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特開2023-10362昇華ガス供給システムおよび昇華ガス供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010362
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】昇華ガス供給システムおよび昇華ガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
C23C16/448
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114451
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 星永
(72)【発明者】
【氏名】小浦 輝政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清香
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 千佳子
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030EA01
(57)【要約】
【課題】固体材料容器を交換する場合であっても、昇華ガスの利用率を低下させない昇華ガス供給システム及びその供給方法を提供する。
【解決手段】昇華ガス供給システム1は、第1の容器11と、第1の容器11を加熱する第1の加熱部12と、昇華ガスを貯留する第1のバッファータンク13と、第2の経路16における第1の接続部C1と接続されており、第2の経路16へ希釈用ガスを導入するための希釈用ガス経路17と、第2の経路上であって、第1の接続部C1と第1のバッファータンク13との間に設けられ、流量を制御するための第1の流量制御装置19と、希釈用ガス経路上に設けられ、流量を制御するための第2の流量制御装置21と、第2の経路上に設けられ、第1の接続部C1で合流した希釈用ガスと第1の昇華ガスとを混合するための混合器22とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給するための昇華ガス供給システムであって、
第1の固体材料を収納する第1の容器と、
前記第1の固体材料が昇華して、第1の昇華ガスを生成するように前記第1の容器を加熱する第1の加熱部と、
昇華ガスを貯留する第1のバッファータンクと、
前記第1の昇華ガスを前記第1のバッファータンクへ導入する第1の経路と、
前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスを後段のプロセスへ供給するための第2の経路と、
前記第2の経路における第1の接続部と接続されており、前記第2の経路へ希釈用ガスを導入するための希釈用ガス経路と、
前記第2の経路上であって、前記第1の接続部と前記第1のバッファータンクとの間に設けられ、流量を制御するための第1の流量制御装置と、
前記希釈用ガス経路上に設けられ、流量を制御するための第2の流量制御装置と、
前記第2の経路上に設けられ、前記第1の接続部で合流した前記希釈用ガスと前記第1の昇華ガスとを混合するための混合器と、を備えた、
昇華ガス供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の昇華ガス供給システムであって、ここで、
前記希釈用ガス上に設けられ、前記希釈用ガスを貯留する第2のバッファータンクと、
前記第1の経路上に設けられた第1の弁と、
前記第2の経路上であって、前記第1の接続部と前記第1のバッファータンクとの間に設けられた第2の弁と、
前記希釈用ガス経路上であって、前記第1の接続部と前記第2のバッファータンクとの間に設けられた第3の弁と、を備えた、
昇華ガス供給システム。
【請求項3】
請求項2に記載の昇華ガス供給システムであって、ここで、
前記第1の経路上であって、前記第1の弁と前記第1のバッファータンクとの間に設けられ、前記第1のバッファータンクから前記第1の昇華ガスを排出するための第1の排出経路と、
前記第2の経路上であって、前記混合器と前記後段のプロセスとの間に設けられ、流量を制御するための第3の流量制御装置と、
前記第2の経路上であって、前記混合器と前記第3の流量制御装置との間に設けられ、前記第2の経路上のガスを排出する排ガス経路とを、備えた、
昇華ガス供給システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の昇華ガス供給システムであって、ここで、
前記第1のバッファータンクを加熱するための第1のバッファータンク用加熱部と、
前記混合器を加熱するための混合器用加熱部と、を備えた、
昇華ガス供給システム。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の昇華ガス供給システムであって、
第2の固体材料を収納する第2の容器と、
前記第2の固体材料が昇華して、第2の昇華ガスを生成するように前記第2の容器を加熱する第2の加熱部と、
前記第2の昇華ガスを前記第1のバッファータンクへ導入する第3の経路と、さらに備え、
ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは同じ固体材料である、
昇華ガス供給システム。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載の昇華ガス供給システムであって、
第2の固体材料を収納する第2の容器と、
前記第2の固体材料が昇華して、第2の昇華ガスを生成するように前記第2の容器を加熱する第2の加熱部と、
前記第2の昇華ガスを貯留するための第3のバッファータンクと、
前記第2の昇華ガスを前記第3のバッファータンクへ導入するための第4の経路と、
