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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010372
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】樹脂加熱成形装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/46 20060101AFI20230113BHJP
   B29C 51/42 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B29C51/46
B29C51/42
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114462
(22)【出願日】2021-07-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AC03
4F208AR08
4F208AR12
4F208MA05
4F208MB01
4F208MC03
4F208MH06
4F208MJ14
4F208MJ22
4F208MJ29
4F208MK20
(57)【要約】
【課題】金型より小さいサイズのワーク(熱可塑性樹脂材)を、金型で加熱成形する場合でも、熱可塑性樹脂材の廃棄処分量を抑制して、より高精度な樹脂成形品を安定した生産体制で製造することができる樹脂加熱成形装置、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】樹脂加熱成形装置では、クランプは、平板状のワークの端部を保持可能に設けられ、制御部は、上型との型合わせに対応させて下型上に載置する型合わせ位置で、クランプで保持した状態のワークに対し、垂れ下がった垂下部の底を、上型に向けて上昇する下型の当接で、支えた状態となった下型の支持状態位置で、クランプによるワークの把持を解除する。支持状態位置は、下型の上面と接触可能なワークの有効接触面積S1のうち、下型と接触する垂下部の底に対し、下型側に投影される垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置である。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱した状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により成形される樹脂成形品の製造にあたり、該金型より小さいサイズの該ワークに対し、把持またはその解除を可能なクランプを有し、該ワークを、該上型との型合わせに対応させて、該下型上に載置可能な型合わせ位置と、該金型から離れた退避位置との間を移動可能な搬送部と、を備え、
該搬送部は、端部が該クランプで把持された該ワークを、型合わせ位置まで搬送し、該型合わせ位置で該ワークの把持を解除した後、該クランプを退避位置に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置において、
前記クランプは、平板状に形成された前記ワークに対し、対向する前記端部同士を保持可能に設けられていること、
少なくとも前記下型は、駆動手段に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、前記搬送部、前記クランプ、及び前記駆動手段の動作を制御する制御部を備えていること、
前記制御部は、前記型合わせ位置で、前記クランプにより保持された状態の前記ワークに対し、前記クランプより下に垂れ下がった垂下部の底を、前記上型に向けて上昇する前記下型による当接で、支えた状態になった前記下型の支持状態位置で、前記クランプによる前記ワークの把持を解除すること、
前記支持状態位置は、前記下型の上面と接触可能な前記ワークの有効接触面積S1のうち、前記下型と接触する前記垂下部の底に対し、前記下型側に投影される前記垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載する樹脂加熱成形装置において、
前記下型は、前記支持状態位置で停止すること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載する樹脂加熱成形装置において、
前記制御部は、前記垂下部の底との接触を開始する前記下型の接触開始位置を境に、前記下型の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、前記駆動手段に行い、
前記二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する前記下型の動きの下、前記支持状態位置で、前記負の加速度から向き変えた正の加速度を含む速度であること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。
【請求項4】
熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱した状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により成形される樹脂成形品の製造にあたり、該金型より小さいサイズの該ワークに対し、把持またはその解除を可能なクランプを有し、該ワークを、該上型との型合わせに対応させて、該下型上に載置可能な型合わせ位置と、該金型から離れた退避位置との間を移動可能な搬送部と、を備え、該搬送部は、端部が該クランプで把持された該ワークを、型合わせ位置まで搬送し、該型合わせ位置で該ワークを解除した後、該クランプを退避位置に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置の制御方法において、前記クランプは、平板状に形成された前記ワークに対し、対向する前記端部同士を保持可能に設けられていること、少なくとも前記下型は、駆動手段に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、前記搬送部、前記クランプ、及び前記駆動手段の動作を制御する制御部を備えていること、前記制御部は、前記型合わせ位置で、前記クランプにより保持された状態の前記ワークに対し、前記クランプより下側に垂れ下がった垂下部の底を、前記上型に向けて上昇する前記下型による当接で、支えた状態になった前記下型の支持状態位置で、前記クランプによる前記ワークの把持を解除すること、前記支持状態位置は、前記下型の上面と接触可能な前記ワークの有効接触面積S1のうち、前記下型と接触する前記垂下部の底に対し、前記下型側に投影される前記垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法において、
