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特開2023-103861音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子
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  • 特開-音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103861
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20230720BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20230720BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20230720BHJP
   A47C 7/72 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/40
A47C7/38
A47C7/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004633
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】須賀 政晴
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 僚
(72)【発明者】
【氏名】井澤 晶一
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DA07
3B084DD05
3B084JA01
3B084JD02
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でスピーカと着座者の耳との距離を容易に調整することができる音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子を提供する。
【解決手段】椅子1のヘッドレスト21の後方に配置され、椅子1に支持されるベース部31と、ヘッドレスト21よりも前側に延びる延出部322を有し、ヘッドレスト21に対して少なくとも幅方向に移動可能にベース部31に支持されたアーム部32と、延出部322に支持され、ヘッドレスト21の前側に配置されるスピーカ34と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子のヘッドレストの後方に配置され、前記椅子に支持されるベース部と、
前記ヘッドレストよりも前側に延びる延出部を有し、前記ヘッドレストに対して少なくとも幅方向に移動可能に前記ベース部に支持されたアーム部と、
前記延出部に支持され、前記ヘッドレストの前側に配置されるスピーカと、
を備える、
音響装置。
【請求項2】
前記椅子に取り付けられるオプション部材を備え、
前記オプション部材は、前記ベース部を介して前記椅子に支持される、
請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記スピーカから出力される音を調整する音響処理部と、
前記音響処理部を駆動させるバッテリと、
を備え、
前記音響処理部および前記バッテリは、前記オプション部材の後ろ側に設けられる、
請求項2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記アーム部は、前記ベース部に対して前記ヘッドレストの上下方向に移動可能である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の音響装置と、
前記ベース部の前方に配置されるヘッドレストと、
を備える、
ヘッドレスト音響ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のヘッドレスト音響ユニットと、
着座者を後方から支持する背凭れと、
を備え、
前記アーム部は、前記背凭れの前後方向の前側に設けられる、
椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子の背凭れの上方に設けられ着座者の頭部の耳の側方領域を覆うヘッドレストにスピーカが設けられた構成が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、ヘッドレストの着座者頭部に対する左右方向の両端に設けられた一対のスピーカをヒンジ機構により旋回させることで、スピーカと着座者の耳との距離を調整するスピーカ付ヘッドレストが開示されている。また、特許文献3には、ヘッドレストの左右方向両端に設けられた一対のスピーカを旋回させる旋回機構をヘッドレストの内部に設けた音響装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2-2052号公報
