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特開2023-103604プラント監視システム及びプラント監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103604
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】プラント監視システム及びプラント監視装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
G05B23/02 302T
G05B23/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004217
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細川 雄治
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223EA04
3C223EB03
3C223FF35
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】電気回路の異常の自動遠隔監視の機能を提供し、運転員等の負担を軽減するとともに、故障の早期発見により電源系統の信頼性を向上させる。
【解決手段】複数のプラントに設置された負荷回路、主要回路及び遮断器のうち少なくとも一つを含むプラント設備の監視をするプラント監視システムであって、信号受信部及び判定部を有する監視装置を備え、負荷回路及び主要回路には、電気量計測器が設置され、遮断器には、電気量計測器又は動作信号検出器が設置され、信号受信部は、電気量計測器により計測される電流を含む電気計測信号、及び動作信号検出器により検出される遮断器の動作信号のうち少なくともいずれか一方を受信し、判定部は、電気計測信号及び動作信号のうち少なくともいずれか一方について複数のプラントのうち二つ以上のプラントの間で比較をし、当該信号の値の差が所定値以上である場合には、負荷回路、主要回路又は遮断器に異常があると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプラントに設置された負荷回路、主要回路及び遮断器のうち少なくとも一つを含むプラント設備の監視をするシステムであって、
信号受信部及び判定部を有する監視装置を備え、
前記負荷回路及び前記主要回路には、電気量計測器が設置され、
前記遮断器には、電気量計測器又は動作信号検出器が設置され、
前記信号受信部は、前記電気量計測器により計測される電流を含む電気計測信号、及び前記動作信号検出器により検出される前記遮断器の動作信号のうち少なくともいずれか一方を受信し、
前記判定部は、前記電気計測信号及び前記動作信号のうち少なくともいずれか一方について前記複数のプラントのうち二つ以上のプラントの間で比較をし、当該信号の値の差が所定値以上である場合には、前記負荷回路、前記主要回路又は前記遮断器に異常があると判定する、プラント監視システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記電気計測信号及び前記動作信号のうち少なくともいずれか一方からプラントモードを推定し、前記複数のプラントのうち同様のプラントモードにある二つ以上のプラントの間で前記比較をする、請求項1記載のプラント監視システム。
【請求項3】
プラントに設置された負荷回路、主要回路及び遮断器のうち少なくとも一つを含むプラント設備の監視をするシステムであって、
信号受信部、判定部及び解析部を有する監視装置を備え、
前記負荷回路及び前記主要回路には、電気量計測器が設置され、
前記遮断器には、電気量計測器又は動作信号検出器が設置され、
前記信号受信部は、前記電気量計測器により計測された電流を含む電気計測信号、及び前記動作信号検出器により検出された前記遮断器の動作信号のうち少なくともいずれか一方を受信し、
前記判定部は、計測された前記電気計測信号及び検出された前記動作信号のうち少なくともいずれか一方から実際のプラントのプラントモードを推定し、
前記解析部は、前記プラントモードのシミュレーションをすることにより仮想のプラントを作成し、
前記判定部は、前記電気計測信号及び前記動作信号のうち少なくともいずれか一方について前記実際のプラントと前記仮想のプラントとの間で比較をし、当該信号の値の差が所定値以上である場合には、前記負荷回路、前記主要回路又は前記遮断器に異常があると判定する、プラント監視システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記負荷回路の通電順序及び前記負荷回路の電流の大きさのうち少なくとも一つの信号を基にして、前記プラントモードを推定する、請求項2又は3に記載のプラント監視システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記二つ以上のプラントの間で電圧又は周波数の条件を揃えることにより前記比較をする、請求項1記載のプラント監視システム。
