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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103554
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】汚泥掻き寄せ機
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20230720BHJP
   B01D 21/22 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B01D21/18 G
B01D21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004139
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 良
(72)【発明者】
【氏名】新井 稔
(72)【発明者】
【氏名】板垣 海渡
(57)【要約】
【課題】スロッシングに起因してフライト可動体がガイドレールの下側にもぐり込んだ場合でも、ガイドレールの変形を防止しつつ、フライト可動体を正常な位置に戻すことができる汚泥掻き寄せ機を提供する。
【解決手段】汚泥掻き寄せ機は、沈殿池1内に配置されたガイドホイール5と、ガイドホイール5に掛けられたチェーン7と、チェーン7により駆動され、沈殿池1内の汚泥を掻き寄せるフライト可動体8と、フライト可動体8の走行をガイドするガイドレール11を備え、ガイドホイール5の軸心方向から見たときのガイドレール11の端部11aとガイドホイール5との間には隙間G1が形成されており、隙間G1は、フライト可動体8のチェーン7が固定される部分の高さH1よりも大きい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池内に配置されたガイドホイールと、
前記ガイドホイールに掛けられたチェーンと、
前記チェーンにより駆動され、前記沈殿池内の汚泥を掻き寄せるフライト可動体と、
前記フライト可動体の走行をガイドするガイドレールを備え、
前記ガイドホイールの軸心方向から見たときの前記ガイドレールの端部と前記ガイドホイールとの間には隙間が形成されており、
前記隙間は、前記フライト可動体の前記チェーンが固定される部分の高さよりも大きい、汚泥掻き寄せ機。
【請求項2】
前記隙間は、前記フライト可動体の前記チェーンが固定される部分の高さの1~8倍である、汚泥掻き寄せ機。
【請求項3】
沈殿池内に配置されたガイドホイールと、
前記ガイドホイールに掛けられたチェーンと、
前記チェーンにより駆動され、前記沈殿池内の汚泥を掻き寄せるフライト可動体と、
前記フライト可動体の走行をガイドするガイドレールと、
前記ガイドレールの端部に連結された、上方に傾動可能な傾動レールを備えており、
前記傾動レールは、前記ガイドレールの前記端部と前記ガイドホイールとの間に位置している、汚泥掻き寄せ機。
【請求項4】
前記傾動レールは、ヒンジにより前記ガイドレールの前記端部に連結されている、請求項3に記載の汚泥掻き寄せ機。
【請求項5】
前記ヒンジは、前記傾動レールが下方に傾動することを許容しない、請求項4に記載の汚泥掻き寄せ機。
【請求項6】
前記傾動レールの少なくとも一部は、可撓性を有する、請求項3に記載の汚泥掻き寄せ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿池内に設置されて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せるとともに、沈殿池の水面に浮遊するスカムを掻き寄せる汚泥掻き寄せ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーンの走行に伴って沈殿池の内部を長尺のフライト板が循環し、フライト板が沈殿池の池底を走行するときに池底に堆積する汚泥を掻き寄せるとともに、フライト板が沈殿池の水面を走行するときに水面に浮遊するスカムを掻き寄せる汚泥掻き寄せ機が知られている(例えば特許文献1参照)。これらの汚泥掻き寄せ機においては、スプロケットホイールに掛け渡されたチェーンの走行に伴って沈殿池の内部をフライト板がガイドレールに沿って走行しつつ、上述したように、汚泥やスカムの掻き寄せを行っている。
【0003】
近年、日本各地で地震が発生し大きな被害を出しているが、下水処理場の主たる設備である沈殿池の上述した汚泥掻き寄せ機にも被害が出ている。地震により沈殿池内の水が大きくうねるスロッシングと呼ばれる現象が起こり、走行中のフライト板が大きく揺れてガイドレールから脱落したり、チェーンがスプロケットホイールから外れてしまうことが報告されている。
