(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103704
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】金属基複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 19/00 20060101AFI20230720BHJP
B22D 18/02 20060101ALI20230720BHJP
B22D 21/04 20060101ALI20230720BHJP
C22C 1/10 20230101ALI20230720BHJP
【FI】
B22D19/00 W
B22D19/00 E
B22D19/00 V
B22D19/00 F
B22D18/02 L
B22D21/04 A
C22C1/10 E
C22C1/10 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004377
(22)【出願日】2022-01-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】515243372
【氏名又は名称】アドバンスコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】高木 義夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁
(72)【発明者】
【氏名】落合 翔梧
【テーマコード(参考)】
4K020
【Fターム(参考)】
4K020AA22
4K020AA24
4K020AC01
4K020BB26
(57)【要約】
【課題】寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率(Vf%)を有する金属基複合材を簡便に得ることができる金属基複合材の製造方法の提供。
【解決手段】純金属あるいは合金であるマトリックス材と、該マトリックス材と異なる材料の強化材とを複合化させ、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率を有する金属基複合材を得るための製造方法であって、強化材を用いて内部に多孔を有するニアネット形状の強化材成形体又は強化材充填体を作製する成形工程、得られた強化材成形体・充填体を予熱する予熱工程、予熱された強化材成形体・充填体を複合材鋳造用外殻金型内に設置する設置工程、設置した強化材成形体・充填体の前記多孔に溶融したマトリックス材を含浸・充填して複合化する鋳造工程を有し、前記すべての工程を、内部にニアネット形状の空間が形成される同一の金型を連続的に使用して行う金属基複合材の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純金属あるいは合金であるマトリックス材と、該マトリックス材とは異なる材料からなる強化材とを複合化させて、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率(Vf%)を有する金属基複合材を得るための金属基複合材料の製造方法であって、
前記強化材を用いて内部に多孔を有するニアネット形状の強化材成形体又は強化材充填体を作製する強化材成形体・充填体の成形工程、得られた強化材成形体・充填体を予熱する予熱工程、予熱された強化材成形体・充填体を複合材鋳造用外殻金型内に設置する設置工程、設置した強化材成形体・充填体の前記多孔に溶融したマトリックス材を含浸・充填して複合化する鋳造工程を有し、前記すべての工程を、内部にニアネット形状の空間が形成される同一の金型を連続的に使用して行うことを特徴とする金属基複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記強化材容積率(Vf%)が、40%を超える請求項1に記載の金属基複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記強化材成形体・充填体の成形工程で、内部にニアネット形状の空間(凹)が形成される前記金型内に前記強化材を少なくとも含む材料を充填して、該材料が充填された状態の前記金型を用いて、該材料を加圧成形、或いは、該材料を加熱炉に入れて焼成成形を行う請求項1又は2に記載の金属基複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記マトリックス材が、アルミニウム又はアルミニウム合金である請求項1~3のいずれか1項に記載の金属基複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記強化材が、セラミックス粒子、黒鉛粒子及び金属粒子からなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項1~4のいずれか1項に記載の金属基複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基複合材料の製造方法に関し、より詳しくは、セラミックス粒子などの強化材からなる多孔質の強化材成形体・充填体を用い、純金属あるいは合金からなるマトリックスを強化材と複合化させる際に、強化材成形体・充填体の成形工程で用いた金型を、強化材成形体・充填体を入れたままの状態で複合材鋳造用外殻金型内に設置して、強化材成形体・充填体の多孔に溶融マトリックス材を含浸・充填する、同一の金型を連続して使用することで、簡便に、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率(Vf%)を有する金属基複合材を得ることを可能にした金属基複合材料の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金等の金属をマトリックス材とし、強化材として、セラミック粒子やグラファイト粒子やマトリックスとは異なる金属粒子などを含有する金属基複合材料は、マトリックス材に比して、優れた比強度、比剛性、熱特性などを備えた特性に優れたものになることから、様々な産業分野で利用されている。
【0003】
金属基複合材の製造方法としては、例えば、下記のような方法がある。第1に、予め強化材成形型(金型)を用いて多孔質の強化材成形体を成形し、得られた強化材成形体を金型から取り出して、強化材成形体を予熱後、鋳造用の金型内に設置し、溶融したマトリックス材(溶湯)を用いて鋳造して、上記強化材成形体の多孔(空隙)に溶湯を含浸・充填して複合化する製造方法がある。
【0004】
上記した第1の製造方法で、所望する製品に対して、製品の原料となる寸法精度の高いニアネット形状の金属基複合材を製造するには、作製した強化材成形体を、強化材成形体とほぼ同一寸法・形状の鋳造用の金型凹内に挿入して設置して鋳造する必要がある。しかし、寸法精度の高いニアネット形状を狙えば狙うほど、強化材成形体を鋳造用の金型凹内に挿入して・勘合設置することは極めて難しくなり、挿入工程の段階で強化材成形体の破損・欠損が起きるという問題がある。これに対しては、挿入・勘合設置を容易にする目的で両者の勘合面にクリアランス(隙間)を設けることが考えられる。しかし、クリアランスを設けると、製造される金属基複合材は高精度でニアネット形状のものではなくなる。
【0005】
また、上記した第1の製造方法で、鋳造時に、強化材成形体の内部への溶湯(マトリックス材)の含浸浸透をよくするためには、強化材成形体及び鋳造用金型を予熱して温度を高める必要がある。しかし、一般的に強化材に使用されているセラミックスやグラファイトなどは熱膨張率が小さく、一方の鋳造用金型は熱膨張率が大きいため、上記した予熱による熱膨張量の差を勘案する必要があるため、さらに強化材成形体の鋳造用金型への挿入・勘合設置は困難になる。このため、上記した第1の製造方法では、寸法精度の高いニアネット形状の金属基複合材を鋳造することはできなかった。このような理由で、上記第1の製造方法で、最終製品形状とほぼ同一の寸法精度の高いニアネット形状の金属基複合材を製造する場合は、大きめのラフ形状の金属基複合材から切削加工して、最終形状にする必要があった。しかし、このような切削加工は、金属基複合材が硬いため、加工が難しく、加工に時間がかかり非常にコストが高くなるといった問題がある。
【0006】
上記課題に対し、下記の第2の金属基複合材の製造方法がある。第2の製造方法では、強化材の粒子や短繊維をマトリックス材に分散させ、予め強化材を分散させた強化材分散マトリックス複合材を作製し、得られた強化材分散マトリックス複合材を溶解して、これを、金型凹を精密なニアネット形状にした鋳造用金型にダイカスト等の鋳造法で充填して金属基複合材を製造する。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の技術は、予め作製した強化材を分散させたマトリックス材(強化材分散マトリックス複合材)を利用した上記した第2の製造方法に関するものである。そして、該技術によれば、最終形状に近いニアネット形状の金属基複合材の製造が可能になるとしている。