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特開2023-103852レンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103852
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20230720BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20230720BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20230720BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230720BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20230720BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20230720BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B17/08
G02B7/02 B
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G03B30/00
G03B15/00 V
H04N5/225 100
H04N5/225 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004619
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 和輝
【テーマコード(参考)】
2H044
2H101
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AB10
2H044AB12
2H044AB15
2H044AB21
2H044AB28
2H044AD01
2H044AD02
2H044AD03
2H044AJ06
2H101CC53
2H101CC54
5C122DA14
5C122EA02
5C122GE05
5C122GE11
5C122GE21
(57)【要約】
【課題】接着剤によるレンズ間空間内の密閉性を維持しつつ、反射防止膜と墨との重合部分における接着剤に伴う墨の剥離を防止できるレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体を提供する。
【解決手段】本発明において、第1のレンズ13および第2のレンズ14は、第1のレンズ13と第2のレンズ14との間のレンズ間空間S1内が外部に対して密閉されるように、光軸方向で互いに対向するそれらの環状の座面13a,14a同士が接着剤層40によって気密状態で接着される。第1のレンズ13の座面13aは、遮光用の墨60が塗布されて成るとともに、レンズ間空間S1に面する第1のレンズ13の空間対向面13dから延びる反射防止膜50上に墨60が重なり合う重合部70を径方向内側に有する。また、接着剤層40の径方向内側端40aが重合部70よりも径方向外側に位置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
前記レンズ群は、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する第2のレンズとを有し、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間のレンズ間空間内が外部に対して密閉されるように、前記第1のレンズおよび前記第2のレンズは、光軸方向で互いに対向するそれらの環状の座面同士が接着剤層によって気密状態で接着され、
前記第1のレンズの前記座面は、遮光用の墨が塗布されて成るとともに、前記レンズ間空間に面する前記第1のレンズの空間対向面から延びる反射防止膜上に前記墨が重なり合う重合部を径方向内側に有し、
前記接着剤層の径方向内側端が前記重合部よりも径方向外側に位置されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記重合部へ向かう径方向内側への接着剤の流れを規制して前記接着剤層の前記径方向内側端を前記重合部よりも径方向外側に保持する規制保持部が前記第2のレンズの前記座面に設けられることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記規制保持部は、前記第2のレンズの前記座面に形成される環状溝であることを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記規制保持部は、前記第2のレンズの前記座面に形成される環状の段差部であることを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットの前記レンズ群を通じて集光される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項6】
車両に搭載される車載システムであって、
請求項5に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールの前記撮像素子から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なう制御部と、