前記制御部は、前記支持状態位置に合わせて、前記下型の上昇動作を停止させること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法において、前記制御部は、前記垂下部の底との接触を開始する前記下型の接触開始位置を境に、前記下型の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、前記駆動手段に行い、前記二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する前記下型の動きの下、前記支持状態位置で、前記負の加速度から変化させた正の加速度を含む速度であること、を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造にあたり、熱可塑性樹脂材を加熱して成形する樹脂加熱成形装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の中には、熱可塑性樹脂材からなる樹脂成形品があり、樹脂成形品は、工業分野をはじめ、種々な産業分野にも及び幅広く使用されている。樹脂成形品は、その形状等の仕様や製品の用途に応じて、例えば、加熱成形装置とトリミング装置を用いて製造される。加熱成形装置は、加熱成形工程において、熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱してその端部を金型の外で保持させた状態で、型内にあるこのワークの中央部に対し、金型形状に倣って成形することにより、半成形品を製造する。
【0003】
加熱成形工程後のトリミング工程では、トリミング装置は、半成形品から、後に製品となる成形品要部を取り出すのにあたり、半成形品のうち、成形品要部の周囲にある成形品不要部のトリミングを行う。このような成形品不要部のトリミングを、加熱成形工程後に行う製造方法では、製品の仕上げ精度は、半成形品のトリミング精度に依拠するため、加熱成形工程では、半成形品の成形精度は、一般的に仕上げ精度ほど厳格に求められない。トリミングされた成形品不要部は、スクラップとして廃棄処分される。
【0004】
ところで、近年、産業界では、環境保全・資源保護等の観点より、環境に及ぼすプラスチック製品の影響が考慮されはじめている。このような対応策の一つとして、成形品不要部の廃棄処分量を抑制する技術のほか、トリミング工程を行わず、製品(樹脂成形品)を製造する加熱成形技術が、製造業の間で注目されている。加熱成形技術は、金型より小さいサイズのワーク全体を金型内に供給し、このワークを金型形状に倣って成形することで、樹脂成形品を製造することができるため、成形品不要部の廃棄をなくすことができるからである。その一方、加熱成形技術では、ワークの加熱成形精度は、そのまま製品の仕上げ精度となるため、トリミング工程を経る場合に比べ、より高精度な成形が求められる。このような加熱成形技術を応用した熱可塑性樹脂材の成形技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1は、加熱を伴った回転ベルト上に、合成樹脂シートを載置して、この回転ベルト装置全体を、下型の真上位置まで移動させた後、回転ベルト装置の一端側で、退避していたクランプを、移動させて回転ベルト装置に横付けしておき、回転ベルトにより、送出された合成樹脂シートの一端部を、このクランプで把持した状態で、合成樹脂シートを回転ベルト装置から解放して、下型上に覆い被せる加熱軟化樹脂シートの搬送方法である。特許文献1では、上型と下型との成形位置で、クランプが、合成樹脂シートを開放した後、回転ベルト装置全体を、回転ベルト装置の他端側に退避させると共に、クランプを退避位置まで移動させて、合成樹脂シートが、上型と下型との型合わせにより、成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-326328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、軟化した状態の合成樹脂シートを、下型上に載置するとき、回転ベルトを送出しながら、クランプで把持された合成樹脂シートを下型上に下ろしているため、下型に載置される位置が、上型との成形位置となる下型の基準位置とずれてしまう虞がある。特に、加熱している回転ベルトと、軟化している合成樹脂シートとの間では、回転ベルトの送出動作に伴って作用する摩擦力の影響を受けて、下型上に落ちようとしている合成樹脂シートが、送出中の回転ベルトから離れ難く、回転ベルトの動きに追従して引っ張られ易い。そのため、下型上に下ろした合成樹脂シートを、上型と下型との成形位置となる下型での基準位置に対し、位置決めして載置することに困難を伴うことから、精度の高い製品を、個体ごとに安定した生産体制で製造することができないばかりか、品質不良となった製品で、廃棄処分となる対象が増えてしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、金型より小さいサイズのワーク(熱可塑性樹脂材)を、金型で加熱成形する場合でも、熱可塑性樹脂材の廃棄処分量を抑制して、より高精度な樹脂成形品を安定した生産体制で製造することができる樹脂加熱成形装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂加熱成形装置は、以下の構成を有する。
【0010】