第2の製造方法では、予め作製した強化材を分散させた強化材分散マトリックス複合材を利用し、溶融状態の強化材分散マトリックス複合材を寸法精度の高いニアネット形状の金型凹に充填できるため、金型と同等のニアネット成形が可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、溶融状態の強化材分散マトリックス複合材は、強化材の強化材容積率(Vf%)が低くないと流動性が悪いという課題があり、強化材のVf%が高い強化材分散マトリックス複合材を用いた場合は、金型凹内にきちんと充填できず、湯回り不良による未充填不良や薄肉部はニアネット形状にできないなどの問題が生じる。そのため、第2の製造方法では、強化材のVf%が高い金属基複合材を製造することはできないといった課題がある。
【0010】
上記したことは、特許文献1の実施例の記載からもわかる。すなわち、実施例1で利用しているアルミナ粒子分散アルミニウム基複合材は強化材容積率(Vf%)が20%であり、実施例2で利用しているアルミナ粒子分散アルミニウム基複合材は、強化材容積率(Vf%)が12%であり、これらの材料によっては、いずれも強化材容積率(Vf%)の低い金属基複合材を得ることしかできない。すなわち、上記した技術は、強化材のVf%が高い金属基複合材を製造する技術ではない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率(Vf%)を有する金属基複合材を簡便に得ることができる金属基複合材の製造方法を提供することである。本発明の目的は、好適には、強化材容積率(Vf%)が40%を超えるニアネット形状の金属基複合材料を簡便に得ることができる、簡便な製造技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、以下の、本発明の金属被覆金属基複合材料の製造方法によって達成される。
[1]純金属あるいは合金であるマトリックス材と、該マトリックス材とは異なる材料からなる強化材とを複合化させて、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率(Vf%)を有する金属基複合材を得るための金属基複合材料の製造方法であって、前記強化材を用いて内部に多孔を有するニアネット形状の強化材成形体又は強化材充填体を作製する強化材成形体・充填体の成形工程、得られた強化材成形体・充填体を予熱する予熱工程、予熱された強化材成形体・充填体を複合材鋳造用外殻金型内に設置する設置工程、設置した強化材成形体・充填体の前記多孔に溶融したマトリックス材を含浸・充填して複合化する鋳造工程を有し、前記すべての工程を、内部にニアネット形状の空間が形成される同一の金型を連続的に使用して行うことを特徴とする金属基複合材料の製造方法。
【0013】
上記本発明の金属基複合材料の製造方法の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[2]前記強化材容積率(Vf%)が、40%を超える上記[1]に記載の金属基複合材料の製造方法。
[3]前記強化材成形体・充填体の成形工程で、内部にニアネット形状の空間(凹)が形成される前記金型内に前記強化材を少なくとも含む材料を充填して、該材料が充填された状態の前記金型を用いて、該材料を加圧成形、或いは、該材料を加熱炉に入れて焼成成形を行う[1]又は[2]に記載の金属基複合材料の製造方法。
[4]前記マトリックス材が、アルミニウム又はアルミニウム合金である上記[1]~[3]のいずれかに記載の金属基複合材料の製造方法。
[5]前記強化材が、セラミックス粒子、黒鉛粒子及び金属粒子からなる群から選ばれる少なくともいずれかである上記[1]~[4]のいずれかに記載の金属基複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、強化材のVf%が高い金属基複合材を、簡便に得ることができる金属基複合材の製造方法が実現される。本発明の好ましい形態によれば、簡便な製造方法で、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、強化材容積率(Vf%)が40%を超える高い金属基複合材料を提供することが可能になる。本発明によれば、強化材成形体・充填体を成形する際に使用した凹がニアネット形状である金型を、強化材成形体・充填体を入れた状態で複合材鋳造用外殻金型内に設置して鋳造を行うため、強化材成形体・充填体の作製から、マトリックス材の溶湯を用いて鋳造して強化材とマトリックス材とを複合化させるまでの全工程を、同一の金型を連続して用いて(兼用して)行う、従来にない新たな製造方法が提供される。本発明の製造方法は、強化材成形体・充填体を成形後、金型から強化材成形体・充填体を取り出す必要がないので慎重に行う作業が不要になり、作業上の利点がある。また、本発明の製造方法によれば、
