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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103613
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】削孔システムおよび削孔方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230720BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20230720BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230720BHJP
【FI】
E04G23/02 D ESW
E04B1/41 503
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004232
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】川澄 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】有川 健
(72)【発明者】
【氏名】日浦 光一
【テーマコード(参考)】
2E125
2E176
5L049
【Fターム(参考)】
2E125AA71
2E125AA75
2E125AF01
2E125AG13
2E125AG31
2E176AA01
2E176AA02
2E176AA03
2E176AA04
2E176BB28
2E176BB36
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】コンクリート製の構造物に自動的に削孔できるようにする。
【解決手段】構造物Sに対し縦方向1列ごとか横方向1列ごとに削孔する複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件が設定された削孔条件シートを格納する削孔条件シート記憶部PCm1と、構造物Sを削孔するハンマドリル1が昇降可能に装着されるとともに構造物Sに沿って移動可能となった削孔装置A1と、削孔条件シートを読み込んでハンマドリル1の昇降および削孔装置A1の移動を繰り返しながら順次削孔する制御を行うとともに、削孔条件に適合した深さの孔を開けることができない孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける制御を行う制御部Cと、削孔装置A1による削孔結果を格納する削孔結果記憶部PCm2とを有する。削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔は、当該孔に限定して削孔するように更新した削孔条件シートが入力される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の構造物に対し縦方向1列ごとまたは横方向1列ごとに削孔する複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件を設定する削孔条件シートが入力される入力部と、
前記入力部で入力された前記削孔条件シートを格納する削孔条件シート記憶部と、
前記構造物を削孔する削孔機が昇降用モータで昇降可能に装着されるとともに、走行用モータによりガイドレールに案内されて前記構造物に沿って移動可能となった削孔装置と、
前記削孔機の昇降位置を検出する昇降位置検出部、前記削孔機による前記削孔深さを検出する削孔深さ検出部、および前記削孔装置の移動距離を検出する移動距離検出部を備えた削孔状態検出部と、
前記削孔条件シート記憶部の前記削孔条件シートを読み込み、前記削孔状態検出部に基づいて前記昇降用モータによる前記削孔機の昇降および前記走行用モータによる前記削孔装置の移動を繰り返しながら前記削孔機により順次削孔する制御を行うとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さの孔を開けることができないと削孔状態検出部により検出された孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける制御を行う制御部と、
前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶部とを有し、
前記入力部には、前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、
ことを特徴とする削孔システム。
【請求項2】
前記削孔状態検出部には、前記削孔装置と前記構造物における削孔される孔位置の構造物表面との距離を検出する削孔面距離検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記削孔機による1回または複数回の削孔ごとに、あるいは前記削孔装置の移動ごとに、前記削孔面距離検出部による検出結果に基づいて前記削孔機により削孔する制御を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の削孔システム。
【請求項3】
前記削孔状態検出部には、前記削孔装置と前記構造物の壁面との距離を検出する壁面距離検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記削孔装置の削孔開始に先立って検出された前記壁面距離検出部の検出結果に基づいて前記削孔機により削孔する制御を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の削孔システム。
【請求項4】
前記入力部には、前記削孔位置を縦方向および横方向の少なくとも何れかの方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項5】
前記削孔状態検出部は、所定時間内に前記削孔深さが設定値に達していないとき、または削孔が停滞したときに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した孔を開けることができないと判断する、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項6】
前記削孔条件シート記憶部に格納された複数の前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果とを対比して出力する出力部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項7】
前記出力部では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件に不適合の孔との判定結果を併せて出力する、
ことを特徴とする請求項6記載の削孔システム。
【請求項8】
前記削孔条件シートは、選択可能に複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項9】
コンクリート製の構造物に削孔する削孔機が昇降可能で前記構造物に沿って移動可能となった削孔装置を用いて前記構造物に複数の孔を自動的に削孔する削孔方法であって、
構造物に対し縦方向1列ごとまたは横方向1列ごとに削孔する複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件シートを入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された前記削孔条件シートを読み込む削孔条件シート読込工程と、
前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートに基づいて前記削孔機の昇降および前記削孔装置の移動を繰り返しながら当該前記削孔機により順次削孔するとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さを開けることができない孔については削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける削孔工程と、
前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶工程とを有し、
前記入力工程では、前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、
ことを特徴とする削孔方法。
【請求項10】
前記削孔工程では、前記削孔機による1回または複数回の削孔ごとに、あるいは前記削孔装置の移動ごとに、前記削孔装置と前記構造物における削孔される孔位置の構造物表面との距離を検出して削孔する、
ことを特徴とする請求項9記載の削孔方法。
【請求項11】
前記削孔工程では、前記削孔装置の削孔開始に先立って検出された前記削孔装置と前記構造物の壁面との距離の検出結果に基づいて前記削孔機により削孔する
ことを特徴とする請求項9記載の削孔方法。
【請求項12】
前記入力工程では、前記削孔位置を縦方向および横方向の少なくとも何れかの方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、
