IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力管理装置 図1
  • 特開-電力管理装置 図2
  • 特開-電力管理装置 図3
  • 特開-電力管理装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103816
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】電力管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230720BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230720BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230720BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230720BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20230720BHJP
   G16Y 10/35 20200101ALI20230720BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20230720BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20230720BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20230720BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20230720BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/46
G16Y10/35
G16Y20/10
G16Y20/20
G16Y40/20
G16Y40/30
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004565
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】最相 美穂
(72)【発明者】
【氏名】谷口 喜代太
(72)【発明者】
【氏名】乾 真也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 桂一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 礼
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA03
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力の供給が必要な施設に対して電力を供給しやすい仕組みを構築する。
【解決手段】ここで開示される電力管理装置は、マイクログリッド100に接続されている予め登録された複数の施設22~25からの入力に応じて、複数の施設22~25から、電力の供給が必要な需要施設23~25と、需要施設に電力を供給する供給施設22とを設定する処理と、供給施設22から需要施設23~25に電力を供給させる処理とが実行されるように構成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッドに接続されている予め登録された複数の施設からの入力に応じて、前記複数の施設から、電力の供給が必要な需要施設と、前記需要施設に電力を供給する供給施設とを設定する処理と、
前記供給施設から前記需要施設に電力を供給させる処理と
が実行されるように構成された、電力管理装置。
【請求項2】
前記需要施設からの入力は、ひっ迫度を含んでおり、
前記電力を供給させる処理では、前記ひっ迫度に基づいて前記需要施設へ供給する電力を決定することを含む、請求項1に記載された電力管理装置。
【請求項3】
前記マイクログリッドに接続され、電動車両を充放電可能な充放電スタンドが複数登録されており、
前記充放電スタンドで充放電可能な予め登録された前記電動車両のユーザに対して、前記充放電スタンドで放電するように放電要請する処理がさらに実行されるように構成された、請求項1または2に記載された電力管理装置。
【請求項4】
前記放電要請する処理は、
前記電動車両の位置情報を取得することと、
前記電動車両を、前記電動車両の位置情報と、前記需要施設の位置情報とに基づいて定められた充放電スタンドに案内することと
を含む、請求項3に記載された電力管理装置。
【請求項5】
放電要請された前記電動車両が前記充放電スタンドで放電したことを記録する処理と、
記録された前記電動車両のユーザに対し、放電量に応じたインセンティブを付与する処理と
