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特開2023-103565熱硬化性樹脂組成物、成形材料および成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103565
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、成形材料および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20230720BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C08F283/01
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004164
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】安宅 忍
(72)【発明者】
【氏名】小田 敬一
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BB032
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB112
4J127BB151
4J127BB222
4J127BD131
4J127BD172
4J127BE051
4J127BE381
4J127BE38Y
4J127BF141
4J127BF14Y
4J127BF351
4J127BF35Y
4J127BG051
4J127BG052
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG102
4J127BG10Z
4J127CB051
4J127CB132
4J127DA06
4J127DA12
4J127DA28
4J127DA43
4J127DA63
4J127DA64
4J127DA65
4J127DA66
4J127FA05
(57)【要約】
【課題】柄材耐変色性に優れる成形品を得ることができる熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物を含む成形材料、および、成形材料を用いて得られる成形品を提供すること。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、樹脂成分と柄材とカップリング剤とを含む熱硬化性樹脂組成物であり、樹脂成分は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、および、(メタ)アクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種と、重合性単量体とを含有し、柄材は、金属を含む金属含有層と、金属含有層を被覆するシリカ系皮膜とを有している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と柄材とカップリング剤とを含む熱硬化性樹脂組成物であり、
前記樹脂成分は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、および、(メタ)アクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種と、重合性単量体とを含有し、
前記柄材は、金属を含む金属含有層と、前記金属含有層を被覆するシリカ系皮膜とを有している、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記カップリング剤が、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤およびジルコニウム系カップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記柄材1質量部に対して、前記カップリング剤の含有割合が、0.030質量部以上である、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物と、強化繊維とを含有する、成形材料。
【請求項5】
請求項4に記載の成形材料の硬化物からなる、成形品。
【請求項6】
人造大理石である、請求項5に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、成形材料および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂組成物に、光輝性顔料を添加することが知られている。そのような熱硬化性樹脂組成物の成形品としては、例えば、人造大理石が挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、金属に被覆された無機フィラーが挙げられる。
【0003】
光輝性顔料として、より具体的には、以下の光輝性顔料が知られている。この光輝性顔料では、鱗片状ガラスの表面が、金属を含む被覆層により被覆されている。さらに、被覆層が、無機顔料を含有するシリカ被膜により被覆されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-176741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の光輝性顔料を含む熱硬化性樹脂組成物の成形品は、柄材の耐変色性(以下、柄材耐変色性)に劣る。より具体的には、熱硬化性樹脂組成物の成形品が、人造大理石として使用される場合、成形品は、塩素系洗剤により洗浄される場合がある。このような場合、光輝性顔料に含まれる金属が、塩素系洗剤により塩化され、変色を生じる。その結果、熱硬化性樹脂組成物の成形品中の柄材が変色する。
【0006】
本発明は、柄材耐変色性に優れる成形品を得ることができる熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物を含む成形材料、および、成形材料を用いて得られる成形品である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、樹脂成分と柄材とカップリング剤とを含む熱硬化性樹脂組成物であり、前記樹脂成分は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、および、(メタ)アクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種と、重合性単量体とを含有し、前記柄材は、金属を含む金属含有層と、前記金属含有層を被覆するシリカ系皮膜とを有している、熱硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記カップリング剤が、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤およびジルコニウム系カップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記柄材1質量部に対して、前記カップリング剤の含有割合が、0.030質量部以上である、上記[1]または[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物と、強化繊維とを含有する、成形材料を、含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、上記[4]に記載の成形材料の硬化物からなる、成形品を、含んでいる。
【0012】
本発明[6]は、人造大理石である、上記[5]に記載の成形品を、含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、柄材は、金属を含む金属含有層と、金属含有層を被覆するシリカ系皮膜とを有している。また、熱硬化性樹脂組成物が、カップリング剤を含んでいる。そのため、柄材のシリカ系皮膜が、カップリング剤によって補強され、より確実に金属含有層を被覆できる。その結果、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、金属の塩化および変色を抑制でき、優れた柄材耐変色性を有する。
【0014】
本発明の成形材料は、上記の熱硬化性樹脂組成物を含むため、優れた柄材耐変色性を有する。
【0015】
本発明の成形品は、上記の成形材料の硬化物からなるため、優れた柄材耐変色性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必須成分として、樹脂成分と、柄材と、カップリング剤とを含有する。
【0017】
樹脂成分は、必須成分として、熱硬化性樹脂(ポリマー成分)と、重合性単量体(モノマー成分)とを含有する。また、樹脂成分は、後述するように、任意成分として、低収縮化剤(後述)を含有できる。
【0018】
熱硬化性樹脂(ポリマー成分)としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、および、(メタ)アクリルポリマーが挙げられる。すなわち、熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、および、(メタ)アクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0019】