【特許文献2】特開平6-209830号公報
【特許文献3】特開昭63-270260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1および特許文献2に開示されたようなスピーカ付ヘッドレストでは、離着席時においてスピーカをヘッドレストの外方に向かって大きく移動させ、頭部を動かすスペースを確保する必要がある。この結果、スピーカと着座者の頭部(耳)との距離を調整する際のスピーカの操作角度が大きくなるため、着座者のスピーカの操作によるスピーカと着座者の耳との距離の調整が行いにくくなる。また、上記に加えて、スピーカがヒンジ機構により大きく動くことで、着座者の耳とスピーカとの距離を調整する際に、スピーカから出力される音声の発音方向も変更される。この結果、着座者がスピーカから出力された音声を聴き取り易い良好な聴環境を確保しにくくなる。
【0006】
また、上記の特許文献3に記載の音響装置では、スピーカを旋回させる旋回機構がヘッドレストの内部に設けられるため、ヘッドレストの内部の構造が複雑となる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でスピーカと着座者の耳との距離を容易に調整することができる音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る音響装置は、椅子のヘッドレストの後方に配置され、前記椅子に支持されるベース部と、前記ヘッドレストよりも前側に延びる延出部を有し、前記ヘッドレストに対して少なくとも幅方向に移動可能に前記ベース部に支持されたアーム部と、前記延出部に支持され、前記ヘッドレストの前側に配置されるスピーカと、を備える。
【0009】
上記の構成により、音響装置は、スピーカとベース部との間にアーム部を備えることにより、スピーカとベース部との距離を長くすることができるため、アーム部の移動を介してスピーカを移動させ、スピーカと着座者の耳との距離を調整する際のスピーカの操作量を低減できる。
例えば、音響装置において、アーム部を幅方向に回転させて移動させる場合、アーム部はベース部に対して幅方向にスイングするため、スピーカはアーム部の回転方向に移動する。つまり、スピーカは、アーム部と接続された端部よりも前端部の方が広がる方向に移動する。この結果、アームの幅方向の回転角度を低減し、スピーカと着座者の耳との距離を容易に調整することができる。そのため、スピーカの操作量を低減し、少ない操作量で着座者がスピーカから出力された音声を聴き取り易い良好な聴環境を確保できる。
音響装置は、スピーカの操作量が短いため、スピーカの移動時におけるスピーカの向きの変化を抑制することができる。また、着座者は腕を大きく動かすことなく楽な体勢でスピーカを移動させ、着座者によるスピーカと着座者の耳との距離の調整作業の負担を低減できる。また、音響装置は、ベース部と、延出部を除くアーム部とがヘッドレストの後方に配置されるため、ヘッドレストの前側の美観を向上できる。
【0010】
本発明の一態様に係る音響装置は、前記椅子に取り付けられるオプション部材を備え、前記オプション部材は、前記ベース部を介して前記椅子に支持されてもよい。
この構成によれば、音響装置に上記の各構成とは別体の構成としてオプション部材をさらに設けることができる。例えば、着座者の視界を遮る視界遮蔽部材を設けることにより没入感を有する聴環境を確保できる。
【0011】
本発明の一態様に係る音響装置は、前記スピーカから出力される音を調整する音響処理部と、前記音響処理部を駆動させるバッテリと、を備え、前記音響処理部および前記バッテリは、前記オプション部材の後ろ側に設けられてもよい。
この構成によれば、音響装置は、バッテリをオプション部材の後ろ側に設けることにより、バッテリの交換を容易に行うことができる。また、音響処理部およびバッテリをオプション部材の後ろ側に設けることにより、ヘッドレストとオプション部材との間の構成を簡素化できる。
【0012】
本発明の一態様に係る音響装置において、前記アーム部は、前記ベース部に対して前記ヘッドレストの上下方向に移動可能であってもよい。
この構成によれば、音響装置は、着座者の耳の高さの違いに対してもアーム部を上下方向に移動させることでスピーカと着座者の耳との距離を容易に調整することができる。
【0013】
本発明の一態様に係るヘッドレスト音響ユニットは、上記の音響装置と、前記ベース部の前方に配置されるヘッドレストと、を備える。
この構成によれば、ヘッドレスト音響ユニットは、音響装置とヘッドレストとを別体として設けることができるため、それぞれの構成を簡素化できる。また、音響装置とヘッドレストとが別体であるため、音響装置の後付けやスピーカ等が不要となった際の取り外しを容易に行うことができる。
【0014】
