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特開2023-103627腎機能状態検出システムおよび腎機能状態検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103627
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】腎機能状態検出システムおよび腎機能状態検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
G01N33/497 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004254
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】302031454
【氏名又は名称】東海電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】吉永 孝行
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB22
2G045DA77
(57)【要約】
【課題】 従来とは異なる方法によって対象者の腎機能の状態を検出することができる腎機能状態検出システムおよび腎機能状態検出方法を提供する。
【解決手段】 腎機能の状態としての腎臓の負担のレベルの検出の対象者である検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出する腎機能状態検出システムは、ポリフェノールを含有し検出対象者に摂取される物であるポリフェノール含有摂取物を摂取する前の検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取前測定と、ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取後測定(S123)とを実行し、摂取前測定において測定された、揮発性有機化合物の量と、摂取後測定において測定された、揮発性有機化合物の量とに基づいて、腎臓の負担のレベルを検出する(S124~S127)ことを特徴とする。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎機能の状態である腎機能状態の検出の対象者の前記腎機能状態を検出する腎機能状態検出システムであって、
ポリフェノールを含有し前記対象者に摂取される物であるポリフェノール含有摂取物を摂取する前の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取前測定と、前記ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取後測定とを実行し、前記摂取前測定において測定された、揮発性有機化合物の量と、前記摂取後測定において測定された、揮発性有機化合物の量とに基づいて、前記腎機能状態を検出することを特徴とする腎機能状態検出システム。
【請求項2】
前記腎機能状態は、腎臓の負担のレベルを含むことを特徴とする請求項1に記載の腎機能状態検出システム。
【請求項3】
前記腎機能状態は、腎機能の低下を伴う疾患の種類を含むことを特徴とする請求項1に記載の腎機能状態検出システム。
【請求項4】
腎機能の状態である腎機能状態の検出の対象者の前記腎機能状態を検出する腎機能状態検出方法であって、
ポリフェノールを含有し前記対象者に摂取される物であるポリフェノール含有摂取物を摂取する前の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取前測定と、前記ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取後測定とを実行し、前記摂取前測定において測定された、揮発性有機化合物の量と、前記摂取後測定において測定された、揮発性有機化合物の量とに基づいて、前記腎機能状態を検出することを特徴とする腎機能状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎機能の状態を検出する腎機能状態検出システムおよび腎機能状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腎機能状態検出システムとして、腎機能の状態の検出の対象者の呼気中の、2から20個の炭素原子を有するn-アルカンの含有量に基づいて、対象者の腎機能の状態を検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002-534697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来とは異なる方法によって対象者の腎機能の状態を検出することができる腎機能状態検出システムおよび腎機能状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の腎機能状態検出システムは、腎機能の状態である腎機能状態の検出の対象者の前記腎機能状態を検出する腎機能状態検出システムであって、ポリフェノールを含有し前記対象者に摂取される物であるポリフェノール含有摂取物を摂取する前の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取前測定と、前記ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取後測定とを実行し、前記摂取前測定において測定された、揮発性有機化合物の量と、前記摂取後測定において測定された、揮発性有機化合物の量とに基づいて、前記腎機能状態を検出することを特徴とする。
【0006】
この構成により、本発明の腎機能状態検出システムは、ポリフェノール含有摂取物を摂取する前の対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量と、ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量とに基づいて、対象者の腎機能の状態を検出するので、従来とは異なる方法によって対象者の腎機能の状態を検出することができる。
【0007】
本発明の腎機能状態検出システムにおいて、前記腎機能状態は、腎臓の負担のレベルを含んでも良い。
【0008】
この構成により、本発明の腎機能状態検出システムは、対象者の腎機能の状態として、対象者の腎臓の負担のレベルを検出するので、利便性を向上することができる。
【0009】
本発明の腎機能状態検出システムにおいて、前記腎機能状態は、腎機能の低下を伴う疾患の種類を含んでも良い。
【0010】
この構成により、本発明の腎機能状態検出システムは、対象者の腎機能の状態として、対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出するので、利便性を向上することができる。
【0011】
本発明の腎機能状態検出方法は、腎機能の状態である腎機能状態の検出の対象者の前記腎機能状態を検出する腎機能状態検出方法であって、ポリフェノールを含有し前記対象者に摂取される物であるポリフェノール含有摂取物を摂取する前の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取前測定と、前記ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の前記対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取後測定とを実行し、前記摂取前測定において測定された、揮発性有機化合物の量と、前記摂取後測定において測定された、揮発性有機化合物の量とに基づいて、前記腎機能状態を検出することを特徴とする。
