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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103848
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20230720BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230720BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20230720BHJP
   G03B 21/62 20140101ALI20230720BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20230720BHJP
   H04N 13/307 20180101ALI20230720BHJP
【FI】
G02B30/56
G09F9/00 313
G09F9/00 360
G03B21/14 Z
G03B21/62
H04N13/346
H04N13/307
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004612
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】長田 悠人
(72)【発明者】
【氏名】包 躍
【テーマコード(参考)】
2H021
2H199
2K203
5C061
5G435
【Fターム(参考)】
2H021BA27
2H199BA32
2H199BA68
2H199BB05
2H199BB20
2H199BB30
2H199BB33
2H199BB52
2H199BB54
2K203FA66
2K203FA83
2K203GC22
2K203GC23
2K203HA65
2K203HA82
2K203MA02
2K203MA04
5C061AA06
5C061AB16
5G435AA02
5G435AA03
5G435DD11
5G435FF02
5G435FF06
5G435GG01
5G435GG03
5G435GG17
5G435GG46
(57)【要約】
【課題】空中画像の表示においてゴーストを抑制しつつ、輝度を向上させる表示装置を提供する。
【解決手段】本発明は、画像表示面に画像を表示する表示層と、前記表示層に表示された前記画像の発光に基づく入力光を入力し前記画像を空中に結像した空中画像を生成する光学素子と、前記表示層から出力される光を前記所定角度範囲に集光し、前記光学素子に入力させる集光層と、を備える表示装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面に画像を表示する表示層と、
前記表示層に表示された前記画像の発光に基づく入力光を入力し前記画像を空中に結像した空中画像を生成する光学素子と、
前記表示層から出力される光を所定角度範囲に集光し、前記光学素子に入力させる集光層と、を備える、
表示装置。
【請求項2】
前記表示層は、一面側に光源を有し他面側に設けられた前記画像表示面に前記画像を生成し、
前記集光層は、前記表示層の一面側又は他面側に設けられている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示層は、一面側から前記画像が投射され他面側に前記画像を表示するスクリーンであり、
前記集光層は、前記表示層の他面側又は一面側に設けられている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示層と前記集光層とが一体に設けられている、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記集光層は、一面側から入力された入力光を拡散する拡散層と、前記拡散層の他面側に設けられ出力光の光路を所定方向に屈折させる屈折層とを備える、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記屈折層は、プリズムアレイにより形成されている、
請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記屈折層は、レンズアレイにより形成されている、