がさらに実行されるように構成された、請求項3または4に記載された電力管理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-89220号公報には、複数の拠点それぞれに設置され、蓄電池および充放電スタンドを備える系統連系システムの電力管理方法が開示されている。同公報に開示されている電力管理方法では、系統連系システムが設置された各拠点の電力供給に関する供給情報を取得し、次いで、取得した供給情報を所定の装置へ出力する。供給情報は、例えば、災害時などの非常時に、一の拠点の系統連系システムが他の拠点の系統連系システムへ供給することができる電力情報でありうる。非常時には、一の拠点から他の拠点に電動車両を配車し、当該電動車両のバッテリの電力を当該他の拠点の蓄電池に供給する。かかる電力管理方法によると、複数の系統連系システムの効率的な電力管理を実現することができるとされている。また、電力が不足している拠点に電動車両を配車することで、系統連系システム全体として電力を効率的に運用できるとされている。
【0003】
特開2013-118722号公報には、災害時に、工場など復旧拠点と周辺地域の避難所における可搬型蓄電機能の融通方式を構築し、避難所の電源確保と、工場の分散電源有効活用を可能とする手段地域エネルギーの管理方法が開示されている。同公報に開示されている地域エネルギーの管理方法では、工場など復旧拠点の事業活動情報を入力し、分配可能な蓄電機能を見積り、周辺地域の避難所からの電源要求と比較評価のうえ、蓄電池の分配量を決める。また、同公報に開示されている手段地域エネルギーの管理方法では、事業活動に比べて自然エネルギーによる電力量が多く見積もられた場合は、地域避難所に蓄電池充電可能情報を発し、蓄電機能を更新する。なお、電力の融通は、可搬型蓄電池を送達、回収することにより実行される。かかる地域エネルギーの管理方法によると、自然エネルギーを有効活用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-89220号公報
【特許文献2】特開2013-118722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、電力の供給が必要な施設に対して電力を供給しやすい仕組みを構築したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される電力管理装置は、マイクログリッドに接続されている予め登録された複数の施設からの入力に応じて、複数の施設から、電力の供給が必要な需要施設と、需要施設に電力を供給する供給施設とを設定する処理と、供給施設から需要施設に電力を供給させる処理とが実行されるように構成されている。
かかる電力管理装置によって、電力の供給が必要な施設に電力が供給されやすくなる。
【0007】
需要施設からの入力は、ひっ迫度を含んでいてもよい。電力を供給させる処理では、ひっ迫度に基づいて需要施設へ供給する電力を決定することを含んでいてもよい。
電力管理装置には、マイクログリッドに接続され、電動車両を充放電可能な充放電スタンドが複数登録されていてもよい。電力管理装置は、充放電スタンドで充放電可能な予め登録された電動車両のユーザに対して、充放電スタンドで放電するように放電要請する処理がさらに実行されるように構成されていてもよい。
放電要請する処理は、電動車両の位置情報を取得することと、電動車両を、電動車両の位置情報と、需要施設の位置情報とに基づいて定められた充放電スタンドに案内することとを含んでいてもよい。
電力管理装置は、放電要請された電動車両が充放電スタンドで放電したことを記録する処理と、記録された電動車両のユーザに対し、放電量に応じたインセンティブを付与する処理とがさらに実行されるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、マイクログリッド100を示す模式図である。
図2図2は、電力管理装置40を示すブロック図である。
図3図3は、電力管理装置40で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、電動車両30からマイクログリッド100に放電する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示される充放電管理装置の一実施形態について図面を参照して説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。また、同一の作用を奏する構成要素には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略される。
【0010】
〈マイクログリッド100〉
図1は、マイクログリッド100を示す模式図である。マイクログリッド100は、地域の小規模な配電系統である。マイクログリッド100は、集中型電源に接続された電力系統とは独立して電力を運用することができるように構成されている。集中型電源としては、例えば、電力会社が運営する火力発電所や水力発電所等の大規模発電設備が挙げられる。マイクログリッド100は、例えば、平常時には上記集中型電源からの電力供給を受けている。マイクログリッド100は、災害等による非常時には上記集中型電源とは切り離され、独立した配電系統を構成する。マイクログリッド100は、分散型電源を含んでいる。マイクログリッド100に含まれる分散型電源としては、例えば、太陽光発電設備や風力発電設備等の再生可能エネルギーを発電する設備、住宅や事業所等に設置されている蓄電池等の蓄電装置、電動車両に搭載されている蓄電池等が挙げられる。