【0012】
この構成により、本発明の腎機能状態検出方法は、ポリフェノール含有摂取物を摂取する前の対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量と、ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量とに基づいて、対象者の腎機能の状態を検出するので、従来とは異なる方法によって対象者の腎機能の状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の腎機能状態検出システムおよび腎機能状態検出方法は、従来とは異なる方法によって対象者の腎機能の状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る腎機能状態検出システムのブロック図である。
図2図1に示す呼気測定器の正面図である。
図3図2に示す呼気測定器のブロック図である。
図4図3に示す増減率情報の一例を示す図である。
図5】(a)マウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量と、腎機能の状態との関係に関する実験結果を示す箱ひげ図の一例である。 (b)マウスの呼気中の揮発性有機化合物Bの含有量と、腎機能の状態との関係に関する実験結果を示す箱ひげ図の一例である。
図6】ポリフェノールの摂取前における呼気中の含有量に対して、ポリフェノールの摂取後における呼気中の含有量が、健常マウスおよび腎機能低下マウスの一方のみで有意に増加または減少する揮発性有機化合物を示す図である。
図7図3に示す正常範囲情報の一例を示す図である。
図8図3に示す腎臓負担レベル検出用情報の一例を示す図である。
図9図1に示すコンピューターのブロック図である。
図10図9に示す呼気分析結果情報の一例を示す図である。
図11】摂取前測定を実行する場合の図3に示す呼気測定器の動作のフローチャートである。
図12】摂取後測定を実行する場合の図3に示す呼気測定器の動作のフローチャートである。
図13図2に示す表示パネルに表示される腎臓負担レベル検出結果画面の一例を示す図である。
図14】腎臓負担レベル検出詳細結果を表示する場合の図9に示すコンピューターの動作のフローチャートである。
図15図9に示す詳細結果表示プログラム用のウィンドウに表示される腎臓負担レベル検出詳細結果画面の一例を示す図である。
図16図9に示す詳細結果表示プログラム用のウィンドウに表示される、化合物A用の過去データ画面の一例を示す図である。
図17】本発明の第2の実施の形態に係る腎機能状態検出システムのブロック図である。
図18図17に示す呼気測定器のブロック図である。
図19図17に示すコンピューターのブロック図である。
図20】摂取後測定を実行する場合の図18に示す呼気測定器の動作のフローチャートである。
図21】腎臓疾患検出詳細結果を表示する場合の図19に示すコンピューターの動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る腎機能状態検出システムの構成について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る腎機能状態検出システム10のブロック図である。
【0018】
図1に示す腎機能状態検出システム10は、医療機関に設置されていて、腎機能の状態の検出の対象者(以下「検出対象者」という。)である患者の腎機能の状態として腎臓の負担のレベルを検出するシステムである。腎機能状態検出システム10は、検出対象者の呼気中の特定の揮発性有機化合物の量を測定する呼気測定器20と、腎臓の負担のレベルの検出の詳細な結果(以下「腎臓負担レベル検出詳細結果」という。)を表示するための例えばPC(Personal Computer)などのコンピューター40とを備えている。
【0019】
呼気測定器20と、コンピューター40とは、有線または無線によって互いに通信可能である。
【0020】
図2は、呼気測定器20の正面図である。
【0021】
図2に示すように、呼気測定器20は、筐体21と、筐体21に設けられて検出対象者の呼気が入れられる呼気入口22と、検出対象者の呼気中の特定の揮発性有機化合物の量の測定を開始するために筐体21に設けられた操作デバイスである測定開始ボタン23と、呼気測定器20の設定やコンピューター40(図1参照。)との連動に使用されるために筐体21に設けられた操作デバイスである操作ボタン24および25と、各種の情報を表示するために筐体21に設けられた例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示パネル26とを備えている。
【0022】
図3は、呼気測定器20のブロック図である。
【0023】
図3に示すように、呼気測定器20は、呼気入口22(図2参照。)から入れられた呼気の圧力(以下「呼気圧」という。)を検出する呼気圧センサー27と、呼気入口22から入れられた呼気中の特定の揮発性有機化合物の量を検出する化合物センサー28と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部29と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリーなどの不揮発性の記憶デバイスである記憶部30と、呼気測定器20全体を制御する制御部31とを備えている。図3に示す構成要素は、全て筐体21(図2参照。)に実装されている。
【0024】
化合物センサー28によって検出される揮発性有機化合物には、例えば、特定の炭化水素が含まれても良いし、特定のアルデヒドが含まれても良い。
【0025】
記憶部30は、検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出するための腎臓負担レベル検出プログラム30aを記憶している。腎臓負担レベル検出プログラム30aは、例えば、呼気測定器20の製造段階で呼気測定器20にインストールされていても良いし、外部の記憶媒体から呼気測定器20に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上から呼気測定器20に追加でインストールされても良い。
【0026】
記憶部30は、ポリフェノールを含有し検出対象者に摂取される物であるポリフェノール含有摂取物の摂取前における、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取前測定において検出された揮発性有機化合物の量に対する、ポリフェノール含有摂取物の摂取後における、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定である摂取後測定において検出された揮発性有機化合物の量の増減率(以下、単に「増減率」という。)を、特定の揮発性有機化合物毎に示す増減率情報30bを記憶可能である。
【0027】
ここで、ポリフェノール含有摂取物としては、例えば、ポリフェノールを含有する食品と、ポリフェノールを含有する医薬品とが存在する。ポリフェノールを含有する食品は、例えば、ブラックベリー、ドライベリーなどのベリー類でも良いし、ポリフェノールを含有するサプリメントでも良いし、コーヒー、紅茶などの飲み物でも良い。ポリフェノール含有摂取物は、摂取した検出対象者の腎臓に影響を与える物である。
【0028】
図4は、増減率情報30bの一例を示す図である。
【0029】
