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  • 特開-円すいころ軸受 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103773
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】円すいころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/36 20060101AFI20230720BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20230720BHJP
   F16C 33/46 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
F16C19/36
F16C33/58
F16C33/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004489
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】富永 大介
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA12
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA21
3J701BA22
3J701BA34
3J701BA44
3J701BA51
3J701BA53
3J701BA57
3J701BA79
3J701FA46
3J701XB03
3J701XB39
(57)【要約】
【課題】内輪と保持器と円すいころとが非分離となるように、円すいころを保持する保持器を内輪に容易に係合可能な円すいころ軸受を提供する。
【解決手段】内輪の軸方向一端部には、円すいころの頭部を案内する大鍔部が形成される。大鍔部の外周面は、軸方向一端側に向かうにしたがって径方向外側に延びるテーパ部を含む。保持器は、大径側環状部と、小径側環状部と、大径側環状部と小径側環状部とを連結する複数の柱部と、を備える。保持器の大径側環状部には、テーパ部の軸方向一端部よりも径方向内側に突出して内輪と係合する凸部が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪の外周面と前記外輪の内周面との間に転動自在に配置された複数の円すいころと、前記複数の円すいころを周方向に所定間隔に保持する保持器と、を備えた円すいころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記円すいころの頭部を案内する大鍔部が形成され、
前記大鍔部の外周面は、軸方向一端側に向かうにしたがって径方向外側に延びるテーパ部を含み、
前記保持器は、大径側環状部と、小径側環状部と、前記大径側環状部と前記小径側環状部とを連結する複数の柱部と、を備え、
前記保持器の前記大径側環状部には、前記テーパ部の前記軸方向一端部よりも径方向内側に突出して前記内輪と係合する凸部が形成されることを特徴とする円すいころ軸受。
【請求項2】
前記大鍔部の外周面は、前記テーパ部の軸方向一端部から径方向内側に凹んだ凹部を含み、
前記大径側環状部の前記凸部は、前記内輪の前記凹部と係合する
請求項1に記載の円すいころ軸受。
【請求項3】
前記円すいころ軸受の接触角は、35°~55°である
請求項1又は2に記載の円すいころ軸受。
【請求項4】
前記凸部の最小径は、前記テーパ部の最大径よりも小さく且つ前記テーパ部の最小径よりも大きい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の円すいころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円すいころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に円すいころ軸受においては、内輪の大径側及び小径側に大鍔及び小鍔が形成される。大鍔は、軸受回転中に軸受に作用する軸方向負荷を支持する。一方、小鍔は、内輪と保持器と円すいころとを一体化して分離しないように機能するものであり、軸受回転中に必要な部位ではない。
【0003】
特許文献1に記載の円すいころ軸受においては、内輪の小鍔を省略し、合成樹脂製保持器の大径側に、軸受内部に向かうように径方向内側に湾曲する先細りの突出部が設けられている。そして、当該突出部が、内輪大鍔の外周面の角部に形成された周段部に係合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実全昭58-165324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の第1図に記載の保持器突出部6が周段部7とかみ合うためには、突出部6の先端(内径端)は内輪つば部5の外周面5aよりも小径である必要がある。
このため、保持器4と円すいころ3を内輪1に組み込むために内輪1に押し込む際、保持器の突出部6が内輪つば部5と当接してしまい、保持器4を押し込めない事態が発生する恐れがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、内輪と保持器と円すいころとが非分離となるように、円すいころを保持する保持器を内輪に容易に係合可能な円すいころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内輪と、外輪と、前記内輪の外周面と前記外輪の内周面との間に転動自在に配置された複数の円すいころと、前記複数の円すいころを周方向に所定間隔に保持する保持器と、を備えた円すいころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記円すいころの頭部を案内する大鍔部が形成され、