図3に示したように、金型から強化材成形体・充填体を取り出す作業の際や、取出した強化材成形体・充填体を鋳造用の金型内に設置する際に生じることがあった、成形した強化材成形体・充填体の破損や欠損を生じることがないので、歩留まりよく、寸法精度の高いニアネット形状の金属基複合材料を経済的に得ることができるという顕著な効果が得られる。このため、本発明の金属基複合材の製造方法は、工業上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の金属基複合材の製造方法の、強化材成形体・充填体の成形工程から、マトリックス材の溶湯を用いて鋳造して強化材とマトリックス材とを複合化する鋳造工程までの一連の工程のうちの、金型凹に強化材成形体・充填体が入った状態のニアネット形状の兼用金型を複合材鋳造用外殻金型内に設置するまでの工程を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の金属基複合材料の製造方法の、
図1に示した金型凹に強化材成形体・充填体が入った状態のニアネット形状の兼用金型を複合材鋳造用外殻金型内に設置後、マトリックス材の溶湯を用いて鋳造して強化材成形体・充填体とマトリックス材とを複合化する鋳造工程を説明するための模式図である。
【
図3】従来の金属基複合材の製造方法における課題の一つを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態を挙げて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の金属基複合材料の製造方法の特徴は、強化材成形体を作製する際に使用した凹がニアネット形状の金型を、該金型で形成した強化材成形体・充填体を入れたままの状態で、マトリックス材の溶湯で複合化を行う鋳造の際まで連続して使用して、各工程で凹がニアネット形状の同一の金型を兼用するように構成したことにある。このように構成したことで、強化材成形体を成形用の金型から取り出す必要も、取り出した強化材成形体を凹がニアネット形状の鋳造用の金型に挿入して設置する必要もないため、これらの作業の際に生じていた強化材成形体の破損・欠損の問題が解消される。
【0017】
すなわち、本発明の金属基複合材料の製造方法は、純金属あるいは合金であるマトリックス材と、該マトリックス材とは異なる材料からなる強化材とを複合化させて、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率(Vf%)を有する金属基複合材を得るための金属基複合材の製造方法であって、前記強化材を用いて内部に多孔を有するニアネット形状の強化材成形体又は強化材充填体を作製する強化材成形体・充填体の成形工程、得られた強化材成形体・充填体を予熱する予熱工程、予熱された強化材成形体・充填体を複合材鋳造用外殻金型内に設置する設置工程、設置した強化材成形体・充填体の前記多孔に溶融したマトリックス材を含浸・充填して複合化する鋳造工程を有し、これらすべての工程を、内部にニアネット形状の空間(凹)が形成される同一の金型を連続的に使用して行うことを特徴とする。本発明では、この本発明の製造方法の全ての工程で連続して使用する凹がニアネット形状の金型のことを、「強化材成形・鋳造の兼用金型」或いは単に「兼用金型」とも呼ぶ。
【0018】
以下、
図1及び
図2を参照して本発明の金属基複合材料の製造方法について説明する。
図1及び2中の1は、本発明を特徴づける強化材成形・鋳造の兼用金型である。
図1に模式的に示したように、兼用金型1の凹は、複合材料を用いて製造する製品とほぼ同様の所望の形状に形づくられているニアネット形状を有するものである。
図1及び2中の2は、セラミックス粒子、黒鉛粒子及び金属粒子などから選ばれる強化材を少なくとも含む、強化材成形体・充填体を形成するための材料を示す。また、
図1及び2中の3は、強化材成形・鋳造の兼用金型1の凹に強化材を含む材料2が入った(充填された)状態であることを示している。以下、この強化材を充填した状態の兼用金型のことを、「強化材充填済兼用金型3」と呼ぶ。
【0019】
