(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103774
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20230720BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004490
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂如
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】任意のタイミングや場所においてオンライン診療を実施できる医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】任意のタイミングや場所においてオンライン診療を実施できる医用情報処理システム100は、医用情報処理装置1、患者端末21、医師端末22、看護師端末23、病院情報システム3及びネットワーク4と、を含む。医用情報処理装置1は、医療に関する情報を処理する装置であり、ネットワーク4を介して患者端末21、医師端末22、看護師端末23及び病院情報システム3と互いに通信可能に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が受ける予定の診療内容に関する診療内容情報と、前記患者が所在する場所の環境に関する患者環境情報と、前記診療内容を担当する医療者が所在する場所の環境に関する医療者環境情報とを取得する取得部と、
前記診療内容情報、前記患者環境情報および前記医療者環境情報に基づき、前記患者が前記医療者による前記診療内容を受けることが可能か否かを判定する判定部と、
を具備する医用情報処理装置。
【請求項2】
前記診療内容情報は、前記診療内容が実施される形態に関する情報を含む、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記患者環境情報は、前記患者が所在する場所における医療補助者の存在に関する情報を含む、
請求項1又は請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記患者環境情報は、前記患者が所在する場所における雑音レベル、通信環境および医療機器の存在のうち少なくとも一つに関する情報を含み、
前記医療者環境情報は、前記医療者が所在する場所における雑音レベル、通信環境および医療機器の存在のうち少なくとも一つに関する情報を含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記患者が対応可能であるか否かに関する患者都合情報と、前記医療者が対応可能であるか否かに関する医療者都合情報とをさらに取得し、
前記判定部は、前記患者都合情報および前記医療者都合情報にさらに基づき、前記患者が前記医療者による前記診療内容を受けることが可能か否かを判定する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、判定結果として前記患者が前記診療内容を受けることが可能である旨を示す第1判定結果と、前記患者が前記診療内容を受けるまでに時間を要する旨を示す第2判定結果と、前記患者が前記診療内容を受けることが可能ではない旨を示す第3判定結果とのうちいずれか一つを出力する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記第3判定結果が出力された場合、前記患者が前記診療内容を受けることが可能ではない原因と、前記原因を解消する対応策とのうち少なくとも一つを特定する特定部と、
をさらに具備する請求項6に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記判定結果、前記原因および前記対応策のうち少なくとも一つを前記患者に対して送信する送信部と、
をさらに具備する請求項7に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記第1判定結果、前記第2判定結果および前記第3判定結果は、互いに異なる色で表示される、
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記取得部は、前記患者の健康状態に関する患者健康情報をさらに取得し、
前記患者健康情報に基づき前記診療内容を決定する決定部と、
をさらに具備する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記患者健康情報は、前記患者の呼吸、体温、血圧、脈拍および意識レベルのうち少なくとも一つに関する情報を含む、
請求項10に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記診療内容に対応付けられた少なくとも一つの判定条件を格納する表に基づき判定する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
患者が受ける予定の診療内容に関する診療内容情報と、前記患者が所在する場所の環境に関する患者環境情報と、前記診療内容を担当する医療者が所在する場所の環境に関する医療者環境情報とを取得し、
前記診療内容情報、前記患者環境情報および前記医療者環境情報に基づき、前記患者が前記医療者による前記診療内容を受けることが可能か否かを判定する、
医用情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
患者が受ける予定の診療内容に関する診療内容情報と、前記患者が所在する場所の環境に関する患者環境情報と、前記診療内容を担当する医療者が所在する場所の環境に関する医療者環境情報とを取得する取得機能と、
前記診療内容情報、前記患者環境情報および前記医療者環境情報に基づき、前記患者が前記医療者による前記診療内容を受けることが可能か否かを判定する判定機能と、