本発明の一態様に係る椅子は、上記のヘッドレスト音響ユニットと、着座者を後方から支持する背凭れと、を備え、前記アーム部は、前記背凭れの前後方向の前側に設けられる。
この構成によれば、椅子の着座者がスピーカを幅方向に移動させることによって、スピーカと着座者の耳との距離を容易に調整することができる。また、スピーカの操作量を低減できるため、着座者によるスピーカと着座者の耳との距離の調整作業の負担を低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成でスピーカと着座者の耳との距離を容易に調整することができる音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る椅子の正面図である。
図2】上記椅子の側面図である。
図3】上記椅子の背面図である。
図4】上記椅子の上面図である。
図5】本発明の実施形態に係るヘッドレスト音響ユニットの分解斜視図である。
図6】上記ヘッドレスト音響ユニットの縦断面図である。
図7】上記ヘッドレスト音響ユニットの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1から図4に示す本実施形態に係る椅子1は、例えばオフィスや自宅等の執務環境においてウェブ会議等で使用されるものや、音楽や映画等の鑑賞に使用されるものが挙げられる。
【0019】
ここで、以下の説明においては、椅子1に正規姿勢で着座した着座者Mの前方を「前」、「前」と逆側を「後」と呼ぶものとする。また、椅子1に正規姿勢で着座した着座者Mの上方を「上」、下方を「下」と呼び、椅子に正規姿勢で着座した着座者Mの左側方を「左」、右方側を「右」と呼ぶ。また、以下の説明および図面においては、左右方向をX方向と記載し、上下方向をY方向と記載し、前後方向をZ方向と記載する。
【0020】
図1から図4に示すように、本実施形態に係る椅子1は、脚部10と、支基11と、座12と、背凭れ13と、ヘッドレスト音響ユニット2と、を備えている。脚部10は、床面上に載置される。支基11は、脚部10の上端に設置される。座12は、支基11の上面側に取り付けられ、着座者Mの臀部を支持する。背凭れ13は、支基11の後部に取り付けられ、着座者Mの背部を支持する。
【0021】
ヘッドレスト音響ユニット2は、ヘッドレスト21と、音響装置3と、を備えている。ヘッドレスト21は、背凭れ13の上部に取り付けられ、着座者Mの頭部hを後方から支持する。ヘッドレスト音響ユニット2は、ヘッドレスト21を介して背凭れ13の上部に取り付けられる。
【0022】
脚部10と、支基11と、座12とは、椅子1の座12よりも上方に位置する背凭れ13、ヘッドレスト21、ヘッドレスト音響ユニット2および着座者Mの荷重を支持する支持構造体14である。
【0023】
脚部10は、床面に移動可能に接地する複数のキャスタを備えた多岐脚101と、多岐脚101の中央部より起立して昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱102と、を備え、脚柱102の上端部に支基11が取り付けられている。支基11には、脚柱102の昇降調整機構と背凭れ13の傾動調整機構が内蔵されている。
椅子1は、着座者Mの荷重を安定して支持することができれば上記の構成に限定されない。例えば、多岐脚101を省略して脚柱102を地面に固定してもよいし、脚部10および支基11を省略して座12を地面に固定してもよい。
【0024】
図3に示すように、背凭れ13の上辺部131のX方向の中央部の後面には、ヘッドレスト21を取り付けるための部品取付部132が設けられている。詳細な図示は省略するが、部品取付部132には、付加機能部品の取付基部が当接する座面と、取付基部を締結固定するためのボルト締結部が設けられている。本実施形態では、部品取付部132にはヘッドレスト21が取り付けられている。
【0025】
図2および図3に示すように、ヘッドレスト21は、荷重支持板211と、クッション材212と、表皮材213と、を備えている。荷重支持板211は、背凭れ13の上端に支持され、硬質樹脂からなり強度部材として機能する。クッション材212は、荷重支持板211の前面側に配置される。表皮材213は、荷重支持板211とクッション材212の外側を覆う。荷重支持板211の下端には、下方に延出する取付基部211aが設けられている。取付基部211aは、背凭れ13の部品取付部132の後部側に重ねられ、部品取付部132にボルト締結されている。クッション材212の前面は、Y方向の略中央部が前方に最大に膨出するように湾曲して形成されている。
【0026】
ヘッドレスト21は、後述する音響装置3のベース部31および一対の可動接続部33、33をヘッドレスト21の後方に配置することができれば上記の構成に限定されない。例えば、X方向に平行な板状の外形形状であってもよいし、X方向の両端部が着座者Mの後頭部や首の背部に沿う形状に形成されていてもよい。
【0027】