を有することを特徴する車載システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車載システムと乗員への情報を出力する出力装置とを搭載した移動体であって、
前記制御部は、前記対象物の認識情報を前記出力装置に出力するように構成されていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成し得るレンズユニット、カメラモジュール、車載システム、および、車載システムを搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特に車載カメラ用のレンズユニットでは、少なくとも一部が車外に設置される場合、防水および防塵のため、図8に示されるように、鏡筒102の内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ100と鏡筒102との間にOリング104が介挿され、鏡筒102の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、例えば、第1のレンズ100の外周側面100aに、該レンズ100の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部100bが設けられ、この縮径部100bにOリング104が装着されて、第1のレンズ100の外周側面100aと鏡筒102の内周面102aとの間でOリング104が径方向で圧縮されることにより、鏡筒102の物体側端部が封止された状態となっている。
【0004】
さらに、鏡筒102は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(図8において上端部)のカシメ部123が径方向内側にカシメられることにより、第1のレンズ100をこのカシメ部123で鏡筒102の物体側端部に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-231993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したようにOリング104によって防水対策を行なっても、湿気(水蒸気)は様々な経路を通じてレンズユニット内に侵入し得る。そのため、外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなると、レンズユニット内の水蒸気が凝縮してレンズ表面に結露が生じる。特に、外部との温度差の影響が最も大きい第1のレンズ100とこれに隣接する第2のレンズ101との間のレンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が生じ易い。
【0007】
外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなる要因としては、外気が冷たい冬期にレンズユニット内の温度が上昇すること、例えばレンズユニットを通じて集光される光を受光して電気信号に変換するための常時通電されたイメージセンサ(撮像素子)から伝わる熱によりレンズユニット内の温度が上昇すること、あるいは、前記イメージセンサや周囲環境(例えば車両のエンジン)からの熱によりレンズユニット内の温度が高い状態で第1のレンズ100の表面100dが外気や雨等に晒されたりするなどして第1のレンズ100が冷却されることなどが挙げられる。
【0008】
また、レンズユニット内への水蒸気の侵入を許容する経路としては、例えば、鏡筒102のカシメ部123と第1のレンズ100との間の隙間からOリング104の周囲の一部並びに第1のレンズ100と鏡筒102および/または第2のレンズ101との間の隙間を通じてレンズ間空間S1等へと至る経路、あるいは、鏡筒102を形成する透湿性の樹脂を介しての経路などを挙げることができる。さらに、レンズユニットの像側に配置されたイメージセンサ(撮像素子)は動作時に100度前後に上昇するが、その際イメージセンサが搭載された基板に含まれる水分が水蒸気化してレンズ間空間S1に到達する経路もある。
【0009】
いずれにしても、このような経路を通じて水蒸気がレンズユニット内に侵入し、前述したような要因により外気とレンズユニット内との間で温度差が生じると、レンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が起こり、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなる(視認性が悪化する)。したがって、レンズユニットの気密性を更に一層確保して、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑制することが求められる。
【0010】
そのため、従来においては、例えば、図9に示されるように、互いに対向する第1および第2のレンズ100,101の面同士の間、すなわち、第1のレンズ100の像側に面する座面(フランジ)100eと第2のレンズ101の物体側に面する座面(フランジ)101aとの間に、接着剤131を介在させ、この接着剤131によってレンズ100,101同士を互いに気密状態で接着させることにより、第1のレンズ100と第2のレンズ101との間のレンズ間空間S1内を外部に対して密閉するようにしている。
【0011】
