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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103698
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】炭素固定装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20230720BHJP
   F24V 30/00 20180101ALI20230720BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230720BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230720BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230720BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C01B32/05
F24V30/00 301
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 100
B01D53/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004369
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】506213382
【氏名又は名称】アンヴァール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 重利
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA06
4D002BA13
4D002BA20
4D002CA06
4D002CA13
4D002DA06
4D002DA36
4D002EA02
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA23
4D020BB01
4D020BB03
4D020CA05
4D020CB01
4G146AA01
4G146BA09
4G146BC02
4G146BC28
4G146BC35B
4G146BC36B
4G146BC43
4G146DA02
4G146DA28
4G146DA29
4G146DA31
(57)【要約】
【課題】高い炭素固定の効率を発揮する炭素固定装置を提供する。
【解決手段】マグネシウムを二酸化炭素で燃焼反応させる反応室30と、加圧された二酸化炭素リッチな導入気体A3を反応室30に供給する供給手段20と、反応室30内にてアセチレンを酸素で燃焼させて反応を促す燃焼手段31と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムを二酸化炭素で燃焼反応させる反応室と、
加圧された二酸化炭素リッチな導入気体を前記反応室に供給する供給手段と、
前記反応室内にてアセチレンを酸素で燃焼させて前記燃焼反応を促す燃焼手段と、
を備えることを特徴とする炭素固定装置。
【請求項2】
前記燃焼手段は、前記アセチレンを導く第1流路と、前記酸素を導く第2流路と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の炭素固定装置。
【請求項3】
前記第2流路には、前記酸素の供給量を調節するための弁が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の炭素固定装置。
【請求項4】
前記炭素固定装置は、炭化カルシウムと水を反応させ生成したアセチレンを前記燃焼手段に供給するアセチレン生成室を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炭素固定装置。
【請求項5】
前記燃焼反応に応じて前記反応室から供給された気体のエネルギを用いて発電する発電手段と、
前記発電手段から残気体を排出する排出手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の炭素固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電、ガスフレアリング等で化石燃料の燃焼に伴って発生した二酸化炭素を低減するために、炭素固定を行う技術が知られている。このような技術には、二酸化炭素と金属酸化物を反応させて炭素固定を行う炭素固定装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、反応室を備える炭素固定装置が記載されている。反応室内には、連通路を通じて石炭の燃焼により発生した二酸化炭素を含む導入気体が流入され、当該気体と酸化カルシウムとが混在された状態で、反応室内の温度が750度に調節されている。これにより、反応室内で二酸化炭素を酸化カルシウムと反応させて炭酸カルシムの生成(炭酸塩化)が促進され、炭素固定が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-192416号公報(第4,5頁、第8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような炭素固定装置にあっては、二酸化炭素を酸化カルシウムと反応させて炭酸塩化により炭素固定を行うために反応室内の温度を780度以下に保つ必要があるため、炭素固定の効率を高めることが困難であった。
