(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103737
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】情報処理装置、端末、情報処理方法、警報方法及び警報システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20230720BHJP
G01S 19/43 20100101ALI20230720BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G01S19/43
G08B25/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004435
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 靖久
(72)【発明者】
【氏名】柴田 純
(72)【発明者】
【氏名】吉野 一幸
(72)【発明者】
【氏名】堀池 直登
(72)【発明者】
【氏名】河合 慶士
(72)【発明者】
【氏名】白崎 良昌
(72)【発明者】
【氏名】角淵 敦基
(72)【発明者】
【氏名】下条 則之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 浩章
(72)【発明者】
【氏名】小坂 和裕
【テーマコード(参考)】
5C087
5J062
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA19
5C087AA42
5C087AA51
5C087BB18
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD35
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG84
5J062AA09
5J062BB05
5J062CC07
5J062EE04
5J062HH09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】移動体に対応付けられている人に対して適切に警報を行う情報処理装置、端末、情報処理方法、警報方法及び警報システムを提供する。
【解決手段】警報システム1において、上位サーバ20は、測位端末10に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと、作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲を変更し、測位端末10の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、測位端末10が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する測位端末10であるかを決定する処理部と、測位端末10が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する測位端末10であると決定した場合、警報を測位端末10に発出させるための信号を、測位端末10に送信する通信部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、前記作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲を変更し、前記端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定する処理部と、
前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記警報を前記端末に発出させるための信号を、前記端末に送信する通信部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記作業員の属性に関するパラメータは、前記作業員の作業経験に関するパラメータである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記作業員の作業経験に関するパラメータは、前記作業員が作業を行う作業エリアにおける前記作業員の作業累計時間、前記作業員の前記警報を発出するべきエリアへの侵入回数、前記作業員の通算作業時間及び前記作業員の作業レベルのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記作業員の周囲状況に関するパラメータは、前記作業員の周囲の天候に関するパラメータである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記天候に関するパラメータは、前記作業員の周囲の降雨量、気温、風、霧及び花粉の飛散状況のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記警報を発出するべきエリアは、特定のエリアと前記特定のエリアの外周に付加されるマージンエリアとを含み、
前記通信部は、前記端末が、前記マージンエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合と、前記特定のエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合とで、異なる態様の警報を発出させる信号を前記端末に送信する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記特定のエリアの範囲を変更せず、前記マージンエリアの範囲を変更することで前記警報を発出するべきエリアの範囲を変更する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記特定のエリアの範囲を変更することで前記警報を発出するべきエリアの範囲を変更する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記通信部は、前記端末から、RTK(Real Time Kinematic)演算に基づいて決定された前記端末の位置を受信する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記処理部は、RTK演算に基づいて前記端末の位置を決定する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
端末であって、
前記端末の位置を決定する処理部と、
前記端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合に、警報を発出する警報部と、
を備え、
前記警報を発出するべきエリアの範囲は、前記端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて変更される、
端末。
【請求項12】
前記端末は、前記端末の位置を情報処理装置に送信し、前記情報処理装置が前記警報を発出させると決定した場合に前記警報を前記端末に発出させるための信号を受信する通信部を更に備え、
前記警報部は、前記信号に従って警報を発出する、
請求項11に記載の端末。
【請求項13】
情報処理装置が、
端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、前記作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲を変更し、
前記端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定し、
前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記警報を前記端末に発出させるための信号を、前記端末に送信する、
情報処理方法。
【請求項14】
端末が、
前記端末の位置を決定し、
前記端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合に、警報を発出し、
前記警報を発出するべきエリアの範囲は、前記端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて変更される、
警報方法。
【請求項15】
第1端末と第2端末とを有する警報システムであって、
前記警報システムは、
前記第1端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、前記第2端末の位置を含む特定のエリアを含むエリアであり、前記作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲を変更し、
前記第1端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記第1端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定し、
前記第1端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記第1端末及び前記第2端末の少なくとも一方は前記警報を発出する、
警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、端末、情報処理方法、警報方法及び警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
仮想的な境界線で囲まれたエリアを指す「ジオフェンス」として、特定のエリアを設定し、ジオフェンスへの移動体の出入りをトリガとしてイベントを発生させる技術が存在する。例えば、ジオフェンスへの移動体の出入りに対して警報を発出する技術が存在する。
【0003】
例えば特許文献1には、接近通知の対象となる作業員が、ジオフェンスの一例である接近通知対象エリア内に1人でも存在する場合には、警報指令を出力し、存在しない場合には、警報指令を出力しない技術が開示されている。その際に、接近通知対象エリアで検知されている作業員の人数や油圧ショベルとの距離等の情報に応じて警報の種類を段階的に変更することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように移動体を携行する人に対して警報を行うか否かの判定は、ジオフェンスと移動体との距離だけに基づいてなされ、距離以外の他の要素は考慮されていない。例えば、ジオフェンスと移動体との距離が離れている場合にも警報を行えば、安全性は確保されやすくなるが、過度の警報が発出されやすくなる。一方で、ジオフェンスと移動体との距離が近い場合にのみ警報を行えば、過度の警報の発出は抑制されやすくなるが、安全性は確保されにくくなる。別の言い方をすれば、ジオフェンスと移動体との距離以外の他の要素を考慮することで、過度の警報の発出と安全性の確保とのより良いバランスをもたらす更なるジオフェンスの適切な設定に資する余地がある。
【0006】
本開示の非限定的な実施例は、移動体を携行する人等の、移動体に対応付けられている人に対して適切に警報を行うことができる情報処理装置、端末、情報処理方法、警報方法及び警報システムの提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施例に係る情報処理装置は、端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、前記作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲を変更し、前記端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定する処理部と、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記警報を前記端末に発出させるための信号を、前記端末に送信する通信部と、を備える。
【0008】
本開示の一実施例に係る端末は、前記端末の位置を決定する処理部と、前記端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合に、警報を発出する警報部と、を備え、前記警報を発出するべきエリアの範囲は、前記端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて変更される。
【0009】
本開示の一実施例に係る情報処理方法は、情報処理装置が、端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、前記作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲を変更し、前記端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定し、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記警報を前記端末に発出させるための信号を、前記端末に送信する。
【0010】
本開示の一実施例に係る警報方法は、端末が、前記端末の位置を決定し、前記端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合に、警報を発出し、前記警報を発出するべきエリアの範囲は、前記端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて変更される。
【0011】
本開示の一実施例に係る警報システムは、第1端末と第2端末とを有し、前記警報システムは、前記第1端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと前記作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、前記第2端末の位置を含む特定のエリアを含むエリアであり、前記作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲を変更し、前記第1端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記第1端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定し、前記第1端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記第1端末及び前記第2端末の少なくとも一方は前記警報を発出する。
【0012】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一実施例によれば、端末であってよい移動体に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲が変更され、端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかが決定される。そして、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、警報を端末に発出させるための信号が端末に提供されたり、端末は警報を発出したりする。これにより、移動体との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0014】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る警報システムの一例を示す図
【
図2】実施の形態1に係る測位端末の構成の一例を示す図
【
図3】実施の形態1に係る上位サーバの構成の一例を示す図
【
図4】実施の形態1に係る測位端末の動作の一例を示す図
【
図5】実施の形態1に係る上位サーバの動作の一例を示す図
【
図6A】実施の形態1に係る上位サーバの動作の一例を示す図
【
図6B】実施の形態1に係る上位サーバの動作の一例を示す図
【
図7】本開示の実施の形態2に係る警報システムの一例を示す図
【
図8】実施の形態2に係る測位端末の構成の一例を示す図
【
図9】実施の形態2に係る上位サーバの構成の一例を示す図
【
