(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103673
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004324
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
(72)【発明者】
【氏名】眞野 智生
(72)【発明者】
【氏名】伍賀 敬祐
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ18
4C053JJ24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】共同運動を解体することが可能な電気刺激装置を提供する。
【解決手段】被治療者の麻痺部位であって随意収縮の可能な第1の筋に配置される少なくとも一対の第1電極3と、第1電極3を介して第1の筋の筋電位を検出する筋電位検出手段14と、第1の筋とは異なる第2の筋に配置される少なくとも一対の第2電極4と、第2電極4を介して第2の筋に電気刺激を印加する電気刺激手段12と、筋電位検出手段14による筋電位の検出結果に基づいて、第2電極4に電気刺激を出力するよう電気刺激手段12を制御する制御手段18と、を備え、電気刺激は第1の筋による運動に伴う共同運動を解体させるものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療者の麻痺部位であって随意収縮の可能な第1の筋に配置される少なくとも一対の第1電極と、
前記第1電極を介して前記第1の筋の筋電位を検出する筋電位検出手段と、
前記第1の筋とは異なる第2の筋に配置される少なくとも一対の第2電極と、
前記第2電極を介して前記第2の筋に電気刺激を印加する電気刺激手段と、
前記筋電位検出手段による前記筋電位の検出結果に基づいて、前記第2電極に前記電気刺激を出力するよう前記電気刺激手段を制御する制御手段と、を備え、
前記電気刺激は前記第1の筋による運動に伴う共同運動を解体させるものである、
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
前記第2の筋は前記共同運動を引き起こす筋に対する拮抗筋である、ことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記筋電位に比例した電気刺激を前記第2電極に出力するよう前記電気刺激手段を制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の脳血管障害に対するリハビリテーション治療では、共同運動(1つの運動を行う際に、1つの筋のみを動かすことができず、1肢の伸筋又は屈筋全体が動くこと)の解体ができず残存するため、運動障害が後遺症となるケースが少なくなかった。特許文献1には、リハビリテーション治療に用いられる機能的電気刺激を行う電気刺激装置が記載されており、被治療者の麻痺部位の筋に電気刺激用電極を、被治療者の麻痺部位以外の部位または被治療者以外の者の部位の筋に筋電検出・電気刺激両用電極をそれぞれ貼り付け、筋電検出・電気刺激両用電極で検出された筋電位に応じた強度の電気刺激を電気刺激用電極に出力することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電気刺激装置の使用例として、例えば
図5に示すように二極電極3a及び基準電極3bからなる両用電極(筋電検出・電気刺激両用電極)3を被治療者の右腕の前腕(健側部位)の手指伸展筋群M4の筋腹部上に貼り付け、電極4a及び電極4bからなる電気刺激用電極4を被治療者の左腕の前腕(麻痺側部位)の手指伸展筋群M4の筋腹部上に貼り付ける。そして、両用電極3で検出された筋電位に応じた強度の電気刺激を電気刺激用電極4に出力する。なお、
図5において符号5、6はそれぞれ、両用電極3、電気刺激用電極4を電気刺激装置の装置本体に接続するケーブルである。このような電気刺激装置では、筋収縮のある筋のみにしか使用できず、共同運動の解体への効能はないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、共同運動を解体することが可能な電気刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明の電気刺激装置は、被治療者の麻痺部位であって随意収縮の可能な第1の筋に配置される少なくとも一対の第1電極と、前記第1電極を介して前記第1の筋の筋電位を検出する筋電位検出手段と、前記第1の筋とは異なる第2の筋に配置される少なくとも一対の第2電極と、前記第2電極を介して前記第2の筋に電気刺激を印加する電気刺激手段と、前記筋電位検出手段による前記筋電位の検出結果に基づいて、前記第2電極に前記電気刺激を出力するよう前記電気刺激手段を制御する制御手段と、を備え、前記電気刺激は前記第1の筋による運動に伴う共同運動を解体させるものである、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る電気刺激装置は、前記第2の筋は前記共同運動を引き起こす筋に対する拮抗筋である、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る電気刺激装置は、前記制御手段は、前記筋電位に比例した電気刺激を前記第2電極に出力するよう前記電気刺激手段を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共同運動を解体させることが可能な電気刺激装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。
