(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103846
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】検査支援装置、及び検査支援方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20230720BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20230720BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230720BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20230720BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20230720BHJP
【FI】
H04N7/18 B
H04N5/232 945
H04N5/232 941
G06T1/00 305C
G09G5/00 550C
G09G5/00 X
G09G5/00 510A
G01J5/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004609
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智哉
【テーマコード(参考)】
2G066
5B057
5C054
5C122
5C182
【Fターム(参考)】
2G066CA02
2G066CB05
2G066CB10
5B057AA20
5B057BA02
5B057CA13
5B057CB13
5B057DA01
5B057DA07
5B057DB03
5C054CA04
5C054CA05
5C054CA10
5C054CD03
5C054FA02
5C054FA07
5C054FE05
5C054FE13
5C054FE16
5C054FE28
5C054HA05
5C122DA12
5C122DA16
5C122EA47
5C122FH11
5C122FK28
5C122FK35
5C122FK41
5C122HB01
5C122HB05
5C182AA02
5C182AA03
5C182AB35
5C182AC02
5C182AC03
5C182AC34
5C182BA03
5C182BA04
5C182BA14
5C182BA28
5C182BA35
5C182BA47
5C182BA75
5C182BC25
5C182CB44
(57)【要約】
【課題】実空間の温度分布データを用いた検査支援が可能な検査支援装置、及び検査支援方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る検査支援装置は撮像部に撮像される検査対象物に対応する3次元モデルを配置する3次元モデル空間の座標系と、撮像部の座標系との位置合わせを行う位置合わせ部と、位置合わせに基づき、撮像部に撮像される現実空間の温度分布画像の温度データを検査対象物の表面に対応する3次元モデルの座標に関連付け、検査対象物の表面温度を検知する温度検出部と、温度データが基準となる温度を超えた領域を異常として検知する異常検知部と、基準となる温度を超えた領域に対応する回路、構成部材、及び配線の少なくともいずれかに関する図面情報を示す画像を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部に撮像される検査対象物に対応する3次元モデルを配置する3次元モデル空間の座標系と、前記撮像部の座標系との位置合わせを行う位置合わせ部と、
前記位置合わせに基づき、前記撮像部に撮像される現実空間の温度分布画像の温度データを前記検査対象物の表面に対応する前記3次元モデルの座標に関連付け、前記検査対象物の表面温度を検知する温度検出部と、
前記温度データが基準となる温度を超えた領域を異常として検知する異常検知部と、
前記基準となる温度を超えた領域に対応する回路、構成部材、及び配線の少なくともいずれかに関する図面情報を示す画像を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える検査支援装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記検査対象物の表面に前記図面情報を重畳して前記表示部に表示させる、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記現実空間の温度分布画像を撮像するサーモグラフィを有する、請求項1又は2に記載の検査支援装置。
【請求項4】
前記表示部及び前記撮像部は、ゴーグル型の頭部装着装置が有する、請求項3に記載の検査支援装置。
【請求項5】