ことを特徴とする請求項9~11の何れか一項に記載の削孔方法。
【請求項13】
前記削孔工程では、所定時間内に前記削孔深さが設定値に達していないとき、または削孔が停滞したときに、削孔を中止する、
ことを特徴とする請求項9~12の何れか一項に記載の削孔方法。
【請求項14】
前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果とを対比して出力する出力工程をさらに有する、
ことを特徴とする請求項9~13の何れか一項に記載の削孔方法。
【請求項15】
前記出力工程では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件シートに不適合の孔との判定結果を併せて出力する、
ことを特徴とする請求項14記載の削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の構造物に削孔する削孔システムおよび削孔方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上、地中、半地下などで地盤に接するコンクリート製の構造物や、鉄道や道路等に近接する地上に構築されたコンクリート製の構造物では、耐震補強を目的として、構造物の片側面から削孔し、その孔内に定着材を充填した後、後施工せん断補強鉄筋(以下、「せん断補強鉄筋」という。)を挿入して構造物と一体化させることで当該構造体のせん断耐力を向上させる工法が行われる。
【0003】
また、コンクリート製の躯体で構成された道路、橋梁、ダム、堤防などの既設の構造物では、耐力の維持や補強を目的として、躯体の側面や上下面に対し、所定間隔で削孔してあと施工アンカーを埋め込み、当該あと施工アンカーと連結するように配筋を行ってさらにコンクリートを打設する増し打ち工法が行われている。
【0004】
そして、削孔作業において、現場の作業者は、重量物である削孔装置のハンドルおよびサイドハンドルを両手でしっかりと保持した上で、構造物の削孔位置にビットを押し当てて当てて掘り進める。
【0005】
なお、構造物に対するせん断補強工法については、例えば特許文献1(特開2016-037787号公報)が知られている。また、構造物に対するコンクリートの増し打ち工法については、例えば特許文献2(特開2018-131848号公報)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-037787号公報
【特許文献2】特開2018-131848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、構造物を耐震補強するためには、せん断補強鉄筋を埋め込むために構造物に多数の孔を開けなければならない。同様に、増し打ち工法でも、あと施工アンカーを埋め込むために構造物に多数の孔を開けなければならない。すると、前述した従来の削孔装置を用いた作業は重労働となり、結果として作業効率が悪化することになる。
【0008】
そして、コンクリート製の構造物に複数の孔を自動的に削孔することができれば、作業者は削孔作業から解放されて他の作業を行うことができるので、作業効率が向上して工期の短縮化を図ることができる。
【0009】
しかしながら、コンクリート製の構造物の内部には鉄筋や埋設物(配管など)が配置されているために、これらが自動的に削孔する上での障害になる。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、コンクリート製の構造物に削孔条件に沿った複数の孔を自動的に開けることのできる削孔システムおよび削孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の削孔システムは、コンクリート製の構造物に対し縦方向1列ごとまたは横方向1列ごとに削孔する複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件を設定する削孔条件シートが入力される入力部と、前記入力部で入力された前記削孔条件シートを格納する削孔条件シート記憶部と、前記構造物を削孔する削孔機が昇降用モータで昇降可能に装着されるとともに、走行用モータによりガイドレールに案内されて前記構造物に沿って移動可能となった削孔装置と、前記削孔機の昇降位置を検出する昇降位置検出部、前記削孔機による前記削孔深さを検出する削孔深さ検出部、および前記削孔装置の移動距離を検出する移動距離検出部を備えた削孔状態検出部と、前記削孔条件シート記憶部の前記削孔条件シートを読み込み、前記削孔状態検出部に基づいて前記昇降用モータによる前記削孔機の昇降および前記走行用モータによる前記削孔装置の移動を繰り返しながら前記削孔機により順次削孔する制御を行うとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さの孔を開けることができないと削孔状態検出部により検出された孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける制御を行う制御部と、前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶部とを有し、前記入力部には、前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、ことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1に記載の発明において、前記削孔状態検出部には、前記削孔装置と前記構造物における削孔される孔位置の構造物表面との距離を検出する削孔面距離検出部をさらに備え、前記制御部は、前記削孔機による1回または複数回の削孔ごとに、あるいは前記削孔装置の移動ごとに、前記削孔面距離検出部による検出結果に基づいて前記削孔機により削孔する制御を行う、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1に記載の発明において、前記削孔状態検出部には、前記削孔装置と前記構造物の壁面との距離を検出する壁面距離検出部をさらに備え、前記制御部は、前記削孔装置の削孔開始に先立って検出された前記壁面距離検出部の検出結果に基づいて前記削孔機により削孔する制御を行う、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記入力部には、前記削孔位置を縦方向および横方向の少なくとも何れかの方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~4の何れか一項に記載の発明において、前記削孔状態検出部は、所定時間内に前記削孔深さが設定値に達していないとき、または削孔が停滞したときに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した孔を開けることができないと判断する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~5の何れか一項に記載の発明において、前記削孔条件シート記憶部に格納された複数の前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果とを対比して出力する出力部をさらに有する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項6記載の発明において、前記出力部では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件に不適合の孔との判定結果を併せて出力する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~7の何れか一項に記載の発明において、前記削孔条件シートは、選択可能に複数設けられている、ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するため、請求項9に記載の本発明の削孔方法は、コンクリート製の構造物に削孔する削孔機が昇降可能で前記構造物に沿って移動可能となった削孔装置を用いて前記構造物に複数の孔を自動的に削孔する削孔方法であって、構造物に対し縦方向1列ごとまたは横方向1列ごとに削孔する複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件シートを入力する入力工程と、前記入力工程で入力された前記削孔条件シートを読み込む削孔条件シート読込工程と、前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートに基づいて前記削孔機の昇降および前記削孔装置の移動を繰り返しながら当該前記削孔機により順次削孔するとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さを開けることができない孔については削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける削孔工程と、前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶工程とを有し、前記入力工程では、前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項9記載の発明において、前記削孔機による1回または複数回の削孔ごとに、あるいは前記削孔装置の移動ごとに、前記削孔装置と前記構造物における削孔される孔位置の構造物表面との距離を検出して削孔する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項11に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項9記載の発明において、前記削孔工程では、前記削孔装置の削孔開始に先立って検出された前記削孔装置と前記構造物の壁面との距離の検出結果に基づいて前記削孔機により削孔する、ことを特徴とする。