【
図2】同電気刺激装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】被治療者に電気刺激を行った実験を説明する図である。
【
図4】実験結果を示す図であり(a)はFugl-Meyer assessment上肢機能(以下「FMA」とする)の評価点数を示し、(b)は握力を示す。
【
図5】従来の電気刺激装置の使用例による電極の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る電気刺激装置について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施の形態による電気刺激装置1は、電気刺激を出力するための電気回路が内部に設けられた装置本体2と、片麻痺等の被治療者の麻痺のある肢体の皮膚表面に配されて筋電位信号の検出及び電気刺激の印加を行う両用電極(第1電極)3と、麻痺のある肢体の皮膚表面に配されて電気刺激の印加を行う電気刺激用電極(第2電極)4と、両用電極3及び電気刺激用電極4の各々を装置本体2に接続する第一ケーブル5及び第二ケーブル6とを主たる構成としている。
【0013】
両用電極3は少なくとも一対の電極であり、一例として二個の電極が非導電性部材によって一体的に構成される二極電極3aと、一個の基準電極3bとから構成されている。二極電極3a及び基準電極3bは裏面が被治療者の皮膚表面に貼り付ける貼付面とされるホック式のゲル電極になっている。
【0014】
二極電極3aは対象筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、被治療者の筋活動から発生する微弱な筋電位を二個の電極間で検出するとともに、電気刺激を付与するための電気刺激用電極として機能する。基準電極3bは、二極電極3aの二個の電極間で筋電位を検出するときに基準電位を決める基準電極としても機能する一方、電気刺激を付与したい筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、電気刺激を筋肉に印加するための電気刺激用電極として機能する。
【0015】
二極電極3aの二個の電極及び基準電極3bの各ホックは中途位置で三本に分岐した第一電極ケーブル5の各先端側に係着され、第一電極ケーブル5の基端側の接続プラグ5aは装置本体2に設けられた第一出力コネクタ7に着脱自在に挿嵌される。
【0016】
電気刺激用電極4は少なくとも一対の電極であり、一例として電極4a、電極4bの二個一対の電極から構成され、各電極の裏面が被治療者の皮膚表面に貼り付ける貼付面とされるホック式のゲル電極より構成されている。電極4a及び電極4bの各ホックは中途位置で二本に分岐した第二ケーブル6の各先端側に係着され、第二ケーブル6の基端側の接続プラグ6aは装置本体2に設けられた第二出力コネクタ8に着脱自在に挿嵌される。
【0017】
装置本体2には、治療条件の設定や変更などを行う操作スイッチ部9、設定された治療条件などの情報を表示する液晶表示部10、LED表示部11が設けられている。操作スイッチ部9は、主電源の入切を行う電源スイッチ9a、電気刺激の出力を調整する調節摘み9b、液晶表示部10のカーソルの移動や治療条件の設定値の増減の際に操作する矢印スイッチ9c、治療条件の設定及び変更を行う決定スイッチ9d、電源スイッチ9aと操作ロックスイッチ9e以外の操作を無効にする操作ロックスイッチ9eの各種スイッチ群より構成されている。
【0018】
図2は電気刺激装置1の電気的構成を示すブロック図である。電気刺激装置1は、電気刺激手段12、出力切替部13、筋電検出回路(筋電位検出手段)14、電源回路15、電池電圧検出回路16、記憶部17及び制御部(制御手段)18を有しており、これらは装置本体2の内部に設けられている。制御部18は電気刺激手段12、出力切替部13、記憶部17、液晶表示部10及びLED表示部11を制御するもので、マイクロコントローラ(マイコン)により構成される。記憶部17は設定された施療条件などを読み出し可能に記憶するもので、例えば不揮発性メモリ(EEPROM)で構成される。
【0019】
電気刺激手段12は、両用電極3及び電気刺激用電極4に電気刺激を供給する手段であり、電池電源19、電池電源19の電圧を昇圧し出力用電源として供給するDC-DCコンバータ20、DC-DCコンバータ20から入力された電圧を制御する出力制御回路21、出力制御回路21からの出力電圧を昇圧する出力トランス22、出力トランス22からの電気刺激(出力電流)を検出する電流検出回路23から構成されている。電流検出回路23で検出された出力電流信号は制御部18に入力され、制御部18は出力制御回路21を制御することで、例えば過電流の発生を防止している。
