続されている点である。
【0134】
本実施形態の制御盤34は、例えば図6(B)乃至図6(G)のタイムチャートに示す第2乃至第7の消火制御を行うものである。なお、図6(A)は消火設備の第1実施形態の制御盤34による図4のフロー図に詳細を示した窒素ガスと帯電水粒子を合わせて放出する第1の消火制御であり、第2乃至第7の消火制御と対比するために示している。
【0135】
図6(B)の第2の消火制御は、時刻t1で火災を断定した場合に、窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させると共に帯電噴霧ヘッド14から帯電水粒子を放出させ、時刻t2、例えば時刻t1から30秒乃至1分経過した時に窒素ガスの放出を停止させ、時刻t3、例えば時刻t2から30秒乃至1分経過した時に帯電水粒子の放出を停止させる制御である。図6(C)の第3の消火制御は、時刻t1で火災を断定した場合に、窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させると共に帯電噴霧ヘッド14から帯電水粒子を放出させ、時刻t2で帯電水粒子の放出を停止させ、時刻t3で窒素ガスの放出を停止させる制御である。
【0136】
図6(D)の第4の消火制御は、時刻t1で火災を断定した場合に、最初に帯電水粒子ヘッド14から帯電水粒子を放出させ、続いて時刻t2で窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させ、時刻t3で窒素ガスと帯電水粒子の放出を停止させる制御である。図6(E)の第5の消火制御は、時刻t1で火災を断定した場合に、最初に窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させ、続いて時刻t2で帯電水粒子ヘッド14から帯電水粒子を放出させ、時刻t3で窒素ガスと帯電水粒子の放出を停止させる制御である。
【0137】
図6(F)の第6の消火制御は、時刻t1で火災を断定した場合に、最初に窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させ、続いて時刻t2で窒素ヘッド12から窒素ガスの放出を停止させると共に帯電水粒子ヘッド14から帯電水粒子を放出させ、時刻t3で帯電水粒子の放出を停止させる制御である。図6(G)の第7の消火制御は、時刻t1で火災を断定した場合に、最初に帯電水粒子ヘッド14から帯電水粒子を放出させ、続いて時刻t2で帯電水粒子ヘッド14から帯電水粒子の放出を停止させると共に窒素ヘッド12から窒素ガスを放出させ、時刻t3で窒素ガスの放出を停止させる制御である。
【0138】
尚、以下に第2乃至第7の消火制御の詳細について説明するが、時刻t2を時刻t1から1分経過した時、時刻t3を時刻t2から1分経過した時として説明をする。
【0139】
[d.第2の消火制御]
図5に示した消火設備の第2実施形態に設けた制御盤34による第2の消火制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、図5の消火設備による第2の消火制御のフローの一例を示した図7を参照する。
【0140】
制御盤34による第2の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子を合わせて放出し、火災の断定から1分経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内への窒素ガスの放出を停止する制御であり、その詳細は次のようになる。
【0141】
図7に示すように、防護区画10で火災が発生してから制御盤34で火災と断定して消火起動条件が成立したと判断するまでの制御(S11~S16)は、図4の第1の消火制御の場合(S1~S6)と同様になることから、その説明は省略する。
【0142】
制御盤34は火災と断定して消火起動条件が成立したと判断すると(S16)、第1窒素開閉弁30(30-1)を開作動させ(S17)、窒素充填容器20から加圧配管28を経由して窒素ガスが水充填容器22に導入され、水充填容器22に充填されている水を加圧する。続いて、制御盤34は第2窒素開閉弁30(30-2)を開作動させ(S18)、窒素充填容器20から窒素供給配管24を経由して窒素ガスを窒素ヘッド12に供給し、防護区画10内に窒素ガスを放出させる(S19)。
【0143】