【0011】
図1に示されているように、マイクログリッド100は、配電網20を備えている。マイクログリッド100の配電網20には、事業所22、病院23および避難所24,25が接続されている。マイクログリッド100の配電網20は、電力機器と接続されている。電力機器は、電気を利用するために必要な、様々な機器類の総称である。電力機器には、発電、電気エネルギーから他のエネルギーへの変換、蓄電、電圧変換・力率調整、電力の接続・遮断などを行う機器が含まれうる。
【0012】
事業所22は、蓄電装置22aと、充放電スタンド22bと、電力管理端末22c(図2参照)とを備えている。特に限定されないが、事業所22は、例えば、太陽光発電や風力発電を行う発電施設、商業施設、駐車場、カーディーラ、宿泊施設等でありうる。病院23は、蓄電装置23aと、充放電スタンド23bと、電力管理端末23c(図2参照)とを備えている。避難所24,25は、災害等が起こった場合に周辺地域の被災者が避難する施設である。特に限定されないが、例えば、学校、体育館、公民館等の公共施設が避難所24,25として設定されうる。避難所24,25は、例えば、避難所となりうる公共施設の中から、災害が発生した地域や規模等に応じて適宜設定されうる。この実施形態では、2箇所の避難所24,25が設定されている。避難所24,25は、蓄電装置24a,25aと、充放電スタンド24b,25bと、電力管理端末24c,25c(図2参照)とを備えている。
【0013】
蓄電装置22a~25aは、例えば、定置型の蓄電池である。蓄電装置22a~25aに蓄えられた電力は、各施設22~25で消費されうる。また、蓄電装置22a~25aに蓄えられた電力は、マイクログリッド100の配電網20を介して他の蓄電装置22a~25aに供給されることによって電力が調整されうる。
【0014】
充放電スタンド22b~25bは、後述する電動車両30を充放電可能な充電設備である。なお、充放電スタンド22b~25bは、必ずしも各施設22~25に設けられている必要はない。充放電スタンド22b~25bは、例えば、事業所22、病院23および避難所24,25のうち、電動車両30が駐車されうる施設に設けられているとよい。また、図示は省略するが、電動車両30を所有するユーザの住宅にも充放電スタンドが設けられている。
【0015】
電動車両30は、マイクログリッド100の配電網20に接続可能な車両である。電動車両30は、車載電池を備えている。電動車両30は、車載電池に蓄えた電力を動力として走行する。電動車両30は、充放電スタンド22b~25bを通じて充電される。また、電動車両30は、マイクログリッド100に対して、施設22~25の充放電スタンド22b~25bや電動車両30のユーザの住宅の充放電スタンドを通じて放電可能である。換言すると、電動車両30は、車載電池に蓄えられた電力を、充放電スタンド22b~25bを介して放電し、マイクログリッド100に接続された施設22~25に対して電力を供給することができる。かかる技術は、V2G(Vehicle-to-Grid)とも称される。
【0016】
電動車両30は、充放電スタンド22b~25bに接続され、マイクログリッド100に充放電可能である限りにおいて、車両の種類等は特に限定されない。かかる電動車両30としては、例えば、充放電スタンド22b~25bに接続されて充放電が可能なプラグイン機能を備えたいわゆるプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、ハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等が含まれる。
【0017】
電力管理端末22c~25cは、それぞれの施設22~25の電力情報D22~D25を管理する端末である(図2参照)。電力情報D22~D25は、例えば、蓄電装置22a~25aに蓄えられた電力量に関する情報や、充放電スタンド22b~25bを介して充放電される電力に関する情報等を含みうる。電力情報D22~D25は、それぞれの施設22~25において必要とされる電力等の情報を含んでいる。施設22~25で必要とされる電力の情報は、過去の電力の使用履歴に基づいて設定されていてもよく、それぞれの施設22~25の管理者等によって設定されていてもよい。施設22~25で必要とされる電力の情報は、例えば、平常時と非常時に分けて設定されていてもよい。電力管理端末22c~25cは、例えば、それぞれの施設22~25の管理者等が使用するデスクトップ型やラップトップ型のパーソナルコンピュータ、タブレット端末であってもよい。電力管理端末22c~25cで管理される電力情報D22~D25は、後述する電力管理装置40に送信されうる。なお、電力管理端末22c~25cには、それぞれの施設において電力情報が入力されるための入力手段が設けられていてもよい。
