(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103653
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】法面形成用ブロック及び法面構造及び治水構造
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20230720BHJP
E02D 29/02 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
E02D29/02 303
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004292
(22)【出願日】2022-01-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】598108364
【氏名又は名称】キッコウ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉村 隆顕
【テーマコード(参考)】
2D044
2D048
【Fターム(参考)】
2D044DB53
2D048AA23
(57)【要約】
【課題】傾斜面を強固に保護することができ、法面形成用ブロック自体の強度を保ちつつ軽量化できる法面形成用ブロックを提供する。
【解決手段】法面を形成するために用いられるブロック成型体2であって、このブロック成型体2は、法面の表面をなす板状の表面部3と、この表面部3に対向して配置される背面部4と、表面部3と背面部4の間に介設されてこれらを一体化する少なくとも2の連結部5と、を備え、表面部3及び背面部4は、ブロック成型体2上に他のブロック成型体2を積み重ねるための載置面3a、4aを備え、隣り合う連結部5は高低差を有し、一方の連結部5は表面部3の鉛直方向中心位置よりも鉛直上方寄りに配設され、他方の連結部5’は表面部3の鉛直方向中心位置よりも鉛直下方寄りに配設されている、法面形成用ブロック1Aによる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面を形成するために用いられるブロック成型体であって、このブロック成型体は、
前記法面の表面をなす板状の表面部と、
前記表面部に対向して配置される背面部と、
前記表面部と前記背面部の間に介設されてこれらを一体化する少なくとも2の連結部と、を備え、
前記表面部及び前記背面部は、前記ブロック成型体上に他のブロック成型体を積み重ねるための載置面を備え、
隣り合う前記連結部は高低差を有し、一方の前記連結部は前記表面部の鉛直方向中心位置よりも鉛直上方寄りに配設され、他方の前記連結部は前記表面部の鉛直方向中心位置よりも鉛直下方寄りに配設されている、ことを特徴とする法面形成用ブロック。
【請求項2】
前記ブロック成型体は、前記連結部を3備え、
前記ブロック成型体を正面側から透視した際に、中央に配設される前記連結部が前記一方の前記連結部であり、かつ左右側縁寄りに配設される2つの前記連結部が前記他方の前記連結部であり、
前記ブロック成型体を正面側から見た際に、鉛直方向軸に対して線対称をなしている、ことを特徴とする請求項1に記載の法面形成用ブロック。
【請求項3】
前記表面部は、
水平材と垂直材からなる格子状をなし、
前記表面部の背面側において、前記垂直材は前記水平材よりも突出している、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の法面形成用ブロック。
【請求項4】
設置面上に直列状に並設される複数の請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の法面形成用ブロックからなる法面形成用ブロック群と、
前記法面形成用ブロック群の前記表面部と前記背面部の間に収容される充填物と、を備え、
前記法面形成用ブロック群及び前記充填物からなる層を鉛直方向に複数備えている、ことを特徴とする法面構造。
【請求項5】
前記法面形成用ブロックの前記表面部は、前記ブロック成型体をその側面から見た際に、前記背面部側に凹むように屈曲又は湾曲している、ことを特徴とする請求項4に記載の法面構造。
【請求項6】
前記表面部は、
水平材と垂直材からなる格子状をなし、
前記表面部の表面側において、前記水平材は前記垂直材よりも突出している、ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の法面構造。
【請求項7】
前記法面構造において鉛直方向最下に配される層を構成する前記法面形成用ブロックは、前記表面部の表面側に突設される洗堀防止構造を備えている、ことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の法面構造。
【請求項8】
躯体の側面に請求項4に記載の法面構造を備えている、ことを特徴とする治水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜面を強固に保護することができ、法面形成用ブロック自体の強度を保ちつつ軽量化できる法面形成用ブロック及びそれを用いてなる法面構造及び治水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、傾斜した法面を保護するための様々な形態の法面形成用ブロックが発明され使用されている。
具体的には、例えば、特開2017-145681号公報(特許文献1)の「擁壁及びその構築方法」、特開2006-37365号公報(特許文献2)の「擁壁用ブロック及び擁壁」、特開2002-327444号公報(特許文献3)の「土留用コンクリートブロック」、特開2002-227224号公報(特許文献4)の「土留用コンクリートブロックの設置法」、特開2001-348890号公報(特許文献5)の「擁壁ブロック」、及び、特開2000-96586号公報(特許文献6)の「開口部隠ぺい用中空ブロック体及びそのブロック体の組積方法」等が知られている。
なお、本願発明者は、過去に本発明と同じ技術分野に属する発明として、特開2000-54344号公報(特許文献7)、特開2004-324398号公報(特許文献8)、特開2014-20013号公報(特許文献9)、特開2015-135024号公報(特許文献10)、特開2018-21342(特許文献11)、特開2020-122375(特許文献12)を発明している。
【0003】
本願発明者による特許文献12に開示される発明によれば、法面形成用ブロックを複数の組立用パーツにより構成することで、法面形成用ブロックの製造、保管及び搬送を容易にしつつ、現場における設置作業も容易にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-145681号公報
【特許文献2】特開2006-37365号公報
【特許文献3】特開2002-327444号公報
【特許文献4】特開2002-227224号公報
【特許文献5】特開2001-348890号公報
【特許文献6】特開2000-96586号公報
【特許文献7】特開2000-54344号公報
【特許文献8】特開2004-324398号公報
【特許文献9】特開2014-20013号公報
【特許文献10】特開2015-135024号公報
【特許文献11】特開2018-21342号公報
【特許文献12】特開2020-122375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その一方で、特許文献12に開示される法面形成用ブロックを水平方向に直列状に並設してなる法面形成用ブロック群からなる層を、鉛直方向に複数層積み重ねて法面構造を形成する場合、任意の層の法面形成用ブロック群の荷重は、その直下に配される層の法面形成用ブロック群及びその空隙に充填される充填物により支持される(特許文献12中の
図9及び
図10を参照)。
そして、特許文献12に開示される法面形成用ブロックを用いる場合は、法面形成用ブロック群の空隙に充填される充填物の充填度合いが作業者毎に微妙に異なるため、法面形成用ブロック群等からなる層を鉛直方向に複数層積み重ねて法面構造を形成した場合に、その高さを当初設計値と一致させることが難しいという課題を有していた。
また、特許文献12に開示される法面形成用ブロックを用いて法面構造を形成した場合は、時間の経過に伴って法面形成用ブロック群の空隙に充填される充填物が締め固まることによってもその高さが変化する可能性があった。
【0006】