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールとの重合生成物である。
【0020】
多塩基酸は、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する多塩基酸(以下、不飽和多塩基酸とする。)を含み、好ましくは、さらに、エチレン性不飽和二重結合を有しない多塩基酸(以下、飽和多塩基酸とする。)を含む。
【0021】
不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。また、不飽和多塩基酸には、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。そのような酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。不飽和多塩基酸として、好ましくは、無水マレイン酸およびフマル酸が挙げられ、より好ましくは、フマル酸が挙げられる。
【0022】
飽和多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族多塩基酸、飽和脂環族多塩基酸、および、芳香族多塩基酸が挙げられる。さらに、これらの酸無水物およびハロゲン化物が挙げられる。
【0023】
飽和脂肪族多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族二塩基酸が挙げられる。飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびダイマー酸が挙げられる。また、飽和脂肪族多塩基酸には、上記の飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸および無水コハク酸が挙げられる。
【0024】
飽和脂環族多塩基酸としては、例えば、飽和脂環族二塩基酸が挙げられる。飽和脂環族二塩基酸としては、例えば、ヘット酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、および、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。また、飽和脂環族多塩基酸には、上記の飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。酸無水物としては、例えば、無水ヘット酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸および4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0025】
芳香族多塩基酸としては、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸が挙げられる。また、芳香族多塩基酸には、上記の芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸および無水ピロメリット酸が挙げられる。
【0026】
飽和多塩基酸としては、好ましくは、芳香族飽和多塩基酸が挙げられ、より好ましくは、芳香族飽和二塩基酸、さらに好ましくは、フタル酸、とりわけ好ましくは、イソフタル酸が挙げられる。
【0027】
多塩基酸は、単独使用または2種以上併用できる。不飽和多塩基酸および飽和多塩基酸を併用する場合には、多塩基酸(それらの総量)に対して、不飽和多塩基酸の配合割合は、例えば、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上であり、また、例えば、100モル%以下である。
【0028】
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオールおよび芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオールおよびエーテルジオールが挙げられる。アルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、および、3,3-ジメチロールヘプタンが挙げられる。エーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールおよび水素化ビスフェノールAが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびトリイソプロパノールアミンが挙げられる。多価アルコールは、単独使用または2種以上併用できる。多価アルコールとして、好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられ、より好ましくは、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられ、とりわけ好ましくは、水素化ビスフェオールAが挙げられる。不飽和ポリエステルの原料成分としての多価アルコールが、水素化ビスフェノールAを含んでいれば、その不飽和ポリエステルを含む熱硬化性樹脂組成物の成形品は、とりわけ優れた柄材耐変色性を有する。
【0029】
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールとを重縮合(縮合重合)することにより得られる。
【0030】
多塩基酸と、多価アルコールとを重縮合(縮合重合)させるには、これらを適宜の割合で配合し、常圧、窒素雰囲気下で反応させる。多塩基酸に対する多価アルコールの当量比(多価アルコールのヒドロキシル基/多塩基酸のカルボキシル基)は、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下である。反応温度は、例えば、150℃以上、好ましくは、190℃以上である。また、反応温度は、例えば、250℃以下、好ましくは、230℃以下である。なお、上記の反応において、必要に応じて、公知の溶剤および公知の触媒を配合することもできる。これにより、不飽和ポリエステルが得られる。
【0031】
不飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、20mgKOH/g以上である。また、不飽和ポリエステルの酸価は、例えば、50mgKOH/g未満、好ましくは、40mgKOH/g以下である。
【0032】
不飽和ポリエステルは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0033】
ビニルエステルは、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応生成物である。
【0034】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、および、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂として、好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0035】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される。
【化1】

(式中、Y1は、-C(CH-、-CH-、-O-、-S-、-(O=S=O)-のうち、いずれかを示し、nは、0~5の整数を示す。)
【0036】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、および、ビスフェノールS型エポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂として、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
また、エポキシ樹脂は、フェノール化合物により変性させることもできる。フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSが挙げられる。
【0038】
フェノール化合物によりエポキシ樹脂を変性させるには、エポキシ樹脂とフェノール化合物と反応させる。フェノール化合物の配合割合は、エポキシ樹脂1モルに対して、例えば、0.1モル以上、好ましくは、0.2モル以上である。また、フェノール化合物の配合割合は、エポキシ樹脂1モルに対して、例えば、0.5モル以下である。また、反応温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、130℃以上である。また、反応温度は、例えば、180℃以下である。
【0039】
