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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010361
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ターレット装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/16 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B65H19/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114450
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 高博
【テーマコード(参考)】
3F064
【Fターム(参考)】
3F064AA03
3F064BA02
3F064BB00
3F064CA02
(57)【要約】
【課題】ターレット装置を簡単な手段によって扱い易くする。
【解決手段】第1ロール支持部40Aおよび第2ロール支持部40Bの各々に支持するロールの位置調整が可能なロール位置調整機構60を備える。ロール位置調整機構60は、第1ロール支持部40Aに設けられた第1ロールスライド機構51Aとそれを操作する第1操作部52A、および、第2ロール支持部40Bに設けられた第2ロールスライド機構51Bとそれを操作する第2操作部52Bを有している。そして、第2ロール支持部40Bに、第1ロールスライド機構51Aを操作する第3操作部65が設けられ、第1ロール支持部40Aに、第2ロールスライド機構51Bを操作する第4操作部66が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるウェブを連続処理するシステムに付設されて、前記ウェブのロールを交換して当該ウェブを巻き取りまたは巻き出すターレット装置であって、
左右に対向した状態で左右に延びる回転軸を中心に回転可能に支持された一対のターレットアームと、
前記一対のターレットアームの突端部の各々の間に前記ロールを回転可能かつ着脱可能に支持する第1ロール支持部および第2ロール支持部と、
前記第1ロール支持部および前記第2ロール支持部の各々に支持する前記ロールの左右方向の位置調整が可能なロール位置調整機構と、
を備え、
前記一対のターレットアームの回転により、前記第1ロール支持部および前記第2ロール支持部の各々は、前記システムに近接する使用位置および前記システムから離れた交換位置のいずれか一方に保持可能とされ、
前記ロール位置調整機構が、
前記第1ロール支持部に設けられて当該第1ロール支持部が支持する前記ロールを左右方向にスライド可能な第1ロールスライド機構と、
前記第1ロール支持部に設けられて前記第1ロールスライド機構を操作する第1操作部と、
前記第2ロール支持部に設けられて当該第2ロール支持部が支持する前記ロールを左右方向にスライド可能な第2ロールスライド機構と、
前記第2ロール支持部に設けられて前記第2ロールスライド機構を操作する第2操作部と、
を有するとともに、
前記第2ロール支持部に設けられて前記第1ロールスライド機構を操作する第3操作部と、
前記第1ロール支持部に設けられて前記第2ロールスライド機構を操作する第4操作部と、
を更に有しているターレット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のターレット装置において、
前記第1操作部、前記第2操作部、前記第3操作部、および、前記第4操作部の各々がハンドルによって構成されているターレット装置。
【請求項3】
請求項2に記載のターレット装置において、
前記第1操作部および前記第3操作部の2つの前記ハンドル、並びに、前記第2操作部および前記第4操作部の2つの前記ハンドルが、一対のプーリとこれらプーリに掛け渡された無端ベルトを含む伝達機構を介して連結されていて、互いに同期して回転可能に構成されているターレット装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のターレット装置において、