請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記光学素子と前記表示層との間に配置され前記表示層から出力される光線の範囲を制限するルーバーを備える、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を空中に表示可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染対策のために非接触にて操作可能な表示画像を空中に表示させる空中ディスプレイ装置が注目を集めている(非特許文献1参照)。空中ディスプレイ装置は、センサーと組み合わせることにより、空中に表示された表示画像に直接触れる動作を行うことで操作を可能とし、画面に直接触れて操作するタッチパネルに比して衛生的である。空中ディスプレイ装置の製品の1つに株式会社アスカネットが製造・開発するASKA3D(登録商標)が知られている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-105744号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】津村明宏,“図解で見る 電子デバイスの今(45)空中の仮想画面にタッチ コロナで注目の非接触技術”,エコノミスト,98(36), pp.82-84, 2020
【非特許文献2】山本裕紹,“空中ディスプレイの開発と応用展開”,シーエムシー出版, pp.35-45, 2018
【非特許文献3】Sungwon Choi, Sungwoong Park, and Sung-Wook Min, "Design of ghost-free floating 3D display with narrow thickness using offset lens and dihedral corner reflector arrays", Opt. Express 28, pp.15691-15705, 2020
【非特許文献4】Yuta Yoshimizu and Eiji Iwase, "Radially arranged dihedral corner reflector array for wide viewing angle of floating image without virtual image," Opt. Express 27, pp.918-927, 2019
【非特許文献5】平谷光佑,岩井大輔,佐藤宏介,“再帰透過光学系による空中像投射を用いた影なしプロジェクションマッピングの試み”,システム制御情報学会研究発表講演会講演論文集62, 2018
【非特許文献6】星彩水,木内舜司,小泉直也,“環境反射空中像装置において迷光を見せないための設計”,第25回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集,2B3-1,2020
【非特許文献7】大里柚衣,小泉直也,“奥行き方向へ高速に移動する空中像を提示する光学系”,信学技報 118(502), pp.73-78, 2019
【非特許文献8】Yuto Osada and Yue Bao, “Design of Ghost-free Aerial Display by Using Polarizing Plate and Dihedral Corner Reflector Array”, 5th International Conference on Imaging, Signal Processing and Communications, IC013, 2021
【非特許文献9】田村仁,“表色系と色空間”,http://www3.nit.ac.jp/~tamura/multimedia/color.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空中ディスプレイ装置によれば、液晶ディスプレイなどに表示された表示画像を空中に結像して表示できる。空中ディスプレイ装置によれば、利用者はメガネなどの装置を着用することなく空中画像を視認することができる。しかし、空中ディスプレイ装置は、空中画像の形成に寄与しない光によって迷光が生じ、空中画像に対して複数のゴーストと呼ばれる虚像が発生すると共に、空中画像の輝度が低下するという課題がある(非特許文献2-4参照)。
【0006】
本発明は、空中画像の表示においてゴーストを抑制しつつ、輝度を向上させる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、本発明の一態様は、画像表示面に画像を表示する表示層と、前記表示層に表示された前記画像の発光に基づく入力光を入力し前記画像を空中に結像した空中画像を生成する光学素子と、前記表示層から出力される光を前記所定角度範囲に集光し、前記光学素子に入力させる集光層と、を備える表示装置である。
【0008】