(1)熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱した状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により成形される樹脂成形品の製造にあたり、該金型より小さいサイズの該ワークに対し、把持またはその解除を可能なクランプを有し、該ワークを、該上型との型合わせに対応させて、該下型上に載置可能な型合わせ位置と、該金型から離れた退避位置との間を移動可能な搬送部と、を備え、該搬送部は、端部が該クランプで把持された該ワークを、型合わせ位置まで搬送し、該型合わせ位置で該ワークを解除した後、該クランプを退避位置に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置において、前記クランプは、平板状に形成された前記ワークに対し、対向する前記端部同士を保持可能に設けられていること、少なくとも前記下型は、駆動手段に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、前記搬送部、前記クランプ、及び前記駆動手段の動作を制御する制御部を備えていること、前記制御部は、前記型合わせ位置で、前記クランプにより保持された状態の前記ワークに対し、前記クランプより下側に垂れ下がった垂下部の底を、前記上型に向けて上昇する前記下型による当接で、支えた状態になった前記下型の支持状態位置で、前記クランプによる前記ワークの把持を解除すること、前記支持状態位置は、前記下型の上面と接触可能な前記ワークの有効接触面積S1のうち、前記下型と接触する前記垂下部の底に対し、前記下型側に投影される前記垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する樹脂加熱成形装置において、前記下型は、前記支持状態位置で停止すること、を特徴とする。
(3)(1)に記載する樹脂加熱成形装置において、前記制御部は、前記垂下部の底との接触を開始する前記下型の接触開始位置を境に、前記下型の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、前記駆動手段に行い、前記二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する前記下型の動きの下、前記支持状態位置で、前記負の加速度から向き変えた正の加速度を含む速度であること、を特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂加熱成形装置の制御方法は、以下の構成を有する。
【0012】
(4)熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱した状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により成形される樹脂成形品の製造にあたり、該金型より小さいサイズの該ワークに対し、把持またはその解除を可能なクランプを有し、該ワークを、該上型との型合わせに対応させて、該下型上に載置可能な型合わせ位置と、該金型から離れた退避位置との間を移動可能な搬送部と、を備え、該搬送部は、端部が該クランプで把持された該ワークを、型合わせ位置まで搬送し、該型合わせ位置で該ワークを解除した後、該クランプを退避位置に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置の制御方法において、前記クランプは、平板状に形成された前記ワークに対し、対向する前記端部同士を保持可能に設けられていること、少なくとも前記下型は、駆動手段に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、前記搬送部、前記クランプ、及び前記駆動手段の動作を制御する制御部を備えていること、前記制御部は、前記型合わせ位置で、前記クランプにより保持された状態の前記ワークに対し、前記クランプより下側に垂れ下がった垂下部の底を、前記上型に向けて上昇する前記下型による当接で、支えた状態になった前記下型の支持状態位置で、前記クランプによる前記ワークの把持を解除すること、前記支持状態位置は、前記下型の上面と接触可能な前記ワークの有効接触面積S1のうち、前記下型と接触する前記垂下部の底に対し、前記下型側に投影される前記垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
(5)(4)に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法において、前記制御部は、前記支持状態位置に合わせて、前記下型の上昇動作を停止させること、を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
(6)(4)に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法において、前記制御部は、前記垂下部の底との接触を開始する前記下型の接触開始位置を境に、前記下型の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、前記駆動手段に行い、前記二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する前記下型の動きの下、前記支持状態位置で、前記負の加速度から変化させた正の加速度を含む速度であること、を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明に係る樹脂加熱成形装置、及び樹脂加熱成形装置の制御方法の作用・効果について説明する。
【0014】