【0022】
請求項12に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項9~11の何れか一項に記載の発明において、前記入力工程では、前記削孔位置を縦方向および横方向の少なくとも何れかの方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、ことを特徴とする。
【0023】
請求項13に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項9~12の何れか一項に記載の発明において、前記削孔工程では、所定時間内に前記削孔深さが設定値に達していないとき、または削孔が停滞したときに、削孔を中止する、ことを特徴とする。
【0024】
請求項14に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項9~13の何れか一項に記載の発明において、前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果とを対比して出力する出力工程をさらに有する、ことを特徴とする。
【0025】
請求項15に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項14記載の発明において、前記出力工程では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件シートに不適合の孔との判定結果を併せて出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、このように、本実施の形態では、制御部による制御の下、コンクリート製の構造物に対し縦方向1列ごとまたは横方向1列ごとに削孔する複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件が設定された削孔条件シートを読み込み、その削孔条件シートに基づいて、削孔機で削孔を行っている。また、削孔機が削孔条件に適合した深さの孔を開けることができなかった孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開けている。そして、削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して、削孔位置をずらして削孔するように更新した削孔条件シートShに基づいて再削孔している。
【0027】
これにより、コンクリート製の構造物に対して、削孔条件に沿った複数の孔を自動的に開けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施の形態に係る削孔システムで削孔された孔にせん断補強鉄筋を挿入して耐震補強されたコンクリート製の構造物の一部を示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る削孔システムの装置構成を示す側面図である。
図3図2の削孔システムを構成する削孔装置のシャーシとガイドレールとを示す平面図である。
図4図2の削孔システムを構成する削孔装置の要部とガイドレールとを示す図である。
図5図2の削孔システムを構成する削孔装置の要部とガイドレールとを図4から水平方向に90度異なった方向から示す図である。
図6図2の削孔システムを構成する削孔装置に取り付けられたロータリエンコーダとガイドレールとを示す側面図である。
図7図2の削孔システムを構成する削孔装置に取り付けられたロータリエンコーダとガイドレールとを図6から水平方向に90度異なった方向から示す図である。
図8図2の削孔システムを構成するガイドレールを示す平面図である。
図9図8のガイドレールの端部を拡大して示す平面図である。
図10図8のガイドレールを端部から水平方向に見た図である。
図11】本発明の一実施の形態に係る削孔システムの制御系を示すブロック図である。
図12】コンクリート製の構造物の壁に対する削孔位置の一例を示す説明図である。
図13図12の削孔位置に削孔する削孔条件を設定した削孔条件シートの一例を示す説明図である。
図14図13とは異なる削孔位置に削孔する削孔条件を設定した削孔条件シートの一例を示す説明図である。
図15図13および図14とは異なる削孔位置に削孔する削孔条件を設定した削孔条件シートの一例を示す説明図である。
図16図12の削孔条件シートに基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図である。
図17】更新された削孔条件シートの一例を示す説明図である。
図18図17の削孔条件シートに基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図である。
図19】本発明の一実施の形態に係る削孔システムで削孔された孔と構造物内に配された鉄筋とを示す説明図である。
図20】本発明の一実施の形態に係る削孔システムを用いてコンクリート製の構造物に自動的に削孔するプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
本実施の形態の削孔システムAの構成要素である削孔装置A1は、例えば図1に示すような地盤Gに接する既設のコンクリート製の構造物Sや、鉄道や道路等の建造物に近接する地上に構築された既設のコンクリート製の構造物(道路、橋梁、ダム、堤防など)などに対して、補強工事の一工程として片側面からアンカー孔(あと施工アンカーを埋め込むための孔)などの孔Hを開けるために用いられる。開けた孔Hの内部に定着材Mを充填した後、せん断補強鉄筋Rを挿入して構造物Sと一体化させることで、構造物Sのせん断耐力を向上させる。なお、せん断補強鉄筋Rとしては、例えば、一般的に使用される鉄筋R1の片側をネジ切り、斜め切断加工し、先端部に六角ナット(定着体)R2を装着したものなどが適用される。
【0031】
図2示すように、本実施の形態の削孔システムAは、削孔対象である構造物Sに対して削孔を行うためのハンマドリル(削孔機)1が進退移動可能に設けられた削孔装置A1と、削孔装置A1の構造物Sに沿った移動を案内する案内手段A2とを備えている。
【0032】
ここで、削孔装置A1は、ハンマドリル1を昇降可能に支持するリフタ10を備えている。このリフタ10は、リフタ台11と、リフタ台11に搭載された昇降用マスト12と、昇降用マスト12の下端部に設置された昇降用モータ13により駆動されて昇降用マスト12の側面に沿って昇降する昇降テーブル14とを備えており、前述したハンマドリル1は昇降テーブル14上に設置されている。
【0033】
水平方向断面が角形になった昇降用マスト12における昇降テーブル14の設置側には、当該昇降テーブル14の昇降をガイドする2本のスリット(図示せず)が上下方向に伸びて形成されている。このスリットには、昇降テーブル14の後部に設けられた2枚のガイドプレート(図示せず)が、当該スリットと僅かな隙間を形成して上下方向に移動自在となるように嵌め込まれている。これにより、昇降テーブル14はガイドプレートを介してスリットに沿って昇降用マスト12を昇降する。また、リフタ10には、上下方向に配置されて昇降用モータ13により回転し、昇降テーブル14と螺合したボールねじ15が設けられている。したがって、昇降用モータ13の駆動でボールねじ15が回転すると、昇降テーブル14がスリットに沿って上昇あるいは下降する。そして、昇降用モータ13が停止すると、昇降テーブル14はそのときの高さ位置で停止する。
【0034】
リフタ10の昇降テーブル14に設置されたハンマドリル1はドリル駆動用モータ1b(図11)に駆動されており、打撃および回転の一方あるいは併用が可能で、さらに強弱の調整も可能になっている。但し、強弱の調整は不能であってもよい。また、このハンマドリル1は、昇降テーブル14上において直線的に往復動する進退部材2に搭載されており、当該進退部材2によって削孔方向に対して進退移動可能になっている。
【0035】
ここで、進退部材2は、ハンマドリル1が搭載されたスライダ2aと、スライダ2aを削孔方向に対して進退移動可能に保持するスライドガイド2bと、スライダ2aに推進力(往復移動するための推進力)を付与する推力付与手段としてのエアシリンダ(図11)1cとが設置されている。エアシリンダ1cは、シリンダ室がスライダ2aの前後に位置して各シリンダ室にエアが供給・排出される2ポート式となっており、何れかのシリンダ室へのエアの供給によってスライダ2aがスライドガイド2bに案内されてスライドし、これによりスライダ2a上のハンマドリル1が進退移動する。