を実現させる医用情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医師-患者間における情報通信機器を介した遠隔診療(以下「オンライン診療」とも呼ぶ)に対する種々の制約が取り除かれつつある。例えば、医療法の改正により医師や患者が医療機関以外の場所に所在する場合であってもオンライン診療を可能にすることが検討されている。また、一般的な医師-患者間のオンライン診療(D to P)に限らず、医師が指示した診療の補助行為を患者に施す看護師等(以下「医療補助者」とも呼ぶ)を交えたオンライン診療(D to P with N)も検討されている。このようにオンライン診療の実施形態が多様化することで、実施形態ごとに実施可能な診療内容も変化すると想定される。したがって、場所や当事者等が多様化するオンライン診療に対応可能なオンライン診療システムが望まれる。
【0003】
従来のオンライン診療システムには、患者が事前に時間及び医師を指定及び予約し、医療機関に所在する医師と自宅等に所在する患者との間でオンライン診療を行うものがある。しかしながら、当該システムでは患者は事前に予約する必要がある一方、医師は設備の整った医療機関においてしかオンライン診療を実施できない。そこで、患者や医師が任意のタイミングや場所においてオンライン診療を実施可能なシステムが特に望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、任意のタイミングや場所においてオンライン診療を実施することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、判定部とを具備する。取得部は、患者が受ける予定の診療内容に関する診療内容情報と、前記患者が所在する場所の環境に関する患者環境情報と、前記診療内容を担当する医療者が所在する場所の環境に関する医療者環境情報とを取得する。判定部は、前記診療内容情報、前記患者環境情報および前記医療者環境情報に基づき、前記患者が前記医療者による前記診療内容を受けることが可能か否かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る医用情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る患者端末、医師端末及び看護師端末の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る医用情報処理システムの動作例を示す図である。
【
図5】
図5は、診療可否判定条件表の第1例を示す図である。
【
図6】
図6は、診療可否判定条件表の第2例を示す図である。
【
図7】
図7は、診療内容の判定結果を表示する画面の第1例を示す図である。
【
図8】
図8は、診療内容の判定結果を表示する画面の第2例を示す図である。
【
図9】
図9は、診療内容の判定結果を表示する画面の第3例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る医用情報処理システムの動作例を示す図である。
【
図12】
図12は、診療内容決定条件表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜、省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る医用情報処理システム100の構成例を示す図である。医用情報処理システム100は、医療に関する情報を処理するシステムであり、オンライン診療システムの一例である。本実施形態に係る医用情報処理システム100は、クライアントサーバシステムである。医用情報処理システム100は、各構成として医用情報処理装置1、患者端末21、医師端末22、看護師端末23、病院情報システム3及びネットワーク4を含む。
【0010】
医用情報処理装置1は、医療に関する情報を処理する装置である。医用情報処理装置1は、ネットワーク4を介して患者端末21、医師端末22、看護師端末23及び病院情報システム3と互いに通信可能に接続される。医用情報処理装置1は、サーバとして機能し得る。医用情報処理装置1は、高速な情報処理を実行可能なワークステーションでもよい。
【0011】
患者端末21は、患者が所有及び操作する端末である。医師端末22は、医師が所有及び操作する端末である。看護師端末23は、看護師が所有及び操作する端末である。各端末は、クライアントとして機能し得る。各端末は、個人用のデスクトップPCやノートPC、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末でもよい。以下、「患者」、「医師」及び「看護師」という文言は、特に断りのない限り、患者端末21を所有する患者、医師端末22を所有する医師、及び看護師端末23を所有する看護師をそれぞれ意味する。
【0012】
病院情報システム3は、病院の各部門を連結し、病院の業務を支援するシステムである。病院情報システム3は、電子カルテシステム、オーダエントリシステム、医用画像情報管理システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)、医事会計システム及び病理部門システムを含む。病院情報システム3は、HIS(Hospital Information System)とも呼ばれる。以下、病院情報システム3は患者や医師、看護師に関する種々の情報を格納していると想定する。
【0013】
図2は、第1実施形態に係る医用情報処理装置1の構成例を示す図である。医用情報処理装置1は、各構成として処理回路11、メモリ12及び通信IF13を含む。各構成は、共通の信号伝送路であるバス(BUS)を介して互いに通信可能に接続される。各構成は、個々のハードウェアにより実現されなくともよい。例えば、各構成のうち少なくとも2つが1つのハードウェアにより実現されてもよい。
【0014】
処理回路11は、医用情報処理装置1の全体の動作を制御する。処理回路11は、少なくとも一つのプロセッサを含む。「プロセッサ」という文言は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例:単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサがCPUである場合、プロセッサはメモリ12に保存されたプログラムを読み出して実行することで各機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、プログラムがメモリ12に保存される代わりに、各機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。プロセッサは、単一の回路として構成されてもよいし、複数の独立した回路を組み合わせて構成されてもよい。処理回路11は、処理部の一例である。本実施形態において、処理回路11は各機能(例:取得機能111、判定機能112、特定機能113、送信機能114)を実現する。
