(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103847
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】遅延予測システム、遅延予測プログラム及び遅延予測方法
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20230720BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20230720BHJP
【FI】
B61L25/02 A
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004611
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】505082110
【氏名又は名称】株式会社JR東日本情報システム
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 郁生
【テーマコード(参考)】
5H161
5L049
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB01
5H161CC20
5H161GG01
5H161GG17
5H161GG22
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】遅延発生時において、目的地における最終的な到着遅延時間をユーザに知らせることが可能な遅延予測システム、遅延予測プログラム及び遅延予測方法に関する。
【解決手段】所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成部と、教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成部と、
前記教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習部と
を備えることを特徴とする遅延予測システム。
【請求項2】
所定の区間における複数の移動体の直近の運転実績を示す直近実績データと、前記遅延予測モデルとに基づいて、目的地における移動体の到着遅延時間の予測を行う予測部とを更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の遅延予測システム。
【請求項3】
前記移動体は、列車であり、
前記移動体の密度に関連する情報には、現在地から目的地までの列車密度に関連する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の遅延予測システム。
【請求項4】
前記現在地から目的地までの列車密度に関連する情報には、
現在地から目的地までの間に存在する駅数に関する情報及び現在地から目的地までの間に存在する列車本数に関する情報と、
現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報と、
現在地から目的地までの計画走行時間に関する情報と
の少なくとも1つの情報が含まれる
ことを特徴とする請求項3に記載の遅延予測システム。
【請求項5】
前記移動体の密度に関連する情報には、線区における列車密度に関連する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の遅延予測システム。
【請求項6】
前記線区における列車密度に関連する情報には、
線区の一方の線路上に存在する列車本数に関する情報と、
線区全体に存在する列車本数に関する情報と、
線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報と
の少なくとも1つの情報が含まれる
ことを特徴とする請求項5に記載の遅延予測システム。
【請求項7】
前記移動体の密度に関連する情報には、線区内の他の駅における列車密度に関連する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の遅延予測システム。
【請求項8】
前記線区内の他の駅における列車密度に関連する情報には、複数の線区が接続された接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間に関する情報及び前記遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間に関する情報の少なくとも一方の情報が含まれる
ことを特徴とする請求項7に記載の遅延予測システム。
【請求項9】
前記移動体の密度に関連する情報には、直近列車間における列車密度に関連する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載の遅延予測システム。
【請求項10】
前記直近列車間における列車密度に関連する情報には、自列車と直近前方の列車までの間に存在する駅数に関する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項9に記載の遅延予測システム。
【請求項11】
前記直近列車間における列車密度に関連する情報には、自列車と直近後方の列車までの間に存在する駅数に関する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の遅延予測システム。
【請求項12】
前記説明変数には、移動体の乗車率に関連する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の遅延予測システム。
【請求項13】
前記説明変数には、現在地における移動体の計画、実績、遅延に関する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の遅延予測システム。
【請求項14】
前記予測部により予測された目的地における移動体の到着遅延時間を表示するユーザ端末を更に備える
ことを特徴とする請求項2~13のいずれか1項に記載の遅延予測システム。
【請求項15】
コンピュータに、
所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成工程と、
前記教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習工程と
を実行させることを特徴とする遅延予測プログラム。
【請求項16】
所定の区間における複数の移動体の直近の運転実績を示す直近実績データと、前記遅延予測モデルとに基づいて、目的地における移動体の到着遅延時間の予測を行う予測工程を更に含む
ことを特徴とする請求項15に記載の遅延予測プログラム。
【請求項17】
所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成工程と、
前記教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習工程と
を含むことを特徴とする遅延予測方法。
【請求項18】
所定の区間における複数の移動体の直近の運転実績を示す直近実績データと、前記遅延予測モデルとに基づいて、目的地における移動体の到着遅延時間の予測を行う予測工程を更に含む
