(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103689
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】エンジンの吸排気システム
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20230720BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20230720BHJP
F02M 33/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
F02M35/104 A
F02B43/00 Z
F02M33/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004347
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久下 喬弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 敬之
(72)【発明者】
【氏名】原 崇
(72)【発明者】
【氏名】田貝 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】中山 貞夫
(57)【要約】
【課題】未燃の燃料の排出を抑制する。
【解決手段】エンジン100の吸排気システム1は、吸気流路200と、複数の気筒を有するエンジン100の複数の燃焼室108の各々と吸気流路200とを接続し、燃料噴射弁が設けられる複数の分岐流路202と、互いに異なる分岐流路202どうしを接続する接続流路500と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気流路と、
複数の気筒を有するエンジンの複数の燃焼室の各々と前記吸気流路とを接続し、燃料噴射弁が設けられる複数の分岐流路と、
互いに異なる前記分岐流路どうしを接続する接続流路と、
を備える、
エンジンの吸排気システム。
【請求項2】
前記接続流路には、開閉弁が設けられる、
請求項1に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項3】
前記接続流路を介して接続される複数の前記気筒のうちのいずれかの前記気筒の吸気弁の開弁期間に、前記開閉弁を開弁させる制御装置を備える、
請求項2に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項4】
前記接続流路を介して接続される複数の前記気筒の吸気弁の開弁期間は、互いに重複しない、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジンの吸排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの吸排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼室、吸気弁および排気弁を有するエンジンがある。このようなエンジンでは、例えば、特許文献1に開示されているように、燃焼室と連通する吸気ポートが吸気弁によって開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸気流路に燃料噴射弁が設けられるシステムでは、吸気弁が閉弁した状態において、燃料噴射弁から噴射された燃料の一部が吸気ポート内に残留している場合がある。ここで、排気行程から吸気行程に切り替わる際に、吸気弁および排気弁の双方が開弁している状況が生じ得る。吸気弁および排気弁の双方が開弁している状況において、吸気ポート内に残留している未燃の燃料が排気ポートを通って排出される吹き抜けが生じることがある。熱効率を向上させる観点、または、温室効果ガスの排出を抑制する観点では、未燃の燃料の吹き抜けによる排出を抑制することが望ましい。
【0005】
本開示の目的は、未燃の燃料の排出を抑制することが可能なエンジンの吸排気システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のエンジンの吸排気システムは、吸気流路と、複数の気筒を有するエンジンの複数の燃焼室の各々と吸気流路とを接続し、燃料噴射弁が設けられる複数の分岐流路と、互いに異なる分岐流路どうしを接続する接続流路と、を備える。
【0007】
接続流路には、開閉弁が設けられてもよい。
【0008】
接続流路を介して接続される複数の気筒のうちのいずれかの気筒の吸気弁の開弁期間に、開閉弁を開弁させる制御装置を備えてもよい。
【0009】
