(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103768
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】撮像装置およびそれを用いた測定システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004481
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森谷 聡史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 健治
(72)【発明者】
【氏名】土井 永憲
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065AA51
2F065BB05
2F065DD04
2F065DD06
2F065FF02
2F065FF04
2F065GG06
2F065GG23
2F065HH03
2F065HH13
2F065HH16
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065LL02
2F065LL22
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】複数の光源により複数方向の被検物の測定を行う場合に、それぞれの光源の外乱の影響を低減させ、測定のためのスペースを節約し、測定時間を短縮し、正確な測定を行う。
【解決手段】光源から発せられる光により被検物を撮像して撮像データを出力する撮像装置であって、n(nは、2以上の整数)系統の光学系を有し、光学系は、光を発する光源と、光源から発せられる光を平行光に変換するコリメータと、コリメータからの平行光を透過させる光学フィルタと、光学フィルタを透過した光を受光して、電気信号に変換するセンサとを有し、各々の系統の光源は、異なった波長の光を発光し、光学フィルタは、各々の系統の光源に対応する特定の波長のみ透過させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられる光により被検物を撮像して撮像データを出力する撮像装置であって、
n(nは、2以上の整数)系統の光学系を有し、
前記光学系は、
光を発する光源と、
前記光源から発せられる光を平行光に変換するコリメータと、
前記コリメータからの平行光を透過させる光学フィルタと、
前記光学フィルタを透過した光を受光して、電気信号に変換するセンサとを有し、
各々の系統の光源は、異なった波長の光を発光し、
前記光学フィルタは、各々の系統の光源に対応する特定の波長のみ透過させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
各々の光学系において、前記光源と前記コリメータとは、光ファイバにより接続され、
前記光ファイバは、前記光源から発せられる光を前記コリメータまで伝送することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
各々の光学系において、前記コリメータと前記被検物の間に、コリメータからの平行光を所定のサイズまで拡大するビームエキスパンダを有することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
光源から発せられる光により被検物を撮像して被検物の形状に関する測定結果を表示または出力する測定システムであって、
n(nは、2以上の整数)系統の光学系を有する撮像装置と、
前記撮像装置の出力する撮像データより、被検物の形状に関する測定結果を算出する処理を行う情報処理装置とを備え、
前記光学系は、
光を発する光源と、
前記光源から発せられる光を平行光に変換するコリメータと、
前記光源と前記コリメータを接続し、前記光源から発せられる光を前記コリメータまで伝送する光ファイバと、
前記コリメータと前記被検物の間に、コリメータからの平行光を所定のサイズまで拡大するビームエキスパンダと、
前記コリメータからの平行光を透過させる光学フィルタと、
前記光学フィルタを透過した光を受光して、電気信号に変換するセンサと、
前記センサから出力される電気信号を撮像データに変換し、前記情報処理装置に伝送する外部インタフェース部とを有し、
各々の系統の光源は、異なった波長の光を発光し、
前記光学フィルタは、各々の系統の光源に対応する特定の波長のみ透過させることを特徴とする測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置およびそれを用いた測定システムに係り、特に、被検物の投影測長する際に、測定のためのスペースを節約し、測定時間を短縮し、正確な測定を行うのに好適な撮像装置およびそれを用いた測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の検査などの分野において、被検物の外形寸法を測定するために投影測長技術が広く知られている。この技術は、平行光を被検物に照射し、被検物によって遮られた影の部分を測定することにより、被検物の外形の測定を行う技術である。この手法は、平行光を被検物に照射しているので、カメラに比べ、被写界深度(ピントが合う手前から奥への範囲)が広いことから被検物との距離の調整が容易であることや、閾値の設定が容易であること等の理由から生産ラインでの検査などに広く用いられている。
【0003】
この投影測長技術に関しては、例えば、特許文献1に開示がある。特許文献1の寸法測定装置では、光学測定手段が、線材の周囲に90度角度を変えて二つ配置されており、これらの光学測定手段を、平面光L1,L2の厚み分だけずらして位置させて、各光学測定手段の平面光が互いに重ならないようにして、線材の影像をCCDイメージセンサにより捉えるようにしている。これにより、複数の光学測定手段を近接して設置することを可能として、線材の同一断面に近い断面の形状や寸法を正確に測定することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
投影測長技術においては、影を測定するという技術的特徴により被検物の形状によっては複数方向の測定を同時に行う場合がある。
【0006】
特許文献1の寸法測定装置によれば投影測長の際に投影位置をずらすことにより複数方向の測定を実現している。
【0007】
しかしながら、従来の投影測長技術においては、影を測定する特徴から被検物の形状によっては、複数方向の測定を同時に行うと光の反射によるノイズ(外乱光)影響を受け、測定が困難となる課題がある。
【0008】
このような複数方向の測定を同時に行った場合のノイズを避けるために、測定したい方向ごとに測定系を設けて、それぞれの測定系に順次被検物を移動させることで複数方向の測定を行う測定方法が考えられる。しかしながら、この測定方法では、それぞれの測定系を配置するスペースが必要となる。
【0009】
また、測定したい方向ごとに測定系を設けて、被検物は動かさない状態で測定系の時間的な切り替えにより複数方向の測定方法が考えられる。しかしながら、この測定方法ではそれぞれの方向ごとに測定するための時間が必要となる。
【0010】
本発明の目的は、複数の光源により複数方向の被検物の測定を行う場合に、それぞれの光源の外乱の影響を低減させ、測定のためのスペースを節約し、測定時間を短縮し、正確な測定を行うことのできる撮像装置およびそれを用いた測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の撮像装置の構成は、好ましくは、光源から発せられる光により被検物を撮像して撮像データを出力する撮像装置であって、n(nは、2以上の整数)系統の光学系を有し、光学系は、光を発する光源と、光源から発せられる光を平行光に変換するコリメータと、コリメータからの平行光を透過させる光学フィルタと、光学フィルタを透過した光を受光して、電気信号に変換するセンサとを有し、各々の系統の光源は、異なった波長の光を発光し、光学フィルタは、各々の系統の光源に対応する特定の波長のみ透過させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の光源により複数方向の被検物の測定を行う場合に、それぞれの光源の外乱の影響を低減させ、測定のためのスペースを節約し、測定時間を短縮し、正確な測定を行うことのできる撮像装置およびそれを用いた測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る撮像装置を用いた測定システムの構成を示す図である。
【
図2A】従来技術に係る投影測定の原理を模式的に示した図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る投影測定の原理を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る一実施形態を、
図1ないし
図2Bを用いて説明する。
【0015】
先ず、
図1を用いて一実施形態に係る撮像装置を用いた測定システムの構成について説明する。
本発明の測定システムは、
図1に示されるように、光学系100(図では、100a、100b)、外部インタフェース部30、情報処理装置200からなる。光学系100は、二系統(A系統、B系統)の光学系があり、それぞれの構成は、同じであるが、個々の部品の特性が異なっている。
【0016】
光学系100は、光源1(図では、それぞれのA系統、B系統ごとに、1a、1b、以下同じ)、光ファイバ2(図では、2a、2b)、コリメータ3(図では、3a、3b)、ビームエキスパンダ4(図では、4a、4b)、光学フィルタ10(図では、10a、10b)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ20(図では、20a、20b)からなる。
【0017】
光源1は、発光する機材であり、例えば、レーザダイオード(Laser Diode)である。A系統の光源1aとB系統の光源1bでは、発する光の波長が異なっており、例えば、光源1aは、可視光の赤色光であり、光源1bは、可視光の青色光である。
【0018】
光ファイバ2は、光通信の伝送路として使用される伝送線であり、光源1から発せられる光をコリメータ3までガイドする。
コリメータ3は、光源1から発せられた光を平行光に変換する光学部材である。
ビームエキスパンダ4は、コリメータ3からの平行光を所定のサイズまで拡大する光学部材である。
【0019】
光学フィルタ(カラーフィルタ、バンドパスフィルタ)10は、規定の光の波長のみを選択的に透過させる光学部材である。本実施形態では、A系統の光学フィルタ10aは、光源1aに対応する波長の光(例えば、赤色光)のみ透過させ、B系統の光源1bに対応する波長の光は、透過させないものとする。逆に、B系統の光学フィルタ10bは、光源1bに対応する波長の光(例えば、青色光)のみ透過させ、A系統の光源1aに対応する波長の光は、透過させないものとする。
【0020】
CMOSセンサ20は、光学フィルタ10を透過した光を、画素単位ごとに2次元座標と対応付けて、電気信号に変換する装置である。
【0021】
外部インタフェース(InterFace)部30は、CMOSセンサ20からの電気信号を処理し、撮像信号に変換して、情報処理装置200に送信する機能部である。
【0022】