前記第1操作部および前記第4操作部の2つの前記ハンドル、並びに、前記第2操作部および前記第3操作部の2つの前記ハンドルが、前記一対のターレットアームの一方の突端部の近傍に隣接した状態で配置されているターレット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、ウェブを巻き取りまたは巻き出しするターレット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターレット装置は、例えば、ロールツーロール方式で印刷や塗工などを行うシステムに用いられていて、ロール状のウェブから連続してウェブを巻き出したり、ウェブをロール状に連続して巻き取ったりする。ターレット装置の一例は、特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0003】
一般に、ターレット装置は、新旧2つのロールを、システムの稼働を停止することなく、連続して交換できるように構成されている。すなわち、ターレット装置は、互いに対向した状態で、中央部が回転可能に軸支された一対のターレットアームを備え、これらターレットアームの各端部の間に、新旧2つのロールが支持できるように構成されている。
【0004】
システムの稼働時には、使用されている旧ロールを支持するターレットアームの端部は、システムに近接した所定の使用位置に配置される。一方、新ロールを支持するターレットアームの端部は、使用位置の反対側にある、作業スペースに近接した所定の交換位置に配置される。
【0005】
例えば巻き出し側のターレット装置であれば、旧ロールのウェブが少なくなると、ターレットアームが回転し、新旧ロールの位置が入れ替わる。そして、新ロールのウェブの先端部分が、巻き出されている旧ロールのウェブに重ねて貼り合わされる。それと同時に、貼り合わせ位置よりも旧ロール側の部分で、旧ロールのウェブが切断される。
【0006】
それにより、巻き出されている旧ロールのウェブの末端部分に、新ロールの先端部分が継ぎ合わされるので、新旧2つのロールを連続して交換できる。
【0007】
新旧2つのロールのウェブを継ぎ合わす際、両ウェブがその幅方向(いわゆるTD方向)にずれないように、旧ロールのウェブに対して、新ロールのTD方向の位置を調整する必要がある。
【0008】
それに対し、特許文献1には、旧ロールのウェブの縁と新ロールの端とをカメラで撮影し、その映像をモニターで見ながらハンドルを操作することにより、新ロールのTD方向の位置を調整する技術が開示されている。また、特許文献3には、複数のセンサや制御装置を用いることによって、そのような位置調整を自動的に行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-188257号公報
【特許文献2】特開2013-227093号公報
【特許文献3】特開平6-171067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3の技術は、部材点数が多く、構造も複雑である。しかも、製造コストも高くなるため、実用化は難しい。その点、特許文献1の技術は、ハンドル操作によって新ロールの位置を調整するので構造が簡単なうえに、ズレ具合を確認するために、ウェブが搬送されていて、押付ロール、カッターなども動作する稼働領域を覗き込む必要もない。従って、簡単かつ安全に新ロールの位置調整が行える。実用化も容易である。
【0011】
しかし、特許文献1の技術は、後述するように、使用位置の側でハンドルを操作しなければならないため、操作し難く、作業性に欠ける不利があった。また、カメラやモニターを設置し、その位置を調整する必要があり、その点でも改良の余地があった。
【0012】
そこで、開示する技術では、簡単な手段により、扱い易いターレット装置を実現させる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示する技術は、搬送されるウェブを連続処理するシステムに付設されて、前記ウェブのロールを交換して当該ウェブを巻き取りまたは巻き出すターレット装置に関する。
【0014】
前記ターレット装置は、左右に対向した状態で左右に延びる回転軸を中心に回転可能に支持された一対のターレットアームと、前記一対のターレットアームの突端部の各々の間に前記ロールを回転可能かつ着脱可能に支持する第1ロール支持部および第2ロール支持部と、前記第1ロール支持部および前記第2ロール支持部の各々に支持する前記ロールの左右方向の位置調整が可能なロール位置調整機構と、を備える。
【0015】
前記一対のターレットアームの回転により、前記第1ロール支持部および前記第2ロール支持部の各々は、前記システムに近接する使用位置および前記システムから離れた交換位置のいずれか一方に保持可能とされている。