また、上記の反応では、必要により、触媒を配合することができる。触媒としては、例えば、アミン類、アンモニウム塩、イミダゾール類、ホスフィン類、ホスホニウム塩および有機金属塩が挙げられる。アミン類としては、例えば、トリエチルアミンおよびベンジルジメチルアミンが挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライドおよびトリエチルベンジルアンモニウムクロライドが挙げられる。イミダゾール類としては、例えば、2-エチル-4-イミダゾールが挙げられる。ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィンが挙げられる。ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよびエチルトリフェニルホスホニウムブロマイドが挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛が挙げられる。触媒としては、さらに、アミド類、ピリジン類、スルホニウム塩およびスルホン酸類が挙げられる。触媒として、好ましくは、アンモニウム塩およびホスホニウム塩が挙げられ、より好ましくは、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよびテトラフェニルホスホニウムブロマイドが挙げられる。触媒は、単独使用または2種以上併用できる。
【0040】
触媒の配合割合は、フェノール化合物100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上である。また、触媒の配合割合は、フェノール化合物100質量部に対して、例えば、3質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0041】
これにより、エポキシ樹脂をフェノール化合物により変性させることができる。
【0042】
エポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用できる。
【0043】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、200g当量以上、好ましくは、250g当量以上である。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、550g当量以下、好ましくは、500g当量以下である。
【0044】
不飽和一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸およびソルビン酸が挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、メタクリルおよび/またはアクリルと同義である。不飽和一塩基酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。不飽和一塩基酸として、好ましくは、(メタ)アクリル酸、さらに好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0045】
ビニルエステルを得るには、上記エポキシ樹脂、または、エポキシ樹脂とフェノール化合物変性エポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを付加反応させる。エポキシ樹脂のエポキシ基に対する不飽和一塩基酸のカルボキシル基の当量は、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上である。また、エポキシ樹脂のエポキシ基に対する不飽和一塩基酸のカルボキシル基の当量は、例えば、1.5以下、好ましくは、1.1以下である。また、反応温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上である。また、反応温度は、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0046】
また、上記の反応では、必要により、公知の溶剤、および、公知の触媒(例えば、上記した触媒(好ましくは、アンモニウム塩、より好ましくは、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド))を配合することができる。また、上記の反応は、好ましくは、重合禁止剤の存在下で実施する。
【0047】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン化合物、ベンゾキノン化合物、フェノール化合物およびN-オキシル化合物が挙げられる。ハイドロキノン化合物としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノンおよびt-ブチルハイドロキノンが挙げられる。ベンゾキノン化合物としては、例えば、p-ベンゾキノンおよびメチル-p-ベンゾキノンが挙げられる。カテコール化合物としては、例えば、t-ブチルカテコールが挙げられる。フェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールおよび4-メトキシフェノールが挙げられる。N-オキシル化合物としては、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラピペリジン-1-オキシル、および、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルが挙げられる。重合禁止剤は、単独使用または2種以上併用できる。重合禁止剤として、好ましくは、ハイドロキノン化合物が挙げられ、より好ましくは、ハイドロキノンが挙げられる。
【0048】
重合禁止剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.005質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、また、例えば、0.05質量部以下、好ましくは、0.03質量部以下である。
【0049】
これにより、ビニルエステルが得られる。
【0050】
ビニルエステルは、酸無水物により変性することもできる。つまり、ビニルエステルは、酸無水物により変性したビニルエステル(以下、酸変性ビニルエステルと称する。)であってもよく、酸無水物により変性しないビニルエステル(以下、無変性ビニルエステルと称する。)であってもよい。
【0051】
酸変性ビニルエステルは、ビニルエステルと酸無水物との反応生成物である。酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。酸無水物として、好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0052】
酸無水物の配合割合は、ビニルエステル中の水酸基に対して、例えば、10%以上、好ましくは、20%以上である。また、酸無水物の配合割合は、ビニルエステル中の水酸基に対して、例えば、80%以下、好ましくは、50%以下である。また、反応温度は、例えば、60℃以上であり、また、例えば、100℃以下である。
【0053】
これにより、酸変性ビニルエステルが得られる。
【0054】
酸変性ビニルエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠、以下同様。)は、例えば、40mgKOH/g以上、好ましくは、50mgKOH/g以上である。また、酸変性ビニルエステルの酸価は、例えば、100mgKOH/g以下、好ましくは、90mgKOH/g以下である。
【0055】
また、無変性ビニルエステルの酸価は、例えば、1mgKOH/g以上、好ましくは、5mgKOH/g以上である。また、無変性ビニルエステルの酸価は、例えば、20mgKOH/g以下、好ましくは、10mgKOH/gである。
【0056】
ビニルエステルは、単独使用または2種以上併用することができる。ビニルエステルとして、好ましくは、酸変性ビニルエステルが挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリルポリマーとして、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、および、酸変性ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
ポリ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレートの重合生成物である。(メタ)アクリレートとしては、例えば、1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノ(メタ)アクリレート、および、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0059】
モノ(メタ)アクリレートとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数12または13)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、および、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールが挙げられる。また、このようなモノ(メタ)アクリレートは、スチレンと共重合してもよい。