【0006】
発明者らは、マグネシウムと二酸化炭素を燃焼させることにより連鎖的に炭素固定を達成できることを見出したばかりでなく、二酸化炭素リッチな環境下でマグネシウムと二酸化炭素の燃焼を開始させる効率のよい手段を見出した。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、高い炭素固定の効率を発揮する炭素固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の炭素固定装置は、
マグネシウムを二酸化炭素で燃焼反応させる反応室と、
加圧された二酸化炭素リッチな導入気体を前記反応室に供給する供給手段と、
前記反応室内にてアセチレンを酸素で燃焼させて前記燃焼反応を促す燃焼手段と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、加圧された二酸化炭素リッチな環境下であっても、アセチレンを燃焼させることで、マグネシウムと二酸化炭素とを燃焼反応させることができた。また、アセチレンを酸素で燃焼させ、マグネシウムと二酸化炭素の反応を引き起こしつつ促進させることにより当該反応を確実に進めることができるとともに、かつ二酸化炭素濃度がある程度低くても当該反応を引き起こすことができる。さらに、マグネシウムと二酸化炭素とを燃焼反応させることにより生じた高熱を反応熱として利用することができるため、マグネシウムと二酸化炭素とを連鎖的に反応させることができる。
【0009】
前記燃焼手段は、前記アセチレンを導く第1流路と、前記酸素を導く第2流路と、を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、二酸化炭素リッチな空間であっても、確実かつ容易にアセチレンをマグネシウム近傍の所望の箇所で燃焼させることができる。
【0010】
前記第2流路には、前記酸素の供給量を調節するための弁が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、アセチレンの燃焼により発生する熱量を調節することができる。
【0011】
前記炭素固定装置は、炭化カルシウムと水を反応させ生成したアセチレンを前記燃焼手段に供給するアセチレン生成室を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、アセチレンを長期に亘って貯留せずとも適量のアセチレンを供給可能でありかつ炭化カルシウムを貯留すればよいため安全である。
【0012】
前記燃焼反応に応じて前記反応室から供給された気体のエネルギを用いて発電する発電手段と、
前記発電手段から残気体を排出する排出手段と、を更に備えることを特徴としている。
この特徴によれば、反応室における燃焼反応により高温高圧の気体が発生するため、効率よく発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1における炭素固定システムを示す概要図である。
図2】実施例1における炭素固定装置を示す模式図である。
図3】本発明の実施例2における炭素固定装置を示す模式図である。
図4】本発明の実施例3における炭素固定装置を示す模式図である。
図5】本発明の実施例4における炭素固定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、COリッチな環境下であってもアセチレン(H)を燃焼させることにより、混在させたマグネシウム(Mg)と二酸化炭素(CO)を効率よく直接反応させることができることを見出し、これを契機として全く新たな炭素の固定を図ったものである。
【0015】
本発明に係る炭素固定装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
本実施例の炭素固定装置10は、二酸化炭素(CO2)をマグネシウム(Mg)と反応させて炭素固定を行うものであり、図1に示されるように、炭素固定システム1の一部を構成している。炭素固定システム1は、海水を電解して水酸化カルシウム(Ca(OH))と水酸化マグネシウム(Mg(OH))を得る電解装置2と、Mgを得る還元装置3をさらに備えている。
【0017】
詳しくは、電解装置2で得られたMg(OH)に熱を与えることにより、下記反応式1により表される熱分解が行われることで、還元装置3に供給されるMgOは生成される。
Mg(OH)→MgO+HO・・・(反応式1)
【0018】
また、還元装置3に供給されるMgOは、後述する炭素固定装置10の第1反応室30においても生成される。
【0019】
還元装置3においては、酸化マグネシウム(MgO)を、炭化カルシウム(CaC)を還元剤とする下記反応式2により表される還元反応により、炭素固定装置10の第1反応室30における反応に利用されるMgが生成される。
MgO+CaC→Mg+CaO+2C・・・(反応式2)
【0020】
反応式2においてMgOの還元反応に必要なエネルギは、例えばパルスパワー波によって与えることができ、不活性ガス及び還元性ガスの雰囲気下でパルスパワー波を照射することにより、MgOの還元効率を高めることができる。不活性ガスとしては、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等を挙げることができる。還元性ガスとしては、CaCとの反応性が低い一酸化炭素(CO)が用いられることが好ましく、パルスパワー波の照射によりMgOがプラズマ化して発生する副産物としての酸素(O)とCOが反応してCOが発生する。尚、還元性ガスとしてのCOには、後述する炭素固定装置10の第1反応室30における反応(反応式3参照)や第2反応室32における反応(反応式5参照)で生成されたCOを回収したものが利用されてもよい。