本発明によれば、集光層が表示層から出力される光をゴーストが発生しない所定角度範囲に集光し光学素子に入力させるため、空中画像の表示においてゴーストを抑制しつつ、輝度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の前記表示層は、一面側に光源を有し他面側に設けられた前記画像表示面に前記画像を生成し、前記集光層は、前記表示層の一面側又は他面側に設けられているように構成されていてもよい。
【0010】
本発明によれば、表示層に光源が設けられている場合において、集光層が光源から出力される光を所定角度範囲に集光して出力し、表示層に光を入力させることにより、表示層から出力される画像の光を所定角度範囲に集光し、光学素子に入力させることができる。
【0011】
また、本発明の前記表示層は、一面側から前記画像が投射され他面側に前記画像を表示するスクリーンであり、前記集光層は、前記表示層の他面側又は一面側に設けられていてもよい。
【0012】
本発明によれば、表示層が投射装置により出力された画像が投射されるスクリーンである場合においても集光層によりゴーストを低減すると共に、空中画像の輝度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の前記表示層と前記集光層とが一体に設けられていてもよい。
【0014】
本発明によれば、投射装置により出力された画像が投射されるスクリーンを集光層により構成することができ、装置構成を簡略化することができる。
【0015】
また、本発明の前記集光層は、一面側から入力された入力光を拡散する拡散層と、前記拡散層の他面側に設けられ出力光の光路を所定方向に屈折させる屈折層とを備えていてもよい。
【0016】
本発明によれば、集光層を様々な構成により形成することができる。
【0017】
また、本発明の前記屈折層は、プリズムアレイにより形成されていていてもよい。
【0018】
本発明によれば、屈折層をプリズムアレイにより形成することにより、同様の効果を有するレンズに比して層厚を薄く構成することができる。
【0019】
また、本発明の前記屈折層は、レンズアレイにより形成されていてもよい。
【0020】
本発明によれば、屈折層をレンズアレイにより形成されていることにより、同様の効果を有するレンズに比して層厚を薄く構成することができる。
【0021】
また、本発明は、前記光学素子と前記表示層との間に配置され前記表示層から出力される光線の範囲を制限するルーバーを備えていてもよい。
【0022】
本発明によれば、ルーバーが表示層から出力される光を所定の入射角に制限して入力することにより、光学素子にゴーストが発生しない角度範囲において光を入力し、ゴーストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、空中画像の表示においてゴーストを抑制しつつ、輝度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。
図2】光学素子の構成の一部を示す斜視図である。
図3】光学素子の原理を概略的に説明する図である。
図4】光学素子の内部構造において光が屈折する回数と空中画像及びゴーストの発生との関係を示す図である。
図5】光学素子に入力される光の領域と空中画像及びゴーストの発生との関係を示す図である。
図6】ゴーストを低減する従来手法の原理を説明する図である。
図7】表示装置の原理を説明する図である。
図8】表示装置のゴーストを低減する原理を説明する図である。
図9】表示装置及び従来手法により生成された空中画像の一例を示す図である。
図10】表示装置及び従来手法により生成された空中画像及びゴーストの輝度の算出結果を示す図である。
図11】レンズ拡散板を用いた表示装置により生成された空中画像と従来手法により生成された空中画像とを比較する図である。
図12】変形例1に係る表示装置の構成を示す図である。
図13】変形例1に係る表示装置により生成された空中画像と従来手法により生成された空中画像とを比較する図である。
図14】変形例2に係る表示装置の構成を示す図である。
図15】変形例2に係る表示装置により生成された空中画像と従来手法により生成された空中画像とを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示されるように、表示装置1は、例えば、画像表示面に画像を表示する表示層2と、表示層2に表示された画像を空中に結像した空中画像を生成する光学素子3と、表示層2の一面側又は他面側に配置された集光層4と、を備えている。図1には、表示装置1を平面視した構成が示されている。
【0026】