前記大鍔部の外周面は、軸方向一端側に向かうにしたがって径方向外側に延びるテーパ部を含み、
前記保持器は、大径側環状部と、小径側環状部と、前記大径側環状部と前記小径側環状部とを連結する複数の柱部と、を備え、
前記保持器の前記大径側環状部には、前記テーパ部の前記軸方向一端部よりも径方向内側に突出して前記内輪と係合する凸部が形成される
ことを特徴とする円すいころ軸受。
(2) 前記大鍔部の外周面は、前記テーパ部の軸方向一端部から径方向内側に凹んだ凹部を含み、
前記大径側環状部の前記凸部は、前記内輪の前記凹部と係合する
(1)に記載の円すいころ軸受。
(3) 前記円すいころ軸受の接触角は、35°~55°である
(1)又は(2)に記載の円すいころ軸受。
(4) 前記凸部の最小径は、前記テーパ部の最大径よりも小さく且つ前記テーパ部の最小径よりも大きい、
(1)~(3)のいずれか1つに記載の円すいころ軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内輪と保持器と円すいころとが非分離となるように、円すいころを保持する保持器を内輪に容易に係合可能な円すいころ軸受を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る円すいころ軸受の断面図である。
図2図2は、内輪を一部破断した斜視図である。
図3図3は、内輪の断面図である。
図4図4は、保持器を一部破断した斜視図である。
図5図5は、保持器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る円すいころ軸受の断面図である。図2は、内輪を一部破断した斜視図である。図3は、内輪の断面図である。図4は、保持器を一部破断した斜視図である。図5は、保持器の断面図である。
【0011】
本実施形態の円すいころ軸受1は、接触角が35°~55°という急勾配のものであり、高いモーメント剛性を備えている。円すいころ軸受1は、内輪10と、外輪20と、内輪10の外周面と外輪20の内周面との間に転動自在に配置された複数の円すいころ30と、複数の円すいころ30を周方向に所定間隔に保持する保持器40と、を備える。
【0012】
内輪10の外周面は、円すい状の内輪軌道面11と、軸方向一端部(図1中、左端部)に形成され、円すいころ30の頭部31を案内する大鍔部13と、を有する。内輪軌道面11は、内輪10の外周面の軸方向他端部(図1中、右端部)まで延びており、一般的な円すいころ軸受の内輪のように小径側に小鍔を有さない。内輪軌道面11と大鍔部13と間の角部には、肉盗み部15が形成され、応力集中が緩和されている。
【0013】
大鍔部13は、肉盗み部15と接続する内周面13aと、内周面13aに接続する軸方向側面13bと、軸方向側面13bに接続する外周面13cと、を含む。
【0014】
大鍔部13の内周面13aは、軸方向他端側(図1中、右側)に向かうにしたがって径方向外側に延びるテーパ形状であり、円すいころ30の頭部31に当接する。これにより、大鍔部13は、円すいころ30を介して負荷されるアキシアル荷重を受けて、円すいころ30を回動可能に案内する。
【0015】
大鍔部13の軸方向側面13bは、軸方向他端側に向かう凸形状であり、その断面形状は略曲面形状である。
【0016】
大鍔部13の外周面13cは、軸方向側面13bに接続し、軸方向一端側(図1中、左側)に向かうにしたがって径方向外側に延びるテーパ部13c1と、テーパ部13c1の軸方向一端部から径方向内側に凹んだ凹部13c2と、を含む。
【0017】
外輪20の内周面は、円すい状の外輪軌道面21を有する。そして、外輪軌道面21と内輪軌道面11との間で、保持器40に保持された複数の円すいころ30が転動する。
【0018】
保持器40は、軸方向一方側(図1中、左側)に配置された大径側環状部41と、軸方向他方側(図1中、右側)に配置された小径側環状部43と、大径側環状部41と小径側環状部43とを連結する複数の柱部45と、を備える。複数の柱部45は、周方向に等間隔に配置される。大径側環状部41と小径側環状部43と周方向に隣り合う柱部45とによって、円すいころ30を回動可能に収容するポケット47が画定される。図4及び図5に示すように、ポケット47を画定する柱部45の周方向両側面には、径方向外側端部から周方向に突出する爪部45aが形成される。当該爪部45aにより、円すいころ30がポケット47から径方向外側へ脱落することが防止される。
【0019】
大径側環状部41は、軸方向に向かって延びる平坦な略円筒形状の円筒部41aと、円筒部の軸方向一端部から径方向内側に突出する凸部41bと、を含む。円筒部41aは、大鍔部13のテーパ部13c1と径方向に僅かに離間して配置される。凸部41bは、テーパ部13c1の軸方向一端部よりも径方向内側に突出して凹部13c2と係合する。凸部41bは、凹部13c2と径方向に僅かに離間すると共に、凹部13c2とテーパ部13c1とを接続する壁面13dと軸方向に僅かに離間して配置される。したがって、保持器40は軸方向及び径方向に僅かに移動可能である。
【0020】