図4に示す増減率情報30bは、揮発性有機化合物毎の増減率と、日付とを含んでいる。図4においては、化合物A、化合物Bおよび化合物Cという3つの揮発性有機化合物と、それらの増減率とが具体的に描かれており、化合物A~C以外の揮発性有機化合物と、それらの増減率とが省略して描かれている。
【0030】
ここで、増減率と、腎機能の状態との関係について説明する。
【0031】
Zhouらの研究によると、例えばレズビラトロールなどのポリフェノールの摂取によって腎機能に改善が見られることが報告されている(Zhou, Y., Lin, S., Zhang, L. & Li, Y. Resveratrol prevents renal lipotoxicity in high-fat diet-treated mouse model through regulating PPAR-α pathway. Mol Cell Biochem 411, 143-150 (2016))。このため、ポリフェノールの代謝が腎臓へ影響を与えていることが示唆される。
【0032】
図5(a)は、マウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量と、腎機能の状態との関係に関する実験結果を示す箱ひげ図の一例である。図5(b)は、マウスの呼気中の揮発性有機化合物Bの含有量と、腎機能の状態との関係に関する実験結果を示す箱ひげ図の一例である。
【0033】
図5に示す箱ひげ図の縦軸の値は、ガスクロマトグラフ-質量分析計で得られたクロマトグラムのピーク面積を計算した値であり、単位はない。
【0034】
図5(a)に示す箱ひげ図は、健常なマウス(以下「健常マウス」という。)の群(以下「健常群」という。)と、糖尿病腎症を誘発し腎機能を低下させたマウス(以下「腎機能低下マウス」という。)の群(以下「腎機能低下群」という。)とのそれぞれに関して、マウスにレズビラトロールを摂取させる直前と、マウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後とにおけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量を示している。図5(a)において、点51は、「健常群のマウスにレズビラトロールを摂取させる直前におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」の外れ値を示している。点52は、「健常群のマウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」の外れ値を示している。
【0035】
図5(a)に示す箱ひげ図に関して、有意水準0.05%でテューキー=クレーマー法の多重比較検定を行って有意差が観測された群間は、「健常群のマウスにレズビラトロールを摂取させる直前におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」および「健常群のマウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」と、「健常群のマウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」および「腎機能低下群のマウスにレズビラトロールを摂取させる直前におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」と、「健常群のマウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」および「腎機能低下群のマウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Aの含有量」との3つである。したがって、図5(a)に示す箱ひげ図によれば、「健常マウスおよび腎機能低下マウスのうち健常マウスのみで、レズビラトロールの摂取によって呼気中の揮発性有機化合物Aの量が有意に増加する。」ということが明らかである。
【0036】
図5(b)に示す箱ひげ図は、健常群と、腎機能低下群とのそれぞれに関して、マウスにレズビラトロールを摂取させる直前と、マウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後とにおけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Bの含有量を示している。
【0037】
図5(b)に示す箱ひげ図に関して、有意水準0.05%でテューキー=クレーマー法の多重比較検定を行って有意差が観測された群間は、「健常群のマウスにレズビラトロールを摂取させる直前におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Bの含有量」および「腎機能低下群のマウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Bの含有量」と、「腎機能低下群のマウスにレズビラトロールを摂取させる直前におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Bの含有量」および「腎機能低下群のマウスにレズビラトロールを摂取させた1時間後におけるマウスの呼気中の揮発性有機化合物Bの含有量」との2つである。したがって、図5(b)に示すグラフによれば、「健常マウスおよび腎機能低下マウスのうち腎機能低下マウスのみで、レズビラトロールの摂取によって呼気中の揮発性有機化合物Bの量が有意に減少する。」ということが明らかである。
【0038】
図6は、ポリフェノールの摂取前における呼気中の含有量に対して、ポリフェノールの摂取後における呼気中の含有量が、健常マウスおよび腎機能低下マウスの一方のみで有意に増加または減少する揮発性有機化合物を示す図である。
【0039】
ポリフェノールの摂取前におけるマウスの呼気中の含有量に対して、ポリフェノールの摂取後におけるマウスの呼気中の含有量が、健常マウスおよび腎機能低下マウスの一方のみで有意に増加または減少する揮発性有機化合物として、マウスを用いた実験によって、図6に示す14種類の揮発性有機化合物が発見された。なお、上述の揮発性有機化合物Aは、「Acetaldehyde」であることが判明している。また、上述の揮発性有機化合物Bは、化合物の同定ができていないが、データベースを用いた化合物の推定によって、「1-Methyl-1,4-cyclohexadiene」、「1,3-Cycloheptadiene」および「(E)-3-Methyl-1,3,5-hexatriene」のいずれかであることが判明している。
【0040】
図3に示すように、記憶部30は、増減率の正常範囲を揮発性有機化合物毎に示す正常範囲情報30cを記憶可能である。
【0041】
図7は、正常範囲情報30cの一例を示す図である。
【0042】
図7においては、化合物A~Cと、それらの増減率の正常範囲とが具体的に描かれており、化合物A~C以外の揮発性有機化合物と、それらの増減率の正常範囲とが省略して描かれている。正常範囲情報30cに示される揮発性有機化合物の種類は、増減率情報30bに示される揮発性有機化合物の種類と同一である。
【0043】
図3に示すように、記憶部30は、検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出するための情報である腎臓負担レベル検出用情報30dを記憶可能である。
【0044】
図8は、腎臓負担レベル検出用情報30dの一例を示す図である。
【0045】