光源5は、例えば、白色の光を出力するLED(Light Emitting Diode)電球である。光源5は、表示層2に白色光を入力可能であれば、白色LED素子と板状の光拡散板により面的に発光する面光源に構成されていてもよい。光源5は、白色光レーザーから出力される光を2軸方向に回転可能なミラーに反射させ2次元的に走査して2次元的に発光させるように構成されていてもよい。光源5から出力された光は、集光層4に入力される。
【0027】
図1の例では、集光層4は、表示層2の一面2A側(裏面側)に設けられている。即ち、集光層4は、光源5と表示層2との間に配置されている。集光層4は、光源5と距離L1(例えば、30cm)離間して配置されている。集光層4は、光を一面4A側から入力し他面4B側(表面側)から出力する際に光を所定角度範囲に集光するように構成されている。集光層4は、表示層2から出力される光を所定角度範囲に集光し、光学素子3に入力させる。集光層4の原理及び動作の詳細については、後述する。集光層4の他面4B側(表面側)には、表示層2が配置されている。表示層2は、集光層4と距離L2(例えば、1.5cm)離間して平行に配置されている。
【0028】
表示層2は、例えば、透過型の液晶ディスプレイ装置2Cである。表示層は、一面側に光源を有し他面側に設けられた画像表示面に画像を生成する。表示層2の一面2A側(裏面)には、光源5から出力されたバックライト光が入力される。表示層2は、制御装置10により制御されている。表示層2は、制御装置10から出力された制御信号に基づいて他面2B側に設けられた画像表示面に画像を生成する。表示層2は、一面2A側から光源5から出力されたバックライト光を入力する。表示層2は、入力された光を透過し他面2B側である画像表示面に発光した画像を表示する。
【0029】
表示層2は、他面2B側に光学素子3が配置されている。光学素子3は、平面視して表示層2に対して所定角度(例えば、45°)をなして配置されている。光学素子3は、一面側に配置された表示層2に表示された画像の発光に基づく入力光を入力し、他面側において画像表示面と面対象の位置において画像と同じ空中画像Kを空中投射する。即ち、空中画像Kは、平面視して光学素子3に対して所定角度(例えば、45°)をなし位置に空中投射される。
【0030】
制御装置10は、光源5及び表示層2を制御する。制御装置10は、光源5及び表示層2を制御して表示層2に画像を表示させる制御部11と、制御に必要なデータが記憶された記憶部12とを備えている。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶部12に設けられたHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVD(Digital Versatile Disc)やCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0031】
図2に示されるように、光学素子3は、光が入力される第1層3Aと、光を出力する第2層3Bとが層状に配置されている。光学素子3は、2層のミラーアレイが直交するDCRA(Dihedral Corner Reflector Array)構造を有している(非特許文献5参照)。第1層3Aは、例えば、平行に配置された複数の第1反射面3A1を有している。第1反射面3A1は、帯状に形成されている。第1反射面3A1の表面は、光を反射するミラーに形成されている。第1反射面3A1は、例えば、薄い金属板により形成されている。第1反射面3A1は、表面が金属コーティングされた樹脂板により形成されていてもよい。第1反射面3A1は、短手方向が光の入力方向に対して沿うように配置される。第1層3Aにおいて隣接する第1反射面3A1同士は、長手方向が平行になるように配置される。
【0032】
第2層3Bは、第1層3Aに重層に設けられている。第2層3Bは、平面視して第1反射面3A1の直交方向に平行に配置された複数の第2反射面3B1を有している。第2反射面3B1は、第1反射面3A1と同形状の帯状に形成されている。第2反射面3B1は、第1反射面3A1と同じ素材、構造により形成されている。第2反射面3B1は、短手方向が光の入力方向に対して沿うように配置される。第2層3Bにおいて隣接する第2反射面3B1同士は、長手方向が平行になるように配置される。複数の第2反射面3B1は、複数の第1反射面3A1と直交方向に配置されている。
【0033】