ことを特徴とする請求項17に記載の遅延予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延予測システム、遅延予測プログラム及び遅延予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車やバス等の移動体の遅延発生時において、ユーザに対して移動体の遅延時間や出発及び到着時刻等の情報を配信するシステムが知られている。例えば、特許文献1には、列車の遅延発生時において、列車の運行計画である計画ダイヤと現在の運行状況を示す実績ダイヤとに基づいて、列車の遅延時間や出発及び到着時刻等の情報を順次更新してユーザが所持するユーザ端末に表示させるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の遅延予測システムは、計画ダイヤと実績ダイヤとの差分を遅延時間としているため、復旧作業の進捗状況やダイヤの変更等により遅延時間が時々刻々と変化するものである。すなわち、特許文献1に記載の遅延時間は、あくまでも出発時における遅延時間に過ぎず、到着時における遅延時間ではない。このため、特許文献1に記載の遅延予測システムでは、当初表示される遅延時間と、最終的な到着時の遅延時間との間に大きな乖離が生じるおそれがあり、これにより、ユーザの不満を増大させてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、遅延発生時において、目的地における最終的な到着遅延時間をユーザに知らせることが可能な遅延予測システム、遅延予測プログラム及び遅延予測方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る遅延予測システムは、所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成部と、前記教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習部とを備えている。
【0007】
また、本発明に係る遅延予測システムは、所定の区間における複数の移動体の直近の運転実績を示す直近実績データと、前記遅延予測モデルとに基づいて、目的地における移動体の到着遅延時間の予測を行う予測部とを更に備えている。
【0008】
さらに、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記移動体は、列車であり、前記移動体の密度に関連する情報には、現在地から目的地までの列車密度に関連する情報が含まれている。
【0009】
また、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記現在地から目的地までの列車密度に関連する情報には、現在地から目的地までの間に存在する駅数に関する情報及び現在地から目的地までの間に存在する列車本数に関する情報と、現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報と、現在地から目的地までの計画走行時間に関する情報との少なくとも1つの情報が含まれている。
【0010】
さらに、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記移動体の密度に関連する情報には、線区における列車密度に関連する情報が含まれている。
【0011】
また、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記線区における列車密度に関連する情報には、線区の一方の線路上に存在する列車本数に関する情報と、線区全体に存在する列車本数に関する情報と、線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報との少なくとも1つの情報が含まれている。
【0012】
さらに、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記移動体の密度に関連する情報には、線区内の他の駅における列車密度に関連する情報が含まれている。
【0013】
また、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記線区内の他の駅における列車密度に関連する情報には、複数の線区が接続された接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間に関する情報及び前記遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間に関する情報の少なくとも一方の情報が含まれている。
【0014】
さらに、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記移動体の密度に関連する情報には、直近列車間における列車密度に関連する情報が含まれている。
【0015】
また、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記直近列車間における列車密度に関連する情報には、自列車と直近前方の列車までの間に存在する駅数に関する情報が含まれている。
【0016】
さらに、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記直近列車間における列車密度に関連する情報には、自列車と直近後方の列車までの間に存在する駅数に関する情報が含まれている。
【0017】
また、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記説明変数には、移動体の乗車率に関連する情報が含まれている。
【0018】
さらに、本発明に係る遅延予測システムにおいて、前記説明変数には、現在地における移動体の計画、実績、遅延に関する情報が含まれている。
【0019】
また、本発明に係る遅延予測システムは、前記予測部により予測された目的地における移動体の到着遅延時間を表示するユーザ端末を更に備えている。
【0020】
本発明に係る遅延予測プログラムは、コンピュータに、所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成工程と、前記教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習工程とを実行させるように構成されている。
【0021】
本発明に係る遅延予測プログラムは、所定の区間における複数の移動体の直近の運転実績を示す直近実績データと、前記遅延予測モデルとに基づいて、目的地における移動体の到着遅延時間の予測を行う予測工程を更に含んでいる。
【0022】
本発明に係る遅延予測方法は、所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成工程と、前記教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習工程とを含んでいる。
【0023】