図8に示すように、腎臓負担レベル検出用情報30dは、増減率が正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数と、検出対象者の腎臓の負担のレベルを示す通知文との対応関係を示している情報である。図8に示す腎臓負担レベル検出用情報30dは、増減率情報30bに示される揮発性有機化合物の種類の数が14種類である場合の例である。図8に示す腎臓負担レベル検出用情報30dにおいては、増減率が正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数が0である場合と、検出対象者の腎機能が正常な状態であることを示す「健康的な腎臓です。」という通知文とが対応付けられている。図8に示す腎臓負担レベル検出用情報30dにおいては、増減率が正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数が1~2である場合と、検出対象者の腎機能が少し異常な状態であることを示す「腎臓が頑張っています。腎臓にやさしい食生活を心がけましょう。」という通知文とが対応付けられている。図8に示す腎臓負担レベル検出用情報30dにおいては、増減率が正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数が3~12である場合と、検出対象者の腎機能が異常な状態であることを示す「腎臓に負担がかかっています。医療機関の受診をお勧めいたします。」という通知文とが対応付けられている。図8に示す腎臓負担レベル検出用情報30dにおいては、増減率が正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数が13~14である場合と、検出対象者の腎機能が危険な状態であることを示す「腎臓病の可能性があります。医療機関の受診を強くお勧めいたします。」という通知文とが対応付けられている。
【0046】
図3に示す制御部31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、制御部31のCPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部31のCPUは、記憶部30または制御部31のROMに記憶されているプログラムを実行する。
【0047】
制御部31は、腎臓負担レベル検出プログラム30aを実行することによって、検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出する腎臓負担レベル検出部31aと、コンピューター40に情報を送信する情報送信部31bとを実現する。
【0048】
図9は、コンピューター40のブロック図である。
【0049】
図9に示すように、コンピューター40は、種々の操作が入力される例えばキーボード、マウスなどの操作デバイスである操作部41と、種々の情報を表示する例えばLCDなどの表示デバイスである表示部42と、LAN、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部43と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部44と、コンピューター40全体を制御する制御部45とを備えている。
【0050】
記憶部44は、呼気測定器20(図3参照。)によって実行された、腎臓の負担のレベルの検出の詳細な結果を表示するためのアプリケーションプログラムである詳細結果表示プログラム44aと、電子カルテシステム用のアプリケーションプログラムである電子カルテシステム用プログラム44bとを記憶している。詳細結果表示プログラム44aおよび電子カルテシステム用プログラム44bは、それぞれ、例えば、コンピューター40の製造段階でコンピューター40にインストールされていても良いし、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部の記憶媒体からコンピューター40に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からコンピューター40に追加でインストールされても良い。
【0051】
記憶部44は、検出対象者の呼気の分析の結果を示す呼気分析結果情報44cを記憶可能である。
【0052】
図10は、呼気分析結果情報44cの一例を示す図である。
【0053】
図10に示すように、呼気分析結果情報44cは、患者の識別情報である患者IDと、医師の識別情報である医師IDと、過去の全ての増減率情報と、最新の増減率情報に基づいた通知文と、医療従事者によって入力されたコメントとを患者毎に示している。図10においては、患者IDが「001」である患者のデータが具体的に描かれており、患者IDが「001」以外である患者のデータが省略して描かれている。
【0054】
図9に示すように、記憶部44は、正常範囲情報30c(図7参照。)と同様の正常範囲情報44dと、腎臓負担レベル検出用情報30d(図8参照。)と同様の腎臓負担レベル検出用情報44eとを記憶可能である。
【0055】
記憶部44は、電子カルテのデータを示す電子カルテデータ44fを記憶可能である。
【0056】
制御部45は、例えば、CPUと、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROMと、制御部45のCPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAMとを備えている。制御部45のCPUは、記憶部44または制御部45のROMに記憶されているプログラムを実行する。
【0057】
制御部45は、詳細結果表示プログラム44aを実行することによって、呼気測定器20によって実行された、腎臓の負担のレベルの検出の詳細な結果を表示する詳細結果表示部45aを実現する。
【0058】
制御部45は、電子カルテシステム用プログラム44bを実行することによって、電子カルテシステム45bを実現する。
【0059】
次に、腎機能状態検出システム10の動作について説明する。
【0060】
まず、検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出する場合の呼気測定器20の動作について説明する。
【0061】
呼気測定器20は、摂取前測定と、摂取後測定とを実行することによって、検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出する。以下、摂取前測定を実行する場合の呼気測定器20の動作と、摂取後測定を実行する場合の呼気測定器20の動作とについて説明する。
【0062】
まず、摂取前測定を実行する場合の呼気測定器20の動作について説明する。
【0063】
図11は、摂取前測定を実行する場合の呼気測定器20の動作のフローチャートである。
【0064】
検出対象者は、摂取前測定であることを操作ボタン24および25によって設定してから測定開始ボタン23を押すことによって、摂取前測定の実行を呼気測定器20に指示することができる。呼気測定器20の腎臓負担レベル検出部31aは、摂取前測定の実行が指示されると、図11に示す動作を実行する。
【0065】
図11に示すように、腎臓負担レベル検出部31aは、呼気入口22への呼気の吹き込みを指示するための吹き込み指示画面を表示パネル26に表示する(S101)。したがって、検出対象者は、呼気入口22を咥えて呼気入口22に呼気を入れることができる。
【0066】
腎臓負担レベル検出部31aは、S101の処理の後、呼気入口22に呼気が入れられていると判断するまで、呼気入口22に呼気が入れられているか否かを呼気圧センサー27の検出値に基づいて判断する(S102)。
【0067】
腎臓負担レベル検出部31aは、呼気入口22に呼気が入れられているとS102において判断すると、呼気入口22に入れられた呼気に対する、化合物センサー28による検出を実行する(S103)。
