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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103834
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/42 20060101AFI20230720BHJP
   B41M 5/28 20060101ALI20230720BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20230720BHJP
   B41M 5/32 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B41M5/42 221
B41M5/28 220
B41M5/41 200
B41M5/42 211
B41M5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004594
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】西村 直哉
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026AA24
2H026BB46
2H026DD02
2H026DD32
2H026DD45
2H026DD53
2H026DD57
2H026EE05
2H026FF11
2H026FF15
(57)【要約】
【課題】画像部を形成した際に、該画像部に隣接する非画像部に発生するカブリが抑制された感熱記録材料を提供する。
【解決手段】光透過性支持体上に、該光透過性支持体に近い側から赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩および還元剤を含有する感熱記録層、および微粒子を含有する保護層をこの順に有し、該微粒子が、熱伝導率が6.5W/(m・K)以下である物質を主に含有する球状微粒子である感熱記録材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性支持体上に、該光透過性支持体に近い側から赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩および還元剤を含有する感熱記録層、および微粒子を含有する保護層をこの順に有し、該微粒子が、熱伝導率が6.5W/(m・K)以下である物質を主に含有する球状微粒子である感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線レーザーの照射により画像を形成することができる感熱記録材料に関し、特に版下材料の作製に好適な感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
版下材料の作製に用いられる高画質な画像記録方法として、ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法が長く一般的に用いられてきた。しかしながら、湿式処理を伴う画像形成方法では現像液や定着液等の廃液処理が必要で環境負荷が大きい事から、湿式処理を必要としない乾式の画像形成方法が種々検討されている。ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法と同等の、高いコントラストを得ることができる乾式の画像形成方法としては、支持体上に感熱記録層を有する感熱記録材料にサーマルヘッドあるいは赤外線レーザーを用いて画像形成する方法が挙げられる。その中でも、高密度記録、高画質記録ができる観点から、赤外線レーザーを用いた感熱記録方式が優位である。
【0003】
赤外線レーザーの照射により画像を形成する感熱記録材料としては、例えば特開平6-194781号公報(特許文献1)に高濃度の画像を記録できる、熱的に還元可能な銀源、銀イオン用還元剤、約500~1100nmの波長範囲のレーザーを吸収する染料、及び重合性結合剤を含有する感熱記録材料が開示されている。
【0004】
このような感熱記録材料を版下材料として使用する場合、画像記録層側の表面が粗面化された感熱記録材料を用いることで、感光材料との真空密着を容易にする(バキューム性を向上させる)効果が得られることが知られている。粗面化された感熱記録材料としては、画像記録層側の最外層に微粒子を含有する感熱記録材料が一般的であり、例えば上述した特許文献1には、画像形成層上にワックスやシリカ粒子を含有する付着防止層を利用できることが記載されている。特開1998-29377号公報(特許文献2)には、支持体上に、有機銀塩、有機銀塩の現像剤、赤外線吸収色素、および水溶性バインダーを含有する感熱層を有する赤外レーザー用感熱記録材料が記載され、感熱層上に顔料を含有する保護層を利用できることが記載されている。また特開2002-311535号公報(特許文献3)には、艶消剤として不定形シリカ微粒子を含有するバリヤー層を利用できることが記載されている。
【0005】
しかし、最外層に微粒子を含有する、熱的に還元可能な銀源を利用した感熱記録材料に赤外線レーザーを照射して画像を形成すると、画像部に隣接する非画像部に意図しない黒点(斑点)、いわゆるカブリが生じる場合があった。また最外層に微粒子を含有し、かつ画像記録層中に赤外線吸収色素や熱変換色素を含有する感熱記録材料では、上述したカブリが更に顕著になる場合があった。版下材料においては画像の再現性は最重要であり、改善が求められていた。
【0006】
他方、特開昭59-174389号公報(特許文献4)には、サーマルヘッドを用いて画像形成する、動的発色感度が高い感熱記録材料として、特定の熱伝達率を有するフィラーと水溶性高分子結合剤を含有する保護層を有する感熱記録材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-194781号公報