【0004】
このような地震によるフライト板の脱落を防ぐために、特許文献1に示すように、フライト板に隣接してガード板を設けるという対策がなされている。このガード板は、フライト板の縦方向および横方向の動きを規制するものであり、これにより地震が起きても、フライト板の落下が防止され、チェーンがスプロケットホイールから脱落してしまうことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-326483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、フライト板は、その走行軌道に沿って配置された複数のガイドレールに支持されながら沈殿池内を循環する。しかしながら、地震による沈殿池内の水のうねりは予想以上に大きく、水の揺れはフライト板に大きな力を加え、ガイドレールから外れてしまうことが実際に起こっている。特に、水面ガイドレールと水中ガイドレールとの間ではフライト板は揺れやすい。実際の事例では、フライト板が水面ガイドレールから水中ガイドレールに移動するときに、フライト板は水中ガイドレールの上側に着地せず、水中ガイドレールの下側にもぐってしまうことが起きている。
【0007】
例えば、図13に示すように、通常、フライト板500はチェーン501に駆動されてガイドレール505の上側を走行するのであるが、スロッシングに起因して、図14に示すように、フライト板500がガイドレール505の上側への着地に失敗し、ガイドレール505の下側を走行することがある。ガイドレール505の下流側にはガイドホイール507があり、ガイドレール505の下側を走行するフライト板500はガイドホイール507に引き上げられて、図15に示すように、ガイドレール505を変形させてしまうことがある。このようなガイドレール505の変形は、汚泥掻き寄せ機の安全な運転を妨げるおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、スロッシングに起因してフライト可動体がガイドレールの下側にもぐり込んだ場合でも、ガイドレールの変形を防止しつつ、フライト可動体を正常な位置に戻すことができる汚泥掻き寄せ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、沈殿池内に配置されたガイドホイールと、前記ガイドホイールに掛けられたチェーンと、前記チェーンにより駆動され、前記沈殿池内の汚泥を掻き寄せるフライト可動体と、前記フライト可動体の走行をガイドするガイドレールを備え、前記ガイドホイールの軸心方向から見たときの前記ガイドレールの端部と前記ガイドホイールとの間には隙間が形成されており、前記隙間は、前記フライト可動体の前記チェーンが固定される部分の高さよりも大きい、汚泥掻き寄せ機が提供される。
【0010】
一態様では、前記隙間は、前記フライト可動体の前記チェーンが固定される部分の高さの1~8倍である。
【0011】
一態様では、沈殿池内に配置されたガイドホイールと、前記ガイドホイールに掛けられたチェーンと、前記チェーンにより駆動され、前記沈殿池内の汚泥を掻き寄せるフライト可動体と、前記フライト可動体の走行をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールの端部に連結された、上方に傾動可能な傾動レールを備えており、前記傾動レールは、前記ガイドレールの前記端部と前記ガイドホイールとの間に位置している、汚泥掻き寄せ機が提供される。
【0012】
一態様では、前記傾動レールは、ヒンジにより前記ガイドレールの前記端部に連結されている。
一態様では、前記ヒンジは、前記傾動レールが下方に傾動することを許容しない。
一態様では、前記傾動レールの少なくとも一部は、可撓性を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フライト可動体は、ガイドレールからガイドホイールに乗り移るときに隙間を通過するので、ガイドレールに無理な力をかけない。したがって、ガイドレールは変形することがない。
また、本発明によれば、フライト可動体は、ガイドレールからガイドホイールに乗り移るときに傾動レールを上方に傾斜させるので、ガイドレールに無理な力をかけない。したがって、ガイドレールは損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】汚泥掻き寄せ機の一実施形態を示す図である。
図2】フライト可動体の一実施形態を示す図である。
図3】水面ガイドレール上のフライト可動体を示す図である。
図4】水中ガイドレールとガイドホイールの配置の一実施形態を示す図である。
図5】フライト可動体が水中ガイドレールの下側にもぐり込んだ様子を説明する図である。