【0016】
前記ロール位置調整機構が、前記第1ロール支持部に設けられて当該第1ロール支持部が支持する前記ロールを左右方向にスライド可能な第1ロールスライド機構と、前記第1ロール支持部に設けられて前記第1ロールスライド機構を操作する第1操作部と、前記第2ロール支持部に設けられて当該第2ロール支持部が支持する前記ロールを左右方向にスライド可能な第2ロールスライド機構と、前記第2ロール支持部に設けられて前記第2ロールスライド機構を操作する第2操作部と、を有している。
【0017】
そしてこれらとともに、前記第2ロール支持部に設けられて前記第1ロールスライド機構を操作する第3操作部と、前記第1ロール支持部に設けられて前記第2ロールスライド機構を操作する第4操作部と、を更に有している。
【0018】
すなわち、このターレット装置のロール位置調整機構では、第1ロール支持部に支持したロールの位置を調整する第1ロールスライド機構とそれを操作する第1操作部が、第1ロール支持部に設けられている。同様に、第2ロール支持部に支持したロールの位置を調整する第2ロールスライド機構とそれを操作する第2操作部が、第2ロール支持部に設けられている。
【0019】
従って、上述した特許文献1の巻出装置と同様に、個々のロール支持部に設けられた操作部を操作することにより、個々のロール支持部に支持したロールの位置調整が行える。しかし、この構成では、システムに近接する使用位置に位置するロールの位置調整を行う場合、使用位置の側で操作部を操作しなければならない。従って、作業し辛いし、ロール位置のズレ具合の確認が困難である。
【0020】
それに対し、このターレット装置のロール位置調整機構には更に、第1ロールスライド機構を操作する第3操作部が第2ロール支持部に設けられ、第2ロールスライド機構を操作する第4操作部が第1ロール支持部に設けられている。
【0021】
すなわち、ロールを支持しているロール支持部とは別のロール支持部に設けられた操作部を操作することで、そのロールの位置調整が行える。従って、使用位置に位置するロールの位置調整を、作業位置の側で操作部を操作することによって行える。
【0022】
それにより、作業し易いスペースで、ロール位置のズレ具合を目視しながら、そのズレを調整できる。従って、扱い易く、作業性に優れる。
【0023】
前記ターレット装置はまた、前記第1操作部、前記第2操作部、前記第3操作部、および、前記第4操作部の各々がハンドルによって構成されている、としてもよい。
【0024】
ハンドルであれば、手動で操作するので、比較的簡単な構造かつ安価で実現できる。
【0025】
前記ターレット装置はまた、前記第1操作部および前記第3操作部の2つの前記ハンドル、並びに、前記第2操作部および前記第4操作部の2つの前記ハンドルが、一対のプーリとこれらプーリに掛け渡された無端ベルトを含む伝達機構を介して連結されていて、互いに同期して回転可能に構成されている、してもよい。
【0026】
このような構成であれば、既存の構造を拡張することで実現できる。従って、安価かつ効率的に実用化できる。既存の操作と同じように操作すればよいので、扱い易い。
【0027】
前記ターレット装置はまた、前記第1操作部および前記第4操作部の2つの前記ハンドル、並びに、前記第2操作部および前記第3操作部の2つの前記ハンドルが、前記一対のターレットアームの一方の突端部の近傍に隣接した状態で配置されている、としてもよい。
【0028】
そうすれば、大きく移動することなく、双方のロール支持部に支持したロールの操作が行える。そして、操作部を手動で操作できる範囲で、ロール位置のズレ具合を適切に目視できる。従って、効率的にロール位置の調整作業が行えるので、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0029】
開示する技術を適用したターレット装置によれば、作業し易いスペースで、ウェブとロールとのズレ具合を目視しながら、そのズレを調整できる。従って、扱い易く、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】(従来技術)開示する技術の適用前のターレット装置を示す概略断面図である。ロールの切替作業時の状態を表している。
図1B】(従来技術)図1に示すターレット装置を上方から見た概略図である。
図1C】(従来技術)図1に示すターレット装置のロール位置調整機構を示す概略図である。
図2図1Bに対応した、開示する技術の適用後の改良ターレット装置を上方から見た概略図である。