【0036】
なお、本実施の形態において、ハンマドリル1の電源スイッチを操作するための操作部材として、空圧式操作部1dが用いられている。この空圧式操作部1dには、駆動力としてのエアが供給されるチューブ(図示せず)が着脱可能に接続されており、エアが注入されると空圧式操作部1dが膨張して電源スイッチを押圧して電源が入り、エアを抜くと空圧式操作部1dが収縮して電源スイッチの押圧が解除されて電源が切れるようになっている。
【0037】
そして、空圧式操作部1dにエアを供給してハンマドリル1の電源スイッチをオンにし、ドリル駆動用モータを回転させてハンマドリル1の駆動を開始し、エアシリンダ1cにより削孔対象であるコンクリート製の構造物Sに接近する方向にスライダ2aを移動させて当該ハンマドリル1を前進させると、ハンマドリル1のビット1aの先端が構造物Sの削孔位置に押し当てられて削孔が実行される。また、削孔が終わり、エアシリンダ1cにより構造物Sから離間する方向にスライダ2aを移動させてハンマドリル1を後退移動させると、当該ハンマドリル1のビット1aが孔から抜き取られて待機位置に戻る。
【0038】
本実施の形態において、ハンマドリル1による最大削孔深さは250mm程度となっている。但し、削孔深さはハンマドリル1に取り付けられるビット1aの長さやスライダ2aのスライド長などにより決定されるものであり、本実施の形態である200mmに限定されるものではない。
【0039】
昇降用マスト12における昇降テーブル14の設置側と反対側には、スライダ2aに推進力を付与するエアシリンダ1cやハンマドリル1の電源スイッチを操作する空圧式操作部1dを駆動する際に、後述するエアコンプレッサ36からのエア圧力を所定の値に調整するためのレギュレータ12aが配置されている。
【0040】
なお、スライダ2aに推進力を付与する推力付与手段としては、回転によりスライダ2aを進退させるボールねじ、およびこのボールねじを回転させるドリル進退用モータなど、エアシリンダ1c以外の推進力付与手段を用いてもよい。
【0041】
図3に示すように、削孔装置A1には、リフタ10の構成要素である昇降用マスト12が搭載された前述のリフタ台11を含むシャーシ20が設けられている。このシャーシ20は、後述する削孔装置A1の移動方向と直交するとともに相互に平行に設けられた一対の第1のビーム21と、第1のビーム21の両側に固定されて相互に平行になった一対の第2のビーム22とを備えており、平面視で略矩形枠状の形状を呈している。また、第2のビーム22の長さは一対の第1のビーム21で形成される幅よりも長くなっており、当該第2のビーム22の両側の第1のビーム21の固定位置よりも外側がオーバーハング部22aとなっている。
【0042】
なお、本実施の形態において、第1のビーム21および第2のビーム22には、角筒鋼材であるコラムが用いられているが、これに限定されるものではなく、例えばH型鋼などコラム以外の鋼材を用いることが可能である。
【0043】
さて、前述したリフタ台11は、昇降用モータ13が取り付けられるとともに、一対の第1のビーム21の間で且つ当該第1のビーム21の長さ方向の略中央位置に固定されている。さらに、リフタ台11の近傍には、第1のビーム21を補強するための補強フレーム23が、一対の第1のビーム21の間に設けられている。
【0044】
一対(つまり2本)の第2のビーム22の両端の合計4カ所にはブラケット24aが取り付けられており、ハンマドリル1による削孔時に接地してシャーシ20を安定させるためのアウトリガ24が取り付けられている。また、第1のビーム21の端部と第2のビーム22のオーバーハング部22aとに跨がるようにして、平面視L字型のキャスタ台25が4カ所に設置されている。そして、それぞれのキャスタ台25には、シャーシ20つまり削孔装置A1を移動可能に支持しているキャスタ26が、ハンマドリル1の移動方向と略直交方向に向けて取り付けられている。
【0045】
図4および図5に示すように、シャーシ20には、後述するラックギア34と噛み合うピニオンギア27が出力軸28aに取り付けられたギヤードモータ(走行用モータ)28が、ブラケット29を介して設置されている。このギヤードモータ28は、モータと減速機とが一体化されており、モータの回転を減速機により減速して回転力を出力軸28aに伝達する装置である。
【0046】
なお、本実施の形態では、走行用モータとして、大きなトルクを得ることができるギヤードモータ28が用いられているが、モータ単体、あるいは減速機が別体となったモータなどを用いることが可能であり、走行用モータはギヤードモータ28に限定されるものではない。
【0047】
図6および図7に示すように、シャーシ20には、一対の第1のビーム21を挟んでギヤードモータ28と反対側に、削孔装置A1の移動距離を検出するロータリエンコーダ31がブラケット30を介して取り付けられている。このロータリエンコーダ31の回転軸31aにも、後述するラックギア34と噛み合うピニオンギア32が取り付けられている。また、ロータリエンコーダ31は、周囲の塵埃の進入を防止するために、ハウジング31b内に格納されている。なお、ロータリエンコーダ31による削孔装置A1の移動距離の検出については後述する。
【0048】
本実施の形態のギヤードモータ28では、動力源であるモータとして、回転位置の制御が可能なサーボモータが用いられており、ロータリエンコーダ31によって回転の機械的変位量を電気信号(パルス)に変換することで、図示しないカウンタで計数されたパルス数でサーボモータを停止させることができるようになっている。
【0049】
さて、本実施の形態の削孔システムAにおいては、削孔装置A1の構造物Sに沿った移動を案内するための案内手段A2が設けられている。
【0050】
図8図10において、この案内手段A2は、削孔対象である構造物Sに沿って敷設されたガイドレール33と、ガイドレール33の延伸方向に沿って取り付けられたラックギア34を備えている。また、ラックギア34は、前述したピニオンギア27,32(つまり、ギヤードモータ28の出力軸28aに取り付けられたピニオンギア27、およびロータリエンコーダ31の回転軸31aに取り付けられたピニオンギア32)と噛み合っている。
【0051】
したがって、削孔装置A1は、ギヤードモータ28が回転するとピニオンギア27およびラックギア34を介してガイドレール33に案内されながら、当該削孔装置A1に取り付けられたキャスタ26の回転で構造物Sに沿って移動する。このとき、削孔装置A1の移動に伴ってロータリエンコーダ31が回転(詳しくは、ラックギア34およびピニオンギア32を介してロータリエンコーダ31が回転)するので、次の移動位置までのパルス数を設定するとともにロータリエンコーダ31で生成されるパルス数をカウンタで計数しておくことで削孔装置A1の移動距離が検出される。そして、設定したパルス数になったときにギヤードモータ28を停止させることにより、削孔装置A1を目的とする位置に正確に移動させることができる。
【0052】
本実施の形態の削孔システムAでは、削孔装置A1が予め設定された移動位置となるようにロータリエンコーダ31に基づいてギヤードモータ28の回転を制御をする制御部(図11)Cが設けられており、自動制御により削孔装置A1を所定の削孔位置へ移動させることができるようになっている。さらに、制御部Cが、ギヤードモータ28の回転制御のみではなく、ハンマドリル1が搭載された昇降テーブル14を昇降させる昇降用モータ13の回転制御、およびハンマドリル1による削孔動作の制御をも行うようになっており、予め設定した削孔位置および削孔深さで構造物Sの削孔が自動制御で実行される。なお、削孔システムAの制御の詳細については後述する。
【0053】
本実施の形態においては、削孔装置A1の移動距離の検出手段としてロータリエンコーダ31が用いられているが、削孔装置A1の移動距離をレーザ光や超音波などで計測する距離計を用いてもよい。また、検出精度を高めるために、ロータリエンコーダ31と距離計とを併用してもよい。さらに、ギヤードモータ28を構成するモータがステッピングモータの場合には、コントローラで生成されてモータに入力されるパルス信号の数がモータの回転量(つまり、削孔装置A1の移動距離)となることから、当該コントローラを削孔装置A1の移動距離の検出手段としてもよい。この場合においても、削孔装置A1の移動距離をレーザ光や超音波などで計測する距離計を用いてもよいし、検出精度を高めるために、コントローラと距離計とを併用してもよい。
【0054】
さて、図4図6図8図10に示すように、前述した本実施の形態のガイドレール33は、相互に平行に配置されたアングル材からなる2本のレール33aと、レール33aの所定間隔おきに配置されてこれら2本のレール33aを底面で連結するように溶接された鋼板である連結板33bとを備えている。また、ガイドレール33には、相互に隣接する連結板33bに架け渡すようにして溶接されるとともに長孔33caの形成されたブリッジ板33cが設けられており、ブリッジ板33cの長孔33caを貫通したアンカボルト33dで地面に固定されている。