【0018】
〈電力管理装置40〉
図2は、電力管理装置40を示すブロック図である。電力管理装置40は、マイクログリッド100で接続された地域内の電力を管理する。電力管理装置40は、単一のコンピュータによって実現されてもよいし、複数のコンピュータが協働して実現されるものであってもよい。図2に示されているように、電力管理装置40は、制御装置50を備えている。制御装置50の構成は特に限定されない。ここでは、制御装置50は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置50は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMとを備えている。
【0019】
図2に示されているように、電力管理装置40の制御装置50は、第1通信部51と、第2通信部52と、記憶部60とを備えている。制御装置50は、さらに、電力情報取得部61と、設定部62と、供給量決定部63と、供給先決定部64と、指示部65と、位置情報取得部66と、通知部67と、充放電スタンド決定部68と、記録部69と、付与部70とを備えている。制御装置50の各部51~70は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0020】
第1通信部51は、マイクログリッド100に接続されている施設22~25の電力管理端末22c~25cと通信可能に構成されている。第2通信部52は、後述する電動車両30のユーザ端末35と通信可能に構成されている。電力管理装置40は、例えば、インターネット等を含む通信網を介して事業所22、病院23、避難所24,25およびユーザ端末35と接続されていてもよい。
【0021】
電力管理装置40には、マイクログリッド100に接続されている複数の施設が登録されている。この実施形態では、電力管理装置40には、マイクログリッド100に接続されている施設として、上述した、事業所22、病院23および避難所24,25が、これらの位置情報と併せて登録されている。電力管理装置40には、位置情報以外の情報が登録されていてもよい。例えば、事業所22、病院23および避難所24,25の規模や、避難所24,25の暖房や冷房等の空調設備等の情報が登録されていてもよい。また、電力管理装置40には、マイクログリッド100に接続されている住宅等が登録されていてもよい。電力管理装置40は、これらの施設の電力管理端末22c~25cと第1通信部51を介して通信可能に構成されている。また、電力管理装置40には、電動車両30を充放電可能な充放電スタンド22b~25bが複数登録されている。電力管理装置40には、充放電スタンド22b~25bで充放電可能な電動車両30が予め登録されている。電動車両30は、ユーザを特定するID等の情報と併せて登録されている。施設22~25の位置情報や電動車両30の情報は、例えば、記憶部60に記憶されている。
【0022】
電力管理装置40は、マイクログリッド100の配電網20に接続されうる電動車両30のユーザ端末35とも通信可能に構成されている。この実施形態では、電力管理装置40は、第2通信部52を介して電動車両30のユーザが管理するユーザ端末35と通信可能に構成されている。ユーザ端末35は、例えば、電動車両30に搭載されたカーナビゲーションシステムであってもよいし、ユーザが使用するスマートフォン、タブレット端末、デスクトップ型やラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0023】
電力管理装置40は、アグリゲータとも称される管理者により管理される。管理者は、マイクログリッド100内の電力の需要と供給のバランスを保つように電力を管理しうる。電力管理装置40は、平常時には、マイクログリッド100内の蓄電装置22a~25aの電力を調整する等、電力が効率よく利用されるように電力の配分を制御しうる。電力管理装置40は、例えば、マイクログリッド100内の電力の需要と供給に合わせて、集中型電源からの電力調達、集中型電源から供給される電力の配分等を制御しうる。電力管理装置40は、電力の需要と供給に合わせて、電力余剰の施設22~25から電力不足の他の施設22~25に電力を供給させる等、電力バランスを制御しうる。
【0024】
また、災害等により大規模停電が発生するような非常時には、マイクログリッド100は、集中型電源に接続された電力系統から切り離される。その際、電力管理装置40は、マイクログリッド100内の電力を、優先度に応じて調整する。電力管理装置40では、電力の供給が必要な施設に電力が供給されるように、種々の処理が実行される。以下、非常時に電力管理装置40で実行される処理の一例について説明する。なお、以下では、適宜、電力の供給が必要な施設を需要施設、電力の供給が必要な需要施設に電力を供給する施設を供給施設とも称する。
【0025】