このような事情に鑑み本願発明者は、法面形成用ブロック群からなる層を鉛直方向に複数層積み重ねて法面構造を形成する際の高さを、当初設計値に一致させるべく、また法面構造形成後の充填物の締め固まりによる不可避な法面構造の高さの変化を防止するべく、法面形成用ブロックを鉛直方向に積み重ねる際に、上層側の法面形成用ブロックの荷重を全て、下層側の法面形成用ブロックで受け止めることを考えた。
つまり、本願発明者は、法面形成用ブロックを鉛直方向に積み重ねる際に、所望の法面形成用ブロックの表面ブロック上に、他の法面形成用ブロックの表面ブロックを、また所望の法面形成用ブロックの背面ブロック上に他の法面形成用ブロックの背面ブロックを載置して、これらを積層することを考えた。
ところが、法面形成用ブロックの表面ブロック同士又は背面ブロック同士を2層以上積み重ねる際の荷重に耐えうるよう法面形成用ブロックの各パーツを設計すると、表面ブロック及び背面ブロックを鉄筋コンクリート造としてもこれらをかなり肉厚に設計する必要があった。
この場合、法面形成用ブロックが大型化及び重量化してその搬送にコストが嵩むことが予想され、費用対効果の観点から実用的でないという別の課題が生じていた。
【0007】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、傾斜面を強固に保護することができ、法面形成用ブロック自体の強度を保ちつつ軽量化できる法面形成用ブロック及びそれを用いてなる法面構造及び治水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため第1の発明である法面形成用ブロックは、法面を形成するために用いられるブロック成型体であって、このブロック成型体は、法面の表面をなす板状の表面部と、この表面部に対向して配置される背面部と、表面部と背面部の間に介設されてこれらを一体化する少なくとも2の連結部と、を備え、表面部及び背面部は、このブロック成型体上に他のブロック成型体を積み重ねるための載置面を備え、隣り合う連結部は高低差を有し、一方の連結部は表面部の鉛直方向中心位置よりも鉛直上方寄りに配設され、他方の連結部は表面部の鉛直方向中心位置よりも鉛直下方寄りに配設されている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明において、表面部は法面の表面を被覆して、法面を保護するという作用を有する。また、連結部は、表面部と背面部をつないで一体化するという作用を有する。さらに、背面部及び連結部は、ぐり等の固形物、あるいは土砂又は土石、あるいはこれらから選択される2種類以上の組合せからなる充填物中に埋設されて、表面部を法面の所望の位置に固定しておくためのアンカーとして作用する。
また、表面部に設けられる載置面は、このブロック成型体上に他のブロック成型体を積み重ねる際に、他のブロック成型体の表面部を支持するという作用を有する。さらに、背面部に設けられる載置面は、このブロック成型体上に他のブロック成型体を積み重ねる際に、他のブロック成型体の背面部を支持するという作用を有する。
加えて、第1の発明において隣り合う2つの連結部のうち、鉛直上方側に配される連結部(一方の連結部)は、表面部の鉛直上方側を補強するという作用を有する。また、鉛直下方側に配される連結部(他方の連結部)は、表面部の鉛直下方側を補強するという作用を有する。
そして、第1の発明によれば、表面部の鉛直方向中心位置に連結部を集中して配置する場合に比べて、表面部の厚みを相対的に小さくできる。
これにより、第1の発明のブロック成型体の強度を損なうことなく軽量化することができる。
【0009】
第2の発明の法面形成用ブロックは、上述の第1の発明であって、ブロック成型体は、連結部を3つ備え、ブロック成型体を正面側から透視した際に、中央に配設される連結部が一方の連結部であり、かつ左右側縁寄りに配設される2つの連結部が他方の連結部であり、ブロック成型体を正面側から見た際に、鉛直方向軸に対して線対称をなしている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第2の発明によれば、ブロック成型体自体の強度を均質化するという作用を有する。
つまり、第2の発明では、ブロック成型体を正面側から透視した際に、表面部において連結部が接続されている部分が特に強度が優れた部分である。そして、第2の発明では、ブロック成型体を正面側から透視した際に、上述のような強度が優れた部分(=連結部が接続されている部分)が、表面部の平面方向に略均等に分散した状態になるので、第2の発明である法面形成用ブロックの強度が均質化されている、と言えるのである。
この場合、第2の発明に係る法面形成用ブロックを用いて法面構造を形成した際に、その水平方向及び鉛直方向の強度を均質化することができる。
【0010】
第3の発明である法面形成用ブロックは、上述の第1又は第2の発明であって、表面部は、水平材と垂直材からなる格子状をなし、表面部の背面側において、垂直材は水平材よりも突出している、ことを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第3の発明において、表面部が水平材と垂直材からなる格子状をなしていることで、表面部の厚み方向における水の出入りを容易にするという作用を有する。
また、第3の発明では、表面部の背面側において、垂直材を水平材よりも突出させておくことで、垂直材と水平材の空隙である窓部に、充填物であるぐり等の固形物を嵌り易くするという作用を有する。
【0011】
第4の発明である法面構造は、設置面上に直列状に並設される複数の第1乃至第3のいずれかの発明である法面形成用ブロックからなる法面形成用ブロック群と、この法面形成用ブロック群の表面部と背面部の間に収容される充填物と、を備え、法面形成用ブロック群及び充填物からなる層を鉛直方向に複数備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明において、法面形成用ブロックは、上述の第1乃至第3の発明のそれぞれと同じ作用を有する。
また、法面形成用ブロックの表面部と背面部の間に収容される充填物は、主に連結部及び背面部と連係してそれぞれのブロック成型体の表面部を法面上の所望の位置に固定するという作用を有する。
【0012】
第5の発明である法面構造は、上述の第4の発明であって、法面形成用ブロックの表面部は、ブロック成型体をその側面から見た際に、背面部側に凹むように屈曲又は湾曲している、ことを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第4の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第5の発明である法面構造において、法面形成用ブロックの表面部が背面部側に凹むように屈曲又は湾曲していることで、第5の発明を特に河川の護岸として用いる場合に、河水中を流れる流木等の障害物を表面部に衝突又は掛止し難くするという作用を有する。
これにより、第5の発明を特に河川の護岸として用いる場合に、法面形成用ブロックの表面部が損傷又は破損するのを防ぐという作用を有する。
【0013】
第6の発明である法面構造は、上述の第4又は第5の発明であって、表面部は、水平材と垂直材からなる格子状をなし、表面部の表面側において、水平材は垂直材よりも突出している、ことを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明は、上述の第4又は第5の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第6の発明である法面構造において、個々の法面形成用ブロックを構成する表面部が水平材と垂直材からなる格子状をなし、表面部の表面側において、水平材は垂直材よりも突出していることで、第6の発明を特に河川の護岸として用いる場合に、河水中を流れる流木等の障害物が表面部を構成する垂直材に衝突したり、掛止したりするのを防ぐという作用を有する。
この結果、第6の発明を特に河川の護岸として用いる場合に、法面形成用ブロックの表面部が損傷したり、破損したりするのを防ぐという作用を有する。
さらに、第6の発明の表面上に流木等の障害物が掛止して滞留するのを防ぐという作用も有する。
【0014】
第7の発明である法面構造は、上述の第4乃至第6のいずれかの発明であって、法面構造において鉛直方向最下に配される層を構成する法面形成用ブロックは、表面部の表面側に突設される洗堀防止構造を備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明は、上述の第4乃至第6のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第7の発明である法面構造において、鉛直方向最下に配される層を構成する法面形成用ブロックの表面部に設けられる洗堀防止構造は、第7の発明を特に河川の護岸として用いる場合に、法面構造と川床の境界部分の水の流速を低減させるという作用を有する。