【0021】
炭素固定装置10は、還元装置3等で発生したCOを還元装置3で得られたMgと反応させる第1反応室30と、第1反応室30の反応熱を利用して酸化カルシウム(CaO)と第1反応室30の反応により得られた炭素(C)を反応させる第2反応室32と、電解装置2で得られたCa(OH)を熱分解して第2反応室32で反応させるCaOを得る第3反応室33と、から主に構成されている。
【0022】
炭素固定装置10の第1反応室30においては、COをMgと反応させ、下記反応式3,4により表される炭素の固定が行われる。尚、第1反応室30における反応は、発熱反応である。詳しくは、CO濃度を大気よりも比較的高くした状態でCOをMgと反応させると、COはMgとは完全に反応せずCOが一部生じ、反応熱の温度が約1500度~約2000度となる(反応式3参照)。また、CO濃度が高濃度、例えば95%以上である場合には、COはMgと略完全に反応し、MgOとCとが生成されCOは生成されず、反応熱の温度が約3000度以上となる(反応式4参照)。COとMgの反応の観点からはCO濃度が100%であることが好ましい。本実施例においては、第1反応室30における反応熱の温度が約2000度~約3000度となるようにCO濃度が調整されることが好ましい。
Mg+CO→MgO+CO ・・・(反応式3)
2Mg+CO→2MgO+C・・・(反応式4)
【0023】
第2反応室32においては、第1反応室30で得られたCを第3反応室33で得られたCaOと反応させ、下記反応式5により表されるようにCaCが生成され、Cのリサイクルが行われる。尚、第2反応室32における反応は、約2000度の温度を必要とする吸熱反応である。
CaO+3C→CaC+CO・・・(反応式5)
【0024】
第3反応室33においては、電解装置2で得られたCa(OH)に熱を与えることにより、下記反応式6により表される熱分解が行われ、第2反応室32における反応に利用されるCaOが生成される。尚、第3反応室33における反応は、約600度程度の温度を必要とする吸熱反応である。
Ca(OH)→CaO+HO・・・(反応式6)
【0025】
尚、電解装置2ではCa(OH)とMg(OH)が得られる構成として説明したが、これに限らず、炭酸カルシウム(CaCO)とMg(OH)が得られる構成としてもよい。このような構成であれば、第3反応室33では、下記反応式7により表される熱分解が行われ、第2反応室32における反応に利用されるCaOが生成される。また、CaOと共に生成されるCOは、第1反応室30における反応に利用可能である。尚、第3反応室33における反応は、800度~900度程度の温度を必要とする吸熱反応である。
CaCO→CaO+CO・・・(反応式7)
【0026】
また、電解装置2において、電解によりCa(OH)とMg(OH)が回収された海水には、炭酸ガス(重炭酸イオン)が含まれていないため、該海水に還元装置3で発生したCO等の一部を吸収させることにより、炭素を固定してもよい。
【0027】
一方、第1反応室30においては、COをMgと反応させるにあたって約2000度~約3000度程度の温度が必要となる。そこで、第1反応室30には、COとMgとの反応を促進させるための温度を得るために、アセチレン(C)をOと燃焼させる燃焼手段31が設けられている。尚、燃焼手段31について詳しくは後述する。
【0028】
この燃焼手段31に供給されるCは、下記反応式8により表されるように、第2反応室32で生成されたCaCをアセチレン生成室34内でHOと混合することで生成される。また、同反応で生成されるCa(OH)は、電解装置2にて得られたCa(OH)と共に第3反応室33へと供給され、CaOの生成に再利用される。このように、Cそのものを長期に亘って貯留せずとも適量のCを供給可能でありかつCaCを貯留すればよいため安全である。
CaC+2HO→C+Ca(OH)・・・(反応式8)
【0029】
また、燃焼手段31は、第1反応室30内において、下記反応式9,10により表されるように、アセチレン生成室34にて生成されたCをOで燃焼させる。詳しくは、O濃度が大気中と同程度の状態でCをOで燃焼させると、CはOとは完全に反応せず煤(C)、COが一部生じ、反応熱の温度が約2000度以上となる(反応式9参照)。反応熱の温度は、O濃度を高めるほどに上昇し、O濃度が十分に高い状態(Cに対するOのモル比2対5(C:O=2:5)以上)では、CはOと完全に反応してCOとHOが生じ、反応熱の温度が約3000度~約3500度となる(反応式10参照)。
+O→C+CO+HO ・・・(反応式9)
2C+5O→4CO+2HO・・・(反応式10)
【0030】
尚、この燃焼で生じたC、CO、COについては、COは第1反応室30の反応に供され、Cは第2反応室32の反応に供され、COは第1反応室30の反応で生じたCOと同様に貯蔵タンク72に封入される。
【0031】
次いで、炭素固定装置10について図2を用いて詳しく説明する。図2に示されるように、本実施例の炭素固定装置10は、還元装置3および火力発電所の燃焼炉4において化石燃料を燃焼させたことによって発生した二酸化炭素リッチな排気が混合した導入気体A1を用いて炭素固定及び発電が可能となっている。
【0032】
炭素固定装置10は、COリッチな導入気体A1を圧縮して第1反応室30に供給する供給手段20と、第1反応室30と、燃焼手段31と、第1反応室30から供給された気体A4のエネルギを用いて発電する発電手段40と、第2反応室32と、第3反応室33と、発電手段40の下流側に配設されCOとCOを分離可能なセパレータ60と、セパレータ60によりCOが分離されたCOを含む気体A9を供給手段20に供給する循環手段80と、発電手段40により発電にエネルギが使用された残気体A10を排出する排出手段90と、を備えている。尚、以降の説明において、還元装置3および燃焼炉4側を上流側、排出手段90の後述する第8連通路91側を下流側として説明する。