図3は、電力管理装置40で実行される処理の手順を示すフローチャートである。はじめに、電力管理装置40では、マイクログリッド100に接続されている予め登録された複数の施設(この実施形態では、事業所22、病院23および避難所24,25)からの入力に応じて、電力の供給が必要な需要施設と、当該需要施設に電力を供給する供給施設とを設定する処理が実行される。この実施形態では、需要施設と供給施設とを設定する処理は、予め登録された複数の施設からの電力情報を取得するステップS11(図3参照)と、取得された電力情報に基づいて、需要施設と供給施設を設定するステップS13(図3参照)とを含んでいる。
【0026】
図3のステップS11では、図2の電力情報取得部61は、マイクログリッド100に接続されている複数の施設22~25の電力情報D22~D25を取得する。この実施形態では、電力情報D22~D25は、各施設22~25の必要電力と、蓄電装置22a~25aに蓄えられている電力量や蓄電可能な電力量等の情報を含んでいる。電力情報D22~D25は、施設22~25の電力管理端末22c~25cから電力管理装置40に送信される。電力管理端末22c~25cから送信された電力情報D22~D25は、記憶部60に記憶される。なお、電力情報D22~D25は、例えば、蓄電装置22a~25aに蓄えられている電力や、再び集中型電源と接続され電力が安定して供給されるようになるまでに必要とされる電力等を含みうる。なお、電力情報D22~D25は、災害発生時に限らず、平常時に取得されていてもよい。例えば、電力情報取得部61は、電力情報D22~D25を一定の間隔で取得し、記憶部60に記憶されている電力情報D22~D25を随時更新できるように構成されていてもよい。
【0027】
ところで、病院23は、災害時に搬送される負傷者に対応するための医療設備を備えうる。また、病院23は、入院患者等に医療を提供するために、継続的な電力の供給が必要とされる医療設備を備えうる。そのため、災害時においても、他の施設と比較して必要電力が高くなりうる。また、避難所24,25には、災害時に避難者が集まる。避難者が多くなるほど多くの電力が必要となる。このため、避難所24,25も必要電力が高くなりうる。また、地域内に居住する居住者は、避難所24,25に避難しうる。このため、住宅等では必要電力が低くなりうる。また、災害時には、事業所22の形態にもよるが、事業の稼働が止められる場合もあるため、必要電力が低くなりうる。このため、災害時において、病院23および避難所24,25では、住宅や事業所22よりも必要電力が高くなりうる。
【0028】
次に、図3のステップS13では、図2の設定部62は、記憶部60に記憶された電力情報D22~D25を基に、需要施設と供給施設を設定する。この実施形態では、設定部62は、電力情報D22~D25に含まれる、各施設22~25の必要電力を比較する。設定部62は、必要電力が高い施設を需要施設に設定する。設定部62は、必要電力が低い施設を供給施設に設定する。この実施形態では、病院23および避難所24,25の必要電力は相対的に高く、事業所22の必要電力は相対的に低い。このため、設定部62によって、病院23および避難所24,25は、需要施設23~25として設定され、事業所22は、供給施設22として設定される。
【0029】
需要施設23~25では、当該施設の必要電力は適宜入力されてもよい。例えば、災害の発生から電力の復旧までに、病院23の電力状況は変わりうる。例えば、電力の復旧に想定以上に時間がかかった場合、想定以上に電力を消費した場合、病院23の非常用電源でも電力が不足する可能性がある場合等は、電力情報D23に含まれる必要電力は、適宜変更されうる。この実施形態では、電力管理端末23cは、病院23の必要電力を入力可能に構成されている。必要電力は、例えば、病院23の電力を管理する者等に入力されてもよく、電力使用履歴等に基づいて自動で入力されてもよい。電力管理端末23cで病院23の必要電力が入力されると、電力情報D23が更新される。電力管理装置40の電力情報取得部61は、第1通信部51を介して電力管理端末23cから、更新された必要電力を含んだ電力情報D23に含まれる必要電力を取得する。
【0030】
需要施設23~25では、当該施設のひっ迫度が入力されてもよい。この実施形態では、ひっ迫度は、避難者の人数や年齢構成等を基に算出される。例えば、避難所24,25の間では、各施設に避難する避難者の人数や年齢構成等は異なりうる。避難所24,25に避難する避難者が多いほど必要電力は高くなりうる。また、避難者のうち、子供や高齢者よりも大人の割合が高いほど必要電力は高くなりうる。このため、避難者の人数や年齢構成等を基に算出される各施設のひっ迫度は、必要電力に関する情報として電力情報D24,25に含まれうる。ひっ迫度の算出方法は特に限定されないが、この実施形態では、ひっ迫度は、避難者の人数と避難者の年齢とによって算出される。例えば、ひっ迫度は、0歳から小学生までの人数に1を乗じた値、中学生から65歳以下の人数に1.5を乗じた値、66歳以上の人数に1を乗じた値を加算した値で算出されてもよい。
【0031】