この結果、第7の発明によれば、法面構造の下端側における洗堀の発生を好適に防ぐという作用を有する。
【0015】
第8の発明である治水構造は、躯体の側面に第4の発明である法面構造を備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第8の発明において、法面構造は、上述の第4の発明による作用と同じ作用を有する。
また、第8の発明は、山間部の谷間を横切るように設置することで、この谷間を灌漑用の溜池として利用したり、第8の発明自体を砂防堰堤として利用したりすることを可能にする。
また、特に第8の発明を、砂防堰堤として用いる場合でかつ、躯体として砕石等の透水性の優れた材質を用いる場合は、砂防堰堤の厚み方向に水を透過させながら、土砂や流木の移動を第8の発明により防ぐという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
上述のような第1の発明によれば、法面形成用ブロック同士を鉛直上方に直接積み重ねることで法面構造を形成する場合に、個々の法面形成用ブロックの強度を十分に維持しつつ、軽量化することができる。
この場合、法面形成用ブロックとして表面部の鉛直方向中央部に連結部を集中して配設する場合に比べて、個々の法面形成用ブロックの表面部の厚みを相対的に小さくできるので、法面形成用ブロックを小型化して軽量化することができる。
この場合、第1の発明である法面形成用ブロックの製造及び搬送に要するコストを削減できる。
この結果、優れた法面の保護効果を有する法面構造を廉価に形成することができる。
【0017】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第2の発明によれば、法面形成用ブロックを正面側から見た場合に、表面部の背後に略均等に連結部を配設することができる。
この場合、表面部の全域が連結部によりむらなく補強されるので、法面形成用ブロック全体の強度を均質化することができる。
この結果、第2の発明である法面形成用ブロックを用いて形成された法面構造の強度を、水平方向と鉛直方向の両方において均質化することができる。
よって、第2の発明を用いることで、法面の平面方向の全域において強度が優れた法面構造を形成することができる。
【0018】
第3の発明によれば、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第3の発明によれば、表面部の厚み方向における通水性を良好にできる。
この場合、第3の発明を用いて法面構造を形成した場合に、表面部の背面側に雨水等が滞留し、その水圧で法面構造が内側から崩壊するのを好適に防ぐことができる(第1の効果)。
さらに、第3の発明によれば、表面部を構成する水平材と垂直材の隙間に形成される貫通孔である窓部に、表面部の背面側に充填されるぐり等の充填物が嵌り易くなる。
この場合、表面部の背面側に充填されるぐり等の充填物と表面部との接触抵抗が増し、表面部が剥離したり、法面構造自体が部分的に崩壊したりするのを好適に防ぐことができる(第2の効果)。
よって、第3の発明を用いることで、上述の第1の効果及び第2の効果を同時に発揮させることができる。この結果、第1の発明又は第2の発明と比較して、より法面構造自体の強度が優れた法面構造を形成することができる。
【0019】
第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明である法面形成用ブロックを用いてなる法面構造を物の発明として特定したものであり、その効果は上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による効果と同じである。
【0020】
第5の発明は、上述の第4の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第5の発明によれば、河水中を流動する流木等の障害物により法面構造が損傷又は破損するのを防ぐことができる。
したがって、第5の発明によれば、第5の発明を特に特に河川の護岸として用いる場合に、この護岸を備えた堤防が損傷して決壊するなどして水害が発生するのを好適に防ぐことができる。
【0021】
第6の発明は、上述の第4又は第5の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第6の発明によっても河水中を流動する流木等の障害物により法面構造が損傷又は破損するのを防ぐことができる。また、第6の発明によれば、法面構造の表面側に流木等の障害物が滞留するのを防ぐこともできる。
したがって、第6の発明によれば、第6の発明を特に河川の護岸として用いる場合に、この護岸を備えた堤防が決壊したり、護岸に障害物が滞留して河水が溢れたりするのを好適に防ぐことができる。
よって、第6の発明によれば、水害の発生を好適に防ぐことができる。
【0022】
第7の発明は、上述の第4乃至第6のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第7の発明によれば、第7の発明を特に特に河川の護岸として用いる場合に、法面構造の下端側における洗堀の発生を防止できる。
この場合、第6の発明の法面の下端側の川床が洗堀されて(えぐれて)、法面構造がその支持基盤を失い、最終的に崩壊してしまうのを防ぐことができる。
よって、第7の発明によれば、河川の護岸としての機能を長期間にわたり発揮し続けることができる。したがって、第6の発明によっても、水害の発生を好適に防ぐことができる。
【0023】
第8の発明における法面構造は、上述の第4の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第8の発明によれば、治水構造の設置に要するコストを廉価にできる。
また、第8の発明によれば、第8の発明を特に砂防堰堤として用いる場合に、治水構造自体に透水性を付与しつつ、土砂等の流動を好適に阻止することができる。
この場合、鉄筋コンクリートのみからなる砂防堰堤を設置する場合と比べて、周辺環境に配慮した砂防堰堤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1に係る法面形成用ブロックの斜視図である。
【
図2】(a)実施例1に係る法面形成用ブロックの正面図であり、(b)同法面形成用ブロックの背面図である。
【
図3】(a)
図1に示す実施例1に係る法面形成用ブロックを紙面左側から見た側面図であり、(b)同法面形成用ブロックを
図1中の紙面右側から見た側面図である。
【
図4】(a)実施例1に係る法面形成用ブロックの平面図であり、(b)同法面形成用ブロックの底面図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る法面構造の断面図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る法面構造を用いてなる治水構造の断面のイメージ図である。
【
図8】本発明の実施例1に係る治水構造を用いてなる溜池のイメージ図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る法面構造の断面図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る法面形成用ブロックの斜視図である。
【
図11】(a)実施例2に係る法面形成用ブロックの正面図であり、(b)同法面形成用ブロックの背面図である。
【
図12】(a)
図10に示す実施例2に係る法面形成用ブロックを紙面左側から見た側面図であり、(b)同法面形成用ブロックを
図10中の紙面右側から見た側面図である。
【
図13】(a)実施例2に係る法面形成用ブロックの平面図であり、(b)同法面形成用ブロックの底面図である。
【
図15】実施例2に係る法面構造における法面形成用ブロックの配置を正面側から見た斜視図である。
【
図16】実施例2に係る法面構造における法面形成用ブロックの配置を背面面側から見た斜視図である。
【
図17】形成途中の実施例2に係る法面構造の上面を通路として使用する様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態に係る法面形成用ブロック及びそれを用いた法面構造及び治水構造について
図1乃至
図17を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0026】