【0033】
まず、供給手段20について説明する。供給手段20は、上流側から順に、還元装置3および燃焼炉4の下流側に連結された第1連通路21と、第1連通路21内にパルスパワー波を照射するパルスパワー波照射器22と、第1連通路21の下流側に配設された冷却器23と、冷却器23の下流側に配設された第2連通路24と、第2連通路24の下流側に連結された軸流式の圧縮機25と、圧縮機25の下流側及び第1反応室30の上流側に連結された第3連通路26と、から主に構成されている。
【0034】
第1連通路21には、循環手段80も連結されており、逆止弁82から気体A9を導入可能となっている。
【0035】
パルスパワー波照射器22は、第1連通路21内かつ後述する逆止弁82との合流箇所よりも上流側に配置されたプラグ22aからパルスストリーマ放電を実行可能となっている。本実施例では、パルスパワー波照射器22は、半値幅80nsの高電圧を繰り返し動作で発生可能であり、充電電圧を20kV、放電電流を170Aとし、電源を5pps(Pulses Per Second)で運転させることで、パルスパワー波を照射し、パルスストリーマ放電を生じせしめる。このように、短パルス、高電圧小電流、短サイクルで運転させ、グロー放電やアーク放電とならないようにすることが肝要である。尚、導入気体A1において、NOx、SOx等のような、COとMgの反応の妨げとなるような不純物の含有量が少ない場合には、パルスパワー波照射器22は配設されなくてもよい。また、導入気体A1の温度によっては、冷却器23も配設されなくてもよい。
【0036】
第1反応室30は、高耐熱かつ高耐圧に形成されており、図示しない投入口からMg粉末を投入可能となっている。尚、投入するMgは粉末以外の形状例えばフレーク状、バー状であってもよい。
【0037】
また、第1反応室30内には、電気的に火花を発生させる点火プラグ31aと、Cが供給されるアセチレン供給口31bと、Oが供給される酸素供給口31cが配置されており、第1反応室30内でCをOで燃焼可能となっている。
【0038】
ここで、本発明における燃焼手段31は、点火プラグ31aと、アセチレン供給口31bと、酸素供給口31cと、アセチレン生成室34とアセチレン供給口31bを接続するアセチレン流路31d(第1流路)と、酸素ボンベ35と酸素供給口31cを接続する酸素流路31e(第2流路)と、酸素流路31eの途中に設けられた流量制御弁31fを備えている。尚、点火プラグは、電気的に火花を発生させるもの以外の赤熱させる方式のものであってもよい。
【0039】
図2では図示を簡略しているが、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cは、近接配置され、かつそれぞれから出射されるCおよびOが混在するように、逆ハの字状に配置されている。これにより、CとOの混合ガスとなり、点火プラグ31aの火花により燃焼しやすくなっている。
【0040】
尚、CおよびOが混在することが肝要であるため、例えば一つの酸素供給口31cの周りに複数のアセチレン供給口31bが等配されている構成であってもよく、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cの数、配置は適宜変更されてもよい。
【0041】
アセチレン生成室34は、第1反応室30の外側に設けられており、第2反応室32で生成されたCaCと、外部からHOを供給可能に構成されている。尚、アセチレン生成室34に供給されるHOは、反応式1,6で生成されたものであってもよい。また、アセチレン生成室34に供給されるCaCは、第2反応室32の反応で得られたもの以外、すなわち外部から供給されるものであってもよい。
【0042】
第1反応室30内の下流側には、ガスタービン発電装置41のタービン42が配置されている。
【0043】
発電手段40は、第1反応室30内でCOとMgとが反応することで発生した高温高圧の気体A4を用いて発電可能なガスタービン発電装置41を有している。ガスタービン発電装置41は、高温高圧の気体A4の圧力により回転されるタービン42と、タービン42の回転に応じて発電可能な発電装置43と、から主に構成されている。
【0044】
第2反応室32は、ガスタービン発電装置41のタービン42の下流側に配設され、タービン42を通過して温度と圧力が低下した気体A5が通過するとともに、図示しない投入口から第3反応室33で得られたCaO粉末を投入可能となっている。尚、投入するCaOは粉末以外の形状例えばフレーク状、バー状であってもよい。また、CaO粉末は、第3反応室33で得られたものに限らず、例えば還元装置3におけるCaCを還元剤としたMgOの還元反応により得られるCaOであってもよい。
【0045】
第3反応室33は、第2反応室32の下流側に配設され、第2反応室32を通過して温度と圧力がさらに低下した気体A6が通過するとともに、図示しない投入口から電解装置2(図1参照)およびアセチレン生成室34で得られたCa(OH)粉末を投入可能となっている。
【0046】
セパレータ60は、第3反応室33の下流側に連結された第4連通路50の下流側に配設されている。また、セパレータ60の下流側には、気体A7からCOが回収された気体A8が流入する第5連通路70と、回収したCOによりCO濃度が高い気体A11が流入する第7連通路71がそれぞれ連結されている。また、第7連通路71の下流側には、COの貯蔵タンク72が連結されている。