【特許文献2】特開1998-29377号公報
【特許文献3】特開2002-311535号公報
【特許文献4】特開昭59-174389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、画像部を形成した際に、該画像部に隣接する非画像部に発生するカブリが抑制された感熱記録材料を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題は、以下の発明により解決される。
光透過性支持体上に、該光透過性支持体に近い側から赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩と還元剤を含有する感熱記録層、および微粒子を含有する保護層をこの順に有し、該微粒子が、熱伝導率が6.5W/(m・K)以下の物質を主に含有する球状微粒子である感熱記録材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、画像部を形成した際に、該画像部に隣接する非画像部に発生するカブリが抑制された感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0012】
本発明の感熱記録材料は、後述する光透過性支持体上に、該光透過性支持体に近い側から赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩および還元剤を含有する感熱記録層、および微粒子を含有する保護層をこの順に有する。これにより、例えば特許文献2に記載されるような赤外線吸収色素を感熱記録層中に含有する感熱記録材料と比較して、本発明の感熱記録材料では、画像部を形成した際に、該画像部に隣接する非画像部に発生するカブリを抑制することができる。
【0013】
本発明の感熱記録材料が有する光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、硝酸セルロース、ポリカーボネート等の樹脂フィルムや、ガラス等の無機材料等が挙げられる。なお、本発明において光透過性支持体とは、全光線透過率が60%以上である支持体を意味し、更に好ましくは70%以上である。また該光透過性支持体のヘーズ値は10%以下である事が好ましい。該光透過性支持体は易接着層、ハードコート層、帯電防止層等の公知の層を有していてもよい。本発明における光透過性支持体の厚みは特に規定されるものではないが、ハンドリング性の観点から50~300μmである事が好ましい。
【0014】
本発明において感熱記録材料が有する赤外線吸収層は、赤外線吸収色素を含有する。本発明における赤外線吸収色素は、赤外線を吸収する公知の化合物を意味する。中でも、600~1500nmの波長領域に吸収を有する色素である事が好ましく、650~1100nmの波長領域に吸収極大を有する色素がより好ましく、750~1100nmの波長領域に吸収極大を有する色素が更に好ましい。また、本発明における赤外線吸収色素は、版下原稿の作製に好適な高コントラストな画像が形成可能な感熱記録材料が得られる事から、高圧水銀ランプやケミカルランプの紫外線領域における発光ピークが存在する350~450nmの波長領域における吸収が上述した600~1500nmの波長領域の吸収と比べてできる限り小さい事が好ましい。具体的には600~1500nmの波長領域の吸収極大における吸光度ε1と、350~450nmの波長領域の吸収極大における吸光度ε2の比ε1/ε2が4.0以上である事が好ましい。このような色素としてはスクアリリウム、シアニン、メロシアニン、ビス(アミノアリール)ポリメチン等のポリメチン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には以下の一般式(1)~(3)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
【化1】
【0016】
一般式(1)~(3)中、R~R10は置換基であり、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基等が例示される。これらはそれぞれ同じ置換基でも異なる置換基であってもよく、また他の置換基と結合して環構造を形成していてもよい。またXは負の電荷を有する原子または原子団を表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン等のオキソ酸、テトラフルオロボレート、ヘキサフロオロホスフェート、アルキル及びアリールスルホナート等が挙げられる。具体的には以下の例示化合物(1)~(7)のような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
ε1及びε2の測定方法としては、赤外線吸収色素の2-ブタノン溶液を調製し、紫外可視分光光度計UV-2600((株)島津製作所製)を用いて、光路長1cmの石英セルを使用して該溶液の吸収スペクトルを測定する方法を例示できる。
【0020】
赤外線吸収層における赤外線吸収色素の含有量は、赤外線吸収層の全固形分に対して0.05~50質量%が好ましく、0.1~20質量%が更に好ましい。
【0021】
本発明において赤外線吸収層は上述した赤外線吸収色素と共にバインダー成分を含有する事が好ましい。かかるバインダー成分としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えばヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が例示される。これらのバインダー成分は水や有機溶媒に溶解して用いるか、疎水性ポリマー固体が微粒子の状態で分散しているラテックスやポリマー分子がミセルを形成し分散しているものを用いてもよい。本発明においては、上述したバインダー成分は乾燥後に光透過性の被膜を形成するものが好ましい。またこれらのバインダー成分は必要に応じてお互いに相溶する樹脂を2種以上併用してもよい。