しかしながら、例えば、第1のレンズ100がガラス製で、第2のレンズ101が樹脂製であれば、一般に、図示のごとく、第2のレンズ101の座面101aと対向する第1のレンズ100の座面100e上に、遮光およびゴースト防止の目的で墨130が塗布されることから、特に接着剤131として透湿性が低いエポキシ系やアクリル系などの高硬度の接着剤が用いられる場合には、温度変化によるレンズ100,101の膨張収縮時に、接着剤131がその膨張収縮に追従できず、接着剤131と接触する墨130が第1のレンズ100側から剥離してしまう虞がある。そして、このような墨130の剥離現象は、特に、第1のレンズ100の像側の座面100eに塗布された反射防止膜132上に墨130が重ねて塗布されている場合に、その重合部分140で生じ易い。
【0012】
一般に、反射防止膜132上に墨130が重なり合う重合状態(重合部分140)は、反射防止膜132の塗布後に行なわれる心取り加工に伴う削りかす除去のための洗浄工程に対する墨130の低い耐性に起因して反射防止膜132の塗布および洗浄工程の後に墨130を塗布せざるを得ない状況で、第1のレンズ100の像側の裏面100c上にレンズ有効径範囲内でのみ塗布されるべき反射防止膜132がその塗布過程で不可避的にレンズ有効径を越えて墨130の塗布領域である座面100eの領域にまで侵入してくる場合に起こり得るが、そのような重合状態では、第1のレンズ100の座面100e上に直接に墨130が塗布される場合と比べて墨130の密着性が弱まり、高温高湿環境下で墨130が剥離し易くなる。また、第1のレンズ100の座面100e上に墨130を塗布する際の塗布開始点および塗布終了点では墨130が凸状に溜まり易く、カシメ部123による前述したカシメ時にその溜まった墨の凸部に応力が集中することも、墨の塗布開始点または塗布終了点となり得る重合部分140で墨130の剥離が生じ易い一因となり得る。したがって、このようにそれ自体のみでも墨130の剥離が生じ易い重合部分140で、さらに硬質の接着剤131をレンズ100,101間に介在させることは、レンズ100,101の膨張収縮時における墨130の剥離現象誘発の可能性を増大させる結果となり、望ましくない。
【0013】
また、このような墨130の剥離は、剥離部位が外部から視認可能であるため、結果的に外観を悪化させる。また、剥離領域、特に、剥離されていない墨部位と剥離されている墨部位との境界領域は、ゴースト発生の原因にもなる。
【0014】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、接着剤によるレンズ間空間内の密閉性を維持しつつ、反射防止膜と墨との重合部分における接着剤に伴う墨の剥離を防止できるレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
前記レンズ群は、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する第2のレンズとを有し、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間のレンズ間空間内が外部に対して密閉されるように、前記第1のレンズおよび前記第2のレンズは、光軸方向で互いに対向するそれらの環状の座面同士が接着剤層によって気密状態で接着され、
前記第1のレンズの前記座面は、遮光用の墨が塗布されて成るとともに、前記レンズ間空間に面する前記第1のレンズの空間対向面から延びる反射防止膜上に前記墨が重なり合う重合部を径方向内側に有し、
前記接着剤層の径方向内側端が前記重合部よりも径方向外側に位置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の上記構成によれば、レンズ間空間内の密閉性を維持する接着剤層の径方向内側端を重合部(重合部の径方向外側端)よりも径方向外側に位置させて、墨の密着性が弱く墨が剥離し易い重合部に接着剤(接着剤層)を接触させないようにしているため、例えば接着剤層を形成する接着剤として透湿性が低い高硬度の接着剤を用いた場合などにおいて、温度変化によるレンズの膨張収縮時に、その膨張収縮に追従できない接着剤によって重合部の墨が第1のレンズ側から剥離してしまうといった事態を回避できる。したがって、墨の剥離に起因する外観不良やゴースト発生を生じさせないで済む。
【0017】
なお、上記構成では、光軸方向に沿う任意の断面において、接着剤層の径方向内側端が重合部の径方向外側端よりも径方向外側に位置されていればよく、また、径方向(光軸方向に対して垂直な方向)に沿う断面において、接着剤層の径方向内側端および重合部の径方向外側端の全周にわたる形状も円形である必要がなく、任意の様々な形状を想定し得る。また、上記構成において、接着剤層を形成する接着剤の透湿度は100g/m・24hr以下であることが好ましい。また、上記構成において、「接着剤層」とは、第1および第2のレンズ同士の接着結合に関与している層を意味し、第1および第2のレンズ間に存在するがこれらのレンズ同士の接着に関与していない接着剤、例えば、接着剤層から流れ出て、第1のレンズの座面を第2のレンズの座面に結合させない(したがって、第1のレンズの座面上の墨と接触しない)接着剤は含まない。
【0018】