前記表示部に表示する画像情報を含む画像信号を少なくとも送信する通信部を、更に備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検査支援装置。
【請求項6】
前記異常検知部は、前記温度データが前記基準となる温度を超えた領域の座標を検知し、
前記表示制御部は、前記座標に対応する回路、構成部材、及び配線のうちの少なくともいずれかに関する情報を示す画像を前記表示部に表示させる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検査支援装置。
【請求項7】
前記図面情報は、実装図、配線図、及びバック線図の少なくともいずれかに関する情報である、請求項6に記載の検査支援装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記異常検知部が異常を検知した場合に、前記検査対象物の内部構造の温度画像の撮像を指示する画像を前記表示部に表示させる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検査支援装置。
【請求項9】
前記異常検知部は、前記検査対象物の内部構造の前記温度データが前記基準となる温度を超えた領域の座標を検知し、
前記表示制御部は、前記座標に対応する回路情報を示す画像を前記表示部に表示させる、請求項8に記載の検査支援装置。
【請求項10】
撮像部に撮像される検査対象物に対応する3次元モデルを配置する3次元モデル空間の座標系と、前記撮像部の座標系との位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせに基づき、前記撮像部に撮像される現実空間の温度分布画像の温度データを前記検査対象物の表面に対応する前記3次元モデルの座標に関連付け、前記検査対象物の表面温度を検知する温度検知工程と、
前記温度データが基準となる温度を超えた領域を異常として検知する異常検知工程と、
前記基準となる温度を超えた領域に対応する回路、構成部材、及び配線の少なくともいずれかに関する図面情報を示す画像を表示部に表示させる表示制御工程と、
を備える検査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査支援装置、及び検査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理システムなどの電気設備を監視するために、測定対象の電流、電圧等を計測する計測器を取り付けている。しかし、電気設備は複雑な配線を有しており、異常箇所の検出に時間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、現実空間の温度分布データを用いた検査支援が可能な検査支援装置、及び検査支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る検査支援装置は撮像部に撮像される検査対象物に対応する3次元モデルを配置する3次元モデル空間の座標系と、撮像部の座標系との位置合わせを行う位置合わせ部と、位置合わせに基づき、撮像部に撮像される現実空間の温度分布画像の温度データを検査対象物の表面に対応する3次元モデルの座標に関連付け、検査対象物の表面温度を検知する温度検出部と、温度データが基準となる温度を超えた領域を異常として検知する異常検知部と、基準となる温度を超えた領域に対応する回路、構成部材、及び配線の少なくともいずれかに関する図面情報を示す画像を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本実施形態によれば、現実空間の温度分布データを用いた検査支援が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る検査支援装置の構成を示すブロック図。
【
図5】検査順の情報を現実物体の表面に重畳表示した画像例を示す図。
【
図6】次の撮影対象を示す画像例を模式的に示す図。
【
図7】温度分布画像を現実物体の表面に対応する座標に関連付ける処理を説明する概念図。
【
図8A】温度データを現実空間画像に重畳した画像例を模式的に示す図。
【
図8B】実装図を現実空間画像に重畳表示した例を示す画像。
【
図8C】実装図を液晶画面に表示した例を示す画像。
【
図8D】異常を検知した際に、液晶画面に表示される画像例。
【
図9A】温度データを制御盤内部の現実空間画像に重畳した画像例を模式的に示す図。
【
図9B】配線図像を、回路構成部の表面に重畳表示した例を示す画像。
【
図9D】異常を検知した際に、バック線図の情報が液晶画面210に表示される画像例。
【
図11】ステップS116の詳細な処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る検査支援装置、及び検査支援方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