本発明に係る遅延予測方法は、所定の区間における複数の移動体の直近の運転実績を示す直近実績データと、前記遅延予測モデルとに基づいて、目的地における移動体の到着遅延時間の予測を行う予測工程を更に含んでいる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の遅延予測システム、遅延予測プログラム及び遅延予測方法によれば、遅延発生時において、目的地における最終的な到着遅延時間をユーザに知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る遅延予測システムの概要を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る学習サーバに格納されたデータベースの一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る学習サーバに格納されたデータベースのうち、第1の情報を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る学習サーバに格納されたデータベースのうち、第2の情報を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る学習サーバに格納されたデータベースのうち、第3の情報を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る学習サーバに格納されたデータベースのうち、第4の情報を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る学習サーバに格納されたデータベースのうち、第5の情報を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る学習方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る遅延予測方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係るユーザ端末に表示される予測結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0027】
[遅延予測システムの構成]
本実施形態に係る遅延予測システム1は、概略的には、所定の区間における複数の列車100の過去の運転実績を示す過去実績データ(以下、単に列車100の過去実績データという。)を用いて、目的地における列車100の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成し、所定の区間における複数の列車100の直近の運転実績を示す直近実績データ(以下、単に列車100の直近実績データという。)と、遅延予測モデルとに基づいて、目的地における列車100の到着遅延時間の予測を行うシステムである。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る遅延予測システム1は、鉄道会社または関連会社が管理する格納サーバ200及び学習サーバ300と、列車100を利用するユーザが所持するユーザ端末400とを備えている。また、格納サーバ200、学習サーバ300及びユーザ端末400は、通信ネットワークNWを介して相互にデータ通信可能に構成されている。なお、本実施形態において、格納サーバ200及び学習サーバ300はそれぞれ独立したサーバであるものとして説明するが、これに限定されず、格納サーバ200及び学習サーバ300を含む1つのサーバであっても良く、また、格納サーバ200、学習サーバ300がそれぞれ複数あっても良い。
【0029】
また、本実施形態に係る遅延予測システム1は、列車100に限定されず、運行計画によって運行される任意の移動体、例えば、バス、船、飛行機等にも適用することができる。また、本実施形態において、列車100の運転実績を示すデータ(以下、単に列車100の運転実績データという。)は、無線通信により列車100から遅延予測システム1の格納サーバ200にリアルタイムに送信される。なお、「リアルタイムに送信」には、数秒から数分程度の遅れや、電波障害等によりデータを送信できない場合の再送が含まれる。
【0030】
[用語の説明]
本実施形態において、「所定の区間」とは、鉄道会社等によって指定されたある特定の区間である線区をいい、「線区」とは、遅延予測システム1が学習を行う区間及び到着遅延時間の予測を行うことができる区間をいい、路線全体、路線のうちのある特定の区間を含むものである。なお、「所定の区間」は、線区に限定されず、例えば、移動体がバスの場合には、複数のバス停のうちのある特定の区間、移動体が船の場合には、複数の船着き場のうちのある特定の区間、移動体が飛行機の場合には、複数の空港のうちのある特定の区間等、移動体ごとに任意に定められるものである。
【0031】
本実施形態において、「列車100の運転実績データ」とは、後述する第1の情報~第4の情報及び目的変数に関する情報を含むデータであり、走行中の全列車及び線区内の全駅の情報、実績ダイヤ、計画ダイヤ(運行計画)、実行ダイヤに関する情報等を含んでいる。なお、実行ダイヤとは、列車100の遅延等が発生した場合に、計画ダイヤに基づいて運行計画を変更したときのダイヤである。「列車100の過去実績データ」とは、格納サーバ200に蓄積されている列車100の過去の運転実績データであり、「列車100の直近実績データ」とは、格納サーバ200に蓄積されている列車100の運転実績データの内、最新のデータである。また、「前駅」とは、現在地を基準とした場合の現在地の1つ手前の駅であり、「後駅」とは、現在地を基準とした場合の現在地の次の駅である。さらに、「接続駅」とは、異なる複数の線区が接続された駅をいう。
【0032】
[格納サーバの構成]
格納サーバ200は、無線通信により列車100からリアルタイムに送信される列車100の運転実績データを蓄積するサーバであり、
図1に示すように、列車100の運転実績データを格納する記憶部210と、該記憶部210に格納された列車100の運転実績データから列車100の直近実績データを抽出する抽出部220とを備えている。なお、格納サーバ200と、列車100とは通信ネットワークNWを介してデータ通信可能に構成されている。また、記憶部210に格納された列車100の運転実績データ(列車100の過去実績データ)は、ダンプデータとして所定の時間ごと、例えば、30秒ごとに学習サーバ300に送信される。
【0033】
抽出部220は、記憶部210に格納された列車100の運転実績データから列車100の直近実績データを抽出するように構成されている。具体的には、抽出部220は、ユーザがユーザ端末400を操作することにより入力された線区の情報及び現在地、目的地の駅情報(例えば駅名)、入力された時刻の情報等の入力情報に基づいて、遅延予測の対象となる列車100の直近実績データを抽出するように構成されている。なお、抽出部220により抽出された列車100の直近実績データは、学習サーバ300に送信される。また、ユーザに入力される現在地の駅情報としては、線区内に存在する複数の駅の内、ユーザによって選択された駅の情報、例えば、ユーザが列車100を乗車する駅、ユーザが遅延予測を検索する地点近くの駅等の線区内に存在する任意の駅の情報が入力される。また、目的地の駅情報としては、線区内に存在する複数の駅の内、ユーザが列車100の到着遅延時間の検索を所望する駅、例えば、ユーザが列車100を降車する駅等の線区内に存在する任意の駅の情報が入力される。
【0034】
[学習サーバの構成]
学習サーバ300は、列車100の過去実績データを用いて機械学習を行うと共に、目的地における列車100の到着遅延時間の予測を行うサーバである。具体的には、学習サーバ300は、
図1に示すように、学習サーバ300全体の制御を行う制御部310を備えている。
【0035】
制御部310は、
図1に示すように、各種データを格納する記憶部311と、機械学習に必要な教師データを生成する教師データ生成部312と、教師データに基づいて学習を行う学習部313と、目的地における列車100の到着遅延時間の予測を行う予測部314とを備えている。
【0036】