[1-1;実施例1に係る法面形成用ブロックの基本構成について]
はじめに、
図1乃至
図4を参照しながら本発明の実施例1に係る法面形成用ブロックの基本構成について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る法面形成用ブロックの斜視図である。また、
図2(a)は実施例1に係る法面形成用ブロックの正面図であり、(b)は同法面形成用ブロックの背面図である。さらに、
図3(a)は
図1に示す実施例1に係る法面形成用ブロックを紙面左側から見た側面図であり、(b)は同法面形成用ブロックを
図1中の紙面右側から見た側面図である。そして、
図4(a)は実施例1に係る法面形成用ブロックの平面図であり、(b)は同法面形成用ブロックの底面図である。
本発明の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aは、法面を形成するために用いられる例えば鉄筋コンクリート造のブロック成型体2である。
また、このようなブロック成型体2は、
図1乃至
図4に示すように、主に法面の表面をなす板状の表面部3と、この表面部3に対向して配置される背面部4と、表面部3と背面部4の間に介設されてこれらを一体化する少なくとも2の連結部5、5’を備えてなるものである。
さらに、上述のようなブロック成型体2の表面部3、背面部4はそれぞれ、このブロック成型体2上に他のブロック成型体2を積み重ねるための載置面3a、載置面4aを備えている。
加えて、上述のようなブロック成型体2を正面側又は背面側から見た場合に、隣り合う連結部5、5’は高低差を有し、一方の連結部5は表面部3の鉛直方向中心位置M(後段に示す
図6を参照)よりも鉛直上方寄りに配設されるとともに、他方の連結部5’は表面部3の鉛直方向中心位置M(後段に示す
図6を参照)よりも鉛直下方寄りに配設されている。
つまり、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aでは、表面部3の鉛直上方側が一方の連結部5によって、また表面部3の鉛直下方側が他方の連結部5’によって、それぞれ補強されている。
【0027】
上述のような実施例1に係る法面形成用ブロック1Aでは、表面部3の載置面3a上に他の法面形成用ブロック1A(ブロック成型体2)の表面部3を、また背面部4の載置面4a上に他の法面形成用ブロック1A(ブロック成型体2)の背面部4を、それぞれ載置することで複数のブロック成型体2が鉛直上方側に積み重ねられて使用される。
この場合、表面部3の載置面3aに作用する他のブロック成型体2の荷重は、表面部3及び載置面3aの近傍に配設される連結部5により支持される。
このため、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aでは、載置面3aがその近傍に連結部5を備えない場合に比べて、表面部3の厚み(表面部から背面部へ向かう方向の厚み)を相対的に小さくすることができる。
【0028】
[1-2;実施例1に係る法面構造の基本構成について]
次に、上述のような実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いてなる法面構造の基本構成について
図5を参照しながら説明する。
図5は本発明の実施例1に係る法面構造の断面図である。なお、
図1乃至
図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本発明の実施例1に係る法面構造6Aは、
図5に示すように、例えば平坦にならされた設置面20上に、複数の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aにおける表面部3同士、及び背面部4同士が隣り合うように、直列状に配設するとともに、それぞれの法面形成用ブロック1Aの少なくとも表面部3と背面部4の間に、ぐり等の固形物22、あるいは土砂又は土石、あるいはこれらから選択される2種類以上の組合せからなる充填物(以下、単に「充填物」という)を充填してなるものである。
つまり、実施例1に係る法面構造6Aは、複数の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを直列状に並設してなる法面形成用ブロック1A群と、この法面形成用ブロック1A群における個々の表面部3と背面部4の間に充填される充填物により構成されている。
【0029】
さらに、実施例1に係る法面構造6Aは、
図5に示すように、法面形成用ブロック1A群及び充填物からなる層を、鉛直方向に複数段積層してなるものでもよい(任意選択構成要素)。
この場合は、鉛直方向のより広範な領域に実施例1に係る法面構造6Aを形成することができる。
なお、
図5に示す実施例1に係る法面構造6Aでは、それぞれの法面形成用ブロック1Aの背面部4の背面側にぐり等の固形物22を配設する場合を例に挙げて説明しているが、背面部4の背面側には切削面23の形成に生じた土砂又は土石等を配設してもよい。
【0030】
さらに、設置面20上に複数の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを並設する場合、隣り合う表面部3同士の間、及び背面部4同士の間は接触させてもよいし、空隙を有していてもよい。特に後者の場合は、形成しようとする法面構造が平坦でなく湾曲している場合に、表面部3同士の間、及び背面部4同士の間に空隙を形成しながら法面形成用ブロック1Aを並設することで、所望に湾曲した法面構造6Aを容易に形成することができる。
また、実施例1に係る法面形成用ブロック1A同士を設置面20上に直列状に並設する場合、表面部3同士の間に形成される空隙の大きさの上限値及び下限値については特に設定されないが、表面部3と背面部4の間に例えばぐり等の固形物22を充填する場合は、この空隙からぐり等の固形物22がこぼれ出ない程度の大きさに設定する必要がある。
【0031】
[1-3;実施例1に係る法面構造の形成方法について]
ここで実施例1に係る法面構造6Aの形成方法について
図6を参照しながら説明する。
図6は
図1中のA-A線矢視断面図である。なお、
図1乃至
図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図6は複数の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを直列状に並設した状態を表面部3の正面側(
図1中の符号Bで示す方向)から見た図である。
図6に示すように、複数の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを設置面20上に直列状に並設した後(ステップS1)、表面部3と背面部4の間に例えばぐり等の固形物22(充填物)を充填する作業(ステップS2)が行われる。
このとき、ぐり等の固形物22は、法面形成用ブロック1A群の近くまで例えばトラックやコンベヤ等の図示されない搬送手段により運搬された後、図示しない固形物導出管等を介して法面形成用ブロック1Aの表面部3と背面部4の間に供給される。さらに、供給されたぐり等の固形物22に必要に応じて外部から振動を与えることで、ぐり等の固形物22を密に充填することができる。
【0032】
実施例1に係る法面形成用ブロック1Aでは、先の
図1、3、5に示すように、ブロック成型体2を表面部3の正面側(
図1中の符号Bで示す方向)から透視した際に、表面部3の鉛直方向中心位置Mよりも鉛直上方側に連結部5の中心軸5aが配設されている(
図6を参照)。
また、連結部5の隣に配設される連結部5’は、ブロック成型体2を表面部3の正面側(
図1中の符号Bで示す方向)から透視した際に、表面部3の鉛直方向中心位置Mよりも鉛直下方側に連結部5’の中心軸5aが配設されている(
図6を参照)。
この場合、作業者は必然的に連結部5と連結部5’の間から、ぐり等の固形物22を供給することになる。
この場合、ぐり等の固形物22を単純に鉛直上方から下方向に流し込む場合に比べて、固形物22に対してこの固形物22を水平方向に移動させるような力を付加することができるので(
図6中の太線の矢印を参照)、連結部5’の下面5c側の空隙にぐり等の固形物22を効率良く充填することができる。
【0033】
そして、法面形成用ブロック1A群における表面部3と背面部4の間へのぐり等の固形物22の充填作業(ステップS2)を完了した後は、必要に応じて法面形成用ブロック1Aの背面部4の背面側にもぐり等の固形物22や土砂、あるいは土石等を供給して(ステップS3)、最終的に法面形成用ブロック1Aの連結部5、5’及び背面部4が充填物内に埋設された状態になる。