【0010】
図1は、本実施形態に係る検査支援装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る検査支援装置1は、現実空間の温度分布データを用いて電気設備の検査支援が可能な装置である。この温検査支援装置1は、データ処理装置10と、第1操作部20と、表示部30と、頭部装着映像装置40と、第2操作部50とを備えて構成されている。
【0011】
データ処理装置10は、例えば、中央管理室に配置される。このデータ処理装置10は、例えばサーバーであり、現実物体に対応する3次元モデルを生成する。本実施形態に係る3次元モデルは、3次元モデル空間内に生成される。この3次元モデル空間の座標系は、現実空間の世界座標系に対応している。データ処理装置10の詳細な構成は後述する。
【0012】
第1操作部20は、データ処理装置10の操作に必要となる情報を入力する。この第1操作部20は、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイスなどにより構成される。
【0013】
表示部30は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。表示部30は、データ処理装置10により生成された各種の情報、及び頭部装着映像装置40が撮像している画像データを表示する。例えば、表示部30は、温度分布画像の少なくとも一部を、現実空間画像及び3次元モデルの画像の少なくとも一方と共に表示する。これにより、現実空間の検査対象における温度分布情報などを中央管理室側でもリアルタイムに把握可能となる。また、後述するように、音声の無線通信などにより、現場の観察状況に応じて、直接的に頭部装着映像装置40の装着者に指示などを出すことも可能である。
【0014】
頭部装着映像装置40は、例えばウェアラブルコンピュータであり、操作者の頭部に装着するゴーグル型の装置である。この頭部装着映像装置40は、現実空間に配置される現実物体の温度分布画像、及び現実空間画像を撮像し、世界座標系と対応させる。頭部装着映像装置40の詳細な構成は後述する。
【0015】
第2操作部50は、頭部装着映像装置40の操作に必要となる情報を入力する。この頭部装着映像装置40は、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイスなどにより構成される。
【0016】
ここで、データ処理装置10の詳細な構成を説明する。データ処理装置10は、処理部100と、通信部102と、スピーカ104と、マイク106と、を有する。処理部100は、CPUを含んで構成され、記憶部108に記憶されるプログラムを実行することにより、各部を構成する。この処理部100は、制御部107と、記憶部108と、配置モデル生成部110とを有する。なお、本実施形態では、データ処理装置10と頭部装着映像装置40とを分離して構成しているが、これに限定されない。例えば、データ処理装置10の処理部100を頭部装着映像装置40内に一体的に構成してもよい。
【0017】
通信部102は、例えば無線通信装置であり、頭部装着映像装置40と無線通信を行う。スピーカ104は、通信部102が頭部装着映像装置40から受信した音声信号を制御部107の制御にしたがい音声に変換する。マイク106は、例えば中央管理室内の管理者の音声を制御部107の制御にしたがい音声信号に変換し、通信部102を介して頭部装着映像装置40に送信する。
【0018】
制御部107は、データ処理装置10の各処理部を制御する。また制御部107は、記憶部108が記憶するプログラムを実行することにより、各処理部を構成する。
【0019】
記憶部108は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部108は、制御部107が実行するプログラムと、各種の制御用のデータを記憶する。
【0020】
図2は記憶部108が記憶する情報例を示す図である。
図2に示すように、記憶部108は、経路情報300と、空間モデル302と、外形情報304と、実装図情報306と、配線図情報308と、バック線図情報310と、温度分布情報312と、を有する。
【0021】
経路情報300は、作業支援処理で使用される経路情報である。経路情報300には、例えば、複数の制御盤の世界座標系における位置と向きを示す情報と、複数の制御盤の世界座標系での撮影位置、複数の制御盤の訪問順序を示す情報などを含んでいる。これらの複数の制御盤の世界座標系での位置と向きなどの情報を含む経路情報300は、例えばプラント内の配置情報を有する設計データから生成される。また、訪問順序、撮影位置などの情報は、管理者により予め設定されている。なお、本実施形態に係る経路情報300は、設計データから生成されるが、これに限定されない。例えば、プラント内の機器を撮像した3次元撮影画像データなどを用いて生成してもよい。また、本実施形態では検査支援の対象を、制御盤を例に説明するが、これに限定されない。例えば、テレビなどの家電製品、パソコンなどのように電気配線を有し、発熱する物体を検査支援の対象とすることが可能である。