この実施形態では、避難所24,25それぞれのひっ迫度は、各施設の電力管理端末24c,25cにおいて入力される。ひっ迫度の入力手段は、特に限定されない。ひっ迫度は、例えば、避難所24,25の管理者によって電力管理端末24c,25cに入力されてもよく、避難所24,25それぞれの対象地域の居住者のデータベース等に基づいて自動で入力されてもよく、避難者が所有するスマートフォン等の端末の位置情報に基づいて自動で入力されてもよい。電力管理端末24c,25cで避難所24,25のひっ迫度が入力されると、電力情報D24,D25に反映される。電力管理装置40の電力情報取得部61は、第1通信部51を介して電力管理端末24c,25cから、ひっ迫度を含んだ電力情報D24,D25を取得する。取得された電力情報D24,D25は、記憶部60に記憶される。
【0032】
電力の供給が必要な需要施設23~25と、電力を供給する供給施設22とが設定されると、電力管理装置40では、供給施設22から需要施設23~25に電力を供給させる処理が実行される。この実施形態では、当該電力を供給させる処理は、需要施設23~25に供給する電力を決定するステップS15(図3参照)と、電力の供給先の需要施設23~25を決定するステップS17(図3参照)と、供給施設22に電力の供給を指示するステップS19(図3参照)とを含んでいる。
【0033】
図3のステップS15では、図2の供給量決定部63は、記憶部60に記憶された電力情報D22~D25を基に、需要施設23~25それぞれに供給する電力を決定する。需要施設23~25それぞれに供給される電力は、例えば、D23~D25に含まれる必要電力が充足されるような電力に決定される。
【0034】
なお、この実施形態では、電力情報D24,D25は、避難所24,25のひっ迫度を含んでいる。ここでは、避難所24,25に供給される電力は、それぞれのひっ迫度に基づいて決定されている。例えば、避難所24が避難所25と比較してひっ迫度の値が高い場合、ひっ迫度が高い避難所24には、ひっ迫度が低い避難所25と比較して多くの電力が供給される。供給量決定部63は、電力管理端末24c,25cで入力されたひっ迫度の比率に応じて避難所24,25に供給される電力を決定してもよい。
【0035】
次に、図3のステップS17では、供給先決定部64は、供給施設22からの電力の供給先を決定する。換言すると、供給先決定部64は、電力の配電経路を決定する。電力の供給元の供給施設22から電力の供給先の需要施設23~25の配電経路は、例えば、施設22~25の位置情報に基づいて定められる。施設22~25の位置情報は、例えば、電力管理装置40の記憶部60に登録されている。それぞれの施設を繋ぐ配電網20の配電線が短くなるように配電経路が決定されうる。例えば、必要電力が等しい需要施設23~25が複数ある場合には、供給施設22からの配電距離が短い需要施設23~25が優先して電力の供給先に決定されうる。これによって、電力の供給時の配電ロスを抑えることができ、電力が効率的に配分されうる。供給施設22のうち、1箇所の施設から供給される電力の供給先は1箇所に限られず、複数の需要施設23~25に電力が供給されてもよい。供給施設22から供給される電力の供給先および供給量は、配電距離や配電ロス率等に基づいて決定されうる。供給施設22から供給される電力の供給先および供給量は、例えば、マイクログリッド100全体での配電ロスが小さくなるように決定されることが好ましい。なお、すぐに需要施設23~25への電力の供給が必要ではない場合には、一旦、供給施設22の蓄電装置22aに電力が蓄えられてもよい。
【0036】
次に、図3のステップS19では、指示部65は、供給施設22に電力の供給を指示する。指示部65は、ステップS15で決定された供給量に基づいて、供給施設22の電力管理端末22cに電力の供給を指示する。この実施形態では、指示部65は、第1通信部51を介して電力管理端末22cに放電信号を送信する。電力管理端末22cには、放電信号の送信と同時に、供給量決定部63で決定された電力の供給量の情報が送信される。電力管理端末22cの図示しない制御装置が放電信号を受信すると、供給施設22の蓄電装置22aからマイクログリッド100へ電力の供給が開始される。マイクログリッド100へ供給された電力は、ステップS17で決定された電力の供給先に供給される。
【0037】
このように、需要施設23~25へ供給される電力は、供給施設22等から確保される。例えば、供給施設22の蓄電装置22aに蓄えられた電力や、供給施設22で発電される再生可能エネルギー等によって賄われうる。しかしながら、災害の被害状況、電力の復旧までの時間等によっては、これらの電力では需要施設23~25での必要電力を確保できない場合がある。
【0038】
この実施形態では、需要施設23~25への電力の供給が不足することが想定される場合には、電動車両30の車載電池に蓄えられている電力が活用される。電力管理装置40では、登録されている電動車両30のユーザに対して、充放電スタンド22b~25bで放電するように放電要請する処理がさらに実行される。また、この実施形態では、電力管理装置40では、放電要請された電動車両30が充放電スタンド22b~25bで放電したことを記録する処理と、記録された電動車両30のユーザに対し、放電量に応じたインセンティブを付与する処理とが実行される。