前記第3のバッファータンクから導出された前記第2の昇華ガスを、前記混合器と前記第1のバッファータンクとの間の前記第2の経路へ供給するための第5の経路と、
前記第5の経路上に設けられ、流量を制御するための第4の流量制御装置と、
前記第5の経路上に設けられた弁と、をさらに備え、
ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは異なる固体材料である、
昇華ガス供給システム。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の昇華ガス供給システムであって、
前記第1のバッファータンク内の圧力を計測する第2の圧力計と、
制御器と、をさらに備え、ここで、
前記制御器は、起動時において、前記第2の圧力計が所定の圧力に達したとき、前記第1の昇華ガスが第1の接続部を流通するように前記第2の弁を開けるように制御する、
昇華ガス供給システム。
【請求項8】
請求項2から6のいずれか1項に記載の昇華ガス供給システムであって、
制御器と、をさらに備え、ここで、
前記制御器は、停止制御において、前記第2の弁と前記第前記第3の弁とを閉めるように制御する、
昇華ガス供給システム。
【請求項9】
請求項2から6のいずれか1項に記載の昇華ガス供給システムであって、
制御器と、をさらに備え、ここで、
前記制御器は、定常運転時において、または前記後段のプロセスの状況に応じて、前記後段のプロセスに導入される前記第1の昇華ガスの濃度を調整するように、前記第1の流量制御装置及び前記第2の流量制御装置からなる群から選択される少なくとも一つを制御する、
昇華ガス供給システム。
【請求項10】
固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給するための昇華ガス供給方法であって、
第1の固体材料を収納する第1の容器を加熱して、第1の固体材料に由来する第1の昇華ガスを生成する第1の加熱工程と、
前記第1の昇華ガスを第1のバッファータンクに導入する第1の導入工程と、
前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスを後段のプロセスへ供給する第1の供給工程と、
希釈用ガスを前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスに供給する第1の希釈工程と、
前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスの流量を制御する第1の流量制御工程と、
希釈用ガス経路から供給される前記希釈用ガスの流量を制御する第2の流量制御工程と、を備えた、
昇華ガス供給方法。
【請求項11】
請求項10に記載の昇華ガス供給方法であって、
第2の固体材料を収納する第2の容器を加熱して、第2の固体材料に由来する第2の昇華ガスを生成する第2の加熱工程と、
前記第2の昇華ガスを第1のバッファータンクに導入する第2の導入工程と、
前記第1の導入工程を停止して、前記第2の導入工程に切り替える第1の切替工程と、を備え、
ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは同じ固体材料である、
昇華ガス供給方法。
【請求項12】
請求項10に記載の昇華ガス供給方法であって、
第2の固体材料を収納する第2の容器を加熱して、第2の固体材料に由来する第2の昇華ガスを生成する第2の加熱工程と、
前記第2の昇華ガスを第3のバッファータンクに導入する第2の導入工程と、
前記第3のバッファータンクから導出された前記第2の昇華ガスを後段のプロセスへ供給する第2の供給工程と、
前記希釈用ガスを前記第3のバッファータンクから導出された前記第2の昇華ガスに供給する第2の希釈工程と、
前記第1の導入工程と前記第1の供給工程とを停止して、前記第2の導入工程及び前記第2の供給工程に切り替える第2の切替工程と、を備え、
ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは異なる固体材料である、
昇華ガス供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給するための昇華ガス供給システムおよび昇華ガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積デバイスや液晶パネル等のマイクロ・エレクトロニクス・デバイスを製造するためには、基板上に様々な材料の膜を成膜する必要がある。また、様々な部材にドライコーティングを行い、その部材の強度などの特性を改善することが近年行われている。この成膜方法、コーティング方法としてはPVD(物理的気相堆積)法、CVD(化学的気相堆積)法、ALD(原子層堆積)法等が広く知られている。
【0003】
半導体産業の進歩に伴い、厳しい膜の要件を満たすため、成膜に使用する前駆体の有する蒸気圧は低くなる傾向にある。成膜用の前駆体としては、例えばアルミニウム、バリウム、ビスマス、クロム、コバルト、銅、金、ハフニウム、インジウム、イリジウム、鉄、 ランタン、鉛、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、ニオブ、白金、ルテニウム、銀、ストロンチウム、タンタル、チタン、タングステン、イットリウム及びジルコニウムの無機化合物及び有機金属化合物などが挙げられる。また、ドライコーティング用の前駆体としては、カーボンフリーの成膜のため、一般的に無機金属化合物が使用される。これらの材料は蒸気圧が低いため、成膜チャンバへの導入にあたり固体材料の場合には昇華させて供給する必要がある。従来の方法では、原料粉体を含む蒸気発生室において、原料粉体を加温し、飽和蒸気を発生させるとともに原料蒸気自身にキャリアガスを接触させることにより、原料粉体を含んだキャリアガスを成膜装置へ供給する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-141192