(1)熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱した状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により成形される樹脂成形品の製造にあたり、金型より小さいサイズのワークに対し、把持またはその解除を可能なクランプを有し、ワークを、上型との型合わせに対応させて、下型上に載置可能な型合わせ位置と、金型から離れた退避位置との間を移動可能な搬送部と、を備え、搬送部は、端部がクランプで把持されたワークを、型合わせ位置まで搬送し、型合わせ位置でワークを解除した後、クランプを退避位置に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置において、クランプは、平板状に形成されたワークに対し、対向する端部同士を保持可能に設けられていること、少なくとも下型は、駆動手段に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、搬送部、クランプ、及び駆動手段の動作を制御する制御部を備えていること、制御部は、型合わせ位置で、クランプにより保持された状態のワークに対し、クランプより下側に垂れ下がった垂下部の底を、上型に向けて上昇する下型による当接で、支えた状態になった下型の支持状態位置で、クランプによるワークの把持を解除すること、支持状態位置は、下型の上面と接触可能なワークの有効接触面積S1のうち、下型と接触する垂下部の底に対し、下型側に投影される垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、を特徴とする。
【0015】
この特徴により、ワークを金型で成形するにあたり、型合わせ位置で、クランプによるワークの保持が解除されても、ワークは、下型の上面上に、位置ずれすることなく、狙い通りの所望部位に載置することができる。そのため、下型の上面上に載置したワークを、上型と下型との成形位置となる下型での基準位置に対し、位置決めして載置することが容易であることから、精度の高い製品(樹脂成形品)を、個体ごとに安定した生産体制で製造することができる。それ故に、樹脂成形品に対し、品質管理上、製品不良の発生は、特許文献1の技術に比べて、格段に抑制できる。また、成形品不要部のトリミングを伴った加工技術によって樹脂成形品を製造する場合に比べ、金型より小さいサイズのワークを使用して、樹脂成形品を製造するため、材料となる熱可塑性樹脂材の廃棄処分がほとんど生じない。ひいては、本発明に係る加熱成形装置は、環境保全・資源保護等の観点で、地球の環境に優しい装置となり得ることから、プラスチック製品の廃棄を削減する世界的な取り組みに貢献できる。また、このような作用・効果については、(4)に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法についても、(1)に記載する樹脂加熱成形装置と同じである。
【0016】
なお、本発明に係る樹脂加熱成形装置、及び樹脂加熱成形装置の制御方法において、平板状のワークの概念は、本発明では、樹脂加熱成形装置で熱成形するワーク(熱可塑性樹脂材)をその厚みで区分けせず、例えば、厚さ1mm以下で、たとえシート状の範疇にある厚さの熱可塑性樹脂材であっても、平板状のワークと総称したものである。
【0017】
従って、本発明に係る樹脂加熱成形装置、及び樹脂加熱成形装置の制御方法によれば、金型より小さいサイズのワーク(熱可塑性樹脂材)を、金型で加熱成形する場合でも、熱可塑性樹脂材の廃棄処分量を抑制して、より高精度な樹脂成形品を安定した生産体制で製造することができる、という優れた効果を奏する。
【0018】
(2)に記載する樹脂加熱成形装置において、下型は、支持状態位置で停止すること、を特徴とする。また、(5)に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法において、制御部は、支持状態位置に合わせて、下型の上昇動作を停止させること、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、クランプの保持から解放したワークを、位置ずれ等もなく、金型による成形加工で支障を生じない適切な状態に配置して、下型の上面上に、より確実に着座させることができる。ひいては、歩留まりをより大きくして、樹脂成形品を製造することが可能になる。また、このような作用・効果については、(5)に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法についても、(2)に記載する樹脂加熱成形装置と同じである。
【0020】
(3)に記載する樹脂加熱成形装置において、制御部は、垂下部の底との接触を開始する下型の接触開始位置を境に、下型の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、駆動手段に行い、二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する下型の動きの下、支持状態位置で、負の加速度から変化させた正の加速度を含む速度であること、を特徴とする。
【0021】
この特徴により、クランプの保持から解放したワークを、位置ずれ等もなく、金型による成形加工で支障を生じない適切な状態に配置して、下型の上面上に、より確実に着座させることができる。ひいては、歩留まりをより大きくして、樹脂成形品を製造することが可能になる。また、このような作用・効果については、(6)に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法についても、(3)に記載する樹脂加熱成形装置と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る加熱成形装置に構成した搬送部の要部を示す平面図である。
図2図1に示す搬送部の側面図であり、クランプによるワークの非把持状態を示す説明図である。
図3図1に示す搬送部の側面図であり、クランプによるワークの把持状態を示す説明図である。
図4】実施形態に係る加熱成形装置において、搬送部の動きを模式的に示す説明図である。
図5】実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、クランプで把持されたワークを、型合わせ位置まで搬送された状態を示す第1工程図である。
図6図5に示す第1工程図に続き、ワークとの接触開始位置まで下型が上昇した状態を示す第2工程図である。