続いて、制御盤34は高圧電源部38を作動させて帯電噴霧ヘッド14に所定の高電圧を印加させ(S20)、水開閉弁32を開作動させることで(S21)、加圧配管28を経由した窒素ガスの導入により加圧された水が水充填容器22から水供給配管26を経由して帯電噴霧ヘッド14へ供給され、帯電噴霧ヘッド14により水粒子を帯電させて、防護区画10内に帯電水粒子を放出させる(S22)。この結果、火災が断定されると窒素ガスと帯電水粒子が合わせて放出される。尚、火災と断定して消火起動条件が成立したと判断した場合に、先に帯電水粒子を放出させてから窒素ガスを放出させてもよい。
【0144】
続いて、制御盤34は、火災の断定から1分経過したこと(図6(B)の時刻t2)を判別すると(S23)、第2窒素開閉弁30(30-2)を閉作動させることで(S24)、窒素ガスの放出を停止させ(S25)、帯電水粒子の放出は継続させる。
【0145】
帯電水粒子の放出は、水損を低減するために、火災の断定から2分間を経過したとき(図6(B)の時刻t3)に停止させる。この場合の帯電水粒子の放出停止は、第1窒素開閉弁30(30-1)及び水開閉弁32を閉作動させ、高圧電源部38の作動を停止させることになる。また、水充填容器22の充填された水が空になることで停止するようにしても良く、帯電水粒子の放出は監視員が防護区画10内の火災の鎮火を確認して停止させるようにしても良い。
【0146】
このため、第2の消火制御は、火災の断定から1分間は窒素ガスと帯電水粒子が合わせて放出されることで、第1の消火制御と同様に、窒素ガスの放出による酸素濃度を低減させる窒息消火効果と、帯電水粒子の放出による蒸発気化熱の吸収による温度低下及び水蒸気発生による酸素の排除に伴う酸素濃度の低減による冷却窒息消火効果とを合わせた相乗効果により、高い消火効果を得ることを可能とする。
【0147】
また、窒素ガスと帯電水粒子の放出により火災の規模を減少させると共に燃焼反応を抑制した後1分を経過したときには、窒素ガスの放出を停止して帯電水粒子のみの放出に切り替えることで、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果で消火可能とし、帯電水粒子の放出量を十分に確保していることから、窒素ガスの放出時間を短くして窒素ガスの放出量を低減させることができる。そのため、窒素充填容器の容量や数を第1の消火制御よりも更に減らすことができることから、従来の窒素消火設備よりも更に設備規模や設備コストを抑えることができ、二酸化炭素消火設備の代替として窒素消火設備を設置する可能性を高めることができる。
【0148】
[e.第3の消火制御]
図5に示した消火設備の第2実施形態に設けた制御盤34による第3の消火制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、図5の消火設備による第3の消火制御のフローの一例を示した図8を参照する。
【0149】
制御盤34による第3の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、火災の断定から1分経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に防護区画内への帯電水粒子の放出を停止する制御であり、その詳細は次のようになる。
【0150】
図8に示すように、防護区画10で火災が発生してから制御盤34で火災を断定して消火起動条件が成立したと判断するまでの制御(S31~S36)は、図4の第1の消火制御の場合(S1~S6)と同様になることから、その説明は省略する。
【0151】
制御盤34は火災と断定して消火起動条件が成立したと判断すると(S36)、第1窒素開閉弁30(30-1)を開作動させ(S37)、窒素充填容器20から加圧配管28を経由して窒素ガスが水充填容器22に導入され、水充填容器22に充填されている水を加圧する。続いて、制御盤34は第2窒素開閉弁30(30-2)を開作動させ(S38)、窒素充填容器20から窒素供給配管24を経由して窒素ガスを窒素ヘッド12に供給し、防護区画10内に窒素ガスを放出させる(S39)。
【0152】
続いて、制御盤34は高圧電源部38を作動させて帯電噴霧ヘッド14に所定の高電圧を印加させ(S40)、水開閉弁32を開作動させることで(S41)、加圧配管28を経由した窒素ガスの導入により加圧された水が水充填容器22から水供給配管26を経由して帯電噴霧ヘッド14へ供給され、帯電噴霧ヘッド14により水粒子を帯電させて、防護区画10内に帯電水粒子を放出させる(S42)。ここまでの制御(S37~S42)は、図7に示した第2の消火制御(S17~S22)と同じになる。