ここで、教師データとは、学習部313に学習をさせるための教材となるデータであり、本実施形態においては、日や対象を特定するための情報(以下、第1の情報という。)と、現在地における列車100の計画、実績、遅延に関する情報(以下、第2の情報という。)と、前駅における列車100の実績、遅延に関する情報(以下、第3の情報という。)と、列車100の乗車率に関連する情報(以下、第4の情報という。)と、所定の区間における列車100の密度に関連する情報(以下、第5の情報という。)とを説明変数とし、目的地における列車100の実際の到着遅延時間を目的変数として含んでいる。なお、本実施形態において、説明変数には、上記第1の情報~第5の情報が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、少なくとも第5の情報(所定の区間における列車100の密度に関連する情報)が含まれていればよい。
【0037】
制御部310は、プロセッサであるCPUであり、記憶部311は、例えば、RAM、ROM等のメモリ、HDD、SDD等である。また、本実施形態に係る学習サーバ300は、記憶部311に格納された遅延予測プログラムをRAMに展開し、これをCPUが解釈及び実行することにより、教師データ生成部312、学習部313及び予測部314の各種機能を実現するように構成されている。
【0038】
ここで、遅延予測プログラムとは、コンピュータに、所定の区間における複数の列車100の過去実績データに基づいて、第1の情報~第5の情報を説明変数とし、目的地における列車100の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成工程と、該教師データを用いた機械学習により、目的地における列車100の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習工程と、所定の区間における複数の列車100の直近実績データと、遅延予測モデルとに基づいて、目的地における列車100の到着遅延時間の予測を行う予測工程とを実行させるように構成されたプログラムである。
【0039】
記憶部311は、遅延予測プログラムを格納するプログラム格納エリアと、プログラムの実行に必要となる各種データを格納するデータ格納エリアとを備えている。
【0040】
データ格納エリアには、格納サーバ200から送信された列車100の過去実績データと、教師データに関する情報が入力されるデータベースと、教師データ生成部312により生成された教師データと、学習部313により生成された遅延予測モデルと、格納サーバ200から送信された列車100の直近実績データとが格納されている。
【0041】
記憶部311に格納された
図2に示すデータベースは、教師データに関する情報が入力されるデータベースであり、教師データ生成部312によって説明変数及び目的変数の各項目にデータが入力された状態のデータベースが学習部313に入力される教師データとなる。また、
図2に示すように、記憶部311に格納されたデータベースは、説明変数の項目が第1の情報~第5の情報の各項目にデータ分類されている。第1の情報~第5の情報の各項目については後述する。
【0042】
教師データ生成部312は、記憶部311に格納された列車100の過去実績データに基づいて、学習部313に学習させるための教師データを生成するように構成されている。具体的には、教師データ生成部312は、記憶部311に格納された列車100の過去実績データに基づいて、第1の情報~第4の情報及び目的変数に関する情報を生成するように構成されている。また、教師データ生成部312は、第1の情報~第4の情報に基づいて、第5の情報を生成するように構成されている。なお、教師データ生成部312は、線区内に存在する全駅及び全列車について、第1の情報~第5の情報及び目的変数に関する情報を生成する。
【0043】
また、教師データ生成部312により行われる教師データの生成は、例えば日次処理により行われ、教師データの生成と同時に記憶部311に格納された列車100の過去実績データが削除される。また、教師データ生成部312によって生成された第1の情報~第5の情報及び目的変数に関する情報は、記憶部311に格納された
図2に示すデータベースのNo.ごとに格納され、該格納された状態のデータベースが学習部313に入力される教師データとなる。
【0044】
次に、
図3~
図7を用いて、第1の情報から第5の情報に含まれる情報について説明する。なお、以下、説明の便宜上、線区内を走行する列車100の内、ある一の列車(自列車100A)を対象として説明する。なお、自列車100A以外の列車を他列車100Bとして説明する。
【0045】
[第1の情報]
第1の情報は、日や対象を特定するための情報であり、
図3に示すように、記憶部311に格納されたデータベースの(1)施行日、(2)土日祝祭日、(3)線区名、(4)方向名、(5)列車番号、(6)前駅名、(7)現在地名、(8)駅順序番号、(9)後駅名、(10)目的地名、(11)終着駅名、(12)始発駅名、(13)始発駅出発時刻の各項目にデータ分類されて入力される。なお、(7)現在地名の項目には、線区内に存在する複数の駅のそれぞれの名称が入力される。すなわち、1つのセルには、線区内に存在する複数の駅のうちある特定の1の駅(例えばA駅)の名称が入力され、別のセルには、B駅、さらに別のセルにはC駅等、各セルに各駅の名称がそれぞれ入力される。また、(10)目的地名の項目には、現在地から終着駅までの間に存在する駅の名称がそれぞれ入力される。すなわち、(7)現在地名に線区内に存在する任意の駅(例えば、A駅)の名称が入力されている場合、(10)目的地名には、線区内に存在するA駅以降の駅名が総当たり的に入力される。例えば、
図2に示すデータベースの1列目に(7)現在地名がA駅、(10)目的地名が線区内に存在するA駅以降のB駅が入力され、データベースの2列目に(7)現在地名がA駅、(10)目的地名がB駅の次駅であるC駅が入力される。
【0046】
(1)施行日には、自列車100Aが走行した日付が入力される。(2)土日祝祭日には、(1)施行日に入力された日付が土日祝祭日に該当する場合「1」、該当しない場合「0」の情報が入力される。(3)線区名には、自列車100Aが走行する線区の名称に関する情報が入力される。(4)方向名には、「上り」又は「下り」のいずれかの情報が入力される。(5)列車番号には、自列車100Aの列車番号が入力される。(6)前駅名、(7)現在地名、(9)後駅名、(10)目的地名、(11)終着駅名、(12)始発駅名には、それぞれ対象となる駅の名称に関する情報が入力される。(8)駅順序番号には、線区、方向ごとに定められた起点駅(最初の駅)から現在地までの駅数に関する情報が入力され、(13)始発駅出発時刻には、自列車100Aが始発駅を出発した時刻が入力される。
【0047】
[第2の情報]
第2の情報は、現在地における列車100の計画、実績、遅延に関する情報であり、
図4に示すように、記憶部311に格納されたデータベースの(14)計画到着時刻、(15)実績到着時刻、(16)到着遅延時分、(17)計画出発時刻、(18)実績出発時刻、(19)出発遅延時分、(20)停車時間の各項目にデータ分類されて入力される。
【0048】
(14)計画到着時刻には、計画ダイヤあるいは実行ダイヤにおける現在地への到着時刻が入力される。(15)実績到着時刻には、現在地への実際の到着時刻が入力される。(16)到着遅延時分には、(15)実績到着時刻から(14)計画到着時刻を差し引いた時間が入力される。なお、差し引いた値が「-」になる場合には「0」と入力される。(17)計画出発時刻には、計画ダイヤあるいは実行ダイヤにおける現在地の出発時刻が入力される。(18)実績出発時刻には、現在地における実際の出発時刻が入力される。(19)出発遅延時分には、(18)実績出発時刻から(17)計画出発時刻を差し引いた時間が入力される。(20)停車時間には、(18)実績出発時刻から(15)実績到着時刻を差し引いた時間が入力される。