接続流路を介して接続される複数の気筒の吸気弁の開弁期間は、互いに重複しなくてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、未燃の燃料の排出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る吸排気システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るエンジンの各気筒の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るエンジンの各気筒の吸気弁の開弁期間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る吸排気システム1の構成を示す模式図である。吸排気システム1は、エンジン100の吸気および排気に関するシステムである。
図1に示すように、吸排気システム1は、エンジン100と、吸気流路200と、排気流路300と、過給機400と、接続流路500a、500b、500cと、制御装置600とを備える。以下では、接続流路500a、500b、500cを区別しない場合、単に接続流路500とも呼ぶ。
【0014】
エンジン100は、複数の気筒を有する。
図1の例では、エンジン100は、第1気筒#1と、第2気筒#2と、第3気筒#3と、第4気筒#4と、第5気筒#5と、第6気筒#6とを有する。ただし、エンジン100の気筒数は、6つ以外であってもよい。
図2は、本実施形態に係るエンジン100の各気筒の構成を示す模式図である。
図2では、吸気ポート104a、排気ポート104b、燃料噴射弁112および点火装置114が、同一断面上に図示されている。ただし、吸気ポート104a、排気ポート104b、燃料噴射弁112および点火装置114は、同一断面上に位置しなくてもよい。
【0015】
図2に示すように、エンジン100は、シリンダライナ102、シリンダヘッド104、および、ピストン106を備える。ピストン106は、シリンダライナ102内に収容される。シリンダライナ102、シリンダヘッド104およびピストン106によって、燃焼室108が形成される。
【0016】
シリンダヘッド104には、吸気ポート104aおよび排気ポート104bが形成される。吸気ポート104aおよび排気ポート104bは、燃焼室108に開口する。吸気弁110aは、吸気ポート104aのうち、燃焼室108側の開口を開閉する。排気弁110bは、排気ポート104bのうち、燃焼室108側の開口を開閉する。吸気弁110aおよび排気弁110bの開閉動作は、不図示のカムシャフトの回転に伴って行われる。
【0017】
吸気ポート104aには、後述する吸気流路200の分岐流路202を形成する配管が接続される。吸気ポート104aを介して、燃焼室108に混合気が流入する。排気ポート104bには、後述する排気流路300の分岐流路302を形成する配管が接続される。燃焼室108から排気ポート104bを介して排気ガスが排出される。
【0018】
燃料噴射弁112は、燃料供給源と接続される。燃料供給源は、例えば、不図示の燃料タンク、または、都市ガス等のパイプラインである。燃料噴射弁112は、吸気流路200の分岐流路202に設けられる。燃料噴射弁112の先端部は、吸気ポート104aに臨む。燃料噴射弁112は、燃料ガスを吸気ポート104aに噴射する。燃料ガスは、例えば、LNG(液化天然ガス)をガス化して生成される。燃料ガスは、LNGに限らず、例えば、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油、アンモニアまたは水素等をガス化したものであってもよい。エンジン100は、燃料ガスを燃料として用いるガスエンジンである。以下では、燃料ガスを単に燃料とも呼ぶ。
【0019】
点火装置114は、シリンダヘッド104に設けられる。点火装置114の先端部は、燃焼室108内に突出する。
【0020】
エンジン100は、4サイクルエンジンである。吸気行程において、燃料噴射弁112から燃料が噴射され、吸気弁110aが開弁し、排気弁110bが閉弁した状態になる。ピストン106が下死点に向かい、吸気ポート104aから燃焼室108に吸気および燃料が吸入される。圧縮行程において、吸気弁110aおよび排気弁110bが閉弁した状態になる。ピストン106が上死点に向かい、燃焼室108内の混合気が圧縮される。混合気は点火装置114により着火されて燃焼し、燃焼行程において、ピストン106が下死点側に押圧される。排気行程において、吸気弁110aが閉弁し、排気弁110bが開弁した状態になる。ピストン106が上死点に向かい、燃焼後の排気ガスが排気ポート104bを通って燃焼室108から排出される。以下、
図1に戻り、説明を続ける。
【0021】
吸気流路200は、エンジン100の燃焼室108と連通する。吸気流路200には、燃焼室108に供給される空気である吸気が流通する。吸気流路200の上流側の端部には、空気が外部から取り込まれる不図示の吸気口が設けられる。吸気流路200は、複数の燃焼室108とそれぞれ連通する複数の分岐流路202を有する。複数の分岐流路202は、吸気流路200の下流側に設けられる。複数の燃焼室108の各々と吸気流路200とは、複数の分岐流路202によって接続される。上述したように、分岐流路202を形成する配管は、エンジン100の吸気ポート104aと接続される。吸気ポート104aは、分岐流路202のうちの下流側の端部に相当する。吸気ポート104aは、吸気流路200に含まれる。
