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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103546
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】電流検出装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20230720BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
G01R15/00 500
H01C13/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004125
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】原 一裕
(72)【発明者】
【氏名】小澤 裕
(72)【発明者】
【氏名】北川 正樹
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AA08
2G025AB05
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】実際の抵抗温度係数(TCR)を0に近づけ、電流測定精度を向上させることができる電流検出装置を提供する。
【解決手段】電流検出部2は、シャント抵抗器1の一対の電極6,7に電気的に接続された複数対の電圧検出接点8A~8Hと、複数対の電圧検出接点8A~8Hにそれぞれ接続された複数対の電圧信号配線9A~9Hと、複数対の電圧信号配線9A~9Hにそれぞれ接続された複数対の導体素子接続端子15A~15Hと、複数対の導体素子接続端子15A~15Hのうちのいずれか一対の導体素子接続端子に取り付けられた一対の導体素子20,21を備える。上記一対の導体素子接続端子は、シャント抵抗器1の抵抗温度係数の実測結果に基づいて予め選択される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体および該抵抗体の両側に接続された一対の電極を有するシャント抵抗器と、
前記シャント抵抗器に電気的に接続された電流検出部を備え、
前記電流検出部は、
前記一対の電極に電気的に接続された複数対の電圧検出接点と、
前記複数対の電圧検出接点にそれぞれ接続された複数対の電圧信号配線と、
前記複数対の電圧信号配線にそれぞれ接続された複数対の導体素子接続端子と、
前記複数対の導体素子接続端子のうちのいずれか一対の導体素子接続端子に取り付けられた一対の導体素子を備え、
前記一対の導体素子接続端子は、前記シャント抵抗器の抵抗温度係数の実測結果に基づいて予め選択されたものである、電流検出装置。
【請求項2】
予め選択された前記一対の導体素子接続端子は、前記複数対の電圧検出接点のうち、前記シャント抵抗器の抵抗温度係数が最も0に近い一対の電圧検出接点に電気的に接続されている、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記複数対の電圧検出接点は、前記抵抗体の両側に沿って配列されている、請求項1または2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記電流検出部は、
基台プレートと、
前記基台プレートを貫通して延びる複数対のスルーホールを備え、
前記複数対のスルーホールは、前記複数対の電圧信号配線上に設けられており、かつ前記複数対の電圧検出接点と前記複数対の導体素子接続端子との間に位置している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項5】
前記複数対の導体素子接続端子は前記基台プレートの表側に配置され、前記複数対の電圧検出接点は前記基台プレートの裏側に配置されている、請求項4に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記複数対の電圧検出接点は、前記一対の電極に面接続された一対の接点パッドから構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項7】
前記一対の接点パッドは、前記シャント抵抗器の前記抵抗体の両側に隣接して配置されており、
前記複数対の電圧信号配線は、前記一対の接点パッドの内側縁に接続されている、請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項8】