図3図1Cに対応した、改良ターレット装置のロール位置調整機構を示す概略図である。
図4】改良ターレット装置のロール位置調整機構を上方から見た概略図である。
図5】改良ターレット装置のロール位置調整機構の仕組みを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下の説明は例示である。説明で用いる上下、左右、および、前後の各方向は、図1A図1Bに矢印で示すように、通常の状態でのターレット装置を基準とする。
【0032】
<従来のターレット装置>
図1A図1Bに、開示する技術を適用する前のターレット装置1(従来技術)を示す。ターレット装置1は、プラスチックシートやフィルムなどからなるウェブWを巻芯に巻き付けてロール状にしたもの(以下単にロールという)を支持する装置である。
【0033】
ターレット装置1は、後述する新旧2つのロールRo,Rnを切り替えることによって、そのウェブWを連続して巻き取りまたは巻き出せるように構成されている。図1A図1Bは、新旧2つのロールRo,Rnを切り替える切替作業時の状態を表している。
【0034】
このターレット装置1は、巻き出し側のターレット装置である。ターレット装置1の基本的な構造は、上述した特許文献1の巻出装置と同じである。ターレット装置1は、通常、ロールツーロール方式で搬送されるウェブWに対し、印刷や塗工などの処理を連続して行う所定のシステム2の入口側および出口側の各端部に付設して用いられる。
【0035】
巻き取り側のターレット装置(いわゆる巻取装置)も、ウェブWを巻き取るか巻き出すかの違いを除けば、基本的な構造はこのターレット装置1と同じである。従って、ここでは巻き出し側のターレット装置1について説明し、巻き取り側のターレット装置についての説明は省略する。
【0036】
ターレット装置1は、回転体3、駆動側支持台4、従動側支持台5などで構成されている。ターレット装置1は、システム2の入口側の端部の前側に近接した状態で配置されている。システム2の入口側の端部には、左右方向に延びるガイドローラ2aが設置されている。このガイドローラ2aに巻き掛けられることにより、ターレット装置1から巻き出されるウェブWが、システム2の内部に誘導されるようになっている。
【0037】
システム2の入口側の端部とターレット装置1との間には、特許文献1の巻出装置と同様に、新旧のロールの交換時に用いられる押付ロールや切刃などを有するロール切替機構が設けられているが、その図示および説明は省略する。
【0038】
回転体3は、一対のターレットアーム30,30、シャフト31、一対のロール支持部40,40、補助ローラ32、ロール位置調整機構50などで構成されている。この回転体3の左側に隣接した位置に、駆動側支持台4が設置されている。そして、回転体3の右側に隣接した位置に、従動側支持台5が設置されている。
【0039】
各ターレットアーム30は、帯板状の部材からなり、左右に所定の間隔を隔てて対向した状態で、その対向面における長手方向の中央部が、左右方向に延びる支柱33によって連結されている。シャフト31は、支柱33の内部を通って左右方向に延びており、その両端部は、ターレットアーム30を貫通して突出している。
【0040】
そして、各ターレットアーム30から突出したシャフト31の両端部が、駆動側支持台4および従動側支持台5に軸支されている。それにより、一対のターレットアーム30,30を含めた回転体3は、左右方向に延びる回転軸Jを中心に回転可能となっている。
【0041】
駆動側支持台4の前側上部には、ターレット装置1を操作するための操作盤4aが設けられている。駆動側支持台4の内部には、図示しないが、制御装置やシャフト31を回転させる駆動機構が設けられている。オペレータSが操作盤4aを操作することにより、回転体3が回動し、ターレット装置1は、ロール切替機構と協働して、所定の切替処理を実行する。
【0042】
なお、図1Aに示すように、システム2から離れたターレット装置1の前側の領域が、オペレータSがターレット装置1の操作等を行う作業スペースとなっている。
【0043】
各ターレットアーム30における長手方向の両端面の中央部には、ターレットアーム30に直交して逆方向に延びる一対のローラアーム34,34が設けられている。これらローラアーム34,34の各々の突端部分に、補助ローラ32が回転自在に軸支されている。
【0044】
一対のロール支持部40,40の各々は、一対のターレットアーム30,30の突端部に設けられている。各ロール支持部40の基本的な構造は、上述した特許文献1の巻出装置と同じである。