【0022】
排気流路300は、エンジン100の燃焼室108と連通する。排気流路300には、燃焼室108から排出された排気ガスが流通する。排気流路300の下流側の端部には、排気ガスが外部に排出される不図示の排気口が設けられる。排気流路300は、複数の燃焼室108とそれぞれ連通する複数の分岐流路302を有する。複数の分岐流路302は、排気流路300の上流側に設けられる。上述したように、分岐流路302を形成する配管は、エンジン100の排気ポート104bと接続される。排気ポート104bは、分岐流路302のうちの上流側の端部に相当する。排気ポート104bは、排気流路300に含まれる。
【0023】
過給機400は、コンプレッサ402とタービン404とを有する。コンプレッサ402の翼車、および、タービン404の翼車は、一体として回転する。コンプレッサ402の翼車とタービン404の翼車とは、シャフトによって連結されている。
【0024】
コンプレッサ402は、吸気流路200のうち分岐流路202より上流側に設けられている。コンプレッサ402は、吸気口から取り込まれた吸気を圧縮して、下流側に送出する。吸気流路200のうち分岐流路202より上流側、かつ、コンプレッサ402より下流側には、インタークーラC1が設けられている。インタークーラC1の内部を流通する吸気は、インタークーラC1の外部の空気と熱交換することによって冷却される。インタークーラC1を通過した吸気は、各分岐流路202を介して各燃焼室108に送られる。なお、インタークーラC1として、吸気の冷却にエンジン冷却水や工業用水などの冷却水を用いるものを使用することもできる。
【0025】
タービン404は、排気流路300のうち分岐流路302より下流側に設けられている。エンジン100から排出された排気ガスは、各分岐流路302を介してタービン404に送られる。タービン404に送られた排気ガスは、タービン404を通過して、排気口から排出される。タービン404は、タービン404の翼車が排気ガスによって回されることによって、回転動力を生成する。タービン404により生成された回転動力は、シャフトを介してコンプレッサ402に伝達される。
【0026】
接続流路500は、互いに異なる分岐流路202どうしを接続する。
図1の例では、接続流路500として、接続流路500a、接続流路500bおよび接続流路500cが設けられている。接続流路500は、後述するように、エンジン100の吸気ポート104a内に残留する燃料を他の気筒へ送るために設けられている。
【0027】
接続流路500aは、第1気筒#1に接続される分岐流路202と、第6気筒#6に接続される分岐流路202とを接続する。つまり、第1気筒#1と第6気筒#6とが、接続流路500aを介して接続される。接続流路500bは、第2気筒#2に接続される分岐流路202と、第5気筒#5に接続される分岐流路202とを接続する。つまり、第2気筒#2と第5気筒#5とが、接続流路500bを介して接続される。接続流路500cは、第3気筒#3に接続される分岐流路202と、第4気筒#4に接続される分岐流路202とを接続する。つまり、第3気筒#3と第4気筒#4とが、接続流路500cを介して接続される。
【0028】
図2の例では、接続流路500は、吸気ポート104aと接続される。つまり、各接続流路500は、2つの気筒の吸気ポート104aどうしを接続する。ただし、吸気流路200において接続流路500が接続される位置は、後述するように、
図2の例に限定されない。
【0029】
図1に示すように、各接続流路500には、開閉弁502が設けられている。開閉弁502は、接続流路500を開閉可能である。
図1の例では、開閉弁502として、開閉弁502a、開閉弁502bおよび開閉弁502cが設けられている。開閉弁502aは、接続流路500aに設けられる。開閉弁502bは、接続流路500bに設けられる。開閉弁502cは、接続流路500cに設けられる。
【0030】
制御装置600は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む。制御装置600は、吸排気システム1中の各装置の動作を制御する。例えば、制御装置600は、エンジン100の動作を制御する。例えば、制御装置600は、各開閉弁502の動作を制御する。
【0031】
ここで、吸気弁110aが閉弁した状態において、燃料噴射弁112から噴射された燃料の一部が吸気ポート104a内に残留している場合がある。吸排気システム1では、吸気ポート104aに残留している燃料が、接続流路500を介して他の気筒に送られるようになっている。接続流路500を介した燃料の移動は、開閉弁502の開閉動作によって実現される。以下、
図3を参照して、接続流路500を介した燃料の移動について説明する。
【0032】
図3は、エンジン100の各気筒の吸気弁110aの開弁期間を示す図である。
図3では、各気筒の吸気弁110aの開弁期間が、クランク角により示されている。
図3では、第1気筒#1の吸気行程開始のクランク角を0degとしている。