【0015】
取得機能111は、患者が受ける予定の診療内容に関する診療内容情報と、患者が所在する場所の環境に関する患者環境情報と、当該診療内容を担当する医療者が所在する場所の環境に関する医療者環境情報とを取得する。取得機能111は、取得部の一例である。
【0016】
判定機能112は、診療内容情報、患者環境情報および医療者環境情報に基づき、患者が上記の医療者による上記の診療内容を受けることが可能か否かを判定する。判定機能112は、判定結果として患者が当該診療内容を受けることが可能である旨を示す第1判定結果と、患者が当該診療内容を受けるまでに時間を要する旨を示す第2判定結果と、患者が当該診療内容を受けることが可能ではない旨を示す第3判定結果とのうちいずれか一つを出力する。判定機能112は、判定部の一例である。
【0017】
特定機能113は、患者が上記の診療内容を受けることが可能ではない旨を示す判定結果(第3判定結果)が出力された場合、患者が当該診療内容を受けることが可能ではない原因と、当該原因を解消する対応策とのうち少なくとも一つを特定する。特定機能113は、特定部の一例である。
【0018】
送信機能114は、上記の判定結果、原因および対応策のうち少なくとも一つを外部に送信する。送信機能114は、送信部の一例である。
【0019】
メモリ12は、処理回路11が使用するデータやプログラム等の情報を記憶する。メモリ12は、ハードウェアとしてRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子を有する。なお、メモリ12は磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク)、光磁気ディスク(MO)、光学ディスク(CD、DVD、Blu-ray(登録商標))、フラッシュメモリ(USBフラッシュメモリ、メモリカード、SSD)、磁気テープ等の外部記憶装置との間で情報を読み書きする駆動装置でもよい。メモリ12の記憶領域は、医用情報処理装置1の内部又は外部記憶装置にあってもよい。メモリ12は、記憶部の一例である。本実施形態において、メモリ12は診療可否判定条件表200を記憶する。診療可否判定条件表200は、患者が受ける予定の診療内容に関する診療内容情報を格納する。
【0020】
通信IF13は、医用情報処理装置1とネットワーク4との間で種々の情報を通信する。当該通信には、有線又は無線を問わない任意の通信規格が使用可能である。通信IF13は、通信部の一例である。以下、「IF」はインタフェース(Interface)を意味する。
【0021】
図3は、第1実施形態に係る患者端末21、医師端末22及び看護師端末23の構成例を示す図である。各端末は互いに同様な構成を有し、各端末間において各構成は同様な機能を実現する。
【0022】
患者端末21,医師端末22,看護師端末23は、各構成として処理回路211,221,231、メモリ212,222,232、ディスプレイ213,223,233、入力IF214,224,234及び通信IF215,225,235を含む。
【0023】
処理回路211,221,231は、患者端末21,医師端末22,看護師端末23の全体の動作を制御する。処理回路211,221,231のハードウェア構成は、医用情報処理装置1における処理回路11のハードウェア構成と同様である。本実施形態において、処理回路211,221,231は医用情報処理装置1から送信された種々の情報をメモリ212,222,232に格納するほか、当該情報をディスプレイ213,223,233に表示させる。また、処理回路211,221,231は入力IF214,224,234を介して入力された患者、医師又は看護師からの操作や情報を医用情報処理装置1に送信する。処理回路211,221,231は、処理部の一例である。
【0024】
メモリ212,222,232は、処理回路211,221,231が使用するデータやプログラム等の情報を記憶する。メモリ212,222,232のハードウェア構成は、医用情報処理装置1におけるメモリ12のハードウェア構成と同様である。メモリ212,222,232は、記憶部の一例である。
【0025】
ディスプレイ213,223,233は、処理回路211,221,231が生成したデータや、メモリ212,222,232に記憶されるデータ等の情報を表示する。ディスプレイ213,223,233として、ブラウン管(CRT:Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)を含む任意のディスプレイが使用可能である。他にも、ディスプレイ213,223,233は、スマートグラス、VR/ARゴーグル、網膜走査型レーザアイウェア等の、対象者の視覚に情報を認識させる如何なる手段でもよい。本実施形態において、ディスプレイ213,223,233は医用情報処理装置1から送信された種々の情報を表示する。なお、他の実施形態において、医用情報処理装置1が生成した種々の情報は、医用情報処理装置1が備えるディスプレイに表示されてもよい。ディスプレイ213,223,233は、表示部の一例である。
【0026】
入力IF214,224,234は、患者、医師又は看護師からの入力を受け付け、受け付けた入力を電気信号に変換して処理回路211,221,231に出力する。入力IF214,224,234として、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイを含む任意の操作部品が使用可能である。なお、入力IF214,224,234は、患者端末21,医師端末22,看護師端末23とは別体である外部の入力装置から入力を受け付け、受け付けた入力を電気信号に変換して処理回路211,221,231に出力する装置でもよい。また、他の実施形態において、医用情報処理装置1が備える入力IFを介して患者、医師又は看護師からの入力が医用情報処理装置1の処理回路11に出力されてもよい。入力IF214,224,234は、入力部の一例である。