【0049】
[第3の情報]
第3の情報は、前駅における列車100の実績、遅延に関する情報であり、
図5に示すように、記憶部311に格納されたデータベースの(21)前駅実績到着時刻、(22)前駅到着遅延時分、(23)前駅実績出発時刻、(24)前駅出発遅延時分、(25)前走行駅間経過時間の各項目にデータ分類されて入力される。
【0050】
(21)前駅実績到着時刻には、前駅への実際の到着時刻が入力される。(22)前駅到着遅延時分には、(21)前駅実績到着時刻から計画ダイヤあるいは実行ダイヤにおける前駅への到着時刻を差し引いた時間が入力される。(23)前駅実績出発時刻には、前駅における実際の出発時刻が入力される。(24)前駅出発遅延時分には、(23)前駅実績出発時刻から計画ダイヤあるいは実行ダイヤにおける前駅の出発時刻を差し引いた時間が入力される。(25)前走行駅間経過時間には、第2の情報の(15)実績到着時刻から(23)前駅実績出発時刻を差しい引いた時間が入力される。
【0051】
[第4の情報]
第4の情報は、列車100の乗車率に関連する情報であり、
図6に示すように、記憶部311に格納されたデータベースの(26)普通車乗員数、(27)特別車両乗員数の各項目にデータ分類されて入力される。ここで、「普通車」とは、列車100のうち通常料金で乗車をすることができる車両をいい、「特別車両」とは、列車100のうち通常料金よりも多い料金を支払うことにより乗車できる車両をいい、例えば、グリーン車、指定席等である。
【0052】
(26)普通車乗員数には、自列車100Aの普通車における乗員数が入力される。(27)特別車両乗員数には、自列車100Aの特別車両における乗員数が入力される。なお、特別車両がない場合には「0」と入力される。
【0053】
[第5の情報]
第5の情報は、所定の区間における列車100の密度に関連する情報であり、第1の情報~第4の情報に基づいてデータが算出される。また、第5の情報は、
図7に示すように、記憶部311に格納されたデータベースの(28)現在地から目的地までの列車密度、(29)線区における列車密度、(30)線区内の他の駅における列車密度、(31)直近列車間における列車密度の各項目にデータ分類されて入力される。ここで、「直近列車」とは、線区内の線路を走行する複数の列車100のうち、自列車100Aの前後を走行する他列車100Bをいう。
【0054】
(28)現在地から目的地までの列車密度の項目は、「現在地から目的地までの間に存在する駅数」、「現在地から目的地までの間に存在する列車本数」、「現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計」、「現在地から目的地までの計画走行時間」の各項目にデータ分類されており、第5の情報は、各項目にデータ分類されて入力される。
【0055】
「現在地から目的地までの間に存在する駅数」には、自列車100Aの第1の情報の(7)現在地名及び(10)目的地名の情報に基づいて算出された、現在地から目的地までの間に存在する駅数が入力される。「現在地から目的地までの間に存在する列車本数」には、自列車100Aの第1の情報の(7)現在地名及び(10)目的地名の情報と、他列車100Bの第1の情報の(7)現在地名の情報とに基づいて算出された、現在地から目的地までの間に存在する列車本数が入力される。「現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計」には、自列車100Aの第1の情報の(7)現在地名及び(10)目的地名の情報と、他列車100Bの第2の情報の(20)停車時間の情報とに基づいて算出された、現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計が入力される。「現在地から目的地までの計画走行時間」には、自列車100Aの第1の情報の(7)現在地名及び(10)目的地名の情報と、計画ダイヤあるいは実行ダイヤの情報とに基づいて、目的地への計画到着時刻から現在地の計画出発時刻を差し引いた時間が入力される。
【0056】
(29)線区における列車密度の項目は、「線区の一方の線路上に存在する列車本数」、「線区全体に存在する列車本数」、「線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計」の各項目にデータ分類されており、第5の情報は、各項目にデータ分類されて入力される。なお、「線区の一方の線路上」とは、自列車100Aが走行する線路、又は自列車100Aが走行する線路と反対側に存在する線路のいずれかをいう。
【0057】
「線区の一方の線路上に存在する列車本数」には、自列車100A及び他列車100Bの第1の情報の(4)方向名の情報と、第2の情報の(18)実績出発時刻の情報とに基づいて算出された、線区の一方の線路上に存在する列車本数が入力される。「線区全体に存在する列車本数」には、自列車100A及び他列車100Bの第2の情報の(18)実績出発時刻の情報に基づいて算出された、線区全体に存在する列車本数が入力される。「線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計」には、自列車100A及び他列車100Bの第2の情報の(20)停車時間の情報に基づいて算出された、線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計が入力される。
【0058】
(30)線区内の他の駅における列車密度の項目は、「接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」、「接続駅における遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」の各項目にデータ分類されており、第5の情報は、各項目にデータ分類されて入力される。ここで、「一方線路」とは、自列車100Aが走行する線路をいい、「他方線路」とは、自列車100Aが走行する線路と反対側に存在する線路をいう。なお、自列車100Aが走行する線路と反対側に存在する線路が「一方線路」であっても良いし、自列車100Aが走行する線路が「他方線路」であっても良い。また、(30)線区内の他の駅における列車密度に関連する情報は、「接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」に関する情報、又は「遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」に関する情報の少なくとも一方の情報が含まれる態様であっても良い。
【0059】
「接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」及び「接続駅における遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」には、当該一方線路及び他方線路を走行する他列車100Bのうち、対象となる列車の接続駅における遅列車到着遅延時間が入力される。具体的には、自列車100A及び他列車100Bの第1の情報の(4)方向名に基づいて、一方線路及び他方線路を走行する他列車100Bをそれぞれ特定すると共に、他列車100Bの第1の情報の(7)現在地名と、自列車100A及び他列車100Bの第2の情報の(18)実績出発時刻とに基づいて、自列車100Aが現在地を出発した時刻又は直近において、一方線路及び他方線路における接続駅を出発した他列車100Bを更にそれぞれ特定する。そして、当該特定された他列車100Bの第2の情報の(16)到着遅延時分に基づいて算出された、接続駅における列車到着遅延時間が入力される。