このように、大径側環状部41の凸部41bと、大鍔部13の凹部13c2と、が係合することにより、非運転中に保持器40と内輪10と複数の円すいころ30との組み立て状態を維持することができ、円すいころ30の脱落を防止できる。
【0021】
次に、円すいころ軸受1の組み立て方法を説明する。まず、保持器40の各ポケット47に円すいころ30を収容する。その後、この保持器40と円すいころ30との組合体と、内輪10と、を軸方向に相対的に近づけ、上記組合体に内輪10を内嵌する。逆に言えば、内輪10に上記組合体を外嵌する。この際、大径側環状部41の凸部41bを弾性変形させながら押し込んで、大鍔部13の凹部13c2に係合させる必要がある。本実施形態においては、大鍔部13の外周面13cがテーパ部13c1を含むので、凸部41bがテーパ部13c1に案内されながら弾性変形し、最終的にテーパ部13c1の軸方向一端部を乗り越えて凹部13c2に係合する。
【0022】
これにより、内輪10と保持器40と円すいころ30との組合体が形成され、当該組合体を外輪20に挿入することによって、内輪10と保持器40と円すいころ30と外輪20とが一体化された円すいころ軸受1を組み立てることができる。
【0023】
ここで、大径側環状部41の凸部41bの最小径41Dminすなわち凸部41bの先端部の内径は、大鍔部13のテーパ部13c1の最大径13Dmaxすなわちテーパ部13c1の軸方向一端部の外径よりも、小さく設定される。これにより、凸部41bは、大鍔部13の凹部13c2内に入り込み当該凹部13c2と確実に係合される。
【0024】
また、大径側環状部41の凸部41bの最小径41Dminすなわち凸部41bの先端部の内径は、大鍔部13の軸方向側面13bの最小径13dminすなわち軸方向側面13bと内周面13aとの接続部の内径よりも、大きく設定することが好ましい(41Dmin>13dmin)。これによれば、保持器40と円すいころ30との組合体を内輪10に組み込む際に、凸部41bは大鍔部13の軸方向側面13b又はテーパ部13c1に接触することになる。凸部41bが軸方向側面13bに接触する場合、凸部41bは曲面形状の軸方向側面13bに案内されながら弾性変形してテーパ部13c1に到達する。その後、凸部41bは、テーパ部13c1に案内されながら更に弾性変形し、最終的にテーパ部13c1の軸方向一端部を乗り越えて凹部13c2に係合する。このように、凸部41bが軸方向側面13b及びテーパ部13c1に案内されて弾性変形して凹部13c2に係合するので、保持器40を内輪10に容易に係合可能である。
【0025】
さらに好ましくは、大径側環状部41の凸部41bの最小径41Dminすなわち凸部41bの先端部の内径は、大鍔部13のテーパ部13c1の最小径13Dminすなわちテーパ部13c1と軸方向側面13bとの接続部の外径よりも、大きく設定することが好ましい。(41Dmin>13Dmin)なお、図1に示された例では、13Dmin>41Dmin>13dminであるが、大径側環状部41や大鍔部13の寸法関係を調整することで、41Dmin>13Dminとすることは容易である。41Dmin>13Dminとした場合、保持器40と円すいころ30との組合体を内輪10に組み込む際に、凸部41bは大鍔部13の軸方向側面13bに接触せず、直接テーパ部13c1に接触することになる。そして、凸部41bは、テーパ部13c1に案内されながら更に弾性変形し、最終的にテーパ部13c1の軸方向一端部を乗り越えて凹部13c2に係合する。このように、凸部41bが軸方向側面13bに接触せずテーパ部13c1に案内されて弾性変形して凹部13c2に係合するので、保持器40を内輪10に容易に係合可能である。
また、保持器40、円すいころ31、テーパ部13c1に囲まれた空間にグリースを保持することが可能となるため、潤滑状態の厳しい内周面13aと円すいころ31の接触部の潤滑状態を改善させることができる。
【0026】
また、図5に示すように、大径側環状部41は、円筒部41aの外周面の軸方向寸法Bが、凸部41bの軸方向一端側面の径方向寸法Aよりも大きい(B>A)。この構成によれば、保持器組み込みの際に円筒部41aの変形量が小さくなるため、組み込み性が向上する。
【0027】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきではなく、その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0028】
例えば、大鍔部13の外周面13cは、必ずしも凹部13c2を含む必要はなく、外周面13cの軸方向一端部までテーパ部13c1が形成されてもよい。この場合であっても、保持器40の大径側環状部41の凸部41bは、テーパ部13c1の軸方向一端部よりも径方向内側に突出して、内輪10と係合する。
【0029】
また、図示の例では、凸部41bは大径側環状部41の全周にわたって形成されているが、周方向に等間隔に複数個設けられる構成を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 円すいころ軸受
10 内輪
11 内輪軌道面
13 大鍔部
13a 内周面
13b 軸方向側面
13c 外周面
13c1 テーパ部
13c2 凹部
13d 壁面
13dmin 最小径
13Dmin 最小径
13Dmax 最大径
15 肉盗み部
20 外輪
21 外輪軌道面
30 円すいころ
31 頭部
40 保持器
41 大径側環状部
41a 円筒部
41b 凸部
41Dmin 最小径
43 小径側環状部
45 柱部
45a 爪部
47 ポケット
A 径方向寸法
B 軸方向寸法
図1
図2
図3
図4
図5