【0047】
循環手段80は、上述した第5連通路70と、第5連通路70の下流側に連結された三方向弁Vと、三方向弁Vの一方の下流側に連結された第6連通路81と、第6連通路81の下流側に連結された逆止弁82と、から主に構成されている。
【0048】
排出手段90は、上述した第5連通路70と、三方向弁Vと、三方向弁Vの他方の下流側に連結され、炭素固定装置10の外部に連通する第8連通路91と、から主に構成されている。尚、図2では、三方向弁Vの第8連通路91が連結されている弁が閉弁状態となっている。
【0049】
次に、動作について説明する。還元装置3で得られたCOリッチな導入気体A1は、第1連通路21に流入される。導入気体A1は、CO濃度が約70%程度であり、CO以外にも、窒素(N)、水素(H)、酸素(O)、水蒸気(HO)等が含まれている。また、導入気体A1の温度は、300度程度であり、単位時間当たりの流量は、0.1×10-4/sである。
【0050】
矢印で示されるように、第1連通路21内に導入された導入気体A1は、パルスパワー波照射器22のプラグ22aから連続的に照射され続けているパルスストリーマ放電により発生している非熱平衡プラズマにより、導入気体A1に含まれるH、O、HO等の反応が促進され不純物がさらに少なくなる。
【0051】
導入気体A1は、矢印で示されるように、冷却器23に導出されて冷却され、約30度程度の気体A2となる。気体A2は、矢印で示されるように、第2連通路24を通過した後、圧縮機25により圧縮される。
【0052】
矢印で示されるように、圧力約2.0MPa、単位時間当たり流量5.0×10-5/sの圧縮・加圧された気体A3が第3連通路26を通過してMg粉末が投入されている第1反応室30に流入する。
【0053】
第1反応室30内では燃焼手段31によりCをOで燃焼させた熱をトリガーとしてCOとMgの反応が促進される。この動作については以下に詳しく説明する。これにより、気体A3に含まれるCOとMgが直接反応し、MgO、C、CO等が生成されることを確認した。すなわち、COの炭素固定がなされ、気体A3のCO濃度が低減された。
【0054】
COとMgとの燃焼反応が開始させるにあたって、まずアセチレン生成室34にCaCとHOを供給することでCを生成する。
【0055】
生成されたCは、アセチレン流路31dを通じてアセチレン供給口31bから第1反応室30内に供給される。これとともに、流量制御弁31fが閉弁状態からCに応じた量のOが供給される開度に開弁される。同時に点火プラグ31aを点火する。
【0056】
この燃焼による反応熱は、Oの供給量を増減することで、約2000度~約3500度に調節できる。本実施例では、この反応熱を3000度以上かつ5秒間継続するようにOの供給量を調整した。尚、この反応熱は、3000度に限られるものではなく、後述するようにCOによるMgの燃焼が開始され得る温度であればよく、さらに、第2反応室32に供されるCOの濃度にもよるが、この濃度が低いほど反応熱を高温とすることが好ましい。また、継続時間についても同様に5秒に限られない。
【0057】
をOで燃焼させた反応熱によりCOによるMgの燃焼が開始され、反応熱が発生し、以降は、第1反応室30内に気体A3が流入することで、COとMgとが連続的に反応することが観察された。このとき、第1反応室30内の温度は約2000度~約3000度であった。
【0058】
尚、CをOで燃焼させた反応熱によりCOによるMgの燃焼が開始されなかった場合には、COによるMgの燃焼が開始されるまで、所定間隔置きにCをOで燃焼させることを繰り返し行う。
【0059】
このように、MgとCOとがまだ燃焼反応していない状態では、燃焼手段31によるCとOとの燃焼をトリガーとしてMgとCOとを反応させることが可能であり、MgとCOとの反応が開始して以降の反応については、発生する高温の反応熱により連続的に反応させ続けることができる。
【0060】
また、MgとCOとの燃焼反応を効率よく生じさせるべく、CをOで燃焼させて生じた燃焼炎がMg粉末に直接あたるように点火プラグ31a、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cの位置を調整している。これにより、COリッチな空間であっても、確実かつ容易にCをMg近傍の所望の箇所で燃焼させることができる。そのため、MgとCOとを燃焼反応させるために要するCおよびOの量を少なくすることができる。
【0061】
ここで、CがOで燃焼する温度(約2000度~約3500度)、MgがCOで燃焼反応する温度(約2000度~約3000度)が共に高温であることから、燃焼手段31、特に第1反応室30内に配置されている点火プラグ31a、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cは通水等の冷却手段により、冷却されることが好ましい。このときの冷却水は、冷却器23と共通であってもよく、冷却手段にのみ供給されるものであってもよい。また、冷却手段に供給される流体は冷却水(HO)以外の液体であってもよく、気体であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0062】