【0022】
赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素、バインダー成分以外に、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0023】
本発明において感熱記録材料が有する赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素、バインダー成分、及び赤外線吸収層が含有可能な添加剤、更に公知の溶剤を含有する赤外線吸収層塗布液を作製し、該赤外線吸収層塗布液を前述した光透過性支持体上に塗布、乾燥して形成する事が好ましい。また、該赤外線吸収層の塗布量は乾燥質量で0.01~8.0g/mが好ましく、0.05~5.0g/mが更に好ましい。
【0024】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層は、非感光性の有機銀塩を含有する。該有機銀塩は、後述する還元剤と共に加熱される事により還元されて銀画像を形成する。具体的には、熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(II)項、第29963(XVI)項に記載されているような没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の有機酸の銀塩;1-(3-カルボキシプロピル)チオ尿素、1-(3-カルボキシプロピル)-3,3-ジメチルチオ尿素等のカルボキシアルキルチオ尿素の銀塩;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類とサリチル酸、安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、5,5-チオジサリチル酸等の芳香族カルボン酸との高分子反応生成物と銀との錯体;3-(2-カルボキシエチル)-4-ヒドロキシメチル-4-チアゾリン-2-チオン、3-カルボキシメチル-4-メチル-4-チアゾリン-2-チオン等のチオン類の銀塩または錯体;イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール、3-アミノ-5-ベンジルチオ-1,2,4-トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選ばれる含窒素複素環の銀塩または錯体;サッカリン、5-クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。これらのうち炭素数が10以上の脂肪酸銀が好ましく、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀が更に好ましい。
【0025】
本発明において感熱記録層が含有する非感光性の有機銀塩の含有量は、版下材料として使用するために必要な紫外光透過濃度によって適宜調整する事が可能であり、銀換算値として0.2~3.0g/mが好ましく、0.5~2.0g/mが更に好ましい。
【0026】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層は還元剤を含有する。かかる還元剤としては、ハイドロキノン、カテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、クロロヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン化合物、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、没食子酸ステアリル、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル等のポリヒドロキシ安息香酸化合物、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール等のアミノフェノール化合物、1-フェニル-3-ピラゾリドン及びその誘導体、ヒドロキシルアミン類、特開平06-317870号公報記載のポリヒドロキシインダン類や、特開2001-328357号公報記載のジヒドロキシ安息香酸誘導体が例示できる。上記した還元剤の中でも、ポリヒドロキシベンゼン化合物及びポリヒドロキシ安息香酸化合物が好ましい。
【0027】
感熱記録層における還元剤の含有量は、還元剤の種類や、有機銀塩の種類によって広範に変化しうるが、有機銀塩1モルあたり0.1~3.0モルである事が好ましく、0.5~2.0モルである事が更に好ましい。また種々の目的のために、上述した還元剤は2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層は、サーモグラフィまたはフォトサーモグラフィの分野において知られている、いわゆる色調剤を含有する事が好ましい。色調剤の例としては前出の熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(V)項、第29963(XXII)項等で公知であり、具体的にはフタルイミドに代表されるイミド類、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールに代表されるメルカプト化合物、フタラジン、フタラゾン、4-メチルフタル酸、テトラクロロフタル酸及びそれらの無水物に代表されるフタル酸誘導体、1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンに代表されるベンズオキサジン誘導体等が挙げられる。また種々の目的のために、上述した色調剤は2種以上を含有してもよい。