図7図6に示す第2工程図に続き、下型が支持状態位置に到達した状態を示す第3工程図であり、クランプによるワークの把持を解除する直前を示す図である。
図8図7に図示した下型の支持状態位置についての説明図である。
図9】実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、下型の挙動について、速度とワークの位置との関係を示すチャート図であり、(a)は実施例1に係る下型の挙動を、(b)は実施例1に係る下型の挙動を、それぞれ示す。
図10図7に示す第3工程図に続き、クランプによるワークの把持を解除完了後、クランプが金型から退避した状態を示す第4工程図である。
図11図10に示す第4工程図に続き、金型でワークを成形して樹脂成形品を製造している様子を示す第5工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る樹脂加熱成形装置、及び樹脂加熱成形装置の制御方法を具体化した実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る樹脂加熱成形装置は、熱可塑性樹脂材からなるワークを、上型と下型で一対をなす金型により、加熱して成形される樹脂成形品を製造する装置であり、金型より小さいサイズで、平板状に形成されたワークを、成形対象としている。また、この樹脂加熱成形装置は、ワークを搬送して金型に供給する搬送部を備えている。なお、本発明に係る樹脂加熱成形装置の制御方法について、本実施形態に係る樹脂加熱成形装置に基づく場合を挙げて説明する。
【0024】
ワークについて、簡単に説明する。図1は、実施形態に係る加熱成形装置に構成した搬送部の要部を示す平面図である。ワーク50は、例えば、ポリプロピレン(略称PP:polypropylene、アクリル樹脂(略称PMMA:acrylic resin)、ポリアセタール(略称POM:polyacetal)、ポリカーボネート(略称PC:polycarbonate))等、熱可塑性樹脂材からなる。ワーク50は、成形時に、後述する金型10内に完全に収まるよう、金型10より小さいサイズになっている。ワーク50は、説明の便宜上、本実施形態では、図1に示すように、平面の輪郭を四角形とした平板で、一例として、数~十数mm程の板厚、一辺の長さを数十~数百mm程の大きさに形成された材料である。なお、ワークは、成形する樹脂成形品(製品)の仕様に応じて、輪郭や板厚、大きさ等の形状を異にするため、輪郭、板厚や大きさ等の形状については、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0025】
図2は、図1に示す搬送部の側面図であり、クランプによるワークの非把持状態を示す説明図であり、図3は、クランプによるワークの把持状態を示す説明図である。図4は、実施形態に係る加熱成形装置において、搬送部の動きを模式的に示す説明図である。なお、図1中、左右方向を、加熱成形装置1(本発明の樹脂加熱成形装置に対応)の水平方向(搬送部20の移動方向)HZとして、図2以降の各図でも、図1に定義した方向に準じる。また、図4中、上下方向を、加熱成形装置1の上下方向VTとして、図5以降の各図でも、図4に定義した方向に準じる。
【0026】
図1及び図4に示すように、加熱成形装置1は、駆動部2(駆動手段)、制御部3、上型11と下型12で一対をなす金型10、及び搬送部20等を備えている。
【0027】
はじめに、搬送部20について、説明する。図4に示すように、搬送部20は、ワーク50を、上型11との型合わせに対応させて、下型12の上面12aに載置可能な型合わせ位置P2と、金型10から離れた退避位置P1との間を移動可能に構成されている。具体的には、図1図4に図示していないが、加熱成形装置1は、金型10でワーク50を成形するにあたり、ヒータにより、ワーク50を成形に必要な温度まで加熱する加熱部を有し、搬送部20は、この加熱部にある退避位置P1と、金型10の型合わせ位置P2との間を移動する。
【0028】
搬送部20は、図1図4に示すように、ワーク50の端部51を、把持またはその解除を可能なクランプ21を有している。クランプ21は、ワーク50の配置位置を挟む水平方向HZ両側に、対向配置で一組をなして配設され、平板状のワーク50に対し、対向する端部51同士の保持を可能としている。両側のクランプ21同士は、ワーク50の配置位置を基準に、図2に示すように、互いに離間させる動作と、図3に示すように、互いに近接する動作とを、選択的に行う。
【0029】
クランプ21同士が互いに近接すると、クランプ21は、ワーク50の端部51を把持し、クランプ21同士が互いに離間すると、クランプ21は、ワーク50の端部51の把持を解除する。端部51をクランプ21で把持したワーク50は、搬送部20の移動により、型合わせ位置P2まで搬送される。次に、後に詳述するように、クランプ21は、型合わせ位置P2で、このワーク50の把持を解除した後、搬送部20は、退避位置P1に戻り、金型10の型合わせ動作に支障を来さない場所まで、クランプ21を移動させる。
【0030】
次に、金型10について、説明する。金型10は、製品である樹脂成形品60(図11参照)の成形形状に対応した型形状に形成され、上型11と下型12で組をなしている。金型10は、上型11と下型12の双方とも、それぞれ駆動部2に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成されている。制御部3は、駆動部2の動作制御、搬送部20の動作制御、クランプ21の動作制御(ワーク50の把持とその解除)をはじめ、加熱部におけるヒータ温度調節や、ワーク50の温度管理に装着される温度センサ、光電センサや近接センサ等の各種センサ、空圧機器等に装着される種々のセンサ等、加熱成形装置1全体の電気的な制御を担う。
【0031】
金型10では、上型11と下型12との型開き位置は、図4に示すように、搬送部20によるワーク50の搬送ラインFLを基準に設定され、上型11の上降端位置U1は、搬送ラインFLより上方であり、下型12の下降端位置L1は、搬送ラインFLより下方である。駆動部2と制御部3により、上型11は、上降端位置U1の下方側に向けて動き、下型12は、下降端位置L1の上方側に向けて動く。
