(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103596
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/32 20180101AFI20230720BHJP
F24F 11/37 20180101ALI20230720BHJP
F24F 11/38 20180101ALI20230720BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20230720BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20230720BHJP
【FI】
F24F11/32
F24F11/37
F24F11/38
F24F11/49
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004209
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 定康
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AB02
3L260BA51
3L260CB01
3L260DA10
3L260FB05
(57)【要約】
【課題】燃料ガスの供給停止を効率的に判定する。
【解決手段】空気調和システム100は、上流端が燃料ガスの供給源に接続されるガス管120と、ガス管120の下流端に接続されるガスエンジン272を含む室外機204を有する、複数の空気調和装置110と、複数の空気調和装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の空気調和装置のうち、1の空気調和装置のガスエンジンに異常が発生した場合であって、他の空気調和装置のガスエンジンにも異常が発生した場合に、複数の空気調和装置への燃料ガスの供給が停止されたと判定し、異常は、運転中にガスエンジンが異常停止したこと、および、ガスエンジンが起動できないことのうち少なくとも一方を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流端が燃料ガスの供給源に接続されるガス管と、
前記ガス管の下流端に接続されるガスエンジンを含む室外機を有する、複数の空気調和装置と、
前記複数の空気調和装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の空気調和装置のうち、1の空気調和装置の前記ガスエンジンに異常が発生した場合であって、他の空気調和装置の前記ガスエンジンにも前記異常が発生した場合に、前記複数の空気調和装置への前記燃料ガスの供給が停止されたと判定し、
前記異常は、運転中に前記ガスエンジンが異常停止したこと、および、前記ガスエンジンが起動できないことのうち少なくとも一方を含む、空気調和システム。
【請求項2】
前記制御部によって前記燃料ガスの供給が停止されたと判定した後に、前記複数の空気調和装置のうちの少なくとも1つの空気調和装置が運転開始の操作入力を受け付けると、
前記制御部は、前記複数の空気調和装置のうちの少なくとも1つの空気調和装置に対して起動指示を出力し、当該空気調和装置が起動した場合に、前記複数の空気調和装置への前記燃料ガスの供給が再開されたと判定する、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の空気調和装置のうち、前記運転開始の操作入力を受け付けていない空気調和装置に対して、前記起動指示を出力し、当該空気調和装置が起動した場合に、前記複数の空気調和装置への前記燃料ガスの供給が再開されたと判定する、請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記起動指示を出力した前記空気調和装置が起動した場合に、当該空気調和装置の動作を停止させる、請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の空気調和装置に対し、予め定められた順に前記起動指示を出力し、少なくともいずれか1つの空気調和装置が起動した場合に、前記複数の空気調和装置への前記燃料ガスの供給が再開されたと判定する、請求項2から4のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合、当該判定に応じて、前記1の空気調和装置を制御する、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合、前記1の空気調和装置の前記ガスエンジンを再起動させない、請求項6に記載の空気調和システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合、当該燃料ガスの供給停止を報知する、請求項1から7のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンによって駆動される圧縮機を有する室外機を備えた空気調和装置(ガスヒートポンプエアコン(GHP))が広く利用されている(例えば、特許文献1)。GHPのガスエンジンには、ガス管が接続されており、ガスエンジンは、ガス管から供給された都市ガス等の燃料ガスを燃焼させることで得られる動力を圧縮機に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガス管には、地震等の災害やガス漏れ等の異常が生じた場合に、需要家への燃料ガスの供給を停止する遮断弁が設けられている。通常、遮断弁は開かれており、異常が生じた場合に閉じられる。