【0029】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層は画像銀の形成の抑制や促進、画像形成前後の感熱記録材料の保存性を向上させる等の目的で、様々な促進剤や安定剤及びそれらの前駆体を含有してもよい。具体的には写真用添加剤として知られているベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトラザインデン、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-ベンツアミド-3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール等から選ぶことができる。また種々の目的のために、上述した促進剤や安定剤及びそれらの前駆体は2種以上を含有してもよい。
【0030】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層はバインダー成分を含有する事が好ましい。かかるバインダー成分としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えば上述した赤外線吸収層のバインダー成分と同様の熱可塑性樹脂を好ましく含有することができる。また、バインダー成分は必要に応じてお互いに相溶する樹脂を2種以上含有してもよい。
【0031】
感熱記録層が含有するバインダー成分の含有量としては、感熱記録層の全固形分に対して10~70質量%が好ましい。
【0032】
上述したバインダー成分は、塩化物イオンや臭化物イオン等の遊離のハロゲン化物イオンを含有しない事が好ましい。ハロゲン化物イオンは有機銀塩の銀イオンと反応し、感光性のハロゲン化銀を形成するため、本発明の感熱記録材料の耐光性を低下させる原因となる。具体的にはバインダー成分の含有量に対して500ppm以下である事が好ましく、300ppm以下である事がより好ましく、100ppm以下である事が更に好ましい。
【0033】
感熱記録層は、上述した成分以外に紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0034】
本発明において感熱記録層は、前述した赤外線吸収層と隣接している事が好ましく、これにより赤外線レーザーの照射による画像の形成が効率的になり、高精細な画像を得ることができる。感熱記録層を形成する方法としては、上述した有機銀塩、還元剤、色調剤、バインダー成分、及び感熱記録層が含有可能な添加剤、更に公知の溶剤を含有する感熱記録層塗布液を作製し、該感熱記録層塗布液を前述した赤外線吸収層上に塗布、乾燥して形成する事が好ましい。また、該感熱記録層塗布液の塗布量は乾燥質量で2.0~30.0g/mが好ましく、5.0~20.0g/mがより好ましく、8.0~20.0g/mが更に好ましい。これにより画像部を形成した際に隣接する非画像部のカブリをより効果的に抑制することができる。
【0035】
本発明の感熱記録材料は、熱伝導率が6.5W/(m・K)以下である物質を主に含有する球状微粒子を含有する保護層を有する。該保護層が前記した球状微粒子を含有することで、感熱記録材料のバキューム性を向上させることができ、版下材料として好適な感熱記録材料を作製することができる。
【0036】
また、上述した球状微粒子は熱伝導率が6.5W/(m・K)以下である物質を主に含有することで、画像部を形成した際に隣接する非画像部のカブリを抑制することができる。なお、本発明において主に含有するとは、微粒子の全質量に対して50質量%以上が該物質から構成されることを意味し、好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。熱伝導率が6.5W/(m・K)以下である物質のうち、有機系微粒子としては、シリコーン樹脂(熱伝導率0.16W/(m・K))、ポリメチルメタクリレート(熱伝導率0.21W/(m・K))、低密度ポリエチレン(熱伝導率0.33W/(m・K))、高密度ポリエチレン(熱伝導率0.48W/(m・K))、ポリスチレン(熱伝導率0.12W/(m・K))等が例示され、無機系微粒子としては、チタニア(熱伝導率4.0W/(m・K))、ジルコニア(熱伝導率3.0W/(m・K))、非晶質シリカ(熱伝導率1.35W/(m・K))、マイカ(熱伝導率0.5W/(m・K))等が例示されるが、これらに限定されない。
【0037】
画像部を形成した際に隣接する非画像部のカブリをより効果的に抑制できることから、熱伝導率が6.5W/(m・K)以下の物質の熱伝導率は2.2W/(m・K)以下であることが好ましい。また、熱伝導率が6.5W/(m・K)以下の物質の熱伝導率の下限は、0.06W/(m・K)以上であることが好ましい。0.06W/(m・K)未満であると、赤外線レーザーを照射して画像形成を行う際に、画像が欠落する場合がある。よって、本発明において熱伝導率が6.5W/(m・K)以下の物質の熱伝導率は0.06~2.2W/(m・K)であることが特に好ましい。
【0038】
熱伝導率が6.5W/(m・K)以下の物質の熱伝導率の測定方法としては、ASTM E1530:2006に記載される熱流計法、JIS R1611:2010に記載されるレーザーフラッシュ法が例示できる。また、微粒子が含有する物質の熱伝導率として、化学便覧基礎編 改訂四版((公社)日本化学会編)や、電子機器・部品用放熱材料の高熱伝導化および熱伝導性の測定・評価技術((株)技術情報協会編)等の文献に記載された公知の値を用いることもできる。
【0039】