図10】実施の形態2に係る測位端末の動作の一例を示す図
【
図11A】実施の形態2に係る上位サーバの動作の一例を示す図
【
図11B】実施の形態2に係る上位サーバの動作の一例を示す図
【
図12】本開示の実施の形態に係る危険エリア及び危険エリアに付加されたマージンエリアの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る警報システム1の一例を示す図である。警報システム1が利用されるシナリオとして、一例では、作業現場における作業員の危険エリア(すなわちジオフェンス)への接近及び侵入が挙げられる。なお、危険エリアは、侵入禁止エリアと称されてもよい。以下では、このようなシナリオを例にとって説明する。
【0019】
図1に示すように、警報システム1は、測位端末10と、上位サーバ20と、基準局データ配信サーバ30と、モニタデバイス40と、気象情報配信サーバ50と、を有する。警報システム1は、情報処理システム等と称されてもよい。
【0020】
測位端末10が作業員によって携行される場合、測位端末10は、例えば、測位用の専用端末、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス(例えば、腕時計型(又はリストバンド型若しくはリング型)端末)、ヘッドマウントディスプレイ型(又は眼鏡型若しくはゴーグル型)端末、イヤフォン型端末、衣類型端末、靴下型端末等を含む)等の無線端末であってよい。測位端末10はまた、例えば、測位用の専用端末、測位機能を有するパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の無線端末として、工事車両に搭載されてもよい。測位端末10は、警報装置等と称されてもよい。測位端末10は、本開示に係る端末、第1端末、第2端末又は情報処理装置(後述する代表測位端末10に相当)の一例である。
【0021】
警報システム1において、複数の測位端末10が存在してよい。例えば、複数の測位端末10のうちの2つ以上の測位端末10の各々は、2人以上の作業員の各作業員によって携行されて各作業員に対応付けられてよく、複数の測位端末10のうちの残りの測位端末10の各々は、各工事車両に搭載されて各工事車両に対応付けられてよい。
【0022】
測位端末10は、例えばLTE(Long Term Evolution)、5G、Beyond5G、6G、WiFi(登録商標)、WiGig(登録商標)、WiMAX(登録商標)等の通信方式により移動通信網を含むネットワークにアクセスし、ネットワークを介して上位サーバ20及び基準局データ配信サーバ30に接続してよい。
【0023】
測位端末10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星(図示せず)から送信された電波(「衛星信号」又は「測位信号」と称されてもよい)を受信し、受信した衛星信号を用いて測位端末10の測位データ(「測位端末測位データ」又は「測位端末データ」と称されてもよい)を生成する。測位端末10は、基準局データ配信サーバ30から、RTK(Real Time Kinematic)演算を行って測位端末10の位置を測定する(測位端末10を測位する)ための補正データを受信する。
【0024】
測位端末10は、測位端末測位データ及び補正データを用いてRTK演算を行って、測位端末10の位置を(場合によっては速度及び加速度も)測定する。なお、位置は、(地球上の)座標と称されてもよい。座標は、例えば、緯度、経度及び高度の三次元座標であってもよいし、緯度、経度及び高度のうちの2つ(例えば、緯度及び経度)によって表される二次元座標であってもよい。以下では、座標は、緯度及び経度によって表される二次元座標であるとして説明する。「位置を測定する」との表現は、「位置(又は座標)を決定する」、「位置(又は座標)を求める」、「位置(又は座標)を推定する」、「位置(又は座標)を検出する」、「位置(又は座標)を算出する」、「位置(又は座標)を計算する」又は「位置(又は座標)を導出する」との表現に読み替えられてもよい。なお、RTK演算を用いた測位の詳細については後述する。このようにRTK演算を用いることにより、高精度の位置情報等を得ることができる。
【0025】
測位端末10は、測位した測位結果を上位サーバ20に送信する。測位端末10は、上位サーバ20から、測位端末10が危険エリア又は後述する危険エリアの外側(外周)に付加されたマージンエリアに侵入していること又は接近している(「警報イベント」と称されてもよい)が発生したことを警報するための警報発出命令を受信する。なお、警報発出命令は、警報を測位端末10に発出させるための信号と表現されてもよい。危険エリア及びマージンエリアは、本開示に係る「作業員へ警報を発出するべきエリア」の例である。
【0026】
測位端末10は、警報発出命令に従って、例えば測位端末10に対応付けられている作業員又は測位端末10に対応付けられている工事車両を運転している作業員に対して、警報を発出する。
【0027】
上位サーバ20は、例えば1つ以上のサーバコンピュータで構成されてよい。上位サーバ20は、クラウドサーバと称されてもよい。上位サーバ20は、本開示に係る情報処理装置の一例である。
【0028】
上位サーバ20は、危険エリアを設定する。危険エリアは、例えば、土砂が積もっているエリアに安全マージンを付加したエリア、作業用具が集められているエリアに安全マージンを付加したエリア、工事車両のエリアに安全マージンを付加したエリア等を含んでよい。このような安全マージンを付加したエリアは、危険・マージンエリアと称されてもよい。危険・マージンエリアも、危険エリアの一例である。危険エリアの形状は、例えば、真円形、楕円形、矩形等を含むが、これらに限定されるものではない。以下では、危険エリアの形状が真円形であるとして説明する。
【0029】
上位サーバ20は、測位端末10から送信された測位結果を受信する。上位サーバ20は、設定した危険エリア、受信した測位結果等に基づいて、作業員によって携行されて作業員に対応付けられている測位端末10の危険エリアへの接近及び侵入を判定する(換言すれば、警報イベントを検知する)。上位サーバ20は、警報イベントを検知した場合、警報イベントが発生したことを、測位端末10に対応付けられている作業員及び工事車両を運転している作業員の少なくとも一方に警報するための警報発出命令を生成して対応する測位端末10に送信する。
【0030】
上位サーバ20は、測位端末10から送信された測位結果に基づいて、測位端末10(換言すれば測位端末10に対応付けられている作業員)毎の統計を取る。例えば、測位端末10毎に取られる統計の例は、作業員が作業を行う作業エリア内の作業員の累計滞在時間(作業累計時間と称されてもよい)及び危険エリア侵入回数(危険エリア侵入頻度と称されてもよい)を含んでよいが、これらに限定されるものではない。作業エリアの形状は、例えば、真円形、楕円形、矩形等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
上位サーバ20はまた、作業員(換言すれば作業員に対応付けられている測位端末10)毎の作業熟練度を、上位サーバ20が備える記憶部において、予め設定(又は登録又は記憶)しておく。
【0032】
さらに、上位サーバ20は、後述する気象情報配信サーバ50から作業現場(換言すれば作業員の周囲)の天候情報(降雨量、気温等)を取得する。
【0033】
上位サーバ20は、累計滞在時間、危険エリア侵入頻度、作業熟練度及び天候情報のうちの少なくとも1つに基づいて、危険エリアの外側にマージンエリアを付加(設定)する。そして、上位サーバ20は、作業員に対応付けられている測位端末10のマージンエリアへの接近及び侵入を判定する(換言すれば、警報イベントを検知する)。上位サーバ20は、警報イベントを検知した場合、警報イベントが発生したことを、測位端末10に対応付けられている作業員及び工事車両を運転している作業員の少なくとも一方に警報するための警報発出命令を生成して対応する測位端末10に送信する。
【0034】
危険エリアと危険エリアに付加されたマージンエリアとをあわせたエリアの形状は、例えば、真円形、楕円形、矩形等を含むが、これらに限定されるものではない。以下では、危険エリアと危険エリアに付加されたマージンエリアとをあわせたエリアの形状が真円形であるとして説明する。本開示の実施の形態に係る危険エリア及び危険エリアに付加されたマージンエリアの例(例1及び例2)が、
図12に示されている。
【0035】
上位サーバ20は、例えばテーブル形式又はリスト形式で測位端末10の識別情報を作業員又は工事車両の識別情報に対応付けて、上位サーバ20が備える記憶装置に記憶することにより、複数の測位端末10を管理してよい。
【0036】
上位サーバ20は、設定した危険エリア及びマージンエリア、受信した測位結果、及び、警報発出命令を送信する対象の測位端末10といった情報を表示するように、これらの情報をモニタデバイス40に送信する。
【0037】
基準局データ配信サーバ30は、RTK演算を行って測位端末10を測位するための補正データを測位端末10に送信する。なお、補正データは、基準局(図示せず)によって生成されて基準局データ配信サーバ30に送信されてよい。基準局は、GNSS衛星から送信された衛星信号に基づいて基準局の測位データ(「補正データ」、「基準局測位データ」又は「基準局データ」と称されてもよい)を生成してよい。基準局は、生成した補正データを基準局データ配信サーバ30に周期的に(例えば、秒オーダー以下の送信周期で)送信してよい。
【0038】
モニタデバイス40は、上位サーバ20から、危険エリア及びマージンエリア、測位結果、及び、警報発出命令を送信する対象の測位端末10といった情報を受信する。モニタデバイス40は、これらの情報をモニタデバイス40が有するディスプレイに表示する。モニタデバイス40は、上位サーバ20に含まれてもよいし、作業管理者等のユーザのコンピュータに含まれてもよいし、工事車両に搭載されてもよい。
【0039】
気象情報配信サーバ50は、作業現場の気象情報(天候情報と称されてもよい)を上位サーバ20に送信する。気象情報は、作業現場の降雨量及び気温の情報を含んでよいが、これらに限定されるものではない。気象情報配信サーバ50は、気象情報を上位サーバ20に定期的に送信する、更新されたときに気象情報を上位サーバ20に送信する等の、プッシュ型の送信を行ってもよいし、上位サーバ20からの要求に応じて気象情報を上位サーバ20に送信する等の、プル型の送信を行ってもよい。
【0040】
<測位端末の構成>
図2は、実施の形態1に係る測位端末10の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、測位端末10は、プロセッサ101と、記憶部102と、警報部103と、GNSS受信装置104と、通信部105と、出力部106と、バス107と、を備える。
【0041】
プロセッサ101は、中央処理装置(CPU)等の処理装置によって実現されてよい。プロセッサ101は、測位端末10の動作全般(例えば、測位端末10の他の要素)を制御する。プロセッサ101は、処理部、制御部、演算部、コントローラ等と称されてもよい。
【0042】
プロセッサ101は、GNSS衛星からの衛星信号を用いて測位端末測位データを生成する。なお、測位端末測位データは、GNSS受信装置104によって生成されてプロセッサ101に出力されてもよい。
【0043】
プロセッサ101は、測位端末測位データと、基準局データ配信サーバ30からの補正データと、を用いてRTK演算を行って、測位端末10の位置、速度、加速度及び進行方向を測定(決定)する。なお、測位端末10が速度センサ及び加速度センサを備えている場合には、測位端末10の速度及び加速度はそれぞれ、速度センサ及び加速度センサによって測定されてもよく、プロセッサ101は、速度センサ及び加速度センサから速度及び加速度をそれぞれ取得し、測位端末10の速度及び加速度を決定してもよい。また、これらの測定は、GNSS衛星から衛星信号が受信されたタイミングで行われてもよいし、例えば0.2秒おき、0.5秒おき、1秒おき等、所定の周期で行われてもよい。プロセッサ101は、測位した測位結果を記憶部102に出力する(すなわち記憶させる)。なお、本開示において、測位端末10に関する測位結果には、測位端末10の位置(緯度及び経度)、速度及び進行方向が含まれる。
【0044】
プロセッサ101は、測定が行われるたびに、通信部105を介して、測位した測位結果を上位サーバ20に送信する。プロセッサ101は、上位サーバ20から、通信部105を介して、警報発出命令を受信する。
【0045】
プロセッサ101は、上位サーバ20から警報発出命令を受信すると、警報発出命令に応じた警報を発出するように、警報部103を制御する。以下で説明するように、一例として、警報発出命令は、測位端末10がマージンエリアに侵入していることに対して警報を発出するように命令する警報発出命令を含む。
【0046】
記憶部102は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のうちの1つ以上であってよい。記憶部102は、他の要素から様々な情報を取得し、一時的又は永続的にその情報を保持する。記憶部102は、いわゆる一次記憶装置及び二次記憶装置の総称である。記憶部102は、物理的に複数配置されてもよい。
【0047】
記憶部102は、例えば、測位端末10を動作させるためにプロセッサ101によって実行されるプログラム、測位端末10が動作するのに必要なデータ、プロセッサ101によって生成されたデータ、GNSS衛星から送信された衛星信号、測位端末測位データ、基準局データ配信サーバ30から送信された補正データ、プロセッサ101による測位結果、上位サーバ20から送信された警報発出命令等を記憶する。
【0048】
警報部103は、危険エリア及び危険エリアに付加されたマージンエリアへの接近及び侵入に対して警報を行う。例えば、警報部103は、ブザーを鳴動させること、測位端末10を振動させること、出力部106を介して警報音を出力すること、又は、これらの任意の組み合わせによって、警報を発出してよい。警報部103は、測位端末10が危険エリア及び危険エリアに付加されたマージンエリアに侵入する予測時間に応じて異なる様式の警報を発出してよい。
【0049】
GNSS受信装置104は、GNSS衛星から送信された衛星信号を受信する。GNSS受信装置104は、受信した衛星信号を用いて測位端末10の測位端末測位データを生成してもよい。GNSS受信装置104は、衛星信号をプロセッサ101及び記憶部102に出力する。GNSS受信装置104は、測位端末測位データを生成した場合には、測位端末測位データをプロセッサ101及び記憶部102に出力する。
【0050】
通信部105は、一例として、セルラー通信網等の通信網と通信可能な通信インタフェースを用いて構成されてよい。通信部105は、通信路を介して外部機器と通信を行う。通信部105が通信する対象(通信対象)の機器には、例えば、上位サーバ20及び基準局データ配信サーバ30が含まれる。
【0051】
通信部105は、基準局データ配信サーバ30から送信された補正データを受信する。通信部105は、上位サーバ20から送信された警報発出命令を受信する。通信部105は、受信した補正データ及び警報発出命令をプロセッサ101及び記憶部102に出力する。通信部105は、測位された測位結果を上位サーバ20に送信する。
【0052】
出力部106は、一例として、ディスプレイ等の出力インタフェースを用いて構成されてよい。追加的又は代替的に、出力部106は、音、振動等のための出力インタフェースを用いて構成されてもよい。出力部106は、情報を外部に提示又は提供する。出力部106が提示又は提供する情報には、プロセッサ101による測位結果等が含まれる。
【0053】
プロセッサ101、記憶部102、警報部103、GNSS受信装置104、通信部105及び出力部106は、互いに通信可能であるように、バス107を介して互いに接続されている。
【0054】