さらに、
図5に示すように、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aが鉛直方向に複数層積層された法面構造6Aを形成するには、上述のステップS1~ステップS3を実施することで形成される新たな設置面20上において上述のステップS1~ステップS3を繰り返せばよい。
【0034】
[1-4;実施例1に係る法面形成用ブロックによる作用・効果について]
上述のような実施例1に係る法面形成用ブロック1Aによれば、表面部3の鉛直上方側を連結部5により、また表面部3の鉛直下方側を連結部5’によりそれぞれ補強することができる。
つまり、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aでは、表面部3の全域がその背後に配設される連結部5又は連結部5’により略均等に補強されることになる。
この場合、表面部3、背面部4のそれぞれに設けられる載置面3a、載置面4a上に他のブロック成型体2を積み重ねて実施例1に係る法面構造6Aを形成する場合でも、表面部3及び背面部4を過度に肉厚にする必要がない。
つまり実施例1に係る法面形成用ブロック1Aのように表面部3の背面側に略均等に分散させながら背面部4を配設する方が、表面部3の背面側の局所に集中して背面部4を配設する場合(例えば特許文献12に開示される法面形成用ブロック)に比べて、ブロック成型体2を小型化及び軽量化することができる。
この結果、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いて
図5に示すような法面構造6Aを形成する際の、個々の法面形成用ブロック1Aの製造に要する原材料費及び搬送コストを削減することができる。
【0035】
また、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いて
図5に示すような法面構造6Aを形成する場合は、先の
図1や
図6に示すように、連結部5と連結部5’が高低差を有した状態になる。この場合、法面形成用ブロック1A群における個々の表面部3と背面部4の間に充填物として、例えばぐり等の固形物22を充填する場合に、連結部5’の直下にぐり等の固形物22を充填し易くなるという副次的な効果も発揮される。
この場合、
図5に示すような実施例1に係る法面構造6Aを形成する場合に、連結部5、5’及び背面部4を、ぐり等の固形物22からなる充填物としっかり密着させながら埋設できるので、これらを表面部3のアンカーとして十分に機能させることができる。
よって、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いることで、その表面構造(表面部3)と内部構造(連結部5、5’、背面部4及び充填物)をしっかりと連係させることができる。この結果、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いることで、強固で安定した法面構造6Aを容易かつ効率的にしかも廉価に形成することができる。
【0036】
[1-5;実施例1に係る法面構造による作用・効果について]
図5に示すような実施例1に係る法面構造6Aは、例えば河川の護岸や、道路脇の傾斜面の保護構造として利用できる。
また、実施例1に係る法面構造6Aでは、複数の法面形成用ブロック1Aが水平方向及び鉛直方向に並設されるため、少なくとも法面形成用ブロック1A同士の隙間は通水性を有する。
さらに、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの表面部3が、例えば
図1等に示すように表面部3の厚み方向を貫通してなる通水窓3eを有する場合は、実施例1に係る法面構造6Aがさらに良好な通水性を有する。
いずれの場合も、例えばゲリラ豪雨等が発生するなどして短時間のうちに多くの降水がもたらされても、実施例1に係る法面構造6Aの法面形成用ブロック1A群における表面部3の背面側において雨水が滞留し難い。この場合、法面形成用ブロック1A群の表面部3の背面側に溜まった雨水の圧力で法面構造6Aが内部から崩壊するのを好適に防ぐことができる。
よって、実施例1に係る法面構造6Aによれば、特に降水量の多い地域等において傾斜面の保護効果が特に優れた法面構造を提供することができる。
【0037】
さらに、実施例1に係る法面構造6Aは、下層側に配されるブロック成型体2の表面部3、背面部4上に他のブロック成型体2が積み重ねられて形成される(
図5を参照)。
この場合、実施例1に係る法面構造6Aにおける各層の高さは、設置面20から表面部3の載置面3aまでの高さ、又は設置面20から背面部4の載置面4aまでの高さ、と略一致する。
また、実施例1に係る法面構造6Aでは、下層側に配されるブロック成型体2で上層側に配されるブロック成型体2の荷重が完全に支持されるため、法面構造6Aの完成後に表面部3と背面部4の間に充填される充填物が時間の経過とともに締め固まっても、法面構造6Aの高さは変化しない。
よって、実施例1に係る法面構造6Aによれば、当初設計通りの寸法を有する法面構造を容易に形成することができる。
したがって、実施例1に係る法面構造6Aによれば、強固で安定した法面構造でありながら、かつ施工者の力量によらず再現性が高い法面構造を提供することができる。
【0038】
[1-6;実施例1に係る法面形成用ブロックの細部構造について]
<1-6-1;ストッパーについて>
また、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aが、載置面3a及び載置面4aを有する場合、載置面3a、載置面4aのそれぞれは、これら載置面3a、載置面4a上に載置される他のブロック成型体2の前後方向へのずれを防止するための、より詳細には連結部5又は連結部5’の中心軸5a方向へのずれを防止するためのストッパー3b、ストッパー4bを備えていてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、ブロック成型体2(法面形成用ブロック1A)上に他の任意のブロック成型体2を積み重ねる作業を行う際に、意図せずブロック成型体2の位置がずれてしまい、積載作業中のブロック成型体2が落下する等の事故が起こるのを防ぐことができる。
さらに、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aが、ストッパー3b、ストッパー4bを備える場合は、実施例1に係る法面構造6Aの完成後に地震等の揺れの影響で、ブロック成型体2上に積載される他のブロック成型体2が載置面3aや、載置面4aからずれてしまい、法面構造6Aが損傷したり崩壊したりするリスクを低減することもできる。
よって、上述のようなストッパー3b、ストッパー4bを備える法面形成用ブロック1Aによれば、施工後(完成後)の法面構造の安定性も向上させることができる。
【0039】
<1-6-2;連結部の配置について>
実施例1に係る法面形成用ブロック1Aが、載置面3a及び載置面4aを有する場合は、連結部5の天面5bを載置面3a及び載置面4aと同一平面上に配置してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、設置面20上に直列状に並設されてなる法面形成用ブロック1A群における個々の表面部3と背面部4の間にぐり等の固形物22からなる充填物を充填する場合に、連結部5の天面5bを固形物22の充填完了位置の目安にすることができる。
つまり、個々のブロック成型体2が少なくとも1の連結部5を有することで、法面形成用ブロック1A群の空隙にぐり等の固形物22を充填する際に、その充填量(供給量)が適切であるか否かを目視により容易に判断することができる。
この場合、先の
図5に示すような実施例1に係る法面構造6Aを形成する場合に、表面部3と背面部4の間に適切な量のぐり等の固形物22を迅速に充填することができるので、強度が均質化された法面構造6Aを効率的に形成することができる。
よって、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aにおいて連結部5の天面5bが、載置面3a及び載置面4aと同一平面上に配されている場合は、実施例1に係る法面構造6Aの施工性を向上させることができる。
【0040】
<1-6-3A;表面部の細部構造について>
実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成における表面部3は、例えば
図1、3及び