図3中の矢印で示す期間が吸気弁110aの開弁期間である。エンジン100では、第1気筒#1、第3気筒#3、第5気筒#5、第6気筒#6、第4気筒#4、第2気筒#2の順に、燃焼が起こるようになっている。ゆえに、第1気筒#1、第3気筒#3、第5気筒#5、第6気筒#6、第4気筒#4、第2気筒#2の順に、吸気行程が行われ、吸気弁110aが開弁する。
【0033】
図3に示すように、吸気弁110aの開弁期間は、クランク角度で180°程度の期間である。例えば、第1気筒#1の開弁期間は、クランク角度で大凡0°から180°までの期間である。第3気筒#3の開弁期間は、クランク角度で大凡120°から300°までの期間である。第5気筒#5の開弁期間は、クランク角度で大凡240°から420°までの期間である。第6気筒#6の開弁期間は、クランク角度で大凡360°から540°までの期間である。第4気筒#4の開弁期間は、クランク角度で大凡480°から660°までの期間である。第2気筒#2の開弁期間は、クランク角度で大凡600°から60°までの期間である。このように、各気筒の吸気弁110aの開弁期間の開始タイミングは、クランク角度で120°ずつズレている。
【0034】
ここで、制御装置600は、接続流路500を介して接続される気筒のうちのいずれかの気筒の吸気弁110aの開弁期間に、当該接続流路500に設けられる開閉弁502を開弁させる。それにより、各気筒の吸気ポート104aに残留している燃料を、接続流路500を介して他の気筒に送ることが実現される。一方、接続流路500を介して接続されるいずれの気筒の吸気弁110aも開弁していない場合、制御装置600は、当該接続流路500に設けられる開閉弁502を閉弁させる。
【0035】
制御装置600は、例えば、接続流路500を介して接続される気筒のうちのいずれかの気筒の吸気弁110aの開弁期間の開始時点から終了時点までの間に亘って、当該接続流路500に設けられる開閉弁502を開弁させる。ただし、制御装置600は、上記の開弁期間のうちの少なくとも一部の期間において、上記の開閉弁502を開弁させればよい。
【0036】
制御装置600は、接続流路500aを介して接続される第1気筒#1および第6気筒#6の一方の気筒の吸気弁110aの開弁期間に、接続流路500aに設けられる開閉弁502aを開弁させる。
【0037】
図3に示すように、第1気筒#1の吸気弁110aの開弁期間において、開閉弁502aが開弁する。この際、第6気筒#6の吸気弁110aは閉弁しているので、第1気筒#1の吸気ポート104a内の圧力は、第6気筒#6の吸気ポート104a内の圧力よりも低くなっている。それにより、吸気弁110aが閉弁している第6気筒#6の吸気ポート104aに残留している燃料が、接続流路500a内に吸引され、接続流路500aを通って第1気筒#1の吸気ポート104aに送られる。ゆえに、第6気筒#6において、排気行程から吸気行程に切り替わる際に、吸気弁110aおよび排気弁110bの双方が開弁している状況において、未燃の燃料が排気ポート104bを通って排出される吹き抜けが抑制される。
【0038】
図3に示すように、第6気筒#6の吸気弁110aの開弁期間においても、開閉弁502aが開弁する。この際、第1気筒#1の吸気弁110aは閉弁しているので、第6気筒#6の吸気ポート104a内の圧力は、第1気筒#1の吸気ポート104a内の圧力よりも低くなっている。それにより、吸気弁110aが閉弁している第1気筒#1の吸気ポート104aに残留している燃料が、接続流路500a内に吸引され、接続流路500aを通って第6気筒#6の吸気ポート104aに送られる。ゆえに、第1気筒#1においても、未燃の燃料の吹き抜けが抑制される。
【0039】
制御装置600は、接続流路500bを介して接続される第2気筒#2および第5気筒#5の一方の気筒の吸気弁110aの開弁期間に、接続流路500bに設けられる開閉弁502bを開弁させる。それにより、
図3に示すように、第2気筒#2の吸気弁110aの開弁期間、および、第5気筒#5の吸気弁110aの開弁期間において、開閉弁502bが開弁する。ゆえに、上記と同様に、第2気筒#2および第5気筒#5において、未燃の燃料の吹き抜けが抑制される。
【0040】
制御装置600は、接続流路500cを介して接続される第3気筒#3および第4気筒#4の一方の気筒の吸気弁110aの開弁期間に、接続流路500cに設けられる開閉弁502cを開弁させる。それにより、
図3に示すように、第3気筒#3の吸気弁110aの開弁期間、および、第4気筒#4の吸気弁110aの開弁期間において、開閉弁502cが開弁する。ゆえに、上記と同様に、第3気筒#3および第4気筒#4において、未燃の燃料の吹き抜けが抑制される。
【0041】
上記では、各接続流路500に開閉弁502が設けられる例を説明した。上記の例では、接続流路500を介した燃料の移動が、開閉弁502の開閉動作によって適切に実現される。例えば、上述したように、開閉弁502を開弁させることによって、各気筒の吸気ポート104aに残留している燃料を、接続流路500を介して他の気筒に送ることが実現される。また、接続流路500を介した燃料の移動が行われた後に開閉弁502を閉弁させることによって、他の気筒に送られた燃料が接続流路500を介して逆流することが抑制される。