【0022】
空間モデル302は、例えば検査対象となる複数の制御盤の3次元モデルの情報である。この3次元モデルの情報は、例えば、予め制御盤の実装図情報306等から三次元のボクセルデータとして配置モデル生成部110により構成されている。配置モデル生成部110の詳細は後述する。
【0023】
外形情報304、実装図情報306と、配線図情報308、及びバック線図情報310は、制御盤毎の回路情報例である。外形情報304は、制御盤の外形情報として、例えば外形の形状情報、及び外形を構成する各辺の寸法情報を有する。実装図情報306は、制御盤の回路を含む構成要素の配置情報である。実装図情報306は、例えば、各回路要素の座標情報と、回路要素の外形を構成する各辺の寸法を有する。配線図情報308は、実装図情報306に含まれる回路要素を接続する配線の情報を図表化した情報である。例えば、単線、複線の情報が図表化されている。バック線図情報310は、例えば制御盤端子の番号とケーブル心線端子の対応情報である。また、これらの図形情報の座標は、世界座標系の座標と予め対応づけられている。このような情報が、各検査対象別に予め記憶部108に登録されている。
【0024】
温度分布情報312は、2次元又は3次元の基準温度分布情報である。温度分布情報312は、外形情報304及び実装図情報306に含まれる各構成部の表面における正常範囲の温度分布情報が世界座標系の座標と関連付けられている。このように、これらの温度分布情報は、各回路要素などと予め関連付けられている。すなわち、記憶部108は、温度分布情報312として、現実の制御盤、構成回路などの表面に対応する座標に関連付けられた温度データを記憶する。これらの情報は、例えば正常動作している状態で、後述する撮像位置から予めサーモカメラにより撮像され、登録されている。
【0025】
図3は、配置モデル生成部110が生成した世界座標系300Zにおける複数の制御盤の3次元モデル320を模式的に示す図である。再び
図1に示すように、配置モデル生成部110は、経路情報300に含まれる複数の制御盤400の世界座標系での位置と向きを示す情報と、外形情報304に含まれる複数の制御盤の外形情報を用いて、世界座標における複数の制御盤の3次元モデルを上述の空間モデル302として生成する。そして、配置モデル生成部110は、記憶部108に生成したモデルを記憶する。空間モデル302は、例えば3次元空間内の複数の点に対応するボクセルデータとして生成される。すなわち、空間モデル302の各ボクセルが世界座標系での3次元座標の情報を有する。
【0026】
ここで、頭部装着映像装置40の詳細な構成を説明する。再び
図1に示すように、頭部装着映像装置40は、処理部200と、通信部202と、位置センサ204と、撮像部205と、スピーカ208と、マイク209と、液晶画面210とを有する。処理部200は、CPUを含んで構成され、記憶部214に記憶されるプログラムを実行することにより、各部を構成する。また、処理部200は、温度異常のある箇所を抽出し、操作者に指示する。処理部200は、制御部212と、記憶部214と、位置合わせ部216と、画像生成部218と、表示制御部220と、機器温度検出部222と、異常検知部224とを、有する。なお、処理部200の詳細は後述する。なお、本実施形態に係る液晶画面210が表示部に対応し、機器温度検出部222が温度検出部に対応する。
【0027】
通信部202は、例えば無線通信が可能な無線装置である。この通信部202は、頭部装着映像装置40が有する情報をデータ処理装置10に無線通信により供給する。
【0028】
位置センサ204は、頭部装着映像装置40の世界座標系での位置座標と、頭部装着映像装置40の向き及び姿勢を検知する。例えば、位置センサ204は、GPSセンサと6軸センサにより構成される。
【0029】
撮像部205は、撮像カメラ206とサーモカメラ207とを有する。撮像カメラ206は、例えばデジタルカメラであり、可視画像を撮影する。これにより、頭部装着映像装置40の視点位置からみた現実空間の画像を撮像することが可能である。この撮像カメラ206が撮像した画像は、記憶部214に記憶される。
【0030】
サーモカメラ207は、例えば赤外線サーモグラフィの撮像が可能であり、温度分布画像を撮像する。すなわち、温度分布画像データの各画素値は温度に対応する。また、サーモカメラ207の光軸及び撮像カメラ206を例えばZ軸とする。さらにまた、サーモカメラ207のイメージセンサの撮像面をX-Y平面に平行に配置する。このサーモカメラ207が撮像した画像は、記憶部214に記憶される。