【0153】
続いて、制御盤34は、火災の断定から1分経過したこと(図6(C)の時刻t2)を判別すると(S43)、高圧電源部38の作動を停止させ(S44)、水開閉弁32を閉作動させることで(S45)、帯電水粒子の放出を停止させ(S46)、窒素ガスの放出は継続させる。
【0154】
窒素ガスの放出は、火災の断定からから2分間を経過したとき(図6(C)の時刻t3)に停止させる。この場合の窒素ガスの放出停止は、第2窒素開閉弁30(30-2)を閉作動させることになる。また、窒素充填容器20の充填された窒素ガスが空になることで停止するようにしても良く、窒素ガスの放出は監視員が防護区画10内の火災の鎮火を確認して停止させるようにしても良い。
【0155】
このため、第3の消火制御は、火災の断定から1分間は窒素ガスと帯電水粒子が合わせて放出されることで、第1の消火制御と同様に、窒素ガスの放出による窒息消火効果と、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果とを合わせた相乗効果により、高い消火効果を得ることを可能とする。
【0156】
また、窒素ガスと帯電水粒子の放出により火災の規模を減少させると共に燃焼反応を抑制した後1分を経過したときには、帯電水粒子の放出を停止して窒素ガスのみの放出に切り替えることで、窒素ガスの放出による窒息消火効果で消火可能とし、窒素ガスの放出量を十分に確保していることから、帯電水粒子の放出時間を短くして帯電水粒子の放出量を低減させることができる。そのため、第1の消火制御よりも水損による被害を低減させることを可能とする。
【0157】
[f.第4の消火制御]
図5に示した消火設備の第2実施形態に設けた制御盤34による第4の消火制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、図5の消火設備による第4の消火制御のフローの一例を示した図9を参照する。
【0158】
制御盤34による第4の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、火災の断定から1分経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を継続すると共に防護区画内に窒素ガスを放出する制御であり、その詳細は次のようになる。
【0159】
図9に示すように、防護区画10で火災が発生してから制御盤34で火災と断定して消火起動条件が成立したと判断するまでの制御(S51~S56)は、図4の第1の消火制御の場合(S1~S6)と同様になることから、その説明は省略する。
【0160】
制御盤34は火災と断定して消火起動条件が成立したと判断すると(S56)、高圧電源部38を作動させて帯電噴霧ヘッド14に所定の高電圧を印加させ(S57)、第1窒素開閉弁30(30-1)を開作動させ(S58)、水開閉弁32を開作動させることで(S59)、窒素充填容器20から加圧配管28を経由して窒素ガスが水充填容器22に導入されて、窒素ガスが水充填容器22に充填されている水を加圧し、水が水充填容器22から水供給配管26を経由して帯電噴霧ヘッド14へ供給され、帯電噴霧ヘッド14により水粒子を帯電させて、防護区画10内に帯電水粒子を放出させる(S60)。
【0161】
続いて、制御盤34は、火災の断定から1分経過したこと(図6(D)の時刻t2)を判別すると(S61)、第2窒素開閉弁30(30-2)を開作動させ(S62)、窒素充填容器20から窒素供給配管24を経由して窒素ガスが窒素ヘッド12へ供給され、防護区画10内に窒素ガスを放出させる(S63)。
【0162】
帯電水粒子の放出は火災の断定から2分間を経過したとき(図6(D)の時刻t3)に停止させ、窒素ガスの放出は火災の断定から1分間を経過したとき(図6(D)の時刻t3)に停止させる。この場合の帯電水粒子の放出停止は、水開閉弁32を閉作動させ、高圧電源部38の作動を停止させることになり、窒素ガスの放出停止は、第2窒素開閉弁30(30-2)を閉作動させることになる。また、水充填容器22の充填された水、及び窒素充填容器20の充填された窒素ガスが空になることで停止するようにしても良く、帯電水粒子及び窒素ガスの放出は監視員が防護区画10内の火災の鎮火を確認して停止させるようにしても良い。
【0163】