図4に示すように、水平材3cと垂直材3dからなる格子状をなし、かつ表面部3の背面側において、垂直材3dが水平材3cよりも突出するよう構成してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、表面部3の背面側に配されるぐり等の固形物22を、水平材3cと垂直材3dの隙間である通水窓3eに嵌り込み易くすることができる。
この結果、上述のような実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いて法面構造6A(
図5を参照)を形成する場合に、表面部3の背面側に配されるぐり等の固形物22と表面部3の背面側との接触抵抗を高めることができる。
これにより、上述のような実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いてなる法面構造6Aの強度を向上させることができる。
【0041】
<1-6-3B;表面部の細部構造について>
実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成における表面部3は、ブロック成型体2を側面側から見た場合に、背面部4側に向かって凹むように屈曲又は湾曲していてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いてなる法面構造6A(
図5を参照)を特に河川の護岸として用いる場合に、例えば河水が増水した際に、表面部3に河水中を流れる流木等の障害物が引っかかるのを好適に防ぐことができる。
これにより、法面構造6Aの表面に流木等の障害物が引っかかって、そこで河水が堰き止められて、護岸としての法面構造6Aを有する堤防が決壊したり、法面構造6Aを構成する法面形成用ブロック1A(ブロック成型体2)自体が損傷や破損したりするのを防ぐことができる。
よって、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成における表面部3が上述のような構造を有する場合は、河川の護岸としての使用に特に適した法面構造6Aを提供することができる。
【0042】
<1-6-3C;表面部の細部構造について>
実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成における表面部3は、例えば
図1乃至
図3に示すように、水平材3cと垂直材3dからなる格子状をなし、かつ表面部3の表面側において、水平材3cが垂直材3dよりも突出するよう構成してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aを用いてなる法面構造6A(
図5を参照)を特に河川の護岸として用いる場合に、例えば河水が増水した際に、表面部3を構成する垂直材3dに河水中を流れる流木等の障害物を引っかかるのを好適に防ぐことができる。
これにより、法面構造6Aの表面に流木等の障害物が引っかかって、そこで河水が堰き止められて、護岸としての法面構造6Aを有する堤防が決壊したり、法面構造6Aを構成する法面形成用ブロック1A(ブロック成型体2)自体が損傷や破損したりするのを防ぐことができる。
よって、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成における表面部3が上述のような構造を有する場合は、河川の護岸としての使用に特に適した法面構造6Aを提供することができる。
【0043】
[1-7;実施例1に係る法面構造を備えた治水構造について]
ここで
図7及び
図8を参照しながら実施例1に係る法面構造を備えた治水構造について説明する。
図7は本発明の実施例1に係る法面構造を用いてなる治水構造の断面のイメージ図である。また、
図8は本発明の実施例1に係る治水構造を用いてなる溜池のイメージ図である。なお、
図1乃至
図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1に係る法面構造6Aは先に述べたような河川の護岸や、道路脇の傾斜面の保護構造以外の用途にも利用できる。
より具体的には、例えば
図7に示すように土砂又は土石又は砕石、あるいはこれらから選択される2種類以上の組合せ、からなる盛り土24の側面を、実施例1に係る法面構造6Aで被覆してなる構造物を、治水構造7として用いることができる。
このような実施例1に係る治水構造7を、例えば山間部の谷間を横切るように設置することで、例えば
図7及び
図8に示すようにこの治水構造7の上流側を溜池25として利用することができる。
この場合、例えば山間部の谷間を遮るように治水構造7を設けて溜池25にすることで、この溜池25の水を周囲の農地の灌漑用水として利用したり、あるいは溜池25に発電設備等を設置して小規模の水力発電を行ったりすることができる。
この結果、実施例1に係る治水構造7及び山間部の谷間の耕作放棄地等を用いて、周辺の農地の生産性を向上させたり、あるいは小規模の電力供給設備を提供したりすることができる。
【0044】
あるいは、上述のような治水構造7を、例えば山間部の谷間を横切るように単数又は複数箇所に設置することで、この治水構造7を砂防堰堤として利用することもできる。
この場合、治水構造7を構成する盛り土24を例えば砕石で構成することで、治水構造7の厚み方向に通水性を付与することができる。
そして、実施例1に係る治水構造7を特に砂防堰堤として利用する場合は、この治水構造7がその厚み方向に通水性を有するよう構成しておくことで、平時は自然の河川と同様に河水を流下させつつ、土石流発生時には土砂や流木を治水構造7により好適に堰き止めて、土砂災害の発生を好適に防ぐことができる。
この結果、実施例1に係る治水構造7によれば、砂防堰堤を鉄筋コンクリートのみにより構成する場合に比べて、十分な防災機能を発揮させつつ、平時は自然の川と同様に機能させることができる独自の砂防堰堤を提供することができる。
【0045】
[2-1;実施例2に係る法面構造の基本構成について]
ここで、
図9を参照しながら実施例2に係る法面構造の基本構成について説明する。
図9は本発明の実施例2に係る法面構造の断面図である。なお、
図1乃至
図8に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本発明の実施例2に係る法面構造6Bは、先の実施例1に係る法面構造6A(先の
図5を参照)において、鉛直方向最下に配される層を構成する法面形成用ブロックとして、ブロック成型体2の表面部の表面側に洗堀防止構造8を備えた実施例2に係る法面形成用ブロック1Bを用いてなるものである。
このような実施例2に係る法面構造6Bでは、
図9に示すように、必要に応じて鉛直方向最下に配される層を構成する法面形成用ブロック1Bの洗堀防止構造8に掛止させながら砕石27又は自然石を配設して使用してもよい。なお、上述のような実施例2に係る法面構造6Bは、主に河川の護岸として用いられる。
【0046】
[2-2;実施例2に係る法面形成用ブロックの基本構成について]
次に、実施例2に係る法面形成用ブロックの基本構成について
図10乃至
図13を参照しながら説明する。
図10は本発明の実施例2に係る法面形成用ブロックの斜視図である。また、
図11(a)は実施例2に係る法面形成用ブロックの正面図であり、(b)は同法面形成用ブロックの背面図である。さらに、
図12(a)は先の
図10に示す実施例2に係る法面形成用ブロックを紙面左側から見た側面図であり、(b)は同法面形成用ブロックを
図10中の紙面右側から見た側面図である。加えて、
図13(a)は実施例2に係る法面形成用ブロックの平面図であり、(b)は同法面形成用ブロックの底面図である。なお、
図1乃至
図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2に係る法面形成用ブロック1Bは、先の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成と同じ構成に加えて、
図10乃至
図13に示すように、表面部3の表面側に突設される洗堀防止構造8を備えている。
また、この洗堀防止構造8は、例えば
図10乃至
図13に示すように、表面部3の表面上に突設される複数の梁8aと、この梁8a同士を一体に接続する接続材8bと、梁8aの先端側に固設される保護材8cを備えている。
【0047】
上述のような実施例2に係る法面形成用ブロック1Bによれば、先の実施例2に係る法面構造6B(
図9を参照)を構成する鉛直最下に配される層に配設されることで、洗堀防止構造8が水中において水の流れを妨げる障害物として作用する。
さらに、このような洗堀防止構造8に砕石27や自然石を掛止させながら配置することで、河水の流速を低減する効果を一層向上させることができる。