【0027】
通信IF215,225,235は、患者端末21,医師端末22,看護師端末23とネットワーク4との間で種々の情報を通信する。当該通信には、有線又は無線を問わず任意の通信規格が使用可能である。通信IF215,225,235は、通信部の一例である。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る医用情報処理システム100の動作例を示す図である。本動作例に示される一連のステップ(S101-S107)は、医用情報処理装置1が患者端末21からの要求を受けたことを契機に開始され得る。
【0029】
ステップS101において、医用情報処理装置1は送信機能114により、診療内容の候補を送信する。具体的には、医用情報処理装置1は診療可否判定条件表200をメモリ12から読み出した後、診療可否判定条件表200に含まれる複数の診療内容を患者端末21に送信する。
【0030】
ステップS102において、患者端末21は診療内容の候補を表示する。具体的には、患者端末21は医用情報処理装置1から送信された複数の診療内容をディスプレイ213に表示する。続いて、患者端末21の所有者である患者は、表示された複数の診療内容のうち、自身が受診を希望する少なくとも一つの診療内容を入力IF214により選択する。
【0031】
ステップS103において、患者端末21は診療内容を選択する。具体的には、患者端末21は入力IF214を介して入力された患者の操作に基づき少なくとも一つの診療内容を選択する。選択された診療内容は、患者が受ける予定の診療内容とも言える。患者端末21は、選択された診療内容を示す選択結果を医用情報処理装置1に送信する。
【0032】
ステップS104において、医用情報処理装置1は取得機能111により、患者情報及び医療機能情報を取得する。具体的には、医用情報処理装置1は上記の選択結果に基づき、患者が選択した診療内容の実行に必要な条件を診療可否判定条件表200から特定する。続いて医用情報処理装置1は、特定された条件の判定に必要な情報として、患者情報及び医療機能情報を患者端末21や医師端末22、看護師端末23、病院情報システム3から取得する。
【0033】
「患者情報」とは、患者に関する種々の情報を意味する。患者情報は、患者が所在する場所の環境に関する患者環境情報と、患者が対応可能であるか否かに関する患者都合情報と、患者の健康状態に関する患者健康情報とを含む。
【0034】
患者環境情報は、患者が所在する場所における医療補助者の存在に関する情報を含む。当該情報は、患者が置かれた人的環境に関する情報とも言える。当該情報は、具体的には患者端末21及び看護師端末23のGPS(Global Positioning System)の位置情報でもよい。本実施形態において、医用情報処理装置1は当該位置情報に基づき患者の付近に、ホームヘルパー、看護師等の医療補助者が所在するか否かを判定してもよい。ちなみに、患者の付近に医療補助者が所在する場合、医師は医療補助者に指示して診断に必要な処置を患者に施させることができるため、医師はオンライン診断をより容易に実施できる。なお、上記の情報は、医療補助者の氏名、人数又は職業に関する情報や、患者と医療補助者との距離(例:半径10m以内)に関する情報を含んでもよい。このとき、医用情報処理装置1は当該距離が閾値以下である場合、患者の付近に医療補助者が所在すると判定してもよい。
【0035】
さらに患者環境情報は、患者が所在する場所における雑音レベル、通信環境および医療機器の存在のうち少なくとも一つに関する情報を含む。当該情報は、患者が置かれた物理的環境に関する情報とも言える。第一に、雑音レベルに関する情報は患者端末21が備えるマイクにより集音及び測定された音声情報や、患者端末21のGPSの位置情報でもよい。本実施形態において、医用情報処理装置1は当該音声情報に基づき患者が所在する場所が静音状態であるか否かを判定してもよい。また、医用情報処理装置1は当該位置情報に基づき患者が所在する場所が密閉空間であるか否か(すなわち、ビデオ通話でのプライバシーの保護が可能か否か)を判定してもよい。
【0036】
第二に、通信環境に関する情報は患者端末21の通信速度や遅延(レイテンシ)に関する情報や、患者端末21によるセキュア通信の利用可否に関する情報でもよい。本実施形態において、医用情報処理装置1は前者の情報に基づき、患者端末21の通信速度が一定の値以上であり、かつ遅延が一定の値以下であるか否か(すなわち、患者端末21が一定の品質でビデオ通話を実施可能か否か)を判定してもよい。また、医用情報処理装置1は後者の情報に基づき患者端末21が利用するネットワークにおいて、Wi-Fi(登録商標)通信が暗号化通信可能なアクセスポイントを使用しているか否かや、VPN(Virtual Private Network)などの秘匿性の高いネットワークを利用できるか否かを判定してもよい。
【0037】
第三に、医療機器の存在に関する情報は、患者端末21及び医療機器のGPSの位置情報でもよい。医療機器は、X線コンピュータ断層撮影(X線CT:X-ray Computed Tomography)装置、超音波診断(UL:Ultrasound)装置、CT搭載車等の大型の医療機器と、体温計、血圧計、カメラ及びスマートウオッチ等の小型の医療機器とを含む。本実施形態において、医用情報処理装置1は当該情報に基づき医療機器が患者の付近に所在するか否かを判定してもよい。ちなみに、患者の付近に医療機器が所在する場合、医師は医療補助者や患者に指示して診断に必要な処置を医療補助者又は患者に施させることができるため、医師はオンライン診断をより容易に実施できる。
【0038】
他にも、患者環境情報は患者が所在する場所に関する情報を含む。当該情報は、患者端末21のGPSの位置情報でもよい。本実施形態において、医用情報処理装置1は当該情報に基づき患者が屋内及び屋外のうちいずれに所在するかを判定してもよい。例えば、医用情報処理装置1は患者端末21の位置情報が建物の内部を示す場合、患者は当該建物の内部に所在すると判定してもよい。
【0039】