【0031】
本実施形態に係る撮像カメラ206とサーモカメラ207とは、光軸が一致しており、赤外線サーモグラフィを構成している。これにより、赤外画像である温度分布画像と、可視画像である現実空間画像と、温度分布画像と現実空間画像との合成画像とを、撮像可能である。なお、本実施形態に係る撮像カメラ206とサーモカメラ207とは、赤外線サーモグラフィを構成するが、これに限定されず、温度分布画像と現実空間画像とが撮像できるカメラらなら他の形態のカメラでもよく、例えばサーマルイメージと、デジタルカメラの組み合わせでもよい。
【0032】
スピーカ208は、通信部202がデータ処理装置10から受信した音声信号を音声に変換する。マイク209は、例えば頭部装着映像装置40の装着者の音声を音声信号に変換し、通信部202を介してデータ処理装置10に送信する。このように、中央監視室側と常時通信を行うことが可能であり、撮像部205の撮像した画像を共有することで、検査対象の情報を供給した相互コミュニケーションが可能となる。
【0033】
液晶画面210は、使用者の視点位置から観察された撮像部205による現実空間画像と、使用者の視点位置から観察される仮想オブジェクト画像、温度データなどの画像とを重畳表示することが可能である。液晶画面210は、例えば頭部装着型ディスプレイである。また、液晶画面210を光学シースルー方式によって実現してもよい。例えば、光学シースルー型液晶ディスプレイに、観察者の視点の位置および姿勢に応じて生成した、例えば温度分布画像、仮想オブジェクト画像を表示することにより実現される。この場合には、現実空間の画像ではなく、実際の現実空間に重なるように温度分布画像、仮想オブジェクト画像が重畳される。また、液晶画面210は、データ処理装置10から供給される情報などを、現実空間とは独立に表示させることも可能である。
【0034】
制御部212は、頭部装着映像装置40全体を制御する。記憶部214は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部214は、上述のように頭部装着映像装置40が実行するプログラムと、各種の制御用のデータを記憶する。
【0035】
図4は、3次元モデル320を配置する3次元モデル空間の座標系110aと、撮像カメラ206及びサーモカメラ207の座標系110cとの位置合わせ状態を示す概念図である。
【0036】
図4に示すように、位置合わせ部216は、3次元モデル空間の座標系110a、すなわち世界座標系と、撮像部205の座標系110cとの位置合わせを行う。この3次元モデル空間には、撮像部205から観察される現実物体に対応する3次元モデル320が配置される。
【0037】
より具体的には、位置合わせ部216は、位置センサ204の情報を用いて、撮像カメラ206及びサーモカメラ207の位置姿勢、及び世界座標系での位置座標を認識し、3次元モデル空間の座標系110aと、座標系110cとの位置合わせを行う。本実施形態に係る位置合わせとは、座標系110aの座標と、座標系110cの座標との対応関係を求めることを意味する。例えば、座標系110aにおける座標原点が対応する座標系110a内の座標と、X軸とXW軸とのずれ角と、Y軸とYW軸とのずれ角と、Z軸とZW軸とのずれ角とを求めることを意味する。なお、3次元モデル空間の座標系110a、すなわち世界座標系と、撮像カメラ206及びサーモカメラ207の座標系110cとの位置合わせ演算には、一般的な演算方法を用いることが可能である。
【0038】
画像生成部218は、位置合わせ部216の位置合わせに基づき、撮像部205の撮像する現実空間画像に重畳表示する画像を生成する。この画像には、温度分布画像、図面情報の画像が含まれる。図面情報の画像には、回路、構成部材、及び配線のうちの少なくともいずれかに関する情報が含まれる。例えば、図面情報の画像には、実装図、配線図、及びバック線図の情報のいずれかが含まれる。すなわち、実装図、配線図などが現実空間画像に重畳表示される場合には、座標系110aの座標から撮像部205の座標系110cに変換されて、検査対象物の画像に重畳表示される。また、画像生成部218は、温度分布画像として、温度に応じた濃度、及びカラーの画像を生成可能である。
【0039】
表示制御部220は、画像生成部218が生成した画像を液晶画面210に表示させる。なお、表示制御部220は、画像表示部と称する場合がある。
【0040】
図5は、経路情報300に含まれる検査順の情報を現実物体の表面に重畳表示した画像例を示す図である。数字が制御盤400の検査順を示す。また、マーク402が次の撮影位置を示す。
【0041】
図5に示すように、画像生成部218は、例えば検査開始前に、位置合わせ部216の位置合わせに基づき、経路情報300に含まれる検査順の情報、及び撮影位置の情報を現実画像に重畳表示する。これにより、検査者は、検査順と、次の検査用の撮影位置を把握することが可能となる。