【0060】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルカングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルカングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、および、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、および、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリレートは、単独使用または2種以上併用することができる。(メタ)アクリレートとして、好ましくは、モノ(メタ)アクリレートが挙げられ、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルが挙げられる。
【0062】
そして、ポリ(メタ)アクリレートは、例えば、上記した(メタ)アクリレートを、公知の反応条件下において重合反応させることにより調製される。
【0063】
酸変性ポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ヒドロキシ基含有ビニルモノマーと、酸無水物類との付加反応によって得られる付加反応物を、上記(メタ)アクリレートと共重合することによって得られる。また、酸変性ポリ(メタ)アクリレートは、上記ヒドロキシル基含有ビニル単量体と上記(メタ)アクリレートとの共重合体に、酸無水物類を付加反応することによって得られる。ヒドロキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。酸無水物類としては、例えば、芳香族酸無水物類、脂環族酸無水物類および脂肪族酸無水物類が挙げられ、より具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、および、シクロペンタンジカルボン酸無水物が挙げられる。また、酸変性ポリ(メタ)アクリレートは、例えば、不飽和酸と上記(メタ)アクリレートとの共重合体として得ることもできる。不飽和酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸および(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリルポリマーは、単独使用または2種以上併用することができる。(メタ)アクリルポリマーとしては、好ましくは、酸変性ポリ(メタ)アクリレートが挙げられ、さらに好ましくは、ヒドロキシ基含有ビニルモノマーと酸無水物類との付加反応物と、(メタ)アクリレートとの共重合体が挙げられ、とりわけ好ましくは、ヒドロキシメチルメタクリレートと無水フタル酸との付加反応物と、(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体が挙げられる。
【0065】
これら熱硬化性樹脂は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0066】
重合性単量体としては、例えば、スチレン系モノマーおよび(メタ)アクリレートが挙げられる。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレンおよびクロロスチレンが挙げられる。(メタ)アクリレートとしては、上記した(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0067】
重合性単量体は、単独使用または2種以上併用できる。重合性単量体は、熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル、ビニルエステル、および、(メタ)アクリルポリマー)の種類に応じて適宜選択される。
【0068】
具体的には、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステルまたはビニルエステルを用いる場合には、重合性単量体として、好ましくは、スチレン系モノマーが挙げられ、より好ましくは、スチレンが挙げられる。また、熱硬化性樹脂として、(メタ)アクリルポリマーを用いる場合には、重合性単量体として、好ましくは、(メタ)アクリレートが挙げられ、さらに好ましくは、メタクリル酸メチルが挙げられる。
【0069】
重合性単量体の配合割合は、熱硬化性樹脂(ポリマー成分)および重合性単量体(モノマー成分)の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以上であり、また、例えば、60質量部以下である。
【0070】
樹脂成分は、任意成分として、低収縮化剤を含有できる。低収縮化剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマー、SBS(ゴム)、SEPS(ゴム)、および、飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。低収縮化剤のなかでは、好ましくは、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリエチレン、および、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマーが挙げられ、より好ましくは、ポリスチレンおよび架橋ポリスチレンが挙げられる。低収縮化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0071】
低収縮化剤は、必要に応じて、上記した重合性単量体に溶解されていてもよい。つまり、低収縮化剤の溶液が、ベース組成物に添加されてもよい。低収縮化剤の溶液において、重合性単量体(溶媒)の配合割合は、低収縮化剤100質量部に対して、例えば、100質量部以上250質量部以下である。
【0072】
また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の総量100質量部に対して、熱硬化性樹脂が、例えば、25質量部以上、好ましくは、30質量部以上である。また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の総量100質量部に対して、熱硬化性樹脂が、例えば、50質量部以下、好ましくは、45質量部以下である。
【0073】
また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の総量100質量部に対して、重合性単量体が、例えば、40質量部以上、好ましくは、45質量部以上である。また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の総量100質量部に対して、重合性単量体が、例えば、75質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、55質量部以下である。
【0074】
また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の総量100質量部に対して、低収縮化剤が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の総量100質量部に対して、低収縮化剤が、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0075】
また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)と、柄材と、カップリング剤との総量100質量部に対して、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の含有割合は、例えば、50質量部以上、好ましくは、70質量部以上である。また、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)と、柄材と、カップリング剤との総量100質量部に対して、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)の含有割合は、例えば、99.9質量部以下、好ましくは、99質量部以下である。
【0076】
柄材は、成形品(後述)に光輝性を付与するための充填剤である。柄材は、基材と、金属を含む金属含有層と、金属含有層を被覆するシリカ系皮膜とを有している。
【0077】
基材としては、特に制限されないが、例えば、ガラスフレーク、アルミナフレーク、シリカフレーク、マイカフレークおよびアルミニウム粉が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。基材として、好ましくは、ガラスフレークが挙げられる。
【0078】
基材の形状は、特に制限されず、粒状、塊状、板状、鱗片状、針状および球状が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。基材の形状として、好ましくは、鱗片状が挙げられる。
【0079】
これら基材は、単独使用または2種類以上併用できる。成形品(後述)の光輝性を向上させ、熱硬化性樹脂組成物を人造大理石(後述)の製造に使用する観点から、基材として、好ましくは、鱗片状のガラスフレークが挙げられる。
【0080】