本発明における保護層が含有する上記微粒子は球状の微粒子である。該微粒子が球状であることで、画像部を形成した際に隣接する非画像部に発生するカブリを効果的に抑制することができる。上述したような微粒子の市販品としては例えば、シリコーン樹脂の微粒子であるトスパール(登録商標)シリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製)や、低密度ポリエチレンの微粒子であるフロービーズ(登録商標)シリーズ(住友精化(株)製)や、ポリスチレンの微粒子であるSXシリーズ(綜研化学(株)製)や、非晶質シリカの微粒子であるサンスフェア(登録商標)シリーズ(AGCエスアイテック(株)製)等を例示することができる。また、ジルコニアを主に含有する球状微粒子は、公知の合成方法、例えば、特開平03-232724号公報に記載されたゾル-ゲル法等により得ることができる。これらは単一の微粒子であるが、微粒子の形態としては単一の微粒子及び微粒子が集合した微粒子集合体粒子のいずれを用いてもよい。
【0040】
保護層が含有する微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは2.0~20μmであり、より好ましくは2.0~16μmである。これにより画像部を形成した際に隣接する非画像部のカブリを抑制することができる。平均粒子径としてはレーザー回折・散乱式粒度分布測定にて求められる体積基準の算出値を用いることができる。具体的には、マイクロトラック・ベル(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定器MT3000IIを用いて測定する方法が例示できる。
【0041】
保護層における微粒子の含有量は、バキューム性を向上させる目的で保護層の全固形分に対して0.5質量%以上である事が好ましく、1質量%以上である事がより好ましい。また、画像部を形成した際に隣接する非画像部のカブリを抑制する観点から、保護層の全固形分に対して15質量%以下であることが好ましい。よって、保護層の全固形分に対して1~15質量%であることが特に好ましい。
【0042】
保護層を形成するにあたり、微粒子は後述する保護層塗布液中に分散させて用いる事が好ましく、微粒子の分散にはホモディスパーのような高速攪拌機が適している。
【0043】
保護層が含有する、上述した微粒子以外の成分や保護層の形成方法は特に限定されないが、耐薬品性の観点から多価イソシアネート化合物を含有する保護層塗布液を塗布して形成する事が好ましい。上述した多価イソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である事が好ましく、例えばジメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族多価イソシアネート化合物や、トリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチルベンゾール-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート等の芳香族多価イソシアネート化合物や、これらのうち単独または2種類以上の多価イソシアネート化合物が2量体または3量体を形成したアダクト体、またはこれらの多価イソシアネート化合物と2価または3価のポリオールとが反応したアダクト体等が挙げられる。またこれらのうち、脂肪族多価イソシアネート化合物としてはヘキサメチレンジイソシアネート及びそのアダクト体が好ましく、芳香族多価イソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネート及びそのアダクト体が好ましい。なお、これらの多価イソシアネート化合物は種々の目的によって単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのような多価イソシアネート化合物はイソシアネート系架橋剤として一般的に販売されている製品をそのまま用いる事ができ、具体的な製品名としては三井化学(株)製のタケネート(登録商標)シリーズ、DIC(株)製のバーノック(登録商標)シリーズ、東ソー(株)製のコロネート(登録商標)シリーズ等を挙げることができる。
【0044】
本発明における保護層塗布液が含有することができる多価イソシアネート化合物の含有量は、保護層塗布液の全固形分に対して50~95質量%である事が感熱記録材料の表面の耐アルコール性が優れる事から好ましく、55~90質量%である事がより好ましく、59~80質量%である事が更に好ましい。
【0045】
本発明における保護層は、上述した多価イソシアネート化合物とともにバインダー成分として高分子化合物を含有する事が好ましい。該高分子化合物としては、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有している事が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等のポリビニルアルコール誘導体や、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体や、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等に代表される多価アルコールと種々モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの高分子化合物は、種々の目的によって単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。またこれらのうち、アクリルポリオールを用いることが更に好ましく、市販されているアクリルポリオールとしてはアクリディック(登録商標)シリーズ(DIC(株)製)や、#6000シリーズ(大成ファインケミカル(株)製)が例示される。従って、本発明における保護層はアクリルポリオールと多価イソシアネートが反応したアクリルウレタン樹脂を好ましく含有することができる。