外部インタフェース(InterFace)部30と情報処理装置200は、シリアルケーブル5により接続されている。シリアルケーブル5は、外部インタフェース部30から情報処理装置200に撮像データを送信するケーブルであり、例えば、光学系100と情報処理装置200を、USB(Universal Serial Bus)規格により接続するときには、所定の規格のUSBケーブルとなる。
【0023】
情報処理装置200は、一般的なパーソナルコンピュータにより実現され、CMOSセンサ20から送信される撮像信号を受信し、被検物の外形、形状などに関する測定データを算出して、表示・出力する装置である。
【0024】
撮像装置を用いた測定システムの動作を、A系統の光学系100aについて順に述べると以下のようになる。
(1a)光源1aから出力された光(例えば、赤色光)を光ファイバ2aによってコリメータ3aまでガイドする。
(2a)ファイバ2aより出力された光をコリメータ3aにより平行光に変換する。
(3a)コリメータ3aからの平行光をビームエキスパンダ4aによって所定のサイズに拡大する。
(4a)ビームエキスパンダ4aにより拡大された平行光は、光学フィルタ10aを通過し、CMOSセンサ20aに入射される。このとき、光学フィルタ10aは、光源1aから出力された光(例えば、赤色光)以外を遮る特性を有するフィルタが使用されている。
(5a)被検物0が、ビームエキスパンダ4aにより拡大された平行光を遮ることで、CMOSセンサ20aに被検物の影が投影される。
(6a)CMOSセンサ20aを外部インタフェース部30が信号処理し、所定のインタフェース処理の後、シリアルケーブル5を介して、情報処理装置200に伝送する。
(7a)情報処理装置200は、シリアルケーブル5からのA系統からの光学系100aから伝送された撮像データ(図では、歯車の上面データ)を画像処理し、外形寸法などの測定データを算出する。伝送されてくる撮像データは、画素単位ごとに、2次元座標の情報と輝度情報を有する。
【0025】
B系統の光学系100bについても、動作としては、A系統の光学系100aと同様であるが、以下の処理が異なっている。
(4b)ビームエキスパンダ4bにより拡大された平行光は、光学フィルタ10bを通過し、CMOSセンサ20bに入射される。このとき、光学フィルタ10bは、光源1bから出力された光(例えば、青色光)以外を遮る特性を有するフィルタが使用されている。
(7b)情報処理装置200は、シリアルケーブル5からのB系統からの光学系100bから伝送された撮像データ(図では、歯車の側面の長方形のデータ)を画像処理し、外形寸法などの測定データを算出する。
【0026】
なお、本実施形態の測定システムにおいては、光源1とコリメータ3間を光ファイバ2で接続している。この構成により、光源1と被検物0の位置関係に自由度を持たせることができ、光源1を、測定のための温度やメンテナンス性など測定の環境として良好な場所に配置することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態では、光学系100が二系統の場合について説明したが、被検物0の形状の複雑さや測定時間を短縮するために、三系統以上の光学系を有してもよい。
【0028】
以上のように測定システムを動作させることにより、A系統の光源1aから発せられ、CMOSセンサ20aでセンシングされる光と、B系統の光源1bから発せられ、CMOSセンサ20bでセンシングされる光とでは、波長が異なっており、それぞれの光源に対応しない波長の光は、それぞれの光学フィルタ10a、光学フィルタ10bによって遮断される。そのため、他の外形寸法測定へ外乱光などといった形での影響を与えない。
【0029】
これにより、反射面を持った被検物など、従来の技術ではタイミングをずらしたり、場所をずらしたりといった形でしか対応ができなかった被検物に対し、同じタイミングでかつ同じ位置での外形寸法測定が可能となる。
【0030】
以下、
図2Aおよび
図2Bを用いて、この原理を従来技術と対比して説明する。
【0031】
図2Aに示されるように、従来技術に係る投影測定では、光沢面を持った被検物0に対し、同じ波長で同時に測定を行うと、平行光Laの光が被検物に反射し、センサSbに入射してしまう。これにより、本来、平行光Lbの影となる部分に光が入射して誤った投影像Ibが得られてしまう。平行光Lbの光についても同様の結果となる。
図2Aに示す投影像Ia、Ibは、共に破線部分の長方形が本来必要な投影像であり、黒塗りつぶしの部分が得られる誤った投影像を示している。
【0032】
一方、
図2Bに示されるように、本実施形態の測定原理においては、光沢面を有する被検物0に対して、異なる波長の光源により同時に測定を行う。すなわち、平行光Lcの光が被検物に反射しセンサSdの前段にある光学フィルタFdに入射する。この光学フィルタFdは、平行光Ldの波長以外の光を遮断する働きがあるため、平行光Lcの光を遮断し、平行光Ldの光のみが入射する。これらの働きにより、正しい投影像Ic、Idが得られる結果となる。平行光Ldの光についても同様の結果となる。
【0033】
以上のように、本実施形態の測定システムにおいては、光学系を複数設けて、光をセンシングするセンサの入力前面に、それぞれの系統の光源の波長のみを透過させる光学フィルタを設置する。それにより、複数の光源により複数方向の被検物の測定を行う場合に、他の系統からの光源の光をカットすることがき、それぞれの光源の外乱の影響を低減させ、正確な測定を行うことができる。
【0034】
また、光学系を複数設けて、同時に複数方向からの測定が可能になるため測定のためのスペースを節約でき、測定時間も短縮することができる。
【符号の説明】
【0035】
100…光学系、
1…光源、2…光ファイバ、3…コリメータ、4…ビームエキスパンダ、5…シリアルケーブル、10…光学フィルタ、20…CMOSセンサ、30…外部インタフェース部、
200…情報処理装置