(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103826
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】コークス炉燃焼室の異物破砕装置
(51)【国際特許分類】
C10B 43/04 20060101AFI20230720BHJP
B25D 17/20 20060101ALI20230720BHJP
B25D 9/04 20060101ALI20230720BHJP
B02C 1/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C10B43/04
B25D17/20
B25D9/04
B02C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004579
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古稲 明
(72)【発明者】
【氏名】大畑 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 良太
(72)【発明者】
【氏名】上山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】半田 圭
【テーマコード(参考)】
2D058
4D063
4H012
【Fターム(参考)】
2D058AA15
2D058CA03
2D058CB04
2D058DA25
4D063AA03
4D063GA08
4D063GA10
4D063GC21
4D063GC40
4D063GD04
4D063GD22
4H012FA00
(57)【要約】
【課題】コークス炉の燃焼室に棚掛又は堆積した異物を破砕するための異物破砕装置において、破砕工具の損傷を抑制し交換頻度の少ない異物破砕装置を提供する。
【解決手段】水冷ランス2と、水冷ランス2の先端に設けた水冷ジャケット3と、水冷ジャケット3内に設けた破砕工具本体41と、破砕工具本体41の先端に設けた先端工具42とを備える、コークス炉燃焼室の異物破砕装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷ランスと、この水冷ランスの先端に設けた水冷ジャケットと、この水冷ジャケット内に設けた破砕工具本体と、この破砕工具本体の先端に設けた先端工具とを備える、コークス炉燃焼室の異物破砕装置。
【請求項2】
前記破砕工具本体は圧縮空気によって駆動し、当該破砕工具本体の先端側に圧縮空気の排気口を有する、請求項1に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置。
【請求項3】
前記破砕工具本体はエアハンマーである、請求項1又は請求項2に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置。
【請求項4】
前記水冷ジャケットは、前記水冷ランスの先端に設けた仕切り壁と、この仕切り壁の先端側に設けた外管と、この外管の先端に設けた蓋とで構成されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置。
【請求項5】
前記破砕工具本体は前記仕切り壁と前記蓋とで保持されている、請求項4に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の燃焼室に棚掛又は堆積した異物を破砕する異物破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の燃焼室には異物が棚掛又は堆積し、底部孔からの昇温用ガスの流れを妨げ、温度調節機能を阻害することがある。そのため、安定して操業を続けるためには、適宜異物を吸引して除去する必要がある。異物を吸引装置で吸引するためには、吸引可能な大きさに破砕する必要があり、従来一般的にはコークス炉燃焼室の上部開口から長さ10m程度の鉄管を挿入し、人力で破砕を行っている。しかし、鉄管が1000℃程度のコークス炉燃焼室内で熱損傷するため、常に交換用鉄管を多数準備して破砕作業を行う必要がある。また、人力で破砕できない硬い異物については吸引して除去することができない。
【0003】
一方で特許文献1には、水冷ランスの先端に、異物を破砕するための叩き部、又は動力で回転する削り部を設けた異物破砕装置が開示されている。しかしながら、この異物粉砕装置においては、水冷ランスの先端に設けられている、叩き部や削り部といった破砕工具が高温となるため、損傷起因の交換頻度が高くなる。その結果、作業性が悪くなり、高コストになる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コークス炉の燃焼室に棚掛又は堆積した異物を破砕するための異物破砕装置において、破砕工具の損傷を抑制し交換頻度の少ない異物破砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は次の通りである。
1.
水冷ランスと、この水冷ランスの先端に設けた水冷ジャケットと、この水冷ジャケット内に設けた破砕工具本体と、この破砕工具本体の先端に設けた先端工具とを備える、コークス炉燃焼室の異物破砕装置。
2.
前記破砕工具本体は圧縮空気によって駆動し、当該破砕工具本体の先端側に圧縮空気の排気口を有する、前記1に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置。
3.
前記破砕工具本体はエアハンマーである、前記1又は2に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置
4.
前記水冷ジャケットは、前記水冷ランスの先端に設けた仕切り壁と、この仕切り壁の先端側に設けた外管と、この外管の先端に設けた蓋とで構成されている、前記1から3のいずれか一項に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置。
5.