【0046】
本発明において保護層は、上述した多価イソシアネート化合物、高分子化合物、微粒子以外に、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、還元剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0047】
本発明において感熱記録材料が有する保護層は、上述した多価イソシアネート化合物、高分子化合物、微粒子、添加剤、および公知の溶剤を含有する保護層塗布液を作製し、該保護層塗布液を感熱記録層上に塗布、乾燥して形成することが好ましい。本発明における保護層の塗布量は、用いる高分子化合物の種類や求められる感熱感度により広範に変化しうるが、乾燥質量で0.5~10g/mが好ましく、1.0~8.0g/mがより好ましい。また、前述した熱伝導率が6.5W/(m・K)以下の物質を主に含有する球状微粒子の平均粒子径に対して、保護層の乾燥膜厚が0.7~1.4倍の範囲にあることが、バキューム性が優れ、かつハンドリング中の微粒子欠落が抑制されることから好ましい。なお、本発明における保護層の乾燥膜厚には保護層から突き出した微粒子の高さは含めない。
【0048】
本発明において、上述した赤外線吸収層塗布液、感熱記録層塗布液、及び保護層塗布液の塗布方法については特に制限はなく、E.D.Cohen,E.B.Gutoff,“Modern Coating and Drying Technology”,WILEY-VCH,Inc.New York,1992に記載されているような各種の塗布方法から選択することができる。更にスリット型ダイコーターを用いたスライド塗布方式や、同種、あるいは異種のコーター装置を組み合わせて塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗布方式によって複数の層を同時に塗布する事は、生産性を向上させる意味でも特に好ましい。
【0049】
本発明において感熱記録材料は更に必要に応じて、上述した赤外線吸収層、感熱記録層、及び保護層に加えて、光透過性支持体と赤外線吸収層との間に易接着層や断熱層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、及び保護層のそれぞれの層の間に中間層等を設けたり、保護層上に易剥離層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、及び保護層を有する光透過性支持体の面の反対の面に帯電防止層等を設けたりする事もできるが、上述したように高精細な画像を得る観点から赤外線吸収層と感熱記録層は隣接している事が好ましい。また版下材料として用いる場合に画像記録層を通過した光が屈折や拡散することを抑制するために、感熱記録層と保護層は隣接していることが好ましく、また光透過性支持体から見て感熱記録層側の面の最外層は保護層であることが好ましい。
【0050】
上述した感熱記録材料を用い、該感熱記録材料の保護層側から画像様に赤外線レーザーを照射する事により画像を得ることができる。該赤外線レーザーの光源としては、半導体レーザー、He-Neレーザー、Arレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー等が挙げられる。本発明における感熱記録材料は、照射する赤外線レーザーのエネルギー及び露光時間を変える事により、画像部の濃度を変化させることができる。赤外線レーザーを照射する方法としては、フレキソ印刷版やオフセット印刷版の製版等に用いられるサーマルCTPセッターを使用することができる。サーマルCTPセッターとしては、AURAシリーズ(Guangzhou Amsky Technology Co Ltd製)、Trendsetter(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、Achieve(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、等が例示される。
【0051】
本発明の感熱記録材料は上述のようにして画像を得た後、フレキソ印刷版やスクリーン印刷版等の印刷版を製版する際に用いられる遮光用のマスク材料、いわゆる版下材料として好適に用いることができるが、他の用途、例えばフォトリソグラフィーにおけるフォトマスクとして用いることもできる。尚、この記述により本発明が限定されるものではない。
【実施例0052】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、この記述により本発明が限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
【0054】
<赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布>
2-ブタノン81.0g、メタノール24.0gに、ポリビニルブチラール(Butvar(登録商標)B-79、イーストマンケミカルジャパン(株)製)9.0g、赤外線吸収色素として例示化合物(5)(IRT、昭和電工(株)製、ε1/ε2=6.2)0.45gを加えて赤外線吸収層塗布液とした。厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムベース(全光線透過率92%、ヘーズ値4%)上に、この赤外線吸収層塗布液を乾燥質量が1.0g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、60℃にて1分間乾燥させ赤外線吸収層を形成した。