【0045】
具体的には、駆動側支持台4が位置している左側のターレットアーム30に、ギアケース41a、第1支持軸41bなどを有する第1支持機構41が設けられている。従動側支持台5が位置している右側のターレットアーム30に、シリンダ42a、第2支持軸42bなどを有する第2支持機構42が設けられている。これらロール支持部40により、一対のターレットアーム30,30の突端部の各々の間に、2つのロールが、回転可能かつ着脱可能に支持できるように構成されている。
【0046】
回転体3の回転により、ロール支持部40の各々は、システム2に近接する所定の位置(使用位置)と、システム2から離れた所定の位置(交換位置)のいずれか一方に保持される。稼働中にシステム2にウェブWを巻き出すロール(「旧ロールRo」と称する)を支持するロール支持部40は、使用位置に保持される。
【0047】
このとき、他方のロール支持部40は、作業スペースに臨む交換位置に保持される。従って、未使用のロール(「新ロールRn」と称する)は、交換位置でそのロール支持部40に支持させることができるので、新ロールRnの装着作業は安全かつ簡単に行える。
【0048】
そして、システム2の稼働中に、旧ロールRoから新ロールRnに切り替える時には、新旧2つのロールRo,Rnの位置が入れ替わるように、回転体3が回転される。それにより、図1A図1Bに示すように、新ロールRnは、使用位置の側に保持され、旧ロールRoは、交換位置の側に保持される。旧ロールRoのウェブWは、補助ローラ32に支持されることにより、その搬送状態が維持される。
【0049】
そうして、ロール切替機構が作動して、システム2に搬送するウェブWを、旧ロールRoのウェブWから新ロールRnのウェブWに切り替える所定の切替処理が実行される。切替処理が終われば、旧ロールRoの巻芯を取り外せば、切替作業は終了である。なお、巻き芯の取り外し作業も作業スペースで行えるので、安全かつ簡単に行える。
【0050】
(新ロールの位置調整作業)
そして、新旧2つのロールRo,Rnを切り替える時には、旧ロールRoからシステム2に巻き出されているウェブWと、新ロールRnの巻芯に巻き付けてあるウェブWとで、左右の幅方向(いわゆるTD方向)の位置合わせを行う必要がある。
【0051】
そのため、各ロール支持部40には、ロール位置調整機構50が設けられている。
【0052】
図1Cに、そのロール位置調整機構50を示す。ロール位置調整機構50の基本的な構造は、上述した特許文献1の巻出装置と同じである。
【0053】
具体的には、ギアケース41aの内部に、ラックギア、ピニオンギア、ウォームホイール、ウォームシャフト53などが収容されていて、これらによって、第1支持軸41bをスライドさせるロールスライド機構51が構成されている。ギアケース41aの外部には、その内部のロールスライド機構51を操作するハンドル52が設けられている。
【0054】
ウォームシャフト53は、ターレットアーム30に沿って延びるように配置されている。ハンドル52は、そのウォームシャフト53の突端に取り付けられた状態で、ターレットアーム30の突端側に配置されている。
【0055】
そして、一方のロール支持部40の第1支持軸41bおよび第2支持軸42bによってロールを支持した状態で、そのロール支持部40に設けられたハンドル52を回転操作すると、第1支持軸41bが、第2支持軸42bの側に向かって進退し、それに応じて第2支持軸42bも変位する。それにより、ロールが左右にスライドして、ロールの左右方向の位置調整ができるように構成されている。
【0056】
ところで、このようなロールの位置調整作業を行う場合、オペレータSは、新ロールRnを支持しているロール支持部40のハンドル52を操作する必要がある。図1Bに示すように、ロールの位置調整作業を行う切替作業時には、新ロールRnは使用位置に位置しているので、そのハンドル52の操作は、作業スペースでは行えない。
【0057】
オペレータSは、システム2とターレット装置1との間の空きスペースに入り込んでハンドル52を操作する必要がある。それに対し、旧ロールRoのウェブWと新ロールRnのウェブWとのズレ具合の確認は、図1BのようなウェブWの真上など、両ウェブWの幅方向に直交する方向からでないと判断が難しい。空きスペースからでは、無理矢理覗き込むようにしないと、そのような方向からの目視が困難なため、そのズレ具合を適切に確認できない。
【0058】