よって、実施例2に係る法面形成用ブロック1Bを用いることで、河川の川床(
図9中の設置面20)と実施例2に係る法面構造6B(
図9を参照)の境界部分における河水の流速を確実に低減することができる。
【0048】
[2-3;実施例2に係る法面構造の形成方法について]
続いて実施例2に係る法面構造の形成方法について
図14乃至
図16等を参照しながら説明する。
図14は
図10中のC-C線矢視断面図である。また、
図15は実施例2に係る法面構造における法面形成用ブロックの配置を正面側から見た斜視図である。さらに、
図16は実施例2に係る法面構造における法面形成用ブロックの配置を背面面側から見た斜視図である。なお、
図1乃至
図13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2に係る法面構造6Bの形成方法は、先の実施例2に係る法面構造6Aの形成方法とほぼ同じである。
より具体的には、例えば
図14乃至
図16に示すように、川床となる設置面20上に複数の実施例2に係る法面形成用ブロック1Bを直列状に並設した後(ステップS1’)、このブロック成型体2の表面部3と背面部4の間に、ぐり等の固形物22、あるいは土砂又は土石、あるいはこれらから選択される2種類以上の組合せからなる充填物を充填する作業(ステップS2’)を行う。
また、充填物として例えばぐり等の固形物22を用いる場合は、法面形成用ブロック1B群の近くまで例えばトラックやコンベヤ等の図示されない搬送手段によりぐり等の固形物22を運搬した後、図示しない固形物導出管等を介して法面形成用ブロック1Bの表面部3と背面部4の間にぐり等の固形物22を供給すればよい。この時、必要に応じてぐり等の固形物22に外部から振動を与えることで、ぐり等の固形物22を密に充填することができる。
【0049】
実施例2に係る法面形成用ブロック1Bにおいても、先の実施例1に係る法面形成用ブロック1Aと同様に、ブロック成型体2を表面部3の正面側(
図10中の符号Bで示す方向)から透視した際に、表面部3の鉛直方向中心位置Mよりも鉛直上方側に連結部5の中心軸5aが配設されている(
図10、12及び
図14を参照)。
また、ブロック成型体2を表面部3の正面側(
図10中の符号Bで示す方向)から透視した際に、表面部3の鉛直方向中心位置Mよりも鉛直下方側に連結部5’の中心軸5aが配設されている(
図10、12及び
図14を参照)。
そして、実施例2に係る法面形成用ブロック1Bの場合も、作業者は必然的に連結部5と連結部5’の間から、ぐり等の固形物22を供給することになる。
この場合、ぐり等の固形物22を単純に鉛直上方から下方向に流し込む場合に比べて、固形物22に対してこの固形物22を水平方向に移動させるような力を付加することができるので(
図14中の太線の矢印を参照)、連結部5’の下面5c側の空隙にぐり等の固形物22効率良く充填することができる。
【0050】
そして、法面形成用ブロック1B群における表面部3と背面部4の間への充填物の充填作業(ステップS2’)を完了した後は、必要に応じて法面形成用ブロック1Bの背面部4の背面側にもぐり等の固形物22、あるいは土砂又は土石、あるいはこれらから選択される2種類以上の組合せからなる充填物を供給することで(ステップS3’)、最終的に法面形成用ブロック1Bの連結部5、5’及び背面部4が充填物内に埋設される。
さらに、
図9に示すような実施例2に係る法面構造6Bを形成するには、上述のステップS1’~ステップS3’を実施することで形成される新たな設置面20上において、先の[1-3]に示すステップS1~ステップS3を所望セット繰り返せばよい。
この後に、あるいは上述のステップS1’~ステップS3’が完了した後に、必要に応じて実施例2に係る法面形成用ブロック1Bの洗堀防止構造8に、砕石27又は自然石を掛止させながら配置すればよい。
【0051】
[2-4;実施例2に係る法面形成用ブロックの作用・効果について]
上述のような実施例2に係る法面形成用ブロック1Bによれば、先に述べた実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成による作用・効果と同じ作用・効果を有する。
さらに、上述のような法面形成用ブロック1Bを用いてなる法面構造6Bと川床(
図6中の設置面20)の境界部分を流れる水の流速を減速することができる。
また、法面構造6Bにおける法面形成用ブロック1Bの洗堀防止構造8の周囲に砕石27又は自然石が配設される場合は、法面構造6Bと川床の境界部分を流れる水の流速低減効果を一層高めることができる。
この結果、河水により法面構造6Bと川床の境界部分に洗堀が起こるのを、つまりこの部分が水流によりえぐり取られて陥没するのを好適に防ぐことができる。
よって、実施例2に係る法面形成用ブロック1Bを用いることで、特に河川の護岸として適し、かつ強固で長期にわたり安定し法面構造6Bを容易にかつ効率的に形成することができる。
【0052】
[2-5;実施例2に係る法面構造による作用・効果について]
実施例2に係る法面構造6Bによれば、この法面構造6Bを特に河川の護岸として用いる場合に、法面構造6Bと川床の境界部分が河水により洗堀されるのを防止できる。
これにより、実施例2に係る法面構造6Bの設置後に、河川において増水が繰り返される場合でも、法面構造6Bの支持基盤である川床がえぐり取られるのを好適に防ぐことができる。
この場合、実施例2に係る法面構造6Bを護岸として備える堤防が損傷したり、決壊したりするのを好適に防ぐことができる。
よって、実施例2に係る法面構造6Bによれば、河川等において水害等の発生頻度を少なくすることができる。
【0053】
[2-5;実施例2に係る法面形成用ブロック及び法面構造の細部構造について]
<2-5-1;洗堀防止構造における梁について>
実施例2に係る法面形成用ブロック1Bは、
図9乃至
図13に示すように、表面部3と背面部4をつなぐ連結部5、5’を、表面部3を貫通させて表面部3の表面側に突出させたものを梁8aとして用いてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、洗堀防止構造8の梁8aに作用する荷重や水圧等の外力を、連結部5及び背面部4に伝達することができる。さらに、連結部5及び背面部4に伝達された荷重や水圧等の外力を、背面部4及び連結部5の周囲に充填される充填物で受け止めることができる。
よって、実施例2に係る法面形成用ブロック1Bにおいて、連結部5、5’と梁8aを連結して一体化する場合は、洗堀防止構造8の梁8aに作用する荷重や水圧等の外力を、法面構造6Bの内部構造と連係して支えることができる。
このため、上述のような実施例2に係る法面形成用ブロック1Bによれば、増水時に梁8aに作用する水圧等の外力が増した場合や、洗堀防止構造8に流木等の障害物が衝突したり、掛止したりした場合に、洗堀防止構造8が折れるなどして破損するのを防ぐことができる。
よって、上述のような実施例2に係る法面形成用ブロック1Bによれば、河川の護岸としての機能がより優れた法面構造6Bを提供することができる。
なお、洗堀防止構造8の構造は、図示される形態に特定される必要はなく、実施例2に係る法面形成用ブロック1Bの表面側に突出されて、河水の水流を低減できるような構造を有していれば、図示されるもの以外の形態でもよい。
【0054】
<2-5-2;洗堀防止構造に掛止される砕石について>
なお、実施例2に係る法面構造6B(
図9を参照)では、法面形成用ブロック1Bにおける洗堀防止構造8に複数の砕石27又は自然石を掛止して用いる場合を例に挙げて説明しているが、砕石27又は自然石は必ずしも設けなくともよい。
この場合、川床(
図9中の設置面20)の洗堀防止効果が低下するものの、実施例2に係る法面形成用ブロック1Bが洗堀防止構造8を備えるだけでも十分な洗堀防止効果を発揮させることができる。
また、砕石27又は自然石に代えて従来公知の鉄筋コンクリート造又はコンクリート造の波消ブロック等を用いることができる。
この場合も、砕石27又は自然石を用いる場合と同様の作用・効果を発揮させることができる。
【0055】
<2-5-3;実施例1に係る法面形成用ブロックの基本構成の細部構造との共通部分について>
実施例2に係る法面形成用ブロック1Bの基本構成は、必要に応じて先に述べた実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成が備える細部構造、すなわち上述の<1-6-1>から<1-6-3C>において説明したそれぞれの構成を単独で、又は所望の複数種類の構成を組み合わせて備えてもよい(任意)。