前記シャント抵抗器は、その幅方向に突出する突出部を有し、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部は、前記突出部を構成しており、
前記一対の接点パッドは、前記突出部を構成する前記一対の電極の一部に面接続されている、請求項6または7に記載の電流検出装置。
【請求項9】
前記一対の導体素子は、一対の抵抗器である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項10】
シャント抵抗器および電流検出部を製造し、前記シャント抵抗器は、抵抗体および該抵抗体の両側に接続された一対の電極を有しており、前記電流検出部は、複数対の電圧検出接点と、前記複数対の電圧検出接点にそれぞれ接続された複数対の電圧信号配線と、前記複数対の電圧信号配線にそれぞれ接続された複数対の導体素子接続端子を備えており、
前記複数対の電圧検出接点を前記一対の電極に電気的に接続し、
前記シャント抵抗器の抵抗温度係数の実測結果に基づいて、前記複数対の導体素子接続端子から予め選択された一対の導体素子接続端子に、一対の導体素子を取り付ける、電流検出装置の製造方法。
【請求項11】
前記一対の導体素子を取り付けることは、前記複数対の電圧検出接点のうち、前記シャント抵抗器の抵抗温度係数が最も0に近い一対の電圧検出接点に電気的に接続されている一対の導体素子接続端子に、一対の導体素子を取り付けることである、請求項10に記載の電流検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置およびその製造方法に関し、特にシャント抵抗器を備えた電流検出装置、および電流検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャント抵抗器は、電流検出用途に広く用いられている。温度変動の影響が小さい電流検出を可能とするために、シャント抵抗器には、その抵抗温度係数(TCR)はできるだけ0に近いことが要請されている。抵抗温度係数(TCR)とは、温度変化による抵抗値の変化の割合を示す指標であり、抵抗温度係数(TCR)が0に近づくほど抵抗値の変化が小さくなる。シャント抵抗器のTCRを改善するために、例えば、マンガニン(登録商標)などのTCRが小さい合金が抵抗体の材料として使用されることがある。
【0003】
シャント抵抗器を備えた電流検出装置は、インバータ装置、コンバータ装置、電気自動車のバッテリ監視BMS(Battery Management System)、電力網のエネルギ貯蔵装置BSS(Battery Storage System)などのさまざまな用途に用いられる。特に、バッテリエネルギ蓄積量を監視する用途では、初期測定精度(出荷調整精度)、温度変動に対する測定精度、経年変化に対する測定精度が、他の用途よりもさらに重要とされている。電流検出装置は、システムの全体に必要なバッテリ容量設計に影響し、システムコストを左右する。このため、電流検出装置には、電流の広範囲において高い測定精度が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003-518763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電流検出基板は、シャント抵抗器の電圧測定位置での電圧降下を測定することにより、電流を検出する。0にできるだけ近いTCRを持つシャント抵抗器を達成するために、シャント抵抗器の電圧測定位置はシミュレーションによって理論的に決められる。しかしながら、シャント抵抗器には、その寸法の僅かな違いや、材料組成の僅かな違い、電流検出基板の取り付け位置の違いがある。このような差違は、理論的な電圧測定位置と、実際の最適位置との間に差違を生じさせ、結果として電流測定精度を低下させる。
【0006】
そこで、本発明は、実際の抵抗温度係数(TCR)を0に近づけ、電流測定精度を向上させることができる電流検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、抵抗体および該抵抗体の両側に接続された一対の電極を有するシャント抵抗器と、前記シャント抵抗器に電気的に接続された電流検出部を備え、前記電流検出部は、前記一対の電極に電気的に接続された複数対の電圧検出接点と、前記複数対の電圧検出接点にそれぞれ接続された複数対の電圧信号配線と、前記複数対の電圧信号配線にそれぞれ接続された複数対の導体素子接続端子と、前記複数対の導体素子接続端子のうちのいずれか一対の導体素子接続端子に取り付けられた一対の導体素子を備え、前記一対の導体素子接続端子は、前記シャント抵抗器の抵抗温度係数の実測結果に基づいて予め選択されたものである、電流検出装置が提供される。