【0042】
図6は、次の撮影対象を示す画像例を模式的に示す図である。
図6に示すように、画像生成部218は、位置合わせ部216の位置合わせに基づき、経路情報300に含まれる検査順の情報、及び撮影位置の情報を用いて、次の検査対象の廻りの透明度を落とした画像とマーク402を重畳した画像を生成してもよい。これにより、検査者は、直感的に次の検査用の撮影位置を把握することが可能となる。制御部212は、位置センサ204の情報を用いて、例えば操作者がマーク402の位置に達すると、撮像部205に温度分布画像の撮像を行わせる。マーク402から撮像した場合には、例えば検査対象物(制御盤)400の目的とする領域を正面から撮像可能となる。このため、座標の位置合わせ処理や、データ処理の精度がより向上する。
【0043】
機器温度検出部222は、位置センサ204の情報を用いて、温度分布画像の温度データを現実物体の表面に対応する座標に関連付ける処理を行う。すなわち、機器温度検出部222は、位置合わせ部216の位置合わせに基づき、サーモカメラ207により撮像された温度分布画像を3次元モデル320における表面の3次元座標に対応させ、3次元モデルに対応する現実物体の表面における3次元座標に関連付ける。このように、機器温度検出部222は、位置合わせ部216の位置合わせに基づき、撮像部205に撮像される現実空間の温度分布画像の温度データを検査対象物(制御盤)400の表面に対応する3次元モデル320の座標に関連付け、検査対象物(制御盤)400の表面温度を査対象物(制御盤)400の座標に対応させて検知することが可能である。
【0044】
図7は、温度分布画像110iを現実物体の表面に対応する座標に関連付ける処理を説明する概念図である。
図7に示すように、XW、YW、ZWは3次元モデルの座標系110a、すなわち世界座標系を示している。一方で、X、Y、Zはサーモカメラ207の座標系110cを示している。また、3次元モデル320の表面座標は、現実物体の表面における座標に対応している。
【0045】
本実施形態に係る座標系110cの座標原点は、サーモカメラ207におけるイメージセンサ110fのレンズ110dの光軸中心110eとの交点である。上述のように、座標系110cの座標系の原点位置は、位置合わせ部216の位置合わせ処理により得られた情報により、世界座標系の中の座標(X1,Y1、Z1)に配置される。また、Z軸方向は、位置合わせ部216の位置合わせ処理により得られた撮像部205の光軸方向を示している。さらにまた、XY平面はZ軸と直交し、イメージセンサ110fと平行である。
【0046】
これらか分かるように、撮像部205の光学系の一般的な特性により、イメージセンサ110f上の座標(X,Y、Z)は、レンズ110dのレンズ中心110gを通る透視線100hが3次元モデル320と交わる座標(XW、YW、ZW)に対応する。すなわち、イメージセンサ110f上の温度分布画像110i内の座標(X,Y、Z)は、レンズ中心110gを通る透視線100hが3次元モデル110bと交わる座標座標(XW、YW、ZW)に関連付けることが可能である。このように、機器温度検出部222は、位置合わせ部216の位置合わせに基づき、温度分布画像の温度データを現実物体の表面に対応する座標に関連付ける処理を行う。
【0047】
図8Aは、機器温度検出部222が生成した温度データを制御盤400の現実空間画像に重畳した画像例を模式的に示す図である。
図8Aに示すように、画像生成部218は、機器温度検出部222の生成した温度分布画像の温度データを現実物体の表面に対応する座標に関連付けて重畳表示する画像を生成する。この画像は、液晶画面210に表示される。
【0048】
異常検知部224は、機器温度検出部222の生成した現実物体である制御盤400の表面座標に対応する温度分布データと、データ処理装置10から供給される制御盤400の表面座標に対応する基準温度分布データを比較する。そして、異常検知部224は、基準を越えているデータの世界座標系の座標を異常箇所として検知する。この場合、画像生成部218は、例えば基準温度を超えた領域の温度に応じた濃度、及びカラーの画像を生成可能である。このように、温度分布画像の全体を表示する場合よりも、異常のある領域404の温度分布を重畳させることにより、異常のある領域の把握が容易となる。
【0049】
図8Bは、画像生成部218が制御盤400の内部画像である実装
図406を現実空間画像に重畳表示した例を示す画像である。
図8Bに示すように、画像生成部218は、異常検知部224が異常を検知した座標に対応する実装
図406を現実空間画像に重畳表示した画像を生成する。実装
図406の座標は、世界座標系で記録されている。これにより、画像生成部218は、現実空間画像に実装