【0055】
なお、図8に示すように、ブリッジ板33cの架け渡された連結板33bの近傍(ブリッジ板33cの長さ分の間隔をとった位置)には、ブリッジ板33cの架け渡されていない連結板33b(独立した連結板33b)が設置されている。このようにすれば、当初の予定位置にアンカボルト33dを打ち込めなかった場合、ブリッジ板33cの一方側を独立した連結板33bに架け渡すように設置することで、アンカボルト33dの打ち込み位置をずらして打ち直しを行うことができるからである。
【0056】
また、図3図4および図6に示すように、シャーシ20には、ラックギア34とピニオンギア27,32とが噛み合った状態を保持するための保持ローラ35が、ギヤードモータ28およびロータリエンコーダ31に隣接した位置に取り付けられている。
【0057】
この保持ローラ35は一対となって2本のレール33aの間に配置されており、削孔装置A1の移動に伴ってそれぞれのレール33aに接触して回転する。これにより、削孔装置A1の移動時に保持ローラ35が回転してガイドの役割を果たすことでラックギア34とピニオンギア27,32とを噛み合った状態に保持するとともに、削孔時には反力機構の一部として機能する。
【0058】
なお、レール33aはアングル材以外で構成してもよい。また、ラックギア34とピニオンギア27,32とが噛み合った状態を保持する保持部材としては本実施の形態に示す保持ローラ35に限定されるものではなく、例えば、レール33aを1本とするとともに保持ローラ35も1個とし、その1個の保持ローラ35とピニオンギア27,32とでラックギア34とレール33aとを挟み込む構造など、本実施の形態以外の構造を採用してもよい。
【0059】
本実施の形態において、ラックギア34はガイドレール33の側部に沿って取り付けられており、ピニオンギア27は下方に突出したギヤードモータ28の出力軸28aに、ピニオンギア32は下方に突出したロータリエンコーダ31の回転軸31aに取り付けられ取り付けられている。ラックギア34は、上向きに取り付けることも可能だが、このようにすれば、構造物の削孔時における粉塵がラックギア34とピニオンギア27,32との間に入り込んで堆積するという不具合が回避されるために、削孔装置A1の移動を常にスムーズに行うことができる。但し、ラックギア34の取付位置はガイドレール33の側部ではなくてもよい。
【0060】
さて、図2において、シャーシ20の後部には、スライダ2aを推進させるエアシリンダ1cやハンマドリル1の電源スイッチを操作する空圧式操作部1dにエアを供給するエアコンプレッサ36が搭載されている。また、エアコンプレッサ36には集塵機37が搭載されている。集塵機37から伸びる吸引ホース(図示せず)の先端はハンマドリル1のビット1aに接続されており、構造物Sを削孔する際に発生する粉塵は集塵機37に吸引される。
【0061】
さらに、エアコンプレッサ36の背後には、前述した制御部Cの搭載された制御盤や配電盤、各種機器類が収納されたコントロールボックス38が搭載されている。
【0062】
このような削孔システムAによれば、削孔装置A1が、ギヤードモータ28の出力軸28aに取り付けられたピニオンギア27がガイドレール33に取り付けられたラックギア34に噛み合っており、ギヤードモータ28が回転することによってピニオンギア27およびラックギア34を介してガイドレール33に案内されながら、キャスタ26の回転で構造物Sに沿って移動するようになっている。
【0063】
以上の構成を有する削孔装置A1を用いてコンクリート製の構造物Sに孔を開ける場合、ギヤードモータ28を回転させ、ガイドレール33に案内されるようにして削孔装置A1を構造物Sに対して所定位置に移動させる。このとき、アウトリガ24を接地させて削孔装置A1をその位置に固定するようにしてもよい。
【0064】
次に、ハンマドリル1が目的とする削孔位置となるように、リフタ10で高さを調整する。具体的には、昇降用モータ13により昇降テーブル14を昇降させてハンマドリル1の高さを調整する。
【0065】
そして、空圧式操作部1dにエアを供給してハンマドリル1の電源スイッチをオンにし、ハンマドリル1を前進移動させてビット1aの先端を構造物Sの削孔位置に押し当てて削孔する。すなわち、進退部材2であるエアシリンダ1cによりスライダ2aを移動させてハンマドリル1のビット1aの先端を削孔位置に押し当てて削孔を行う。
【0066】
削孔が終わったならば、構造物Sから離間する方向にスライダ2aを移動させてハンマドリル1を後退移動させ、待機位置に戻す。そして、リフタ10でハンマドリル1を昇降させながらハンマドリル1を次の削孔位置に移動させて同様に削孔を行い、以下同様にして縦方向に順次削孔を行う。
【0067】
このようにして縦方向1列の削孔を行ったならば、ギヤードモータ28を回転させ、削孔装置A1を構造物Sに沿って次の削孔位置に移動させ、前述と同様の要領で削孔を行う。そして、このような動作を繰り返して削孔を行っていく。
【0068】
このように、本実施の形態の削孔装置A1によれば、削孔装置A1を自動的に削孔対象である構造物Sに沿って移動させることが可能になっているので、当該削孔装置A1を移動させ、リフタ10で高さを調整するだけでコンクリート製の構造物Sをハンマドリル1で削孔することができ、作業者の負担を軽減しつつ構造物Sを削孔することが可能になる。
【0069】
なお、ガイドレール33とラックギア34とを備えた案内手段A2は、削孔対象である構造物Sの全長に渡って敷設しておかなくてもよい。すなわち、削孔が完了した部分の案内手段A2を撤去してこれから削孔を行う部分に敷設して延伸するようにすれば、案内手段A2の全長が削孔対象となる構造物Sの全長よりも短くても削孔装置A1を自動的に移動させて連続削孔することができる。
【0070】
図11は、以上の構成を有する削孔装置A1を備えた削孔システムAの制御系のブロック図である。なお、図11において、破線で結ばれたブロック同士は、両者が間接的な関係にあることを示している。
【0071】
図11に示すように、削孔システムAは、上述した削孔装置A1と、構造物Sに対する種々の削孔条件を設定する削孔条件シートSh(図13図14図15)の入力(設定)および削孔結果の出力を行うPC(パーソナルコンピュータ)などの入出力部PCと、削孔システムA全体の動作制御を実行する制御部Cと、削孔装置A1の削孔状態を検出する削孔状態検出部SSと、作業者が手動操作を行うペンダントスイッチなどの手動操作部MUとで構成されている。また、入出力部PCには、削孔条件シートShが格納された削孔条件シート記憶部PCm1および削孔結果が格納された削孔結果記憶部PCm2を備えている。
【0072】
削孔条件記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShとは、構造物Sの壁に対する削孔条件を設定したシートであり、削孔条件は、構造物Sの厚さ(コンクリート厚)や構造物Sに配された鉄筋の位置、削孔領域の広さなどを考慮して作業者が数値を入力する。但し、AI(Artificial Intelligence:人工知能)など用いて、数値が自動的に入力されるようにしてもよい。後述するように、制御部Cでは、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShを読み込んで削孔を行う。
【0073】
また、削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果とは、構造物Sに開けた孔の削孔結果である。後述するように、制御部Cでは、削孔状態検出部SSから送信された検出情報に基づいて削孔結果を取得して削孔結果記憶部PCm2に格納する。なお、入出力部PCでは、削孔結果が削孔条件とともに出力され、本実施の形態では、当該出力を履歴ファイルFと称している。
【0074】
なお、入出力部PCでは、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShや削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果は、作業者が必要とするときに確認することができるようになっている。
【0075】
また、本実施の形態の削孔システムAでは、削孔条件シートShを入力(設定)する入力部と削孔結果である履歴ファイルFを出力する出力部とが一体になった入出力部PCとなっているが、入力部と出力部とは相互に別体になっていてもよい。なお、削孔条件シートShには、キーボード、マウス、タッチパネルなどの様々な入力媒体により数値等が入力される。また、履歴ファイルFは、液晶ディスプレイやプリントアウトされた紙媒体などの様々な出力媒体に出力される。
【0076】
ここで、削孔条件シートShおよび履歴ファイルFについて、図12図18を用いて説明する。図12は構造物Sの壁に対する削孔位置の一例を示す説明図、図13図14および図15図12の削孔位置に削孔する削孔条件を設定した削孔条件シートSh1,Sh2,Sh3の一例を示す説明図、図16図13の削孔条件シートSh1に基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図、図17は更新された削孔条件シートSh1の一例を示す説明図、図18図17の削孔条件シートSh1に基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図である。