【0068】
腎臓負担レベル検出部31aは、S103の処理の後、ポリフェノール含有摂取物を摂取することを指示するための摂取指示画面を表示パネル26に表示して(S104)、図11に示す動作を終了する。
【0069】
したがって、検出対象者は、ポリフェノール含有摂取物を摂取することができる。ここで、ポリフェノール含有摂取物の種類毎にポリフェノールの含有量が異なる。そのため、ポリフェノール含有摂取物の適正な摂取量は、ポリフェノール含有摂取物の種類毎に予め実験などによって決められている。
【0070】
次に、摂取後測定を実行する場合の呼気測定器20の動作について説明する。
【0071】
図12は、摂取後測定を実行する場合の呼気測定器20の動作のフローチャートである。
【0072】
検出対象者は、ポリフェノール含有摂取物の摂取後の特定のタイミングで、摂取後測定であることを操作ボタン24および25によって設定してから測定開始ボタン23を押すことによって、摂取後測定の実行を呼気測定器20に指示することができる。ここで、一般的に、人間がポリフェノール含有摂取物を摂取すると、摂取者に摂取されたポリフェノール含有摂取物は、2時間以内に、摂取者の体内で吸収されて摂取者の全身を循環すると考えられる。したがって、ポリフェノール含有摂取物の摂取後の特定のタイミングとは、例えば、ポリフェノール含有摂取物を摂取した後、2時間以内の特定の時間が経過したタイミングである。呼気測定器20の腎臓負担レベル検出部31aは、摂取後測定の実行が指示されると、図12に示す動作を実行する。
【0073】
図12に示すように、腎臓負担レベル検出部31aは、呼気入口22への呼気の吹き込みを指示するための吹き込み指示画面を表示パネル26に表示する(S121)。したがって、検出対象者は、呼気入口22を咥えて呼気入口22に呼気を入れることができる。
【0074】
腎臓負担レベル検出部31aは、S121の処理の後、呼気入口22に呼気が入れられていると判断するまで、呼気入口22に呼気が入れられているか否かを呼気圧センサー27の検出値に基づいて判断する(S122)。
【0075】
腎臓負担レベル検出部31aは、呼気入口22に呼気が入れられているとS122において判断すると、呼気入口22に入れられた呼気に対する、化合物センサー28による検出を実行する(S123)。
【0076】
腎臓負担レベル検出部31aは、S123の処理の後、S103において検出された量に対する、S123において検出された量の増減率を、特定の揮発性有機化合物毎に算出する(S124)。
【0077】
腎臓負担レベル検出部31aは、S124の処理の後、S124において算出した増減率を現在の日付とともに増減率情報30bに書き込む(S125)。
【0078】
腎臓負担レベル検出部31aは、S125の処理の後、S124において算出した増減率が正常範囲情報30cに示す正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数を算出する(S126)。
【0079】
次いで、腎臓負担レベル検出部31aは、S126において算出した数に腎臓負担レベル検出用情報30dにおいて対応する通知文を特定する(S127)。
【0080】
腎臓負担レベル検出部31aは、S127の処理の後、検出対象者の腎臓の負担のレベルの検出の結果を示す腎臓負担レベル検出結果画面60(図13参照。)を表示パネル26に表示する(S128)。
【0081】
図13は、表示パネル26に表示される腎臓負担レベル検出結果画面60の一例を示す図である。
【0082】
図13に示す腎臓負担レベル検出結果画面60は、S127において特定された通知文を表示する検出結果欄61を含んでいる。
【0083】
図12に示すように、腎臓負担レベル検出部31aは、S128の処理の後、図12に示す動作を終了する。
【0084】
次に、腎臓負担レベル検出詳細結果を表示する場合のコンピューター40の動作について説明する。
【0085】
医療従事者は、コンピューター40との連動を操作ボタン24および25を介して呼気測定器20に指示することができる。呼気測定器20の情報送信部31bは、コンピューター40との連動が指示されると、増減率情報30bと同一の増減率情報をコンピューター40に送信する。コンピューター40の詳細結果表示部45aは、呼気測定器20から送信されてきた増減率情報を受信すると、図14に示す動作を実行する。
【0086】
図14は、腎臓負担レベル検出詳細結果を表示する場合のコンピューター40の動作のフローチャートである。
【0087】
図14に示すように、詳細結果表示部45aは、呼気測定器20から受信した増減率情報を、医療従事者によって操作部41を介して指定された患者(以下「対象患者」という。)の増減率情報として呼気分析結果情報44cに書き込む(S141)。
【0088】
詳細結果表示部45aは、S141の処理の後、呼気分析結果情報44cにおける対象患者の最新の増減率情報における増減率が正常範囲情報44dに示す正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数を算出する(S142)。
【0089】
次いで、詳細結果表示部45aは、S142において算出した数に腎臓負担レベル検出用情報44eにおいて対応する通知文を特定する(S143)。
【0090】
詳細結果表示部45aは、S143の処理の後、対象患者の腎臓負担レベル検出詳細結果を示す腎臓負担レベル検出詳細結果画面70(図15参照。)を表示部42における詳細結果表示プログラム44a用のウィンドウに表示する(S144)。
【0091】
図15は、詳細結果表示プログラム44a用のウィンドウに表示される腎臓負担レベル検出詳細結果画面70の一例を示す図である。
【0092】
図15に示す腎臓負担レベル検出詳細結果画面70は、対象患者の患者IDを表示する患者ID欄71と、患者ID欄71に示される患者IDで特定される対象患者の担当の医師の医師IDを表示する医師ID欄72と、S144において特定された通知文を表示する腎臓負担レベル検出結果欄73と、対象患者の呼気分析結果情報44cにおける最新の増減率情報における増減率を揮発性有機化合物毎に示す最新増減率欄74と、正常範囲情報44dに示される正常範囲を揮発性有機化合物毎に示す正常範囲欄75と、対象患者の呼気分析結果情報44cにおける最新の1つ前の増減率情報における増減率を揮発性有機化合物毎に示す前回増減率欄76と、対象患者の呼気分析結果情報44cにおける過去の増減率を示す過去データ画面を表示するために揮発性有機化合物毎に設けられる過去データ閲覧ボタン77と、操作部41を介して入力されたコメントを示すコメント欄78と、呼気分析結果情報44cを電子カルテに出力するための出力ボタン79とを含んでいる。
【0093】
最新増減率欄74は、接種前測定において検出された量が100として表示されるとともに、接種前測定において検出された量を100とした場合の接種後測定において検出された量と、増減率とが表示される。最新増減率欄74において、正常範囲情報44dに示される正常範囲外である増減率は、太字で示されている。図15に示す最新増減率欄74においては、化合物A~Cに関する情報が具体的に描かれており、化合物A~C以外の揮発性有機化合物に関する情報が省略して描かれている。
【0094】
図15に示す正常範囲欄75においては、化合物A~Cに関する情報が具体的に描かれており、化合物A~C以外の揮発性有機化合物に関する情報が省略して描かれている。
【0095】
前回増減率欄76において、正常範囲情報44dに示される正常範囲外である増減率は、太字で示されている。図15に示す前回増減率欄76においては、化合物A~Cに関する情報が具体的に描かれており、化合物A~C以外の揮発性有機化合物に関する情報が省略して描かれている。