なお、上記の測位端末10の構成は一例である。測位端末10の構成要素の一部は、統合されてもよい。また、測位端末10の構成要素の一部は、複数の要素に分割されてもよい。また、測位端末10の構成要素の一部は、省かれてもよい。また、測位端末10に他の要素が付加されてもよい。例えば、タッチディスプレイ、キーボード、マウス等であってよい入力部が測位端末10に付加されてもよい。
【0055】
[測位データ]
次に、測位データについて説明する。測位データには、例示的に、擬似距離情報、搬送波位相情報及びドップラー周波数情報が含まれる。
【0056】
擬似距離情報とは、衛星と受信機(例えば、基準局又は測位端末10)との間の距離に関する情報である。受信機は、測位信号を解析することにより衛星との距離を算出することができる。例えば、受信機は、以下の情報に基づいて測位信号の到達時間を求める。
【0057】
(1)測位信号が搬送したコードのパターンと当該受信機が生成したコードのパターン(レプリカ)との相違
(2)衛星の信号生成時刻及び受信機の信号受信時刻
なお、衛星の信号生成時刻は、測位信号のメッセージ(NAVDATA)に含まれる。
【0058】
受信機は、測位信号の到達時間に光速を乗ずることにより、衛星と受信機との間の擬似距離を求める。擬似距離には、衛星のクロックと受信機のクロックとの相違等に起因する誤差が含まれる。誤差の軽減のために、4機以上の衛星に対して擬似距離情報が生成される。
【0059】
搬送波位相情報とは、受信機が受信した測位信号の位相である。測位信号は、所定の正弦波である。受信機は、受信した測位信号を解析することにより、測位信号の位相を算出することができる。
【0060】
ドップラー周波数情報とは、衛星と受信機との相対的な速度に関する情報である。受信機は、測位信号を解析することにより、ドップラー周波数情報を生成することができる。
【0061】
[RTK演算]
次に、RTK演算について説明する。RTK演算は、干渉測位の一つであるRTK法を実行する演算である。
【0062】
RTK法とは、衛星が送信する測位信号の搬送波位相積算値を用いて所定の地点の測位を行う測位法である。搬送波位相積算値は、衛星から所定の地点までの(1)測位信号の波の数と(2)位相との和によって表される。
【0063】
搬送波位相積算値が求まれば、測位信号の周波数(及び波長)が既知であるため、衛星と所定の地点との間の距離を求めることができる。測位信号の波の数は、未知数であるので整数アンビギュイティ又は整数値バイアスと呼ばれる。
【0064】
RTK法においては、ノイズ除去及び整数アンビギュイティの推定(又は決定)が行われる。
【0065】
例えば、RTK法では、二重差と呼ばれる差を演算することにより、ノイズの除去を行うことができる。二重差とは、2つの衛星に対する1つの受信機の搬送波位相積算値の差(一重差)を2つの受信機(例えば、基準局及び測位端末10)の間でそれぞれ算出した値の差である。RTK法を用いた測位では、4機以上の衛星が使用されるため、4機以上の衛星の組み合わせの数だけ二重差が演算される。二重差の演算には、例えば、基準局が生成した基準局測位データと、測位端末10が生成した測位端末測位データと、が用いられる。
【0066】
また、RTK法において、整数アンビギュイティの推定には、様々な方法が適用される。例えば、(1)最小二乗法によるフロート解の推定及び(2)フロート解に基づくフィックス解の検定、という手順を実行することにより、整数アンビギュイティが推定される。
【0067】
最小二乗法によるフロート解の推定は、時間単位毎に生成した二重差の組み合わせを用いて連立方程式を作成し、作成した連立方程式を最小二乗法によって解くことにより実行される。この演算では、例えば、基準局が生成した基準局測位データ、測位端末10が生成した測位端末測位データ、及び、基準局の既知の座標が用いられる。このようにして推定された整数アンビギュイティの実数推定値は、フロート解(推測解)と呼ばれる。
【0068】
以上のようにして求められたフロート解は実数であるのに対して、整数アンビギュイティの真の値は整数である。そのため、フロート解は、「丸める」ことによって整数値に変換される。ここで、フロート解を丸める組み合わせには複数通りの候補が考えられる。
【0069】
複数通りの候補の中から正しい整数値が検定される。検定によって整数値バイアスとして確からしい解が、フィックス解(精密測位解)と呼ばれる。一例では、RTK演算によって得られたAR(Ambiguity Ratio)値を用いて品質チェックを行い、品質チェックの結果に基づいて正しい整数値が検定される。整数値の候補の絞込みを効率化するために、基準局が生成した基準局測位データが用いられてよい。
【0070】
[RTK演算を用いた測位端末位置測定(決定)]
次に、測位端末10のプロセッサ101による、測位端末10の位置(地球上の座標)測定(決定)について説明する。
【0071】
プロセッサ101は、例えば、測位端末10での測位端末測位データと基準局での基準局測位データ(すなわち基準局データ配信サーバ30から送信された補正データ)とを用いてRTK法による干渉測位(RTK演算)を実行し、測位解(フィックス解又はフロート解)を算出する。RTK演算によって得られる測位解は、「RTK測位解」と称されてもよい。
【0072】
プロセッサ101は、RTK演算によって得られたAR値を用いて品質チェックを行い、AR値が所定の閾値(例えば3.0)以上の場合には、正しいフィックス解が得られたと判定してフィックス解を出力し、AR値が所定の閾値未満の場合には、正しい測位解が得られなかったと判定してフロート解を出力する。
【0073】
そして、プロセッサ101は、RTK測位解を測位端末10の位置(地球上の座標)として決定する。
【0074】
<上位サーバの構成>
図3は、実施の形態1に係る上位サーバ20の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、上位サーバ20は、プロセッサ201と、記憶部202と、通信部203と、バス204と、を備える。
【0075】
プロセッサ201は、CPU等の処理装置によって実現されてよい。プロセッサ201は、上位サーバ20の動作全般(例えば、上位サーバ20の他の要素)を制御する。なお、プロセッサ201は、処理部、制御部、演算部、コントローラ等と称されてもよい。
【0076】
プロセッサ201は、作業員の作業エリアを設定する。例えば、プロセッサ201は、入力部(図示せず)を介して作業管理者等のユーザによって入力されたエリア情報(例えば、仮想的な境界線の位置情報)に基づいて、作業エリアを設定してよい。
【0077】
プロセッサ201は、危険エリアを設定する。例えば、危険エリアが工事車両のエリアに関連しない場合、プロセッサ201は、入力部(図示せず)を介して作業管理者等のユーザによって入力されたエリア情報(例えば、仮想的な境界線の位置情報)に基づいて、安全マージンを含んでも含まなくてもよい危険エリアを静的(固定的)又は半静的に設定してよい。また、危険エリアが工事車両のエリアに関連する場合、プロセッサ201は、工事車両に対応付けられている測位端末10からの当該測位端末10の測位結果に基づいて、安全マージンを含んでも含まなくてもよい危険エリアを動的に設定してよい。例えば、プロセッサ201は、測位結果に含まれる測位端末10の位置を中心とする所定の円の円周を仮想的な境界線に設定することによって、危険エリアを設定してよい。この場合の危険エリアは、工事車両に対応付けられている測位端末10の位置を含み、当該測位端末10に対応付けられている。ここで、安全マージンは、作業員の移動や姿勢変更(転倒等)を考慮しても定められるマージンである。一般的な人間の身長を考慮すると2m程度であれば十分であるが、現実の環境に応じて作業管理者等が任意のマージンを設定してよい。
【0078】
プロセッサ201は、作業員(作業員に対応付けられている測位端末10)毎の作業熟練度を、記憶部202において、予め設定(又は登録又は記憶)しておく。例えば、作業熟練度は、作業員の通算作業時間及び作業レベルを含んでよい。作業熟練度の設定は、プロセッサ201によって、入力部(図示せず)を介して作業管理者等のユーザによって入力された情報に基づいて行われてもよいし、測位端末10から送信された測位結果に基づいて行われてもよいし、これらの両方であってもよい。
【0079】
プロセッサ201は、測位端末10から送信された測位結果に基づいて、測位端末10(換言すれば測位端末10に対応付けられている作業員)毎の統計を取る。測位端末10毎に取られる統計は、例えば、作業エリア内の累計滞在時間及び危険エリア侵入回数を含んでよい。プロセッサ201は、気象情報配信サーバ50から送信された作業現場の天候情報を取得する。そして、プロセッサ201は、累計滞在時間、危険エリア侵入頻度、作業熟練度及び天候情報のうちの少なくとも1つに基づいて、危険エリアの外側に付加するマージンエリアを設定する。
【0080】
プロセッサ201は、測位端末10の危険エリア又は危険エリアの外側に付加されたマージンエリアへの接近を判定するための、1つの閾値又は段階的な複数の閾値を設定してもよい。このような1つ又は複数の閾値は、侵入予測時間閾値と称されてもよい。すなわち、侵入予測時間閾値は、以下で説明する測位端末10の危険エリア又は危険エリアの外側に付加されたマージンエリアへの侵入予測時間と比較される閾値である。また、プロセッサ201は、測位端末10と危険エリアの中心との距離が所定の距離以上である場合には、測位端末10に警報を発出させないことを決定する。プロセッサ201は、所定の距離を閾値として設定してもよい。この閾値は、無警報距離閾値と称されてもよい。例えば、プロセッサ201は、入力部を介して作業管理者等のユーザによって入力された閾値を、侵入予測時間閾値及び無警報距離閾値として設定してよい。プロセッサ201は、侵入予測時間閾値及び無警報距離閾値を記憶部202に出力する。
【0081】
プロセッサ201は、例えば、作業員に対応付けられている測位端末10から測位結果が受信されるたびに、当該測位結果及び設定した危険エリア又はマージンエリアに基づいて、当該測位端末10の危険エリア又はマージンエリアへの侵入時間(すなわち、危険エリア又はマージンエリアに到達すると予測される時間)を予測する。なお、「侵入時間を予測する」との表現は、「侵入時間を推定する」、「侵入時間を推測する」、「侵入(予測)時間を決定する」、「侵入(予測)時間を求める」、「侵入(予測)時間を算出する」、「侵入(予測)時間を計算する」又は「侵入(予測)時間を導出する」との表現に読み替えられてもよい。
【0082】
プロセッサ201は、例えば、作業員に対応付けられている測位端末10から測位結果が受信されるたびに、当該測位結果、侵入予測時間閾値、無警報距離閾値及び設定した危険エリア又はマージンエリアのうちの少なくとも1つに基づいて、当該測位端末10の危険エリア又はマージンエリアへの接近及び侵入を判定する(警報イベントを検知する)。
【0083】
プロセッサ201は、検知した警報イベントが発生したことを、測位端末10に対応付けられている作業員及び工事車両を運転している作業員の少なくとも一方に警報するための警報発出命令を生成する。プロセッサ201は、警報発出命令を記憶部202に出力する。プロセッサ201は、通信部203を介して、警報発出命令を対応する測位端末10に送信する。
【0084】
プロセッサ201は、例えば、作業員又は工事車両に対応付けられている測位端末10から測位結果が受信されるたびに、設定した危険エリア及びマージンエリアと、受信された測位結果と、警報発出命令を送信する対象の測位端末10と、の情報を表示するように、通信部203を介して、これらの情報をモニタデバイス40に送信する。
【0085】
記憶部202は、例えば、DRAM、HDD、SSD等のうちの1つ以上であってよい。記憶部202は、他の要素から様々な情報を取得し、一時的又は永続的にその情報を保持する。記憶部202は、いわゆる一次記憶装置及び二次記憶装置の総称である。記憶部202は、物理的に複数配置されてもよい。
【0086】
記憶部202は、例えば、上位サーバ20を動作させるためにプロセッサ201によって実行されるプログラム、上位サーバ20が動作するのに必要なデータ、プロセッサ201によって生成されたデータ、測位端末10から送信された測位結果、気象情報配信サーバ50から送信された天候情報、侵入予測時間閾値、無警報距離閾値、設定された危険エリア及びマージンエリアに関する情報、生成された警報発出命令等を記憶する。
【0087】
通信部203は、測位端末10から送信された測位結果を受信する。通信部203は、気象情報配信サーバ50から送信された作業現場の天候情報を受信する。通信部203は、受信した測位結果及び天候情報をプロセッサ201及び記憶部202に出力する。通信部203は、警報発出命令を測位端末10に送信する。
【0088】
プロセッサ201、記憶部202及び通信部203は、互いに通信可能であるように、バス204を介して互いに接続されている。
【0089】
なお、上記の上位サーバ20の構成は一例である。上位サーバ20の構成要素の一部は、統合されてもよい。また、上位サーバ20の構成要素の一部は、複数の要素に分割されてもよい。また、上位サーバ20の構成要素の一部は、省かれてもよい。また、上位サーバ20に他の要素が付加されてもよい。例えば、タッチディスプレイ、キーボード、マウス等であってよい入力部が上位サーバ20に付加されてもよい。
【0090】
[危険エリアに対するマージンエリアの付加]
次に、危険エリアに対するマージンエリアの付加について説明する。
【0091】
プロセッサ201は、作業累計時間、危険エリア侵入回数、作業熟練度(例えば、通算作業時間及び作業レベル)及び天候情報(例えば、降雨量及び気温)のうちの少なくとも1つに基づいて、危険エリアに付加するマージンエリアを設定する。危険エリアに付加されるマージンエリアを設定するために作業累計時間、危険エリア侵入回数、作業熟練度及び天候情報のうちのどれを用いるかは、例えば入力部を介して作業管理者等のユーザによって選択されてよい。例えば、プロセッサ201は、以下の表1~表6のうち、作業累計時間(表1に対応)、危険エリア侵入回数(表2に対応)、作業熟練度(表3及び表4に対応)及び天候情報(表5及び表6に対応)から選択された項目に対応する表に記載されている値を用いて、最終的に付加するマージンエリアのマージン幅値を決定及び設定する。
【0092】
表1は、作業累計時間とマージン幅との関係を示している。例として、作業時間が0以上10未満である場合、マージン幅は0mであり、作業時間が10以上30未満である場合、マージン幅は0.5mである等である。作業累計時間は、測位端末10を所有している作業員が作業現場で作業を行った累計時間である。この時間が長いほど、作業員の疲労が蓄積していたり、油断していたりする可能性が高い。表1から分かるように、作業エリア内での作業累計時間が大きい(長い)ほど、作業員が危険エリアに誤って侵入してしまう可能性が高くなると想定されることから、マージン幅は大きくなるように設定される。作業累計時間は、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)と言える。なお、作業時間を累計する期間は、作業管理者等が適宜設定してよい。例えば、作業員の疲労を評価するのであれば一日ごとの作業累計時間を、作業員の油断を評価するのであれば作業の全期間での作業累計時間を用いるようにしてもよい。また、作業累計時間と同様に、作業員に割り当てられた今後の作業時間を考慮してマージン幅を設定してもよい。今後の作業時間が長時間であるほど、近い将来に作業員の疲労が蓄積する可能性が高いためである。
【表1】
【0093】