図6】フライト可動体がガイドホイールの下側から隙間を通ってチェーンによって引き上げられる様子を説明する図である。
図7】フライト可動体の他の実施形態を示す図である。
図8】汚泥掻き寄せ機の他の実施形態を示す図である。
図9】ヒンジおよび傾動レールの一実施形態を示す図である。
図10】フライト可動体によって傾動レールが上方に傾く様子を説明する図である。
図11】傾動レールの他の実施形態を示す図である。
図12】フライト可動体によって傾動レールが上方に傾く様子を説明する図である。
図13】フライト板がガイドレールの上側を走行する様子を説明する図である。
図14】フライト板がガイドレールの上側への着地に失敗し、ガイドレールの下側を走行する様子を説明する図である。
図15】ガイドレールの下側を走行するフライト板がガイドホイールに引き上げられて、ガイドレールを変形させる様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、汚泥掻き寄せ機の一実施形態を示す図である。汚泥掻き寄せ機は、例えば下水処理場の沈殿池に配置される。この汚泥掻き寄せ機は、駆動装置2と、沈殿池1の内部に配置された駆動ホイール3と、ガイドホイール4,5,6と、これらホイール3~6に掛けられた一対の無端状チェーン7と、このチェーン7に所定の間隔で固定された複数のフライト可動体8とを備えている。
【0016】
一対のチェーン7は、沈殿池1内に並列に配置され、駆動装置2に連結された駆動ホイール3によってこれらのチェーン7が循環する。そして、このチェーン7の循環に伴ってフライト可動体8が沈殿池1の内部を走行するようになっている。
【0017】
フライト可動体8が沈殿池2の池底側を走行する時には、図1に示すように、フライト可動体8は池底に溜まった汚泥を汚泥貯留部1aに掻き寄せ、水面側を走行する時には水面に浮遊するスカムをスカムスキマ9に掻き寄せる。フライト可動体8の走行をガイドするため、沈殿池1の側壁に沿って水面ガイドレール10および水中ガイドレール11が配置されている。更に池底には、フライト可動体8の走行をガイドする池底ガイドレール12が敷設されている。水面ガイドレール10、水中ガイドレール11、および池底ガイドレール12は、ステンレス鋼などの金属、または硬質の樹脂から構成されている。
【0018】
駆動ホイール3は、その回転をチェーン7に伝えるスプロケットホイールである。駆動ホイール3は、駆動チェーン2aを介して駆動装置2からの動力を受けるスプロケットホイール(図示せず)に連結されている。ガイドホイール4,5,6は、いずれも従動ホイールである。水中ガイドホイール5は、水平方向に前後動してチェーン7の張力を調節できるよう構成されている。
【0019】
スカムスキマ9には、溢流堰が開閉自在に取付けられており、沈殿池1の液面に浮遊しているスカムをフライト可動体8により、水と共にトラフ9a内に流入させるように構成されている。スカムスキマ9は、切欠き部のあるパイプを回転させるパイプスキマでも良い。沈殿池1には、越流堰14が設けられており、沈殿池1内の水がこの越流堰14を越えて排出されることにより、沈殿池1の水位が一定に保たれている。
【0020】
図2は、フライト可動体8の一実施形態を示す図である。フライト可動体8は、汚泥やスカムを掻き寄せるフライト板(掻き寄せ板)20と、フライト板20の両側の上部に取り付けられた第1のガイドシュー23と、フライト板20の両側の下部に取り付けられた第2のガイドシュー24とを備えている。チェーン7はフライト板20の下部に固定されており、フライト可動体8はチェーン7に引っ張られて走行するようになっている。
【0021】
図3は、水面ガイドレール10上のフライト可動体8を示す図である。水面ガイドレール10は、沈殿池1の側壁1bに固定されたレールブラケット30により支持されている。レールブラケット30は、水面ガイドレール10に沿って等間隔に配列されている。第2のガイドシュー24は、水面ガイドレール10の上に位置している。図示しないが、水中ガイドレール11も沈殿池1の側壁1bに固定されたレールブラケットにより支持されている。
【0022】
チェーン7が駆動ホイール3により駆動され、フライト可動体8が水面を走行するとき、第2のガイドシュー24が水面ガイドレール10上を滑り、第2のガイドシュー24が水面ガイドレール10に案内されて走行する。フライト可動体8が水中ガイドレール11上を走行するときも、第2のガイドシュー24が水中ガイドレール11上を滑り、第2のガイドシュー24が水中ガイドレール11に案内されて走行する。第1のガイドシュー23は、フライト可動体8が池底を走行するときに、池底ガイドレール12によって案内されて走行するためのものである。
【0023】