【0005】
遮断弁が閉じられている場合、つまり、燃料ガスの供給が停止されている場合であっても、需要家への電力の供給は停止されていない場合がある。例えば、地震の発生後、電力は復旧したものの、燃料ガスの供給は復旧されていない場合がある。このような場合、空気調和装置には電力が供給されるため、ユーザは、空気調和装置のリモートコントローラに対し、運転開始の操作入力を行ってしまう可能性がある。
【0006】
空気調和装置が運転開始の操作入力を受け付けると、ガスエンジンを起動するためのスタータモータが回転し、クランキングが行われる。しかし、燃料ガスの供給が停止されていると、スタータモータは回転するが、ガスエンジンは起動できない。
【0007】
したがって、上記異常時等において電力が供給されているものの、燃料ガスの供給が停止されている場合に、ガスエンジンを起動させるためにスタータモータが無駄に回転される場合がある。このような不要なスタータモータの回転およびクランキングが複数回行われると、スタータモータおよびガスエンジンの耐久性が低下してしまう。このため、燃料ガスの供給停止を効率的に判定することができる技術の開発が希求されている。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、燃料ガスの供給停止を効率的に判定することが可能な空気調和システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和システムは、上流端が燃料ガスの供給源に接続されるガス管と、ガス管の下流端に接続されるガスエンジンを含む室外機を有する、複数の空気調和装置と、複数の空気調和装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の空気調和装置のうち、1の空気調和装置のガスエンジンに異常が発生した場合であって、他の空気調和装置のガスエンジンにも異常が発生した場合に、複数の空気調和装置への燃料ガスの供給が停止されたと判定し、異常は、運転中にガスエンジンが異常停止したこと、および、ガスエンジンが起動できないことのうち少なくとも一方を含む。
【0010】
また、制御部によって燃料ガスの供給が停止されたと判定した後に、複数の空気調和装置のうちの少なくとも1つの空気調和装置が運転開始の操作入力を受け付けると、制御部は、複数の空気調和装置のうちの少なくとも1つの空気調和装置に対して起動指示を出力し、当該空気調和装置が起動した場合に、複数の空気調和装置への燃料ガスの供給が再開されたと判定してもよい。
【0011】
また、制御部は、複数の空気調和装置のうち、運転開始の操作入力を受け付けていない空気調和装置に対して、起動指示を出力し、当該空気調和装置が起動した場合に、複数の空気調和装置への燃料ガスの供給が再開されたと判定してもよい。
【0012】
また、制御部は、起動指示を出力した空気調和装置が起動した場合に、当該空気調和装置の動作を停止させてもよい。
【0013】
また、制御部は、複数の空気調和装置に対し、予め定められた順に起動指示を出力し、少なくともいずれか1つの空気調和装置が起動した場合に、複数の空気調和装置への燃料ガスの供給が再開されたと判定してもよい。
【0014】
また、制御部は、燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合、当該判定に応じて、1の空気調和装置を制御してもよい。
【0015】
また、制御部は、燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合、ガスエンジンを再起動させなくてもよい。
【0016】
また、制御部は、燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合、当該燃料ガスの供給停止を報知してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料ガスの供給停止を効率的に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る空気調和システムの接続関係を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る空気調和装置を説明する図である。
【
図3】本実施形態に係る空気調和システムによる供給判定処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【