患者都合情報は、患者端末21が搭載するスケジュールアプリからのプレゼンス情報でもよい。プレゼンス情報は、例えば患者の連絡可否を示すプレゼンス状態を示す情報である。プレゼンス状態は、連絡可能な状態(例:連絡可能)と連絡不可能な状態(例:勤務中、取り込み中、通話中、会議中、電話会議中、退席中、業務時間外、オフライン)とを含む。本実施形態において、医用情報処理装置1は当該情報に基づき患者が連絡可能であるか否かを判定してもよい。なお、医用情報処理装置1は、患者端末21からの診療内容に関する選択結果を受け付けた場合、患者端末21は連絡可能な状態にあると判定してもよい。
【0040】
患者健康情報は、患者端末21により計測された患者のバイタル情報でもよい。バイタル情報は、例えば患者の呼吸、体温、血圧、脈拍および意識レベルのうち少なくとも一つに関する情報である。他にも、バイタル情報は病院情報システム3に保管されている情報でもよい。
【0041】
なお、患者情報は患者端末21の構成に関する情報を含んでもよい。当該情報は、具体的には患者端末21が生体情報を計測可能な構成を有しているか否かや、当該構成の性能に関する情報である。当該情報は、例えば患者端末21が生体情報を計測するカメラを有するか否かと、当該カメラが一定以上の画質で利用可能か否かに関する情報を含む。
【0042】
一方、「医療機能情報」とは、患者に提供可能な医療機能に関する種々の情報を意味する。医療機能情報は、患者が受ける予定の診療内容を担当する医療者が所在する場所の環境に関する医療者環境情報と、医療者が対応可能であるか否かに関する医療者都合情報とを含む。本実施形態において、「医療者」とは医師端末22を所有する医師を意味する。他の実施形態において、「医療者」とは、例えば医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、歯科技工士、臨床検査技師、衛生検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士、管理栄養士及び栄養士を含む医療従事者を意味する。医療機能情報は、患者情報と同様な情報を含み得る。すなわち、医療機能情報には前述した患者情報において「患者」を「医師」に読み替え、かつ「患者端末21」を「医師端末22」に読み替えた情報が含まれてもよい。
【0043】
医療者環境情報は、医療者が所在する場所における雑音レベル、通信環境および医療機器の存在のうち少なくとも一つに関する情報を含む。当該情報は、医療者が置かれた物理的環境に関する情報とも言える。医療者環境情報は、患者環境情報と同様な情報を含む。
【0044】
医療者都合情報は、医師端末22が搭載するスケジュールアプリからのプレゼンス情報でもよい。医療者都合情報は、患者都合情報と同様な情報を含む。
【0045】
なお、医療機能情報は診療における医師の役割に関する情報を含んでもよい。当該情報は、具体的には医師が患者の主治医又はアドバイザであるか否かに関する情報を含む。さらに当該情報は、複数の医師が一人の患者を診療する場合に、主治医に加えて別の専門医がビデオ通話可能な状態にあるか否かに関する情報を含む。他にも、医療機能情報は診療における医師の熟練度(例:経験年数)や、医師が患者情報や病院情報システム3にアクセス可能であるか否かに関する情報(例:医師が病院情報システム3にログインしているか否か)を含んでもよい。本実施形態において、医用情報処理装置1は医師の熟練度が5年以上である場合、当該医師はオンライン診断を実施可能であると判定してもよい。また、医用情報処理装置1は医師が研修医である場合、当該医師は健康医療相談を実施可能であると判定してもよい。
【0046】
ステップS105において、医用情報処理装置1は判定機能112により、診療可否を判定する。具体的には、医用情報処理装置1はステップS103において選択された診療内容の実行に必要な条件が充足されるか否かを、ステップS104において取得された患者情報及び医療機能情報に基づき判定する。例えば、医用情報処理装置1は患者が受ける予定の診療内容に関する診療内容情報、患者環境情報及び医療者環境情報に基づき、患者が医療者による当該診療内容を受けることが可能か否かを判定する。続いて医用情報処理装置1は、判定結果として患者が当該診療内容を受けることが可能である旨を示す第1判定結果と、患者が当該診療内容を受けるまでに時間を要する旨を示す第2判定結果と、患者が当該診療内容を受けることが可能ではない旨を示す第3判定結果とのうちいずれか一つを出力する。なお、これら判定結果のうち、第1判定結果又は第3判定結果が出力されてもよい。
【0047】
ここで、患者が診療内容を受けることが可能ではない旨を示す判定結果(第3判定結果)が出力された場合、医用情報処理装置1は特定機能113により、患者が診療内容を受けることが可能ではない原因と、当該原因を解消する対応策とのうち少なくとも一つを特定してもよい。例えば、医用情報処理装置1は患者が希望する診療内容を受診できない原因として「血圧情報の不足」を特定し、「血圧情報の測定」を当該原因に対する対応策として特定してもよい。ひいては、医用情報処理装置1は患者端末21に搭載された血圧測定アプリを起動することで、患者の血圧情報の測定を開始してもよい。他にも、医用情報処理装置1は患者が上記の診療内容を受診するために必要な医療機器や検査キットを予約又は注文してもよい。上記いずれかの態様により、医用情報処理装置1は患者が自身の希望する診療内容を受診できるように当該患者の手間を省き、かつ種々の準備を整えることができる。
【0048】
ステップS106において、医用情報処理装置1は送信機能114により、判定結果を送信する。具体的には、医用情報処理装置1はステップS105において出力された判定結果を患者端末21に送信する。このとき、医用情報処理装置1は上記の原因及び対応策を患者端末21に送信してもよい。
【0049】
ステップS107において、患者端末21は判定結果を表示する。具体的には、患者端末21は医用情報処理装置1から送信された判定結果、原因及び対応策のうち少なくとも一つをディスプレイ213に表示する。これにより、患者端末21の所有者である患者は、ステップS103において選択した診療内容が受診可能であるか否かに関する判定結果を確認することができる。さらに、患者は自身が選択した診療内容が受診可能ではない原因と対応策とを確認することができる。なお、患者が選択した診療内容を受けることが可能である旨を示す判定結果(第1判定結果)と、当該診療内容を受けるまでに時間を要する旨を示す判定結果(第2判定結果)と、当該診療内容を受けることが可能ではない旨を示す判定結果(第3判定結果)とは、互いに異なる色で表示されてもよい。また、各判定結果は表又はリストにより表示されてもよい。