このように、フライト可動体8は、池底用と水面および水中用の2種のガイドシュー23,24を有しており、フライト可動体8は、池底ガイドレール12、水中ガイドレール11、および水面ガイドレール10上を摺接しつつ走行する。
【0024】
図4は、水中ガイドレール11と、ガイドホイール5の配置の一実施形態を示す図である。ガイドホイール5は、フライト可動体8の進行方向において水中ガイドレール11の下流に位置している。水中ガイドレール11は、ガイドホイール5の頂部よりも低い位置にある。図4に示すように、ガイドホイール5の軸心方向から見たときの水中ガイドレール11の端部11aとガイドホイール5との間には隙間G1が形成されている。より具体的には、隙間G1は、水中ガイドレール11の端部11aと、ガイドホイール5の内側端部との隙間である。この隙間G1は、フライト可動体8のチェーン7が固定される部分の高さH1よりも大きい。本実施形態では、図2に示すように、チェーン7はフライト可動体8のフライト板20に固定されているので、隙間G1はフライト板20の高さH1よりも大きい。
【0025】
図1に示すように、水面ガイドレール10と水中ガイドレール11との間には、カテナリーと呼ばれる区間Cがある。この区間Cではフライト可動体8はガイドレール10,11に支持されない。このため、スロッシングが発生したときに、フライト可動体8は区間Cで大きく揺れやすく、図5に示すように、水中ガイドレール11の下側にもぐりこむことがある。このような場合、フライト可動体8は水中ガイドレール11の下側を摺動してガイドホイール5に向かって移動する。そして、図6に示すように、フライト可動体8は、水中ガイドレール11の下側から隙間G1を通ってチェーン7によって引き上げられ、ガイドホイール5に移動する。
【0026】
このように、フライト可動体8は、水中ガイドレール11からガイドホイール5に乗り移るときに隙間G1を通過するので、水中ガイドレール11を強く押し上げることがない。したがって、水中ガイドレール11の変形が防止される。隙間G1が小さすぎると、フライト可動体8が隙間G1を通過することができず、水中ガイドレール11を押し上げて水中ガイドレール11を変形させてしまう。その一方で、隙間G1が大きすぎると、異物噛み込みを解消するためにフライト可動体8を逆走させるときに、ガイドホイール5と水中ガイドレール11との間の隙間G1にあるフライト可動体8がその自重で下降し、フライト可動体8の第2のガイドシュー24が水中ガイドレール11に衝突する可能性がある。
【0027】
このような観点から、一実施形態では、隙間G1の大きさは、フライト可動体8のチェーン7が固定される部分の高さH1の1~8倍、好ましくは1.5~5倍である。一例を挙げると、フライト可動体8のチェーン7が固定されるフライト板の高さH1が200mmである場合、隙間G1の大きさは、200mm~1600mm、好ましくは300mm~1000mmである。
【0028】
図7は、フライト可動体8の他の実施形態を示す図である。本実施形態のフライト可動体8は、汚泥やスカムを掻き寄せるフライト板(掻き寄せ板)20と、このフライト板20の両端部に取り付けられたエンドピース21と、各エンドピース21の上部に固定された第1のガイドシュー23と、各エンドピース21の下部に固定された第2のガイドシュー24とを有している。エンドピース21の下部には、チェーン7が固定されており、フライト可動体8がチェーン7に引っ張られて走行するようになっている。
【0029】
図7に示す実施形態では、チェーン7はエンドピース21に固定されているので、水中ガイドレール11の端部11aとガイドホイール5との間の隙間G1は、エンドピース21の高さH1よりも大きい。隙間G1とエンドピース21の高さH1との関係は、図4乃至図6を参照して説明した実施形態と同じである。
【0030】
今まで説明した実施形態は、水中ガイドレール11とガイドホイール5との間の隙間G1について適用されるのみならず、水面ガイドレール10とガイドホイール4との間の隙間についても同様に適用できる。すなわち、水面ガイドレール10の端部とガイドホイール4との間に、フライト可動体8のチェーン7が固定される部分の高さよりも大きな隙間を設けてもよい。これは、水面ガイドレール10上を走行しているフライト可動体8が、スロッシングに起因して水面ガイドレール10の下側にもぐり込んでしまうことがあるからである。
【0031】
次に、汚泥掻き寄せ機の他の実施形態について図8乃至図10を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の構成は、図1乃至図7を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図8に示すように、汚泥掻き寄せ機は、水中ガイドレール11の端部11aに連結された、上方に傾動可能な傾動レール27を備えている。傾動レール27は、水中ガイドレール11の端部11aとガイドホイール5との間に位置している。傾動レール27は、ヒンジ28により水中ガイドレール11の端部11aに傾動可能に連結されている。