そのため、上述した特許文献1の巻出装置では、そのズレ具合をカメラで撮影し、その映像をモニターで見ながらハンドル52が操作できるようにしている。しかし、上述したように、使用位置の側の空きスペースでハンドル52を操作しなければならないため、操作し難く、作業性に欠ける。また、カメラやモニターを設置し、その位置を調整する必要があり、その点でも改良の余地がある。
【0059】
<開示する技術を適用したターレット装置>
図2に、上述した従来のターレット装置1に、開示する技術を適用することによって改良したターレット装置1(改良ターレット装置1N)を示す。
【0060】
改良ターレット装置1Nの基本的な構成は、上述した従来のターレット装置1と同じである。従って、同じ構成については、同じ符号を用いてその説明は省略し、特に異なる構成について具体的に説明する。改良ターレット装置1Nでは、ロール位置調整機構が、従来のターレット装置1と異なる。
【0061】
(新しいロール位置調整機構)
従来のターレット装置1では、ロール位置調整機構50が個々のロール支持部40に付設されていて、そのロール支持部40に設けられたハンドル52を操作することによってそのロール支持部40が支持するロールの位置調整を行っていた。
【0062】
それに対し、改良ターレット装置1Nでは、ロール位置調整機構(改良ロール位置調整機構60)が双方のロール支持部40にわたって付設されている。
【0063】
具体的には、個々のロール支持部40に付設されているロールスライド機構51(51A,51B)およびハンドル52(52A,52B)に加えて、そのロール支持部40に、他方のロール支持部40に付設されているロールスライド機構51の操作が可能なハンドル65,66が設けられている。それにより、改良ターレット装置1Nでは、新ロールRnを支持しているロール支持部40とは別のロール支持部40の側から、そのロールRnの位置調整が行える。
【0064】
図3図4、および、図5に、その新しい改良ロール位置調整機構60を示す。なお、説明の便宜上、2つのロール支持部40,40を区別する場合には、これらを第1ロール支持部40Aおよび第2ロール支持部40Bとする。これらに関連する既存の構成についても、これと同様に、適宜、第1、第2の接頭語とA、Bの符号を用いて区別する。
【0065】
改良ロール位置調整機構60は、従来のロール位置調整機構50を含む。すなわち、改良ロール位置調整機構60は、第1ロール支持部40Aに設けられている第1ロールスライド機構51Aおよび第1ハンドル52A(第1操作部)、並びに、第2ロール支持部40Bに設けられている第2ロールスライド機構51Bおよび第2ハンドル52B(第2操作部)を含む。
【0066】
そして、第1ロール支持部40Aの外側に、ターレットアーム30の端部に片持ち状に取り付けられたプーリケース55が設置されている。第2ロール支持部40Bの外側にも、ターレットアーム30の端部に片持ち状に取り付けられたプーリケース55が設置されている。
【0067】
そして、第1ロール支持部40Aのプーリケース55の上側および第2ロール支持部40Bのプーリケース55の外側に、2つの第2軸受62からなる第2軸受対62,62も新たに設けられている。そして、第1軸受対と対称状に、第1ロール支持部40Aのプーリケース55の外側および第2ロール支持部40Bのプーリケース55の下部に、2つの第1軸受61からなる第1軸受対61,61が新たに設けられている。
【0068】
第1軸受対61,61には、ターレットアーム30に沿って延びる第1伝導シャフト63が回転自在に軸支されている。第2軸受対62,62には、ターレットアーム30に沿って延びる第2伝導シャフト64が回転自在に軸支されている。
【0069】
そして、第2ロール支持部40Bの側に配置されている第1軸受61から突出する第1伝導シャフト63の端部に、第3ハンドル65(第3操作部)が取り付けられている。第1ロール支持部40Aの側に配置されている第2軸受62から突出する第2伝導シャフト64の端部に、第4ハンドル66(第4操作部)が取り付けられている。
【0070】
それにより、図3に示すように、第4ハンドル66は、第1ハンドル52Aに隣接した位置に配置され、位置を除けば、第1ハンドル52Aと同じように操作できるように構成されている。同様に、第3ハンドル65も、第2ハンドル52Bに隣接した位置に配置され、位置を除けば、第2ハンドル52Bと同じように操作できるように構成されている。
【0071】