図5から図7に示すように、音響装置3は、オプション部材4(以下、「遮蔽部材4」と記載する)と、ベース部31と、一対のアーム部32、32と、一対の可動接続部33、33と、一対のスピーカ34、34と、を備えている。音響装置3は、ベース部31を介して遮蔽部材4およびヘッドレスト21と接続されている。音響装置3は、着座者Mの耳M1に向かって音声を出力する。遮蔽部材4は、着座者Mの頭部hの後方および左右の側方を覆うことができるように設けられている。
【0028】
図1および図4に示すように、遮蔽部材4は、略U字状の上面視形状を有し、背凭れ13の上部に取り付けられている。遮蔽部材4は、遮蔽用後壁41(連結部)と、一対の遮蔽用側壁42、42(頭部側方遮蔽部)と、を備えている。遮蔽用後壁41は、背凭れ13の上部およびヘッドレスト21の後方に配置され一対の遮蔽用側壁42、42を連結する。一対の遮蔽用側壁42、42は、遮蔽用後壁41の左右両側から湾曲して前方に延出する。遮蔽部材4は、略全域が吸音性を有する不織布によって一体に形成されている。遮蔽部材4を形成する樹脂材料としては、例えば、樹脂繊維を主原料とするポリエステル等を用いることができる。一対の遮蔽用側壁42、42の外形形状は略一致する。遮蔽部材4に吸音性を有する材料を用いることで、スピーカ34から発せられた音声が遮蔽部材4の内側で反響するのを抑制できる。
【0029】
図1図2及び図4に示すように、遮蔽用後壁41は、正規姿勢で椅子1に着座した着座者Mの頭部hの後方を覆う。一対の遮蔽用側壁42、42は、正規姿勢で椅子1に着座した着座者Mの頭部hの左右の側方を覆う。
【0030】
遮蔽部材4は、椅子1の移動位置等に関わらず、椅子1に着座した着座者Mの不要な外部視界を安定して遮蔽できる。
【0031】
ベース部31は1枚の板状部材により形成され、ヘッドレスト21の後方かつ遮蔽用後壁41の前方に配置される。ベース部31は、平坦部311と、平坦部311の左右両端からヘッドレスト21の後面に向かって延びる一対の延設部312、312と、を有する。ベース部31は、ブラケット22と一体に形成されてもよい。
【0032】
ヘッドレスト音響ユニット2は、ヘッドレスト21とベース部31との間に配置され、ヘッドレスト21と、音響装置3と、遮蔽部材4とを連結し一体化する一対のブラケット22、22をさらに備える。一対のブラケット22、22はX方向に離れて配置され、上端部が接続されている。一対のブラケット22、22のX方向の距離は、平坦部311のX方向の長さよりも短い。一対のブラケット22、22の外形形状は略一致する。
【0033】
ブラケット22は、一対の第一延出部221、221を有する。一対の第一延出部221、221は、Z方向の前側端部から他方のブラケット22に向かって延出している。一対の第一延出部221、221は、ボルト孔が形成されている。ヘッドレスト21には、各第一延出部221のボルト孔に対応する位置にボルト穴が形成されナットがインサートされている。各第一延出部221のボルト孔に挿通されたボルトによって、ヘッドレスト21と一対のブラケット22、22とが連結される。
【0034】
一対のブラケット22、22と、各ブラケット22の一対の第一延出部221、221の各ボルト孔に挿通されヘッドレスト21に嵌合されるボルトと、ヘッドレスト21にインサートされたナットとにより、ヘッドレスト21と一対のブラケット22、22とを連結する第一接続部23が形成される。
【0035】
ブラケット22は、一対の第二延出部222、222をさらに有する。一対の第二延出部222、222は、Z方向の後ろ側端部から他方のブラケット22に向かって延出している。一対の第二延出部222、222は、ボルト孔が形成されている。ベース部31には、各第二延出部222のボルト孔に対応する位置にボルト孔が形成されており、第二延出部222のボルト穴のヘッドレスト21側の面にはナットが溶接されている。遮蔽用後壁41内には、ベース部31に対応する位置に固定板41aが設けられている。固定板41aには、各第二延出部222およびベース部31のボルト孔に対応する位置にボルト孔が形成されている。各第二延出部222、ベース部31および固定板41aのボルト孔に挿通されたボルトにより共締めされ、一対のブラケット22、22と、ベース部31と、遮蔽部材4とが連結される。固定板41a側のナットは、板状の固定板41aにより遮蔽用後壁41の略U字状の上面視形状に影響されず確実にボルトを締めることができる。
【0036】
一対のブラケット22、22と、各ブラケット22の一対の第二延出部222、222とベース部31と固定板41aとに形成された各ボルト孔に挿通される一対のボルトと、第二延出部222に溶接されたナットとにより、一対のブラケット22、22とベース部31と遮蔽部材4とを連結する第二接続部24が形成される。
【0037】
音響装置3は、第一接続部23によりヘッドレスト21に安定して支持され、遮蔽部材4は、第二接続部24によりベース部31で音響装置3に安定して支持される。