【0039】
図4は、電動車両30からマイクログリッド100に放電する手順を示すフローチャートである。この実施形態では、放電要請する処理は、電動車両30の位置情報を取得するステップS21と、電動車両30を充放電スタンド22b~25bに案内するステップS23とを含んでいる。
【0040】
図4のステップS21では、図2の位置情報取得部66は、電動車両30の位置情報を取得する。位置情報取得部66は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して電動車両30の位置情報を取得できるように構成されていてもよい。
【0041】
図4のステップS23では、図2の通知部67は、マイクログリッド100の配電網20に接続されている充放電スタンド22b~25bを電動車両30のユーザに通知する。通知部67は、第2通信部52を介してユーザ端末35に充放電スタンド22b~25bの位置情報を送信する。ユーザ端末35に通知された充放電スタンド22b~25bの位置情報は、例えば、ユーザ端末35の画面に表示される。電動車両30のユーザは、例えば、ユーザ端末35の画面に表示されたマップの表示に従って充放電スタンド22b~25bに案内される。
【0042】
図4のステップS23では、図2の通知部67は、充放電スタンド22b~25bのうち、電動車両30の位置情報と、需要施設23~25の位置情報とに基づいて定められた充放電スタンド22bに電動車両30のユーザを案内する。この実施形態では、通知部67は、図2の充放電スタンド決定部68が決定した案内先の充放電スタンド22bの位置情報をユーザ端末35に送信する。なお、ここでは、救急車や消防車等の救急車両の運行や避難者の速やかな避難を妨げないように、病院23および避難所24,25の充放電スタンド23b~25bは、案内先の充放電スタンド22bからは除かれている。
【0043】
ここで、通知部67が通知する充放電スタンド22bの位置情報は、図2の充放電スタンド決定部68で決定される。充放電スタンド決定部68は、位置情報取得部66が取得した電動車両30の位置情報と、予め登録されている需要施設23~25の位置情報とに基づき、案内先を決定する。案内先の充放電スタンド22bは、配電ロスを抑える観点から、需要施設23~25から配電距離が近いことが好ましい。また、案内先に向かうまでの電力消費を抑える観点から、案内先の充放電スタンド22bは、電動車両30から近いこと好ましい。充放電スタンド決定部68は、これらの位置情報に基づいて、案内先の充放電スタンド22bを決定する。
【0044】
なお、案内先の充放電スタンド22bは、1箇所に限られない。電動車両30のユーザが選択できるように、複数の充放電スタンド22bが案内先に決定されてもよい。また、充放電スタンド決定部68は、上記の電動車両30と需要施設23~25の位置情報に加えて、災害時の交通事情を加味して案内先の充放電スタンド22bを決定してもよい。充放電スタンド決定部68は、例えば、災害により道路環境が悪化している経路や、渋滞が発生している経路を通らないような充放電スタンド22bを案内先に決定できるように、これらの情報を取得できるように構成されてもよい。また、急な電力需要の変動に対応するため、充放電スタンド22bを備える事業所22のうち、多くの蓄電池を有するような大規模な蓄電装置22aに優先して電力が供給されることが好ましい。充放電スタンド決定部68は、記憶部60に記憶されている電力情報D22から蓄電可能な電力量の情報を取得できるように構成されていてもよい。
【0045】
上記の放電要請を受けた電動車両30のユーザは、ユーザ端末35に表示される案内先の充放電スタンド22bの中から、任意の充放電スタンド22bで電動車両30から放電させてもよい。電動車両30から放電された電力は、蓄電装置22aに蓄えられてもよく、配電網20を介して需要施設23~25に供給されてもよい。この実施形態では、電動車両30から電力を供給したユーザには、インセンティブが付与される。
【0046】
図4のステップS25では、図2の記録部69は、電動車両30が充放電スタンド22bに放電した放電実績を記録する。この実施形態では、記録部69は、電動車両30が充放電スタンド22bに放電したことと、放電量を記録する。電動車両30が充放電スタンド22bで放電した放電実績は、電力管理端末22cの図示しない制御部によって検知される。放電実績は、第1通信部51を介して電力管理装置40に送信され、記録部69によって記録される。
【0047】
図4のステップS27では、付与部70は、記録部69によって記録された放電実績に応じて電動車両30のユーザにインセンティブを付与する。インセンティブは、第2通信部52を介してユーザ端末35に送信される。電動車両30のユーザに付与されるインセンティブは、例えば、放電量が多いほど高いインセンティブが付与されるように構成されうる。
【0048】