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の装置では、蒸気発生室を交換するとき、貯蔵室にある昇華ガスを一度排出する必要があった。そのため、従来の装置では、昇華ガスの利用率が低下した。
【0006】
本開示の目的は、固体材料容器を交換する場合であっても、昇華ガスの利用率を低下させない昇華ガス供給システム及びその供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給するための昇華ガス供給システムであって、
第1の固体材料を収納する第1の容器と、
前記第1の固体材料が昇華して、第1の昇華ガスを生成するように前記第1の容器を加熱する第1の加熱部と、
昇華ガスを貯留する第1のバッファータンクと、
前記第1の昇華ガスを前記第1のバッファータンクへ導入する第1の経路と、
前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスを後段のプロセスへ供給するための第2の経路と、
前記第2の経路における第1の接続部と接続されており、前記第2の経路へ希釈用ガスを導入するための希釈用ガス経路と、
前記第2経路上であって、前記第1の接続部と前記第1のバッファータンクとの間に設けられ、流量を制御するための第1の流量制御装置と、
前記希釈用ガス経路上に設けられ、流量を制御するための第2の流量制御装置と、
前記第2の経路上に設けられ、前記第1の接続部で合流した前記希釈用ガスと前記第1の昇華ガスとを混合するための混合器と、を有する。
【0008】
この構成によれば、第1の容器を第1の個体材料を含む別の容器に交換するとき、第1のバッファータンクから第1の昇華ガスを排出することが不要である。したがって、昇華ガスの利用率を下げずに、後段のプロセスへ第1の昇華ガスを供給できる。
【0009】
上記構成は、さらに、前記希釈用ガス経路上に設けられ、前記希釈用ガスを貯留する第2のバッファータンクと、
前記第1の経路上に設けられた第1の弁と、
前記第2の経路上であって、前記第1の接続部と前記第1のバッファータンクとの間に設けられた第2の弁と、
前記希釈用ガス経路上であって、前記第1の接続部と前記第2のバッファータンクとの間に設けられた第3の弁と、を有する構成であってもよい。
【0010】
この構成によれば、第1の昇華ガス及び希釈用ガスの流量を適切に制御できる。
【0011】
上記構成はさらに、前記第1の経路上であって、前記第1の弁と前記第1のバッファータンクとの間に設けられ、前記第1のバッファータンクから前記第1の昇華ガスを排出するための第1の排出経路と、
前記第2の経路上であって、前記混合器と前記後段のプロセスとの間に設けられ、流量を制御するための第3の流量制御装置と、
前記第2の経路上であって、前記混合器と前記第3の流量制御装置との間に設けられ、前記第2の経路上のガスを排出する排ガス経路と、と有する構成であってもよい。
【0012】
この構成によれば、昇華ガスシステムの制御において、システム内の昇華ガス(例えば、第1の昇華ガス)を除く必要があるとき、適切に昇華ガスを排出できる。
【0013】
上記開示はさらに、前記第1のバッファータンクを加熱するための第1のバッファータンク用加熱部と、
前記混合器を加熱するための混合器用加熱部と、を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、希釈用ガスと昇華ガスとの混合の際、昇華ガスの固化を防ぐことができる。
【0015】
上記開示はさらに、第2の固体材料を収納する第2の容器と、
前記第2の固体材料が昇華して、第2の昇華ガスを生成するように前記第2の容器を加熱する第2の加熱部と、
前記第2の昇華ガスを前記第1のバッファータンクへ導入する第3の経路と、有していてもよい。ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは同じ固体材料である。
同じ材料とは、実質的に同じ材料で構成されていることを意味する。
【0016】
この構成によれば、仮に第1の容器における第1の昇華ガスの圧力が低下(つまり、第1の固体材料が所定量以下に減少)したとき、第1のバッファータンクから第1の昇華ガスを取り除かず、第2の容器から第2の昇華ガスを第1のバッファータンクへ導入できる。なぜなら、ここでいう第1の昇華ガスと第2の昇華ガスとは、同じ昇華ガスで構成されているからである。「前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは同じ固体材料」とは、実質的に同じ材料で構成されていることを意味する。
【0017】
上記開示はさらに、第2の固体材料を収納する第2の容器と、
前記第2の固体材料が昇華して、第2の昇華ガスを生成するように前記第2の容器を加熱する第2の加熱部と、
前記第2の昇華ガスを貯留するための第3のバッファータンクと、
前記第2の昇華ガスを前記第3のバッファータンクへ導入するための第4の経路と、
前記第3のバッファータンクから導出された前記第2の昇華ガスを、前記混合器と前記第1のバッファータンクとの間の前記第2の経路へ供給するための第5の経路と、
前記第5の経路上に設けられ、流量を制御するための第4の流量制御装置と、
前記第5の経路上に設けられた弁と、有していてもよい。ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは、異なる固体材料である。「前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは異なる固体材料」とは、実質的に異なる材料で構成されていることを意味する。
【0018】
この構成によれば、第1の容器から、第1の昇華ガスの供給を停止して、次いで第2の容器から第2の昇華ガスを後段のプロセスに供給することができる。
【0019】
上記開示は、さらに前記第1のバッファータンク内の圧力を計測する第2の圧力計と、制御器と、備え、ここで、