【0008】
一態様では、予め選択された前記一対の導体素子接続端子は、前記複数対の電圧検出接点のうち、前記シャント抵抗器の抵抗温度係数が最も0に近い一対の電圧検出接点に電気的に接続されている。
一態様では、前記複数対の電圧検出接点は、前記抵抗体の両側に沿って配列されている。
一態様では、前記電流検出部は、基台プレートと、前記基台プレートを貫通して延びる複数対のスルーホールを備え、前記複数対のスルーホールは、前記複数対の電圧信号配線上に設けられており、かつ前記複数対の電圧検出接点と前記複数対の導体素子接続端子との間に位置している。
一態様では、前記複数対の導体素子接続端子は前記基台プレートの表側に配置され、前記複数対の電圧検出接点は前記基台プレートの裏側に配置されている。
一態様では、前記複数対の電圧検出接点は、前記一対の電極に面接続された一対の接点パッドから構成されている。
一態様では、前記一対の接点パッドは、前記シャント抵抗器の前記抵抗体の両側に隣接して配置されており、前記複数対の電圧信号配線は、前記一対の接点パッドの内側縁に接続されている。
一態様では、前記シャント抵抗器は、その幅方向に突出する突出部を有し、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部は、前記突出部を構成しており、前記一対の接点パッドは、前記突出部を構成する前記一対の電極の一部に面接続されている。
一態様では、前記一対の導体素子は、一対の抵抗器である。
【0009】
一態様では、シャント抵抗器および電流検出部を製造し、前記シャント抵抗器は、抵抗体および該抵抗体の両側に接続された一対の電極を有しており、前記電流検出部は、複数対の電圧検出接点と、前記複数対の電圧検出接点にそれぞれ接続された複数対の電圧信号配線と、前記複数対の電圧信号配線にそれぞれ接続された複数対の導体素子接続端子を備えており、前記複数対の電圧検出接点を前記一対の電極に電気的に接続し、前記シャント抵抗器の抵抗温度係数の実測結果に基づいて、前記複数対の導体素子接続端子から予め選択された一対の導体素子接続端子に、一対の導体素子を取り付ける、電流検出装置の製造方法が提供される。
一態様では、前記一対の導体素子を取り付けることは、前記複数対の電圧検出接点のうち、前記シャント抵抗器の抵抗温度係数が最も0に近い一対の電圧検出接点に電気的に接続されている一対の導体素子接続端子に、一対の導体素子を取り付けることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シャント抵抗器の電極に接する複数対の電圧検出接点が設けられているので、シャント抵抗器の抵抗温度係数が最も0に近い電圧検出接点に対応する導体素子接続端子に導体素子を取り付けることができる。特に、抵抗温度係数の実測結果に基づいて、シャント抵抗器の抵抗温度係数が最も0に近い電圧検出接点を決定することにより、温度特性に優れ、かつ測定精度の高い電流検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シャント抵抗器の一実施形態を模式的に示す平面図である。
図2図1に示すシャント抵抗器の斜視図である。
図3図1に示すシャント抵抗器と、このシャント抵抗器上に配置された電流検出部を備えた電流検出装置の一実施形態を示す斜視図である。
図4図3に示す電流検出装置の平面図である。
図5】シャント抵抗器に電気的に接続される電流検出部の一実施形態を示す平面図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7】温度変化によるシャント抵抗器の抵抗値の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
図8】電流検出装置の製造方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
図9】電流検出装置を構成するシャント抵抗器の他の実施形態を示す斜視図である。
図10図9に示すシャント抵抗器に電気的に接続される電流検出部の一実施形態を示す平面図である。