【0096】
詳細結果表示部45aは、操作部41を介してコメント欄78にコメントが入力されると、コメント欄78に入力されたコメントを呼気分析結果情報44cに書き込む。
【0097】
腎臓負担レベル検出詳細結果画面70において、例えば、化合物Aは、正常範囲情報44dに示される正常範囲が-10%以上+10%以下であり、最新の増減率情報における増減率が-35%であって正常範囲外であり、最新の1つ前の増減率情報における増減率が-30%であって正常範囲外である。
【0098】
図16は、詳細結果表示プログラム44a用のウィンドウに表示される、化合物A用の過去データ画面80の一例を示す図である。
【0099】
詳細結果表示部45aは、腎臓負担レベル検出詳細結果画面70において化合物A用の過去データ閲覧ボタン77が押された場合に、化合物A用の過去データ画面80(図16参照。)を表示する。化合物A用の過去データ画面80は、腎臓負担レベル検出詳細結果画面70が表示されるウィンドウとは別のウィンドウに表示される。以上においては、腎臓負担レベル検出詳細結果画面70において化合物A用の過去データ閲覧ボタン77が押された場合について説明したが、腎臓負担レベル検出詳細結果画面70において化合物A以外の揮発性有機化合物用の過去データ閲覧ボタン77が押された場合についても同様である。
【0100】
詳細結果表示部45aは、腎臓負担レベル検出詳細結果画面70において出力ボタン79が押された場合、対象患者の呼気分析結果情報44cを電子カルテシステム45bに出力する。電子カルテシステム45bは、詳細結果表示部45aから対象患者の呼気分析結果情報44cが入力されると、入力された呼気分析結果情報44cを電子カルテデータ44fに書き込む。
【0101】
図14に示すように、詳細結果表示部45aは、S144の処理の後、図14に示す動作を終了する。
【0102】
以上に説明したように、腎機能状態検出システム10は、ポリフェノール含有摂取物を摂取する前の検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量と、ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量とに基づいて、検出対象者の腎機能の状態として、検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出する(S124~S127、および、S142~S143)ので、従来とは異なる方法によって検出対象者の腎機能の状態を検出することができる。
【0103】
腎機能状態検出システム10は、検出対象者の腎機能の状態として、検出対象者の腎臓の負担のレベルを検出する(S127およびS143)ので、利便性を向上することができる。
【0104】
腎機能状態検出システム10は、検出対象者が容易に入手可能であるポリフェノール含有摂取物が使用されることができるので、利便性を向上することができる。
【0105】
摂取前測定が実行される場所と、摂取後測定が実行される場所とが同一である場合に、摂取前測定における検出対象者の周辺の大気の状態と、摂取後測定における検出対象者の周辺の大気の状態とに通常は変化が生じ難いので、摂取前測定における、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量と、摂取後測定における、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量とにおいて、検出対象者の周辺の大気に起因する揮発性有機化合物の量に通常は変化が生じ難い。したがって、腎機能状態検出システム10は、摂取前測定が実行される場所と、摂取後測定が実行される場所とが同一である場合に、検出対象者の腎機能の状態の検出の精度を向上することができるし、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定の場所の自由度を向上することができる。
【0106】
腎機能状態検出システム10は、検出対象者の腎機能の状態の指標とする、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物として、検出対象者の食生活に影響を受け難い揮発性有機化合物が採用されることによって、検出対象者の腎機能の状態の検出の精度を向上することができる。
【0107】
呼気測定器20の腎臓負担レベル検出部31aは、本実施の形態において、揮発性有機化合物毎に増減率を算出し(S124)、S124において算出した増減率が正常範囲情報30cに示す正常範囲外である揮発性有機化合物の種類の数を算出し(S126)、S126において算出した数に腎臓負担レベル検出用情報30dにおいて対応する通知文を特定する(S127)ことによって、腎臓の負担のレベルを検出する。しかしながら、腎臓負担レベル検出部31aは、この方法以外の方法によって、腎臓の負担のレベルを検出しても良い。例えば、腎臓負担レベル検出部31aは、接種前測定において検出された揮発性有機化合物毎の量と、接種後測定において検出された揮発性有機化合物毎の量とを入力データとし、腎臓の負担のレベルを正解データとする大量の学習データを用いた機械学習によって構築されたモデルを利用して、接種前測定において検出された揮発性有機化合物毎の量と、接種後測定において検出された揮発性有機化合物毎の量とに基づいて、腎臓の負担のレベルを検出しても良い。以上においては、呼気測定器20の腎臓負担レベル検出部31aについて説明しているが、コンピューター40の詳細結果表示部45aについても同様である。
【0108】
(第2の実施の形態)
まず、本発明の第2の実施の形態に係る腎機能状態検出システムの構成について説明する。
【0109】
図17は、本実施の形態に係る腎機能状態検出システム210のブロック図である。
【0110】
図17に示す腎機能状態検出システム210は、医療機関に設置されていて検出対象者である患者の腎機能の状態として腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出するシステムである。腎機能状態検出システム210は、検出対象者の呼気中の特定の揮発性有機化合物の量を測定する呼気測定器220と、腎機能の低下を伴う疾患の種類の検出の詳細な結果(以下「腎臓疾患検出詳細結果」という。)を表示するための例えばPCなどのコンピューター240とを備えている。
【0111】
呼気測定器220と、コンピューター240とは、有線または無線によって互いに通信可能である。
【0112】
図18は、呼気測定器220のブロック図である。
【0113】
呼気測定器220の構成は、以下に説明する構成を除いて、第1の実施の形態に係る呼気測定器20(図2参照。)の構成と同様である。呼気測定器220の構成要素のうち、呼気測定器20の構成要素と同様の構成要素については、呼気測定器20の構成要素と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0114】
図18に示すように、呼気測定器220は、呼気測定器20と異なり、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出するための腎臓疾患検出プログラム230aを、腎臓負担レベル検出プログラム30a(図3参照。)に代えて記憶部30に記憶している。
【0115】
呼気測定器220は、呼気測定器20と異なり、正常範囲情報30c(図3参照。)を記憶部30に記憶していない。
【0116】
ここで、腎機能の低下を伴う疾患の種類と、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物毎の増減率のパターンとの関係について説明する。