また、固定板41aは、遮蔽用後壁41の外側に形成されてもよいし、後述するバッテリホルダ25の内部に形成され、バッテリホルダ25をさらにボルトで共締めしてもよい。
また、第一接続部23および第二接続部24では、ボルト留めにより一対のブラケット22、22を介してヘッドレスト21と、音響装置3と、遮蔽部材4とを連結しているが、例えばフック等の機構によりブラケット22をヘッドレスト21、音響装置3および遮蔽部材4に引掛ける構成としてもよい。
【0038】
一対のアーム部32、32は、遮蔽部材4の内側において背凭れ13のZ方向前側に位置する。一対のアーム部32、32は略一致する構成を有する。アーム部32は、第一アーム部321と、第二アーム部322(延出部)と、を有する。第一アーム部321は、ヘッドレスト21の後方に配置され、一端が近接するベース部31の延設部312と接続され、ヘッドレスト21のX方向一端部に向かって延びる。第二アーム部322は、第一アーム部321の他端から延び、ヘッドレスト21のX方向一端部を回り込み、ヘッドレスト21の前側まで延びる。アーム部32は、遮蔽部材4の内側において背凭れ13のZ方向前側に配置される構成に限定されず、例えば遮蔽部材4の内側において背凭れ13の後ろ側から前側まで延びていてもよい。
【0039】
第一アーム部321は、可動接続部33に連結される第一端321aと、第二アーム部322に連続する第二端321bとを有する。第二アーム部322は、曲折部322aと、スピーカ固定アーム322bとを備える。曲折部322aは、第二端321bからZ方向の前側に延びて、ヘッドレスト21のX方向の端部を囲むように曲折する。スピーカ固定アーム322bは、曲折部322aからX方向に延びる。スピーカ固定アーム322bの延出端322cにスピーカ34が接続される。ヘッドレスト21のX方向の端部にアーム部32が最も近づいた位置にあるとき、スピーカ固定アーム322bの延出端322cは、ヘッドレスト21のZ方向の前側に位置する。
Z方向の前側とは、ヘッドレスト21に対するZ方向の位置が前側であり、図4に実線で示すようにヘッドレスト21の前側に位置する状態と、図4に破線で示すようにヘッドレスト21の端部よりもX方向の外側に位置し、Z方向の位置がヘッドレスト21よりも前側に位置する状態も含む。
図示例では、曲折部322aは、平面状の二辺が略直角に曲がる例を示したが、曲折部322aはヘッドレスト21の端部を囲むように曲折すればこれに限定されない。例えば、曲折部322aが、ヘッドレスト21の端部を囲むように湾曲してもよい。アーム部32は、ヘッドレスト21のX方向の幅長が短い場合は、曲折部322aを省略してもよい。
【0040】
一対の可動接続部33、33は略一致する構成を有する。可動接続部33は、ヘッドレスト21の後方およびヘッドレスト21の左右端よりもX方向内側に配置される。可動接続部33は、ベース部31の延設部312とアーム部32の第一アーム部321との対向端同士を接続する。一対のアーム部32、32は、一対の可動接続部33、33の回動軸331、331を略垂直回転軸としてX方向に移動(回転)可能に設けられ、ベース部31に支持される。一対のアーム部32、32は、回動軸331、331を中心としてX方向に回転することにより遮蔽部材4の内側で、近付く方向および離れる方向に移動する。可動接続部33は、例えば所定のトルクを加えることでアーム部32がスイングするトルクヒンジであってもよいし、ラッチにより多段階にアーム部32がスイングする構成であってもよい。
【0041】
一対のスピーカ34、34は略一致する構成を有する。スピーカ34は、アーム部32の第二アーム部322のスピーカ固定アーム322bに接続され、アーム部32に支持される。スピーカ34は、遮蔽部材4の内側かつヘッドレスト21の前側に配置される。スピーカ34は、アーム部32の回転動作を介してX方向にスイング可能に設けられる。椅子1に着座者Mが座っている場合において、着座者Mが音声を聴く際は一対のスピーカ34、34をX方向にスイングさせて一対のスピーカ34、34と着座者Mの耳M1との距離を調整する。
【0042】
一対のアーム部32、32は、一対の可動接続部33、33を介して少なくともX方向に移動することができればよく、例えば、X方向に付随してY方向にさらに移動してもよいし、一対の可動接続部33、33を回転軸として回転してもよい。可動接続部33は、アーム部32が回転する場合、自在継手としてもよいし、ボールジョイントとしてもよい。
また、アーム部32がY方向にさらに移動する場合およびアーム部32が回転する場合において、スピーカ34は、アーム部32を介して移動させることにより、着座者Mの座高等の違いによる耳M1の高さの違いに対してもスピーカ34と着座者Mの耳M1との距離を容易に調整することができる。
【0043】