図11図9に示すシャント抵抗器に図10に示す電流検出部が連結された電流検出装置を示す斜視図である。
図12】電流検出装置を構成するシャント抵抗器のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
図13図12に示すシャント抵抗器に図10に示す電流検出部が連結された電流検出装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、シャント抵抗器の一実施形態を模式的に示す平面図であり、図2は、図1に示すシャント抵抗器の斜視図である。図1および図2に示すように、シャント抵抗器1は、所定の厚みと幅を有する抵抗体5と、抵抗体5の両側5a,5bに接続された高導電性金属からなる一対の電極6,7とを備えている。具体的には、電極6は、抵抗体5の一方側5aに接続されており、電極7は、抵抗体5の他方側5bに接続されている。電極7の構成は、電極6の構成と同じであり、電極6と電極7は抵抗体5に関して対称に配置されている。
【0013】
抵抗体5の材料の例として、銅-ニッケル系合金、銅-マンガン系合金、鉄-クロム系合金、ニッケル-クロム系合金等の合金が挙げられる。電極6,7を構成する高導電性金属の例としては、銅(Cu)が挙げられる。抵抗体5の両側5a,5bは、電極6,7に溶接(例えば、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、または、ろう接)などの手段によって接続(接合)されている。
【0014】
本実施形態では、抵抗体5は、電極6,7よりも薄く、抵抗体5の表側面は、電極6,7の表側面よりも低い。ただし、一実施形態では、抵抗体5の厚さは、電極6,7の厚さと同じであってもよい。シャント抵抗器1は、その幅方向に突出する突出部11を有している。より具体的には、抵抗体5の一部および一対の電極6,7の一部は、突出部11を構成している。突出部11は、上から見たときに矩形状の形状を有している。
【0015】
図3は、図1に示すシャント抵抗器1と、このシャント抵抗器1上に配置された電流検出部2を備えた電流検出装置の一実施形態を示す斜視図であり、図4は、図3に示す電流検出装置の平面図である。突出部11を構成する一対の電極6,7の一部は、後述するように、電流検出部2に電気的に接続される。電流検出部2は、増幅器31、演算装置33などが配置された基台プレート3を有している。この基台プレート3は、シャント抵抗器1の電極6,7に固定されている。
【0016】
図5は、シャント抵抗器1に電気的に接続される電流検出部2の一実施形態を示す平面図である。図5に示すように、電流検出部2は、複数対の電圧検出接点8A~8Hと、複数対の電圧検出接点8A~8Hにそれぞれ接続された複数対の電圧信号配線9A~9Hと、複数対の電圧信号配線9A~9Hにそれぞれ接続された複数対の導体素子接続端子15A~15Hと、複数対の導体素子接続端子15A~15Hのうちのいずれか一対の導体素子接続端子に接続された導体素子20,21を備えている。
【0017】
電圧検出接点8A~8H、電圧信号配線9A~9H、および導体素子接続端子15A~15Hは、基台プレート3に配置されている。基台プレート3の材料の例としては、ガラスエポキシなどの樹脂が挙げられる。複数対の電圧検出接点8A~8Hは、基台プレート3がシャント抵抗器1に固定されたとき、シャント抵抗器1の一対の電極6,7に電気的に接続される。
【0018】
複数対の電圧検出接点8A~8Hは、シャント抵抗器1の抵抗体5の両側5a,5bに沿って配列されている。したがって、電極6,7の端面6a,7aから複数対の電圧検出接点8A~8Hまでの距離は異なっている。本実施形態では、4対の電圧検出接点8A~8Hが設けられているが、5対またはそれよりも多い電圧検出接点が設けられてもよい。あるいは、2~3対の電圧検出接点が設けられてもよい。
【0019】
本実施形態では、複数対の電圧検出接点8A~8Hは、一対の電極6,7に面接続された一対の接点パッド25,26から構成されている。より具体的には、一対の接点パッド25,26は、突出部11を構成する電極6,7の一部に接続されており、複数対の電圧検出接点8A~8Hは接点パッド25,26の各部位から構成されている。したがって、複数対の電圧検出接点8A~8Hは、突出部11を構成する電極6,7の一部に電気的に接続されている。一実施形態では、接点パッド25,26は設けられず、複数対の電圧検出接点8A~8Hが別々に一対の電極6,7に接続されてもよい。本実施形態では、一対の接点パッド25,26は、はんだ付けなどの手段によって一対の電極6,7に面接続される。