【0060】
(31)直近列車間における列車密度の項目は、「自列車と直近前方の列車までの間に存在する駅数」、「自列車と直近後方の列車までの間に存在する駅数」の各項目にデータ分類されており、第5の情報は、各項目にデータ分類されて入力される。
【0061】
「自列車と直近前方の列車までの間に存在する駅数」には、自列車100A及び自列車100Aの直近前方を走行する他列車100Bの第1の情報の(7)現在地名に基づいて算出された、自列車と直近前方の列車までの間に存在する駅数が入力される。「自列車と直近後方の列車までの間に存在する駅数」には、自列車100A及び自列車100Aの直近後方を走行する他列車100Bの第1の情報の(7)現在地名に基づいて算出された、自列車と直近後方の列車までの間に存在する駅数が入力される。
【0062】
学習部313は、記憶部311に格納された教師データを用いた一般的なツール、例えば、AutoML(Automated Machine Learning)等による機械学習により、目的地における列車100の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成するように構成されている。なお、学習部313による学習は、教師データが一定の量生成された段階で行われても良いし、日次処理により行われても良いし、教師データの生成と同時に行われても良い。
【0063】
予測部314は、記憶部311に格納された列車100の直近実績データと、遅延予測モデルとに基づいて、目的地における列車100の到着遅延時間の予測を行うように構成されている。具体的には、予測部314は、記憶部311に格納された列車100の直近実績データに基づいて、第1の情報~第5の情報を生成し、該第1の情報~第5の情報を説明変数として遅延予測モデルに入力することにより、目的変数として目的地における列車100の到着遅延時間を算出するように構成されている。
【0064】
[ユーザ端末の構成]
ユーザ端末400は、列車100を利用するユーザが所持するスマートフォンやタブレット端末等のモバイルデバイスであり、
図10に示すように、ユーザからの各種の入力操作を受け付ける操作部410と、目的地における列車100の到着遅延時間を検索するための検索画面や、予測部314により予測された目的地における列車100の到着遅延時間(予測結果)を表示する表示部420と、ユーザ端末400内に制御部430を備えている。なお、操作部410及び表示部420は、スマートフォン等のモバイルデバイスが通常有する機能を転用することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0065】
制御部430は、
図1に示すように、操作部410、表示部420を動作させるための命令を含むプログラムや到着遅延時間を検索するためのプログラム(アプリケーション)等を格納する記憶部431と、操作部410を制御する操作制御部432と、表示部420を制御する表示制御部433とを備えている。
【0066】
制御部430は、プロセッサであるCPUであり、記憶部431は、例えば、RAM、ROM等のメモリである。また、本実施形態に係るユーザ端末400は、記憶部431に格納されたプログラムをRAMに展開し、これをCPUが解釈及び実行することにより、操作部410の入力操作を電気信号に変換して出力すると共に、表示部420に目的地における列車100の到着遅延時間を検索するための遅延時間検索画面や、予測部314により予測された目的地における列車100の到着遅延時間を表示することができる。
【0067】
[遅延予測方法]
次に、
図8及び
図9を用いて本実施形態に係る遅延予測システム1を用いた遅延予測方法について説明する。
【0068】
[学習方法]
まず、学習方法について、
図8を用いて説明する。列車100は、走行中に列車100の運転実績データを格納サーバ200にリアルタイムに送信する(S1)。格納サーバ200は、列車100の運転実績データを受信し(S2)、記憶部210に格納する。また、格納サーバ200は、列車100の運転実績データ(列車100の過去実績データ)を学習サーバ300に送信する(S3)。学習サーバ300は、列車100の過去実績データを受信し(S4)、記憶部311に格納する。また、学習サーバ300は、教師データ生成部312により、記憶部311に格納された過去実績データに基づいて、第1の情報~第5の情報を説明変数とし、目的地における列車100の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する(S5)。生成された教師データは、記憶部311に格納される。さらに、学習サーバ300は、学習部313により、記憶部311に格納された教師データを用いて機械学習を行うと共に、列車100の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する(S6)。生成された遅延予測モデルは、記憶部311に格納される。
【0069】
[予測方法]
次に、遅延予測方法について、
図9を用いて説明する。ユーザは、ユーザ端末400の表示部420に表示された検索画面に従い、操作部410を操作して線区及び現在地、目的地を入力する。ユーザ端末400は、入力された線区の情報及び現在地、目的地の駅情報、入力された時刻の情報等の入力情報を格納サーバ200に送信する(S7)。格納サーバ200は、ユーザ端末400から現在地及び目的地等の入力情報を受信し(S8)、記憶部210に格納する。また、格納サーバ200は、抽出部220により、入力された線区の情報及び現在地、目的地の駅情報と、入力された時刻の情報に基づいて、記憶部210に格納された列車100の過去実績データから遅延予測の対象となる列車100の直近実績データを抽出し(S9)、抽出された列車100の直近実績データを学習サーバ300に送信する(S10)。学習サーバ300は、列車100の直近実績データを受信し(S11)、記憶部311に格納する。
【0070】
学習サーバ300は、予測部314により、記憶部311に格納された列車100の直近実績データと、遅延予測モデルとに基づいて、目的地における列車100の到着遅延時間の予測を行い(S12)、ユーザ端末400に予測結果を送信する(S13)。ユーザ端末400は、予測結果を受信し(S14)、
図10に示すように、予測結果を表示部420に表示する(S15)。
【0071】
[本実施形態に係る遅延予測システムの利点]
このように本実施形態に係る遅延予測システム1は、所定の区間における複数の移動体の過去の運転実績を示す過去実績データに基づいて、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を少なくとも含む情報を説明変数とし、目的地における移動体の到着遅延時間を目的変数とする教師データを生成する教師データ生成部312と、教師データを用いた機械学習により、目的地における移動体の到着遅延時間を予測する遅延予測モデルを生成する学習部313とを備えている。
【0072】
このような構成を備える遅延予測システム1によれば、所定の区間に存在する移動体の数等の密度度合いは、移動体の遅延に大きな影響を与えるため、所定の区間における移動体の密度に関連する情報を学習させることにより、遅延発生時において、最終的な遅延時間を正確に予測することが可能な遅延予測モデルを生成することができるという従来にない顕著な利点を有する。また、システム内に教師データ生成部312及び学習部313が備えられているため、学習精度が向上するという利点も有する。
【0073】