また、点火プラグ31a、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cを保護する観点から、第1反応室30に供給される気体A3内のCO濃度は90%未満であり、好ましくは20~80%程度、より好ましくは70%程度であるとよい。CO濃度が70%程度の状態でCOをMgと反応させると、上述したように反応熱の温度が約2000度~約3000度となるため、点火プラグ31a、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cを保護するために必要な構成を簡素にする、または省略することができる。
【0063】
同様に、点火プラグ31aを保護する観点から、Cが燃焼する時間は短時間であることが好ましい。そのため、MgがCOと燃焼反応し始めたのち、素早く流量制御弁31fの弁開度を絞るまたは閉弁することが肝要である。
【0064】
また、アセチレン供給口31b、アセチレン流路31d、およびアセチレン生成室34を保護する観点から、アセチレン供給口31bの開口面積は、31dの流路断面積よりも狭くなっている。これにより、アセチレン供給口31bから離れた位置でCが燃焼する。尚、アセチレン供給口31bの開口面積を調整するような機構が設けられていてもよく、このような構成であれば、アセチレン生成室34におけるCの生成量が不十分な状態ではアセチレン供給口31bを閉塞し、一定以上の量が生成された場合にはその量に応じて開口面積を調整することで適切な位置で燃焼させることができる。
【0065】
また、アセチレン流路31dの途中には、逆火を防止するべく逆火防止器が設けられている。
【0066】
COとMgとの反応により、気体A3の温度が急激に上昇することに伴って、気体A3が急激に膨張するため、高温高圧の気体A4となり、下流側に噴出される。
【0067】
気体A4は、矢印で示されるように、第1反応室30の下流側から第2反応室32に流入しようとする。このとき、気体A4は、第1反応室30と第2反応室32との間に配設されているガスタービン発電装置41のタービン42を回転させる。この気体A4の通過に伴いタービン42が回転されることにより、ガスタービン発電装置41の発電装置43による発電が行われる。
【0068】
第2反応室32に流入した約2000度~約3000度の高温の気体A5には、第1反応室30における反応により生成され主にMgOとCからなる混合物の粒子が含まれており、気体A5中のCが第2反応室32に投入されているCaO粉末と反応し、CaC、CO等が生成されることを確認した。
【0069】
また、吸熱反応であるCaOとCとの反応により、気体A5の温度が急激に低下することに伴って、気体A5が急激に収縮するため、温度と圧力が低下した気体A6となり、下流側に噴出される。
【0070】
第3反応室33に流入した約1100度の高温の気体A6は、第3反応室33に投入されているCa(OH)粉末と反応し、CaO、HO等が生成されることを確認した。
【0071】
また、吸熱反応であるCa(OH)の熱分解反応により、気体A6の温度が急激に低下することに伴って、気体A6が急激に収縮するため、温度と圧力がさらに低下した気体A7となり、下流側に噴出される。
【0072】
第3反応室33から流出した気体A7は、矢印で示されるように、第4連通路50を通じてセパレータ60に導出される。セパレータ60では、気体A7に含まれるCOが分離されるため、高濃度のCOが含まれる気体A11と、COが分離された残りの気体である気体A8に分離される。高濃度のCOが含まれる気体A11は、矢印で示されるように、第7連通路71を通じて貯蔵タンク72に封入される。
【0073】
一方、COが分離された残りの気体である気体A8は、矢印で示されるように、第5連通路70に導出される。第5連通路70には、気体A8に含まれるCO濃度を測定可能な図示しない濃度センサが設けられており、CO濃度が一定(本実施例では、10vol%)以上である気体A9の場合には、三方向弁Vの第8連通路91側が閉弁状態となり、第5連通路70及び第6連通路81側が開弁状態となる。これにより、気体A9は、矢印で示されるように、三方向弁V、第6連通路81及び逆止弁82を通じて、第1連通路21に導出され、導入気体A1と共に上述したサイクルが繰り返し行われることとなる。
【0074】
また、CO濃度が一定(本実施例では、10vol%)未満である残気体A10の場合には、三方向弁Vの第6連通路81側が閉弁状態となり、第5連通路70及び第8連通路91側が開弁状態となる。これにより、残気体A10は、点線矢印で示されるように、三方向弁V及び第8連通路91を通じて外部に排出される。
【0075】
以上説明したように、本実施例の炭素固定装置10では、加圧された二酸化炭素(CO)リッチな導入気体A3に、燃焼手段31によるアセチレン(C)と酸素(O)との燃焼にて生じた反応熱を供給することで、COをマグネシウム(Mg)と反応させることができた。これにより、少なくとも酸化マグネシウム(MgO)と炭素(C)とが生成されることで炭素固定がなされるとともに、この反応は約2000度~約3000度の高温となることから、高温高圧の気体A4が発生するため、発電手段40による発電効率が高い。
【0076】
また、CをOで燃焼させ、MgとCOの燃焼反応を引き起こしつつ促進させることにより当該反応を確実に進めることができるとともに、かつCO濃度がある程度低くても(例えば大気中のCO濃度を僅かに上回る程度でも)当該反応を引き起こすことができる。さらに、MgとCOとを燃焼反応させることにより生じた高熱を反応熱として利用することができるため、MgとCOとを連鎖的に反応させることができる。
【0077】