【0042】
ただし、接続流路500には、開閉弁502が設けられなくてもよい。この場合にも、接続流路500を介して接続される気筒のうちのいずれかの気筒の吸気弁110aの開弁期間において、気筒間で吸気ポート104a内の圧力の差が生じる。それにより、接続流路500を介した燃料の移動が行われるので、各気筒の吸気ポート104aに残留している燃料が、接続流路500を介して他の気筒に送られる。
【0043】
上記のように、吸排気システム1では、互いに異なる分岐流路202どうしが接続流路500により接続される。それにより、各気筒の吸気ポート104aに残留している燃料を、接続流路500を介して他の気筒に送ることができる。ゆえに、未燃の燃料が排気ポート104bを通って排出される吹き抜けが抑制される。よって、熱効率の向上、および、温室効果ガスの排出の抑制が実現される。
【0044】
特に、吸排気システム1では、接続流路500を介して接続される複数の気筒の吸気弁110aの開弁期間は、互いに重複しない。具体的には、
図3に示すように、接続流路500aを介して接続される第1気筒#1および第6気筒#6の吸気弁110aの開弁期間は、互いに重複しない。接続流路500bを介して接続される第2気筒#2および第5気筒#5の吸気弁110aの開弁期間は、互いに重複しない。接続流路500cを介して接続される第3気筒#3および第4気筒#4の吸気弁110aの開弁期間は、互いに重複しない。
【0045】
ゆえに、接続流路500を介して接続される一方の気筒の吸気弁110aが開弁している時には、他方の気筒の吸気弁110aが閉弁している状況となる。よって、接続流路500を介して接続される一方の気筒の吸気弁110aが開弁している時に、気筒間で吸気ポート104a内の圧力の差が生じている状況を適切に実現できる。例えば、接続流路500を介して接続される一方の気筒の吸気弁110aの開弁期間の開始時点から終了時点までの間に亘って、気筒間で吸気ポート104a内の圧力の差が生じている状況を実現できる。それにより、各気筒の吸気ポート104aに残留している燃料を、接続流路500を介して他の気筒に送ることがより適切に実現される。
【0046】
ただし、接続流路500を介して接続される複数の気筒の吸気弁110aの開弁期間は、互いに部分的に重複してもよい。この場合にも、接続流路500を介して接続される一方の気筒の吸気弁110aが開弁している時に、他方の気筒の吸気弁110aが閉弁している状況が生じ得る。ゆえに、吸気ポート104aに残留している燃料を、接続流路500を介して他の気筒に送ることが可能である。
【0047】
上記では、吸気流路200において接続流路500が接続される位置が吸気ポート104aである例を説明した。ただし、吸気流路200において接続流路500が接続される位置は、吸気ポート104a以外であってもよい。ここで、吸気ポート104aに残留している燃料を接続流路500に効果的に送る観点では、吸気流路200において接続流路500が接続される位置は、吸気ポート104aにできるだけ近いことが好ましい。
【0048】
ただし、接続流路500を吸気ポート104aと接続する場合には、接続流路500をシリンダヘッド104内に通す必要がある。接続流路500をシリンダヘッド104内に通すことが設計上困難である場合等には、例えば、接続流路500を吸気流路200の分岐流路202のうちシリンダヘッド104より外側の部分と接続してもよい。この場合、吸気流路200において接続流路500が接続される位置は、燃料噴射弁112よりシリンダヘッド104側であってもよく、燃料噴射弁112よりシリンダヘッド104側と逆側であってもよい。つまり、接続流路500は、分岐流路202のうち燃料噴射弁112と吸気ポート104aの間の部分と接続してもよく、分岐流路202のうち燃料噴射弁112よりも上流側と接続してもよい。
【0049】
上記では、接続流路500により2つの気筒が接続される例を説明した。ただし、接続流路500により接続される気筒数は、2つ以外であってもよい。例えば、上記の例のようにエンジン100の気筒数が6つである場合、2つの接続流路500が設けられ、各接続流路500によって3つの気筒が接続されてもよい。この場合、例えば、一方の接続流路500によって、第1気筒#1と第4気筒#4と第5気筒#5とが接続され、他方の接続流路500によって、第2気筒#2と第3気筒#3と第6気筒#6とが接続されてもよい。それにより、接続流路500を介して接続される複数の気筒の吸気弁110aの開弁期間は、互いに重複しないようになる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
1 吸排気システム
100 エンジン
108 燃焼室
110a 吸気弁
112 燃料噴射弁
200 吸気流路
202 分岐流路
500 接続流路
500a 接続流路
500b 接続流路
500c 接続流路
502 開閉弁
502a 開閉弁
502b 開閉弁
502c 開閉弁
600 制御装置