また、本実施形態に係る遅延予測システム1は、所定の区間における複数の移動体の直近の運転実績を示す直近実績データと、遅延予測モデルとに基づいて、目的地における移動体の到着遅延時間の予測を行う予測部314とを更に備えている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、遅延予測システム1が予測部314を備えているため、遅延予測モデルの生成から目的地における移動体の到着遅延時間の予測までを一のシステムで行うことができるという利点を有する。
【0074】
さらに、本実施形態に係る遅延予測システム1において、移動体は、列車100であり、移動体の密度に関連する情報には、現在地から目的地までの列車密度に関連する情報が含まれている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、学習部313がユーザが列車100を利用する区間における列車の密度度合いを学習することができるため、遅延発生時において、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0075】
また、本実施形態に係る遅延予測システム1において、現在地から目的地までの列車密度に関連する情報には、現在地から目的地までの間に存在する駅数に関する情報及び現在地から目的地までの間に存在する列車本数に関する情報と、現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報と、現在地から目的地までの計画走行時間に関する情報との少なくとも1つの情報が含まれている。
【0076】
このような構成を備える遅延予測システム1によれば、例えば、現在地から目的地までの間に存在する駅数に関する情報及び現在地から目的地までの間に存在する列車本数に関する情報が含まれている場合には、学習部313が列車100の走行可否の判断に関係する現在地から目的地までの間に存在する駅数及び列車本数を考慮して学習を行うことができるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。また、現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報が含まれている場合には、遅延の原因や復旧作業進捗度等の状況に応じて変化する列車の駅停車時間を学習部313が考慮して学習できるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点も有する。さらに、現在地から目的地までの計画走行時間に関する情報が含まれている場合には、学習部313が列車100の実際の走行時間と計画ダイヤあるいは実行ダイヤにおける走行時間とを比較して学習を行うことができるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0077】
さらに、本実施形態に係る遅延予測システム1において、移動体の密度に関連する情報には、線区における列車密度に関連する情報が含まれている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、学習部313がユーザが列車100を利用する区間以外の区間における列車の密度度合いも考慮して学習できるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0078】
また、本実施形態に係る遅延予測システム1において、線区における列車密度に関連する情報には、線区の一方の線路上に存在する列車本数に関する情報と、線区全体に存在する列車本数に関する情報と、線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報との少なくとも1つの情報が含まれている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、例えば、線区の一方の線路上に存在する列車本数に関する情報や線区全体に存在する列車本数に関する情報が含まれている場合には、学習部313が列車100が走行する線区全体や、走行する線区及び走行しない線区の線区全体に存在する列車本数について学習することにより、列車100の密度度合いをより適切に考慮して学習することができるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。また、線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計に関する情報が含まれている場合には、学習部313が線区全体に存在する列車100の駅停車時間の合計を加味して学習することができるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0079】
また、本実施形態に係る遅延予測システム1において、移動体の密度に関連する情報には、線区内の他の駅における列車密度に関連する情報が含まれている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、学習部313が現在地以外の駅における列車の密度度合いも考慮して学習できるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0080】
さらに、本実施形態に係る遅延予測システム1において、線区内の他の駅における列車密度に関連する情報には、複数の線区が接続された接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間に関する情報及び該遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間に関する情報の少なくとも一方の情報が含まれている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、学習部313が複数の線区が接続された接続駅における列車100の遅延の動向を考慮して学習でき、接続駅における遅延時間が目的地における到着遅延時間に与える影響を考慮して学習できるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0081】
また、本実施形態に係る遅延予測システム1において、移動体の密度に関連する情報には、直近列車間における列車密度に関連する情報が含まれている。また、直近列車間における列車密度に関連する情報には、自列車と直近前方の列車までの間に存在する駅数に関する情報が含まれている。さらに、直近列車間における列車密度に関連する情報には、自列車と直近後方の列車までの間に存在する駅数に関する情報が含まれている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、学習部313が直近列車間における列車密度について学習することにより、自列車100Aが走行できる状態か否かの判断をすることができるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0082】
さらに、本実施形態に係る遅延予測システム1において、説明変数には、移動体の乗車率に関連する情報が含まれている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、学習部313が移動体の乗車率について学習することにより、移動体の乗車率が遅延時間に与える影響を考慮して遅延時間の予測を行うことができるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0083】