また、炭素固定装置10の第1反応室30におけるMgとCOの反応で生じるCを第2反応室32において酸化カルシウム(CaO)と反応させて炭化カルシウム(CaC)を生成することにより、第1反応室30における反応により生成されるCをリサイクルして廃棄物を減らすとともに、第1反応室30の反応熱を利用して第2反応室32におけるCaOとCの反応に必要な高い温度(約2000度)を得ることができるため、少ないエネルギでCaCを得ることができる。詳しくは、第1反応室30における反応生成物である高温状態(約2000度~約3000度)のCが第2反応室32に投入されているCaOと反応することにより、第2反応室32を再加熱する必要なくエネルギ効率よくCaCを得ることができる。
【0078】
また、第1反応室30におけるMgとCOの反応による反応熱の温度が約2000度~約3000度とすることで、第1反応室30における反応生成物であるCが第2反応室32におけるCaOとの反応に必要な温度を保つことができる。
【0079】
また、炭素固定装置10は、水酸化カルシウム(Ca(OH))をCaOとHOに熱分解する第3反応室33を備えることにより、第3反応室33で得られたCaOを第2反応室32におけるCaCの生成の材料として利用できる。
【0080】
また、第3反応室33は、第2反応室32の下流に配設され、第2反応室32における排熱を利用して第3反応室33におけるCa(OH)の熱分解に必要な温度を得ることができるため、エネルギを有効活用できる。
【0081】
また、本実施例の炭素固定システム1は、海水を電解してCa(OH)と水酸化マグネシウム(Mg(OH))を得る電解装置2と、電解装置2で得られたMg(OH)または炭素固定装置10の第1反応室30で得られたMgOを基にCaCにより還元してMgとCOを得る還元装置3と、還元装置3で発生したCOをMgと反応させる第1反応室30の反応熱を利用してCaOと第1反応室30の反応により得られたCを反応させる第2反応室32と、電解装置2で得られたCa(OH)を熱分解して第2反応室32で反応させるCaOを得る第3反応室33を備える炭素固定装置10を有するものである。
【0082】
また、炭素固定システム1は、還元装置3の反応に用いるCaCを一部流用して第1反応室30における燃焼反応を促進することができる。すなわち、炭素固定システム1由来の生成物により第1反応室30における燃焼反応を促進することができる。
【0083】
そのため、MgとCOを反応させるにあたって、上述したようにエネルギを有効活用できるばかりか、炭素固定の循環サイクルに由来しないリン(P)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)等の不純物が混じることが無く、効率よく炭素固定することができる。また、CaCの原料となるCaOに限らず、炭素固定システム1を構成する還元装置3及び炭素固定装置10の各反応室における反応に必要なMg及びCaを安価に得ることができる。
【実施例0084】
実施例2に係る炭素固定装置につき、図3を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明については省略する。本実施例の炭素固定装置110は、第1反応室30内にマグネシウム(Mg)粉末を供給するためのマグネシウム供給手段36を備えている。
【0085】
マグネシウム供給手段36は、第1反応室30内に設けられているマグネシウム供給口36aと、Mg粉末が貯留される貯留タンク36bと、マグネシウム供給口36aを貯留タンク36bに接続するマグネシウム流路36cとから主に構成されており、マグネシウム供給口36aは、燃焼手段31のアセチレン供給口31bと酸素供給口31cの間に配置されている。尚、マグネシウム供給口36aは、マグネシウム粉末が、アセチレン(C)と酸素(O)の燃焼炎に向けて出射等により供給されることが肝要である。
【0086】
これにより、アセチレン(C)と酸素(O)の混合ガスにMg粉末が混入された状態で混合ガスを燃焼させることができるため、Mg粉末を加熱する効率がよく、MgとCOの燃焼反応を生じさせやすい。尚、MgとCOの燃焼反応が生じた後は、前記実施例1と同様に図示しない投入口からMg粉末が投入されるため、マグネシウム供給口36a、アセチレン供給口31b、および酸素供給口31cに、MgとCOの燃焼反応によって生じる熱が及びにくくなっている。
【実施例0087】
実施例3に係る炭素固定装置につき、図4を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明については省略する。本実施例の炭素固定装置210は、点火プラグ31aの代りに、第1反応室30内にパルスストリーマ放電を生じせしめるためのパルスパワー波照射器37を備えている。
【0088】
これにより、アセチレン(C)と酸素(O)の混合ガスにパルスパワー波照射器37のプラグ37aよりパルスストリーマ放電を照射することで混合ガスを燃焼させることができる。このように、混合ガスの点火手段については、適宜変更されてもよい。
【実施例0089】
実施例4に係る炭素固定装置につき、図5を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明については省略する。本実施例の炭素固定装置310は、第1反応室30内において、アセチレン(C)と酸素(O)の燃焼時には開放され、マグネシウム(Mg)と二酸化炭素(CO)の燃焼反応時は閉塞されるシャッタ38を備えている。
【0090】
これにより、点火プラグ31a、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cは、シャッタ38によりMgとCOが燃焼反応している空間から区画され、シャッタ38によって物理的に保護することができる。
【0091】