【0117】
Wang,C.らの研究らの研究によると、腎機能の低下を伴う疾患の種類の違いによって、生成される代謝成分の産生量が異なることが明らかにされている(Wang, C., et al. Volatile Organic Metabolites Identify Patients with Mesangial Proliferative Glomerulonephritis, IgA Nephropathy and Normal Controls. Sci Rep 5, 14744 (2015).)。したがって、腎機能の低下を伴う疾患の種類と、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物毎の増減率のパターンとに関連があることが考えられる。
【0118】
呼気測定器220は、呼気測定器20と異なり、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出するための情報である腎臓疾患検出用情報230bを、腎臓負担レベル検出用情報30d(図3参照。)に代えて記憶部30に記憶している。腎臓疾患検出用情報230bは、揮発性有機化合物毎の増減率のパターンと、腎機能の低下を伴う疾患の種類との対応関係を示している情報である。腎臓疾患検出用情報230bは、例えば実験の結果などに基づいて決定される。腎臓疾患検出用情報230bに示される疾患としては、例えば、糖尿病腎症、糸球体炎症を伴う他の腎疾患、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、ネフローゼ症候群などが存在する。
【0119】
制御部31は、腎臓疾患検出プログラム230aを実行することによって、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出する腎臓疾患検出部231aと、コンピューター240に情報を送信する情報送信部31bとを実現する。
【0120】
図19は、コンピューター240のブロック図である。
【0121】
コンピューター240の構成は、以下に説明する構成を除いて、第1の実施の形態に係るコンピューター40(図9参照。)の構成と同様である。コンピューター240の構成要素のうち、コンピューター40の構成要素と同様の構成要素については、コンピューター40の構成要素と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0122】
図19に示すように、コンピューター240は、コンピューター40と異なり、呼気測定器220によって実行された、腎臓疾患検出詳細結果を表示するためのアプリケーションプログラムである詳細結果表示プログラム244aを、詳細結果表示プログラム44a(図9参照。)に代えて記憶部44に記憶している。
【0123】
コンピューター240は、コンピューター40と異なり、検出対象者の呼気の分析の結果を示す呼気分析結果情報244bを、呼気分析結果情報44c(図9参照。)に代えて記憶部44に記憶している。呼気分析結果情報244bの構成は、最新の増減率情報に基づいた、腎機能の低下を伴う疾患の種類を、最新の増減率情報に基づいた通知文に代えて、呼気分析結果情報44c(図10参照。)が備えた構成と同様である。
【0124】
コンピューター240は、コンピューター40と異なり、正常範囲情報44d(図9参照。)を記憶部44に記憶していない。
【0125】
コンピューター240は、コンピューター40と異なり、腎臓疾患検出用情報230b(図18参照。)と同様の腎臓疾患検出用情報244cを、腎臓負担レベル検出用情報44e(図9参照。)に代えて記憶部44に記憶している。
【0126】
制御部45は、詳細結果表示プログラム244aを実行することによって、呼気測定器220によって実行された、腎機能の低下を伴う疾患の種類の検出の詳細な結果を表示する詳細結果表示部245aを実現する。
【0127】
次に、腎機能状態検出システム210の動作について説明する。
【0128】
まず、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出する場合の呼気測定器220の動作について説明する。
【0129】
呼気測定器220は、摂取前測定と、摂取後測定とを実行することによって、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出する。以下、摂取前測定を実行する場合の呼気測定器220の動作と、摂取後測定を実行する場合の呼気測定器220の動作とについて説明する。
【0130】
まず、摂取前測定を実行する場合の呼気測定器220の動作について説明する。
【0131】
摂取前測定を実行する場合の呼気測定器220の腎臓疾患検出部231aの動作は、摂取前測定を実行する場合の呼気測定器20の腎臓負担レベル検出部31aの動作と同様である。
【0132】
次に、摂取後測定を実行する場合の呼気測定器220の動作について説明する。
【0133】
図20は、摂取後測定を実行する場合の呼気測定器220の動作のフローチャートである。
【0134】
検出対象者は、ポリフェノール含有摂取物の摂取後の特定のタイミングで、摂取後測定であることを操作ボタン24および25によって設定してから測定開始ボタン23を押すことによって、摂取後測定の実行を呼気測定器220に指示することができる。ここで、ポリフェノール含有摂取物の摂取後の特定のタイミングとは、例えば、ポリフェノール含有摂取物を摂取した後、2時間以内の特定の時間が経過したタイミングである。呼気測定器220の腎臓疾患検出部231aは、摂取後測定の実行が指示されると、図20に示す動作を実行する。
【0135】
図20に示すように、腎臓疾患検出部231aは、S121~S125の処理と同様のS321~S325の処理を実行する。
【0136】
腎臓疾患検出部231aは、S325の処理の後、S324において算出した、揮発性有機化合物毎の増減率のパターンに、腎臓疾患検出用情報230bにおいて対応付けられている、腎機能の低下を伴う疾患の種類を特定する(S326)。なお、腎臓疾患検出部231aは、S324において算出した、揮発性有機化合物毎の増減率のパターンに、腎臓疾患検出用情報230bにおいて対応付けられている、腎機能の低下を伴う疾患の種類が存在しない場合、腎機能の低下を伴う疾患の種類として「無し」をS326において特定する。
【0137】
腎臓疾患検出部231aは、S326の処理の後、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類の検出の結果を示す腎臓疾患検出結果画面を表示パネル26に表示する(S327)。腎臓疾患検出結果画面の構成は、S326において特定された、腎機能の低下を伴う疾患の種類を表示する腎臓疾患検出結果欄を、検出結果欄61(図13参照)に代えて腎臓負担レベル検出結果画面60(図13参照)が備えた構成と同様である。
【0138】
腎臓疾患検出部231aは、S327の処理の後、図20に示す動作を終了する。
【0139】
次に、腎臓疾患検出詳細結果を表示する場合のコンピューター240の動作について説明する。
【0140】
医療従事者は、コンピューター240との連動を操作ボタン24および25を介して呼気測定器220に指示することができる。呼気測定器220の情報送信部31bは、コンピューター240との連動が指示されると、増減率情報30bと同一の増減率情報をコンピューター240に送信する。コンピューター240の詳細結果表示部245aは、呼気測定器220から送信されてきた増減率情報を受信すると、図21に示す動作を実行する。