図4】本実施形態に係る空気調和システムによる供給判定処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る空気調和システムによる供給判定処理の流れを示す第3のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
[空気調和システム100]
図1は、本実施形態に係る空気調和システム100の接続関係を説明する図である。
図1に示すように、施設10(1つの建屋)には、空気調和システム100が設置される。施設10は、ショッピングセンター等の商業ビル、会社が事業所を構えるオフィスビル、学校等である。空気調和システム100は、複数の空気調和装置110と、ガス管120と、遮断弁130とを備える。複数の空気調和装置110は、それぞれ、通信網12を介して、管理サーバ20に接続される。空気調和装置110は、施設10内(屋内)の空気の温度を調整する。
【0021】
ガス管120は、燃料ガス(例えば、都市ガス)が通過する管である。ガス管120の一部は、施設10の敷地に埋設される。ガス管120の上流端は、ガス本管122に接続される。ガス管120の下流端は、空気調和装置110(ガスエンジン272)に接続される。
【0022】
ガス本管122の一部は、例えば、施設10に隣接した道路に埋設される。ガス本管122の上流端は、燃料ガスの供給源に接続される。
【0023】
遮断弁130は、ガス管120に設けられる。遮断弁130は、例えば、需要家における燃料ガスの消費量を計測するガスメータに設けられる。遮断弁130は、ガス管120に形成される流路を開閉する。遮断弁130は、通常時は開かれている。遮断弁130は、地震、火災等の災害や、ガス漏れ等の燃料ガスの供給異常が発生した場合に閉じられる。遮断弁130が閉じられることにより、空気調和システム100への燃料ガスの供給が停止される。閉じられた遮断弁130は、ユーザによる操作入力により再開される。
【0024】
遮断弁132は、ガス本管122に設けられる。遮断弁132は、地震、火災等の災害や、ガス漏れ等の燃料ガスの供給異常が発生した場合に閉じられる。遮断弁132が閉じられることにより、ガス管120への燃料ガスの供給が停止される。遮断弁132が閉じられた場合、燃料ガスの提供事業者(ガス会社)の作業者は、遮断弁132の下流側の設備の点検を行う。そして、点検の結果、作業者が下流側の設備に問題がないと判断した場合、作業者の操作入力により、閉じられた遮断弁132は、再開される。
【0025】
[空気調和装置110]
図2は、本実施形態に係る空気調和装置110を説明する図である。
図2に示すように、空気調和装置110は、リモートコントローラ202と、室外機204と、室内機206と、冷媒循環路208と、室外制御部210と、室内制御部212とを備える。
【0026】
リモートコントローラ202は、ユーザの操作入力を受け付ける。リモートコントローラ202に入力された情報は、後述する室内制御部212に送信される。また、リモートコントローラ202は、表示装置を備える。表示装置は、例えば、燃料ガスの供給が停止していることを示す旨の情報を表示する。
【0027】
室外機204は、屋外に設けられる。室内機206は、屋内に設けられる。本実施形態に係る空気調和装置110は、1または複数の室内機206を備える。
【0028】
冷媒循環路208は、冷媒が循環する流路である。冷媒循環路208は、室外機204および室内機206に冷媒を循環させる。
【0029】
室外制御部210(制御部)は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。室外制御部210は、ROMからCPUを動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。室外制御部210は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して室外機204全体を管理および制御する。室外制御部210の具体的な機能については、後に詳述する。
【0030】
室内制御部212は、CPUを含む半導体集積回路で構成される。室内制御部212は、ROMからCPUを動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。室内制御部212は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して室内機206全体を管理および制御する。室内制御部212は、室内機206ごとに設けられる。室内制御部212の具体的な機能については、後に詳述する。
【0031】
続いて、室外機204および室内機206について具体的に説明する。
【0032】
[室外機204]
図3は、本実施形態に係る空気調和装置110を説明する図である。
図3に示すように、室外機204は、四方弁250と、室外熱交換器252と、室外送風機254と、暖房用膨張弁256と、圧縮機260と、アキュムレータ262と、エンジンユニット270とを含む。
【0033】