【0020】
一対の接点パッド25,26が一対の電極6,7に面接続されることにより、電流検出部2とシャント抵抗器1との電気的接続が確立される。一対の接点パッド25,26は、シャント抵抗器1の抵抗体5の両側5a,5bに隣接して配置されており、複数対の電圧信号配線9A~9Hは、一対の接点パッド25,26の内側縁に接続されている。したがって、複数対の電圧検出接点8A~8Hは、一対の接点パッド25,26の内側縁から構成され、これら電圧検出接点8A~8Hは、電極6,7の内側縁に電気的に接続される。このように、複数対の電圧検出接点8A~8Hは、シャント抵抗器1の抵抗体5の近くに位置しているので、電流測定精度が電極6,7自体の抵抗の影響を受けにくい。
【0021】
本実施形態では、複数対の電圧検出接点8A~8Hは、突出部11を構成する電極6,7の一部に電気的に接続される。シャント抵抗器1は、抵抗体5の一部および電極6,7の一部から構成される突出部11を有することで、突出部11の電極6,7に温度が変化しても電位が変わらない位置が現れ、その位置で電圧を検出すると、シャント抵抗器1の抵抗温度係数が0に近づくことがシミュレーション結果および実測結果から分かっている。
【0022】
電流検出部2は、基台プレート3を貫通して延びる複数対のスルーホール30A~30Hを備えている。これらスルーホール30A~30Hは、電圧信号配線9A~9H上にそれぞれ設けられており、かつ電圧検出接点8A~8Hと導体素子接続端子15A~15Hとの間に位置している。電圧信号配線9A~9Hの一方の端部は電圧検出接点8A~8Hにそれぞれ接続され、電圧信号配線9A~9Hの他方の端部は導体素子接続端子15A~15Hにそれぞれ接続されている。
【0023】
電圧検出接点8A~8Hは、基台プレート3の裏側に配置され、導体素子接続端子15A~15Hは、基台プレート3の表側に配置されている。スルーホール30A~30Hは、基台プレート3の裏側から表側まで延びており、電圧信号配線9A~9Hは、スルーホール30A~30Hを経由して基台プレート3の裏側から表側に延びている。
【0024】
図6は、図5のA-A線断面図である。図6に示すように、スルーホール30C,30Dは、基台プレート3の裏側から表側まで延びており、電圧信号配線9C,9Dは、基台プレート3の裏側にある電圧検出接点8C,8Dからスルーホール30C,30Dを経由して基台プレート3の表側に延びている。図6から分かるように、シャント抵抗器1の抵抗体5の表側面は、電極6,7の表側面よりも低い位置にあり、抵抗体5はスルーホール30C,30Dおよび電圧信号配線9C,9Dには接触しない。図示しないが、電圧検出接点8A~8B,8E~8H、電圧信号配線9A~9B,9E~9H、スルーホール30A~30B,30E~30Hの配置も同様である。
【0025】
図5に戻り、電流検出部2は、電圧信号配線9A~9Hを通じて取り出した電圧信号を増幅する増幅器31と、増幅した電圧信号をデジタル信号に変換するA/D変換器32と、デジタル信号を受け取って電流値に演算する演算装置33(例えば小型コンピュータ)と、電流検出部2から電流値を出力するコネクタ34と、をさらに備えている。一実施形態では、電流検出部2は温度センサなどをさらに備えてもよい。
【0026】
複数対の導体素子接続端子15A~15Hは、一対の配線35,36を通じて増幅器31に接続されている。導体素子接続端子15A~15Hの一方の端部は、対応する電圧信号配線9A~9Hにそれぞれ接続されており、導体素子接続端子15A~15Hの他方の端部は、配線35,36に接続されている。配線35,36の間にはコンデンサ37が配置されている。
【0027】
導体素子接続端子15A~15Hの各対は、電気的に分離した2つの端子から構成されており、導体素子20,21がいずれか一対の導体素子接続端子に取り付けられたときにその対の導体素子接続端子の電気的接続が確立される。図5に示す例では、導体素子20,21は、導体素子接続端子15E,15Fに取り付けられており、導体素子接続端子15E,15Fの電気的接続を確立する。
【0028】
一対の電圧検出接点8E,8Fは、一対の電圧検出接点8E,8F間の電圧信号を増幅する増幅器31に接続され、増幅器31は、増幅した電圧信号をデジタル信号へ変換するA/D変換器32に接続され、A/D変換器32は、デジタル信号を電流値に演算する演算装置33に接続され、演算装置33は、電流検出部2から電流値を出力するコネクタ34に接続される。これにより、電流検出部2から電流値を出力することができる。一実施形態では、温度センサによって、シャント抵抗器1もしくはその周囲温度を測定し、演算装置33は、補正をかけた上で電流値を演算してもよい。