また、上記構成において、第2のレンズの座面には、重合部へ向かう径方向内側への接着剤の流れを規制して接着剤層の径方向内側端を重合部よりも径方向外側に保持する規制保持部が設けられることが好ましい。これによれば、規制保持部の存在により、接着剤層の径方向内側端の位置が重合部よりも径方向外側に確実に保持され、重合部に対する接着剤の接触が確実に防止される。したがって、重合部における墨の剥離を確実に回避できる。この場合、規制保持部は、例えば、第2のレンズの前記座面に形成される環状溝または環状の段差部であってもよい。
【0019】
また、本発明は、前述のレンズユニットを有するカメラモジュール、該カメラモジュールを有する車載システム、車載システムを搭載して成る移動体も提供する。このようなカメラモジュール、車載システム、移動体によっても前述したレンズユニットと同様の作用効果を得ることができる。なお、「移動体」とは、移動できる物体の全てを指し、例えば車両等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1および第2のレンズの座面同士を接着剤層によって気密状態で接着するとともに、接着剤層の径方向内側端を重合部よりも径方向外側に位置させて、重合部に接着剤層の接着剤を接触させないようにしているため、接着剤によるレンズ間空間内の密閉性を維持しつつ、反射防止膜と墨との重合部分における接着剤に伴う墨の剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの光軸方向に沿う概略断面図である。
図2図1のレンズユニットの第1および第2のレンズの座面接着結合部の光軸方向に沿う拡大断面図である。
図3】第1および第2のレンズの座面接着結合部の第1の変形例を示す光軸方向に沿う拡大断面図である。
図4】第1および第2のレンズの座面接着結合部の第2の変形例を示す光軸方向に沿う拡大断面図である。
図5図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを備える撮像システム(車載システム)が搭載される移動体としての車両の概略図である。
図7図6の撮像システムを構成する撮像装置の構成を示すブロック図である。
図8】従来のレンズユニットの一例を示す光軸方向に沿う概略断面図である。
図9図8のレンズユニットの第1および第2のレンズの座面接着結合部の光軸方向に沿う拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、本実施形態は、特にセンシングシステムにおいて信頼性の高いシステムを実現でき、強靭なインフラの開発に貢献するものであり、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の、「9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。」をターゲットとするものである。
なお、以下で説明される本実施形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、前述した図8および図9を含む全ての図において、レンズについてはハッチングを省略している。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製(金属製であっても構わない)の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17および第6のレンズ18から成る6つのレンズと、3つの絞り部材22a,22b,22cとを備えている。この場合、第3のレンズ15は、第2のレンズ14と第4のレンズ16との間に介挿された円筒状を成す樹脂製の中間スペーサ30の内側保持部によって保持されており、この内側保持部は、中間スペーサ30の内周面に形成された段部30aによって第3のレンズ15を像側から保持している。また、中間スペーサ30はその内径側の上部にカシメ部30bを有しており、このカシメ部30bは、第3のレンズ15の像側の段差面15aを中間スペーサ30の段部30aに対して光軸方向で押し付けるようにして径方向内側に熱的にカシメられている。
【0024】
また、本実施の形態では、第2のレンズ14と中間スペーサ30との間、中間スペーサ30と第4のレンズ16との間、および、第5のレンズ17と第6のレンズ18との間にそれぞれ絞り部材22a,22b,22cが介挿されており、これらの絞り部材22a,22b,22cは、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0025】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17,18は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置される第1のレンズ13は、物体側に凸面を有するとともに像側に凹面を有する球面ガラスレンズであり、また、中間スペーサ30に保持される第3のレンズ15も球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14,16,17,18は樹脂レンズであるが、これに限定されない。また、これらのレンズ13,14,15,16,17,18の表面(物体側の表面および/または像側の表面)には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0026】