図3に示されるように、光学素子3において入射光が第1層3Aに入力され、第1反射面3A1において1回目の反射が起こり、第1反射光が第2層3Bに入力され、第2反射面3B1において2回目の反射が起こり、第2反射光が第2層3Bから出力される。このとき、入力光は、光学素子3を通過する際に複数の第1反射面3A1及び第2反射面3B1により細かい光線に分割された出力光として出力される。出力光は、入力光の位置に対して光学素子3に関して線対称の位置において、入力光の空中画像として結像される。光学素子3は、入力光を細かい光線に分割し、反射させ幾何光学的にそれらを集めて光の集合による実像として空中に結像させる。
【0034】
図4に示されるように、光学素子3は、内部の光の反射回数に応じて異なる像を形成する(非特許文献2参照)。光源から出力された光線は、光学素子3の内部の各層で奇数回反射した場合、光学素子3から出力された後、空中画像として結像される。光学素子3に入力された光は、第1層3Aにおいて奇数回反射すると共に、第2層3Bにおいて偶数回反射した場合、光学素子3から出力された後、元の光が鏡像反射して結像される。鏡像反射した光は、空中像のゴーストとして出力される。光学素子3内における各層の光の反射回数は、光線の入射角度に依存する。
【0035】
図5に示されるように、光学素子3は、表示層2から入力される光の入射角に基づいて空中画像KとゴーストGとを生成する。光学素子3は領域R1に光が入力されると空中画像Kを結像し、領域R2に光が入力されるとゴーストGを生成する。例えば、表示層2の画素2Gを透過して出力される光は、ゴーストGが生成される領域R2において光学素子3に入力される。そのため、光学素子3からは、空中画像Kが生成されると共に、ゴーストGも生成される。
【0036】
図6に示されるように、ゴーストを除去するための従来方法が提案されている(特許文献1参照)。この提案方法における装置は、光学素子3の光の入力面となる一面側に視野角を制限するフィルム状に形成されたルーバーVを配置するように構成されている。ルーバーVは、表示層2から出力された光線Lが光学素子3に入力される際の入射角を例えば、30°以下に制限する。この装置によれば、ルーバーVにより光学素子3に入力される光の入射角を制限することにより、ゴーストの発生を抑制することができる。しかしながら、この装置によれば、ルーバーVにより光学素子3に入力される光の光量が制限され、出力される空中画像の明るさが低下するという課題があった。
【0037】
非特許文献6には、シミュレーションに基づいてゴーストを低減する方法が提案されている。しかし、この提案手法によれば、光源5と光学素子3との間の距離が100mmである場合、空中ディスプレイを約2m上方から見下ろす必要があり、実現性に課題があった。また、非特許文献3には、フレネルレンズとミラーを利用し、ゴーストを低減した3D空中ディスプレイが提案されている。しかし、この提案手法によれば、同心円状に溝が形成されたフレネルレンズによって空中画像の明瞭さが減少するという課題があった。
【0038】
非特許文献4には、放射状に配置されたDCRAに基づいて広視野角を有する空中ディスプレイが提案されている。この提案手法によれば、理論上、視野角を±90°に構成することができる。しかしながら、この提案手法によれば、大きな光源を使用した場合、空中像に歪が生じると共に、大きな迷光が表示されるという課題があった。この解決には大きなDCRAの使用や光源とDCRA間の距離を離すことが必要である。しかし、非特許文献7によれば、光源とDCRA間の距離を離すことはその距離の増加に依存して空中像がぼける問題を発生させる。また、この提案手法によれば、スペース効率も減少するという課題があった。
【0039】
非特許文献8には、偏光板に基づいて光学素子3から出力されるゴーストを除去方法が提案されている。この提案手法によれば、偏光板を用いてDCRAに入力される光を制限するため、空中画像の明るさが低下するという課題があった。以下、表示装置1においてゴーストを低減する原理について説明する。
【0040】
図7に示されるように、表示装置1は、光源5と表示層2との間に集光層4が設けられている。表示層2は、例えば、透過型液晶ディスプレイである。集光層4は、表示層2の光の入力側となる一面側に設けられている。集光層4は、一面側から入力された入力光を拡散する拡散層と、拡散層の他面側に設けられ出力光の光路を所定方向に屈折させる屈折層とを備えている。集光層4は、例えば、プリズムアレイ4Pにより構成されている(図7(A)参照)ものや、レンズ拡散板4R(登録商標)により形成されている(図7(B)参照)ものがある。
【0041】
図7(A)に示されるように、集光層4において拡散層は、例えば、入力光を拡散して面的に発光させる拡散板4Kにより形成されている。集光層4において屈折層は、例えば、発光した光を所定角度範囲に集光するプリズムアレイ4Pにより形成されている。プリズムアレイ4Pは、例えば、個々のプリズムが異なる頂角をもつ四角錐状のマイクロプリズムがマトリクス状に配置され、光学レンズと同様に機能するように形成されている。屈折層は、プリズムアレイ4Pだけでなく、光を所定角度範囲に集光させることができれば他の構成に置き換えられてもよい。