【0029】
導体素子20,21の例としては、0よりも高い抵抗値(例えば10Ω)を有する抵抗器、抵抗値が実質的に0であるジャンパー抵抗器が挙げられる。
【0030】
一対の導体素子20,21は、シャント抵抗器1の抵抗温度係数の実測結果に基づいて予め選択された一対の導体素子接続端子15E,15Fに取り付けられている。より具体的には、予め選択された一対の導体素子接続端子15E,15Fは、複数対の電圧検出接点8A~8Hのうち、シャント抵抗器1の抵抗温度係数(TCR)が最も0に近い一対の電圧検出接点8E,8Fに電気的に接続されている。シャント抵抗器1の抵抗温度係数(TCR)が最も0に近いことには、シャント抵抗器1の抵抗温度係数(TCR)が0であることも含まれる。
【0031】
図7は、温度変化によるシャント抵抗器1の抵抗値の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。図7において、縦軸はシャント抵抗器1の抵抗値の変化率を表し、横軸はシャント抵抗器1の温度を表している。図7から分かるように、電圧検出接点8A~8Hの位置によって、抵抗値の変化率の傾き、すなわち抵抗温度係数(TCR)が変わる。シャント抵抗器1には、温度変化にかかわらず、その抵抗値が変わらないこと、すなわち抵抗温度係数(TCR)ができるだけ0に近いことが求められる。
【0032】
図7に示すシミュレーション結果によれば、電圧検出接点8E,8Fでのシャント抵抗器1の抵抗温度係数(TCR)が最も0に近い。したがって、電圧検出接点8E,8Fに電気的に接続されている導体素子接続端子15E,15Fに導体素子20,21を取り付けると、良好な抵抗温度係数(TCR)が達成できると期待される。
【0033】
その一方で、シャント抵抗器には、寸法の僅かな違いや、材料組成の僅かな違い、電流検出部2の取り付け位置の違いがありうる。このような差違は、シミュレーション結果から得られた理論的な電圧測定位置と、実際の最適位置との間に差違を生じさせる。
【0034】
そこで、以下のようにして、導体素子20,21を取り付ける前に、実際に温度変化によるシャント抵抗器1の抵抗値の変化率、すなわち抵抗温度係数(TCR)を測定し、その測定結果に基づいて、抵抗温度係数が最も0に近い電圧検出接点、すなわち導体素子20,21を取り付けるべき導体素子接続端子を決定する。抵抗温度係数(TCR)の測定は、シャント抵抗器1と電流検出部2とを電気的に接続した後に行う。
【0035】
まず、シミュレーション結果に基づき、最も良好な抵抗温度係数が得られた電圧検出接点8E,8Fでのシャント抵抗器1の抵抗温度係数を測定する。具体的には、スルーホール30E,30Fまたは導体素子接続端子15E,15Fにピンボードなどにより抵抗計のセンス線(図示せず)を電気的に接続し、シャント抵抗器1の電極6,7にプローブなどにより抵抗計のフォース線(図示せず)を接続する。シャント抵抗器1の温度を基準温度(例えば、25℃)にし、抵抗計によって抵抗値を測定する。シャント抵抗器1の温度を試験温度(例えば、150℃)にし、抵抗計によって抵抗値を測定する。基準温度、試験温度および各温度での抵抗値から抵抗温度係数を算出する。
【0036】
抵抗温度係数の測定結果がシミュレーション結果に実質的に一致していれば、導体素子20,21の取り付け位置は、導体素子接続端子15E,15Fに決定される。抵抗温度係数の測定結果がシミュレーション結果と大きく異なっている場合は、他の電圧検出接点での抵抗温度係数を、同じようにして順番に測定する。そして、最も良好な(すなわち最も0に近い)抵抗温度係数が得られた電圧検出接点に接続されている導体素子接続端子が、導体素子20,21の取り付け位置に決定される。
【0037】
電流検出部2がシャント抵抗器1に対して角度ずれしていることもありうる。そのような場合には、例えば、図5において、導体素子20を、導体素子接続端子15Eに取り付け、他の導体素子21を導体素子接続端子15Dまたは15Hに取り付けてもよい。
【0038】
図8は、上述した電流検出装置の製造方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