【0141】
図21は、腎臓疾患検出詳細結果を表示する場合のコンピューター240の動作のフローチャートである。
【0142】
図21に示すように、詳細結果表示部245aは、呼気測定器220から受信した増減率情報を、医療従事者によって操作部41を介して指定された患者(以下「対象患者」という。)の増減率情報として呼気分析結果情報244bに書き込む(S341)。
【0143】
詳細結果表示部245aは、S341の処理の後、呼気分析結果情報244bにおける対象患者の最新の増減率情報における、揮発性有機化合物毎の増減率のパターンに、腎臓疾患検出用情報244cにおいて対応付けられている、腎機能の低下を伴う疾患の種類を特定する(S342)。なお、詳細結果表示部245aは、呼気分析結果情報244bにおける対象患者の最新の増減率情報における、揮発性有機化合物毎の増減率のパターンに、腎臓疾患検出用情報244cにおいて対応付けられている、腎機能の低下を伴う疾患の種類が存在しない場合、腎機能の低下を伴う疾患の種類として「無し」をS342において特定する。
【0144】
詳細結果表示部245aは、S342の処理の後、対象患者の腎臓疾患検出詳細結果を示す腎臓疾患検出詳細結果画面を表示部42における詳細結果表示プログラム244a用のウィンドウに表示する(S343)。腎臓疾患検出詳細結果画面の構成は、S342において特定された、腎機能の低下を伴う疾患の種類を表示する腎臓疾患検出結果欄を、腎臓負担レベル検出結果欄73(図15参照。)に代えて腎臓負担レベル検出詳細結果画面70(図15参照。)が備えた構成と同様である。
【0145】
詳細結果表示部245aは、S343の処理の後、図21に示す動作を終了する。
【0146】
以上に説明したように、腎機能状態検出システム210は、ポリフェノール含有摂取物を摂取する前の対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量と、ポリフェノール含有摂取物を摂取した後の対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量とに基づいて、対象者の腎機能の状態として、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出する(S324~S326、および、S342)ので、従来とは異なる方法によって対象者の腎機能の状態を検出することができる。
【0147】
腎機能状態検出システム210は、対象者の腎機能の状態として、検出対象者の腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出する(S326、および、S342)ので、利便性を向上することができる。
【0148】
腎機能状態検出システム210は、検出対象者が容易に入手可能であるポリフェノール含有摂取物が使用されることができるので、利便性を向上することができる。
【0149】
摂取前測定が実行される場所と、摂取後測定が実行される場所とが同一である場合に、摂取前測定における検出対象者の周辺の大気の状態と、摂取後測定における検出対象者の周辺の大気の状態とに通常は変化が生じ難いので、摂取前測定における、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量と、摂取後測定における、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量とにおいて、検出対象者の周辺の大気に起因する揮発性有機化合物の量に通常は変化が生じ難い。したがって、腎機能状態検出システム210は、摂取前測定が実行される場所と、摂取後測定が実行される場所とが同一である場合に、検出対象者の腎機能の状態の検出の精度を向上することができるし、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物の量の測定の場所の自由度を向上することができる。
【0150】
腎機能状態検出システム210は、検出対象者の腎機能の状態の指標とする、検出対象者の呼気中の揮発性有機化合物として、検出対象者の食生活に影響を受け難い揮発性有機化合物が採用されることによって、検出対象者の腎機能の状態の検出の精度を向上することができる。
【0151】
呼気測定器220の腎臓疾患検出部231aは、本実施の形態において、揮発性有機化合物毎に増減率を算出し(S324)、S324において算出した、揮発性有機化合物毎の増減率のパターンに、腎臓疾患検出用情報230bにおいて対応付けられている、腎機能の低下を伴う疾患の種類を特定する(S326)ことによって、腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出する。しかしながら、腎臓疾患検出部231aは、この方法以外の方法によって、腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出しても良い。例えば、腎臓疾患検出部231aは、接種前測定において検出された揮発性有機化合物毎の量と、接種後測定において検出された揮発性有機化合物毎の量とを入力データとし、腎機能の低下を伴う疾患の種類を正解データとする大量の学習データを用いた機械学習によって構築されたモデルを利用して、接種前測定において検出された揮発性有機化合物毎の量と、接種後測定において検出された揮発性有機化合物毎の量とに基づいて、腎機能の低下を伴う疾患の種類を検出しても良い。以上においては、呼気測定器220の腎臓疾患検出部231aについて説明しているが、コンピューター240の詳細結果表示部245aについても同様である。
【0152】
腎機能状態検出システムは、上述の各実施の形態において、医療機関に設置されることが想定されている。したがって、呼気測定器と、コンピューターとの連動は、医療従事者によって指示される。しかしながら、腎機能状態検出システムは、医療機関に設置されていなくても良い。例えば、腎機能状態検出システムは、検出対象者によって所有されていても良い。腎機能状態検出システムが検出対象者によって所有されている場合、呼気測定器と、コンピューターとの連動は、検出対象者によって指示されても良く、検出対象者は、検出対象者自身の腎機能の状態の検出の詳細な結果をコンピューター経由で認識することが可能である。
【0153】
腎機能状態検出システムは、上述の各実施の形態において、呼気測定器およびコンピューターを備えている。しかしながら、腎機能状態検出システムは、コンピューターを備えずに呼気測定器のみで構成されても良い。
【0154】
上述の各実施の形態においては、検出対象者の呼気が呼気入口経由で呼気測定器に直接入れられる例について説明している。しかしながら、検出対象者の呼気は、呼気捕集器によって捕集された後、呼気捕集器から呼気入口経由で呼気測定器に入れられても良い。
【0155】
呼気測定器は、上述の各実施の形態において、化合物センサーが筐体の内部に収納されている。しかしながら、呼気測定器は、化合物センサーが筐体の外部に配置されていても良い。例えば、化合物センサーは、検出対象者の体内に留置される生体内留置型センサーでも良い。生体内留置型センサーは、例えば、検出対象者の口蓋に貼り付けられるセンサーでも良いし、検出対象者の上気道に貼り付けられるセンサーでも良いし、検出対象者に装着される義歯に内蔵されるセンサーでも良い。化合物センサーが生体内留置型センサーである場合、呼気測定器の制御部は、例えば、無線によって化合物センサーと通信しても良い。
【符号の説明】
【0156】
10 腎機能状態検出システム
210 腎機能状態検出システム
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