前記制御器は、起動時において、前記第2の圧力計が所定の圧力に達したとき、前記第1の昇華ガスが第1の接続部を流通するように前記第2の弁を開けるように制御する構成であってもよい。
この構成によれば、後段のプロセスへ適切に第1の昇華ガスを提供することができる。ここで、所定の圧力とは、例えば、第1の固体材料がAlClの場合、1×10-6から1×10-1atmである。また所定の圧力とは、例えば、第1の固体材料がMoOClの場合、1kPa以上50kPa以下である。所定の圧力値から、所定の第1の昇華ガスの濃度に換算することができる。
【0020】
上記開示は、さらに制御器と、をさらに備え、ここで、
前記制御器は、停止制御において、前記第2の弁と前記第前記第3の弁とを閉めるように制御する構成であってもよい。
【0021】
この構成によれば、第1のバッファータンクへ希釈用ガスが流入することを防ぐことができる。したがって、第1のバッファータンクに貯留されている昇華ガスを排出せず、昇華ガス供給システムを再度、開始することができる。具体的な制御の方法として、下記の(1)から(3)のいずれであってもよい。
(1)第2の弁と第3の弁とを同時に閉める。
(2)第2の弁を閉めてから第3の弁を閉める。
(3)第3の弁を閉めてから第2の弁を閉める。
【0022】
上記ここでは、さらに制御器と、をさらに備え、ここで、
前記制御器は、定常運転時において、または後段のプロセスの状況に応じて、前記後段のプロセスに導入される前記第1の昇華ガスの濃度を調整するように、前記第1の流量制御装置及び前記第2の流量制御装置からなる群から選択される少なくとも一つを制御する。
【0023】
この構成によれば、仮に後段のプロセスが、定常運転時において、第1の昇華ガスの濃度を変更するとき、適切に第1の昇華ガスの濃度を変更できる。
【0024】
他の開示は、固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給するための昇華ガス供給方法であって、
第1の固体材料を収納する第1の容器を加熱して、第1の固体材料に由来する第1の昇華ガスを生成する第1の加熱工程と
前記第1の昇華ガスを第1のバッファータンクに導入する第1の導入工程と、
前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスを後段のプロセスへ供給する第1の供給工程と、
希釈用ガスを前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスに供給する第1の希釈工程と、
前記第1のバッファータンクから導出された前記第1の昇華ガスの流量を制御する第1の流量制御工程と、
前記希釈用ガス経路から供給される前記希釈用ガスの流量を制御する第2の流量制御工程と、を有する。
【0025】
上記の他の開示は、第2の固体材料を収納する第2の容器を加熱して、第2の固体材料に由来する第2の昇華ガスを生成する第2の加熱工程と、
前記第2の昇華ガスを第1のバッファータンクに導入する第2の導入工程と、
前記第1の導入工程を停止して、前記第2の導入工程に切り替える第1の切替工程と、有する。ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは同じ固体材料である。
【0026】
上記の開示によれば、仮に第1の容器における第1の昇華ガスの圧力が低下(つまり、第1の固体材料が所定量以下に減少)したとき、第1のバッファータンクから第1の昇華ガスを取り除かず、第2の容器から第2の昇華ガスを第1のバッファータンクへ導入できる。
【0027】
上記の発明は、第2の固体材料を収納する第2の容器を加熱して、第2の固体材料に由来する第2の昇華ガスを生成する第2の加熱工程と、
前記第2の昇華ガスを第3のバッファータンクに導入する第2の導入工程と、
前記第3のバッファータンクから導出された前記第2の昇華ガスを後段のプロセスへ供給する第2の供給工程と、
前記希釈用ガスを前記第3のバッファータンクから導出された前記第2の昇華ガスに供給する第2の希釈工程と、
前記第1の導入工程と前記第1の供給工程とを停止して、前記第2の導入工程及び前記第2の供給工程に切り替える第2の切替工程と、有していてもよい。ここで、前記第1の固体材料と前記第2の固体材料とは異なる固体材料である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施形態1に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
図2図2は、実施形態2に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
図3図3は、実施形態3に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。
なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0030】
(実施形態1)
図1は、昇華ガス供給システムの概略を示す。図1で示される矢印は、各種ガス(例えば、昇華ガス、希釈用ガス)の流れる方向を示す。
本実施形態は、容器が一つである。さらに、バッファータンクは一つである。そのバッファータンクは、容器から生成された昇華ガスを貯留する。
【0031】
第1の容器11には、第1の固体材料S1が収納されている。第1の容器11は、トレータイプであっても、トレーレスタイプであってもよい。トレータイプとは、単数又は複数のトレーを容器内に内蔵し、固体材料がトレーに載置されているタイプのことである。トレーレスタイプとは、容器内に固体材料をそのまま載置するタイプのことである。
【0032】