【0050】
以上、第1実施形態に係る医用情報処理システム100の動作例(ステップS101-S107)について説明した。上記の動作例によれば、医用情報処理装置1は患者が選択した特定の診療内容について診療可否を判定した後、当該診療内容に関する判定結果を患者端末21に送信する。これに限らず、医用情報処理装置1はステップS101における複数の診療内容のそれぞれについて診療可否を判定し、それぞれの判定結果を表示してもよい。この場合、患者端末21の所有者である患者は、複数の診療内容のそれぞれが受診可能であるか否かを同時に判断することができる。
【0051】
図5は、診療可否判定条件表200の第1例を示す図である。診療可否判定条件表200は、複数の診療内容と、当該複数の診療内容のそれぞれに対応付けられた少なくとも一つの判定条件とを格納する表である。診療可否判定条件表200は、複数の診療内容のそれぞれに関する診療内容情報を格納する表とも言える。本実施形態において、医用情報処理装置1は取得された患者情報及び医療機能情報が、患者が選択した診療内容に対応付けられた複数の条件(条件1、条件2、条件3・・・)を全て満たす場合、当該診療内容は実施可能であると判定する。診療可否判定条件表200の作成及び更新は、医用情報処理装置1の管理者が手動で行ってもよいし、IoT(Internet of Things)技術に基づき患者の健康状態や周辺環境のリアルタイムなモニタリングデータを収集し、収集されたモニタリングデータに関するビッグデータを活用した機械学習等により自動で行われてもよい。
【0052】
例えば、「No.1」における診療内容は「高血圧症のオンライン診断」であり、当該診療内容には複数の判定条件(条件1「医師がビデオ通話できる状態にある」、条件2「患者の血圧情報が計測できる」又は「計測済みの血圧情報が参照できる」、条件3・・・)が対応付けられる。一方、「No.2」における診療内容は「高血圧症の健康医療相談(ビデオ通話)」であり、当該診療内容には一つの判定条件(条件1「医師がビデオ通話できる状態にある」)が対応付けられる。一般に、医師がオンライン診断を実施する場合、医師は患者の生体情報を参照する必要がある一方、医師が健康医療相談を実施する場合、医師は患者の生体情報を参照する必要はなくビデオ通話できる状態にあればよい。このような診療のレベルの差異に基づき、診療可否判定条件表200において診療内容ごとに異なる判定条件が設定されてもよい。
【0053】
図6は、診療可否判定条件表200の第2例を示す図である。診療可否判定条件表200は、診療内容が実施される形態(診療形態)に関する情報を含む。「診療形態」とは、診療の対象となる疾患(例:高血圧症、糖尿病、新型コロナウイルス感染症)の種類に関係なく、当該疾患に対する診療が実施される方式を意味する。診療形態は、具体的には「オンライン診断」、「オンライン受診勧奨」、「健康医療相談(医師/看護師とのビデオ通話/チャット)」及び「健康医療相談(チャットボット)」を含む。医用情報処理装置1は、取得された患者情報及び医療機能情報が、患者が選択した診療形態に対応付けられた複数の条件(条件1、条件2、条件3・・・)を全て満たす場合、当該診療形態は実施可能であると判定する。
【0054】
例えば、「No.1」における診療形態は「オンライン診断」であり、当該診療形態には複数の判定条件(条件1「医師がビデオ通話できる状態にある」、条件2「患者の生体情報が計測できる」又は「計測済みの生体情報が参照できる」、条件3・・・)が対応付けられる。一方、「No.2」における診療形態は「オンライン受診勧奨」であり、当該診療形態には複数の判定条件(条件1「医師がビデオ通話できる状態にある」、条件2「医師が病院情報システムにアクセスできる」、条件3・・・)が対応付けられる。このような診療形態の差異に基づき、診療可否判定条件表200において診療形態ごとに異なる判定条件が設定されてもよい。
【0055】
図7は、診療内容の判定結果を表示する画面の第1例を示す図である。本実施形態において、当該画面は患者端末21のディスプレイ213に表示される。第1例において、診療可否の判定結果を表示する画面A1が表示された後、患者端末21の入力IF214を介して入力された患者の操作に応じて画面A1は画面A2に遷移する。以下、各画面はディスプレイ213の画面サイズに適合して表示されてもよい。
【0056】
画面A1において、診療可否の判定結果を示す診療可否判定結果表300が表示される。診療可否判定結果表300は、複数の診療内容と、当該複数の診療内容のそれぞれに対応付けられた判定結果とを格納する表である。さらに、各判定結果には各診療内容が受診可能であるか否かを示す「状態」が対応付けられる。当該状態は、判定結果の種類ごとに異なる色のマーカ(例:赤色、黄色、緑色)により表示される。本実施形態において、赤色は受診不可能である旨を示し、黄色は受診までに時間を要する旨を示し、緑色は受診可能である旨を示す。換言すれば、赤色は患者が当該診療内容を受けることが可能ではない旨を示す判定結果(第3判定結果)に対応し、黄色は患者が当該診療内容を受けるまでに時間を要する旨を示す判定結果(第2判定結果)に対応し、緑色は患者が当該診療内容を受けることが可能である旨を示す判定結果(第1判定結果)に対応する。
【0057】
例えば、診療内容「高血圧症のオンライン診断」には状態「赤」と、判定結果「血圧の測定が必要です」とが対応付けられる。一方、診療内容「高血圧症の健康医療相談(ビデオ通話)」には状態「黄」と、判定結果「15分後に受診できます」とが対応付けられる。また一方、診療内容「高血圧症の健康医療相談(チャット)」には状態「緑」と、判定結果「すぐに受診できます」とが対応付けられる。患者端末21の所有者である患者は、診療可否判定結果表300を視認することで、どの診療内容が直ちに受診可能であるかを判断することができる。特に、患者は各判定結果の種類に対応するマーカの色を視認することで、どの診療内容が直ちに受診可能であるかを容易かつ直感的に判断することができる。