表2は、危険エリア侵入回数とマージン幅との関係を示している。例として、危険エリア侵入回数が0回以上10回未満である場合、マージン幅は0mであり、危険エリア侵入回数が10回以上30回未満である場合、マージン幅は0.5mである等である。危険エリア侵入回数は、測位端末10を所有している作業員の危険エリアへの警戒心が薄れていることや、作業員が危険エリアへの侵入を避けられない作業を担当していることを示す指標である。表2から分かるように、危険エリア侵入回数が多いほど、作業員が危険エリアに誤って侵入してしまう可能性が高くなると想定されることから、マージン幅は大きくなるように設定される。危険エリア侵入回数は、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)と言える。なお、危険エリアへの侵入回数を計測する期間は、作業管理者等が適宜設定してよい。また、危険エリアへの侵入回数に替えて、マージンエリアへの侵入回数を用いてマージン幅を設定するようにしてもよい。マージンエリアは危険エリアと比較して安全なエリアであるが、マージンエリアへの侵入は危険エリアへの接近を意味するため、少なくともマージンエリアの外にいる作業員よりは危険エリアへの警戒心が薄れていると想定されるためである。
【表2】
【0094】
表3は、通算作業時間とマージン幅との関係を示している。例として、通算作業時間が0時間以上50時間未満である場合、マージン幅は1.5mであり、通算作業時間が50時間以上100時間未満である場合、マージン幅は1.0mである等である。通算作業時間は、作業現場での作業に慣れていることを示す指標である。表3から分かるように、通算作業時間が長いほど、作業員が危険エリアに誤って侵入してしまう可能性が低くなると想定されることから、マージン幅は小さくなるように設定される。通算作業時間は、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)と言える。なお、通算作業時間と作業累計時間とは同一の時間であってもよい。この場合、危険エリア内又は危険エリアに近い場所での作業を担当している作業員に対しては通算作業時間を、危険エリアから離れた場所での作業を担当している作業員に対しては作業累計時間を適用してもよい。担当している作業が危険エリア内又は危険エリアに近い場所での作業である作業員として、危険を回避する能力を身に着けている作業員が選定されている可能性が高いためである。また、通算作業時間と作業累計時間は異なる時間であってもよい。この場合、例えば、各作業員が他の作業現場も含めて作業を経験してきた時間を通算作業時間とし、各作業員が今回の作業現場で作業を行ってきた時間を作業累計時間としてよい。
【表3】
【0095】
表4は、作業レベルとマージン幅との関係を示している。例として、作業レベルが1である場合、マージン幅は3.6mであり、作業レベルが2である場合、マージン幅は3.2mである等である。作業レベルは、作業員が作業現場での作業に慣れている程度、又は、危険な作業への習熟度を示す直接的な指標である。作業レベルは、例えば、作業員が受けてきた訓練や作業員が持つ資格等によって定められる。表4から分かるように、作業レベルが高い(大きい)ほど、作業員が危険エリアに誤って侵入してしまう可能性が低くなると想定されることから、マージン幅は小さくなるように設定される。作業レベルは、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)と言える。
【表4】
【0096】
表5は、降雨量とマージン幅との関係を示している。例として、降雨量が0mm以上1mm未満である場合、マージン幅は0mであり、降雨量が1mm以上5mm未満である場合、マージン幅は0.5mである等である。降雨量は、作業現場での作業の困難さを示す指標である。表5から分かるように、降雨量が多いほど、思いがけない事態により作業員が危険エリアに誤って侵入する可能性が高くなると想定されることから、マージン幅は大きくなるように設定される。降雨量は、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)と言える。
【表5】
【0097】
表6は、気温とマージン幅との関係を示している。例として、気温が摂氏5度未満である場合、マージン幅は1.5mであり、気温が摂氏5度以上摂氏10度未満である場合、マージン幅は0.5mである等である。気温は、作業現場での作業の困難さを示す指標である。表6から分かるように、気温が低すぎる又は高すぎる場合、思いがけない事態により作業員が危険エリアに誤って侵入する可能性が高くなると想定されることから、マージン幅は大きくなるように設定される。気温は、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)と言える。
【表6】
【0098】
例えば、作業レベル及び降雨量が、マージンエリア(マージン幅)を設定するために選択された場合、プロセッサ201は、表4に記載されているマージン幅値と表5に記載されているマージン幅値とを加算した値を、最終的に付加するマージン幅値として決定(算出)及び設定してよい。他の項目が選択された場合も、プロセッサ201は、選択された項目に対応する表に記載されているマージン幅値を加算した値を、最終的に付加するマージン幅値として決定(算出)及び設定してよい。
【0099】
例えば、作業レベル及び降雨量が、マージン幅を設定するために選択されており、降雨量が8mmであるとする。この場合、作業レベルが10である第1作業員については、最終的なマージン幅は、0m+1.0m=1.0mに設定され、作業レベルが8である第2作業員については、最終的なマージン幅は、0.8m+1.0m=1.8mに設定される。このように設定された第1作業員についてのマージンエリアが、
図12の例1に例示されており、このように設定された第2作業員についてのマージンエリアが、例1よりも広い
図12の例2に例示されている。
【0100】
なお、上記の表1~表6に示されている値は例に過ぎず、適宜に変更可能である。また、最終的に付加されるマージン幅値の決定(算出)のやり方は、上記のやり方に限定されるものではない。例えば、単に加算する代わりに、重み付け加算等が用いられてもよい。
【0101】
上記の通り、作業員の作業エリアにおける作業累計時間といった作業員の作業経験(換言すれば、作業員の作業の慣れ具合、熟練具合)、作業員の疲労や油断による注意力の低下の程度、危険エリア内又は危険エリアの近くでの作業の頻度、作業員の周囲の降雨量といった作業員の周囲状況等の、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)に応じて、マージン幅が適応的に設定される。このように適応的に設定されたマージン幅を有するマージンエリアが設定されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、作業員に対して適切に警報を行うことができるようになる。
【0102】
なお、作業累計時間、危険エリア侵入回数及び作業熟練度(通算作業時間及び作業レベル)は、本開示に係る「端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータ」及び「端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータ」の例であり、天候情報(降雨量及び気温)は、本開示に係る「端末に対応付けられている作業員の周囲状況に関するパラメータ」の例である。
【0103】
[侵入時間の予測(侵入予測時間の算出)]
次に、測位端末10の危険エリアへの侵入予測時間の算出について説明する。なお、本説明において、危険エリアは、危険エリアに付加されたマージンエリア、又は、危険エリアとマージンエリアとをあわせたエリアに適宜読み替えられてよい。
【0104】
プロセッサ201は、受信された測位端末10の(現在の)位置、(現在の)速度及び(現在の)進行方向と、設定した危険エリアの境界線(円周)の位置と、に基づいて、測位端末10の(現在の)位置から(現在の)速度で(現在の)進行方向に直進した場合、危険エリアに侵入するか否かを判定する。
【0105】
プロセッサ201は、測位端末10が危険エリアに侵入すると判定した場合、受信された測位端末10の(現在の)位置、(現在の)速度及び(現在の)進行方向と、設定した危険エリアの境界線(円周)の位置と、に基づいて、測位端末10の(現在の)位置から(現在の)速度で(現在の)進行方向に直進した場合における、危険エリアの境界線(円周)上の測位端末10に最も近い点に到達するまでの時間(すなわち侵入予測時間)(例えば、単位:秒)を算出する。
【0106】
[危険エリアへの接近の判定]
次に、測位端末10が危険エリアに接近しているか否かの判定について説明する。なお、本説明において、危険エリアは、危険エリアに付加されたマージンエリア、又は、危険エリアとマージンエリアとをあわせたエリアに適宜読み替えられてよい。
【0107】
上述したように、プロセッサ201は、段階的な複数の侵入予測時間閾値(例えば、単位:秒)及び無警報距離閾値(例えば、単位:メートル)を設定してもよい。以下では、複数の侵入予測時間閾値の数が2である例を説明するが、複数の侵入予測時間閾値の数が3以上であってもよいことは明らかである。あるいは、複数の侵入予測時間閾値を用いる代わりに、1つの侵入予測時間閾値を用いてもよい。以下では、2つの侵入予測時間を、第1侵入予測時間閾値及び第2侵入予測時間閾値とし、第1侵入予測時間閾値<第2侵入予測時間閾値とする。
【0108】
プロセッサ201は、測位端末10の位置(緯度及び経度)が、設定した危険エリア外にある場合、測位端末10の位置から、測位端末10の位置と危険エリアの中心(座標)とを結ぶ直線が危険エリアの境界線(円周)と交わる測位端末10に最も近い点までの距離l(例えば、単位:メートル)を算出する。
【0109】
プロセッサ201は、無警報距離閾値≦距離lである場合、警報発出命令を生成しない。
【0110】
プロセッサ201は、距離l<無警報距離閾値であり、かつ、侵入予測時間<第1侵入予測時間閾値である場合、第1接近状態として警報イベントを検知する。
【0111】
プロセッサ201は、距離l<無警報距離閾値であり、かつ、第1侵入予測時間閾値≦侵入予測時間<第2侵入予測時間閾値である場合、第2接近状態として警報イベントを検知する。
【0112】
第1接近状態は、測位端末10が第2接近状態よりも早く危険エリアに到達すると予測される状態である。
【0113】
なお、上記で説明した条件において、「≦」は「<」で適宜置き換えられてもよく、「<」は「≦」で適宜置き換えられてもよい。
【0114】
また、複数の侵入予測時間閾値の数がn(n:3以上の整数)である場合にも、プロセッサ201は、上記と同様にして、第k接近状態(k=1,2,...,n)として警報イベントを検知することができる。
【0115】
このように無警報距離閾値を設定することにより、危険エリアの中心と測位端末10の位置との距離が、無警報距離閾値以上であれば(又は無警報距離閾値を超えるならば)、警報が発出されないので、警報の過度の発出を抑制することができる。
【0116】
[警報発出命令の生成]
次に、警報発出命令の生成について説明する。
【0117】
第1に、測位端末10が危険エリア内及びマージンエリア内に存在する場合における警報発出命令の生成について説明する。
【0118】
まず、測位端末10が危険エリア内に存在する場合における警報発出命令の生成について説明する。
【0119】
プロセッサ201は、測位端末10の位置(緯度及び経度)が、設定した危険エリア内にある場合、測位端末10の位置と危険エリアの中心(座標)との距離L(例えば、単位:メートル)を算出する。
【0120】
プロセッサ201は、算出した距離に応じた侵入警報の様式を決定する。例えば、危険エリアの半径をr1(例えば、単位:メートル)とした場合、0<L≦r1/4(第1侵入状態である警報イベント)であるか、r1/4<L≦r1/2(第2侵入状態である警報イベント)であるか、r1/2<L≦3r1/4(第3侵入状態である警報イベント)であるか、又は、3r1/4<L≦r1(第4侵入状態である警報イベント)であるかに応じて、測位端末10の警報部103により鳴動されるブザーの音量及びビープ音周期のうちの少なくとも一方を変化させてよい。換言すれば、測位端末10が危険エリアの中心に近いほど、ブザーの音量を大きくしてもよいし、ブザーのビープ音周期を短くしてよいし、これらの両方であってもよい。すなわち、測位端末10が危険エリアの中心に近いほど、強度が増すような警報を行ってよい。
【0121】
あるいは、危険エリアの半径r1とは異なる基準を用いてもよい。例えば、0m<L≦0.5m(第1侵入状態である警報イベント)であるか、0.5m<L≦0.8m(第2侵入状態である警報イベント)であるか、0.8m<L≦0.9m(第3侵入状態である警報イベント)であるか、又は、0.9m<L≦r1(第4侵入状態である警報イベント)であるかに応じて、測位端末10の警報部103により鳴動されるブザーの音量及びビープ音周期を変化させてもよい。この場合も、測位端末10が危険エリアの中心に近いほど、ブザーの音量を大きくしてもよいし、ブザーのビープ音周期を短くしてよいし、これらの両方であってもよい。すなわち、測位端末10が危険エリアの中心に近いほど、強度が増すような警報を行ってよい。
【0122】
次に、測位端末10がマージンエリア内に存在する場合における警報発出命令の生成について説明する。
【0123】
プロセッサ201は、測位端末10の位置(緯度及び経度)が、設定したマージンエリア内にある場合、測位端末10の位置と危険エリアの中心(座標)との距離L(例えば、単位:メートル)を算出する。
【0124】
プロセッサ201は、算出した距離に応じた注意喚起警報の様式を決定する。例えば、危険エリア(例えば、単位をメートルとする半径:r1)とマージンエリアとをあわせたエリアの半径をr2(例えば、単位:メートル)とした場合、r1<L≦r1+(r2-r1)/4(第1注意喚起状態である警報イベント)であるか、r1+(r2-r1)/4<L≦r1+(r2-r1)/2(第2注意喚起状態である警報イベント)であるか、r1+(r2-r1)/2<L≦r1+3(r2-r1)/4(第3注意喚起状態である警報イベント)であるか、又は、r1+3(r2-r1)/4<L≦r2(第4注意喚起状態である警報イベント)であるかに応じて、測位端末10の警報部103により鳴動されるブザーの音量及びビープ音周期のうちの少なくとも一方を変化させてよい。換言すれば、測位端末10が危険エリアの中心に近いほど、ブザーの音量を大きくしてもよいし、ブザーのビープ音周期を短くしてよいし、これらの両方であってもよい。なお、この場合のブザーの音量及びビープ音周期は、上記の侵入警報のブザーの音量及びビープ音周期よりも警報レベルが低いものであってよい。すなわち、この場合のブザーの音量は、上記の侵入警報のブザーの音量よりも小さくてよく、この場合のブザーのビープ音周期は、上記の侵入警報のブザーのビープ音周期よりも長くてよい。
【0125】
あるいは、r1及びr2とは異なる基準を用いてもよい。例えば、r1<L≦r1+0.5(第1注意喚起状態である警報イベント)であるか、r1+0.5<L≦r1+0.8(第2注意喚起状態である警報イベント)であるか、r1+0.8<L≦r1+0.9(第3注意喚起状態である警報イベント)であるか、又は、r1+0.9<L≦r2(第4注意喚起状態である警報イベント)であるかに応じて、測位端末10の警報部103により鳴動されるブザーの音量及びビープ音周期を変化させてもよい。この場合も、測位端末10が危険エリアの中心に近いほど、ブザーの音量を大きくしてもよいし、ブザーのビープ音周期を短くしてよいし、これらの両方であってもよい。なお、この場合のブザーの音量及びビープ音周期は、上記の侵入警報のブザーの音量及びビープ音周期よりも警報レベルが低いものであってよい。すなわち、この場合のブザーの音量は、上記の侵入警報のブザーの音量よりも小さくてよく、この場合のブザーのビープ音周期は、上記の侵入警報のブザーのビープ音周期よりも長くてよい。
【0126】
なお、上記で説明した条件において、「≦」は「<」で適宜置き換えられてもよく、「<」は「≦」で適宜置き換えられてもよい。
【0127】
また、上記では、4段階で警報を行う例について説明したが、2又は3段階で警報を行ってもよいし、5段階以上で警報を行ってもよい。また、複数段階に分ける条件も、上記の例に限定されるものではない。
【0128】
そして、プロセッサ201は、決定した様式の侵入警報又は注意喚起警報の警報発出命令を生成する。
【0129】
第2に、測位端末10が危険エリア外(外側にマージンエリアが設定されていない場合)及びマージンエリア外に存在する場合における警報発出命令の生成について説明する。