また、本実施の形態において、最も物体側に位置される第1のレンズ13と鏡筒12との間にはシール部材としてのOリング26が介挿され、鏡筒12の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、第1のレンズ13の外周側面13bに、該レンズ13の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部13cが設けられ、この縮径部13cにOリング26が装着されて、第1のレンズ13の外周側面13bと鏡筒12の内周面との間でOリング26が径方向で圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部が封止された状態となっている。
【0027】
また、鏡筒12は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(図1において上端部)のカシメ部23が径方向内側にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13をこのカシメ部23で鏡筒12の物体側端部に固定する。なお、第1のレンズ13の固定は、カシメ部23に限ることなく、鏡筒12にレンズ13,14,15,16,17,18を収容した後に鏡筒12の物体側の端部に取り付けられる固定キャップによって行なわれてもよい。
【0028】
また、鏡筒12の像側の端部(図1において下端部)には、第6のレンズ18よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17,18と、中間スペーサ30と、絞り部材22a,22b,22cとが光軸方向で保持固定されている。
【0029】
図2には、最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズ13と、この第1のレンズ13とその像側で隣接する樹脂製の第2のレンズ14とが、鏡筒12に組み込まれた状態における位置関係を成して拡大して示されている。図示のように、第1のレンズ13および第2のレンズ14は、光軸Oの方向で互いに対向するそれらの環状の座面13a,14a(図1も参照)同士が接着剤層40を介して面接触している。すなわち、本実施形態では、接着剤層40を介した第1のレンズ13および第2のレンズ14の座面13a,14a同士の間の接着(気密状態での接触)によって第1のレンズ13と第2のレンズ14との間のレンズ間空間S1が外部に対して密閉状態に確保される。
【0030】
光軸Oの方向で第2のレンズ14と対向する第1のレンズ13の像側の表面は、レンズ間空間S1に面して(対向して)物体側へ向けて凹状に窪む空間対向面としての凹面13dと、凹面13dの径方向外側端縁から径方向外側へと延びる環状の前述した座面13aとによって形成されている。凹面13d上にはその全体にわたって反射防止膜50が塗布されている。この場合、反射防止膜50は、凹面13dの径方向外側端縁から座面13aの一部(座面13aの径方向内側の一部分)上にわたって径方向外側に延出している。また、座面13aは、遮光用の墨60が塗布されて成る。具体的には、座面13a上には、その全体にわたって、反射防止膜50の塗布後に塗布された遮光用の墨60が延在している。したがって、座面13aは、その径方向内側端部領域に、反射防止膜50上に墨60が重なり合う重合部70を有している。そして、本実施形態では、墨60および重合部70を伴う第1のレンズ13の座面13aと第2のレンズ14の座面14aとを接着結合する接着剤層40の径方向内側端40aが重合部70(重合部70の径方向外側端70a)よりも径方向外側に位置されている。
【0031】
なお、図2は、光軸方向に沿う一断面を示しているが、接着剤層40の径方向内側端40aは、光軸方向に沿う任意の断面において(レンズ13,14の全周にわたって)重合部70の径方向外側端70aよりも径方向外側に位置されている。また、本実施形態において、接着剤層40を形成する接着剤の硬度はD70以下であり、接着剤層40を形成する接着剤の透湿度は100g/m・24hr以下である。具体的には、本実施形態では、接着剤層40を形成する接着剤として、オレフィン系接着剤などが用いられる。また、本実施形態において、接着剤層40は、第1および第2のレンズ13,14同士の接着結合に関与しているその端部40aが重合部70の径方向外側端70aよりも径方向外側に位置されていればよく、接着剤層40から流れ出て第1のレンズ13の座面13aを第2のレンズ14の座面14aに結合させない(したがって、第1のレンズ13の座面13a上の墨60と接触しない)接着剤が第1および第2のレンズ13,14の座面13a,13b間に存在していても構わない。
【0032】
このように、本実施形態によれば、レンズ間空間S1内の密閉性を維持する接着剤層40の径方向内側端40aを重合部70よりも径方向外側に位置させて、墨60の密着性が弱く墨60が剥離し易い重合部70に接着剤(接着剤層70)を接触させないようにしているため、本実施形態のように接着剤層40を形成する接着剤として透湿性が低い高硬度の接着剤を用いた場合においても、温度変化によるレンズ13,14の膨張収縮時に、その膨張収縮に追従できない接着剤によって重合部70の墨60が第1のレンズ13側から剥離してしまうといった事態を回避できる。したがって、墨60の剥離に起因する外観不良やゴースト発生を生じさせないで済む。
【0033】