【0058】
ここで、患者が患者端末21の入力IF214を介して画面A1上でカーソル350を移動させ、判定結果「血圧の測定が必要です」を選択した場合を想定する。この場合、患者端末21に搭載された血圧測定アプリが起動され、画面A1は画面A2に遷移する。
【0059】
画面A2において、患者の血圧情報の測定結果を表示するウィンドウ400が表示される。ウィンドウ400において、測定中又は測定後における患者の最大血圧(高圧/mmHg)及び最小血圧(低圧/mmHg)が表示される。なお、医用情報処理装置1は患者の血圧情報が測定された場合、当該血圧情報に基づいて診療可否判定結果表300を更新してもよい。この場合、判定結果「血圧の測定が必要です」が「すぐに受診できます」に更新され、かつ状態「赤」が状態「緑」に更新されてもよい。
【0060】
一方、患者が患者端末21の入力IF214を介して画面A1上でカーソル350を移動させ、判定結果「15分後に受診できます」を選択した場合を想定する。この場合、患者端末21は当該判定結果に対応する診療内容を担当する医師の医師端末22に、当該患者が待機中である旨のメッセージを送信してもよい。これにより、医師は患者が待機中であることを知ることができ、当該患者に応対するためにスケジュールを変更したり等の行動を起こすことができる。もちろん、医師は所定の時間が経過して対応可能な状態になると直ちに、自発的に医師端末22から患者端末21に連絡しても構わない。
【0061】
また一方、患者が患者端末21の入力IF214を介して画面A1上でカーソル350を移動させ、判定結果「すぐに受診できます」を選択した場合を想定する。この場合、患者端末21は当該判定結果に対応する医師の医師端末22に連絡してもよい。これにより、医師と患者との間でのオンライン診療が開始されてもよい。さらに、当該オンライン診療が終了した場合、判定結果「すぐに受診できます」が判定結果「受診済みです」に更新され、かつ状態「緑」が他の色(例:青)を示すマーカに更新されてもよい。
【0062】
図8は、診療内容の判定結果を表示する画面の第2例を示す図である。第2例において、診療可否判定条件表200に含まれる複数の疾患名を表示する画面B1が表示された後、患者端末21の入力IF214を介して入力された患者の操作に応じて画面B1は画面B2に遷移する。なお、「疾患名」は診療可否判定条件表200の「診療内容」に含まれる。
【0063】
画面B1において、診療可否判定条件表200に含まれる複数の疾患名を表示する疾患名表310が表示される。例えば、疾患名表310には「高血圧症」、「糖尿病」、「新型コロナウイルス感染症」、・・・が格納される。ここで、患者が患者端末21の入力IF214を介して画面B1上でカーソル350を移動させ、疾患名「高血圧症」を選択した場合を想定する。この場合、画面B1は画面B2に遷移する。
【0064】
画面B2において、高血圧症に関する複数の診療形態(例:オンライン診断、健康医療相談(ビデオ通話/チャット))に対応するそれぞれの判定結果を表示する診療可否判定結果表300が表示される。斯かる表示態様により、患者は複数の疾患名のうち、自身が興味のある疾患に限定して診療形態ごとの診療可否を視認することができる。当該表示態様によれば、診療可否判定条件表200に含まれる全ての診療内容について各判定結果が表示される場合に比して、患者は興味のある診療内容の判定結果を迅速に確認することができる。
【0065】
図9は、診療内容の判定結果を表示する画面の第3例を示す図である。第3例において、患者の自覚症状を示す複数の候補を表示する画面C1が表示された後、患者端末21の入力IF214を介して入力された患者の操作に応じて画面C1は画面C2に遷移する。
【0066】
画面C1において、患者の自覚症状を示す複数の候補を格納する症状表320が表示される。例えば、症状表320には「呼吸が苦しい」又は「息切れがする」、「足が痺れる」、・・・が格納される。ここで、患者が患者端末21の入力IF214を介して画面C1上でカーソル350を移動させ、症状「呼吸が苦しい」又は「息切れがする」を選択した場合を想定する。この場合、画面C1は画面C2に遷移する。
【0067】
画面C2において、選択した症状に関連する複数の診療内容の候補と、当該複数の診療内容の候補に対応するそれぞれの判定結果とを表示する診療可否判定結果表300が表示される。診療内容の候補は、医用情報処理装置1が履歴データを解析することで推定した「一般的に患者が希望する診療内容」でもよい。具体的には、医用情報処理装置1が過去に種々の患者について実施された診療内容を履歴データとして集積し、当該履歴データから現在、処理対象となる患者の健康状態(例:体温、脈拍、血圧)に関連する事例を探索する。続いて医用情報処理装置1は、探索された事例に基づき診療内容の候補を推定してもよい。斯かる表示態様により、患者は複数の症状の候補のうち、自身が興味のある症状に限定して診療内容ごとの診療可否を視認することができる。当該表示態様によれば、診療可否判定条件表200に含まれる全ての診療内容について各判定結果が表示される場合に比して、患者は興味のある診療内容の判定結果を迅速に確認することができる。
【0068】
以上、第1実施形態に係る医用情報処理システム100について説明した。第1実施形態に係る医用情報処理システム100によれば、医師や患者はオンライン診療が必要なタイミングにおいて場所を限定せずに、オンライン診療を実施することができる。これにより、医用情報処理システム100は医師や患者のオンライン診療に対する満足度を向上させることができる。さらに、医用情報処理システム100はオンライン診療の迅速性を向上させるため、患者の疾患の早期発見又は早期治療に資することができる。上記の観点から、医用情報処理システム100はオンライン診療の質を向上させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る医用情報処理システム100について説明する。第2実施形態に係る医用情報処理システム100の各構成は、特に断りのない限り、第1実施形態と同様である。
【0070】