図406を重畳表示する重畳画像を生成することが可能である。この場合に、画像生成部218は、基準を越えている温度データの座標の領域404もこの画像に関連付けて表示する。これにより、操作者は、制御盤400の外装を外す前に温度異常の回路要素の箇所を把握可能となる。
【0050】
図8Cは、画像生成部218が制御盤400の内部画像である実装
図406を液晶画面210に表示した例を示す画像である。
図8Cに示すように、画像生成部218は、異常検知部224が異常を検知した座標に対応する実装
図406の画像を生成する。このように、現実空間画像とは独立に、異常箇所の情報と実装
図406とを液晶画面210に表示させることも可能である。これにより、操作者は、異常対象箇所の図面情報が絞られて提示されるので、作業ミスなどの低減も可能となる。
【0051】
図8Dは、異常検知部224が異常を検知した際に、液晶画面210に表示される画像例である。これにより、頭部装着映像装置40の装着者は、次の処理を把握可能となる。また、無線通信により中央管理室内の管理者の指示を受けることも可能である。このように、表示制御部220は、異常検知部224が異常を検知した場合に、検査対象物である制御盤400の内部構造の温度画像の撮像を指示する画像を液晶画面210に表示させる。
【0052】
図9Aは、機器温度検出部222が生成した温度データを制御盤400内部の現実空間画像に重畳した画像例を模式的に示す図である。
図9Aに示すように、画像生成部218は、機器温度検出部222の生成した温度分布画像の温度データを現実物体の回路構成部410の表面に対応する座標に関連付けて重畳表示する画像を生成する。この画像は、液晶画面210に表示される。この場合、画像生成部218は、温度に応じた濃度、及びカラーの画像を生成可能である。これらの処理は、上述した
図8Aと同様の処理により実行される。
【0053】
図9Bは、画像生成部218が回路構成部410の内部画像である配線
図412の画像を、現実空間の回路構成部410の表面に重畳表示した例を示す画像である。
図9Bに示すように、画像生成部218は、異常検知部224が異常を検知した座標に対応する配線
図412を現実空間画像に重畳表示した画像を生成する。配線
図412の座標は、世界座標系で記録されている。これにより、画像生成部218は、現実空間画像に配線
図412を重畳表示する重畳画像を生成することが可能である。この場合に、画像生成部218は、基準を越えている温度データの座標の領域408もこの画像に関連付けて表示する。これにより、操作者は、回路構成部410を分解する前に温度異常の回路要素、及び配線の箇所を把握可能となる。なお、
図8Cと同様に、画像生成部218が配線
図412の画像を液晶画面210に、現実空間画像とは独立に表示してもよい。
【0054】
図9Cは、回路構成部410のバック線図の情報を示す図である。画像生成部218は、異常検知部224が異常を検知した座標に対応する、バック線図を生成する。そして、表示制御部220は、このバック線図を液晶画面210に表示させる。この際に、表示制御部220は、異常検知部224が異常を検知した座標に対応する端子番号、例えば3~5に指示マーク414を重畳表示させることが可能である。これにより、操作者は、回路構成部410を分解する前に、端子の締め付け不良や接続不良、機器の経年劣化による熱異常を把握可能となる。このように、現実空間の温度分布データの座標を現実空間の回路構成に対応させることにより、外部から観察することが困難な内部情報と、温度異常の箇所を重畳表示可能となる。これにより、操作者は、分解などする前に温度異常の箇所や温度の情報を得ることができるので、作業箇所の把握や、作業の優先度を容易に把握できる。
【0055】
図9Dは、異常検知部224が異常を検知した際に、バック線図の情報が液晶画面210に表示される画像例である。このように、表示制御部220は、異常検知部224が異常を検知した場合に、検査対象物である制御盤400の内部構造における温度異常の箇所を液晶画面210に表示させることが可能である。これにより、頭部装着映像装置40の装着者は、作業箇所の詳細を容易に把握できる。また、中央管理室内の管理者も画像を共有しているので、検査の具体的且つ正確な指示を行い易くなる。
【0056】
図10は、検査支援装置1における検査支援処理の流れを示すフローチャートの一例である。
図10に示すように、位置合わせ部216は、位置センサ204から頭部装着映像装置40の世界座標系における位置座標、及び位置姿勢の情報を取得する(ステップS100、S102)
【0057】
次に、位置合わせ部216は、位置座標、及び位置姿勢の情現実物体に対応する3次元モデルを配置する3次元モデル空間の座標系110aと、撮像カメラ206及びサーモカメラ207の座標系110cとの位置合わせを行う(ステップS104)。
【0058】