なお、実施例2に係る法面形成用ブロック1Bの基本構成が上述の<1-6-1>から<1-6-3C>に記載されるそれぞれの構成を備える場合の作用・効果は、実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの基本構成が上述の<1-6-1>から<1-6-3C>に記載されるそれぞれの構成を備える場合の作用・効果と同じである。
【0056】
なお、
図10乃至
図13に示すように実施例2に係る法面形成用ブロック1Bの基本構成が、その表面部3、背面部4にそれぞれ載置面3a、載置面4aを備える場合は、
図15及び
図16に示すように、実施例2に係る法面形成用ブロック1B上への実施例1に係る法面形成用ブロック1Aの積み重ねが容易になる。
この場合、法面形成用ブロック1A及び法面形成用ブロック1Bの両者を用いて実施例2に係る法面構造6Bを形成する場合の施工性を良好にできる。
【0057】
[3;その他]
<3-1;実施例1、実施例2に係る法面構造の共通の効果について>
ここで
図17を参照しながら実施例1に係る法面構造6Aと実施例2に係る法面構造6Bの共通の効果について説明する。
図17は形成途中の実施例2に係る法面構造の上面を通路として使用する様子を示すイメージ図である。なお、
図1乃至
図16に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
一般に、河川の護岸工事を行う場合は、新たに形成しようとする法面から離れた水流側に水流を迂回させるためのバリケードを形成するとともに、このバリケード上を工事車両等の通路として使用しながら新たな法面構造を形成する工事が行われる。
このような従来の工法では、新たに法面を形成する箇所と、そのための通路となるバリケードの二箇所で工事を並行して行う必要がある。
【0058】
その一方で、実施例1、実施例2に係る法面構造6A、6Bの場合は、例えば
図17に示すように、充填物の充填作業が完了したブロック成型体2(法面形成用ブロック1A又は法面形成用ブロック1B)上に例えば鋼板28を敷設することで、この鋼板28上を工事車両等の通路として使用することができる。
この場合、実施例1、実施例2に係る法面構造6A、6Bの形成時に、これらの形成部分と並行して設けられるバリケードを短くしたり又は不要にしたりすることができる。
この場合、実施例1、2に係る法面構造6A、6Bの施工に要するコストを削減できる。
また、実施例1、2に係る法面構造6A、6Bでは、その施工が完了した後に法面構造6A、6Bの上面を必要に応じて舗装するなどしてそのまま通路として使用することもできる。
【0059】
<3-2;背面部の形態について>
上述の実施例1に係る法面構造6Aや、実施例2に係る法面構造6Bを構成するブロック成型体2(法面形成用ブロック1A又は法面形成用ブロック1B)における背面部4の形状は、図示される形状でなくともよい。
より具体的には、ブロック成型体2における背面部4は、連結部5、5’とともに充填物中に埋設されることで表面部3のアンカーとして機能する。さらに、ブロック成型体2における背面部4は、その上に他のブロック成型体2を積載する際の支持構造としても用いられる。
このため、ブロック成型体2における背面部4の形状は、連結部5、5’を充填物中から抜け難くすることができ、かつ他のブロック成型体2を積載する際の支持構造として十分な強度を有するよう構成されていれば、その形状はどのような形状であってもよい。
より具体的には、ブロック成型体2における背面部4の形状は、連結部5、5’の中心軸5aに対して交差するように、より望ましくは連結部5、5’の中心軸5aに対して直交するように配設されていることが望ましい。
この場合、実施例1に係る法面構造6A又は実施例2に係る法面構造6Bにおいて、連結部5及び背面部4の引き抜き抵抗が大きくなり、法面構造6A又は法面構造6Bの施工後の安定性を向上させることができる。
【0060】
<3-3;表面部と背面部の間に充填される固形物について>
上述の実施例1に係る法面構造6Aや、実施例2に係る法面構造6Bを構成する充填物として例えば固形物22を用いる場合、この固形物22のサイズは、ブロック成型体2(法面形成用ブロック1A又は法面形成用ブロック1B)の表面部3と背面部4の間に充填された際に、並設される表面部3同士の隙間からこぼれ出ない大きさに設定する必要がある。
また、ブロック成型体2における表面部3が通水窓3eを備えている場合は、固形物22のサイズをこの通水窓3eからこぼれ出ない大きさに設定する必要がある。
さらに、固形物22の材質としては、例えば建材として使用される従来公知のぐり(砕石)を使用できるほか、コンクリート廃材を破壊して所望のサイズに分級したものを使用することもできる。なお、上記以外の同等の機能を有するものを固形物22として支障なく使用することができる。
なお、固形物22のサイズは、具体的にはその平均粒径が100mm~250mmの範囲内であるものを、より望ましくはその平均粒径が150mm~200mmの範囲内であるものを用いることで、固形物22の入手を容易にしつつ、実施例1、2に係る法面構造6A、6Bの厚み方向への通水性(透水性)を良好にできる。
【0061】
<3-4;ブロック成型体の材質について>
上述の実施例1に係る法面構造6Aや、実施例2に係る法面構造6Bを構成するブロック成型体2(法面形成用ブロック1A又は法面形成用ブロック1B)の材質は、鉄筋コンクリートが最適である。
ただし、例えば法面形成用ブロック1A、1Bのサイズを人手により持ち運び可能な程度に小型化して、用水路の側壁や、畦畔等を形成するパーツとして使用する場合は、目的とする強度を備えるブロック成型体2をコンクリート造としてもよい。
【0062】
<3-5;連結部の数について>
本実施形態の図面では、ブロック成型体2(法面形成用ブロック1A又は法面形成用ブロック1B)が連結部5を1本及び連結部5’を2本備える場合を例に挙げて説明しているが、ブロック成型体2が、連結部5と連結部5’を1本ずつ備える場合や、これらを2本以上備える場合も本発明の技術範囲に含まれる。
また、特にブロック成型体2が、連結部5を1本及び連結部5’を2本備え、かつブロック成型体2を正面から見た場合に、鉛直方向軸に対して線対称をなすよう構成する場合は、ブロック成型体2の強度を均質化しつつより高めることができるので好ましい。
【0063】
<3-6;連結部同士の配置について>
実施例1、2に係る法面形成用ブロック1A、1Bにおいて、連結部5及び連結部5’は表面部3のアンカーとして表面部3を法面上に保持しておくという機能に加えて、表面部3自体を補強するという機能も有している。
このため、実施例1、2に係る法面形成用ブロック1A、1Bにおいて、ブロック成型体2を平面視した際に連結部5と連結部5’の間隔が全て同じになるように、又は、ブロック成型体2をその正面側から透視した際に連結部5と連結部5’の間隔が全て同じになるように、配設しておいてもよい(任意選択構成要素)。
さらに、この場合は、表面部3の背面側において、連結部5及び連結部5’を略均等に分散させて配設することが望ましい。
【0064】
また、「ブロック成型体2を平面視した際に連結部5と連結部5’の間隔が全て同じになるように配設する」とは、ブロック成型体2を正面から透視した際に、連結部5の中心軸5aと、連結部5’の中心軸5aとを結ぶ線が二等辺三角形状をなすことを意味する。
さらに、「ブロック成型体2をその正面側から透視した際に連結部5と連結部5’の間隔が全て同じになるように配設する」とは、ブロック成型体2をその正面側から透視した際に、連結部5の中心軸5aと、連結部5’の中心軸5aとを結ぶ線が正三角形状をなすことを意味する。
いずれの場合も、実施例1、2に係る法面形成用ブロック1A、1Bにおいて、連結部5及び連結部5’による表面部3の補強効果を一層向上させることができる。
なお、前者よりも後者の方が、実施例1、2に係る法面形成用ブロック1A、1Bの強度が優れている。
以上説明したように本発明は、傾斜面を強固に保護することができ、法面形成用ブロック自体の強度を保ちつつ軽量化できる法面形成用ブロック及びそれを用いてなる法面構造及び治水構造であり、土木建築や治水に関する分野において利用可能である。
1A、1B…法面形成用ブロック 2…ブロック成型体 3…表面部 3a…載置面 3b…ストッパー 3c…水平材 3d…垂直材 3e…通水窓 4…背面部 4a…載置面 4b…ストッパー 5、5’…連結部 5a…中心軸 5b…天面 5c…下面 6A、6B…法面構造 7…治水構造 8…洗堀防止構造 8a…梁 8b…接続材 8c…保護材 20…設置面 22…固形物 23…切削面 24…盛り土(躯体) 25…溜池 26…河水 27…砕石 28…鋼板