このため、第4の消火制御は、火災の断定から1分間は帯電水粒子のみが放出されることになり、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果により、火災の規模を減少させる。そして、火災の断定から1分経過すると帯電水粒子の放出を継続しながら窒素ガスが放出されることになり、窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果とを合わせた相乗効果により、高い消火効果を得て消火することを可能とする。
【0164】
また、帯電水粒子の放出時間を2分間として帯電水粒子の放出量を十分に確保して、帯電水粒子の放出から1分経過した後に窒素ガスの放出を開始することで、窒素ガスの放出時間を短くして窒素ガスの放出量を低減させることができる。そのため、窒素充填容器の容量や数を第1の消火制御よりも更に減らすことができることから、従来の窒素消火設備よりも更に設備規模や設備コストを抑えることができ、二酸化炭素消火設備の代替として窒素消火設備を設置する可能性を高めることができる。
【0165】
[g.第5の消火制御]
図5に示した消火設備の第2実施形態に設けた制御盤34による第5の消火制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、図5の消火設備による第5の消火制御のフローの一例を示した図10を参照する。
【0166】
制御盤34による第5の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、火災の断定から1分経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を継続すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出する制御であり、その詳細は次のようになる。
【0167】
図10に示すように、防護区画10で火災が発生してから制御盤34で火災と断定して消火起動条件が成立したと判断するまでの制御(S71~76)は、図4の第1の消火制御の場合(S1~S6)と同様になることから、その説明は省略する。
【0168】
制御盤34は火災と断定して消火起動条件が成立したと判断すると(S76)、第1窒素開閉弁30(30-1)を開作動させ(S77)、第2窒素開閉弁30(30-2)を開作動させることで(S78)、窒素充填容器20から加圧配管28を経由して窒素ガスが水充填容器22に導入され、水充填容器22に充填している水を加圧すると共に、窒素充填容器20から窒素供給配管24を経由して窒素ガスが窒素ヘッド12へ供給され、防護区画10内に窒素ガスを放出させる(S79)。
【0169】
続いて、制御盤34は火災の断定から1分経過したこと(図6(E)の時刻t2)を判別すると(S80)、高圧電源部38を作動させて帯電噴霧ヘッド14に所定の高電圧を印加させ(S81)、水開閉弁32を開作動させることで(S82)、水が水充填容器22から水供給配管26を経由して帯電噴霧ヘッド14へ供給され、帯電噴霧ヘッド14により水粒子を帯電させて、防護区画10内に帯電水粒子を放出させる(S83)。
【0170】
窒素ガスの放出は、火災の断定から2分間を経過したとき(図6(E)の時刻t3)に停止させ、帯電水粒子の放出は、帯電水粒子の放出開始から1分間を経過したとき(図6(E)の時刻t3)に停止させる。この場合の帯電水粒子の放出停止は、水開閉弁32を閉作動させ、高圧電源部38の作動を停止させることになり、窒素ガスの放出停止は、第2窒素開閉弁30(30-2)を閉作動させることになる。また、水充填容器22の充填された水、及び窒素充填容器20の充填された窒素ガスが空になることで停止するようにしても良く、帯電水粒子及び窒素ガスの放出は監視員が防護区画10内の火災の鎮火を確認して停止させるようにしても良い。
【0171】
このため、第5の消火制御は、火災の断定から1分間は窒素ガスのみが放出されることになり、窒素ガスの放出に窒息消火効果により燃焼反応を抑制する。そして、火災の断定から1分経過すると、窒素ガスの放出を継続しながら帯電水粒子が放出されることになり窒素ガスの放出による窒息消火効果と帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果とを合わせた相乗効果により、高い消火効果を得て消火することを可能とする。
【0172】
また、窒素ガスの放出時間を2分間として窒素ガスの放出量を十分に確保して、窒素ガスの放出から1分経過した後に帯電水粒子の放出を開始することで、帯電水粒子の放出時間を短くして帯電水粒子の放出量を低減させることができる。そのため、第1の消火制御よりも水損による被害を低減させることを可能とする。