このように、燃焼手段31をMgとCOの燃焼反応によって生じる高熱より保護する保護手段が別途設けられていてもよい。この保護手段は、例えばCとOの燃焼時には点火プラグ31a、アセチレン供給口31bおよび酸素供給口31cを第1反応室30内に進出させ、MgとCOの燃焼反応時には第1反応室30内から退出させる進退機構であってもよく、適宜変更することができる。
【0092】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0093】
例えば、前記実施例では、炭素固定装置10は、炭素固定システム1の一部であるとして説明したが、これに限らず、炭素固定装置10のみだけであってもよい。
【0094】
また、前記実施例では、アセチレン反応室34が第1反応室30の外部に設けられている構成として説明したが、これに限らず、第1反応室30内やその壁にアセチレン反応室が設けられていてもよい。このような構成であれば、アセチレン反応室内と第1反応室30内とに連通するようにアセチレン反応室の壁に穿設された連通孔が第1流路として設けられていることが好ましい。これにより、Cを収束させやすくなるため、MgとCOとを反応させるためのトリガーとして必要なCおよびOを少なくすることができる。
【0095】
前記実施例では、MgとCOとを反応させるためのトリガーとして、燃焼手段31によりCをOで燃焼させる構成として説明したが、これに限らず、第1反応室30内に温度センサを配置し、温度センサにより測定された温度が2000度以下となった場合に、都度CをOで燃焼させる構成としてもよい。さらに、MgとCOとを連続的に反応させている期間に亘って、CをOで連続的に燃焼させる構成としてもよい。
【0096】
また、前記実施例では、Cは、MgをCOで燃焼させる都度、CaCとHOを反応させることで生成する構成として説明したが、これに限らず、予めCaCとHOを反応させて生成したCを貯留する構成としてもよく、アセチレンボンベを使用する構成としてもよい。このような場合には、Cの供給量を調節するための流量制御弁が設けられていることが好ましい。
【0097】
また、前記実施例では、圧縮機25は、ガスタービン発電装置41とは別置である構成として説明したが、これに限らず、気体A4によって回転されるガスタービン発電装置41のタービン42の回転力を利用して気体を圧縮する構成としてもよい。
【0098】
また、前記実施例では、CO濃度が約70%以上の導入気体A1を第1反応室30に導入し、Mgとの反応により約2000度~約3000度の反応熱を得ることにより、これを利用して第1反応室30の下流側に配設される第2反応室32及び第3反応室33における反応に必要な温度を得る態様について説明したが、これに限らず、例えば導入気体A1のCO濃度を約55%程度とすることにより、第1反応室30における反応熱を約1500度~約2000度の範囲としてもよい。これによれば、第1反応室30における反応熱を前記実施例と比べて相対的に低温とすることにより、炭素固定装置10の第1反応室30、燃焼手段31および発電手段40を構成する構造体の選択の範囲が広くなり、これらの構造を簡素化することができる。また、この場合、第1反応室30の下流側に配設される第2反応室32及び第3反応室33における反応に必要な温度を得るために、例えば各反応室内の温度をパルスストリーマ放電により高められるようになっていてもよい。
【0099】
また、前記実施例では、COとMgとの反応による約2000度~約3000度の反応熱を、第2反応室32にてCとCaOとの反応に利用する例について説明したが、この反応熱を他の反応に利用することも可能である。例えば、この反応熱を利用しメタン等の炭化水素から、水素とアセチレンを得るものや水素と炭素、特にカーボンブラックを得るものが挙げられる。
【0100】
また、前記実施例では、第3反応室33が第2反応室32の下流に配設される態様について説明したが、これに限らず、第3反応室を第2反応室の上流に配設し、第3反応室で得られたCaOを第2反応室におけるCaCの生成の反応に直接利用できるようにしてもよい。
【0101】
また、前記実施例では、ガスタービン発電装置のタービンは、第1反応室の下流側に配設される構成に限らず、気体の温度や圧力等の条件に応じて第2反応室や第3反応室の下流側に選択的に配設されてもよい。
【0102】
また、前記実施例では、還元装置3における還元反応で得られるCaOやCを第2反応室32におけるCaCの生成の反応に利用してもよい。このように、炭素固定システム1における各種反応に用いられる原料は、炭素固定システム1内の他の反応から得ることが好ましいが、炭素固定システム1の外部から得た原料を用いてもよい。
【0103】
また、前記実施例では、第3反応室33から導出される気体A7の温度が十分に高温であれば、例えば第3反応室33の下流側に高温の気体A7を冷却する冷却器を配設し、冷却器による気体A7の冷却の際に発生した水蒸気によりタービンを回転させる蒸気タービン発電装置によって発電を行うようにしてもよい。この場合、導入気体A1の熱によって昇温された冷却器23を流れる水または水蒸気を蒸気タービン発電装置による発電に用いてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 炭素固定システム
10 炭素固定装置
20 供給手段
30 第1反応室(反応室)
31 燃焼手段
31a 点火プラグ
31d アセチレン流路(第1流路)
31e 酸素流路(第2流路)
31f 流量制御弁(弁)
34 アセチレン生成室
36 マグネシウム供給手段
37 パルスパワー波照射器
38 シャッタ
40 発電手段
90 排出手段
110 炭素固定装置
210 炭素固定装置
310 炭素固定装置
図1
図2
図3
図4
図5