図3は、第1および第2のレンズ13,14の座面13a,14aの接着結合部の第1の変形例を示している。図示のように、この変形例では、接着剤層40を形成する接着剤が重合部70へ向けて径方向内側へ流れるのを規制して接着剤層40の径方向内側端40aを重合部70よりも径方向外側に保持する規制保持部として、環状溝14bが第2のレンズ14の座面14aに設けられている。この場合、環状溝14bは、径方向に沿うその溝幅寸法が例えば0.2mmに設定されており、環状溝14b内に接着剤層40の径方向内側端40aが収まるように、好ましくは重合部70の径方向外側端70aよりも径方向外側に形成されている。しかしながら、接着剤層40の径方向内側端40aを重合部70よりも径方向外側に保持できる範囲内で環状溝14bの径方向内側端が重合部70の径方向外側端70aよりも径方向内側に位置されていても構わない。
【0034】
図4は、第1および第2のレンズ13,14の座面13a,14aの接着結合部の第2の変形例を示している。図示のように、この変形例では、接着剤層40を形成する接着剤が重合部70へ向けて径方向内側へ流れるのを規制して接着剤層40の径方向内側端40aを重合部70よりも径方向外側に保持する規制保持部として、環状の段差部14cが第2のレンズ14の座面14aに設けられている。この場合、段差部14cは、径方向外側へ向けて斜めに立ち上がるように設けられ、第2のレンズ14の座面14aと重合部70との間の光軸方向寸法を十分な寸法(接着剤層40の径方向外側の厚さ寸法に比べて大きい寸法)に確保することにより、接着剤層40の径方向内側端部をより大きな容量で受けて、接着剤層40の径方向内側端40aを重合部70の径方向外側端70aに到達させないようにするとともに、仮に接着剤層40から流れ出る接着剤があってもそのような接着剤が重合部70と接触することを防止するようになっている。
【0035】
このように、第1および第2の変形例によれば、規制保持部14b,14cの存在により、接着剤層40の径方向内側端40aの位置が重合部70よりも径方向外側に確実に保持され、重合部70に対する接着剤の接触が確実に防止される。したがって、重合部70における墨60の剥離を確実に回避できる。
【0036】
また、図5は、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ99が像側端部に装着された図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0037】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0038】
上ケース301は、鏡筒12の外周面12aに鍔状に設けられるフランジ部25に係合されるとともに、レンズユニット11の物体側の端部を露出させて他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12aとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0039】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、外側に透明カバーを有し、その内部にCCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0040】
図6には、図5のカメラモジュール300を含む撮像装置250を備える車載システム(撮像システム)が搭載される移動体としての車両240が概略的に示されている。図示のように、撮像装置250は車両240に搭載することができ、図6は、車両240における撮像装置250の搭載位置を例示する配置例である。車両240に搭載される撮像装置250は、車載カメラと呼ぶこともでき、車両240の種々の場所に設置することができる。例えば、第1の撮像装置250aは、車両240が走行する際の前方を監視するカメラとして、フロントバンパーまたはその近傍に配置されてもよい。また、前方を監視する第2の撮像装置250bは、車両240の車室内のルームミラー(Inner Rearview Mirror)の近傍に配置されてもよい。第3の撮像装置250cは、運転者の運転状況を監視するカメラとしてダッシュボード上またはインスツルメントパネル内等に配置されてもよい。第4の撮像装置250dは、車両240の後方モニター用に車両240の後部に設置されてもよい。撮像装置250a、250bはフロントカメラと呼ぶことができる。第3の撮像装置250cは、インカメラと呼ぶことができる。第4の撮像装置250dはリアカメラと呼ぶことができる。撮像装置250は、これらに限られず、左後ろ側方を撮像する左サイドカメラおよび右後ろ側方を撮像する右サイドカメラ等、種々の位置に設置される撮像装置を含む。
【0041】
撮像装置250により撮像された画像の画像信号は、車両240内の情報処理装置(制御部)242および/または表示装置(出力装置)243等に出力され得る。これらの情報処理装置242および表示装置243は、撮像装置250と共に車載システムを構成する。車両240内の情報処理装置242は、撮像装置250により取得される画像信号(撮像画像)を処理し、画像を認識(撮像画像の中の対象物を認識)して運転者の運転を支援する装置を含む。また、情報処理装置242は、撮像画像の中の対象物の認識情報を表示装置243に出力するように構成され、例えば、ナビゲーション装置、衝突被害軽減ブレーキ装置、車間距離制御装置、および、車線逸脱警報装置等を含むが、これらに限定されない。表示装置243は、情報処理装置242により処理されて出力される画像を表示するが、撮像装置250から直接に画像信号を受信することもできる。また、表示装置243は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、および、無機ELディスプレイを採用し得るが、これらに限定されない。表示装置243は、リアカメラ等の運転者から視認しづらい位置の画像を撮像する撮像装置250から出力された画像信号を、運転者に対して表示することができる(乗員への情報を出力できる)。