四方弁250は、冷媒入口250a、冷媒出口250b、第1ポート250c、および、第2ポート250dを有する。四方弁250の第1ポート250cおよび第2ポート250dは、冷媒循環路208に接続される。空気調和装置110を冷房として機能させる場合、四方弁250は、冷媒入口250aと第1ポート250cとを連通させ、冷媒出口250bと第2ポート250dとを連通させる。空気調和装置110を暖房として機能させる場合、四方弁250は、冷媒入口250aと第2ポート250dとを連通させ、冷媒出口250bと第1ポート250cとを連通させる。
【0034】
室外熱交換器252は、冷媒循環路208に設けられる。室外熱交換器252は、冷媒循環路208を流れる冷媒と、屋外の空気とで熱交換を行う。
【0035】
室外送風機254は、室外熱交換器252に空気を送る。室外送風機254は、例えば、ファンで構成される。室外送風機254は、室外熱交換器252による屋外の空気と冷媒との熱交換を促進させる。
【0036】
暖房用膨張弁256は、冷媒循環路208における、室外熱交換器252と、後述する室内機206(室内膨張弁290)との間に設けられる。暖房用膨張弁256は、暖房時、空気調和装置110を暖房として機能させるため、減圧機構として作動する。また、暖房用膨張弁256は、冷房時、全開となり、室内機206へ向かう凝縮した冷媒(液)の抵抗にならないようにしている。
【0037】
圧縮機260は、冷媒を圧縮する。圧縮機260の吐出側は、四方弁250の冷媒入口250aに接続される。圧縮機260の吸入側は、四方弁250の冷媒出口250bに接続される。圧縮機260は、四方弁250の冷媒出口250bから吸入した冷媒を圧縮して、四方弁250の冷媒入口250aに吐出する。したがって、圧縮機260が駆動されることにより、冷媒循環路208を冷媒が循環する。
【0038】
アキュムレータ262は、四方弁250の冷媒出口250bと、圧縮機260の吸入側との間に設けられる。アキュムレータ262は、気液分離装置である。アキュムレータ262は、蒸発器(室外熱交換器252または室内熱交換器280)において蒸発しきれなかった冷媒(液体)を、冷媒(気体)から分離する。
【0039】
エンジンユニット270は、ガスエンジン272と、スタータモータ274とを含む。ガスエンジン272は、燃料ガスを燃焼させ、これにより得られる動力を圧縮機260に出力する。ガスエンジン272には、ガス管120の下流端が接続される。スタータモータ274は、ガスエンジン272の起動時にガスエンジン272のクランクシャフトを回転させる(クランキング)。スタータモータ274は、電力によって回転する。
【0040】
[室内機206]
図3に示すように、1または複数の室内機206は、冷媒循環路208における、室外熱交換器252(暖房用膨張弁256)と、四方弁250の第2ポート250dとの間に設けられる。
【0041】
室内機206は、室内熱交換器280と、室内送風機282と、室内膨張弁290とを含む。
【0042】
室内熱交換器280は、冷媒循環路208における、室外熱交換器252と、四方弁250の第2ポート250dとの間に設けられる。室内熱交換器280は、冷媒循環路208を流れる冷媒と、屋内の空気とで熱交換を行う。室内送風機282は、室内熱交換器280に空気を送る。室内送風機282は、例えば、ファンで構成される。室内送風機282は、室内熱交換器280による屋内の空気と冷媒との熱交換を促進させる。
【0043】
室内膨張弁290は、冷媒循環路208における室外熱交換器252と室内熱交換器280との間に設けられる。室内膨張弁290は、冷媒を減圧する。
【0044】
[室外制御部210および室内制御部212による供給判定処理]
上記したように、災害や供給異常が発生した場合、遮断弁130および遮断弁132のうちのいずれか一方または両方が閉じられ、燃料ガスの供給が停止される。しかし、燃料ガスの供給が停止されている場合であっても、施設10(空気調和システム100)への電力の供給は停止されていない場合がある。このような場合、空気調和装置110には電力が供給されるため、ユーザがリモートコントローラ202に対し、運転開始の操作入力を行ってしまう可能性がある。
【0045】
運転開始の操作入力を受け付けると、スタータモータ274が回転し、クランキングが行われる。しかし、燃料ガスの供給が停止されていると、スタータモータ274およびクランクシャフトは回転するが、ガスエンジン272は起動できない。このため、従来の空気調和装置は、燃料ガスの供給が停止されている場合に、運転開始の操作入力を受け付けると、スタータモータ274の回転、停止を複数回繰り返した後、運転開始できない旨の通知をリモートコントローラ202に表示させていた。
【0046】
したがって、従来の空気調和装置では、電力が供給されているものの、燃料ガスの供給が停止されている場合に、スタータモータ274が無駄に回転される場合があった。このような不要なスタータモータ274の回転およびクランキングが複数回行われると、スタータモータ274およびガスエンジン272の耐久性が低下してしまう。
【0047】