【0032】
次に、樹脂成形品60の製造にあたり、加熱成形装置1の制御方法について、説明する。図5は、実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、クランプで把持されたワークを、型合わせ位置まで搬送された状態を示す第1工程図である。
【0033】
図4に示すように、搬送部20が、クランプ21で把持された状態のワーク50を、退避位置P1から搬送して、図5に示すように、この状態のワーク50が、金型10の型合わせ位置P2に配置される。ワーク50は、予め加熱部で、例えば、百数十度程に加熱されて軟化した状態になっている。そのため、ワーク50が、両側(図5中、左右側)の端部51をクランプ21で保持した状態で、型合わせ位置P2に供給されると、加熱前に平板状であったワーク50は、図5に示すように、クランプ21より下に垂れ下がった垂下部52をなす形状に変形している。
【0034】
図6は、図5に示す第1工程図に続き、ワークとの接触開始位置まで下型が上昇した状態を示す第2工程図である。図9は、実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、下型の挙動について、速度とワークの位置との関係を示すチャート図であり、(a)は実施例1に係る下型の挙動を、(b)は実施例1に係る下型の挙動を、それぞれ示す。
【0035】
ワーク50が、図5に示すように、金型10の型合わせ位置P2に配置された後、図9に示すように、制御部3は、下型12を、下降端位置L1から、搬送ラインFL上で待機するワーク50に向けて一次速度V1(0<V1)で上昇させ、図6に示すように、垂下部52の底53と接触させる。下型12が、垂下部52の底53と接触した接触開始位置L2に到達したら、制御部3は、図9に示すように、垂下部52の底53との接触を開始する下型12の接触開始位置L2を境に、下型12の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、駆動部2に行う。
【0036】
図7は、図6に示す第2工程図に続き、下型がワークの下側支持位置に到達した状態を示す第3工程図であり、クランプによるワークの把持を解除する直前を示す図である。図8は、図7に図示した下型の支持状態位置についての説明図である。
【0037】
加熱成形装置1では、このような変形を伴ったワーク50を、下型12の上面12a上に載置してから、上型11との型合わせで成形するにあたり、ワーク50の垂下部52の底53を、上型11に向けて上昇する下型12による当接で、支えた状態になった下型12の支持状態位置L3で、制御部3は、クランプ21によるワーク50の把持を解除する。支持状態位置L3は、図7及び図8に示すように、下型12の上面12aと接触可能なワーク50の有効接触面積S1のうち、下型12と接触する垂下部52の底53に対し、下型12側に投影される垂下部52の底53の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置である。この割合S2/S1が、5%未満であると、上昇動作を伴った下型12の上面12a上に、クランプ21による端部51の把持を解除したワーク50を載せた場合、ワーク50は、下型12の上面12a上で位置ずれ等を伴い、金型10による成形加工で支障を来してしまう場合があるからである。
【0038】
具体的に説明する。下型12の上面12aが、最初に垂下部52の底53と概ね接触し始める接触開始位置L2に達したタイミングで、制御部3は、図9に示すように、下型12を二次速度V2(0<V2<V1)に減速する。これにより、下型12は、減速した二次速度V2で上昇して支持状態位置L3に近づく。
【0039】
なお、下型12において、接触開始位置L2と支持状態位置L3を検知する上で、下型12の上面12aとワーク50の垂下部52との状態を検出可能な検出手段を、加熱成形装置1に設けておくことが好ましい。検出手段の一例として、接触開始位置L2と支持状態位置L3にそれぞれ対応した下型12の動作ポイントを把握しておき、これらの動作ポイントに下型12が近づいたことを、近接センサで検出する手段である。また、垂下部52の底53の位置に合わせて、光電センサより光を照射し、下型12の上面12aが、この光と干渉する状態になったタイミングで、制御部3が、移動中の下型12の動作を制御する手段等である。
【0040】
<実施例1>
実施例1に係る下型12の動作制御では、図9(a)に示すように、下型12は、接触開始位置L2から支持状態位置L3に向けて、二次速度V2で減速しながら上昇し続け、制御部3は、支持状態位置L3に合わせて、下型12の上昇動作を停止させる。下型12が停止したら、制御部3は、下型12を支持状態位置L3で停止させたまま、搬送部20に対し、クランプ21同士を互いに離間させ、ワーク50の端部51の把持を解除する。
【0041】
<実施例2>
また、実施例2に係る下型12の動作制御では、下型12は、接触開始位置L2から支持状態位置L3に向けて、二次速度V2で減速しながら上昇し続ける。実施例2の場合、図9(b)に示すように、二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する下型の動きの下、支持状態位置L3で加速度の向きを変え、負の加速度から変化させた正の加速度を含む速度である。
【0042】
閾値速度vとは、上昇動作を続ける下型12の上面12aに、垂下部52の底53を預けた状態になっているワーク50に対し、支持状態位置L3で、ワーク50の端部51の把持を解除しても、図10のように、上昇動作を伴った下型12の上面12a上に、ワーク50を、位置ずれ等もなく、金型10による成形加工で支障を生じない適切な状態で配置できることを前提に、その許容範囲内となる下型12の上限速度を意味する。また、速度成分v0とは、下型12が支持状態位置L3に到達し、クランプ21によるワーク50の端部51の把持を解除するとき、下型12に、低速ながらも上昇に向けた動きを伴っていることを意味する。
【0043】