第1の加熱部12は、第1の容器11を加熱することができる。第1の容器11が加熱されることで、第1の固体材料S1から第1の昇華ガスが生成される。図1において、第1の加熱部12は、第1の容器11を覆うようなジャケット式であるが、これに限定されない。例えば、第1の加熱部12は、第1の容器11の全面を加熱するようなオーブンタイプであってもよい。第1の温度計T1は、第1の加熱部12の温度を測定する。そして、測定された温度に基づいて、第1の加熱部12を制御する。なお、第1の容器11は、第1の容器11内の圧力を測定する第1の圧力計P1を備えていてもよい。
【0033】
第1の容器11から生じた第1の昇華ガスは、第1の経路15を通じて、第1のバッファータンク13に導入される。いいかえると、第1の容器11は、第1のバッファータンク13と、第1の経路15を介して接続されている。図1に示すように、第1のバッファータンク13には、第1のバッファータンク用加熱部14が設けられていてもよい。例えば、第1のバッファータンク用加熱部14は、第1のバッファータンク用加熱部14を覆うようなジャケット式であってもよい。第1のバッファータンク13は、第2の圧力計P2を備えていてもよい。第2の圧力計P2は、第1のバッファータンク13内の圧力を測定する。第1の経路15上には、パージガス経路27と接続されている第3の接続部C3を有する。パージガス経路27には、パージガスが流れている。パージガスは、例えば、酸素、窒素及び水素である。またパージガスは、不活性ガスであってもよい。例えば、ヘリウム、アルゴン及びネオンが挙げられる。パージガス経路27上には、弁(不図示)が設けられていてもよい。パージガスを第1の経路15に供給する場合、パージガス経路27上の弁(不図示)は開いていてもよい。また第1の経路15上には、第1のバッファータンク13に貯留された昇華ガスを排出するための第1の排出経路25と接続されている第2の接続部C2を有する。第1の排出経路25上には、ポンプ26が設けられている。なお、第1の排出経路25上には、弁(不図示)が設けられていてもよい。
次いで、貯留された昇華ガスは、第2の経路16を通じて、後段のプロセスBPに供給される。また第2の経路16上には、第1の接続部C1を有する。第1の接続部C1は、希釈用ガスを導入するための希釈用ガス経路17と接続されている。
【0034】
希釈用ガス経路17上には、第2のバッファータンク18を備えていてもよい。第2のバッファータンク18は、希釈用ガスを貯留する。ここで、希釈用ガスとは、例えば、窒素ガス等の不活化ガス、アルゴンガス等の希ガス又は水素ガスである。
【0035】
希釈用ガスは、第1の接続部C1において第1のバッファータンク13から排出された昇華ガスと合流する。そして、第2の経路16上に設けられた混合器22において、希釈用ガスと昇華ガスとが混合される。ここで、混合器22とは、昇華ガスと希釈用ガスとが混合される場合、どのような構成であってもよい。例えば、混合器22は、延長配管、ガスミキサーまたはベンチュリ管であってもよい。混合器22は、混合器用加熱部28を備えていてもよい。この場合、仮に、希釈用ガスの温度が昇華ガスの温度と比べて、相対的に低い場合でも、昇華ガスの固化を防ぐことができる。さらに、第2の経路16において、混合器22と後段のプロセスBPとの間において、排ガス用接続部CEが設けられていてもよい。排ガス用接続部CEは、排ガス経路23と接続されている。排ガス経路23上には、ポンプ(不図示)とポンプと排ガス用接続部CEとの間に弁(不図示)が設けられていてもよい。また、第2の経路16上には、昇華ガスの固化を防ぐため、加熱部(不図示)があってもよい。
【0036】
本実施形態の昇華ガス供給システムは、昇華ガスの流量及び希釈用ガスの流量をそれぞれ制御する流量制御装置を備えている。具体的には、第2の経路16において、第1の接続部C1と第1のバッファータンク13との間に第1の流量制御装置19が設けられている。希釈用ガス経路17において、第1の接続部C1と第2のバッファータンク18との間に、第2の流量制御装置21が設けられている。例えば、制御器100(詳細は後ほど説明する)は、第1の流量制御装置19と第2の流量制御装置21とを制御する。その結果、昇華ガスの濃度を適宜変更することができる。したがって、後段のプロセスBPへ適切な濃度の昇華ガスを供給することができる。また、第2に経路16において、排ガス用接続部CEと後段のプロセスBPとの間に第3の流量制御装置24を備えていてもよい。第3の流量制御装置24と排ガス用接続部CEとの間には、弁(不図示)が設けられていてもよい。流量制御装置として、例えば、マスフローメーターが挙げられる。また、流量制御装置として、流量コントロールバルブと流量計との組み合わせた装置が挙げられる。流量制御装置として、他に、経路の前後で圧力を制御して、差圧を用いることで流量調整弁を制御できるような装置が挙げられる。
【0037】
本実施形態の昇華ガス供給システムは、各種弁を備えている。第1の弁V1は、第1の経路15上に設けられている。図1に示す通り、第1の弁V1は、第3の接続部C3と第1の容器11との間に設けられていてもよい。第2の弁V2は、第2の経路16上に設けられている。具体的には、第2の弁V2は、第1の接続部C1と第1のバッファータンク13との間に設けられている。第3の弁V3は、希釈用ガス経路17上に設けられている。希釈用ガス経路17上であって、第1の接続部C1と第2の流量制御装置21との間に設けられている。また、さらに、第4の弁V4が設けられていてもよい。第4の弁V4は、第1の経路15上であって、第2の接続部C2と第3の接続部C3との間に設けられている。ここで、「経路上」とは、要素間を連結する配管、各容器および各バッファータンクの出入口部を含む。経路上の「弁」に替わり、各容器および各バッファータンクの出入口部の弁を使用してもよい。
【0038】