【0055】
<ベヘン酸銀分散液の調製>
ベヘン酸銀結晶20.0g、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)22.0gを175gの2-ブタノンに加え、直径0.65mmのジルコニアビーズを充填したビーズミル装置(DYNO-MILL KD20B型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いてベヘン酸銀分散液(平均粒子径0.8μm)を得た。
【0056】
<感熱記録層塗布液の調製及び塗布>
2-ブタノン45.0gに、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)4.2g、上述したベヘン酸銀分散液91.2g、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル5.0g、テトラクロロフタル酸無水物0.1g、フタラゾン1.9g、フマル酸0.40gを加えて感熱記録層塗布液とした。上述のようにして既に得られた赤外線吸収層上に、この感熱記録層塗布液を乾燥質量が13.0g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させ感熱記録層を形成した。
【0057】
<保護層塗布液の調製及び塗布>
トルエン25.7gに、アクリディック(登録商標)WFU-289(DIC(株)製;アクリルポリオール樹脂、固形分50質量%)11.4gを溶解させたのち、非晶質シリカ(熱伝導率1.35W/(m・K))を主に含有する球状微粒子であるサンスフェアH-51(AGCエスアイテック(株)製;平均粒子径5.0μm)0.30gを加え、攪拌して全体を均一にした後、攪拌しながらコロネートHL(東ソー(株)製;ポリイソシアネート、固形分75質量%)14gを加えて保護層塗布液を得た。この保護層塗布液を上述した感熱記録層上に乾燥質量が4.0g/m(膜厚が4μm)となるようにワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させたのち40℃にて5日間加温して保護層を形成した。このようにして実施例1の感熱記録材料を得た。
【0058】
<実施例2>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりに非晶質シリカを主に含有する球状微粒子であるサンスフェアH-31(AGCエスアイテック(株)製;平均粒子径3.0μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を得た。
【0059】
<実施例3>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりに非晶質シリカを主に含有する球状微粒子であるサンスフェアH-121(AGCエスアイテック(株)製;平均粒子径12.0μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例3の感熱記録材料を得た。
【0060】
<実施例4>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりに非晶質シリカを主に含有する球状微粒子であるサンスフェアH-201(AGCエスアイテック(株)製;平均粒子径20.0μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例4の感熱記録材料を得た。
【0061】
<実施例5>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりにシリコーン樹脂(熱伝導率0.16W/(m・K))を主に含有する球状微粒子であるトスパール145(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製;平均粒子径4.5μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例5の感熱記録材料を得た。
【0062】
<実施例6>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりに低密度ポリエチレン樹脂(熱伝導率0.33W/(m・K))を主に含有する球状微粒子であるフロービーズLE-1080(住友精化(株)製;平均粒子径6.0μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例6の感熱記録材料を得た。
【0063】
<実施例7>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりにポリスチレン樹脂(熱伝導率0.12W/(m・K))を主に含有する球状微粒子であるSX-500H(綜研化学(株)製;平均粒子径5.0μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例7の感熱記録材料を得た。
【0064】
<実施例8>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりにジルコニア(熱伝導率3.0W/(m・K))を主に含有する球状微粒子(平均粒子径5.1μm)を、ジルコニウム水和物の水溶液を用いてゾル-ゲル法により作製し、これを0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例8の感熱記録材料を得た。
【0065】
<実施例9>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の添加量を0.04gにして保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例9の感熱記録材料を得た。