図1中の10は、加熱炉を示す。本発明では、兼用金型1内に入れた(充填した)強化材を含む材料2を、必要に応じて焼成成形する場合や、
図1に示したように、成型工程で得られた強化材成形体・充填体を予熱する場合に、強化材充填済兼用金型3を加熱炉10内に配置して、焼成や予熱を行う。本発明の製造方法では、兼用金型1を、強化材充填体を得る場合、強化材を加圧成型や焼成成形して強化材成形体を得る場合、さらに、
図1に示したように、マトリックス材と複合化する鋳造工程を行う場合に、強化材充填済兼用金型3を複合材鋳造用外殻金型20内に設置し、
図2に示したように、この状態で鋳造を行い、すべての製造工程を、内部にニアネット形状の空間(凹)が形成される同一の金型を連続的に使用して行うことを特徴とする。
図1及び2の模式図に示した複合材鋳造用外殻金型20は、側壁となる外郭金型と、金型の底面を形成する鋳造用下金型20’とを組合わせて構成されている。そして、鋳造の際に、複合材鋳造用外殻金型20の凹部に、強化材充填済兼用金型3を設置し、例えば、
図2に示したようにして鋳造を行って、強化材とマトリックス材を複合化する。
【0020】
図1に示したように、本発明の金属基複合材の製造方法では、まず、兼用金型1の凹に強化材を含む材料2を入れて、高い強化材容積率(Vf%)の強化材成形体・充填体を成形する。本発明を構成する強化材成形体・充填体の成形工程としては、従来公知の種々の方法が適用できる。具体的には、下記のような方法が挙げられる。兼用金型1の凹にセラミックス粒子などの強化材を入れて兼用金型ごと振動機で振動して、所望する高いVf%となるように強化材2を充填して強化材充填体を得る方法や、強化材を充填した後、従来公知の方法で加圧成型して強化材成形体を得る方法が挙げられる。また、従来公知の方法でセラミックス粒子などの強化材にバインダーなどを加えて、得られる強化材成形体が所望の高いVf%となるように設計したスラリーを調製し、得られたスラリーを兼用金型の凹に充填した後、スラリーを充填した兼用金型ごと加熱炉10に入れて、焼成成形する方法も適用できる。この際に、焼成成形するための加熱炉と、焼成成形して得た強化体成形体を予熱するための加熱炉は、同一であっても異なる加熱炉を用いてもよい。いずれにしても、本発明の製造方法で、加熱炉に入れるのは、兼用金型に強化材が充填された状態の「強化材充填済兼用金型3」であり、兼用金型ごと加熱炉10に入れることを特徴としている。
【0021】
本発明の製造方法は、上記したようにして強化材充填済兼用金型3を得た後、強化材充填済兼用金型3を複合材鋳造用外殻金型20内に設置し、溶融したマトリックス材を用いて鋳造して、寸法精度の高いニアネット形状で、且つ、高い強化材容積率(Vf%)を有する金属基複合材を製造する。予熱工程後の、強化材充填済兼用金型3を複合材成形体鋳造用外殻金型20内に設置する際には、熱衝撃を避けるため、外殻金型20を予熱することが好ましい。また、強化材成形体・充填体の多孔へ、マトリックス材の溶湯を良好な状態で含浸・充填させるためには、
図2に示したように、加圧圧子30を用い、該加圧圧子を降下させて、例えば、鋳造圧力80MPa~120MPa程度に加圧して鋳造することが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法で使用する強化材は特に限定されず、従来、金属基複合材料に用いられているものをいずれも用いることができる。例えば、セラミックス粒子、黒鉛粒子及び金属粒子からなる群から選ばれる少なくともいずれかの微粒子などを用いることが挙げられる。より具体的には、ホウ酸アルミニウムや炭化ケイ素などのセラミックス微粒子や、鱗片状黒鉛の微粒子などが挙げられる。また、マトリックス材も特に限定されず、従来公知の材料を目的に応じて適宜に使用できる。例えば、本発明の製造方法に、マトリックス材としてアルミニウム或いはアルミニウム合金を用いることで、軽量で機能性が付与された部材製品を簡便に提供することが可能になる、ニアネット形状の金属基複合材が提供される。
【実施例0023】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
本例では、強化材として平均粒径44μmのホウ酸アルミニウム粒子1.0kgを用いた。そして、強化材のホウ酸アルミニウム粒子を強化材成形・鋳造の兼用金型内に充填して、該兼用金型を振動機の上に設置して振動を20分間与えて、ホウ酸アルミニウム粒子の充填率が40%超になるように金型内に充填した。上記で使用した強化材成形・鋳造の兼用金型には、内部に所望する金属基複合材からなる製品とほぼ同じ、ニアネット形状の空間を有するものを用いた。