【0042】
図7(B)に示されるように、集光層4は、例えば、入力光を拡散して面的に発光させる拡散板の表面に微小なレンズアレイが形成されたレンズ拡散板4Rにより形成されている。レンズ拡散板4R(レンズアレイ)は、拡散層と屈折層が一体に形成されている。レンズ拡散板4Rは、例えば、入力される光を所定角度範囲に集光して面的に発光させるように形成されている。レンズ拡散板4Rは、例えば、10°の所定角度範囲において出力光を集光する。集光層4は、レンズ拡散板4Rだけでなく、光を所定角度範囲に集光させることができれば他の構成に置き換えられてもよい。
【0043】
上記構成により、表示装置1は、光源から出力された光を空中画像が形成される入射角の範囲内で集光させて光学素子3に入力させることにより、空中に結像されるゴーストを除去するように構成されている。表示装置1は、従来手法(図5参照)に比してゴーストを形成する光線を遮光するのではなく、光線を所定角度範囲に集光させるため、生成される結像の輝度が向上する。
【0044】
図8に示されるように、表示装置1によれば、集光層4が設けられているため、表示層2には、所定角度範囲に集光された光が入力される。これにより、表示層2の画素2Gを透過して出力される光は、ゴーストGが発生しない所定角度範囲の領域R1に集光されて出力される。表示層2から出力される光は、領域R1に集光されて光学素子3に入力されるため、光学素子3から出力される空中画像KにはゴーストGが発生しない(図5参照)。
【0045】
更に、表示装置1によれば、集光層4により光を領域R2に集光するため、ルーバーVを用いて光学素子3に入力される光を制限する従来手法(特許文献1参照)や偏光板を用いて光学素子3に入力される光を制限する従来手法(非特許文献8参照)等に比して光量が増加する。
【0046】
次に、表示装置1(図1参照)と、従来手法との比較実験について説明する。従来手法は、光学素子3単体を用いる構成、ルーバーVを用いる構成(図6、特許文献1参照)、偏光板を用いる構成(非特許文献8参照)である。表示装置1は、集光層4にプリズムアレイを用いる構成(図7(A)参照)、及びレンズ拡散板を用いる構成(図7(B)参照)である。暗室にて各手法で表示した画像を撮影し、空中画像とゴーストをトリミングした。
【0047】
トリミングは光学素子3単体の座標を基準にして行った。観測された空中画像の輝度は、空中画像をグレースケール化した画像の1チャンネルの画素値の平均値Yに基づいて算出した。空中画像のグレースケール化には、人の目の色覚特性に基づく式(1)(非特許文献9参照)に基づいて算出した。
Y=(0.298912×R/255+0.586611×G/255+0.114478×B/255) (1)
ここで、結果の比較を容易にするために、RGBの値を255で除して正規化した。
【0048】
図9には、従来手法に基づく空中画像の生成結果と表示装置1に基づく空中画像の生成結果が示されている。光学素子3単体に基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストも生成された(図9(A)参照)。光学素子3とルーバーVとを用いる構成に基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストが抑制された(図9(B)参照)。光学素子3と偏光板とを用いる構成に基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストは抑制されたが輝度が低下した(図9(C)参照)。光学素子3とプリズムアレイとを用いる表示装置1に基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストが抑制されると共に、従来手法に比して輝度が高まった(図9(D)参照)。光学素子3とレンズ拡散板とを用いる表示装置1に基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストが抑制されると共に、プリズムアレイを用いる表示装置1に比して輝度が高まった(図9(E)参照)。
【0049】