また、燃料ガスの供給が停止されている場合、スタータモータ274の回転時間は、燃料ガスが供給されている場合よりも長くなる(例えば、7倍程度)。したがって、スタータモータ274を放冷する時間を確保できず、スタータモータ274の劣化が進んでしまう。
【0048】
さらに、ガスエンジン272には、ガスエンジン272の駆動部に潤滑油を供給するためのオイルポンプが内蔵されている。オイルポンプは、ガスエンジン272のクランクシャフトの回転に応じて動作する。このため、オイルポンプがスタータモータ274のクランキングによって動作される場合、ガスエンジン272の通常運転によって動作される場合と比較して、オイルポンプによる潤滑油の吐出圧が低くなり、吐出量が少なくなる。そうすると、ガスエンジン272の駆動部が潤滑不足となり、摩耗が生じてしまう。
【0049】
そこで、本実施形態に係る空気調和システム100は、燃料ガスの供給停止を検知して、スタータモータ274の不要な回転を抑制する。
【0050】
本実施形態において、室外制御部210は、通信部310、判定部312として機能する。
【0051】
通信部310は、室内制御部212と通信を行う。また、通信部310は、空気調和システム100に含まれる、他のすべての空気調和装置110の室外制御部210と通信を行う。
【0052】
通信部310が、室内制御部212を通じて、運転開始の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、室外制御部210は、スタータモータ274を回転させて、ガスエンジン272を起動し、室外送風機254を動作させる。また、通信部310が、室内制御部212を通じて、運転停止の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、室外制御部210は、スタータモータ274の動作を停止させて、ガスエンジン272の動作を停止させ、室外送風機254の動作を停止させる。
【0053】
また、通信部310が、後述する起動指示を他の空気調和装置110から受信した場合、ガスエンジン272が停止中であれば、室外制御部210は、スタータモータ274の動作を開始させる。なお、通信部310が、他の空気調和装置110から起動指示を受信した場合であって、ガスエンジン272が動作中である場合、室外制御部210は、ガスエンジン272の動作を維持する。また、通信部310が、他の空気調和装置110から起動停止指示を受信した場合、室外制御部210は、スタータモータ274の動作を停止させる。
【0054】
判定部312は、燃料ガスの供給停止および供給再開を判定する。本実施形態において、判定部312は、空気調和システム100に含まれる複数の空気調和装置110のうち、1の空気調和装置110のガスエンジン272に異常が発生した場合に、他の空気調和装置110のガスエンジン272にも異常が発生したか否か検知し、他の空気調和装置110のガスエンジン272にも異常が発生した場合に、複数の空気調和装置110への燃料ガスの供給が停止された、つまり、遮断弁130および遮断弁132のうちのいずれか一方または両方が閉じられたと判定する。
【0055】
ここで、異常は、運転中にガスエンジン272が異常停止したこと、および、ガスエンジン272が起動できないことのうち少なくとも一方を含む。
【0056】
室内制御部212は、信号取得部320として機能する。信号取得部320は、リモートコントローラ202が受け付けたユーザの操作入力に対応する信号を取得する。信号取得部320が、運転開始の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、室内制御部212は、室内送風機282を動作させる。また、信号取得部320が、運転停止の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、室内制御部212は、室内送風機282の動作を停止させる。
【0057】
図3は、本実施形態に係る空気調和システム100による供給判定処理の流れを示す第1のフローチャートである。
図4は、本実施形態に係る空気調和システム100による供給判定処理の流れを示す第2のフローチャートである。
図5は、本実施形態に係る空気調和システム100による供給判定処理の流れを示す第3のフローチャートである。本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって供給判定処理が繰り返し実行される。
【0058】
[フラグ判定処理S110]
判定部312は、供給フラグがオンであるか否かを判定する。供給フラグは、燃料ガスの供給状態を示すフラグである。供給フラグのオンは、燃料ガスが供給されている、つまり、遮断弁130および遮断弁132が開かれていることを示す。また、供給フラグのオフは、燃料ガスの供給が停止されている、つまり、遮断弁130および遮断弁132のうちのいずれか一方または両方が閉じられていることを示す。供給フラグがオンであると判定した場合(S110におけるYES)、判定部312は、運転中判定処理S112に処理を移す。一方、供給フラグがオンではない、つまり、供給フラグがオフであると判定した場合(S110におけるNO)、判定部312は、運転開始時判定処理S150(