【0020】
電池電源19として、アルカリなどの乾電池を使用でき、リチウムイオン二次電池などの充電式電池を採用しても構わない。また、電池電源19の電圧値を検出する電池電圧検出回路16が設けられており、電池電圧検出回路16により電池電源19の電圧値が第一の閾値にまで低下したことが検出されると、制御部18は電圧値の低下を液晶表示部10に画像表示して施療者等に報知する。また、電池電源19の電圧値が第一の閾値より低い第二の閾値に到達すると、制御部18は電気刺激装置1の電源を切断する。なお、電源回路15は電池電源19に接続され制御部18に制御用電源を供給するための回路である。
【0021】
電気刺激装置1の施療条件としては、施療モード、施療時間、電気刺激の最小強度及び最大強度、筋電検出感度を操作スイッチ部9にて設定することができる。施療モードと施療時間は、矢印スイッチ9cを適宜操作して設定する。電気刺激の最大強度及び最小強度は調節摘み9bの回転量に応じて増減する。同様に筋電検出感度も調節摘み9bの回転量に応じて増減し、調節摘み9bを時計回りに回すと感度値が増加し、反時計回りに回すと感度値が下降する。
【0022】
電気刺激装置1の治療モードとして、治療対象部位とは異なる部位の筋活動電位に比例した強度のパルスを治療対象部位に出力する外部アシストモードがある。また、外部アシストモードの他に、設定した刺激条件で電気刺激を出力するノーマルモード、治療対象部位とは異なる部位の筋活動電位が設定閾値に達すると設定した刺激条件で治療対象部位に電気刺激を出力する外部トリガーモード、治療対象部位の筋活動電位に比例した強度のパルスを出力するパワーアシストモード、外部センサ(圧力センサ、角度センサ、加速度センサ等)からの入力によりパルス出力のオン/オフを制御するセンサトリガモード等のうちの1つ又は複数のモードを、電気刺激装置1の治療モードとして設けるようにしてもよい。
【0023】
次に、筋電位検出の構成について説明する。出力トランス22から所定周波数(例えば20Hz)で所定パルス幅(例えば50μs)の双方向性方形波を、三回をひとつの単位として繰返し二極電極3aと基準電極3b間に出力し、この繰返しの間(例えば8ms)の筋電位を二極電極3aの二つの電極間で検出する。検出された筋電位は筋電検出回路14に入力され、不図示の増幅器等により制御部18が認識できる程度にまで増幅されて制御部18に取り込まれる。制御部18は、信号処理を行って筋電位を算出し、次の電気刺激が、算出した筋電位の強度に比例した強度となるよう出力制御回路21を制御する。外部アシストモードでは、出力切替部13によって電気刺激手段12からの電気刺激が第二出力コネクタ8に出力されるように設定されており、電気刺激用電極4の電極4aと電極4b間に出力電流が流れ、電気刺激が付与される。筋電位の強度に比例した電気刺激の強度は操作スイッチ部9で設定された最大強度で制限され、それ以上の強度の電気刺激が印加されることはない。
【0024】
また、LED表示部11の5個のLEDは検出された筋電位の強度に応じて点灯し、筋電位の強度がどのレベルにあるかを施療者や被治療者が視覚的に知ることができる。筋電位強度は零から最大値の範囲で6つの区間に区分し、筋電位強度が最低の強度区分に属するときは5個のLEDは全く点灯せず、筋電位強度が増加し次の区間に属すると最左のLEDが1個だけ点灯し(レベル1)、その次の区分に属すると最左から2個目までの計2個のLEDが点灯する(レベル2)。以下、筋電位強度が属する区間に応じてそれぞれ計3~5個のLEDが点灯(レベル3~5)するようになっている。
【0025】
次に、施療者が電気刺激装置1の外部アシストモードを用いて脳血管障害の被治療者を施療する例を説明する。
図3に示すように、施療者は、被治療者の麻痺のある肢体(左上肢)であって、随意収縮の可能な上腕二頭筋(第1の筋)M1の最大筋腹部に両用電極3を貼り付ける。また、電気刺激用電極4を被治療者の左上肢の短橈側手根伸筋(第2の筋)M2の最大筋腹部と長橈側手根伸筋(第2の筋)M3の最大筋腹部に貼り付ける。短橈側手根伸筋M2と長橈側手根伸筋M3は、上腕二頭筋M1による運動に伴う共同運動(単一関節の運動を他関節の運動と独立して行うことができず、常に他と共同し、かつある定まったパターンに従ってのみ運動できない状態。例えば、肘関節の屈曲動作の際に、手関節の屈曲動作と手指の屈曲動作を伴う)を引き起こす筋(橈骨手根屈筋、長掌筋、尺側手根屈筋)に対する拮抗筋である。
【0026】