【請求項6】
前記負荷回路は、電動機を有し、
前記判定部は、前記電流及び前記電圧の値から前記電動機のトルク又は滑りについて前記二つ以上のプラントの間で比較をし、前記トルク又は前記滑りの値の差が所定値未満である場合には、前記負荷回路は正常であると判定する、請求項5記載のプラント監視システム。
【請求項7】
複数のプラントに設置された負荷回路、主要回路及び遮断器のうち少なくとも一つを含むプラント設備の監視をする装置であって、
信号受信部と、
判定部と、を有し、
前記信号受信部は、前記負荷回路及び前記主要回路に設置された電気量計測器により計測される電流値を含む電気計測信号、並びに前記遮断器に設置された動作信号検出器により検出される前記遮断器の動作信号のうち少なくともいずれか一方を受信し、
前記判定部は、前記電気計測信号及び前記動作信号のうち少なくともいずれか一方について前記複数のプラントのうち二つ以上のプラントの間で比較をし、当該信号の値の差が所定値以上である場合には、前記負荷回路、前記主要回路又は前記遮断器に異常があると判定する、プラント監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラント監視システム及びプラント監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、プラント内の電路や負荷といった電気設備の運転状況の監視は、管理者や運転員(以下「運転員等」という。)が監視盤や現場に取り付けられた計器により確認する。そして、異常の発生は、各回路に取り付けられた保護リレーにより検知され、警報が発せられる。運転員等は、警報により異常の発生を認識する。この場合、運転員等は、警報を確認して初めて異常を認識することから、当該設備の交換や修理等の対応が後手となりがちである。このような事態は、発電所において稼働率の低下に繋がる。
【0003】
先手の対応を取っていくためには、常日頃から定期試験などで電気計測信号を把握し、電気回路の状態の変化に気を配らなければならない。また、現状は、計測データから早期に異常を検知することは困難であり、試験担当者が判定値やこれまでの経験から判断することが求められる。
【0004】
一方、今後の電力系統は、分散型になると想定され、小規模の発電所が多く設置される場合、上記のような監視を実施すると、必要となる人的リソースが非常に多くなるといった課題がある。これに関して、複数の発電所が設置されている場合に、遠隔で集中監視するためのシステムが既に提案されている。
【0005】
特許文献1には、水位測定器、入口弁、水車、サーボモータ、発電機、遮断器、変圧器、送電装置などを含む水力発電所の設備には、センサなどの測定器が取り付けられ、測定器は、取り付けられた設備の圧力、温度などの物理量、電圧、電流、周波数などの電気量を測定すること、それぞれの測定器は、測定値を監視制御システムに出力すること、監視制御システムの監視制御装置は、ネットワークを介して監視制御端末装置と接続されていること、監視制御端末装置は、水力発電所から離れた遠隔地に配置されていること、複数の監視制御端末装置において同時に複数の水力発電所の監視をすることができるものの、水力発電所の設備に対する制御権は、一つの監視制御端末装置に与えられ、これにより、水力発電所の関係者は、好適かつ混乱なく、水力発電所の設備の動作を制御できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-103447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、水力発電所が監視の対象となっているが、これに限らず、風力発電、太陽光発電等の発電設備は、比較的小型のものが分散配置される状況となってきている。
【0008】
発電プラントには、電気設備として保護リレーが設置されている。保護リレーは、例えば、過電流、地絡、短絡、低電圧、過電圧などの異常な事象を検知できるようになっている。具体的には、保護リレーは、回路上に異常が生じることで生じる極端な電気的な挙動変化、例えば地絡であれば零相電流や零相電圧の増加を異常と判定する。
【0009】
このような極端な電気的挙動変化が発生する場合、回路上では既に何かしらの故障が発生している場合が多い。この場合、故障の検証や設備の交換のため、プラントの停止が必要となる。結果として、長期間のプラント停止による稼働率低下を招く可能性がある。このような事象を回避するためには、定期的に各負荷の状態について把握しておき、負荷の異常を早期に認識し、異常に備える期間を確保し、事前の備えを十分に行い、異常が生じた場合に速やかに通常の運転状態に戻すような体制を整えておく必要がある。
【0010】
近年、分散型電源に関する検討が加速しており、将来の電力系統は、小規模の発電所が多く設置されることが想定されている。その場合、上記の異常の監視を行う人的リソースはプラント毎に必要となり、人材不足が顕著となる可能性もある。これを回避するためには、自動で異常監視を行うシステムが望ましい。