図5参照)に処理を移す。
【0059】
[運転中判定処理S112]
判定部312は、当該空気調和装置110が運転中であるか否かを判定する。その結果、当該空気調和装置110が運転中ではないと判定した場合(S112におけるNO)、判定部312は、運転開始時判定処理S114に処理を移す。一方、当該空気調和装置110が運転中であると判定した場合(S112におけるYES)、判定部312は、異常停止判定処理S122に処理を移す。
【0060】
[運転開始時判定処理S114]
判定部312は、当該空気調和装置110に対し、運転開始の操作入力を受け付けたか、つまり、ガスエンジン272の起動時であるか否かを判定する。その結果、当該空気調和装置110に対し、運転開始の操作入力を受け付けたと判定した場合(S114におけるYES)、判定部312は、起動成功判定処理S116に処理を移す。一方、当該空気調和装置110に対し、運転開始の操作入力を受け付けていないと判定した場合(S114におけるNO)、判定部312は、当該空気調和装置110は停止中であると判定して、当該供給判定処理を終了する。
【0061】
[起動成功判定処理S116]
判定部312は、当該空気調和装置110のガスエンジン272の起動が成功したか否かを判定する。その結果、当該空気調和装置110のガスエンジン272の起動が成功したと判定した場合(S116におけるYES)、判定部312は、当該供給判定処理を終了する。一方、当該空気調和装置110のガスエンジン272の起動が成功しなかった、つまり、当該空気調和装置110のガスエンジン272が起動できなかったと判定した場合(S116におけるNO)、判定部312は、他機判定処理S118に処理を移す。
【0062】
[他機判定処理S118]
判定部312は、当該空気調和装置110以外のすべての空気調和装置110が停止中であるか否かを判定する。その結果、当該空気調和装置110以外のすべての空気調和装置110が停止中であると判定した場合(S118におけるYES)、判定部312は、フラグオン時起動指示出力処理S120に処理を移す。一方、当該空気調和装置110以外の空気調和装置110のうち、少なくともいずれか1つの空気調和装置110が停止中ではない、つまり、運転中であると判定した場合(S118におけるNO)、判定部312は、他機異常判定処理S130(
図4参照)に処理を移す。
【0063】
[フラグオン時起動指示出力処理S120]
判定部312は、当該空気調和装置110以外のいずれか1つの空気調和装置110に対し起動指示を出力して、他機異常判定処理S130に処理を移す。
【0064】
[異常停止判定処理S122]
判定部312は、当該空気調和装置110のガスエンジン272が異常停止(エンジンストール)したか否かを判定する。その結果、当該空気調和装置110のガスエンジン272が異常停止したと判定した場合(S122におけるYES)、判定部312は、他機判定処理S118に処理を移す。一方、当該空気調和装置110のガスエンジン272が異常停止していない、つまり、通常運転中であると判定した場合(S122におけるNO)、判定部312は、当該供給判定処理を終了する。
【0065】
[他機異常判定処理S130]
図4に示すように、判定部312は、当該空気調和装置110以外のいずれか1つの空気調和装置110のガスエンジン272が異常停止したか、または、フラグオン時起動指示出力処理S120において起動指示を出力した空気調和装置110のガスエンジン272が起動できないかを判定する。その結果、判定部312は、当該空気調和装置110以外のいずれか1の空気調和装置110のガスエンジン272が異常停止した、または、起動指示を出力した空気調和装置110のガスエンジン272が起動できないと判定した場合(S130におけるYES)、判定部312は、供給フラグオフ処理S132に処理を移す。一方、判定部312は、当該空気調和装置110以外のすべての空気調和装置110のガスエンジン272は異常停止していない、または、起動指示を出力した空気調和装置110のガスエンジン272が起動できたと判定した場合(S130におけるNO)、判定部312は、起動停止指示出力処理S134に処理を移す。
【0066】
[供給フラグオフ処理S132]
判定部312は、供給フラグをオフにする。また、判定部312は、燃料ガスの供給が停止していることを示す旨の情報をリモートコントローラ202に表示させる。また、判定部312は、当該空気調和装置110のスタータモータ274の動作を開始させない。つまり、判定部312は、ガスエンジン272を再起動させない。そして、判定部312は、起動停止指示出力処理S134に処理を移す。
【0067】
[起動停止指示出力処理S134]
判定部312は、フラグオン時起動指示出力処理S120において、起動指示を出力した空気調和装置110に対し、起動停止指示を出力して、当該供給判定処理を終了する。
【0068】
[運転開始時判定処理S150]