ステップ1では、シャント抵抗器1および電流検出部2を製造する。上述したように、シャント抵抗器1は、抵抗体5および該抵抗体5の両側5a,5bに接続された一対の電極6,7を有している。電流検出部2は、複数対の電圧検出接点8A~8Hと、複数対の電圧検出接点8A~8Hにそれぞれ接続された複数対の電圧信号配線9A~9Hと、複数対の電圧信号配線9A~9Hにそれぞれ接続された複数対の導体素子接続端子15A~15Hを備えている。
【0039】
上記ステップ1において、シャント抵抗器1および電流検出部2は、同時に製造されてもよいし、あるいはシャント抵抗器1を先に製造し、電流検出部2を後に製造してもよいし、あるいは電流検出部2を先に製造し、シャント抵抗器1を後に製造してもよい。
【0040】
ステップ2では、電流検出部2をシャント抵抗器1に電気的に接続する。より具体的には、複数対の電圧検出接点8A~8Hを一対の電極6,7に電気的に接続する。
ステップ3では、シャント抵抗器1の抵抗温度係数の実測結果に基づいて、複数対の導体素子接続端子15A~15Hから予め選択された一対の導体素子接続端子に、一対の導体素子20,21を取り付ける。より具体的には、複数対の電圧検出接点8A~8Hのうち、シャント抵抗器1の抵抗温度係数が最も0に近い一対の電圧検出接点に電気的に接続されている導体素子接続端子に、一対の導体素子20,21を取り付ける。
【0041】
以下に説明するように、電圧検出接点8A~8Hの構成は、図5に示す接点パッド25,26を用いた実施形態に限られない。図9は、電流検出装置を構成するシャント抵抗器1の他の実施形態を示す斜視図であり、図10図9に示すシャント抵抗器1に電気的に接続される電流検出部2の一実施形態を示す平面図であり、図11は、図9に示すシャント抵抗器1に図10に示す電流検出部2が連結された電流検出装置を示す斜視図である。図9乃至図11に示す実施形態の特に説明しない構成および動作は、図1乃至図7を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0042】
図9に示す実施形態のシャント抵抗器1は、図1に示すような突出部11を備えていない。また、図10に示すように、本実施形態の電流検出部2は、図5に示すような接点パッド25,26を備えていなく、複数対の電圧検出接点8A~8Hは、互いに分離されている。複数対の電圧検出接点8A~8Hは、基台プレート3の裏側から表側まで貫通するスルーホールから構成されている。これら複数対の電圧検出接点8A~8Hが抵抗体5の両側5a,5bに沿って配列されていることは、図5に示す実施形態と同じである。複数対の電圧検出接点8A~8Hが一対の電極6,7に接続されることにより、電流検出装置とシャント抵抗器1との電気的接続が確立される。
【0043】
図12および図13は、電流検出装置のさらに他の実施形態を示す図である。より具体的には、図12は、電流検出装置を構成するシャント抵抗器1のさらに他の実施形態を示す斜視図であり、図13は、図12に示すシャント抵抗器1に図10に示す電流検出部2が連結された電流検出装置を示す斜視図である。図12および図13に示す実施形態の特に説明しない構成および動作は、図1乃至図7を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0044】
図12に示すように、シャント抵抗器1は、一対の電極6,7に固定された複数対のピン端子40A~40Hを備えている。これらの複数対のピン端子40A~40Hは、抵抗体5の両側5a,5bに沿って配列されている。本実施形態の電流検出部2は、図10に示す電流検出部2と同じ構成である。図13に示すように、ピン端子40A~40Hは、スルーホールからなる電圧検出接点8A~8Hにそれぞれ挿入され、これにより、電流検出部2とシャント抵抗器1との電気的接続が確立される。
【0045】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 シャント抵抗器
2 電流検出部
3 基台プレート
5 抵抗体
6,7 電極
8A~8H 電圧検出接点
9A~9H 電圧信号配線
11 突出部
15A~15H 導体素子接続端子
20,21 導体素子
25,26 接点パッド
30A~30H スルーホール
31 増幅器
32 A/D変換器
33 演算装置
34 コネクタ
35,36 配線
37 コンデンサ
40A~40H ピン端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13