さらに、本実施形態の昇華ガス供給システムは、制御器100を備える。制御器100は、各種弁、各種流量制御装置、各種圧力計、各種ポンプ及び後段のプロセスと接続されていてもよい。例えば、本実施形態の昇華ガス供給システムは、下記のような制御を実行できる。以下の動作は、例えば、制御器100の演算回路が、制御器100の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。制御器100は演算処理部と、制御プログラムを記憶する記憶部とを備えていてもよい。演算処理部としては、例えば、MPU、CPUなどを例示できる。記憶部としては、例えば、メモリなどが例示される。ただし、以下の動作を制御器100で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。
【0039】
(第1の加熱工程)
制御器100は、第1の固体材料S1を収納する第1の容器11を加熱するように第1の加熱部12を制御する。そして、第1の固体材料S1に由来する第1の昇華ガスを生成する。
【0040】
(第1の供給工程)
第1の昇華ガスを第1のバッファータンク13に導入する第1の導入工程を有する。具体的には、制御器100は、第1の弁V1及び第4の弁V4とを開けるように制御する。そして、第1の経路15を通じて、第1の容器11に、第1の昇華ガスを導入する。次いで、第1のバッファータンク13から導出された第1の昇華ガスを後段のプロセスBPへ供給する。この時、制御器100は、第2の弁V2を開けるように、制御する。
【0041】
(第1の希釈工程)
この第1の供給工程において、途中で希釈用ガスが供給される。
第1の希釈工程において、制御器100は、第3の弁V3を開けるように第3の弁V3を制御する。
【0042】
(第1の流量制御工程及び第2の流量制御工程)
制御器100は、後段のプロセスBPが求める第1の昇華ガスの濃度になるよう、第1の流量制御装置と第2の流量制御装置とをそれぞれ制御する。
【0043】
さらに、例えば、本実施形態の昇華ガス供給システムは、起動時、下記のような制御を実行できる。
【0044】
(起動モード)
(1)制御器100の指令により、ポンプ26を稼働させて、第1のバッファータンク13を真空状態(すなわち、実質的な真空状態)にする。
(2)第2の圧力計P2は、第1のバッファータンク13内の圧力を測定する。
(3)第2の圧力計P2の測定値から第1のバッファータンク13内が真空状態になったか否かを制御器100の判定部(不図示)が判定してもよい。
(4)ポンプ26を稼働させる時は、第1の排出経路25のみを開ける。
(5)第1の排出経路25に弁が備わっている場合、その弁を開けるように制御器100が制御する。
(6)第1のバッファータンク13に接続される他の経路の各種弁(V2、V3及びV4)は、閉じた状態になるよう、制御器100によって制御されている。この時、第1の加熱部12は、第1の容器11を加熱してもよい。この場合、第1の固体材料S1から第1の昇華ガスが第1の容器11内において生成される。
(7)第1のバッファータンク13内が、真空状態になったと判定されたとき、制御器100は第1の弁V1及び第4の弁V4を開けるように制御する。この時、不図示の第1の排出経路25及びパージガス経路27の弁は閉じている。そして、第1の容器11に貯留されている第1の昇華ガスは、第1の経路15を通じて、第1のバッファータンク13に供給される。
(8)第2の圧力計P2で測定された圧力が所定の圧力を超えたとき、制御器100は第2の弁V2を開けるように制御する。また制御器100は、第3の弁V3を開けるように制御して、希釈用ガスを第2の経路16に供給できるようにする。
(9)第1の昇華ガスの濃度が、所定の濃度(例えば、後段のプロセスBPが求める濃度)となるように、制御器100は、第1の流量制御装置19及び第2の流量制御装置21とを適宜制御できる。
ここで、希釈用ガスの温度に応じて、混合器22に設けられた混合器加熱部28を制御してもよい。例えば、希釈用ガスの温度が、第1の昇華ガスの温度と比べて低い場合、第1の昇華ガスの温度が低下することが推測される。その結果、第1の昇華ガスが固化する可能性がある。混合器加熱部28によって混合器22を加熱することで、第1の昇華ガスが固化することを防ぐことができる。
【0045】
また、仮に第1の容器11を加熱し続けたとしても、第1の圧力計P1は、所定の圧力に到達しないことがある。ここで、例えば、第1の圧力計P1によって計測された圧力値から制御器に設けられた圧力濃度換算値テーブルに基づいて、第1の昇華ガスの濃度に換算できる。所定の圧力に到達しないとは、第1の容器11における第1の固体材料S1の量が不足していることを意味する。そのとき、例えば、制御器100は、第1の弁V1を閉めるように制御する。そして、第1の容器11を取り外して、第1の固体材料を含む別の容器を取り付けることができる。この場合、第1のバッファータンク13には第1の固体材料に由来する第1の昇華ガスを含むため、別の容器を取り付けた後、第1の弁V1を開けることで、別の容器からの第1の昇華ガスを第1のバッファータンク13に導入することができる。言い換えると、第1の容器11を別の容器に交換するとき、第1のバッファータンク13を真空状態に戻すことなく(つまり、第1のバッファータンク13に残る第1の昇華ガスを排出することなく)、昇華ガス供給システムを動かすことができる。したがって、従来のシステムより昇華ガスの利用率を向上させることができる。
【0046】
ついで、本実施形態の昇華ガス供給システムは、定常運転時、下記のような制御を実行できる。ここでいう定常運転時とは、連続的に、昇華ガスを後段のプロセスBPに供給している状態を意味する。
【0047】
制御器100は、後段のプロセスBPが求める第1の昇華ガスの濃度になるように、第1の流量制御装置19及び第2の流量制御装置21からなる群から選択される少なくとも一つを制御する。後段のプロセスが成膜装置の場合、仮に、定常運転時において成膜の条件を変更したとしても、第1の昇華ガスの濃度を変化させながら連続的に供給することができる。言い換えると、後段のプロセスBPが異なる昇華ガスの濃度を要求した場合であっても、昇華ガス供給システムを一度停止させることなく、後段のプロセスBPへ昇華ガスを供給することができる。