図5に示すように、判定部312は、当該空気調和装置110に対し、運転開始の操作入力を受け付けたか、つまり、ガスエンジン272の起動時であるか否かを判定する。その結果、当該空気調和装置110に対し、運転開始の操作入力を受け付けたと判定した場合(S150におけるYES)、判定部312は、カウンタ設定処理S152に処理を移す。一方、当該空気調和装置110に対し、運転開始の操作入力を受け付けていないと判定した場合(S150におけるNO)、判定部312は、当該供給判定処理を終了する。
【0069】
[カウンタ設定処理S152]
判定部312は、当該空気調和装置110以外の他の複数の空気調和装置110の番号を確認するためのカウンタのカウンタ値nに1を設定する。
【0070】
[フラグオフ時起動指示出力処理S154]
判定部312は、当該空気調和装置110以外の他の複数の空気調和装置110のうち、カウンタのカウンタ値nが関連付けられた空気調和装置110(n番目の空気調和装置110)に対し起動指示を出力して、他機成功判定処理S156に処理を移す。
【0071】
[他機成功判定処理S156]
判定部312は、n番目の空気調和装置110のガスエンジン272の起動が成功した、または、n番目の空気調和装置110のガスエンジン272が運転中であるか否かを判定する。なお、空気調和システム100を構成するすべての空気調和装置110には、予め順番が設定されている。その結果、n番目の空気調和装置110のガスエンジン272の起動が成功した、または、運転中であると判定した場合(S156におけるYES)、判定部312は、他機通常処理S158に処理を移す。一方、n番目の空気調和装置110のガスエンジン272の起動が成功しなかった、つまり、n番目の空気調和装置110のガスエンジン272の起動ができなかったと判定した場合(S156におけるNO)、判定部312は、起動停止指示出力処理S162に処理を移す。
【0072】
[他機通常処理S158]
n番目の空気調和装置110は、運転中である場合には運転を維持する。また、n番目の空気調和装置110は、フラグオフ時起動指示出力処理S154による起動指示によってガスエンジン272が起動した場合には、ガスエンジン272の動作を停止する。
【0073】
[供給フラグオン処理S160]
判定部312は、供給フラグをオンにする。また、判定部312は、当該空気調和装置110のスタータモータ274の運転を開始させて、ガスエンジン272を起動させる。そして、判定部312は、当該供給判定処理を終了する。
【0074】
[起動停止指示出力処理S162]
判定部312は、フラグオフ時起動指示出力処理S154において、起動指示を出力したn番目の空気調和装置110に対し、起動停止指示を出力して、終了判定処理S164に処理を移す。
【0075】
[終了判定処理S164]
判定部312は、当該空気調和装置110以外のすべての空気調和装置110に対し、起動指示を出力したか否かを判定する。つまり、判定部312は、カウンタのカウンタ値nがNであるか否かを判定する。Nは、空気調和システム100に設けられたすべての空気調和装置110の数から1を減算した値である。判定部312は、カウンタ値nがNであると判定した場合(S162におけるYES)、供給停止表示処理S166に処理を移す。一方、カウンタ値nがNではないと判定した場合(S162におけるNO)、判定部312は、インクリメント処理S168に処理を移す。
【0076】
[供給停止表示処理S166]
判定部312は、燃料ガスの供給が停止していることを示す旨の情報をリモートコントローラ202に表示させて、当該供給判定処理を終了する。
【0077】
[インクリメント処理S168]
判定部312は、カウンタ値nに1加算(インクリメント)して、フラグオフ時起動指示出力処理S154に処理を移す。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る空気調和システム100は、判定部312を備える。このため、空気調和システム100は、1の空気調和装置110において運転中のガスエンジン272が異常停止した場合、または、ガスエンジン272が起動できない場合に、他の空気調和装置110のガスエンジン272の状況に基づき、燃料ガスの供給が停止されたか否かを判定することができる。
【0079】
また、判定部312は、燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合(供給フラグオフ処理S132)、燃料ガスの供給が停止していることを示す旨の情報をリモートコントローラ202に表示させる。これにより、ユーザによるリモートコントローラ202への新たな運転開始の操作入力を抑制することができる。このため、不要なスタータモータ274の回転およびクランキングを低減することができ、スタータモータ274およびガスエンジン272の耐久性の低下を防止することが可能となる。
【0080】