【0066】
<実施例10>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の添加量を0.12gにして保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例10の感熱記録材料を得た。
【0067】
<実施例11>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の添加量を1.8gにして保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例11の感熱記録材料を得た。
【0068】
<実施例12>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の添加量を4.1gにして保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして実施例12の感熱記録材料を得た。
【0069】
<実施例13>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、保護層塗布液を乾燥質量が8.5g/m(膜厚が8.5μm)となるようにワイヤーバーを用いて塗布した以外は実施例1と同様にして実施例13の感熱記録材料を得た。
【0070】
<実施例14>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、保護層塗布液を乾燥質量が5.5g/m(膜厚が5.5μm)となるようにワイヤーバーを用いて塗布した以外は実施例1と同様にして実施例14の感熱記録材料を得た。
【0071】
<実施例15>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、感熱記録層塗布液を乾燥質量が6.0g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した以外は実施例1と同様にして実施例15の感熱記録材料を得た。
【0072】
<実施例16>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、感熱記録層塗布液を乾燥質量が10.0g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した以外は実施例1と同様にして実施例16の感熱記録材料を得た。
【0073】
<比較例1>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりに結晶性シリカ(熱伝導率10W/(m・K))を主に含有する球状微粒子(平均粒子径10.8μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして比較例1の感熱記録材料を得た。
【0074】
<比較例2>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりにアルミナ(熱伝導率29W/(m・K))を主に含有する球状微粒子であるアルナビーズ(登録商標)CB-P05(昭和電工(株)製;平均粒子径4.0μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして比較例2の感熱記録材料を得た。
【0075】
<比較例3>
実施例1において、赤外線吸収層を塗布せず、感熱記録層塗布液に例示化合物(5)0.12gを加えてPETベース上に塗布した以外は実施例1と同様にして比較例3の感熱記録材料を得た。
【0076】
<比較例4>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、サンスフェアH-51の代わりに非晶質シリカ(熱伝導率1.35W/(m・K))を主に含有する不定形微粒子であるシロイド(登録商標)378(GCPジャパン(株)製;平均粒子径5.5μm)を0.30g加えて保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして比較例4の感熱記録材料を得た。
【0077】
このようにして得られた実施例1~16及び比較例1~4の感熱記録材料を、サーマルCTPセッター(Guangzhou Amsky Technology Co Ltd製、AURA600E)を用いて、ドラム回転数300rpm、レーザー出力250mWの条件にて赤外線レーザーで露光し、50μmの細線(長さ200mm)を得た。
【0078】
<非画像部のカブリ評価>
上述のようにして画像を得た後、該画像のデータには存在していない黒点、すなわちカブリの発生数を、該画像を中心線とする一辺0.5mm四方の視野を光学顕微鏡(倍率500倍)で観察してカウントした。カブリは直径3~10μm大のものをカウントし、カブリが全く見られなかった場合を◎、返し特性に影響しない程度のごく薄いカブリが1~2個見られる場合を〇、返し特性に影響しない程度のごく薄いカブリが3~5個見られる場合を△、返し特性に影響するカブリが見られる場合を×として表1に示した。このうち、◎、〇、△を非画像部のカブリが抑制された感熱記録材料であるとした。
【0079】
<バキューム性評価>
実施例1~16及び比較例1~4の感熱記録材料の非画像部において、ベック平滑度試験機HK型(熊谷理機工業(株)製)を用いて、25℃50%RH、空気の流入量が1ccの条件下でベック平滑度を測定した。ベック平滑度が1~100secであったものを◎、101~500secであったものを〇、501sec以上であったものを△とした。
【0080】
【表1】
【0081】
表1の結果から明らかなように、本発明によって画像部を形成した際に、該画像部に隣接する非画像部に発生するカブリが抑制された感熱記録材料を得ることができる。