図10は、図7に示す第3工程図に続き、クランプによるワークの把持を解除完了後、クランプが金型から退避した状態を示す第4工程図である。図11は、図10に示す第4工程図に続き、金型でワークを成形して樹脂成形品を製造している様子を示す第5工程図である。
【0044】
下型12が支持状態位置L3に到達後、支持状態位置L3で、クランプ21によるワーク50の保持が解除されたら、制御部3は、図9及び図10に示すように、二次速度V2に続き正の加速度で増速した三次速度V3で、下型12を成形基準位置L4まで上昇させ、下型12の上面12aに載置したワーク50を、搬送ラインFLに合わせて配置する。下型12が成形基準位置L4に到達後、図11に示すように、制御部3は、上型11を上型成形位置U2まで下降させることにより、上型11と下型12とが型合わせされる。かくして、ワーク50が、上型11と下型12により、加熱して成形され、樹脂成形品60が製造される。
【0045】
次に、本実施形態に係る加熱成形装置1、及び加熱成形装置1の制御方法の作用・効果について説明する。本実施形態に係る加熱成形装置1は、熱可塑性樹脂材からなるワーク50を、加熱した状態の下で、上型11と下型12で一対をなす金型10により成形される樹脂成形品60の製造にあたり、金型10より小さいサイズのワーク50に対し、把持またはその解除を可能なクランプ21を有し、ワーク50を、上型11との型合わせに対応させて、下型12の上面12aに載置可能な型合わせ位置P2と、金型10から離れた退避位置P1との間を移動可能な搬送部20と、を備え、搬送部20は、端部51がクランプ21で把持されたワーク50を、型合わせ位置P2まで搬送し、型合わせ位置P2でワーク50の把持を解除した後、クランプ21を退避位置P1に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置において、クランプ21は、平板状に形成されたワーク50に対し、対向する端部51同士を保持可能に設けられていること、少なくとも下型12は、駆動部2に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、搬送部20、クランプ21、及び駆動部2の動作を制御する制御部3を備えていること、制御部3は、型合わせ位置P2で、クランプ21により保持された状態のワーク50に対し、クランプ21より下に垂れ下がった垂下部52の底53を、上型11に向けて上昇する下型12による当接で、支えた状態になった下型12の支持状態位置L3で、クランプ21によるワーク50の把持を解除すること、支持状態位置L3は、下型12の上面12aと接触可能なワーク50の有効接触面積S1のうち、下型12と接触する垂下部52の底53に対し、下型12側に投影される垂下部52の底53の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、を特徴とする。
【0046】
この特徴により、ワーク50を金型10で成形するにあたり、型合わせ位置P2で、クランプ21によるワーク50の保持が解除されても、ワーク50は、下型12の上面12a上に、位置ずれすることなく、狙い通りの所望部位に載置することができる。そのため、下型12の上面12a上に載置したワーク50を、上型11と下型12との成形位置となる下型12での基準位置に対し、位置決めして載置することが容易であることから、精度の高い製品(樹脂成形品60)を、個体ごとに安定した生産体制で製造することができる。それ故に、樹脂成形品60に対し、品質管理上、製品不良の発生は、特許文献1の技術に比べて、格段に抑制できる。また、成形品不要部のトリミングを伴った加工技術によって樹脂成形品を製造する場合に比べ、金型10より小さいサイズのワーク50を使用して、樹脂成形品60を製造するため、材料となる熱可塑性樹脂材の廃棄処分がほとんど生じない。ひいては、加熱成形装置1は、環境保全・資源保護等の観点で、地球の環境に優しい装置となり得ることから、プラスチック製品の廃棄を削減する世界的な取り組みに貢献できる。
【0047】
従って、本実施形態の加熱成形装置1、及び加熱成形装置1の制御方法によれば、金型10より小さいサイズのワーク50(熱可塑性樹脂材)を、金型10で加熱成形する場合でも、熱可塑性樹脂材の廃棄処分量を抑制して、より高精度な樹脂成形品60を安定した生産体制で製造することができる、という優れた効果を奏する。
【0048】
また、本実施形態の加熱成形装置1、及び加熱成形装置1の制御方法では、制御部3は、支持状態位置L3に合わせて、下型12の上昇動作を停止させること、を特徴とする。また、本実施形態の加熱成形装置1の制御方法では、下型12は、支持状態位置L3で停止すること、を特徴とする。
【0049】
この特徴により、クランプ21の保持から解放したワーク50を、位置ずれ等もなく、金型10による成形加工で支障を生じない適切な状態に配置して、下型12の上面12a上に、より確実に着座させることができる。ひいては、歩留まりをより大きくして、樹脂成形品60を製造することが可能になる。
【0050】
また、本実施形態の加熱成形装置1、及び加熱成形装置1の制御方法では、制御部3は、垂下部52の底53との接触を開始する下型12の接触開始位置L2を境に、下型12の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、駆動部2に行い、二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する下型の動きの下、支持状態位置L3で、負の加速度から変化させた正の加速度を含む速度であること、を特徴とする。
【0051】
この特徴により、クランプ21の保持から解放したワーク50を、位置ずれ等もなく、金型10による成形加工で支障を生じない適切な状態に配置して、下型12の上面12a上に、より確実に着座させることができる。ひいては、歩留まりをより大きくして、樹脂成形品60を製造することが可能になる。
【0052】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0053】