【0130】
まず、測位端末10が、外側にマージンエリアが設定されていない危険エリア外に存在する場合における、警報発出命令の生成について説明する。
【0131】
プロセッサ201は、測位端末10が上述した第1接近状態にある場合、第1接近状態に対応する警報発出命令(当該警報は、第1注意喚起警報と称されてもよい)を生成する。第1接近状態に対応する第1注意喚起警報の様式は、上述した侵入警報の様式及び注意喚起警報の様式と異なってよい。例えば、第1接近状態に対応する第1注意喚起警報は、上述した様式のブザーの音量よりもさらに小さくしたものであってよいし、ブザーを鳴動させる回数を1回、2回等に制限したものであってもよいし、これらの両方であってもよい。
【0132】
プロセッサ201は、測位端末10が上述した第2接近状態にある場合、第2接近状態に対応する警報発出命令(当該警報は、第2注意喚起警報と称されてもよい)を生成する。第2接近状態に対応する第2注意喚起警報の様式は、上述した侵入警報の様式、注意喚起警報の様式及び第1注意喚起警報の様式と異なってよい。例えば、第2接近状態に対応する第2注意喚起警報は、第1注意喚起警報のブザーの音量よりもさらに小さくしたものであってよいし、第1注意喚起警報のブザーを鳴動させる回数をさらに制限したものであってもよいし、これらの両方であってもよい。
【0133】
次に、測位端末10がマージンエリア外に存在する場合における、警報発出命令の生成について説明する。
【0134】
プロセッサ201は、測位端末10が上述した第1接近状態にある場合、第1接近状態に対応する警報発出命令(当該警報は、第3注意喚起警報と称されてもよい)を生成する。第1接近状態に対応する第3注意喚起警報の様式は、上述した侵入警報の様式、注意喚起警報の様式、第1注意喚起警報の様式及び第2注意喚起警報の様式と異なってよい。例えば、第1接近状態に対応する第3注意喚起警報は、上述した様式のブザーの音量よりもさらに小さくしたものであってよいし、上述したブザーを鳴動させる回数をさらに制限したものであってもよいし、これらの両方であってもよい。
【0135】
プロセッサ201は、測位端末10が上述した第2接近状態にある場合、第2接近状態に対応する警報発出命令(当該警報は、第4注意喚起警報と称されてもよい)を生成する。第2接近状態に対応する第4注意喚起警報の様式は、上述した侵入警報の様式、注意喚起警報の様式、第1注意喚起警報の様式、第2注意喚起警報の様式及び第3注意喚起警報の様式と異なってよい。例えば、第2接近状態に対応する第4注意喚起警報は、上述した様式のブザーの音量よりもさらに小さくしたものであってよいし、上述したブザーを鳴動させる回数をさらに制限したものであってもよいし、これらの両方であってもよい。
【0136】
このようにして、プロセッサ201は、測位端末10が危険エリア及びマージンエリアに侵入していること及び接近していることに対して警報を発出するように命令する警報発出命令を生成し、通信部203は、これらの警報発出命令を測位端末10に送信する。
【0137】
また、プロセッサ201は、測位端末10が危険エリア及びマージンエリアに侵入する予測時間に応じて異なる様式の警報を発出するように、予測時間に応じて異なる警報発出命令を生成し、通信部203は、これらの警報発出命令を測位端末10に送信する。
【0138】
このように段階的な複数の侵入予測時間閾値を設定することにより、侵入予測時間に応じて警報が段階的に発出されるので、危険エリアへの侵入を効果的に防ぐことができる。
【0139】
また、プロセッサ201によって、測位端末10が、マージンエリアに接近又は侵入する測位端末であると決定された場合と、危険エリアに接近又は侵入する測位端末であると決定された場合とで、異なる様式の警報を発出させる警報発出命令が測位端末10に送信されることで、測位端末10のユーザ(作業員)に対してどの程度の警戒が必要であるのかを直感的に知らせることができる。
【0140】
なお、様式は、態様で読み替えられてもよい。
【0141】
<警報システムの動作>
次に、
図4、
図5、
図6A及び
図6Bを参照して、実施の形態1に係る警報システム1の動作例について説明する。
【0142】
[測位端末の動作]
図4は、実施の形態1に係る測位端末10の動作の一例を示す図である。
【0143】
ステップS401において、GNSS受信装置104は、GNSS衛星から送信された衛星信号を受信する。
【0144】
ステップS402において、通信部105は、基準局データ配信サーバ30から送信された補正データを受信する。
【0145】
ステップS403において、プロセッサ101は、衛星信号に基づく測位端末測位データ及び補正データを用いてRTK演算を行って、RTK測位解を算出し、測位結果を得る。
【0146】
ステップS404において、通信部105は、RTK測位解を含む測位結果を上位サーバ20に送信する。
【0147】
ステップS405において、プロセッサ101又は通信部105は、通信部105が(例えば測位結果を送信してから所定の時間内に)警報発出命令を受信したか否かを判定する。
【0148】
通信部105が(例えば測位結果を送信してから所定の時間内に)警報発出命令を受信した場合(ステップS405においてYES)、ステップS406において、警報部103は、上位サーバ20によって指定(決定)された様式の警報を発出する。次いで、フローは終了する。
【0149】
一方、通信部105が(例えば測位結果を送信してから所定の時間内に)警報発出命令を受信しなかった場合(ステップS405においてNO)、フローは終了する。
【0150】
【0151】
[上位サーバの動作]
図5、
図6A及び
図6Bは、実施の形態1に係る上位サーバ20の動作の一例を示す図である。
図5は、上位サーバ20の事前設定に関する。
【0152】
ステップS501において、プロセッサ201は、作業員(作業員に対応付けられている測位端末10)毎に作業累計時間を0にリセットする。作業累計時間は、例えば、記憶部202に記憶されてよい。
【0153】
ステップS502において、プロセッサ201は、作業員(作業員に対応付けられている測位端末10)毎に危険エリア侵入回数を0にリセットする。危険エリア侵入回数は、例えば、記憶部202に記憶されてよい。
【0154】
ステップS503において、プロセッサ201は、測位端末10に対応付けられている作業員の作業熟練度を設定(又は登録又は記憶)する。作業熟練度は、例えば、作業員の通算作業時間及び作業レベルを含んでよい。
【0155】
ステップS504において、プロセッサ201は、作業エリア、危険エリア、第1注意喚起警報を発出するための第1侵入予測時間閾値、第2注意喚起警報を発出するための第2侵入予測時間閾値又は無警報距離閾値を設定する。そして、
図5の処理は終了する。
【0156】
なお、上述したように、作業エリアは、ユーザ入力を介して設定されてよい。また、危険エリアは、ユーザ入力を介して静的又は半静的に設定されることもあるし、測位端末10が搭載されている工事車両の移動に応じて動的に設定されることもある。また、各種の閾値は、ユーザ入力を介して静的又は半静的に設定されてもよいし、警報システム1において固定されていてもよい。このようにして、
図5の処理は、必要に応じて実行されてよい。また、新たな作業員(作業員に対応付けられている測位端末10)が加えられるたびに、
図5の少なくともS501~S503が実行されてよい。
【0157】
次に、
図6A及び
図6Bを参照して、上位サーバ20の動作の別の例を説明する。なお、以下では、侵入予測時間閾値は設定されておらず(すなわち、危険エリア及びマージンエリアに測位端末10が接近しているか否かの判定は行われず)、無警報距離閾値は設定されていない例について説明する。
【0158】
ステップS601において、通信部203は、測位端末10から送信された測位端末10の測位結果を受信する。
【0159】
ステップS602において、プロセッサ201は、設定した作業エリア及び受信した測位結果(測位端末10の位置)に基づいて、測位端末10が作業エリア内に存在するか否かを判定する。
【0160】
測位端末10が作業エリア内に存在すると判定された場合(ステップS602においてYES)、ステップS603において、プロセッサ201は、作業累計時間を1だけインクリメントする。ここでは、プロセッサ201は、作業累計時間を1だけインクリメントしているが、1に相当する秒数(例えば、測位端末10から測位結果を受信する周期)等だけインクリメントしてもよい。次いで、フローはステップS604に進む。
【0161】
一方、測位端末10が作業エリア内に存在しないと判定された場合(ステップS602においてNO)、又は、ステップS603の後、ステップS604において、プロセッサ201は、設定した危険エリア及び受信した測位結果(測位端末10の位置)に基づいて、測位端末10が危険エリア内に存在するか否かを判定する。
【0162】
測位端末10が危険エリア内に存在すると判定された場合(ステップS604においてYES)、ステップS605において、プロセッサ201は、危険エリア侵入回数を1だけインクリメントする。
【0163】
ステップS606において、プロセッサ201は、侵入警報の警報発出命令を測位端末10に発行し、通信部203は、この警報発出命令を測位端末10に送信する。次いで、フローはステップS607に進む。
【0164】
一方、測位端末10が危険エリア内に存在しないと判定された場合(ステップS604においてNO)、又は、ステップS606の後、ステップS607において、通信部203は、気象情報配信サーバ50から送信された天候情報を受信する。
【0165】
ステップS608において、プロセッサ201は、例えば表1~表6を参照して説明したように、作業累計時間、危険エリア侵入回数、作業熟練度及び天候情報のうちの少なくとも1つに基づいて、危険エリアに付加するマージンエリアを設定する。
【0166】
ステップS609において、プロセッサ201は、設定したマージンエリア及び受信した測位結果(測位端末10の位置)に基づいて、測位端末10がマージンエリア内に存在するか否かを判定する。
【0167】
測位端末10がマージンエリア内に存在すると判定された場合(ステップS609においてYES)、ステップS610において、プロセッサ201は、注意喚起警報の警報発出命令を測位端末10に発行し、通信部203は、この警報発出命令を測位端末10に送信する。そして、フローは終了する。
【0168】
一方、測位端末10がマージンエリア内に存在しないと判定された場合(ステップS609においてNO)、フローは終了する。
【0169】
【0170】
<変形例>
[変形例1-1]
上記では、危険エリア及び危険エリアとマージンエリアとをあわせたエリアの形状が真円形である例について説明したが、本開示はこの例に限定されるものではない。上記で示唆したように、危険エリア及び危険エリアとマージンエリアとをあわせたエリアの形状は、真円形の一部(扇形、弓形等)、楕円形又はその一部(楕円の半分等)、三角形、四角形等の多角形、その他の形状等であってもよい。このような場合、上記の危険エリアの中心は、危険エリアの重心でそれぞれ置き換えられてよい。
【0171】
また、上記では、危険エリア及び危険・マージンエリアともに同じ形状をしているものとして説明したが、異なる形状であってもよい。特に工事現場では、危険エリアは、工事車両の稼働域や足場の危険な箇所等に対応させる必要があるため、真円形や四角形等の標準的な形状を採用すると、危険がない領域まで危険エリアに含まれたり、危険な領域が危険エリアから漏れたりするおそれがある。しかし、危険エリアで発出される警報は作業員の行動を委縮させるため、危険エリアの範囲は現実に危険が及ぶ範囲と比べて過不足がないことが望ましい。一方、危険・マージンエリアは、多少広めの範囲において警報が発出されたとしても作業員への影響は小さいため、標準的な形状を用いても大きな実害は発生しない。このような場合、危険の防止とエリア設計の手間のバランスを考慮して、危険エリアを精緻に設計し、危険・マージンエリアを標準的な形状を採用して簡易に設定する場合があり得る。また、危険エリアに標準的な形状を採用する場合であっても、実際の工事車両の可動範囲に近い形状を採用する結果、危険エリアと危険・マージンエリアとで異なる形状が採用されることがあり得る。なお、いずれの場合も危険・マージンエリアは危険エリアよりも広いことが望ましい。そのため、危険・マージンエリア及び危険エリアの重心は必ずしも一致させる必要はなく、危険・マージンエリアが危険エリアを覆う位置及び形状であれば、危険・マージンエリアの重心は危険エリアの重心と異なっていてもよい。なお、上述した例は一例であり、危険エリアとして標準的な形状を採用して危険・マージンエリアとして他の形状を採用してもよいし、危険エリア及び危険・マージンエリアの両方において互いに異なる標準的な形状を採用してもよい。
【0172】
上記では、危険エリアに付加されるマージンエリアが、危険エリアの第1外周(円周)と、危険エリアの第1外周から一定の距離(幅)だけ離れた第2外周(円周)と、の間のエリアとして設定される例について説明した。変形例1-1でも、この例が同様に適用されてよい。具体的には、危険エリアの第1外周のうち直線分部分については、直線分から一定の距離だけ離れた平行な直線分を設定し、危険エリアの第1外周のうち曲線分部分については、曲線分上の各点における接線に垂直な方向に一定の距離だけ離れた点を結んだ曲線分を設定し、危険エリアの第1外周のうち頂点部分については、頂点を中心とした一定の距離の円弧を設定することで、第2外周を設定することができる。
【0173】
[変形例1-2]
上記では、危険エリアに付加されるマージンエリアが、危険エリアの第1外周(円周)と、危険エリアの第1外周から一定の距離(幅)だけ離れた第2外周(円周)と、の間のエリアとして設定される例について説明したが、本開示はこの例に限定されるものではない。例えば、更なる安全性が求められる方向に対しては一定の距離よりも長い距離だけ離し、安全性が確認されている方向に対しては一定の距離よりも短い距離だけ離すように、第2外周を設定してもよい。同様に、作業現場の地形に基づいて第2外周を設定してもよい。例えば、壁が設置されている等、作業員が物理的に侵入困難な方向については短い距離だけ離し、平坦な地形となっている等、作業員が侵入し易い方向については長い距離だけ離すようにしてもよい。
【0174】
[変形例1-3]
実施の形態1において、警報を発出する測位端末10は複数の測位端末10全てでなくともよい。例えば、測位端末10が搭載されている工事車両等が定められたレール上を移動することしかできなかったり、速度を変更する機構を持たなかったりする場合、警報が発出されても危険を回避する行動を取ることが難しい。このような場合にまで警報を発出すると他の警報との混同を生じさせ、かえって危険を招くおそれがあるため、必ずしも複数の測位端末10全てにおいて警報を発出することは有益とは言えない。警報を発出するべき測位端末10は、作業管理者等からの指定によって変更可能であってもよい。
【0175】
[変形例1-4]
上記では、上位サーバ20が、危険エリア及びマージンエリアへの接近及び侵入の判定等の本開示に係る処理を実行する例について説明したが、本開示はこの例に限定されるものではない。例えば、上位サーバ20の代わりに、複数の測位端末10のうちの代表測位端末10が、個々の測位端末10から測位結果を受信し、本開示に係る処理を実行してもよい。
【0176】
また、各測位端末10が危険エリアへの接近及び侵入の判定等の本開示に係る処理を実行してもよい。この場合、各測位端末10は、例えば、自身の位置を上位サーバ20等に共有することで、自身の周辺に存在する危険エリア、マージンエリア及び危険・マージンエリアの位置及び範囲の情報を取得し、この情報に基づいて判定等の処理を行ってもよい。
【0177】
<効果>