【0011】
本開示の目的は、電気回路の異常の自動遠隔監視の機能を提供し、運転員等の負担を軽減するとともに、故障の早期発見により電源系統の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係るプラント監視システムは、複数のプラントに設置された負荷回路、主要回路及び遮断器のうち少なくとも一つを含むプラント設備の監視をするシステムであって、信号受信部及び判定部を有する監視装置を備え、負荷回路及び主要回路には、電気量計測器が設置され、遮断器には、電気量計測器又は動作信号検出器が設置され、信号受信部は、電気量計測器により計測される電流を含む電気計測信号、及び動作信号検出器により検出される遮断器の動作信号のうち少なくともいずれか一方を受信し、判定部は、電気計測信号及び動作信号のうち少なくともいずれか一方について複数のプラントのうち二つ以上のプラントの間で比較をし、当該信号の値の差が所定値以上である場合には、負荷回路、主要回路又は遮断器に異常があると判定する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、電気回路の異常の自動遠隔監視の機能を提供し、運転員等の負担を軽減するとともに、故障の早期発見により電源系統の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のプラントの接続状態を示す模式構成図である。
図2】プラントの負荷状態及びプラントモードを示す模式構成図である。
図3】プラント監視装置においてシミュレーションにより作成した仮想のプラントを用いて電気計測信号を比較する構成の例を示す模式図である。
図4】異なる系統に接続されたプラント間において同じプラントモードとなる場合の電気計測信号を比較する構成の例を示す模式図である。
図5】実施形態のプラント監視装置を示す概略構成図である。
図6】実施形態のプラント監視装置による異常判定方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示に係るプラント監視システムは、複数のプラントと、プラント監視装置と、を含む。プラント監視システムは、一又は二以上の系統を更に含むものであってもよい。
【0016】
プラント監視システムは、プラント内の負荷回路(以下単に「負荷」ともいう。)や主要回路(以下「主要電路」ともいう。)に設置された電気量計測器により計測した電気量や、電気回路の開閉状態に関する信号からプラントモードを推定し、評価対象のプラントの各回路の電流値と、同様のプラントモードにある他のプラントの各回路の電流値とを比較し、それらの間で一定の閾値以上の差異が見られた場合、異常と判定する。
【0017】
本明細書において、プラントとは、発電所等の設備をいう。そして、プラントには、負荷、主要電路及び遮断器のうち少なくともいずれか一つを含むプラント設備が設置されている。プラント設備は、プラント監視装置により監視されるように構成されている。また、同様のプラントモードとは、同一のプラントモードだけでなく、ほぼ同一、すなわち状態が近似しているプラントモードも含むものとする。
【0018】
プラント監視装置(単に「監視装置」ともいう。)は、信号受信部(入力部)と、判定部(検知・判定部)と、を有する。プラント設備のうち、負荷及び主要電路には、電気量計測器が設置されている。また、遮断器には、電気量計測器又は動作信号検出器が設置されている。監視装置の信号受信部は、電気量計測器により計測される電流値を含む電気計測信号、及び動作信号検出器により検出される遮断器の動作信号のうち少なくともいずれか一方を受信する。
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各図中、同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0020】
図1は、実施形態のプラントの接続状態を示す模式構成図である。
【0021】
本図においては、第一の系統101に第一のプラント104、第二のプラント105及び第三のプラント106が接続されている。また、第二の系統102には、第四のプラント107が接続されている。第一の系統101と第二の系統102とは、接続母線103で接続されている。なお、本明細書において「主要電路」は、プラント内の主要な配線等だけでなく、系統とプラントとの接続配線、接続母線等を含んでいてもよい。
【0022】
第一のプラント104、第二のプラント105、第三のプラント106及び第四のプラント107は、プラント監視装置100に接続されている。プラント監視装置100は、各プラントから電気的計測信号を取得し、所定の演算処理を行い、異常の有無を判定し、必要に応じて運転員等に通知する。
【0023】