【0077】
図12において、丸印が構造物Sに削孔される孔Hを示しており、各孔Hに対応して付された3桁の数字が削孔順序を兼ねた削孔番号となっている。また、この3桁の数字の下に記載された数字は、最初の削孔位置を原点(0,0)とした場合の(昇降設定値(原点からのハンマドリルの縦方向移動距離),移動設定値(原点からの削孔装置の移動距離))となっている。なお、昇降設定値については、ハンマドリル1を上昇させた場合がマイナスとしている。よって、ハンマドリル1を下降させた場合はプラスであるが、プラス符号は省略している。また、本実施の形態において、削孔装置A1は一方向のみへと移動するようになっていることから、移動設定値についてはハンマドリル1の縦方向移動の場合のようなプラス・マイナスの符号による方向の識別はされていない。但し、削孔装置A1を往復移動させる場合には、符号により移動方向を識別するようにする。
【0078】
さて、図12に示すように、削孔順序は、各孔Hに付された数字が示すように、左上の孔H(削孔番号:101)を最初に削孔する原点の孔(0,0)とし、原点から800mm下がった削孔番号102の孔H(800,0)、原点から200mm右側で400mm下がった削孔番号103の孔H(400,200)、原点から200mm右側で400mm上がった削孔番号104の孔H(-400,200)、原点から400mm右側で水平位置が同じ削孔番号105の孔H(0,400)、原点から400mm右側で800mm下がった削孔番号106の孔H(800,400)、原点から600mm右側で400mm下がった削孔番号107の孔H(400,600)、原点から600mm右側で400mm上がった削孔番号108の孔H(-400,600)となっている。
【0079】
図13に示す削孔条件シートSh1(Sh)は図12の削孔に対応したもので、図12に示す削孔番号101~108の8つの孔についての削孔条件を設定したシートである。図示するように、本実施の形態において、削孔条件シートSh1に設定された削孔条件は、削孔番号、昇降設定値、移動設定値、削孔深さ設定値(ハンマドリル1による削孔深さの設定値)、削孔無(削孔深さの孔が開けられなかったときに入れるチェックマーク欄)である。
【0080】
なお、図14図15に示すように、削孔条件シートSh2,Sh3(Sh)として、図13に示した削孔条件シートSh1とは異なる削孔位置や削孔数の孔についての削孔条件を設定したシートを設け、削孔対象である構造物Sの面積や埋設された鉄筋の位置などに応じて使い分けてもよい。
【0081】
また、削孔条件は前述した条件に限定されるものではなく、上述した条件の一部が欠落していたり、上述した条件以外の条件(例えば、削孔速度、削孔速度未満の場合において削孔進行中であることを判断するための所定時間など)が設定されていてもよい。さらに、削孔される孔の数や位置などの数値については、削孔する構造物Sに応じて自由に設定することができるのは言うまでもない。また、削孔位置は、直前に削孔された孔との間隔で設定されるようになっていてもよい。
【0082】
本実施の形態の削孔条件シートSh1に基づいて削孔した削孔結果の一例としての履歴ファイル(1)Fを図16に示す。
【0083】
図示するように、履歴ファイル(1)Fには、削孔の開始時間、削孔時間、削孔番号、シート番号(削孔条件シートShの番号)、昇降設定値、昇降完了値、移動設定値、移動完了値、削孔面までの距離計測値、削孔深さ設定値、削孔深さ完了値および判定が表示されるようになっている。なお、「判定」とは、設定した削孔深さの孔を開けることができたか否かの判定であり、開けることができた場合(OK)には「1」、開けることができていない場合(NG)には「2」と表示される。図示する場合には、削孔番号103が「2」と表示されている。なお、履歴ファイルFの表示項目はこれらに限定されるものではなく、これらの項目の一部が欠落していたり、前述した項目以外の項目が表示されるようになっていてもよい。また、本実施の形態では、「2」と判定された孔が一目で確認できるようにするために網掛け表示している。このように、作業者による判定確認の便宜のため、網掛けや色分けなどによって「1」と「2」とが識別できるようになっているのが望ましい。
【0084】
さて、図16に示すように、履歴ファイル(1)Fの判定欄に「2」つまり設定した削孔深さを開けることができなかった孔があった場合、削孔条件シートSh1が更新され、再削孔が行われる。すなわち、図17の更新された削孔条件シートShr1に示すように、削孔番号103の「削孔無」欄にチェックマークを入れるとともに、後述するように、ハンマドリル1が削孔途中で鉄筋等に干渉したことが原因で「2」との判定になったと考えられることから、昇降設定値(縦方向)および移動設定値(横方向)をそれぞれ10mmずつプラスする。これにより、削孔番号103の孔は、当初設定した位置よりも10mm下で10mm右側に削孔されるように再設定される。なお、削孔位置をずらす方向は本実施の形態に限定されるものではなく、縦方向のみ、横方向のみにずらすようにしてもよい。また、削孔位置をずらす量についても10mmである必要はなく、例えば5mmであってもよい。また、削孔位置をずらす位置や数値についても、AI(Artificial Intelligence:人工知能)など用いて自動的に行われるようにしてもよい。
【0085】
更新された図17に示す削孔条件シートShr1を削孔条件記憶部PCm1に格納すると、これを制御部Cが読み込んで、「削孔無」欄にチェックマークが入れられた削孔番号103についてのみ再削孔が行われる。このときの履歴ファイル(2)Fの一例を図18に示す。図示するように、当該履歴ファイル(2)Fの「判定」欄は全て「1」となって、全ての孔について、設定した削孔深さに開けることができている。これで、削孔が終了となる。なお、再削孔しても履歴ファイル(2)Fの「判定」欄が「2」となって設定した削孔深さを開けることができなかった孔があった場合には、履歴ファイルFの「判定」欄が全て「1」になるまで、判定「2」に該当する削孔条件シートShの更新と削孔とを繰り返す。
【0086】
さて、前述のように、制御部Cは、入出力部PCで入力(設定)されて削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShを読み込んで削孔装置A1を駆動して縦方向に削孔する制御を行う。また、削孔状態検出部SSからの検出情報に基づいて削孔結果を取得し、これを入出力部PCに送信する制御を行う。
【0087】
ここで、図11に戻って、制御部Cにより、ハンマドリル1の設置された昇降テーブル14を昇降させる昇降用モータ13、ハンマドリル1を駆動するドリル駆動用モータ1b、ハンマドリル1を進退移動させるエアシリンダ1c、ハンマドリル1の電源スイッチを操作するための空圧式操作部1d、および削孔装置A1を移動させるためのギヤードモータ28が制御されるようになっている。したがって、削孔装置A1を所定の位置に設置したならば、制御部Cにより削孔条件シートShの設定に沿って削孔が自動的に実行される。また、手動操作部MUにより、昇降用モータ13、ドリル駆動用モータ1b、エアシリンダ1c、エアシリンダ1c、空圧式操作部1dおよびギヤードモータ28が操作可能になっている。したがって、作業者が手動操作部MUを操作することにより、制御部Cによる削孔とは別に、作業者が所望する箇所を削孔することができる。
【0088】
さて、削孔装置A1の削孔状態を検出する削孔状態検出部SSは、ハンマドリル1の昇降位置を検出する昇降位置検出部SSa、削孔装置A1と構造物Sの削孔される孔の壁面(削孔面)との距離(ハンマドリル1の前進長に基づいた削孔装置A1と削孔面との距離)を検出する削孔面距離検出部SSb、削孔された孔の深さ(削孔深さ)を検出する削孔深さ検出部SSc、および削孔装置A1の移動距離を検出する移動距離検出部SSdからなる。なお、前述のように、削孔装置A1の移動距離はロータリエンコーダ31から送られるパルス数により検出される。
【0089】
前述のように、削孔状態検出部SSで検出された削孔装置A1の削孔状態は制御部Cに送信される。そして、制御部Cでは、削孔状態検出部SSから送信された様々な検出情報から削孔装置A1による構造物Sに対しての削孔結果を取得(算出)し、これを入出力部PCに送信し、削孔結果記憶部PCm2に格納する。
【0090】
ここで、本実施の形態の制御部Cでは、構造物Sの削孔中において設定された削孔深さの孔をハンマドリル1が開けることができないと判断した場合には、当該削孔を中止して次の孔を削孔する制御を行っている。
【0091】
すなわち、図19に示すように、コンクリート製の構造物Sの内部には鉄筋Bや配管などの埋設物(以下、「鉄筋等」という。)が配されていることから、ハンマドリル1(詳しくは、ハンマドリル1の先端のビット1a)が削孔途中で鉄筋等に干渉した場合、それ以上削孔することはできない。なお、図19では、水平方向に配された鉄筋Bを示しており、そのために断面が円形になっている。
