(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103568
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】毛髪用化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/98 20060101AFI20230720BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
A61K8/98
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004172
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】517450703
【氏名又は名称】株式会社バイオアパタイト
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】酒井 有紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘一
(72)【発明者】
【氏名】望月 千尋
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083CC31
4C083EE29
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】安心で比較的簡単に得られる毛髪用化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】
0.001~30%の加水分解卵殻膜を主たる有効成分とする加水分解卵殻膜水溶液からなることを特徴とする毛髪用化粧料とした。これにより、加水分解卵殻膜の水溶液を得るための製造工程のみでよく、比較的簡単に毛髪用化粧料を生産できる。また、天然素材からなっているため安心、安全な毛髪用化粧料を提供できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001~30%の加水分解卵殻膜を主たる有効成分とする加水分解卵殻膜水溶液からなることを特徴とする毛髪用化粧料。
【請求項2】
前記加水分解卵殻膜は、電解アルカリ水中で卵殻膜粉末を加水分解して得ることを特徴とする請求項1に記載の毛髪用化粧料。
【請求項3】
前記加水分解卵殻膜は、発酵分解により得ることを特徴とする請求項1に記載の毛髪用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解卵殻膜を主たる有効成分とする毛髪用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鶏卵などの卵殻の内側にある卵殻膜を分解して得られる加水分解卵殻膜は育毛や健康増進などに有効であるとされている。
【0003】
特許文献1には、カチオン化ヒアルロン酸を主たる有効成分とする毛髪改質剤に加水分解卵殻膜が含まれていてもよい事項が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特許第5241708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、加水分解卵殻膜が含まれていてもよいとの記載はあるものの主たる有効成分はカチオン化ヒアルロン酸であり、加水分解卵殻膜以外にもカチオン化ヒアルロン酸を製造するために製造工程が複雑となる問題がある。
また、天然素材でない物質が含有されていることで、消費者にとって安心なものでない恐れがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、安心で比較的簡単に得られる毛髪用化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、0.001~30%の加水分解卵殻膜を主たる有効成分とする加水分解卵殻膜水溶液からなることを特徴とする毛髪用化粧料を提供するものである。
【0008】
この構成により、比較的簡単に毛髪用化粧料を生産できる。また、天然素材からなっているため安心、安全な毛髪用化粧料を提供できる。
【0009】
毛髪用化粧料であって、前記加水分解卵殻膜は、電解アルカリ水中で卵殻膜粉末を加水分解して得られる構成としてもよい。
【0010】
この構成により、電解アルカリ水中で卵殻膜粉末を加水分解することで、容易に加水分解卵殻膜を得ることができる。
【0011】
毛髪用化粧料であって、前記加水分解卵殻膜は、発酵分解により得られる構成としてもよい。
【0012】
この構成により、発酵により容易に加水分解卵殻膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の毛髪用化粧料により、安心で簡単に得られる毛髪用化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1における毛髪用化粧料の効果を説明するブリーチ後の毛髪を撮影した写真である。
【
図2】本発明の実施例1における毛髪用化粧料の効果を説明するブリーチ後水処理をした毛髪を撮影した顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の実施例1における毛髪用化粧料の効果を説明するブリーチ後加水分解卵殻膜水溶液処理をした毛髪を撮影した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
本発明の実施例1について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1における毛髪用化粧料の効果を説明するブリーチ後の毛髪を撮影した顕微鏡写真である。
図2は、本発明の実施例1における毛髪用化粧料の効果を説明するブリーチ後水処理をした毛髪を撮影した顕微鏡写真である。
図3は、本発明の実施例1における毛髪用化粧料の効果を説明するブリーチ後加水分解卵殻膜水溶液処理をした毛髪を撮影した顕微鏡写真である。
【0016】
本発明の実施例1における毛髪用化粧料は、加水分解卵殻膜を有効成分としている。これにより、キューティクルを補修し、つやを与える効果が期待できる。実施例1における毛髪用化粧料は、0.5%の加水分解卵殻膜を含む加水分解卵殻膜水溶液であるが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、0.001~30%の加水分解卵殻膜を含む加水分解卵殻膜水溶液であってよい。