一方、他方の第1軸受61が支持している第1伝導シャフト63の端部および他方の第2軸受62が支持している第2伝導シャフト64の端部の各々には、従動プーリ67が取り付けられている。これら従動プーリ67は、第1ハンドル52Aまたは第2ハンドル52Bに近接した位置に配置されている。そして、これらハンドル52A,52Bが取り付けられいるウォームシャフト53の各々に、駆動プーリ68が新たに取り付けられている。
【0072】
従動プーリ67および駆動プーリ68は、同じ直径に構成されている。これら従動プーリ67および駆動プーリ68は、プーリケース55に収容されている。そして、互いに隣接している駆動プーリ68および従動プーリ67に、無端ベルト69を掛け渡すことにより、伝達機構が構成されている。
【0073】
具体的には、第1ハンドル52Aが取り付けられているウォームシャフト53の駆動プーリ68と、第1伝導シャフト63の端部に取り付けられている従動プーリ67とに無端ベルト69を掛け渡すことにより、第1伝達機構が構成されている。それにより、第1ハンドル52Aは、第1伝達機構、第1伝導シャフト63を介して、第3ハンドル65と連結されている。
【0074】
第2ハンドル52Bが取り付けられているウォームシャフト53の駆動プーリ68と、第2伝導シャフト64の端部に取り付けられている従動プーリ67とに無端ベルト69を掛け渡すことより、第2伝達機構が構成されている。それにより、第2ハンドル52Bは、第2伝達機構、第2伝導シャフト64を介して、第4ハンドル66と連結されている。
【0075】
従って、第2ロール支持部40Bの側に配置されている第3ハンドル65を回転操作すれば、第1ロール支持部40Aの第1ロールスライド機構51Aが作動するとともに第1ハンドル52Aもそれに同期して回転する。第1ロール支持部40Aの側に配置されている第4ハンドル66を回転操作すれば、第2ロール支持部40Bの第2ロールスライド機構51Bが作動するとともに第2ハンドル52Bもそれに同期して回転する。
【0076】
このように、改良ターレット装置1Nでは、新ロールRnを支持しているロール支持部40とは別のロール支持部40の側から、そのロールRnの位置調整が行える。従って、改良ターレット装置1Nによれば、オペレータSは、作業スペースで新ロールRnの位置調整作業が行える。
【0077】
すなわち、オペレータSは、新ロールRnの位置調整作業を行う際、交換位置に位置しているロール支持部40(第1支持軸41b)の近傍に行き、旧ロールRoのウェブWが新ロールRnのウェブWの端部の上に重なる部分の正面に立って、新しく設置したハンドル(第3ハンドル65または第4ハンドル66)を操作すればよい。
【0078】
新旧2つのロールRo,RnのウェブWのズレ具合を、両ウェブWの幅方向に直交する方向から、目視で簡単に視認できる。従って、ウェブWのズレ具合を適切に判断できる。そして、ウェブWのズレ具合を目視で判断しながら、ハンドル(図例ではハンドル66)を操作して、新ロールRnの位置を調整できる。従って、極めて簡単かつ正確に新ロールRnの位置調整が行える。作業スペースで新ロールRnの位置調整作業が行えるので、作業性に優れ、安全性も向上できる。
【0079】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、ハンドルの第1操作部等は安価で扱い易いが、第1操作部等はハンドルに限らない。ロールスライド機構をリニア型のアクチュエータで構成すれば、第1操作部等は、ボタン等であってもよい。
【0080】
第3操作部による第1ロールスライド機構の操作、および第4操作部による第2ロールスライド機構の操作も、上述した伝達機構を用いた方法に限らない。電気的な接続によって操作できるようにしてもよい。ウォームシャフト53を他方のロール支持部40まで延ばして、その端部に第3ハンドル65等を直結してもよい。ロール位置調整機構の構造は、仕様に応じて、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0081】
1N 改良ターレット装置
2 システム
2a ガイドローラ
3 回転体
4 駆動側支持台
4a 操作盤
5 従動側支持台
30 ターレットアーム
31 シャフト
32 補助ローラ
40 ロール支持部
40A 第1ロール支持部
40B 第2ロール支持部
52A 第1ハンドル
52B 第2ハンドル
60 改良ロール位置調整機構
61 第1軸受対
62 第2軸受対
63 第1伝導シャフト
64 第2伝導シャフト
65 第3ハンドル
66 第4ハンドル
J 回転軸
W ウェブ
Ro 旧ロール
Rn 新ロール
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5