図10は、第2実施形態に係る医用情報処理装置1の構成例を示す図である。第2実施形態に係る医用情報処理装置1は、第1実施形態における各構成に加えて処理回路11に決定機能115を有し、かつメモリ12に診療内容決定条件表500を有する。なお、診療内容決定条件表500に含まれる診療内容と、診療可否判定条件表200に含まれる診療内容とは、互いに対応付けられていればよい。
【0071】
決定機能115は、患者の健康状態に関する患者健康情報に基づき、患者が受ける予定の診療内容を決定する。決定機能115は、決定部の一例である。
【0072】
図11は、第2実施形態に係る医用情報処理システム100の動作例を示す図である。本動作例に示される一連のステップ(S201-S206)は、第1実施形態と同様に医用情報処理装置1が患者端末21からの要求を受けたことを契機に開始されてもよい。
【0073】
ステップS201において、医用情報処理装置1は取得機能111により、患者健康情報を取得する。具体的には、医用情報処理装置1は当該情報を患者端末21や病院情報システム3から能動的又は受動的に取得する。例えば、医用情報処理装置1は当該情報を定期的に取得してもよいし、患者端末21や病院情報システム3が送信した当該情報を受動的に取得してもよい。
【0074】
第一に、患者健康情報は患者が尿検査を実施可能なIoTトイレを使用した際に、当該トイレが実施した尿検査の結果でもよい。第二に、患者健康情報は新型コロナウイルス感染症の接触確認アプリによる、感染者との接触や当該感染者と接触した可能性がある場所に関する情報でもよい。第三に、患者健康情報は患者の睡眠中に腕時計型血圧計により測定された血圧情報でもよい。
【0075】
ステップS202において、医用情報処理装置1は決定機能115により、診療内容を決定する。具体的には、医用情報処理装置1は診療内容決定条件表500が対象とする複数の疾患のうち、ステップS201で取得した患者健康情報が判定条件に含まれる疾患を特定する。続いて医用情報処理装置1は、特定された疾患の診療内容に関する全ての判定条件が、取得された患者健康情報により充足されるか否か(すなわち、診療の要否)を判定する。当該判定条件が充足されると判定された場合、医用情報処理装置1は当該判定条件に対応付けられた診療内容を、患者が受ける予定の診療内容として決定する。決定された診療内容は、患者が受けるべき診療内容であるとも言える。
【0076】
ステップS203において、医用情報処理装置1は取得機能111により、患者情報及び医療機能情報を取得する。具体的には、医用情報処理装置1はステップS202で決定された診療内容を実施するために必要な条件を診療可否判定条件表200から特定する。続いて医用情報処理装置1は、特定された条件の判定に必要な情報として、患者情報及び医療機能情報を患者端末21や医師端末22、看護師端末23、病院情報システム3から取得する。すなわち、ステップS203はステップS104と同様である。
【0077】
ステップS204において、医用情報処理装置1は判定機能112により、診療可否を判定する。具体的には、医用情報処理装置1はステップS202で決定された診療内容の実行に必要な条件が充足されるか否かを、ステップS203で取得された患者情報及び医療機能情報に基づき判定する。すなわち、ステップS204はステップS105と同様である。
【0078】
ステップS205において、医用情報処理装置1は送信機能114により、判定結果を送信する。具体的には、医用情報処理装置1はステップS204で出力された判定結果を患者端末21に送信する。すなわち、ステップS205はステップS106と同様である。
【0079】
ステップS206において、患者端末21は判定結果を表示する。具体的には、患者端末21は医用情報処理装置1から送信された判定結果をディスプレイ213に表示する。すなわち、ステップS206はステップS107と同様である。なお、判定結果は第1実施形態と同様な態様で表示されてもよい。
【0080】
図12は、診療内容決定条件表500の一例を示す図である。診療内容決定条件表500は、複数の診療内容と、当該複数の診療内容のそれぞれに対応付けられた少なくとも一つの判定条件とを格納する表である。診療内容決定条件表500は、複数の診療内容のそれぞれに関する診療内容情報を格納する表とも言える。本実施形態において、医用情報処理装置1は取得された患者情報及び医療機能情報が、患者健康情報に基づき決定された診療内容に対応付けられた複数の条件(条件1-1、条件1-2、条件1-3・・・)のうちいずれか一つを満たす場合、当該診療内容は実施可能であると判定する。診療内容決定条件表500の作成及び更新は、医用情報処理装置1の管理者が手動で行ってもよいし、機械学習等により自動で行われてもよい。このとき、各疾患について公表されている診療ガイドラインを参照し診療内容決定条件表500の作成及び更新が行われてもよい。医用情報処理装置1は、診療内容決定条件表500に基づき診療内容ごとの診療の要否を判定することができる。
【0081】
以上、第2実施形態に係る医用情報処理システム100について説明した。第2実施形態に係る医用情報処理システム100によれば、第1実施形態と同様な効果が得られる。さらに、第2実施形態に係る医用情報処理システム100によれば、患者が受診を希望する診療内容を選択する手間を省き、患者が受診すべき診療内容を自動で選択することができる。すなわち、医用情報処理システム100は患者の健康状態に基づき適切な診療内容を提案するため、患者にとってより利便性の高いシステムであると言える。
【0082】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、任意のタイミングや場所においてオンライン診療を実施することができる。
【0083】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
1 医用情報処理装置
3 病院情報システム
4 ネットワーク
11,211,221,231 処理回路
12,212,222,232 メモリ
21 患者端末
22 医師端末
23 看護師端末
100 医用情報処理システム
111 取得機能
112 判定機能
113 特定機能
114 送信機能
115 決定機能
200 診療可否判定条件表
213,223,233 ディスプレイ
300 診療可否判定結果表
310 疾患名表
320 症状表
350 カーソル
400 ウィンドウ
500 診療内容決定条件表