実施の形態1によれば、測位端末10に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリア(危険エリア、マージンエリア)の範囲が変更され、測位端末10の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、測位端末10が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する測位端末であるかが決定される。そして、測位端末10が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、警報を測位端末に発出させるための警報発出命令が測位端末10に提供されたり、測位端末10は警報を発出したりする。これにより、測位端末10との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0178】
(実施の形態2)
次いで、本開示の実施の形態2について説明する。実施の形態2は、RTK演算が、測位端末ではなく上位サーバによって行われる点で、すなわち、上位サーバのプロセッサが、上述したRTK演算を用いた測位端末位置測定(決定)を行う点で、実施の形態1と異なる。なお、実施の形態2に係る警報システム1’、測位端末10’及び上位サーバ20’の構成は、それぞれ、実施の形態1に係る警報システム1、測位端末10及び上位サーバ20の構成と同様であるので、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0179】
図7は、実施の形態2に係る警報システム1’の一例を示す図である。
図7に示すように、警報システム1’は、測位端末10’と、上位サーバ20’と、基準局データ配信サーバ30’と、モニタデバイス40と、気象情報配信サーバ50と、を有する。警報システム1’は、情報処理システム等と称されてもよい。
【0180】
実施の形態1と異なり、測位端末10’は、RTK演算を行って測位端末10’を測位しない。そのため、測位端末10’は、基準局データ配信サーバ30’から補正データを受信する必要がなく、GNSS衛星から受信した衛星信号に基づいて生成した測位端末測位データを上位サーバ20’に送信する。なお、測位端末10’が速度センサ及び加速度センサを備えている場合には、測位端末10’は、速度センサ及び加速度センサからの速度及び加速度を上位サーバ20’に送信してもよい。測位端末10’は、本開示に係る端末、第1端末、第2端末又は情報処理装置(後述する代表測位端末10’に相当)の一例である。
【0181】
上位サーバ20’は、測位端末10’から送信された測位端末測位データを受信し、基準局データ配信サーバ30’から、RTK演算を行って測位端末10’を測位するための補正データを受信する。上位サーバ20’は、本開示に係る情報処理装置の一例である。
【0182】
上位サーバ20’は、受信した測位端末測位データ及び補正データを用いてRTK演算を行って、測位端末10’の位置を(場合によっては速度及び加速度も)測定する。上位サーバ20’は、設定した危険エリア又はマージンエリア、測位した測位結果等に基づいて、作業員によって携行されて作業員に対応付けられている測位端末10’の危険エリア又はマージンエリアへの接近及び侵入を判定する(換言すれば、警報イベントを検知する)。なお、上位サーバ20’に、基準局データ配信サーバ30’の機能の一部又は全部が備わっていてもよい。例えば、上位サーバ20’は、基準局データ配信サーバ30’を介さずに、基準局から、基準局によって生成された補正データを受信してもよい。
【0183】
基準局データ配信サーバ30’は、RTK演算を行って測位端末10’を測位するための補正データを上位サーバ20’に送信する。
【0184】
<測位端末の構成>
図8は、実施の形態2に係る測位端末10’の構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、測位端末10’は、プロセッサ101’と、記憶部102’と、警報部103と、GNSS受信装置104と、通信部105’と、出力部106と、バス107と、を備える。
【0185】
上述した通り、測位端末10’は、RTK演算を用いた測位を行わない。そのため、プロセッサ101’は、GNSS衛星から衛星信号が受信されるたびに、衛星信号に基づいて測位端末測位データを生成して記憶部102’及び通信部105’に出力する。
【0186】
記憶部102’は、基準局データ配信サーバ30’からの補正データを記憶する必要がない。記憶部102’は、測位端末測位データを記憶する。
【0187】
通信部105’は、GNSS衛星から衛星信号が受信されるたびに、プロセッサ101’から入力された測位端末測位データを上位サーバ20’に送信する。通信部105’は、上位サーバ20’から送信された測位端末10’の測位結果を受信し、受信した測位結果を記憶部102’に出力してもよい。
【0188】
プロセッサ101’、記憶部102’、警報部103、GNSS受信装置104、通信部105’及び出力部106は、互いに通信可能であるように、バス107を介して互いに接続されている。
【0189】
<上位サーバの構成>
図9は、実施の形態2に係る上位サーバ20’の構成の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、上位サーバ20’は、プロセッサ201’と、記憶部202と、通信部203’と、バス204と、を備える。
【0190】
実施の形態1と異なり、プロセッサ201’は、例えば、作業員に対応付けられている測位端末10’から測位端末測位データが受信されるたびに、測位端末測位データと、GNSS衛星から受信された補正データと、に基づいて、RTK演算を行って、当該測位端末10’の位置、速度、加速度及び進行方向を測定(決定)する。プロセッサ201’は、このように測位した測位結果を通信部203’及び記憶部202に出力する。プロセッサ201’は、測位した測位結果及び設定した危険エリア又はマージンエリアに基づいて、当該測位端末10’の危険エリア又はマージンエリアへの侵入時間(すなわち、危険エリア又はマージンエリアに到達すると予測される時間)を予測する。
【0191】
危険エリアが工事車両のエリアに関連する場合、プロセッサ201’は、工事車両に対応付けられている測位端末10’の測位結果に基づいて、安全マージンを含んでも含まなくてもよい危険エリアを動的に設定してよい。例えば、プロセッサ201’は、測位結果に含まれる測位端末10’の位置を中心とする所定の円の円周を仮想的な境界線に設定することによって、危険エリアを設定してよい。この場合の危険エリアは、工事車両に対応付けられている測位端末10’の位置を含み、当該測位端末10’に対応付けられている。
【0192】
プロセッサ201’は、当該測位結果、侵入予測時間閾値、無警報距離閾値及び設定した危険エリア又はマージンエリアのうちの少なくとも1つに基づいて、当該測位端末10’の危険エリア又はマージンエリアへの接近及び侵入を判定する(警報イベントを検知する)。
【0193】
プロセッサ201’は、設定した危険エリア及びマージンエリアと、当該測位結果と、警報発出命令を送信する対象の測位端末10’と、の情報を表示するように、通信部203’を介して、これらの情報をモニタデバイス40に送信する。
【0194】
通信部203’は、測位端末10’から送信された測位端末測位データを受信する。通信部203’は、測位端末測位データをプロセッサ201’及び記憶部202に出力する。通信部203’は、測位結果を測位端末10’に送信してもよい。
【0195】
プロセッサ201’、記憶部202及び通信部203’は、互いに通信可能であるように、バス204を介して互いに接続されている。
【0196】
<警報システムの動作>
次に、
図10、
図11A及び
図11Bを参照して、実施の形態2に係る警報システム1’の動作例について説明する。
【0197】
[測位端末の動作]
図10は、実施の形態2に係る測位端末10’の動作の一例を示す図である。
【0198】
ステップS1001において、GNSS受信装置104は、GNSS衛星から送信された衛星信号を受信する。
【0199】
ステップS1002において、プロセッサ101’は、衛星信号に基づいて測位端末測位データを生成する。
【0200】
ステップS1003において、通信部105’は、測位端末測位データを上位サーバ20’に送信する。
【0201】
ステップS1004において、プロセッサ101’又は通信部105’は、通信部105’が(例えば測位端末測位データを送信してから所定の時間内に)警報発出命令を受信したか否かを判定する。
【0202】
通信部105’が(例えば測位端末測位データを送信してから所定の時間内に)警報発出命令を受信した場合(ステップS1004においてYES)、ステップS1005において、警報部103は、上位サーバ20’によって指定(決定)された様式の警報を発出する。次いで、フローは終了する。
【0203】
一方、通信部105’が(例えば測位端末測位データを送信してから所定の時間内に)警報発出命令を受信しなかった場合(ステップS1004においてNO)、フローは終了する。
【0204】
【0205】
[上位サーバの動作]
上位サーバ20’の事前設定に関する処理は、
図5を用いてすでに説明している処理と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0206】
図11A及び
図11Bは、実施の形態2に係る上位サーバ20’の動作の一例を示す図である。なお、ここでも、以下では、侵入予測時間閾値は設定されておらず(すなわち、危険エリア及びマージンエリアに測位端末10’が接近しているか否かの判定は行われず)、無警報距離閾値は設定されていない例について説明する。
【0207】
ステップS1101において、通信部203’は、測位端末10’から送信された測位端末測位データを受信する。
【0208】
ステップS1102において、通信部203’は、基準局データ配信サーバ30’から送信された補正データを受信する。
【0209】
ステップS1103において、プロセッサ201’は、測位端末測位データ及び補正データを用いてRTK演算を行って、RTK測位解を算出し、測位結果を得る。
【0210】
ステップS1104において、プロセッサ201’は、設定した作業エリア及び受信した測位結果(測位端末10’の位置)に基づいて、測位端末10’が作業エリア内に存在するか否かを判定する。
【0211】
測位端末10’が作業エリア内に存在すると判定された場合(ステップS1104においてYES)、ステップS1105において、プロセッサ201’は、作業累計時間を1だけインクリメントする。ここでは、プロセッサ201’は、作業累計時間を1だけインクリメントしているが、1に相当する秒数(例えば、測位端末10’から測位端末測位データを受信する周期)等だけインクリメントしてもよい。次いで、フローはステップS1106に進む。
【0212】
一方、測位端末10’が作業エリア内に存在しないと判定された場合(ステップS1104においてNO)、又は、ステップS1105の後、ステップS1106において、プロセッサ201’は、設定した危険エリア及び受信した測位結果(測位端末10’の位置)に基づいて、測位端末10’が危険エリア内に存在するか否かを判定する。
【0213】
測位端末10’が危険エリア内に存在すると判定された場合(ステップS1106においてYES)、ステップS1107において、プロセッサ201’は、危険エリア侵入回数を1だけインクリメントする。
【0214】
ステップS1108において、プロセッサ201’は、侵入警報の警報発出命令を測位端末10’に発行し、通信部203’は、この警報発出命令を測位端末10’に送信する。次いで、フローはステップS1109に進む。
【0215】
一方、測位端末10’が危険エリア内に存在しないと判定された場合(ステップS1106においてNO)、又は、ステップS1108の後、ステップS1109において、通信部203’は、気象情報配信サーバ50から送信された天候情報を受信する。
【0216】
ステップS1110において、プロセッサ201’は、例えば表1~表6を参照して説明したように、作業累計時間、危険エリア侵入回数、作業熟練度及び天候情報のうちの少なくとも1つに基づいて、危険エリアに付加するマージンエリアを設定する。
【0217】
ステップS1111において、プロセッサ201’は、設定したマージンエリア及び受信した測位結果(測位端末10’の位置)に基づいて、測位端末10’がマージンエリア内に存在するか否かを判定する。
【0218】
測位端末10’がマージンエリア内に存在すると判定された場合(ステップS1111においてYES)、ステップS1112において、プロセッサ201’は、注意喚起警報の警報発出命令を測位端末10’に発行し、通信部203’は、この警報発出命令を測位端末10’に送信する。そして、フローは終了する。
【0219】
一方、測位端末10’がマージンエリア内に存在しないと判定された場合(ステップS1111においてNO)、フローは終了する。
【0220】
【0221】
<変形例>
[変形例2-1]
実施の形態2においても、実施の形態1の変形例1-1が同様に適用されてよい。
【0222】
[変形例2-2]
実施の形態2においても、実施の形態1の変形例1-2が同様に適用されてよい。
【0223】
[変形例2-3]
実施の形態2においても、実施の形態1の変形例1-3が同様に適用されてよい。
【0224】
[変形例2-4]
上記では、上位サーバ20’が、危険エリア及びマージンエリアへの接近及び侵入の判定等の本開示に係る処理を実行する例について説明したが、本開示はこの例に限定されるものではない。例えば、上位サーバ20’の代わりに、複数の測位端末10’のうちの代表測位端末10’が、個々の測位端末10’から測位端末測位データを受信し、本開示に係る処理を実行してもよい。
【0225】
<効果>
実施の形態2によれば、測位端末10’に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリア(危険エリア、マージンエリア)の範囲が変更され、測位端末10’の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、測位端末10’が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する測位端末であるかが決定される。そして、測位端末10’が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、警報を測位端末に発出させるための警報発出命令が測位端末10’に提供されたり、測位端末10’は警報を発出したりする。これにより、測位端末10’との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0226】
また、実施の形態2によれば、測位端末10’を測位するためのRTK演算が、測位端末10’ではなく上位サーバ20’又は代表測位端末10’において実行されるので、個々の測位端末10’の処理負荷を軽減させることができる。
【0227】
(実施の形態の更なる変形例)
上述の実施の形態においては、測位端末10、10’の位置はRTK演算によって算出されていたが、他の測位方法を用いて算出されてもよい。他の測位方法としては、例えば、衛星からの信号のみから測位端末10、10’の位置を算出する従来のGPS方式や、RTK演算とは異なる補正データを用いるディファレンシャルGPS方式、衛星からの信号を用いずに周辺に配置されたビーコンからの信号を用いる方式等が挙げられる。また、単独の測位方式のみを採用するのではなく、複数の測位方式を併用して測位端末10、10’の位置を算出してもよい。例えば、屋外等の衛星からの信号を良好に受信できる環境と、屋内等の衛星からの信号の品質が劣化しやすい環境とで、測位端末10、10’の位置を算出する方式を切り替えたりすることが考えられる。すなわち、上述した実施の形態においては、測位端末10、10’の位置が何らかの測位方式を用いて算出されればよく、どのような測位方式を用いるかは問わない。ただし、RTK演算は、衛星から高品質な信号を受信できる環境であれば、他の測位方式と比べて高い精度の位置を算出することができる。そのため、屋外の工事現場等の衛星からの信号を遮蔽する物体が少なく、位置の誤差が事故につながり易い環境では、RTK演算を用いることが好ましい。
【0228】