図10には、輝度の算出結果が示されている。図示するように、レンズ拡散板を用いる表示装置1に基づく空中画像の輝度が他の手法に基づく空中画像の輝度に比して高いことが確認された。レンズ拡散板を用いる表示装置1によれば、生成される空中画像の輝度は、従来手法に比して少なくとも3.2倍となった。また、レンズ拡散板を用いる表示装置1によれば、生成されるゴーストの輝度は光学素子3単体の19.9%であることが確認された。レンズ拡散板を用いる表示装置1の空中画像撮像画像(図9(E)参照)は、白飛びが生じている。正確に比較するため、レンズ拡散板を用いる表示装置1に基づく空中画像を光学素子3単体に基づく空中画像の撮像時の18倍のシャッタースピードで撮影した。
【0050】
図11には、光学素子3単体に基づく空中画像(図11(A)参照)とレンズ拡散板を用いる表示装置1に基づく空中画像(図11(B)参照)と、の比較結果が示されている。空中画像の輝度は、光学素子3単体が41.7%であり、レンズ拡散板を用いる表示装置1が46.6%であった。レンズ拡散板を用いる表示装置1に基づく空中画像の輝度は、光学素子3単体に基づく空中画像の輝度に比して1.1倍の数値となる。従って、同一の環境下における一般的な輝度単位に換算した場合、レンズ拡散板を用いる表示装置1に基づく空中画像の輝度は、光学素子3単体に基づく空中画像の輝度に比して19.8倍となる。
【0051】
上述したように、表示装置1によれば、集光層4が設けられていることにより、光学素子3に入力される光を所定角度範囲に集光することで、ゴーストの発生を抑制することができる。表示装置1によれば、集光層4にレンズ拡散板4Rを用いることで、光学素子3単体の構成に比してゴーストの輝度を19.9%に抑制することができる。表示装置1によれば、集光層4にレンズ拡散板4Rを用いることで、光学素子3単体の構成に比して空中画像の輝度を19.8倍に向上させることができる。
【0052】
[変形例1]
以下、表示装置1の変形例1について説明する。以下の説明においては、上記実施形態と同一の構成については、同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。表示装置1の表示層2は、透過型の液晶ディスプレイの他、プロジェクタにより画像が投射されるスクリーンであってもよい。
【0053】
図12に示されるように、変形例1に係る表示装置1Aは、画像を投射する投射装置8と、画像が投射される表示層2とを備えている。表示層2は、投射装置8から出力された画像を投射するスクリーンである。表示層2は、例えば、レンズ拡散板4Rにより構成されている。即ち、表示装置1Aにおいては、表示層2と集光層4が一体に設けられている。投射装置8から出力される画像は、レンズ拡散板4Rの一面4RA側に投射される。レンズ拡散板4Rは、画像を他面側に透過させると共に、他面4RB側において画像から生じる光を所定角度範囲に集光する。レンズ拡散板4Rから出力される光は、光学素子3の一面側に入力される。光学素子3は、他面側のレンズ拡散板4Rと線対称の位置に空中画像Kを結像させる。
【0054】
図13には、投射装置8に基づいて表示される空中画像Kの一例が示されている。図13(A)に示されるように表示装置1Aによれば、レンズ拡散板4Rに基づいて空中画像Kが表示される。図13(B)には、表示層2にコピー用紙をスクリーンとして用いた場合の比較例による空中画像Kが示されている。比較例における空中画像Kには、ゴーストが生じている。表示装置1Aによれば、比較例に比してゴーストを抑制すると共に、空中画像Kの輝度を高めることができる。
【0055】
表示装置1Aにおいて、表示層2と集光層4は一体に構成されているものを例示しているが、表示層2は、投射装置8から出力される画像を投射するスクリーンとレンズ拡散板4Rとにより別体に構成されていてもよい。この場合、レンズ拡散板4Rは、投射装置8から出力される画像が投射されるスクリーンの一面側に設けられていてもよいし、画像が透過して表示される他面側に設けられていてもよい。
【0056】
また、表示装置1Aにおいて、レンズ拡散板4Rは、拡散板4Kとプリズムアレイ4Pとにより置き換えられてもよい。この場合、拡散板4Kがスクリーン(拡散層及び表示層2)として機能し、プリズムアレイ4Pが屈折層として機能する。この場合、プリズムアレイ4Pは、投射装置8から出力される画像が投射される拡散板4Kの一面側に設けられていてもよいし、画像が透過して表示される画像表示面となる他面側に設けられていてもよい。
【0057】
変形例1に係る表示装置1Aによれば、レンズ拡散板4Rをスクリーン(表示層2)として機能させ、投射装置8から出力される画像に基づいて空中画像Kを生成することができる。表示装置1Aによれば、レンズ拡散板4Rによりゴーストを低減すると共に、空中画像Kの輝度を向上させることができる。
【0058】
[変形例2]
以下、変形例2に係る表示装置1Bについて説明する。以下の説明においては、上記実施形態と同一の構成については、同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。