【0032】
図9に示すように、ヒンジ28は、傾動レール27が水中ガイドレール11よりも上方に傾動することを許容するが、水中ガイドレール11よりも下方に傾動することを許容しないように構成されている。水中ガイドレール11の下側にもぐり込んだ場合、フライト可動体8は水中ガイドレール11の下側を摺動してガイドホイール5に向かって移動する。そして、図10に示すように、フライト可動体8は、傾動レール27を押し上げながら水中ガイドレール11の下側からチェーン7によって引き上げられ、ガイドホイール5に移動する。フライト可動体8が傾動レール27から離れると、傾動レール27はその自重により、または図示しないばねにより、元の位置に戻る。
【0033】
このように、フライト可動体8は、水中ガイドレール11からガイドホイール5に乗り移るときに傾動レール27を上方に傾斜させるので、水中ガイドレール11を強く押し上げることがない。したがって、水中ガイドレール11の変形が防止される。異物噛み込みを解消するためにフライト可動体8を逆走させるときに、傾動レール27は下方には傾斜しないので、フライト可動体8はガイドホイール5から傾動レール27を経由して水中ガイドレール11にスムーズに乗り移ることができる。
【0034】
傾動レール27が短すぎると、フライト可動体8は、上方に傾斜した傾動レール27とガイドホイール5との隙間を通過することができず、水中ガイドレール11を変形させてしまう。この観点から、傾動レール27の長さL1は、フライト可動体8のチェーン7が固定される部分の高さH1よりも大きい。
【0035】
図11は、傾動レール27の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図8乃至図10を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図11に示す実施形態では、傾動レール27の少なくとも一部は、可撓性を有している。傾動レール27の全部が可撓性を有してもよいし、あるいは水中ガイドレール11に接続される傾動レール27の上流側部分のみが可撓性を有してもよい。傾動レール27に可撓性を持たせるために、傾動レール27の少なくとも一部はゴムなどの弾性材料から構成されている。傾動レール27の長さL1は、フライト可動体8のチェーン7が固定される部分の高さH1よりも大きい。
【0036】
本実施形態によれば、図12に示すように、水中ガイドレール11の下側にもぐり込んだフライト可動体8は、傾動レール27を押し上げながら水中ガイドレール11の下側からチェーン7によって引き上げられ、ガイドホイール5に移動する。フライト可動体8が傾動レール27から離れると、傾動レール27はその自重により、および/またはその弾性により、元の位置に戻る。
【0037】
フライト可動体8は、水中ガイドレール11からガイドホイール5に乗り移るときに傾動レール27を上方に傾斜させるので、水中ガイドレール11を強く押し上げることがない。したがって、水中ガイドレール11の変形が防止される。異物噛み込みを解消するためにフライト可動体8を逆走させるときにフライト可動体8がガイドホイール5から傾動レール27に移動すると、傾動レール27はわずかに下方に傾斜するが、フライト可動体8の第2のガイドシュー24(図2図7参照)が水中ガイドレール11に衝突することは傾動レール27によって防止される。したがって、フライト可動体8はガイドホイール5から傾動レール27を経由して水中ガイドレール11にスムーズに乗り移ることができる。
【0038】
図8乃至図12を参照して説明した実施形態の傾動レール27は、水中ガイドレール11とガイドホイール5との間のみならず、水面ガイドレール10とガイドホイール4との間に設けてもよい。すなわち、水面ガイドレール10の端部に傾動レール27を連結してもよい。
【0039】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 沈殿池
1a 汚泥貯留部
2 駆動装置
2a 駆動チェーン
3 駆動ホイール
4,5,6 ガイドホイール
7 チェーン
8 フライト可動体
9 スカムスキマ
9a トラフ
10 水面ガイドレール
11 水中ガイドレール
12 池底ガイドレール
14 越流堰
20 フライト板(掻き寄せ板)
21 エンドピース
23 第1のガイドシュー
24 第2のガイドシュー
27 傾動レール
28 ヒンジ
30 レールブラケット
G1 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15