施療者は、電気刺激装置1の電源スイッチ9aを入れ、液晶表示部10の表示を見ながら操作スイッチ部9の各種スイッチを操作して、施療モードを外部アシストモードに設定するほか、施療時間、電気刺激の最小強度及び最大強度、筋電検出感度の諸々の施療条件を設定する。筋電検出感度は前腕に力を入れたときにLED表示部11の筋電位レベルLEDが5個全て点灯し、脱力したときに筋電位レベルLEDが全て消灯するよう調節摘み9bにて筋電検出感度値を調節する。力を強く入れても筋電位レベルLEDが全て点灯しないときや施療中に電気刺激の強度が弱いと感じたときは筋電検出感度値が高くなるように調節を行い、一方、脱力しても筋電位レベルLEDが全て消灯しない場合や施療中に電気刺激の強度が強いと感じときは筋電検出感度値が低くなるよう調整を行えばよい。脱力したときに筋電位レベルLEDが全て消灯するように筋電検出感度値を調整するのは、筋電検出回路14にノイズが侵入すると、筋から筋電位が出ていないにもかかわらず、筋電位が検出されたと誤認識して予期しない電気刺激が出力される可能性があるためである。
【0027】
外部アシストモードでは電気刺激の大きさは両用電極4で検出された筋電位の大きさによって決定されるため、調節摘み9bでの出力調整は不要である。前腕に力を入れると、両用電極4で検出された筋電位は筋電検出回路14に入力され、制御部18が筋電位量を算出して、その大きさに応じた電気刺激が電気刺激用電極4の電極4aと電極4bとの間に流れ、短橈側手根伸筋M2や長橈側手根伸筋M3に電気刺激が印加される。この電気刺激は、上腕二頭筋M1の収縮時に手関節が背屈する作用を及ぼす。設定した施療時間が経過すると、電気刺激の出力が自動で停止するので、施療を終了する。
【0028】
次に、実施の形態に係る電気刺激装置1としてアイビスプラスGD-611(オージー技研株式会社製)を用い、外部アシストモードにより被治療者に電気刺激を行った実験について説明する。被治療者として、脳血管障害の患者6名(男性3名、女性3名)を対象にした。脳血管障害とは、脳の血管が障害を受けることによって生じる疾患の総称で、脳出血(出血性脳血管障害)と脳梗塞(虚血性脳血管障害)の2つに分類され、さらに脳出血は脳内出血とクモ膜下出血、脳梗塞は脳血栓および脳塞栓に分類される。主症状に運動麻痺があり、ほとんどが片側のみが障害される片麻痺である。被治療者6名のうち、脳出血の患者が4名、脳梗塞の患者が2名である。
【0029】
実験では訓練(後述)の実施を月曜日から金曜日の週5回とし(祝日などで実施しない場合もある)、訓練を数日間にわたって行った。訓練では電気刺激装置1を使用し、
図3に示すように被治療者の麻痺のある腕の上腕二頭筋(第1の筋)M1の最大筋腹部に両用電極3を貼り付け、短橈側手根伸筋(第2の筋)M2の最大筋腹部と長橈側手根伸筋(第2の筋)M3の最大筋腹部に電気刺激用電極4を貼り付ける。そして、1日20分間、被治療者のできる範囲で肘関節を屈曲する動き(上腕二頭筋M1が収縮する動き)を繰り返すとともに、上腕二頭筋M1の筋電位量に合わせ、短橈側手根伸筋M2や長橈側手根伸筋M3に電気刺激を印加した。ここで、電気刺激の出力波形は、パルス幅50μsecの双方向性方形波の3回繰り返しを1つの単位として、出力周波数20Hzで繰り返し出力される波形である。なお、被治療者が脳血管障害を発症してから訓練を開始するまでの期間は6.8±1.9(日)であり、訓練を行った日数は10.1±7.1(日)である。
【0030】
実験結果として、被治療者の状態をFMAと握力により評価した結果を以下の表1に示す。握力はデジタル握力計(グリップD)TKK-5401(竹井機器工業株式会社製)を用いて測定した。
【表1】
【0031】
表1に記載のp値とは、評価したデータ内での分散の比率から算出され、有意差が生じているか否かを判断する指標であり、p値が有意水準よりも低い値であると有意差があると判断される。ここで有意水準とは、ある事象が起こる確率が偶然とは考えにくい(有意である)と判断する基準となる確率であり、通常では5%を使用する。FMAとしては上肢機能の評価点数と、上肢機能の評価項目である「A.肩/肘/前腕の機能」、「B.手関節の機能」、「C.手指の機能」、「D.協調/俊敏性」の各評価点数を示す。表1において「実施前」は被治療者が最初の訓練を実施する前の状態を評価した評価点数であり、「実施後」は被治療者が数日間にわたる訓練を実施した後の状態を評価した評価点数である。また、上肢機能の評価点数、握力の結果をそれぞれ
図4(a)、
図4(b)に示す。この実験結果によれば、「C.手指の機能」及び「D.協調/俊敏性」については有意に改善していないが、「A.肩/肘/前腕の機能」及び「B.手関節の機能」が改善することで上肢機能が改善しており、握力についても改善していることがわかる。今回行った実験ではFMAによる評価が改善していることから、電気刺激装置1を使用した訓練を行うことで共同運動の解体が行われ、その結果上肢機能が改善したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
脳血管障害に対するリハビリテーション治療に用いられる電気刺激装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 電気刺激装置
3 両用電極(第1電極)
3a 二極電極
3b 基準電極
4 電気刺激用電極(第2電極)
4a、4b 電極
12 電気刺激手段
14 筋電検出回路(筋電位検出手段)
18 制御部(制御手段)
M1 上腕二頭筋(第1の筋)
M2 短橈側手根伸筋(第2の筋)
M3 長橈側手根伸筋(第2の筋)