次に、撮像部205の撮像カメラ206は現実空間画像を撮像する(ステップS106)。続けて、画像生成部218は、位置合わせ部216の位置合わせに基づき、経路情報300に含まれる検査順の情報、及び撮影位置の情報を現実画像に重畳表示し、操作者に検査対象を特定させる(ステップS108)。
【0059】
次に、制御部212は、位置センサ204の出力信号に基づき、検査対象物(制御盤)400の撮像位置402(
図5参照)に達すると、撮像部205のサーモカメラ207に温度分布画像を撮像させる(ステップS110)。
【0060】
次に、機器温度検出部222は、位置合わせ部216による位置合わせに基づき、温度分布画像の温度データを3次元モデルにおける表面の3次元座標に対応させ、検査対象である制御盤400の表面における3次元座標に関連付け、制御盤400の表面座標の温度を検出する(ステップS112)。
【0061】
次に、異常検知部224は、3次元座標に関連付けられた温度データに関して、異常の有無を判定する(ステップS114)。異常があると判定した場合(ステップS114のYES)、異常検知部224は、異常があると判定された温度異常の箇所を含めた温度画像を制御盤400の表面画像に重畳した画像を液晶画面210表示させる(ステップS116)。なお、ステップS116の詳細な処理フローは、
図11で説明する。
【0062】
次に、制御部212は、全体処理を終了する否かを判定する(ステップS117)。終了すると判定する場合(ステップS117のYES)、全体処理を終了する。一方で、終了しない場合(ステップS117のNO)、位置合わせ部216は、ステップS100からの処理を繰り返す。
【0063】
図11は、ステップS116の詳細な処理例を示すフローチャートの一例である。
図11に示すように、画像生成部218は、制御盤400の世界座標系の座標に基づき、実装図を制御盤400の表面画像に重畳表示させる(ステップS200)。続けて、制御部212は、制御盤400の内部撮像指示する画像を画像生成部218に液晶画面210に表示させる(ステップS200)。
【0064】
次に、制御部212は、サーモカメラ207に温度分布画像を再度撮像させる(ステップS204)。続けて、機器温度検出部222は、位置合わせ部216による位置合わせに基づき、温度分布画像の温度データを内部構造の3次元モデルにおける表面の3次元座標に対応させる(ステップS206)。これにより、検査対象である制御盤400の内部構造表面における3次元座標に温度データが関連付けられ、機器温度検出部222は、制御盤400の内部構造における表面座標の温度を検出可能となる(ステップS112)。
【0065】
次に、異常検知部224は、3次元座標に関連付けられた温度データに関して、制御盤400の内部構造に重畳した画像を液晶画面210表示させる(ステップS208)。そして、更に制御部212は、制御盤400の内部構造における配線図を内部構造に重畳した画像を液晶画面210に表示させる。この際に制御部212は、内部構造のバック線図を、異常箇所を示す画像と共に、液晶画面210に表示させる(ステップS210)。
【0066】
このように温度データに異常がある場合に、異常を示す領域を検査対象の現実空間画像に表示することで、異常の箇所を容易に判別可能となる。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、位置合わせ部216が、現実物体に対応する3次元モデルを配置する3次元モデル空間の座標系と、撮像部205の座標系との位置合わせを行い、機器温度検出部222が、この位置合わせに基づき、温度分布画像の温度データを現実物体の表面に対応する3次元モデルの座標に関連付けることとした。これにより、表示制御部220は、異常のある箇所の座標に対応する図面情報を、液晶画面210に表示させることが可能となる。このように、異常対象箇所に図面情報を絞って表示することにより、作業ミス等の発生を抑制できる。また、ゴーグル型の頭部装着映像装置40に異常対象機器の情報を表示することにより、両手が空いた状態で作業が可能となる。
【0068】
本実施形態による検査支援装置1におけるデータ処理方法の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、データ処理方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、データ処理方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0069】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1:検査支援装置、10:データ処理装置、40:頭部装着映像装置、205:撮像部、206:撮像カメラ、207:サーモカメラ、210:液晶画面、216:位置合わせ部、220:表示制御部、222:機器温度検出部、224:異常検知部。