なお、基材のサイズは、特に制限されず、基材の材質および形状に応じて、適宜設定される。例えば、基材が鱗片状である場合、平均長さが、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、30μm以上である。また、平均長さは、例えば、500μm以下、好ましくは、400μm以下、より好ましくは、300μm以下である。また、平均厚みが、例えば、0.1μm以上30μm以下である。とりわけ、優れた光輝性が要求される場合、基材の平均厚みは、好ましくは、0.2μm以上、より好ましくは、0.5μm以上である。また、基材の平均厚みは、好ましくは、15μm以下、より好ましくは、10μm以下である。
【0081】
金属含有層は、基材の表面を被覆し、基材に光輝性および/または干渉色を付与する層である。金属含有層は、金属および/または金属酸化物を含み、好ましくは、金属および/または金属酸化物からなる。金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、銅、鉄、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケルおよびこれらの合金が挙げられる。金属酸化物としては、上記金属の酸化物が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0082】
金属含有層は、公知の方法で基材の表面に形成される。金属含有層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、ゾルゲル法、無電解めっき法およびCVD法が挙げられる。例えば、基材が鱗片状のガラスフレークである場合には、好ましくは、無電解めっき法が採用される。無電解めっき法によれば、基材の表面に均一な金属含有層を形成できる。なお、金属含有層の膜厚は、特に制限されず、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0083】
金属含有層に被覆された基材は、市販品として入手することもできる。市販品としては、例えば、メタシャイン(登録商標)RSシリーズ、PSシリーズ、TYシリーズ、KYシリーズ、KBシリーズ、GPシリーズ(以上、日本板硝子社製)、Paliocrom(登録商標)シリーズ、Lumina(登録商標)シリーズ、Firemist(登録商標)シリーズ、Paliocrom(登録商標)シリーズ、Glacier(登録商標)シリーズ、Metasheen(登録商標)シリーズ、Unique Black シリーズ、MagnaPearl(登録商標)シリーズ、Mearlin(登録商標)シリーズ(全てBASF社製)、TWINCLEPEARL(登録商標)シリーズ(日本光研工業社製)、Biflair(登録商標)シリーズ、Candurin(登録商標)シリーズ、Colorstream(登録商標)シリーズ、Iriodin(登録商標)シリーズ、Meoxal(登録商標)シリーズ、Miraval(登録商標)シリーズ、Pyrisma(登録商標)シリーズ、Spectraval(登録商標)シリーズ、Thermaval(登録商標)シリーズ、Xirallic(登録商標)シリーズ、および、Sparkle(登録商標)シリーズ(メルク社製)が挙げられる。
【0084】
シリカ系皮膜は、金属含有層を保護するための保護層である。シリカ系皮膜は、必須成分として、二酸化ケイ素を含んでいる。また、シリカ系皮膜は、任意成分として、その他の金属酸化物を含むことができる。その他の金属酸化物としては、例えば、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムが挙げられる。さらに、シリカ系皮膜は、任意成分として、公知の顔料を含むことができる。なお、シリカ系皮膜において、二酸化ケイ素の含有割合、その他の金属酸化物の含有割合、および、顔料の含有割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0085】
シリカ系皮膜は、公知の方法で金属含有層の表面に形成される。シリカ系皮膜を形成する方法としては、例えば、ゾルゲル法が挙げられる。例えば、顔料を含むシリカ系皮膜を形成するには、例えば、まず、ケイ素を含み、加水分解および縮重合可能な有機金属化合物の溶液を用意する。次いで、その溶液に、金属含有層に被覆された基材を分散させ、有機金属化合物を加水分解および重縮合させる。シリカ系皮膜の厚みは、特に制限されないが、例えば、10nm以上、好ましくは、50nm以上である。また、シリカ被膜の厚みは、例えば、5μm以下、好ましくは、1μm以下である。
【0086】
このような柄材は、例えば、特開2006-176741号公報に記載の方法に従って、製造することができる。また、柄材は、市販品として入手することもできる。市販品としては、例えば、メタシャイン(登録商標)PTSMシリーズ(日本板硝子社製)、メタシャイン(登録商標)TCシリーズ(日本板硝子社製)、および、メタシャイン(登録商標)RCシリーズ(日本板硝子社製)が挙げられる。
【0087】
柄材の含有割合は、樹脂成分と、柄材と、カップリング剤との総量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上である。また、柄材の含有割合は、樹脂成分と、柄材と、カップリング剤との総量100質量部に対して、例えば、20.0質量部以下、好ましくは、10.0質量部以下、より好ましくは、5.0質量部以下、さらに好ましくは、3.0質量部以下である。
【0088】
また、柄材の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.03質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上である。また、柄材の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、20.0質量部以下、好ましくは、10.0質量部以下、より好ましくは、5.0質量部以下、さらに好ましくは、3.0質量部以下である。
【0089】
また、柄材の含有割合は、熱硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.03質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上である。また、柄材の含有割合は、熱硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、例えば、20.0質量部以下、好ましくは、10.0質量部以下、より好ましくは、5.0質量部以下、さらに好ましくは、3.0質量部以下である。
【0090】
カップリング剤は、柄材のシリカ系皮膜を補強する補強剤である。カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤およびジルコニウム系カップリング剤が挙げられる。カップリング剤は、好ましくは、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤およびジルコニウム系カップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0091】
シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアナトシラン、ビニルシランおよびクロロシランが挙げられる。
【0092】
エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、および、ジ(γ-グリシドキシプロピル)ジメトキシシランが挙げられる。アミノシランとしては、例えば、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-プロピルメチルジメトキシシラン、n-(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、n-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、および、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。(メタ)アクリルシランとしては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、および、(メタ)アタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。イソシアナトシランとしては、例えば、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、および、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリエトキシシランが挙げられる。クロロシランとしては、例えば、ビニルトリクロルシランが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0093】
チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピル(N-エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、および、ネオアルコキシトリ(p-N-(β-アミノエチル)アミノフェニル)チタネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0094】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、エチルアセトアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、Al-アセチルアセトネート、Al-メタクリレート、および、Al-プロピオネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0095】
ジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、Zr-アセチルアセトネート、Zr-メタクリレート、Zr-プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m-アミノフェニル)ジルコネート、および、アンモニウムジルコニウムカーボネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0096】
なお、カップリング剤としては、上記に限定されず、公知のカップリング剤を適宜選択して使用できる。
【0097】
カップリング剤は、単独使用または2種類以上併用できる。シリカ系皮膜を補強する観点から、カップリング剤として、好ましくは、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤が挙げられ、より好ましくは、シラン系カップリング剤およびチタン系カップリング剤が挙げられ、さらに好ましくは、シラン系カップリング剤が挙げられ、とりわけ好ましくは、(メタ)アクリルシランが挙げられ、より好ましくは、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを示す。
【0098】
カップリング剤の含有割合は、樹脂成分と、柄材と、カップリング剤との総量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上である。また、カップリング剤の含有割合は、樹脂成分と、柄材と、カップリング剤との総量100質量部に対して、例えば、10.0質量部以下、好ましくは、5.0質量部以下である。
【0099】
また、カップリング剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上である。また、カップリング剤の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、10.0質量部以下、好ましくは、5.0質量部以下である。
【0100】
また、カップリング剤の含有割合は、柄材耐変色性の観点から、柄材1質量部に対して、例えば、0.010質量部以上、好ましくは、0.030質量部以上、より好ましくは、0.30質量部以上、さらに好ましくは、1.0質量部以上、とりわけ好ましくは、3.0質量部以上である。また、カップリング剤の含有割合は、柄材1質量部に対して、例えば、10.0質量部以下、好ましくは、8.0質量部以下、より好ましくは、5.0質量部以下である。
【0101】
カップリング剤の配合割合が上記範囲であれば、カップリング剤によってシリカ系皮膜をより良好に補強できる。すなわち、より確実に金属含有層をシリカ系皮膜で保護できる。そのため、カップリング剤の配合割合が上記範囲であれば、柄材の金属の塩化および変色を、より良好に抑制でき、優れた柄材耐変色性を得ることができる。
【0102】
また、熱硬化性樹脂組成物は、任意成分として、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、硬化剤、離型剤、充填材(柄材を除く。)、着色剤、増粘剤、湿潤分散剤、分離防止剤および難燃剤が挙げられる。
【0103】
重合禁止剤としては、例えば、上記した重合禁止剤が挙げられ、好ましくは、ベンゾキノン化合物、より好ましくは、p-ベンゾキノンが挙げられる。
【0104】
重合禁止剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0105】
硬化剤としては、例えば、パーオキサイドが挙げられる。パーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシアセテート、および、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが挙げられる。パーオキサイドとして、好ましくは、パーオキシイソプロピルモノカーボネートが挙げられ、より具体的には、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが挙げられる。また、パーオキサイドとして、好ましくは、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0106】
硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。硬化剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、0.7質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0107】
離型剤としては、例えば、脂肪酸および脂肪酸金属塩が挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸およびラウリン酸が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムが挙げられる。さらに、離型剤としては、例えば、パラフィン、液体ワックス、フッ素ポリマー、シリコン系ポリマーおよびアルキルアンモニウム塩が挙げられる。離型剤として、好ましくは、脂肪酸金属塩、より好ましくは、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0108】
離型剤は、単独使用または2種以上併用できる。離型剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下である。
【0109】
充填材(柄材を除く。)としては、例えば、無機充填材が挙げられる。無機充填材としては、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、シリカ、ガラスパウダー、中空フィラー、ケイ酸塩、フッ化物、リン酸塩および粘土鉱物が挙げられる。酸化物としては、例えば、アルミナおよびチタニアが挙げられる。水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムが挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウムが挙げられる。硫酸塩としては、例えば、硫酸バリウムが挙げられる。シリカとしては、例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、フュームドシリカおよび乾式シリカ(アエロジル)が挙げられる。中空フィラーとしては、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーンおよびアルミナバルーンが挙げられる。ケイ酸塩としては、例えば、珪砂、珪藻土、マイカ、クレー、カオリンおよびタルクが挙げられる。フッ化物としては、例えば、ホタル石が挙げられる。リン酸塩としては、例えば、リン酸カルシウムが挙げられる。粘土鉱物としては、例えば、スメクタイトが挙げられる。充填材として、好ましくは、無機充填材が挙げられ、より好ましくは、水酸化物、炭酸塩、ガラスパウダーおよび中空フィラーが挙げられ、さらに好ましくは、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ガラスパウダー、中空フィラーが挙げられ、さらに好ましくは、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムが挙げられ、とりわけ好ましくは、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0110】
充填材は、単独使用または2種以上併用できる。充填材の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0111】
着色剤としては、特に制限されず、例えば、顔料およびポリエステルトナーが挙げられる。顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄およびフタロシアニンブルーを代表とする有機顔料が挙げられる。ポリエステルトナーとしては、例えば、顔料含有ポリエステル着色剤が挙げられる。着色剤として、好ましくは、ポリエステルトナーが挙げられる。
【0112】
着色剤は、単独使用または2種以上併用できる。着色剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0113】