上述の実施の形態においては、ブザーやビープ音によって侵入警報を発出していたが、他の態様で侵入警報を発出してもよい。例えば、「危険エリアに近づいています」等の他の音声で侵入警報を発出してもよい。また、警報は音声である必要はない。測位端末10、10’に、LED等の発光部が搭載されているのであれば、その発光部の点滅や発光の強度の制御によって侵入警報を発出してもよい。また、測位端末10、10’にバイブレータが搭載されているのであれば、測位端末10、10’を振動させる周期や強度の制御によって侵入警報を発出してもよい。また、上述した侵入警報を複数組み合わせてもよい。なお、音以外の態様で警報を行う場合、光量や振動の大きさをより強くしたり、警報の周期をより早くしたりすることで、警報の強度を変更してもよい。
【0229】
上述の実施の形態においては、作業累計時間等の作業員の作業経験に関する情報に基づいてマージンエリアの幅(マージン幅)を設定していたが、作業経験以外の属性に基づいてマージンエリアの幅を設定してもよい。例えば、作業員の年齢や身体能力等、危険回避の能力と相関する属性は、作業経験以外にも多様なものが考えられる。
【0230】
上述の実施の形態において、天候情報は、現在時刻の天候情報であっても、過去の天候情報であっても、未来の天候情報(予報等)であってもよい。例えば、天候情報が雨の場合、過去の天候情報が雨であれば作業現場は滑り易くなっていることが推測でき、未来の天候情報が雨であればすぐに作業現場の危険が増すことが推測できるため、マージンエリアを広げて危険エリアへの接近を抑制するように警報を行うことは有益である。また、現在、過去及び未来の天候情報のうち複数の天候情報に基づく判断結果を統合してマージンエリアの幅を決定してもよい。この場合、現時点での作業への影響が最も大きい現在の天候情報を、過去又は未来の天候情報よりも重みをつけて統合してもよい。
【0231】
上述の実施の形態では、天候情報が雨又は気温である例を説明したが、風や、霧や、花粉の飛散状況等の他の天候情報を採用してもよい。風は、作業員をよろけさせるおそれがあり、霧は、作業員の視界を妨げるおそれがあり、花粉の飛散状況は、花粉症による涙やくしゃみ等によって作業員に異常な行動をとらせるおそれがあるためである。すなわち、天候情報は、作業員による作業に影響を与えるような情報であれば、どのようなものであっても構わない。天候情報が示す天候が作業員に悪影響を及ぼし易い天候であるほどマージンエリアの幅を広く設定することで、作業員の危険を抑制することができる。
【0232】
上述した実施の形態では、作業員の周辺状況の一例である天候情報に基づいてマージンエリアの幅を変更する例を説明したが、他の周辺状況の情報に基づいてマージンエリアの幅を変更してもよい。他の周辺状況としては、例えば、作業員の周辺の地形のような静的な状況や、周辺に存在する他の作業員の人数等の動的な状況が考えられる。より具体的な例としては、例えば、地形の場合、上り坂よりも平地又は下り坂の方が、作業員が移動しやすく、危険エリアに接近する可能性が高いため、マージンエリアの幅を広くする。また、他の作業員の人数の場合、人数が多ければ、そのうちのいずれかの人物が危険に気づいたり、他の人物が危険を回避するよう指揮したりする可能性が高いため、人数が少数である場合よりもマージンエリアの幅を狭くしてよい。
【0233】
上述した実施の形態では、危険エリア又はマージンエリアへの接近を侵入予測時間に基づいて判断していたが、他の手法によって判断してもよい。例えば、現在位置が各エリアの内側に入っていれば接近したと判断してもよい。同様に、無警報距離閾値を設けなくともよい。
【0234】
上述した実施の形態では、作業員又は周囲の環境の情報に応じて、マージンエリアの幅を変更していたが、危険エリアに含まれる安全マージンの幅を変更するようにしてもよい。特に危険エリアに侵入している場合にマージンエリアに侵入している場合よりも強い警報を発出する構成では、危険エリアの幅を変更する方が強度の強い警報が発出される範囲を制御することができるので、より適切に危険を回避できる可能性が高まる。また、危険エリアとマージンエリアとを含めた全体の領域の大きさを変更せず、その領域内における危険エリアとマージンエリアの比率を、作業員又は周囲の環境の情報に応じて変更するようにしてもよい。このようにすることで、警報が発出される最大の幅は作業員及び環境を問わず一定となるため、作業員間での警報が発出される範囲の認識の混乱を抑制することができる。なお、マージンエリアに侵入している場合と危険エリアに侵入している場合とで同一の警報を行う場合は、どちらのエリアの幅を変更しても構わない。
【0235】
上述の実施の形態では、作業現場における作業員と工事車両を例として説明したが、測位端末10、10’を所持する人物あるいは測位端末10、10’を備える車両の移動に対して警報を発出する必要がある環境であれば、本開示は他の環境に適用されてもよい。例えば、消火活動における消防員と消防車両や、自動運転における歩行者と自動車等に本開示を適用することが考えられる。
【0236】
(実施の形態のまとめ)
本開示の一実施例に係る情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)は、端末(測位端末10、10’)に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル等)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温、風、霧及び花粉の飛散状況等)とのうちの少なくとも1つに応じて、前記作業員へ警報を発出するべきエリア(危険エリア、マージンエリア)の範囲を変更し、前記端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定する処理部(プロセッサ101、101’、201、201’)と、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記警報を前記端末に発出させるための信号(警報発出命令)を、前記端末に送信する通信部(通信部105、105’、203、203’)と、を備える。
【0237】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲が変更され、端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかが決定される。そして、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、警報を端末に発出させるための信号が端末に提供される。これにより、端末との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0238】
本情報処理装置において、前記作業員の属性に関するパラメータは、前記作業員の作業経験に関するパラメータである。
【0239】
上記の構成により、作業員の安全に影響を及ぼし得る作業員の作業経験に応じて、警報を発出するべきエリアの範囲が変更されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0240】
本情報処理装置において、前記作業員の作業経験に関するパラメータは、前記作業員が作業を行う作業エリアにおける前記作業員の作業累計時間、前記作業員の前記警報を発出するべきエリアへの侵入回数、前記作業員の通算作業時間及び前記作業員の作業レベルのうちの少なくとも1つを含む。
【0241】
上記の構成により、作業員の安全に影響を及ぼし得る作業員の具体的な作業経験に応じて、警報を発出するべきエリアの範囲が変更されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0242】
本情報処理装置において、前記作業員の周囲状況に関するパラメータは、前記作業員の周囲の天候に関するパラメータである。
【0243】
上記の構成により、作業員の安全に影響を及ぼし得る作業員の周囲状況に応じて、警報を発出するべきエリアの範囲が変更されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0244】
本情報処理装置において、前記天候に関するパラメータは、前記作業員の周囲の降雨量、気温、風、霧及び花粉の飛散状況のうちの少なくとも1つを含む。
【0245】
上記の構成により、作業員の安全に影響を及ぼし得る作業員の具体的な周囲状況に応じて、警報を発出するべきエリアの範囲が変更されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0246】
本情報処理装置において、前記警報を発出するべきエリアは、特定のエリア(危険エリア)と前記特定のエリアの外周に付加されるマージンエリアとを含み、前記通信部は、前記端末が、前記マージンエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合と、前記特定のエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合とで、異なる態様の警報を発出させる信号(警報発出命令)を前記端末に送信する。
【0247】
上記の構成により、端末が、前記マージンエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合と、前記特定のエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合とで、作業員に対してどの程度の警戒が必要であるのかを直感的に知らせることができる。
【0248】
本情報処理装置において、前記処理部は、前記特定のエリアの範囲を変更せず、前記マージンエリアの範囲を変更することで前記警報を発出するべきエリアの範囲を変更する。
【0249】
上記の構成により、特定のエリアから拡大されたマージンエリアの範囲が変更されることで、作業員が作業をより安全に行えるように作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0250】
本情報処理装置において、前記処理部は、前記特定のエリアの範囲を変更することで前記警報を発出するべきエリアの範囲を変更する。
【0251】
上記の構成により、特定のエリアに侵入している場合にマージンエリアに侵入している場合よりも強い警報を発出する構成では、特定のエリアの幅を変更する方が強度の強い警報が発出される範囲を制御することができるので、より適切に危険を回避できる可能性を高めることができる。
【0252】
本情報処理装置(代表測位端末10、上位サーバ20)において、前記通信部(通信部105、203)は、前記端末(測位端末10)から、RTK(Real Time Kinematic)演算に基づいて決定された前記端末の位置を受信する。
【0253】
上記の構成により、高精度の端末の位置を得ることができるので、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入の判定をより正確に行うことができる。
【0254】
本情報処理装置(代表測位端末10’、上位サーバ20’)において、前記処理部(プロセッサ101’、201’)は、RTK演算に基づいて前記端末(測位端末10’)の位置を決定する。
【0255】
上記の構成により、高精度の端末の位置を得ることができるので、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入の判定をより正確に行うことができる。
【0256】
本開示の一実施例に係る端末(測位端末10、10’)は、前記端末の位置を決定する処理部(プロセッサ101、101’)と、前記端末の位置と警報を発出するべきエリア(危険エリア、マージンエリア)の範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合に、警報を発出する警報部(警報部103)と、を備え、前記警報を発出するべきエリアの範囲は、前記端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル等)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温、風、霧及び花粉の飛散状況等)とのうちの少なくとも1つに応じて変更される。
【0257】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲が変更され、端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかが決定される。そして、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、端末は警報を発出する。これにより、端末との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0258】
本端末において、前記端末は、前記端末の位置を情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)に送信し、前記情報処理装置が前記警報を発出させると決定した場合に前記警報を前記端末に発出させるための信号(警報発出命令)を受信する通信部を更に備え、前記警報部は、前記信号に従って警報を発出する。
【0259】
上記の構成により、端末が警報を発出するか否かが、情報処理装置によって決定されるので、端末の処理負荷を軽減させることができる。
【0260】
本開示の一実施例に係る情報処理方法は、情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)が、端末(測位端末10、10’)に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル等)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温、風、霧及び花粉の飛散状況等)とのうちの少なくとも1つに応じて、前記作業員へ警報を発出するべきエリア(危険エリア、マージンエリア)の範囲を変更し、前記端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定し、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記警報を前記端末に発出させるための信号(警報発出命令)を、前記端末に送信する。
【0261】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲が変更され、端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかが決定される。そして、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、警報を端末に発出させるための信号が端末に提供される。これにより、端末との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0262】
本開示の一実施例に係る警報方法は、端末(測位端末10、10’)が、前記端末の位置を決定し、前記端末の位置と警報を発出するべきエリア(危険エリア、マージンエリア)の範囲とに基づいて、前記端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合に、警報を発出し、前記警報を発出するべきエリアの範囲は、前記端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル等)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温、風、霧及び花粉の飛散状況等)とのうちの少なくとも1つに応じて変更される。
【0263】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲が変更され、端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する測位端末であるかが決定される。そして、端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、端末は警報を発出する。これにより、端末との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0264】