【0092】
そこで、制御部Cにおいて、削孔状態検出部SSから送信された検出情報からハンマドリル1のストローク(前進長)が所定寸法(削孔条件シートShに設定した「削孔深さ設定値」)に達しないときには、ハンマドリル1が鉄筋等に干渉したために削孔条件シートShに設定した削孔深さの孔Hを開けることができないと判断して削孔を中止し、ハンマドリル1を構造物Sから引き抜き、次の孔を削孔する。このようにして削孔された複数の孔の削孔結果(削孔条件シートShに設定した深さを開けることができた孔と削孔条件シートShに設定した深さを開けることができなかった孔の結果)は削孔結果記憶部PCm2に格納される。
【0093】
そして、削孔が終了した後、作業者が入出力部PCを操作して、削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果(つまり、直近の削孔結果)に基づいて、削孔条件シートShに設定した深さを開けることができなかった孔に限定して、削孔位置をずらして削孔するように削孔条件シートShを更新して削孔条件シート記憶部PCm1に格納する。
【0094】
したがって、次回では、削孔条件シート記憶部PCm1に格納されている更新された削孔条件シートShを読み込み、前回の削孔において削孔条件シートShに設定した深さを開けることができなかった孔に対してのみ、削孔が行われることになる。
【0095】
ここで、本実施の形態では、ハンマドリル1のストロークに基づいて設定の削孔深さの孔を開けることができているか否かを判断しているが、これ以外を判断材料にしてもよい。たとえば、ハンマドリル1に取り付けられたビット1aの押付圧(フィード圧)を検出する検出部を設けておき、当該検出部に検出される押付圧に基づいて設定の削孔深さの孔を開けることができているか否かを判断することなどが考えられる。すなわち、検出された押付圧が所定圧以上になったときには、ハンマドリル1が鉄筋等に干渉したために設定された削孔深さの孔を開けることができないと判断する。
【0096】
次に、以上の構成を有する削孔システムAを用いて、コンクリート製の構造物Sに孔H(ここでは、せん断補強鉄筋Rを挿入するための孔H)を自動的に開ける場合のプロセスについて、図20のフローチャートを用いて説明する。ここでは、図13に示す削孔条件シートSh1の設定条件の下、図12における左側の列の削孔を行い、削孔装置A1を次の列に移動させながら右側の列まで削孔するものとする。なお、ハンマドリル1の削孔速度、削孔が進行しているか停滞しているかを判断するための時間(所定時間)などがデフォルト値として設定されているものとする。
【0097】
先ず、作業者により、削孔条件シートSh1に削孔条件を入力する(ステップSt01)。本実施の形態では、入力画面からに表示された必要な数値の設定を行う。そして、数値の設定を行ったならば、削孔条件シートSh1を削孔条件シート記憶部PCm1に格納する(ステップSt02)。本実施の形態では、入力画面に表示された「書込」ボタン(図示せず)をクリックして格納する。
【0098】
次に、制御部Cによって、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートSh1(つまり、構造物Sに削孔する複数の孔の位置(昇降設定値)や削孔深さなどの削孔条件)を読み込む(ステップSt03)。
【0099】
削孔条件シートSh1の数値設定から読み込みまでが終了したならば、ギヤードモータ28を回転させて削孔装置A1をガイドレール33に沿って走行させて構造物Sの所定位置に設置し、昇降用モータ13を回転させてハンマドリル1を最初の削孔位置に移動させる(ステップSt04)。続いて、集塵機37の駆動を開始する(ステップSt05)。なお、ステップSt04とステップSt05との順序を逆にし、集塵機37の駆動を開始した後に削孔装置A1の設置およびハンマドリル1の移動を行ってもよい。
【0100】
このようにしてハンマドリル1を最初の削孔位置に移動させたならば、次のステップSt06からは、削孔条件シートSh1を読み込んだ制御部Cによって自動的に削孔動作が実行される。
【0101】
先ず、ハンマドリル1により実際に削孔を行う前に、ハンマドリル1と削孔面(削孔する孔位置の構造物表面)との距離を計測する(ステップSt06)。すなわち、ビット1aの回転を停止したままでハンマドリル1が前進し、一定時間前進がない場合(つまり、ハンマドリル1の前進が止まった場合)、ハンマドリル1(より詳しくは、ハンマドリル1に取り付けられたビット1aの先端)が削孔面に当接したと判断する。そして、その前進位置でのハンマドリル1の伸張量を削孔面距離検出部SSbで検出して、ハンマドリル1と削孔面との距離とする。なお、本実施の形態では、スライドガイド2bの進退位置を検出する位置センサで距離計測を行っているが、計測方法はこれに限定されるものではなく、レーザ距離計などの距離計測器を用いて計測してもよい。
【0102】
なお、本実施の形態の削孔システムAでは、1回の削孔ごとにハンマドリル1と削孔面との距離を計測している。これは、削孔に先立って、高水圧で構造物Sの表面をクリーニングしているが、その際に、経年劣化などにより構造物Sの表面が剥離するため、ハンマドリル1と構造物S(詳しくは、構造物Sの表面)との距離を一回だけ計測し、その数値に基づいて削孔したのでは、規定の削孔深さに削孔されない孔が発生して削孔精度が低下するからである。また、削孔装置A1の走行時の案内機能を有するガイドレール22を正確に構造物Sと平行に敷設することは困難であることから、同様に、一回だけ計測したハンマドリル1と構造物Sとの距離に基づいて削孔したのでは、規定の削孔深さに削孔されない孔が発生して削孔精度が低下するからである。
【0103】
但し、本実施の形態のように、1回の削孔ごとにハンマドリル1と削孔面との距離を計測するのではなく、複数回の削孔ごとに、または削孔装置A1の移動ごとに(つまり、削孔を行う列の最初の削孔前に)、削孔面距離検出部SSbによる検出を行い、その検出結果に基づいて削孔するようにしてもよい。あるいは、削孔面距離検出部SSbに替えて、削孔装置A1と構造物Sの壁面との距離を検出する壁面距離検出部を備えておき、削孔装置A1の削孔開始に先立って壁面距離検出部による検出を行い、その検出結果に基づいて削孔するようにしてもよい。
【0104】
さて、ステップSt06においてハンマドリル1と削孔面との距離計測を行ったならば、ハンマドリル1の駆動を開始する(ステップSt07)。
【0105】
次に、ハンマドリル1を前進させて削孔を開始する(ステップSt08)。すなわち、エアシリンダ1cでスライダ2aをスライドガイド2bに沿ってスライドさせてハンマドリル1を前進移動させ、ハンマドリル1先端のビット1aを構造物Sの削孔位置に押し当てて削孔を開始する。
【0106】
削孔を開始したならば、削孔深さ検出部SScによって検出される孔の深さの推移から、削孔速度が設定値以上であるかを判断する(ステップSt09)。
【0107】
ステップSt09において削孔速度が設定値以上であると判断された場合、削孔が順調に行われていることになるので、削孔深さ検出部SScにより削孔深さが削孔条件シートSh1に設定された設定値に達したと検出されるまで削孔を継続する(ステップSt10)。そして、ステップSt10において、削孔深さが設定値に達したと判断された場合には、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および削孔成功とした判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt11)。なお、ステップSt10および後述のステップSt14で削孔深さが設定値に達したと判断された時点で、ハンマドリル1の前進は停止される。
【0108】
一方、ステップSt09において、削孔速度が設定値以上ではないと判断された場合には、何らかの原因(例えば、構造物Sの硬度など)で削孔速度は設定値未満であるが、設定の削孔深さに向かっての削孔途中との可能性が考えられることから、削孔時間を計測し(ステップSt12)、所定時間内に削孔深さが変化したか否かを判断する(ステップSt13)。
【0109】
そして、ステップSt13において、所定時間内に削孔深さが変化していないと判断された場合には、ハンマドリル1の先端に取り付けられたビット1aが構造物S内の鉄筋等に当たったために削孔が停滞していることになり、削孔を中止して、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および「削孔失敗」とする判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt11)。
【0110】