【0042】
図7には、図6の車載システムを構成する撮像装置の構成が示される。図示のように、一実施形態に係る撮像装置250は、制御部252と、記憶部254と、前述した図5のカメラモジュール300を備える。
【0043】
制御部252は、カメラモジュール300を制御するとともに、カメラモジュール80の撮像素子304から出力される電気信号を処理する。この制御部252は例えばプロセッサとして構成されてもよい。また、制御部252は1つ以上のプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および、特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでもよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(Integrated Circuit)を含んでもよい。特定用途向けICは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。プログラマブルロジックデバイスは、PLD(Programmable Logic Device)とも称される。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでもよい。制御部252は、1つ以上のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、および、SiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。また、制御部252は、前述した情報処理装置242と同様の機能を有してもよく、例えば、撮像素子304から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なってもよい。
【0044】
記憶部254は、撮像装置250の動作に係る各種情報またはパラメータを記憶する。記憶部254は、例えば半導体メモリ等で構成されてもよい。記憶部254は、制御部252のワークメモリとして機能してもよい。記憶部254は、撮像画像を記憶してもよい。記憶部254は、制御部252が撮像画像に基づく検出処理を行なうための各種パラメータ等を記憶してもよい。記憶部254は制御部252に含まれてもよい。
【0045】
前述したように、カメラモジュール300は、レンズユニット11を介して結像する被写体像を撮像素子304で撮像し、撮像した画像を出力する。カメラモジュール300で撮像された画像は、撮像画像とも称される。
【0046】
撮像素子304は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)等で構成されてよい。撮像素子304は、複数の画素が並ぶ撮像面を有する。各画素は、入射した光量に応じて電流または電圧で特定される信号を出力する。各画素が出力する信号は、撮像データとも称される。
【0047】
撮像データは、全ての画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として制御部252に取り込まれてもよい。全ての画素について読み出された撮像画像は、最大撮像画像とも称される。撮像データは、一部の画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として取り込まれてもよい。言い換えれば、撮像データは、所定の取り込み範囲の画素から読み出されてもよい。所定の取り込み範囲の画素から読み出された撮像データは、撮像画像として取り込まれてもよい。所定の取り込み範囲は、制御部252によって設定されてもよい。カメラモジュール300は、制御部252から所定の取り込み範囲を取得してもよい。撮像素子304は、レンズユニット11を介して結像する被写体像のうち所定の取り込み範囲の画像を撮像してもよい。
【0048】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状、並びに、規制保持部の形態等は、前述した実施の形態に限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0049】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13 第1のレンズ
13a 座面
13d 凹面(空間対向面)
14 第2のレンズ
14a 座面
14b 環状溝(規制保持部)
14c 環状の段差部(規制保持部)
40 接着剤層
40a 径方向内側端
50 反射防止膜
60 墨
70 重合部
300 カメラモジュール
L レンズ群
O 光軸
S 内側収容空間
S1 レンズ間空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9