増粘剤は、熱硬化性樹脂組成物を加熱圧縮成形に適した粘度まで増粘させるために配合される。増粘剤は、好ましくは、熱硬化性樹脂組成物を強化繊維(後述)に含浸させる前(好ましくは、直前)に配合される。増粘剤としては、例えば、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびポリイソシアネート化合物が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。増粘剤として、好ましくは、アルカリ土類金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0114】
増粘剤は、単独使用または2種以上併用できる。増粘剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、0.7質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0115】
湿潤分散剤は、充填材の濡れ性を改善するために配合される。湿潤分散剤としては、公知の湿潤分散剤が挙げられる。湿潤分散剤としては、例えば、リン酸ポリエステルが挙げられる。また、湿潤分散剤は、市販品を用いることができ、湿潤分散剤の市販品としては、例えば、BYK-W996、および、BYK-W9010(以上ビックケミー社製)が挙げられる。
【0116】
湿潤分散剤は、単独使用または2種以上併用できる。湿潤分散剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0117】
分離防止剤は、熱硬化性樹脂組成物の分離を防止するために配合される。分離防止剤としては、例えば、スチレンと酢酸ビニルとのブロック共重合体が挙げられる。また、分離防止剤として、市販品を用いることができ、分離防止剤の市販品としては、例えば、BYK-W972、および、BYK-9076(以上ビックケミー社製)が挙げられる。
【0118】
分離防止剤は、単独使用または2種以上併用できる。分離防止剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0119】
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤および非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。ハロゲン系難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤が挙げられる。非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、無機系難燃剤および窒素化合物系難燃剤が挙げられる。
【0120】
難燃剤は、単独使用または2種以上併用できる。難燃剤の配合割合は、熱硬化性樹脂および重合性単量体の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0121】
さらに、熱硬化性樹脂組成物は、その他の添加剤を適宜の割合で含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、抗菌剤、親水剤、光触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、チクソ付与剤、チクソ安定剤および重合促進剤が挙げられる。
【0122】
そして、上記の熱硬化性樹脂組成物において、柄材は、金属を含む金属含有層と、金属含有層を被覆するシリカ系皮膜とを有している。また、熱硬化性樹脂組成物が、カップリング剤を含んでいる。そのため、柄材のシリカ系皮膜が、カップリング剤によって補強され、より確実に金属含有層を被覆できる。その結果、上記の熱硬化性樹脂組成物は、金属の塩化および変色を抑制でき、優れた柄材耐変色性を有する。
【0123】
そのため、上記の熱硬化性樹脂組成物は、成形材料において、好適に使用される。成形材料は、上記の熱硬化性樹脂組成物を単独で含有するか、または、上記の熱硬化性樹脂組成物と、強化繊維とを含有する。好ましくは、成形材料は、上記の熱硬化性樹脂組成物と、強化繊維とを含有する。すなわち、成形材料は、好ましくは、繊維強化成形品用の成形材料である。
【0124】
強化繊維として、例えば、無機繊維、有機繊維、および、天然繊維が挙げられる。無機繊維として、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、および、セラミック繊維が挙げられる。有機繊維として、例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、フッ素樹脂系繊維、および、フェノール系繊維が挙げられる。天然繊維として、例えば、麻、および、ケナフが挙げられる。強化繊維は、単独使用または2種以上併用することができる。強化繊維のなかでは、好ましくは、無機繊維が挙げられ、より好ましくは、炭素繊維およびガラス繊維が挙げられ、さらに好ましくは、ガラス繊維が挙げられる。
【0125】
強化繊維の形状として、例えば、クロス状、チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、サーフェーシングマットなどのマット状、ストランド状、チョップドストランド状、ロービング状、不織布状、ペーパー状などが挙げられる。強化繊維の形状のなかでは、好ましくは、ロービング状が挙げられる。
【0126】
強化繊維の長さは、成形品の平滑性の観点から、例えば、0.1m以上、好ましくは、1.5mm以上である。さらに、成形品の強度の観点から、強化繊維の長さは、より好ましくは、5mm以上、より好ましくは、15mm以上である。また、成形品の強度の観点から、強化繊維の長さは、例えば、80mm以下、好ましくは、40mm以下である。
【0127】
強化繊維の配合割合は、熱硬化性樹脂組成物および強化繊維の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。また、強化繊維の配合割合は、熱硬化性樹脂組成物および強化繊維の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0128】
成形材料は、公知の製造方法により得られる。成形材料としては、例えば、樹脂モールディングコンパウンドが挙げられる。樹脂モールディングコンパウンドとして、例えば、シートモールディングコンパウンド(SMC)、シックモールディングコンパウンド(TMC)、および、バルクモールディングコンパウンド(BMC)が挙げられる。
【0129】
例えば、強化繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させることによって、シート状の成形材料が得られる。成形材料がシート状である場合において、成形材料の厚みは、例えば、1.0mm以上であり、例えば、15.0mm以下である。
【0130】
このような成形材料は、柄材耐変色性に優れる上記熱硬化性樹脂組成物を含んでいる。そのため、成形材料は、優れた柄材耐変色性を有する。そのため、成形材料は、任意の成形品の製造に、好適に使用される。
【0131】
成形品を製造する方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、まず、上記の成形材料を、増粘させる。増粘方法としては、例えば、熟成が挙げられる。熟成温度は、例えば、20℃以上60℃以下である。熟成時間は、例えば、8時間以上120時間以下である。
【0132】
これにより、成形材料が、例えば、シート状に保形される。つまり、成形材料は、好ましくは、シート形状を有する。
【0133】
その後、成形材料を、加熱圧縮成形する。成形条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。より具体的には、成形温度は、例えば、100℃以上200℃以下である。また、成形圧力が、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、1MPa以上、より好ましくは、5MPa以上である。また、成形圧力は、例えば、20MPa以下、好ましくは、15MPa以下である。
【0134】
これにより、成形材料が熱硬化する。その結果、成形材料の硬化物からなる成形品が得られる。
【0135】
成形品は、上記の成形材料の硬化物からなるため、優れた柄材耐変色性を有する。そのため、成形品は、繊維強化材料(FRP材料)として、各種産業分野において、好適に使用される。
【0136】
成形品としては、好ましくは、人造大理石が挙げられる。人造大理石は、各種産業分野において、広範に使用される。人造大理石の用途としては、例えば、浴槽、浴室部材、キッチン天板、シンク、洗面ボウル、洗面カウンター、自動車外装材、自動車内装材、鉄道車両用部材、建築部材および照明器部材が挙げられる。とりわけ、浴室部材としては、例えば、浴室ユニットの洗い場、洗面器置きカウンター、床、天井、壁、および、洗い場付き浴槽が挙げられる。鉄道車両用部材としては、例えば、照明カバー部品、テーブル部品、難燃部品、窓枠部品および、壁が挙げられる。建築部材としては、例えば、壁材、タイル材、明り取り窓用材、および、床材が挙げられる。照明器部材として、例えば、照明カバーが挙げられる。
【0137】
なお、成形品の用途は、上記に限定されない。成形品の用途としては、例えば、エレベーターの天井、エレベーターの壁、ステンドグラス代替材、モバイルデバイスの躯体、電気製品の意匠部品、および、難燃部材が挙げられる。