【0048】
ついで、本実施形態の昇華ガス供給システムは、停止制御において、下記のような制御を実行できる。
制御器100は、第2の弁V2と第3の弁V3とを同時に閉めるように、第2の弁V2と第3の弁V3とを制御してもよい。このような制御により、第1のバッファータンク13へ希釈用ガスが流入することを防ぐことができる。また、第2のバッファータンク18に昇華ガスが流入することを防ぐことができる。したがって、第1のバッファータンク13に貯留されている昇華ガス及び2のバッファータンク18に貯留されている希釈用ガスを排出せず、昇華ガス供給システムを再度、開始することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
第2の実施形態で示す昇華ガス供給システムは、図2が示すように、第1の実施形態で示す昇華ガス供給システムに、さらに第2の固体材料S2が収納されている第2の容器31を有する。そして、第2の容器31から生成された第2の昇華ガスは、第1のバッファータンク13に供給できるように構成されている。ここで、この実施形態において、第1の固体材料S1と第2の固体材料S2とは、同じ固体材料で構成されている。第1の実施形態との違いを中心に説明する。
【0050】
第2の容器31は、トレータイプであっても、トレーレスタイプであってもよい。第2の加熱部32は、第2の容器31を加熱することができる。第1の容器31が加熱されることで、第2の固体材料S2から第2の昇華ガスが生成される。第2の加熱部32は、ジャケット式であってもオーブンタイプであってもよい。第2の温度計T2は、第2の加熱部32の温度を測定する。そして、測定された温度に基づいて、第2の加熱部32を制御する。なお、第2の容器31は、第2の容器31内の圧力を測定する第3の圧力計P3を備えていてもよい。
第2の容器31から生じた第2の昇華ガスは、第3の経路33及び第1の経路15を通じて、第1のバッファータンク13に導入される。ここで、第3の経路33は、第1の経路15と第4の接続部C4において接続されている。図2において、第4の接続部C4は、第1の弁V1と第3の接続部C3との間に設けられているが、第1の弁V1と第4の弁V4との間であれば、特に限定されない。ここで、この実施形態における昇華ガス供給方法について説明する。
【0051】
(第2の加熱工程)
制御器100は、第5の弁V5を閉じるように制御する。次いで、制御器100は、第2の固体材料S2を収納する第2の容器31を加熱するように、制御する。そして、第2の固体材料S2に由来する第2の昇華ガスを生成する。
【0052】
(第2の導入工程)
制御器100は、第5の弁V5及び第4の弁V4を開けるように制御する。その後、第2の昇華ガスを第1のバッファータンクに導入する。
【0053】
(第1の切替工程)
第1の実施形態で説明された第1の導入工程を停止する。言い換えると、制御器100は、第1の弁V1を閉じるように制御する。このようにして、第1の導入工程から第2の導入工程へ切り替える。
【0054】
(容器の交換工程)
また第1の切替工程の後、第1の容器11を第1の固体材料を含む別の容器に交換してもよい。したがって、仮に第1の容器11から生成される第1の昇華ガスが減少したとき、第2の容器から第2の昇華ガスを第1のバッファータンク13へ供給できる。ここで、本実施形態の第1の昇華ガスと第2の昇華ガスとは、同じ固体材料に由来する。したがって、第1の導入工程から第2の導入工程に切り替えるにあたり、第1のバッファータンク13から貯留されている昇華ガスを除く必要はない。したがって、従来の供給方法より昇華ガスの利用率を高くすることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
第3の実施形態で示す昇華ガス供給システムは、図3が示すように、第1の実施形態で示す昇華ガス供給システムに、さらに第2の固体材料S2が収納されている第2の容器31を有する。そして、第2の容器31から生成された第2の昇華ガスは、第3のバッファータンク43に供給できるように構成されている。ここで、この実施形態において、第1の固体材料S1と第2の固体材料S2とは、異なる固体材料で構成されている。
【0056】
第2の容器31から生じた第2の昇華ガスは、第4の経路45を通じて、第3のバッファータンク43に導入される。言い換えると、第2の容器31と第3のバッファータンク43とは、第4の経路45を介して接続されている。図3に示すように、第3のバッファータンク43には、第3のバッファータンク用加熱部44が設けられていてもよい。例えば、第3のバッファータンク用加熱部44は、第1のバッファータンク用加熱部44を覆うようなジャケット式であってもよい。第3のバッファータンク43は、第4の圧力計P4を備えていてもよい。第4の圧力計P4は、第3のバッファータンク43内の圧力を測定する。
次いで、貯留された第2の昇華ガスは、第5の経路46を通じて、後段のプロセスBPに供給される。具体的には、図3で示すように第5の経路46は、第1の接続部C1と第1の流量制御装置19との間に設けられた第5の接続部C5と接続されている。なお、第5の接続部C5は、第1の接続部C1と混合器22との間に設けられていてもよい。
本実施形態における各種経路について、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0057】
パージガスが流通する経路は、第6の経路47及び第8の経路49により構成されている。第6の経路47は、第1の経路15上の第3の接続部C3と第4の経路45の第6の接続部C6とに接続されている。さらに、第6の経路47上には、第7の接続部C7が設けられている。この第7の接続部C7は、第8の経路49と接続されている。第8の経路49上、第3の接続部C3と第7の接続部C7との間、そして、第6の接続部C6と第7の接続部C7との間には、それぞれ、第6の弁V6、第7の弁V7及び第8の弁V8が設けられている。