なお、インセンティブは、放電要請を受けた電動車両30のユーザが、電動車両30からマイクログリッド100に電力を供給したことに対して得られる利益のことである。インセンティブの種類等は特に限定されない。インセンティブは、例えば、ポイント、クーポン、優待券、商品の取得、電気料金等の割引であってもよい。ここで、ポイントとは、電動車両30に充電する際の支払いに使用できるポイントであってもよい。クーポンとは、電動車両30に充電する際の割引クーポンであってもよい。インセンティブは、電動車両30からの放電後に即時に付与されてもよく、例えば、電力の復旧後等に付与されてもよい。インセンティブは、ユーザ端末35に送信されることに限られず、例えば、ユーザが利用可能なように、ユーザの情報に紐づけられて登録されてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、電力管理装置40は、マイクログリッド100に接続されている予め登録された複数の施設22~25からの入力に応じて、複数の施設22~25から、電力の供給が必要な需要施設23~25と、需要施設23~25に電力を供給する供給施設22とを設定する処理と、供給施設22から需要施設23~25に電力を供給させる処理とが実行されるように構成されている。施設22~25がマイクログリッド100に接続されていることによって、供給施設22から需要施設23~25に電力を供給させやすい。例えば、災害時には、道路環境等の交通事情が悪化したような場合にも、マイクログリッド100を介して速やかに電力を供給することができる。
【0050】
上述した実施形態では、需要施設24,25からの入力は、ひっ迫度を含んでいる。電力を供給させる処理では、ひっ迫度に基づいて需要施設24,25へ供給する電力を決定することを含んでいる。これによって、電力がより必要な需要施設24,25に優先して電力が供給されうる。その結果、マイクログリッド100内で効率的な電力の分配が実現されうる。
【0051】
上述した実施形態では、マイクログリッド100に接続され、電動車両30を充放電可能な充放電スタンド22b~25bが複数登録されている。電力管理装置40は、充放電スタンド22b~25bで充放電可能な予め登録された電動車両30のユーザに対して、充放電スタンド22b~25bで放電するように放電要請する処理がさらに実行されるように構成されている。電動車両30からの放電を要請することによって、需要施設23~25に供給される電力をより確保しやすくなる。
【0052】
上述した実施形態では、放電要請する処理は、電動車両30の位置情報を取得することと、電動車両30を、電動車両30の位置情報と、需要施設23~25の位置情報とに基づいて定められた充放電スタンド22bに案内することとを含んでいる。これによって、充放電スタンド22bに行くまでの電動車両30の電力の消費や、電動車両30からの放電後の配電ロスを抑制しうる。また、災害時に道路環境が悪化している場合や交通渋滞が発生している場合等において、交通事情を加味することができる。これによって、効率的に電動車両30からの電力供給を確保しうる。
【0053】
上述した実施形態では、電力管理装置40は、放電要請された電動車両30が充放電スタンド22bで放電したことを記録する処理と、記録された電動車両30のユーザに対し、放電量に応じたインセンティブを付与する処理とがさらに実行されるように構成されている。これによって、より多くの電動車両30のユーザが電力供給に参加することを促進しうる。その結果、需要施設23~25の必要電力が確保されやすくなる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、一例として、病院23および避難所24,25は需要施設23~25、事業所22は供給施設22として設定されている。しかしながら、かかる形態に限定されない。例えば、災害復旧事業を行う施設や、マイクログリッド100で接続された地域内の通信を維持するための電気通信施設等も需要施設に設定されうる。また、住宅等の施設が供給施設として設定されてもよい。需要施設と供給施設の設定は、マイクログリッドで接続された地域内の構成や、災害状況等によって変わりうる。
【0055】
以上、ここで開示される電力管理装置について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される電力管理装置は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【符号の説明】
【0056】
20 配電網
22 事業所(供給施設)
23 病院(需要施設)
24,25 避難所(需要施設)
22a~25a 蓄電装置
22b~25b 充放電スタンド
22c~25c 電力管理端末
30 電動車両
35 ユーザ端末
40 電力管理装置
50 制御装置
51 第1通信部
52 第2通信部
60 記憶部
61 電力情報取得部
62 設定部
63 供給量決定部
64 供給先決定部
65 指示部
66 位置情報取得部
67 通知部
68 充放電スタンド決定部
69 記録部
70 付与部
100 マイクログリッド
D22~D25 電力情報
図1
図2
図3
図4