【実施例0138】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0139】
合成例1(不飽和ポリエステル)
温度計、窒素ガス導入管、パーシャルコンデンサおよび攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、イソフタル酸332質量部、プロピレングリコール419質量部、ネオペンチルグリコール521質量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200~210℃の温度で重縮合反応させた。酸価が10mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸785質量部を仕込み、再び210~220℃で反応させて、酸価が27.0mgKOH/gの不飽和ポリエステル(1)を得た。
【0140】
合成例2(不飽和ポリエステル)
合成例1同様の反応器に、イソフタル酸50質量部、プロピレングリコール570質量部、水素化ビスフェノールA720質量部、無水マレイン酸951質量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200~210℃の温度で重縮合反応させた。酸価が27.0mgKOH/gの不飽和ポリエステル(2)を得た。
【0141】
合成例3(ビニルエステル)
合成例1と同様のパーシャルコンデンサを冷却管にした反応器で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185)1850質量部、ビスフェノールA317質量部、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.4質量部を仕込み、窒素を吹き込みながら、170℃で5時間反応させてエポキシ当量が300のエポキシ樹脂を得た。120℃まで冷却後、重合禁止剤としてハイドロキノン2.0質量部、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド2.0質量部、メタクリル酸636質量部を仕込み、空気を吹き込みながら120℃で付加反応させた。得られた酸価7.0mgKOH/gのビニルエステルに、無水マレイン酸354質量部を添加し、80℃で反応させることにより酸価71.2mgKOH/gの酸変性ビニルエステルを得た。
【0142】
合成例4(アクリルポリマー)
メチルメタクリレート4515質量部と、ヒドロキシエチルメタクリレート(639質量部)および無水フタル酸(168質量部)の付加反応物807質量部とを重合開始剤としてのアゾビスイソブチルニトリル(AIBN)を用いて、85℃で8時間反応させ、泡粘度計で終点8cm/秒を確認して冷却した。次いで、6-tert-Butyl-2,4-xylenolを100ppm添加し、エアーバブリングして、アクリルポリマー30%、メチルメタクリレート70%、酸価12mgKOH/gのアクリルシロップを得た。
【0143】
製造例1(柄材Aの製造)
ガラスを振動篩機で分級し、基材としての鱗片状ガラスフレークを得た。なお、ガラスは、溶融ガラスからブロー法で製造されているものを使用した。
【0144】
一方、純水1Lに、塩化第1スズ0.20gを溶解させ、さらに、その溶液に希塩酸を添加した。これにより、pH2.0の前処理液を得た。次いで、前処理液に、上記の鱗片状ガラスフレーク200gを添加し、その後、鱗片状ガラスフレークを取り出して水洗した。これにより、鱗片状ガラスフレークを前処理した。
【0145】
また、純水2Lに、25%アンモニア水を50gと、エチレンジアミン30mlと、硝酸銀30gとを添加し、30℃でメッキ液を得た。
【0146】
純水500mLにブドウ糖15gを溶解させた溶液を準備した。そのブドウ糖の溶液に、前処理した鱗片状ガラスフレークを添加し、混合液を得た。その混合液に、上記のメッキ液を添加し、30分間攪拌した。無電解めっき反応により、鱗片状ガラスフレークの表面に銀を析出させた。これにより、金属含有層としての銀含有被膜を、基材としての鱗片状ガラスフレークの表面に形成した。
【0147】
その後、銀含有被膜を有する鱗片状ガラスフレークを、濾過および水洗し、150℃で乾燥させ、電気炉において400℃で3時間熱処理した。これにより、基材(鱗片状ガラスフレーク)と、基材を被覆する金属含有層(銀含有被膜)とを備える柄材Aを得た。
製造例2(柄材A’の製造)
上記の柄材Aの表面に、シリカ系皮膜を形成した。すなわち、テトラエトキシシラン15mLと、エチルアルコール300mLと、純水600mLとを混合し、塗布溶液を得た。次いで、塗布溶液に、上記の柄材A 30gを添加し、撹拌機で混合した。次いで、混合液に、水酸化アンモニウム(25%)15mLを添加し、3時間撹拌しながら脱水縮合させた。これにより、柄材Aの表面にシリカ系皮膜を析出させた。その後、シリカ系皮膜を備える柄材Aを、ろ過、水洗、自然乾燥および熱処理した。熱処理温度は180℃であり、熱処理時間は2時間であった。これにより、基材(鱗片状ガラスフレーク)と、基材を被覆する金属含有層(銀含有被膜)と、金属含有層を被覆するシリカ系皮膜と備える柄材A’を得た。
【0148】
製造例3(柄材Bの製造)
以下の方法で、柄材Bを得た。すなわち、柄材Aと同じ方法で、基材としての鱗片状ガラスフレークの表面に、金属含有層としての銀含有皮膜を形成した。なお、銀含有皮膜の量を、柄材Aに対し、約10%減量した。これにより、基材(鱗片状ガラスフレーク)と、基材を被覆する金属含有層(銀含有被膜)とを備える柄材Bを得た。
【0149】
製造例4(柄材B’の製造)
柄材Aに代えて、柄材Bを使用した以外は、製造例2と同じ方法で、柄材Bの表面にシリカ系皮膜を形成した。これにより、基材(鱗片状ガラスフレーク)と、基材を被覆する金属含有層(銀含有被膜)と、金属含有層を被覆するシリカ系皮膜と備える柄材B’を得た。
【0150】
実施例1~9および比較例1~6
(1)熱硬化性樹脂組成物および成形材料
表1および表2に示す処方で、樹脂成分(熱硬化性樹脂、重合性単量体および低収縮化剤)、柄材、カップリング剤、重合禁止剤、離型剤、硬化剤、離型剤、充填材、着色剤、および、増粘剤を混合した。これにより、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0151】
次いで、表1および表2に示す処方で、熱硬化性樹脂組成物に、連続的に1インチ(25mm)に切断したガラス繊維を添加して、成形材料を得た。
【0152】
(2)成形品(人造大理石)
成形材料を、300mm×300mm×厚み4mmの平板金型により成形し、平板状の成形品を得た。その後、成形品を金型から脱型し、直ちに鉄板の間に挟んで冷却した。なお、成形条件は、以下の通りである。
成形温度:上型/下型=140℃/140℃
成形圧力:10MPa
保持時間:420秒
【0153】
<評価>
(1)曲げ強さ、曲げ弾性率
成形品から、試験片(長さ80mm、幅10mm)を切り出した。試験片の23℃における曲げ強さおよび曲げ弾性率を、JIS K 7017(1999年)に準拠して、測定した。
【0154】
(2)引張強さ、引張弾性率
成形品から、試験片を切り出した。試験片の23℃における引張強さおよび引張弾性率を、JIS K 7164(2005年)に準拠して、測定した。
(3)アイゾット衝撃試験
成形品から、試験片(長さ65mm、幅10mm)を切り出した。試験片のアイゾット衝撃試験(フラットワイズ、ノッチなし)を、JIS K 7062(1992年)に準拠して、測定した。
【0155】
(4)柄材耐変色性
成形品から、試験片(35mm角)を切り出した。試験片の柄材耐変色性を、以下の方法で評価した。
【0156】
(a)洗剤A:ドメスト(次亜塩素酸ナトリウム濃度9質量%)ユニリーバジャパン製
(b)洗剤B:強力カビハイター(次亜塩素酸ナトリウム濃度4質量%、硫黄濃度0.2質量%)花王製
【0157】
洗剤Aまたは洗剤Bに、成形品を、48時間または72時間浸漬した。その後、成形品の色の変化を、目視で評価した。
【0158】
評価基準を下記する。
◎:試験片内の黒点が目立たなかった。
○:試験片内の黒点がほとんど目立たなかった。
△:試験片内の黒点がやや目立っていた。
×:試験片内の黒点が非常に目立っていた。
【0159】
(5)煮沸性および光沢
成形品より切り出した150mm角の試験片を、90℃の湯浴中に浸漬した。そして、ブリスター(膨れ)が発生する時間を目視で確認した。また、浸漬の前後において、試験片の色調を測定した。測定には、分光色差計SE 6000(電色社製)を使用した。これにより、各実施例の成形品が、十分な光沢および煮沸性を有していることを確認し、また、実施例9が最も優れていることを確認した。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
柄材A:製造例1で得られた柄材
柄材A’:製造例2で得られた柄材
柄材B:製造例3で得られた柄材
柄材B’:製造例4で得られた柄材
低収縮化剤の溶液:ポリスチレンのスチレン溶液
PBQ:重合禁止剤、パラベンゾキノン
トリゴノックス129-75:商品名トリゴノックス129-75、硬化剤、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、Nouryon製