【0025】
上記のようにしてホウ酸アルミニウム粒子を充填して得た強化材成形体を内部に有する強化材成形・鋳造の兼用金型を、そのまま加熱炉に入れ、窒素雰囲気下で700℃に予熱した。そして、内部に強化材成形体を有する予熱した前記兼用金型ごと、200℃に予熱をした複合材鋳造用外殻金型内に設置した。
【0026】
その後、速やかに800℃にて溶解したAl合金溶湯(AC4C)を、複合材鋳造用外殻金型内に注湯して、加圧圧子を降下させて鋳造圧力100MPaまで上昇させ、その圧力を10分保持して、ニアネット形状の金属基複合材を成形した。得られた金属基複合材は、所望する製品の形状にほぼ近く、欠けや割れのない良好なニアネット形状のものであることを確認した。
【0027】
[実施例2]
本例では、強化材として平均粒径20μmのSiC粒子2.0kgを用いた。実施例1で用いたと同様の、内部に所望する金属基複合材からなる製品とほぼ同じニアネット形状の空間を有する強化材成形・鋳造の兼用金型を用い、該兼用金型内に強化材のSiC粒子を充填して兼用金型ごと小型プレス機に設置して10MPaで加圧成型して、SiC粒子の充填率を50%にした強化材成形体を得た。
【0028】
次に、兼用金型の内部に収容されている強化材成形体を窒素雰囲気下で800℃に予熱して、その後、250℃に予熱した複合材鋳造用外殻金型内に、予熱した強化材成形体を兼用金型ごと設置した。そして、設置後速やかに800℃にて溶解したAl合金溶湯(ADC12)を成形体鋳造用外殻金型内に注湯して、加圧圧子を降下させて鋳造圧力を80MPaまで上昇させ、その圧力を15分保持して複合化して、ニアネット形状の金属基複合材を成形した。得られた金属基複合材は、所望する製品の形状にほぼ近く、欠けや割れのない良好なニアネット形状のものであることを確認した。
【0029】
[実施例3]
本例では、強化材として平均粒径44μmのホウ酸アルミニウム粒子1.0kgを用いた。そして、強化材のホウ酸アルミニウム粒子に、バインダーの原料として樹脂モノマーと架橋剤、分散剤を総量で500gとなる量加え、さらに水を5kg加えてこれらの原料が分散してなるスラリーを作製した。得られたスラリーに重合開始剤を添加した後、強化材成形・鋳造の兼用金型内に充填して、常温で放置して樹脂モノマー及び架橋剤を重合させて樹脂バインダーとし、ホウ酸アルミニウム粒子の充填率を60%にした強化材成形体を作製した。
【0030】
次に、兼用金型の内部に収容されている強化材成形体を窒素雰囲気下で700℃に加熱して、バインダーを除去した後、200℃に予熱した複合材鋳造用外殻金型内に、加熱された強化材成形体を兼用金型ごと設置した。そして、設置後速やかに750℃にて溶解したAl合金溶湯(AC4C)を複合材鋳造用外殻金型内に注湯して、加圧圧子を降下させて鋳造圧力を100MPaまで上昇させ、その圧力を10分保持して複合化して、ニアネット形状の金属基複合材を成形した。得られた金属基複合材は、所望する製品の形状にほぼ近く、欠けや割れのない良好なニアネット形状のものであることを確認した。
【0031】
[実施例4]
本例では、強化材として平均粒径50μmの鱗片状黒鉛粒子1.0kgを用いた。そして、強化材の鱗片状黒鉛粒子を強化材成形・鋳造の兼用金型内に充填して、該兼用金型ごと小型プレス機に設置して、兼用金型内の充填物を20MPaで加圧成型し、鱗片状黒鉛粒子の充填率を55%にした強化材成形体を作製した。
【0032】
その後、強化材成形・鋳造の兼用金型に収容された状態の強化材成形体を窒素雰囲気化で700℃に予熱して、200℃に予熱した複合材鋳造用外殻金型内に、予熱された強化材成形体を兼用金型ごと設置した。そして、設置後速やかに800℃にて溶解したAl合金溶湯(AC8A)を複合材鋳造用外殻金型内に注湯して、加圧圧子を降下させて鋳造圧力を100MPaまで上昇させ、その圧力を10分保持して複合化して、ニアネット形状の金属基複合材を成形した。得られた金属基複合材は、所望する製品の形状にほぼ近く、欠けや割れのない良好なニアネット形状のものであることを確認した。
前記強化材成形体・充填体の成形工程で、内部にニアネット形状の空間(凹)が形成される前記金型内に前記強化材を少なくとも含む材料を充填して、該材料が充填された状態の前記金型を兼用して、該兼用する金型内に充填された材料を加圧成形、或いは、該兼用する金型を加熱炉に入れて該金型内に充填された材料の焼成成形を行って強化材成形体を得る請求項1又は2に記載の金属基複合材料の製造方法。