前記破砕工具本体は前記仕切り壁と前記蓋とで保持されている、前記4に記載のコークス炉燃焼室の異物破砕装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の異物破砕装置によれば、破砕工具の本体部分すなわち破砕工具本体が、水冷ジャケット内で冷却されるため、破砕工具の損傷が抑制されて交換頻度が少なくなる。そのため作業性が向上し、低コストとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態である異物破砕装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本発明の一実施形態である異物破砕装置1を縦断面で示している。また、
図2には異物破砕装置1の左側面、
図3には異物破砕装置1の右側面を示している。
異物破砕装置1は、水冷ランス2と、その先端に設けた水冷ジャケット3と、破砕工具4とを備えている。また、破砕工具4は、粉砕工具本体としてのエアハンマー41と、その先端に設けた先端工具としてのチゼル42とからなる。
この異物除去装置1は、
図1において左側が先端側で右側が後端側となり、使用時には左側を下にしてほぼ鉛直な状態で使用する。また、この異物除去装置1は実際には10m近くあるため、
図1では水冷ランス2の中間部分を省略して示している。
【0010】
水冷ランス2はステンレス製の円筒21よりなり、円筒21の内部にそれぞれ金属製の給水管22と圧縮空気供給管23を有している。また、水冷ランス2の先端側には仕切り壁31があって、仕切り壁31から先端側は水冷ジャケット3になっている。
【0011】
水冷ジャケット3は、仕切り壁31と、仕切り壁31の先端側に設けた円筒状の外管32と、外管32の先端に設けた蓋33とで構成され、これらはステンレス製である。蓋33は、その中央部に円筒状の内管331を有している。また、これらの接続部は冷却水が漏れないように溶接によって固定、又はOリングでシールされている。
【0012】
内管331の内側には、円柱状のエアハンマー41の中央部よりも先端側が、図示していないOリングを介して保持されている。これにより、内管331とエアハンマー41との間の隙間から冷却水が漏れないようになっている。また、エアハンマー41の後部411は仕切り壁31に螺合することで保持され、仕切り壁31ではエアハンマー41の圧縮空気導入部412に圧縮空気供給管23が接続されている。エアハンマー41は直接冷却水に触れるため水が浸入しないように必要な個所にシール処理をしている。
【0013】
一方、給水管22は仕切り壁31に接続され水冷ジャケット3内で開口している。また、
図2に示すようにエアハンマー41の先端面には4個の排気口413を有しており、この排気口413から圧縮空気が排気される。さらに、仕切り壁31には排水孔311が設けられている。排水孔311は
図1に表れていない排水孔と合わせて4箇所にある。また、水冷ランス2の後端側の蓋25には給水管22と圧縮空気供給管23が貫通し、さらに排水管24が設けられている。
【0014】
次に、異物破砕装置1の動きについて説明する。
給水管22から供給される冷却水は、給水管22の先端開口から水冷ジャケット3内に流入し、水冷ジャケット3内を循環して仕切り壁31の排水孔311から排出される。エアハンマー41は半分以上の部分が直接冷却水に接するため効率的に冷却され、使用時の温度を極めて低くすることができる。そのため、熱による損傷がほとんどなく、高寿命となる。排出孔311から排出された冷却水は水冷ランス内2を通って水冷ランス2を冷却して、水冷ランス2の後端側の蓋25に接続された排水管24から排出される。
【0015】
圧縮空気は圧縮空気供給管23を通ってエアハンマー41に供給され、エアハンマー41を駆動する。エアハンマー41を駆動した圧縮空気はエアハンマー41の先端面の排気口413から排出されて、チゼル42及び異物やその周囲を冷却する。このように圧縮空気によってチゼル44及び異物やその周囲が冷却されるため、チゼル44の熱による損傷を抑制し、高寿命とすることができる。
【0016】
ここで、本実施形態において破砕工具本体であるエアハンマー41は、圧縮空気を動力としてシリンダー内を往復運動するピストンが、先端に取り付けられた先端工具としてのチゼル42を連続で打撃することによる衝撃で異物の破砕やハツリ等を行う。チゼル42は着脱可能になっており、損傷した場合には新品に交換することができる。
なお、破砕工具本体としてはエアハンマー以外に、ドリルや研磨機等のエア回転工具を使用することもできる。
【符号の説明】
【0017】
1 異物破砕装置
2 水冷ランス
21 円筒
22 給水管
23 圧縮空気供給管
24 排水管
25 蓋
3 水冷ジャケット
31 仕切り壁
311 排水孔
32 外管
33 蓋
331 内管
4 破砕工具
41 エアハンマー(破砕工具本体)
411 エアハンマーの後部
412 圧縮空気導入部
413 排気口
42 チゼル(先端工具)