【0017】
本発明の実施例1における毛髪用化粧料の実証結果について説明する。
図1は、マンダムのギャッツビーEXハイブリーチにて30分×4回、毛髪にダメージを与えたブリーチ後の写真である。毛髪にダメージが加えられた様子が確認できる。
【0018】
図2は、上記ブリーチ後の毛髪を精製水に3分間浸漬し、タオルでドライ後風乾したときの写真である。毛髪におけるダメージがそのまま残っている様子が確認できる。
【0019】
図3は、
図1に示したブリーチ後の毛髪を0.5%の加水分解卵殻膜を含む加水分解卵殻膜水溶液に3分間浸漬し、タオルでドライ後風乾したときの写真である。毛髪のダメージがほとんど修復された様子が確認できる。手で触れても手触りが滑らかになっている。
【0020】
なお、実施例1における毛髪用化粧料は、水以外に加水分解卵殻膜しか含まない加水分解卵殻膜水溶液であるが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、加水分解卵殻膜以外に香り成分や防腐剤を含んだ加水分解卵殻膜水溶液であってもよい。
【0021】
(加水分解卵殻膜の製造方法)
本発明の実施例1における加水分解卵殻膜の製造方法は、次の工程を経ることで、容易に加水分解卵殻膜を製造することができる。
(1)加水分解工程
(2)中和工程
(3)加水分解卵殻膜回収工程
【0022】
まず、(1)加水分解工程を説明する。
電解アルカリ水を用意し、この電解アルカリ水の中に細かく破砕された卵殻膜を投入する。電解アルカリ水は、水酸化ナトリウム0.18%アルカリ性を換算した値でpH12.5~13であり、また、含有塩(Naイオン)が0.2%以下である。pH値が低いと卵殻膜を加水分解する時間が長くなったり、加水分解することが困難になったりする場合がある。また、含有塩(Naイオン)が多いと、卵殻膜以外のミネラル分が含まれ、遊離したアミノ酸はNa+と塩を作りやすく、塩分が含まれることで使用できる用途が限定される。また、この塩分を除去するために陽イオン交換樹脂を用いた複雑な工程が必要になるという問題がある。
【0023】
本発明の加水分解卵殻膜の製造方法では、電解アルカリ水を用いて卵殻膜の加水分解を行うため、アルカリ性がpH12.5~13であり、また、含有塩(Naイオン)が0.2%以下であるため上記の問題点を解決して、効率的に卵殻膜の加水分解を行うことができる。
【0024】
卵殻膜を細かく破砕するには、卵殻膜が卵殻に密着している状態で、公知の破砕機により、5~7μmに破砕してから卵殻と卵殻膜とを分離すればよい。細かく粉砕した卵殻膜を電解アルカリ水に投入して数時間撹拌すると卵殻膜が加水分解される。このとき、70~90℃に加熱してもよい。これにより加水分解が加速される。
【0025】
次に、(2)中和工程を説明する。
酸添加工程では、(1)加水分解工程で加水分解された卵殻膜粉末を含む電解アルカリ水に酸を添加してpH7程度に下げる。酸はクエン酸、酸性電解液、希塩酸等であってもよい。酸を添加した後のpHは、7が最も好ましいが、6.5~8・5程度であってもよい。
【0026】
次に、(3)加水分解卵殻膜回収工程を説明する。
加水分解卵殻膜回収工程では、水分と水分に含まれる夾雑物を除去することで加水分解卵殻膜液を回収することができる。具体的には、中和した水溶液を静置するか遠心分離機にかけて、沈殿物を除いた上澄み液をとった後、加熱して回収してもよいし、中和した水溶液をフィルタで濾過して夾雑物を除去して回収してもよい。
【0027】
なお、実施例1においては、電解アルカリ水中で加水分解卵殻膜を製造することとしたが、これに限定されず適宜変更が可能である。例えば、水酸化ナトリウム等の強アルカリによって加水分解卵殻膜を製造してもよいし、プロテアーゼ等を使って加水分解卵殻膜を製造してもよい。
【0028】
このように、実施例1においては、0.001~30%の加水分解卵殻膜を主たる有効成分とする加水分解卵殻膜溶液からなることを特徴とする毛髪用化粧料により、比較的簡単に毛髪用化粧料を生産できる。また、天然素材からなっているため安心、安全な毛髪用化粧料を提供できる。
【0029】
また、前記加水分解卵殻膜は、電解アルカリ水中で卵殻膜粉末を加水分解して得ることで、電解アルカリ水中で卵殻膜粉末を加水分解することで、容易に加水分解卵殻膜を得ることができる。
本発明の実施例2は、発酵分解により加水分解卵殻膜を得る点で実施例1と異なっている。実施例2における加水分解卵殻膜の製造方法について説明する。実施例2においては、次の工程を経ることで、容易に加水分解卵殻膜を製造することができる。
(1)麹生成工程
(2)卵殻膜発酵工程
(3)不活性化工程
実施例2における麹生成工程では、種麹から麹を生成する。滅菌水5lに同じく滅菌処理した卵殻膜10~100g(乾燥重量)とポテトエキス5~50g、ブドウ糖10~100gを入れ、麹菌液10mlを加えて25℃~45℃で1日~1週間曝気しながら攪拌する。この間、麹菌はプロテアーゼやペプチダーゼといったタンパク分解酵素や糖分解酵素のアミラーゼを産出する。
次に、麹生成工程で生成した麹を使って、卵殻膜発酵工程を実施して発酵による加水卵殻膜液を生成する。卵殻膜発酵工程は、粗粉砕された卵殻膜をタンクに投入し、麹生成工程で生成された麹を混ぜる。実施例2における麹は醤油麹、米麹や豆麹等の任意の麹を用いることができる。そして、卵殻膜と麹を投入すると、およそ45℃で酵素分解がおきる。この状態で0.5~7日間熟成させると、麹が分泌するプロテアーゼ酵素、ペプチダーゼ酵素、及びアミラーゼによりタンパク質や糖を分解する。そして、発酵が終わると発酵による加水分解卵殻膜を含む混濁液となる。
卵殻膜発酵工程の後に、殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を実施する。これにより、発酵による加水分解卵殻膜液には濾過してもプロテアーゼが含まれているが、不活性化工程を実施することによってペプチドのさらなる分解を阻止し、麹菌の繁殖を止め、雑菌による腐敗を防止できる。
不活性化工程では、卵殻膜発酵工程で分解された発酵による加水分解卵殻膜液を10分~3時間60~90℃で加熱するとよいが、多くの場合は、30分間70℃に加熱することで、殺菌及び酵素を不活性にすることができる。