【0173】
[h.第6の消火制御]
図5に示した消火設備の第2実施形態に設けた制御盤34による第6の消火制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、図5の消火設備による第6の消火制御のフローの一例を示した図11を参照する。
【0174】
制御盤34による第6の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に窒素ガスを放出し、火災の断定から1分が経過した場合に、防護区画内への窒素ガスの放出を停止すると共に防護区画内に帯電水粒子を放出する制御であり、その詳細は次のようになる。
【0175】
図11に示すように、防護区画10で火災が発生してから制御盤34で火災を断定するまでの制御(S91~S96)は、図4の第1の消火制御の場合(S1~S6)と同様になることから、その説明は省略する。
【0176】
制御盤34は火災と断定して消火起動条件が成立したと判断すると(S96)、第1窒素開閉弁30(30-1)を開作動させ(S97)、第2窒素開閉弁30(30-2)を開作動させることで(S98)、窒素充填容器20から加圧配管28を経由して窒素ガスが水充填容器22に導入されて、水充填容器22に充填されている水を加圧すると共に、窒素充填容器20から窒素供給配管24を経由して窒素ガスが窒素ヘッド12へ供給され、防護区画10内に窒素ガスを放出させる(S99)。
【0177】
続いて、制御盤34は火災の断定から1分経過したこと(図6(F)の時刻t2)を判別すると(S100)、第2窒素開閉弁30(30-2)を閉作動させ(S101)、窒素ガスの放出を停止させる(S102)。
【0178】
続いて、制御盤34は、高圧電源部38を作動させて帯電噴霧ヘッド14に所定の高電圧を印加させ(S103)、水開閉弁32を開作動させることで(S104)、水が水充填容器22から水供給配管26を経由して帯電噴霧ヘッド14へ供給され、帯電噴霧ヘッド14により水粒子を帯電させて、防護区画10内に帯電水粒子を放出させる(S105)。
【0179】
帯電水粒子の放出は、水損を低減するため、帯電水粒子の放出開始から1分間を経過したとき(図6(F)の時刻t3)に停止させる。この場合の帯電水粒子の放出停止は、第1窒素開閉弁30(30-1)及び水開閉弁32を閉作動させ、高圧電源部38の作動を停止させることになる。また、水充填容器22の充填された水、及び窒素充填容器20の充填された窒素ガスが空になることで停止するようにしても良く、帯電水粒子の放出は監視員が防護区画10内の火災の鎮火を確認して停止させるようにしても良い。
【0180】
このため、第6の消火制御は、火災の断定から1分間は窒素ガスのみが放出されることになり、窒素ガスの放出による窒息消火効果により燃焼反応を抑制する。そして、火災の断定から1分経過すると、帯電水粒子の放出に切り替えて、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果により消火することを可能とする。
【0181】
[i.第7の消火制御]
図5に示した消火設備の第2実施形態に設けた制御盤34による第7の消火制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、図5の消火設備による第7の消火制御のフローの一例を示した図12を参照する。
【0182】
制御盤34による第7の消火制御は、防護区画内の火災が検出された場合に、防護区画内に帯電水粒子を放出し、火災の断定から1分経過した場合に、防護区画内への帯電水粒子の放出を停止すると共に防護区画内に窒素ガスを放出する制御であり、その詳細は次のようになる。
【0183】
図12に示すように、防護区画10で火災が発生してから制御盤34で火災を断定するまでの制御(S111~S116)は、図4の第1の消火制御の場合(S1~S6)と同様になることから、その説明は省略する。
【0184】
制御盤34は火災と断定して消火起動条件が成立したと判断すると(S116)、高圧電源部38を作動させて帯電噴霧ヘッド14に所定の高電圧を印加させ(S117)、第1窒素開閉弁30(30-1)を開作動させ(S118)、水開閉弁32を開作動させることで(S119)、窒素充填容器20から加圧配管28を経由して窒素ガスが水充填容器22に導入され、水充填容器22に充填している水を加圧し、水が水充填容器22から水供給配管26を経由して帯電噴霧ヘッド14へ供給され、帯電噴霧ヘッド14により水粒子を帯電させて、防護区画10内に帯電水粒子を放出させる(S120)。