また、判定部312は、燃料ガスの供給が停止されたと判定した場合(供給フラグオフ処理S132)、当該空気調和装置110のスタータモータ274の動作を開始させない、つまり、ガスエンジン272を再起動させない。これにより、不要なスタータモータ274の回転およびクランキングの回数を低減することができ、スタータモータ274およびガスエンジン272の耐久性の低下を防止することが可能となる。また、燃料ガスの供給が停止された場合において、スタータモータ274の回転時間を短縮することができ、スタータモータ274の劣化を防止することが可能となる。さらに、燃料ガスの供給が停止された場合に、クランキングの回数を低減できることから、オイルポンプによる潤滑油の吐出圧および吐出量の低減を抑制することが可能となる。したがって、ガスエンジン272の駆動部が潤滑不足となる事態を回避することができ、ガスエンジン272の駆動部の摩耗を抑制することが可能となる。
【0081】
また、上記したように、判定部312は、フラグオフ時起動指示出力処理S154において、予め定められた順に起動指示を出力する。これにより、空気調和システム100は、他の空気調和装置110を満遍なく起動することができる。したがって、1の空気調和装置110に対して起動指示を出力する場合と比較して、起動指示によるスタータモータ274およびガスエンジン272の劣化を抑制することが可能となる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0083】
例えば、上述した実施形態において、判定部312によって検知されるガスエンジン272の異常として、運転中にガスエンジン272が異常停止したこと、および、ガスエンジン272が起動できないことを例に挙げた。しかし、判定部312によって検知されるガスエンジン272の異常は、運転中にガスエンジン272が異常停止したこと、および、ガスエンジン272が起動できないことのうち少なくとも一方を含んでいればよい。
【0084】
また、上記実施形態において、判定部312が、フラグオフ時起動指示出力処理S154において、当該空気調和装置110以外の他の複数の空気調和装置110のうちのいずれか1つの空気調和装置110に対して起動指示を出力する場合を例に挙げた。しかし、判定部312は、フラグオフ時起動指示出力処理S154において、当該空気調和装置110を含むすべての空気調和装置110のうち、いずれか1つの空気調和装置110に対して起動指示を出力してもよい。つまり、判定部312は、運転開始の操作入力を受け付けた空気調和装置110であるか否かに拘わらず、複数の空気調和装置110のうちのいずれか1つの空気調和装置110に対して起動指示を出力してもよい。また、判定部312は、複数の空気調和装置110のうち、運転開始の操作入力を受け付けていない空気調和装置110に対して起動指示を出力してもよい。
【0085】
また、上記実施形態において、判定部312が、フラグオフ時起動指示出力処理S154において、複数の空気調和装置110に対し、予め定められた順に起動指示を出力する場合を例に挙げた。しかし、判定部312は、複数の空気調和装置110のうちの予め定められた1つの空気調和装置110に起動指示を出力してもよい。例えば、判定部312は、最も運転時間の短い空気調和装置110に起動指示を出力してもよい。
【0086】
また、上記実施形態において、判定部312は、供給フラグオフ処理S132において、当該空気調和装置110のガスエンジン272を再起動させない場合を例に挙げた。しかし、判定部312は、供給フラグオフ処理S132において、当該空気調和装置110のガスエンジン272の再起動回数を通常時より減らしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態において、判定部312が、燃料ガスの供給が停止されたと判定した際、その旨をリモートコントローラ202に表示させる場合を例に挙げた。しかし、判定部312は、燃料ガスの供給停止を報知できれば構成に限定はない。例えば、判定部312は、燃料ガスの供給停止を示すランプを点灯させてもよい。また、判定部312は、燃料ガスの供給停止を示す音声を出力させてもよい。
【0088】
また、上記実施形態において、判定部312は、フラグオン時起動指示出力処理S120において、当該空気調和装置110以外の予め定められた1つの空気調和装置110に対し起動指示を出力する場合を例に挙げた。しかし、判定部312は、フラグオン時起動指示出力処理S120を実行する度に、当該空気調和装置110以外の複数の空気調和装置110のうち、予め定められた順に起動指示を出力してもよい。
【0089】
また、上記実施形態において、室外制御部210が供給停止判定処理を行う制御部として機能する場合を例に挙げた。しかし、室内制御部212が供給停止判定処理を行う制御部として機能してもよい。また、空気調和システム100が、複数の空気調和装置110を制御する制御部を備える場合、この制御部が供給停止判定処理を行う制御部として機能してもよい。また、管理サーバ20が供給停止判定処理を行う制御部として機能してもよい。
【符号の説明】
【0090】
100 空気調和システム
110 空気調和装置
120 ガス管
204 室外機
210 室外制御部(制御部)
272 ガスエンジン