ここで、第一の系統101と第二の系統102とは、別系統であり、電気的な品質は同一ではないものとする。したがって、第一のプラント104、第二のプラント105、第三のプラント106及び第四のプラント107のそれぞれに設けられている電気設備が同じ仕様であるとしても、第一のプラント104、第二のプラント105及び第三のプラント106の電気的計測信号と第四のプラント107内の電気的計測信号とは、系統条件が異なることから、異なる特性を有する信号となる。
【0024】
図2は、プラントの負荷状態及びプラントモードを示す模式構成図である。
【0025】
本図に示す例においては、それぞれのプラントに設置された負荷は、3台のポンプである。一つのプラントにおいて3台のポンプの全てが動いている場合(全てがONの場合)を第一のモードとする。また、3台のポンプの全てが停止している場合(全てがOFFの場合)を第二のモードとする。第一のモード及び第二のモードは、プラントモードの例である。
【0026】
プラント監視装置100(図1)は、各負荷に設けたデジタルリレーや電流計等の電気量計測器、及び遮断器の投入又は遮断の信号を取得して、負荷の動作又は停止を検知し、プラントモードを推定する。
【0027】
プラント監視装置100は、第一のプラント104の負荷状態を検知すると、全ての負荷が動作していることから、第一のモードと推定する。第二のプラント105の負荷状態を検知すると、全ての負荷が停止していることから、第二のモードと推定する。第三のプラント106の負荷状態を検知すると、全ての負荷が動作していることから、第一のモードと推定する。この場合、同じ第一のモードと推定されている第一のプラント104と第三のプラント106とで電流値の大きさを比較し、差が一定値以上である場合は、異常と判定する。
【0028】
なお、本図においては、負荷がポンプである場合について説明したが、本開示に係る負荷としては、このほか、モータ等が挙げられる。
【0029】
図1において、第一の系統101に接続される第一のプラント104、第二のプラント105及び第三のプラント106と、第二の系統に接続される第四のプラント107とでは、系統側の電圧といった電気的な仕様が異なる。このため、系統が異なるプラント内の電気計測信号を単純に比較することは困難である。また、比較対象がない場合、例えば第四のプラント107のように、接続されている系統に他のプラントが存在しない場合や、図2の第二のプラント105のように、系統が同じであっても、同じプラントモードのプラントが存在しないの場合も、電気計測信号の比較は困難である。
【0030】
そこで、このような場合は、シミュレーションにより仮想のプラントを作成し、実際のプラントと比較することにより、異常の判定をする。
【0031】
図3は、プラント監視装置においてシミュレーションにより作成した仮想のプラントを用いて電気計測信号を比較する構成の例を示す模式図である。
【0032】
本図においては、プラント監視装置100において、評価対象の第四のプラント107と同じプラントモード(ここでは第三のモードとする。)を模擬した解析(シミュレーション)を実施し、第四のプラント107の計測信号と、第四のプラント107の第三のモードをシミュレーションにより得られた電流値とを比較することで、異常の判定をしている。
【0033】
図4は、異なる系統に接続されたプラント間において同じプラントモードとなる場合の電気計測信号を比較する構成の例を示す模式図である。
【0034】
本図においては、図1と同様に、第一のプラント104、第二のプラント105及び第三のプラント106を有する第一の系統101と、第四のプラント107を有する第二の系統102とは、電源の仕様及び条件が異なり、電圧値も相違する。これを前提条件として仮定すると、第一のプラント104及び第三のプラント106と、第四のプラント107とは、同じプラントモード(第一のモード)で運転していても、電圧の変化に伴い、負荷特性(定電力特性及び定インピーダンス特性)による電流の変化が生じる。このため、電流値の単純比較では、常時差異が発生する状態となり、異常の判定が困難となる。
【0035】
ここで、第一の系統101及び第二の系統102のそれぞれの電圧値をプラント監視装置100(図1)に入力する。そして、プラント監視装置100においては、二つのプラントのうち、参照する側のプラントの系統電圧値を、基準となる比較対象プラント407の電圧値に置き換えて負荷電流値をシミュレーションにより推定し、その電流の推定値を用いることで、比較対象プラント407が参照したプラントとは系統が異なる場合であっても比較することが可能となる。この場合において、系統は、外部電源系であっても、プラント内の所内電源系統であってもよい。
【0036】
簡易的な例として、第一のプラント104の母線電圧が6.90kV、第四のプラント107の母線電圧が6.85kVと相違している条件で、負荷が定インピーダンス特性の抵抗負荷で構成されている場合を考える。第四のプラント107の母線電圧は、実際は6.85kVであるが、シミュレーションにより6.90kVとした場合の電流値を推定する。