また、本実施形態に係る遅延予測システム1において、説明変数には、現在地における移動体の計画、実績、遅延に関する情報が含まれてる。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、学習部313が現在地における移動体の計画、実績、遅延について学習することにより、計画ダイヤまたは実行ダイヤと実績ダイヤとに基づいて遅延時間を予測することができるため、目的地における最終的な遅延時間を正確に予測することができるという利点を有する。
【0084】
さらに、本実施形態に係る遅延予測システム1は、予測部314により予測された目的地における移動体の到着遅延時間を表示するユーザ端末400を更に備えている。このような構成を備える遅延予測システム1によれば、予測部314により予測された到着遅延時間をユーザが所持するユーザ端末400上に表示できるため、遅延発生時において、ユーザに目的地における最終的な遅延時間を案内することができるという利点を有する。
【0085】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。
【0086】
例えば、上述した実施形態では、列車100の密度に関連する情報には、「現在地から目的地までの列車密度」、「線区における列車密度」、「線区内の他の駅における列車密度」、「直近列車間における列車密度」に関連する情報が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、これらの情報のうち、いずれか1つのみが含まれる態様であっても良いし、いずれか2つ、又はいずれか3つの情報が含まれる態様であっても良いし、これらの情報に加えて、又はこれらの情報によらず、軌道回路の情報やキロ程の情報等の他の情報が含まれる態様であっても良い。
【0087】
また、上述した実施形態では、現在地から目的地までの列車密度に関連する情報には、「現在地から目的地までの間に存在する駅数」、「現在地から目的地までの間に存在する列車本数」、「現在地から目的地までの間に存在する列車の駅停車時間の合計」、「現在地から目的地までの計画走行時間」に関する情報が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、これらの情報のうち、いずれか1つのみが含まれる態様であっても良いし、いずれか2つ、又はいずれか3つの情報が含まれる態様であっても良い。
【0088】
さらに、上述した実施形態では、線区における列車密度に関連する情報には、「線区の一方の線路上に存在する列車本数」、「線区全体に存在する列車本数」、「線区全体に存在する列車の駅停車時間の合計」に関する情報が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、これらの情報のうち、いずれか1つのみが含まれる態様であっても良いし、いずれか2つの情報が含まれる態様であっても良い。
【0089】
また、上述した実施形態では、線区内の他の駅における列車密度に関連する情報には、「接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」、「接続駅における遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」に関する情報が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、これらの情報のうち、いずれか1つのみが含まれる態様であっても良い。
【0090】
さらに、上述した実施形態では、直近列車間における列車密度に関連する情報には、「自列車と直近前方の列車までの間に存在する駅数」、「自列車と直近後方の列車までの間に存在する駅数」に関する情報が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、これらの情報のうち、いずれか1つのみが含まれる態様であっても良い。
【0091】
また、上述した実施形態では、説明変数には、「日や対象を特定するための情報」、「現在地における列車100の計画、実績、遅延に関する情報」、「前駅における列車100の実績、遅延に関する情報」、「列車100の乗車率に関連する情報」が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、これらの情報のうち、いずれか1つのみが含まれる態様であっても良いし、いずれか2つ、又はいずれか3つの情報が含まれる態様であっても良いし、これらの情報に加えて、又はこれらの情報によらず、他の情報が含まれる態様であっても良い。
【0092】
さらに、上述した実施形態では、遅延予測システム1は、ユーザ端末400を備えており、ユーザ端末400の表示部420上に目的地における列車100の到着遅延時間を表示するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、電光掲示板や鉄道会社が管理するWEBサイト上に到着遅延時間を表示する態様であっても良い。
【0093】
また、上述した実施形態では、「接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」及び「接続駅における遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」に関する情報について、1の接続駅を対象としたが、これに限定されず、複数の接続駅を対象としても良い。
【0094】
さらに、上述した実施形態では、線区内の他の駅における列車密度に関連する情報について、接続駅を対象としたが、これに限定されず、鉄道会社等によって定められた任意の駅であっても良い。
【0095】
また、上述した実施形態では、「接続駅における遅延予測対象線区の一方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」及び「接続駅における遅延予測対象線区の他方線路を走行する列車の列車到着遅延時間」に関する情報について、接続駅における遅延予測対象線区を走行する列車の列車到着遅延時間を対象として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、これに代えて又はこれに加えて、接続駅における他線区を走行する列車の列車到着遅延時間を対象としても良い。このような同一線区ではない他線区の遅延情報等を考慮することによっても、接続駅周辺の情報を加味した精度の高い予測が可能となる。
【0096】
また、上述した実施形態では、説明変数には、「前駅における列車100の実績、遅延に関する情報」が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、「前々駅」や「前々々駅」等の前駅よりも後方に存在する駅における列車100の実績、遅延に関する情報が含まれていても良い。
【0097】
さらに、上述した実施形態では、上述した実施形態では、現在地から目的地までの列車密度に関連する情報には、「現在地から目的地までの計画走行時間」に関する情報が含まれるものとして説明したが、これに限定されず、「現在地から目的地までの距離」に関する情報が含まれる態様であっても良い。
【0098】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0099】
1 :遅延予測システム
100 :列車
200 :格納サーバ
210 :記憶部
220 :抽出部
300 :学習サーバ
310 :制御部
311 :記憶部
312 :教師データ生成部
313 :学習部
314 :予測部
400 :ユーザ端末
410 :操作部
420 :表示部
430 :制御部
431 :記憶部
432 :操作制御部
433 :表示制御部
NW :通信ネットワーク