【0185】
続いて、制御盤34は、火災の断定から1分経過したこと(図6(G)の時刻t2)を判別すると(S121)、高圧電源部38の作動を停止させ(S122)、また、水開閉弁32を閉作動させ(S123)、帯電水粒子の放出を停止させる(S124)。
【0186】
続いて、制御盤34は、第2窒素開閉弁30(30-2)を開作動させ(S125)、窒素充填容器20から窒素供給配管24を経由して窒素ガスが窒素ヘッド12へ供給され、防護区画10内に窒素ガスを放出させる(S126)。
【0187】
窒素ガスの放出は、窒素ガスの放出開始から1分間を経過したとき(図6(G)の時刻t3)に停止させる。この場合の窒素ガスの放出停止は、第2窒素開閉弁30(30-2)を閉作動させることになる。また、水充填容器22の充填された水、及び窒素充填容器20の充填された窒素ガスが空になることで停止するようにしても良く、窒素ガスの放出は監視員が防護区画10内の火災の鎮火を確認して停止させるようにしても良い。
【0188】
このため、第7の消火制御は、火災の断定から1分間は帯電水粒子のみが放出されることになり、帯電水粒子の放出による冷却窒息消火効果により火災の規模を減少させる。そして、火災の断定から1分経過すると、窒素ガスの放出に切り替えて、窒素ガスの放出による窒息消火効果により消火することを可能とする。
【0189】
[j.本発明の変形例]
本発明による消火設備の変形例について説明する。本発明の消火設備は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0190】
(第1の消火制御)
上記の実施形態にあっては、窒素ガスと帯電水粒子を合わせて放出させる第1の消火制御を、図1の消火設備の第1実施形態で行っているが、図5の消火設備の第2実施形態で行うようにしてもよい。図5の第2実施形態による第1の消火制御は、制御盤34で火災と断定して消火起動条件が成立したと判断した場合に、第1窒素開閉弁30(30-1)、第2窒素開閉弁30(30-2)及び水開閉弁32を開作動させると共に高圧電源部38を作動させる制御とすればよい。
【0191】
(第3の消火制御)
上記の実施形態にあっては、窒素ガスと帯電水粒子とを合わせて放出し、窒素ガスと帯電水粒子との放出から所定時間が経過した場合に、窒素ガスの放出を継続すると共に帯電水粒子の放出を停止する第3の消火制御を、図5の消火設備の第2実施形態で行っているが、図1の消火設備の第1実施形態で行うようにしてもよい。図1の第1実施形態による第3の消火制御は、制御盤34で火災と断定して消火起動条件が成立したと判断した場合に、窒素開閉弁30と水開閉弁32を開作動させると共に高圧電源部38を作動させ、火災と断定してから所定時間、例えば1分間が経過した場合に水開閉弁32を閉作動させて帯電水粒子の放出を停止させる制御とすればよい。
【0192】
(高圧電源部)
上記の実施形態にあっては、高圧電源部38から帯電微噴霧ヘッド14の誘導電極部60と水側電極部62との間に直流電圧を印加しているが、直流電圧以外に、パルス電圧、脈流電圧、及び交流電圧等を印加しても良い。また、高圧電源部18から誘導電極部60と水側電極部62との間に電圧を印加する場合に、電圧調整及び電圧極性切替えを可能としているが、印加する電圧及び又は電圧極性を固定してもよい。
【0193】
(その他)
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定はうけない。
【符号の説明】
【0194】
10:防護区画
12:窒素ヘッド
14:帯電噴霧ヘッド
16:煙感知器
18:熱感知器
20:窒素充填容器
22:水充填容器
24:窒素供給配管
26:水供給配管
28:加圧配管
30:窒素開閉弁
30(30-1):第1窒素開閉弁
30(30-2):第2窒素開閉弁
32:水開閉弁
34:制御盤
36:操作箱
38:高圧電源部
40:高圧ケーブル
40a:電圧印加ケーブル
40b:アースケーブル
42:高電圧可変回路
44:転極回路
46:電流制限抵抗
54:ボディー
56:噴霧ノズル部
58:電極保持部
60:誘導電極部
62:水側電極部
64:給水接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12