また、ステップSt13において、所定時間内に削孔深さが変化していると判断された場合には、削孔深さ検出部SScに検出される削孔深さが設定値に達したかが判断され(ステップSt14)、削孔深さが設定値に達したと判断された場合には、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および「削孔成功」との判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt11)。一方、ステップSt14において、削孔深さが設定値に達していないと判断された場合には、削孔を中止して、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および「削孔失敗」との判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt11)。
【0111】
さて、このようにしてステップSt11において削孔結果を削孔結果記憶部PCm2に格納したならば、ハンマドリル1が後退(ハンマドリル1先端のビット1aが構造物Sから引き抜かれる程度まで後退)して駆動を停止する(ステップSt15)。
【0112】
次に、今回の削孔で縦方向1列の削孔が終了したかを判断し(ステップSt16)、終了していない場合には、昇降用モータ13を駆動させて、削孔条件シートSh1に設定された次の削孔位置へとハンマドリル1を移動させ(ステップSt17)、前述したステップSt06に移行する。そして、以降のステップを順次実行する。なお、ハンマドリル1の移動に際しては、昇降位置検出部SSaにより、削孔条件シートSh1に設定された位置にハンマドリル1が移動される。
【0113】
ステップSt16において縦方向1列の削孔が終了したと判断された場合には、今回の削孔が削孔条件シートSh1の最後の削孔であるかを判断する(ステップSt18)。そして、削孔条件シートSh1の最後の削孔ではない場合には、ギヤードモータ28を駆動させて移動距離検出部SSdで削孔装置A1を検出し、当該削孔装置A1を次の削孔列に移動させる(ステップSt19)。そして、昇降位置検出部SSaによりハンマドリル1を削孔位置に移動させ(ステップSt20)、前述したステップSt06に移行する。
【0114】
一方、ステップSt18において今回の削孔が削孔条件シートSh1の最後の削孔であると判断された場合には、集塵機37を停止し(ステップSt21)、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートSh1と、前述のステップSt11において削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果とが対比された一覧表である履歴ファイルFを出力する(ステップSt22)。なお、集塵機37は、次のステップSt23において削孔条件に不適合の孔がないと判断された後に停止するようにしてもよい。
【0115】
次に、出力された履歴ファイルFから、削孔条件に不適合の孔(「削孔失敗」と判定された孔)があるか否かを判断する(ステップSt23)。なお、本実施の形態では、このように、制御部Cにより、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートSh1と削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果とから、履歴ファイルFに判定として表示されるようになっているが、「判定」の項目がない場合には作業者が判断する。
【0116】
さて、ステップSt23において、削孔条件シートSh1に設定された削孔条件に不適合の孔があると判断された場合には、削孔結果に基づいて削孔条件シートSh1を更新する(ステップSt24)。本実施の形態では、前述のように、削孔番号103が削孔失敗となって削孔条件に不適合の孔となっている。削孔条件に適合した孔を開けることができなかった原因としては、ハンマドリル1の先端に取り付けられたビット1aが構造物S内の鉄筋等に当たったためであることが想定されるため、削孔条件シートSh1の更新に当たっては、設計図面等から鉄筋等の位置を考慮して削孔位置を所定量だけずらす。ここでは、図17に示すように、削孔番号103の「削孔無」欄にチェックマークを入れるとともに、昇降設定値を10mmプラスして410mm、移動設定値を同じく10mmプラスして210mmとする。なお、この削孔条件シートSh1の更新も、本実施の形態では、作業者が行っているが、前述のように、自動的に行われるようにしてもよい。
【0117】
ステップSt24において削孔条件シートSh1を更新したならば、その更新された削孔条件シートShr1を削孔条件シート記憶部PCm1に格納する(ステップSt25)。その後、制御部Cによって、削孔条件シート記憶部PCm1の更新された削孔条件シートShr1を読み込む(ステップSt26)。そして、更新された削孔番号103の削孔位置(再削孔する孔の位置)にハンマドリル1がくるように、削孔装置A1を移動して所定位置に設置し、ハンマドリル1を昇降して削孔位置に移動し(ステップSt27)、前述したステップSt05に移行する。なお、集塵機37をステップSt21で停止しておくのではなく、ステップSt23において削孔条件に不適合の孔がないと判断された後に停止する場合には、ステップSt27でハンマドリル1を削孔位置に移動したならば、ステップSt06に移行する。
【0118】
さて、ステップSt23において、削孔条件シートSh1に設定された削孔条件に不適合の孔(設定した位置や深さに削孔されなかった孔)がないと判断された場合には、全ての削孔が完了したとして、終了となる。
【0119】
このように、本実施の形態では、制御部Cによる制御の下、コンクリート製の構造物Sに対し縦方向1列ごとに削孔する複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件が設定された削孔条件シートShを読み込み、その削孔条件シートShに基づいて、ハンマドリル1を昇降させて縦方向1列を削孔し、その後削孔装置A1を次の削孔位置に移動させて再びハンマドリル1を昇降させて縦方向1列を削孔する動作を繰り返し実行するようになっている。また、ハンマドリル1が削孔条件に適合した深さの孔を開けることができなかった孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開けている。そして、削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して、削孔位置をずらして削孔するように更新した削孔条件シートShに基づいて再削孔している。
【0120】
これにより、コンクリート製の構造物Sに対して、削孔条件に沿った複数の孔を自動的に開けることが可能になる。
【0121】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0122】
たとえば、本実施の形態においては、リフタ10でハンマドリル1を昇降させながら縦方向に1列ずつ削孔するという削孔パターン(縦方向優先削孔パターン)の設定であるが、削孔パターンはこのような縦方向優先削孔パターンではなく、例えばハンマドリル1を昇降させずに、削孔装置A1を構造物Sに沿って移動させながら横方向1列を先に削孔して、その後、ハンマドリルを上昇または下降させてその上の列または下の列を順次削孔するという削孔パターン(横方向優先削孔パターン)の設定など、削孔パターンについては自由に設定することが可能である。
【0123】
また、本実施の形態においては、削孔機としてハンマドリル1が用いられているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば円筒状ノコ歯ビットが先端に取り付けられたロッドを回転させて削孔するコアドリルなど、コンクリート製の構造物Sを削孔可能な様々な削孔機を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上の説明では、本発明の削孔システムを、コンクリート製の既設の構造物にせん断補強鉄筋を挿入するための孔開けに用いられた場合が示されているが、これに限定されるものではなく、コンクリート製の構造物の孔開けに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 ハンマドリル(削孔機)
1a ビット
1b ドリル駆動用モータ
1c エアシリンダ
1d 空圧式操作部
2 進退部材
2a スライダ
2b スライドガイド
10 リフタ
12 昇降用マスト
13 昇降用モータ
14 昇降テーブル
20 シャーシ
22 ガイドレール
24 アウトリガ
26 キャスタ
27 ピニオンギア
28 ギヤードモータ(走行用モータ)
31 ロータリエンコーダ
32 ピニオンギア
33 ガイドレール
34 ラックギア
35 保持ローラ
36 エアコンプレッサ
37 集塵機
A 削孔システム
A1 削孔装置
A2 案内手段
B 鉄筋
C 制御部
CP コンプレッサ
F 履歴ファイル、履歴ファイル(1)、履歴ファイル(2)
H 孔
MU 手動操作部
PC 入出力部
PCm1 削孔条件シート記憶部
PCm2 削孔結果記憶部
R せん断補強鉄筋
Sh,Sh1,Sh2,Sh3 削孔条件シート
Shr1 更新された削孔条件シート
S 構造物
SS 削孔状態検出部
SSa 昇降位置検出部
SSb 削孔面距離検出部
SSc 削孔深さ検出部
SSd 移動距離検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20