例えば、第1のバッファータンク13及び第1の経路15をパージしたいとき、制御器100は、第8の弁V8及び第2の弁V2を閉じるように制御する。また制御器100は、第4の弁V4、第6の弁V6及び第7の弁V7を開けるように制御する。このようにして、第1のバッファータンク13及び第1の経路15にパージガスを導入することができる。
【0058】
次いで、排出ガス(例えば、昇華ガス)が流通する経路について説明する。排出ガスが流通する経路は、第7の経路48及び第9の経路50により構成されている。第7の経路48は、第1の経路15上の第2の接続部C2と第4の経路45の第8の接続部C8に接続されている。さらに、第7の経路48上には、第9の接続部C9が設けられている。この第9の接続部C9は、第9の経路50と接続されている。第9の経路50上、第2の接続部C2と第9の接続部C9との間、そして、第8の接続部C8と第9の接続部C9との間には、それぞれ、第16の弁V16、第9の弁V9及び第10の弁V10が設けられている。例えば、第1のバッファータンク13及び第1の経路15に貯留されている昇華ガスを排出したいとき、制御器100は、第4の弁V4及び第10の弁V10を閉じるように制御する。また制御器100は、第9の弁V9及び第16の弁V16を開けるように制御する。次いで、ポンプ26を駆動させて、排出ガス(ここでは、昇華ガス)を排出することができる。
【0059】
第5の経路46について説明する。第5の経路46は、第3のバッファータンク43と第5の接続部C5とを接続している。第5の経路46上には、第3の流量制御装置51が設けられている。第4の流量制御装置51として、例えば、マスフローメーターが挙げられる。第4の流量制御装置51は、第2の昇華ガスの流量を制御する。
【0060】
さらに、第5の経路46上には、弁を備えていてもよい。図3が示すように、弁は第3のバッファータンク43と第4の流量制御装置51との間(図3が示す第13の弁)であってもよい。また、弁は第4の流量制御装置51と第5の接続部C5との間(図3が示す第14の弁)に設けられていてもよい。
【0061】
また、第2の経路16上には、第15の弁V15が設けられている。具体的には、図2が示すように、第5接続部C5と第1の流量制御装置19との間に設けられている。
【0062】
ここで、この実施形態における昇華ガス供給方法について説明する。
【0063】
(第2の加熱工程)
制御器100は、第11の弁V11を閉じるように制御する。次いで、制御器100は、第2の固体材料S2を収納する第2の容器31を加熱するように、制御する。そして、第2の固体材料S2に由来する第2の昇華ガスを生成する。
【0064】
(第2の導入工程)
制御器100は、第11の弁V11及び第12の弁V12を開けるように制御する。その後、第2の昇華ガスを第3のバッファータンク43に導入する。
【0065】
(第2の切替工程)
この時、第1の導入工程を停止する。言い換えると、制御器100は、第1の弁V1を閉じるように制御する。このようにして、第1の導入工程から第2の導入工程へ切り替える。
【0066】
(真空パージ工程)
第2の切替工程において、真空パージ工程があってもよい。真空パージ工程は、以下のステップを備える。また、以下のステップは繰り返し行われてもよい。
(1)第3の弁V3、第14の弁V14及び第15の弁V15とを閉めるように制御する。
(2)排ガス経路23に設けられたポンプ(不図示)を駆動させる。ここで、ポンプと排ガス用接続部CEとの間に設けられた弁(不図示)を開ける。そして、第2の経路16の一部を真空状態にする。
(3)排ガス経路23に設けられた弁(不図示)を閉じる。次いで、第3の弁V3を開けて、希釈ガスを流通させる。
(4)第3の弁V3を閉じる。次いで、排ガス経路23に設けられた弁(不図示)を開ける。このようにして、排出ガス経路から希釈用ガスが排出される。
【0067】
したがって、仮に第1の容器11から生成される第1の昇華ガスとは異なる固体材料に由来する昇華ガスを後段のプロセスBPが要求する場合、第2の容器から第2の昇華ガスを後段のプロセスへ供給できる。したがって、昇華ガス供給システムにおいて、後段へ供給する昇華ガスの種類を変える場合であっても、システムを停止させることなく、連続的に昇華ガスを供給することができる。各種切替の際には、配管と混合器の洗浄のために後段のプロセスBPへ送る前にいくらか排出を行ってもよい。また、例えば、第14の弁V14と第15の弁V15とを共に開けるように制御して、第1の昇華ガスと第2の昇華ガスとを混合して、後段のプロセスBPへ供給してもよい。
【0068】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示の一態様は、昇華ガス供給システムに適応できる。
【符号の説明】
【0070】
1 昇華ガス供給システム
11 第1の容器
12 第1の加熱部
13 第1のバッファータンク
14 第1のバッファータンク用加熱部
15 第1の経路
16 第2の経路
17 希釈用ガス経路
C1 第1の接続部
C2 第2の接続部
C3 第3の接続部
18 第2のバッファータンク
19 第1の流量制御装置
21 第2の流量制御装置
22 混合器
V1 第1の弁
V2 第2の弁
V3 第3の弁
23 排ガス経路
24 第3の流量制御装置
25 第1の排出経路
26 ポンプ
27 パージガス経路
28 混合器用加熱部
P1 第1の圧力計
P2 第2の圧力計
T1 第1の温度計
100 制御器
S1 第1の固体材料
BP 後段のプロセス
P3 第3の圧力計
S2 第2の固体材料
T2 第2の温度計
C4 第4の接続部
31 第2の容器
32 第2の加熱部
33 第3の経路
V5 第5の弁
43 第3のバッファータンク
44 第3の加熱部
45 第4の経路
46 第5の経路
47 第6の経路
48 第7の経路
49 第8の経路
50 第9の経路
51 第4の流量制御装置
図1
図2
図3