例えば、実施形態では、加熱成形装置1の下型12の挙動について、速度Vとワーク50の位置との関係を示したチャート図を、図9に例示したが、下型の挙動に関して、速度とワークの位置との関係は、図9に限定されるものではなく、ワークの成形条件に応じて、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 樹脂加熱成形装置
2 (駆動手段)
3 制御部
10 金型
11 上型
12 下型
20 搬送部
21 クランプ
P1 退避位置
P2 型合わせ位置
50 ワーク
51 端部
52 垂下部
53 底
60 樹脂成形品
S1 有効接触面積
S2 投影接触面積
L2 接触開始位置
L3 支持状態位置
V1 一次速度
V2 二次動作速度
v 閾値速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱した状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により成形される樹脂成形品の製造にあたり、該金型より小さいサイズの該ワークに対し、把持またはその解除を可能なクランプを有し、該ワークを、該上型との型合わせに対応させて、該下型上に載置可能な型合わせ位置と、該金型から離れた退避位置との間を移動可能な搬送部と、を備え、
該搬送部は、端部が該クランプで把持された該ワークを、型合わせ位置まで搬送し、該型合わせ位置で該ワークの把持を解除した後、該クランプを退避位置に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置において、
前記クランプは、平板状に形成された前記ワークに対し、対向する前記端部同士を保持可能に設けられていること、
少なくとも前記下型は、駆動手段に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、前記搬送部、前記クランプ、及び前記駆動手段の動作を制御する制御部を備えていること、
前記制御部は、前記型合わせ位置で、前記クランプにより保持された状態の前記ワークに対し、前記クランプより下に垂れ下がった垂下部の底を、前記上型に向けて上昇する前記下型による当接で、支えた状態になった前記下型の支持状態位置で、前記クランプによる前記ワークの把持を解除すること、
前記支持状態位置は、前記下型の上面と接触可能な前記ワークの有効接触面積S1のうち、前記下型と接触する前記垂下部の底に対し、前記下型側に投影される前記垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載する樹脂加熱成形装置において、
前記下型は、前記支持状態位置で停止すること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載する樹脂加熱成形装置において、
前記制御部は、前記垂下部の底との接触を開始する前記下型の接触開始位置を境に、前記下型の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、前記駆動手段に行い、
前記二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する前記下型の動きの下、前記支持状態位置で、前記負の加速度から向き変えた正の加速度を含む速度であること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。
【請求項4】
熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱した状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により成形される樹脂成形品の製造にあたり、該金型より小さいサイズの該ワークに対し、把持またはその解除を可能なクランプを有し、該ワークを、該上型との型合わせに対応させて、該下型上に載置可能な型合わせ位置と、該金型から離れた退避位置との間を移動可能な搬送部と、を備え、該搬送部は、端部が該クランプで把持された該ワークを、型合わせ位置まで搬送し、該型合わせ位置で該ワークを解除した後、該クランプを退避位置に戻す動作をなす樹脂加熱成形装置の制御方法において、
前記クランプは、平板状に形成された前記ワークに対し、対向する前記端部同士を保持可能に設けられていること、
少なくとも前記下型は、駆動手段に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成され、前記搬送部、前記クランプ、及び前記駆動手段の動作を制御する制御部を備えていること、
前記制御部は、前記型合わせ位置で、前記クランプにより保持された状態の前記ワークに対し、前記クランプより下側に垂れ下がった垂下部の底を、前記上型に向けて上昇する前記下型による当接で、支えた状態になった前記下型の支持状態位置で、前記クランプによる前記ワークの把持を解除すること、
前記支持状態位置は、前記下型の上面と接触可能な前記ワークの有効接触面積S1のうち、前記下型と接触する前記垂下部の底に対し、前記下型側に投影される前記垂下部の底の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置であること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法において、
前記制御部は、前記支持状態位置に合わせて、前記下型の上昇動作を停止させること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載する樹脂加熱成形装置の制御方法において、
前記制御部は、前記垂下部の底との接触を開始する前記下型の接触開始位置を境に、前記下型の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、前記駆動手段に行い、
前記二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する前記下型の動きの下、前記支持状態位置で、前記負の加速度から変化させた正の加速度を含む速度であること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の制御方法。