【0059】
図14に示されるように、変形例2に係る表示装置1Bは、光学素子3と表示層2との間にルーバーVが配置されている。光学素子3は表示層2に対して所定角度(例えば、45°)をなして配置されている。表示層2は、透過型の液晶ディスプレイ装置2Cである。光学素子3の光の入力側となる一面3E側には、ルーバーVが設けられている。ルーバーVは、図のZ軸方向に見て、X軸方向に沿って入力される光線の範囲を制限する。ルーバーVは、表示層2の画像表示面(他面2B)側と対向して配置されている。表示層2の一面2A側には、レンズ拡散板4Rが設けられている。レンズ拡散板4Rは、例えば、出力される光を所定角度範囲(例えば、40°)に集光して出力する。レンズ拡散板4Rにバックライトを入力する。
【0060】
光源5は、例えば、面光源5Aに形成されている。面光源5Aは、例えば、光を拡散する拡散板とLED光源とを備える直下型方式や、端面から入力された光を導光する導光板とLED光源とを備えるエッジライト方式等により構成されている。面光源5Aは、白色光を出力する有機EL板により構成されていてもよい。
【0061】
表示装置1Bによれば、光源5から出力される光は、レンズ拡散板4Rに入力される。レンズ拡散板4Rに入力された光は、所定角度範囲に集光されて出力され、表示層2に入力される。表示層2に入力された光は、表示層2の各画素2Gを透過し、画像表示面側から出力される。各画素2Gから出力される光は、所定角度範囲に集光されてルーバーVに入力される(図8参照)。ルーバーVは、上述したように、表示層2から出力される光線の範囲を制限するフィルム状に形成されている。各画素2Gから出力される光は、例えば、ルーバーVの入射角以下に集光されてルーバーVに入力される。ルーバーVは、所定の入射角において光を入力して出力し、光学素子3の一面3E側に入力する。
【0062】
光学素子3は、入力された光に基づいて他面3F側の空中に空中画像を結像させる。ルーバーVは、表示層2から出力される表示画像の光を所定の入射角に制限して入力することにより、光学素子3にゴーストが発生しない角度範囲において光を入力し、ゴーストを抑制することができる(図6、特許文献1参照)。ルーバーVには、表示層2から出力された光が所定の視野角(入射角)以下に集光されるため、光学素子3が結像する空中画像の輝度が従来手法(図6、特許文献1参照)に比して向上する。
【0063】
図15には、表示装置1Bにより生成された空中画像と従来手法により生成された空中画像との比較結果が示されている。光学素子3単体に基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストも生成された(図15(A)参照)。光学素子3とルーバーVとを用いる構成に基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストが抑制された(図15(B)参照)。光学素子3とルーバーVと集光層4とを用いる表示装置1Bに基づいて空中画像を結像させた場合、ゴーストが防止されると共に、従来技術(図15(A)、図15(B))に比して、輝度が向上した。
【0064】
表示装置1Bによれば、表示層2から出力される表示画像の光をルーバーVの視野角以下に集光してルーバーVに入力し、光学素子3に入力するため、光学素子3の他面側の空中に結像される空中画像には、ゴーストが発生しない。表示装置1Bによれば、表示層2から出力される表示画像の光をルーバーVの視野角以下に集光してルーバーVに入力し、光学素子3に入力するため、空中画像の輝度を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、表示装置1において、集光層4は、表示層2の一面2A側だけでなく、画像表示面となる他面2B側に設けられていてもよい。表示装置1において、表示層2は、透過型の液晶ディスプレイだけでなく、有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイであってもよい。この場合、光源5は設けられていなくてもよく、集光層4は、表示層2の画像が表示される画像表示面となる他面2B側に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B 表示装置
2 表示層
3 光学素子
4 集光層
4P プリズムアレイ
4R レンズ拡散板(レンズアレイ)
5 光源
K 空中画像
V ルーバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15