本開示の一実施例に係る警報システム(警報システム1、1’)は、第1端末(測位端末10、10’)と第2端末(測位端末10、10’)とを有し、前記警報システムは、前記第1端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル等)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温、風、霧及び花粉の飛散状況等)とのうちの少なくとも1つに応じて、前記第2端末の位置を含む特定のエリアを含むエリアであり、前記作業員へ警報を発出するべきエリア(危険エリア、マージンエリア)の範囲を変更し、前記第1端末の位置と前記警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、前記第1端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかを決定し、前記第1端末が前記警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、前記第1端末及び前記第2端末の少なくとも一方は前記警報を発出する。
【0265】
上記の構成により、第1端末に対応付けられている作業員の属性に関するパラメータと作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、第2端末の位置を含む特定のエリアを含む、作業員へ警報を発出するべきエリアの範囲が変更され、第1端末の位置と警報を発出するべきエリアの範囲とに基づいて、第1端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であるかが決定される。そして、第1端末が警報を発出するべきエリアに接近又は侵入する端末であると決定された場合、第1端末及び第2端末の少なくとも一方は警報を発出する。これにより、第1端末との距離以外の他の要素を考慮して、警報を発出するべきエリアへの接近又は侵入に応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0266】
本開示の一実施例に係る情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)は、端末(測位端末10、10’)に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温)とのうちの少なくとも1つに応じて、特定のエリア(危険エリア)の外周に付加されるマージンエリアの幅(マージン幅)を設定し、前記端末の位置と前記マージンエリアの位置とに基づいて、前記マージンエリアへの前記端末の侵入を判定する処理部(プロセッサ101、101’、201、201’)と、前記侵入に対して警報を前記端末に発出させるための信号(警報発出命令)を、前記端末に送信する通信部(通信部105、105’、203、203’)と、を備える。
【0267】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータとこの作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、特定のエリアの外周に付加されるマージンエリアの幅が適応的に設定され、マージンエリアへの端末の侵入が判定される。そして、マージンエリアへの端末の侵入に対して警報を端末に発出させるための信号が、端末に提供される。これにより、特定のエリアと端末との距離以外の他の要素を考慮して、特定のエリアから拡大された、適応的に設定された幅を有するマージンエリアが設定されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、マージンエリアに侵入したことに応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0268】
本情報処理装置(代表測位端末10、上位サーバ20)において、前記通信部(通信部105、203)は、前記端末(測位端末10)から、RTK(Real Time Kinematic)演算に基づいて決定された前記端末の位置を受信する。
【0269】
上記の構成により、高精度の端末の位置を得ることができるので、マージンエリアへの端末の侵入の判定をより正確に行うことができる。
【0270】
本情報処理装置(代表測位端末10’、上位サーバ20’)において、前記処理部(プロセッサ101’、201’)は、RTK演算に基づいて前記端末(測位端末10’)の位置を決定する。
【0271】
上記の構成により、高精度の端末の位置を得ることができるので、マージンエリアへの端末の侵入の判定をより正確に行うことができる。
【0272】
本情報処理装置において、前記作業員の作業経験に関するパラメータは、前記作業員が作業を行う作業エリアにおける前記作業員の作業累計時間、前記作業員の特定のエリアへの侵入回数、前記作業員の通算作業時間及び前記作業員の作業レベルのうちの少なくとも1つを含み、前記作業員の周囲状況に関するパラメータは、前記作業員の周囲の降雨量及び気温のうちの少なくとも1つを含む。
【0273】
上記の構成により、作業員の作業エリアにおける作業累計時間といった作業員の作業経験、作業員の周囲の降雨量といった作業員の周囲状況等の、端末に対応付けられている作業員の安全に影響を及ぼし得る因子(パラメータ)に応じて、マージンエリアの幅が適応的に設定される。このように適応的に設定された幅を有するマージンエリアが設定されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0274】
本開示の一実施例に係る端末(測位端末10、10’)は、情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)と通信し、前記端末の位置を決定する処理部(プロセッサ101、101’)と、前記端末の位置を前記情報処理装置に送信し、特定のエリア(危険エリア)の外周に付加されたマージンエリアへの前記端末の侵入に対して警報を前記端末に発出させるための信号(警報発出命令)を、前記情報処理装置から受信する通信部(通信部105、105’)と、前記信号に従って警報を発出する警報部(警報部103)と、を備え、前記マージンエリアの幅(マージン幅)は、前記端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温)とのうちの少なくとも1つに応じて適応的に設定され、前記マージンエリアへの前記端末の侵入は、前記端末の位置と前記マージンエリアの位置とに基づいて判定される。
【0275】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータとこの作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、特定のエリアの外周に付加されるマージンエリアの幅が適応的に設定され、マージンエリアへの端末の侵入が判定される。そして、マージンエリアへの端末の侵入に対して警報を端末に発出させるための信号が、端末に提供される。これにより、特定のエリアと端末との距離以外の他の要素を考慮して、特定のエリアから拡大された、適応的に設定された幅を有するマージンエリアが設定されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、マージンエリアに侵入したことに応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0276】
本端末(測位端末10)において、前記処理部(プロセッサ101)は、RTK演算に基づいて前記端末の位置を決定する。
【0277】
上記の構成により、高精度の端末の位置を得ることができるので、マージンエリアへの端末の侵入の判定をより正確に行うことができる。
【0278】
本開示の一実施例に係る情報処理方法は、情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)が、端末(測位端末10、10’)に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温)とのうちの少なくとも1つに応じて、特定のエリア(危険エリア)の外周に付加されるマージンエリアの幅(マージン幅)を設定し、前記端末の位置と前記マージンエリアの位置とに基づいて、前記マージンエリアへの前記端末の侵入を判定し、前記侵入に対して警報を前記端末に発出させるための信号(警報発出命令)を、前記端末に送信する。
【0279】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータとこの作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、特定のエリアの外周に付加されるマージンエリアの幅が適応的に設定され、マージンエリアへの端末の侵入が判定される。そして、マージンエリアへの端末の侵入に対して警報を端末に発出させるための信号が、端末に提供される。これにより、特定のエリアと端末との距離以外の他の要素を考慮して、特定のエリアから拡大された、適応的に設定された幅を有するマージンエリアが設定されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、マージンエリアに侵入したことに応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0280】
本開示の一実施例に係る警報方法は、端末(測位端末10、10’)が、前記端末の位置を決定し、前記端末の位置を情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)に送信し、特定のエリア(危険エリア)の外周に付加されたマージンエリアへの前記端末の侵入に対して警報を前記端末に発出させるための信号(警報発出命令)を、前記情報処理装置から受信し、前記信号に従って警報を発出し、前記マージンエリアの幅(マージン幅)は、前記端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温)とのうちの少なくとも1つに応じて適応的に設定され、前記マージンエリアへの前記端末の侵入は、前記端末の位置と前記マージンエリアの位置とに基づいて判定される。
【0281】
上記の構成により、端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータとこの作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、特定のエリアの外周に付加されるマージンエリアの幅が適応的に設定され、マージンエリアへの端末の侵入が判定される。そして、マージンエリアへの端末の侵入に対して警報を端末に発出させるための信号が、端末に提供される。これにより、特定のエリアと端末との距離以外の他の要素を考慮して、特定のエリアから拡大された、適応的に設定された幅を有するマージンエリアが設定されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、マージンエリアに侵入したことに応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。
【0282】
本開示の一実施例に係る警報システム(警報システム1、1’)は、情報処理装置(代表測位端末10、10’、上位サーバ20、20’)と第1端末(測位端末10、10’)と第2端末(測位端末10、10’)とを有し、前記情報処理装置は、前記第1端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータ(作業累計時間、危険エリア侵入回数、通算作業時間、作業レベル)と前記作業員の周囲状況に関するパラメータ(降雨量、気温)とのうちの少なくとも1つに応じて、前記第2端末の位置を含み、前記第2端末に対応付けられている特定のエリア(危険エリア)の外周に付加されるマージンエリアの幅(マージン幅)を設定し、前記第1端末の位置と前記マージンエリアの位置とに基づいて、前記マージンエリアへの前記第1端末の侵入を判定し、前記侵入に対して第1警報を前記第1端末に発出させるための第1信号(警報発出命令)を、前記第1端末に送信し、前記侵入に対して第2警報を前記第2端末に発出させるための第2信号(警報発出命令)を、前記第2端末に送信し、前記第1端末は、前記情報処理装置から前記第1信号を受信し、前記第1信号に従って警報を発出し、前記第2端末は、前記情報処理装置から前記第2信号を受信し、前記第2信号に従って警報を発出する。
【0283】
上記の構成により、第1端末に対応付けられている作業員の作業経験に関するパラメータとこの作業員の周囲状況に関するパラメータとのうちの少なくとも1つに応じて、特定のエリアの外周に付加されるマージンエリアの幅が適応的に設定され、マージンエリアへの第1端末の侵入が判定される。そして、マージンエリアへの第1端末の侵入に対して警報を第1端末に発出させるための信号が、第1端末に提供される。これにより、特定のエリアと第1端末との距離以外の他の要素を考慮して、特定のエリアから拡大された、適応的に設定された幅を有するマージンエリアが設定されることで、作業員が作業をより安全に行えるように、マージンエリアに侵入したことに応じて作業員に対して適切に警報を行うことができる。また、上記の構成により、作業員が作業をより安全に行えるように、例えば工事車両に搭載されている第2端末の近くにいる工事車両を運転している作業員に対しても適切に警報を行うことができる。
【0284】
上述の実施の形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0285】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例又は修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0286】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部又は全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0287】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0288】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0289】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0290】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0291】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0292】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサー等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサーが含まれる。
【0293】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0294】
本開示は、移動体に対応付けられている人に対して警報を行う警報技術に有用である。
【符号の説明】
【0295】
1,1’ 警報システム
10,10’ 測位端末
20,20’ 上位サーバ
30,30’ 基準局データ配信サーバ
40 モニタデバイス
50 気象情報配信サーバ
101,101’,201,201’ プロセッサ
102,102’,202 記憶部
103 警報部
104 GNSS受信装置
105,105’,203,203’ 通信部
106 出力部
107,204 バス