【0037】
定インピーダンス特性であれば、各負荷電流は、6.90kV/6.85kVの比で増加する。このように、第一のプラント104と第四のプラント107との間の電圧条件を揃えることで、電流値の比較が可能となる。
【0038】
なお、ここでは、説明を簡単にするため、電圧のみに焦点を当てたが、周波数などの条件が変わった場合も同様である。図3と比較すると、系統モデル全体を構築する必要はなく、電流値の変換だけで済むという利点がある。
【0039】
判別したいプラントモードが多数ある場合は、負荷の通電順序や負荷の電流の大きさなどにより、種々の運転モードを判定することも可能である。例えば、発電プラントでは、非常時の操作として、非常用電源を給電する起動シーケンスを事象ごとに決めていることから、負荷の投入順序を基にプラントモードを想定することも可能である。
【0040】
本例では、主として電流値の比較について説明したが、電流値の加工や、その他の計測信号の比較をすることで、更なる詳細な比較・分析も可能となる。例えば、計測電流値を、対称座標法を用いて対称成分に分解することで、電流の大きさのみでは分からない地絡や不平衡率の監視も可能となる。電圧値や周波数などの計測値も組み合わせることで、電路の損失や電動機のトルクや滑りなどの監視も可能となる。
【0041】
以下、実施形態のプラント監視装置の構成及び処理フローについて説明する。
【0042】
図5は、実施形態のプラント監視装置を示す概略構成図である。
【0043】
本図においては、プラント監視装置100は、入力部151と、検知・判定部152と、解析部153と、出力部154と、記憶部160と、を備えている。
【0044】
入力部151は、各プラントからの電気的計測信号を受信する。検知・判定部152は、受信した電気的計測信号について所定の演算処理を行い、異常の有無を判定する。解析部153は、上記のシミュレーションを行う。出力部154は、判定の結果やシミュレーションの結果についての通知を運転員等に送信する。記憶部160は、検知・判定部152及び解析部153に対して、必要なデータを送信し、保存が必要なデータを検知・判定部152及び解析部153から受信する。
【0045】
図6は、実施形態のプラント監視装置による異常判定方法を示すフロー図である。
【0046】
本図に示すように、プラント監視装置においては、入力部151で受信したデータから、検知・判定部152がプラントの負荷状態を検知する(工程S610)。そして、検知・判定部152がプラントの負荷状態からプラントのモードを推定する(工程S620)。つぎに、検知・判定部152が同一のモードのプラントを比較する(工程S630)。そして、検知・判定部152がプラントに異常はないかを判定する(工程S640)。異常がある場合は、出力部154から運転員等に異常を通知する(工程S650)。異常がない場合は、工程S610に戻る。
【0047】
以下、本開示に係るプラント監視システム及びプラント監視装置の望ましい実施形態についてまとめて説明する。
【0048】
判定部は、電気計測信号及び動作信号のうち少なくともいずれか一方からプラントモードを推定し、複数のプラントのうち同様のプラントモードにある二つ以上のプラントの間で比較をする。
【0049】
判定部は、計測された電気計測信号及び検出された動作信号のうち少なくともいずれか一方から実際のプラントのプラントモードを推定する。解析部は、プラントモードのシミュレーションをすることにより仮想のプラントを作成する。そして、判定部は、電気計測信号及び動作信号のうち少なくともいずれか一方について実際のプラントと仮想のプラントとの間で比較をし、当該信号の値の差が所定値以上である場合には、負荷回路、主要回路又は遮断器に異常があると判定する。
【0050】
判定部は、負荷回路の通電順序及び負荷回路の電流の大きさのうち少なくとも一つの信号を基にして、プラントモードを推定する。
【0051】
判定部は、二つ以上のプラントの間で電圧又は周波数の条件を揃えることにより比較をする。
【0052】
負荷回路は、電動機を有し、判定部は、電流及び電圧の値から電動機のトルク又は滑りについて二つ以上のプラントの間で比較をし、トルク又は滑りの値の差が所定値未満である場合には、負荷回路は正常であると判定する。
【0053】
なお、本開示に係るプラント監視システムによる監視の対象となる発電設備には、水力発電所、風力発電設備、太陽光発電設備、地熱発電所、原子力発電所等が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
100:プラント監視装置、101:第一の系統、102:第二の系統、103:接続母線、104:第一のプラント、105:第二のプラント、106:第三のプラント、107:第四のプラント、151:入力部、152:検知・判定部、153:解析部、154:出力部、160:記憶部、407:比較対象プラント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6