本実施形態においてスピーカ34は、音声発生部34aと、ケース34bと、を備える。音声発生部34aは、ケース34bに格納されている。スピーカ34は、指向性スピーカであって、例えば指向角度(音声の到達範囲)±10度、真正面の音圧に比べて-6dB以内の範囲のスピーカを採用できる。スピーカ34の音声発生部34aは、対向する他方側のスピーカ34に向けて配置されている。
【0044】
遮蔽用側壁42の前端部42aは、スピーカ34の前端部34cより前方に突出している。
【0045】
音響装置3は、さらにマイク部を備えている。マイク部は、集音部と送信機とを備え、一対のスピーカ34、34の少なくともいずれか一方の前端部34cに内蔵されている。マイク部は、一対のスピーカ34、34をスイングさせて一対のスピーカ34、34と着座者Mの耳M1との距離を調整した際に少なくとも集音部が着座者Mの口付近の位置に配置されるように備えられる。椅子1は、マイク部を備えることで音声通話やウェブミーティングを行うことができる。マイク部は音響装置3の必須の構成ではない。
【0046】
図2から図4に示すように、音響装置3は、音響処理部35と、バッテリ36とをさらに備えている。音響処理部35は、一対のスピーカ34、34と電気的に接続され一対のスピーカ34、34から出力される音を調整する。バッテリ36は、底面に被接続部が設けられ音響処理部35を駆動させる。音響処理部35は、公知のアンプである(以下、「アンプ35」と記載する)。
【0047】
遮蔽用後壁41の後ろ側には、Z方向外向きに突出し少なくとも上方が開口し、底面にバッテリ36との接続部25aが設けられたバッテリホルダ25が形成されている。バッテリホルダ25には、アンプ35が内蔵されている。バッテリホルダ25は、遮蔽用後壁41にボルト留めして設置されてもよいし、遮蔽部材4と一体化され形成されてもよい。
【0048】
音響装置3は、バッテリホルダ25にバッテリ36を差し込み、バッテリ36とバッテリホルダ25とを電気的に接続し、バッテリ36の電力をバッテリホルダ25に内蔵されたアンプ35に供給することで、一対のスピーカ34、34から音声を出力する。遮蔽部材4には、不図示の貫通孔が形成されている。バッテリホルダ25に内蔵されるアンプ35と一対のスピーカ34、34とは、アンプ35から延びて貫通孔に挿通された電気配線により接続される(図示省略)。
【0049】
バッテリホルダ25は、遮蔽部材4が省略される場合、ヘッドレスト21の後ろ側に設置されてもよいし、背凭れ13の後ろ側に設置されてもよい。
また、ヘッドレスト音響ユニット2においてオプション部材4を備えない場合、バッテリホルダ25は、第二接続部24によりベース部31と共締めしてベース部31の後ろ側に配置されてもよい。
【0050】
次に、上述した音響装置3、ヘッドレスト音響ユニット2および椅子1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0051】
図1および図3に示すように、音響装置3では、ヘッドレスト21の後方側に位置する一対の可動接続部33、33を略垂直回転軸として、一対のアーム部32、32をX方向に移動可能に接続し、一対のスピーカ34、34をX方向にスイングさせる。
上記の構成により、椅子1において、着座者Mの耳M1と一対のスピーカ34、34との距離を着座者Mが調整する際に、一対のアーム部32、32は回動軸331、331回りにスイングするため、一対のスピーカ34、34は回転方向に移動する。つまり、一対のスピーカ34、34は、スピーカ固定アーム322b、322bと接続された端部よりも前端部34c、34cの方が広がる方向に移動する。この結果、一対のアーム部32、32のX方向の回転角度を低減し、一対のスピーカ34、34と着座者Mの耳M1との距離を調整することができる。そのため、一対のスピーカ34、34の操作量を低減し、少ない操作量で着座者Mが一対のスピーカ34、34から出力された音声を聴き取り易い良好な聴環境を確保できる。また、一対のスピーカ34、34の操作量が短いため、着座者Mは手を大きくひねることなく楽な体勢で一対のスピーカ34、34をスイングさせ、着座者Mによる一対のスピーカ34、34と着座者Mの耳M1との距離の調整作業の負担を低減できる。
また、一対のアーム部32、32により、一対のスピーカ34、34のX方向の回転半径が大きくなり、X方向の操作量が短くなるため、一対のスピーカ34、34のスイング時における音声発生部34a、34aの向きの変化を抑制することができる。
また、第一アーム部321、321により一対のアーム部32、32の回転角度を小さくすることができるため、ヘッドレスト21の後方における一対のアーム部32、32の移動範囲が限られる場合においても一対のスピーカ34、34に必要な移動量を確保できる。また、ヘッドレスト21の後方の一対のアーム部32、32の配置スペースを広く取る必要がないため、省スペース、コンパクト化を図ることができる。
【0052】
図5から図7に示すように、遮蔽部材4は、第二接続部24によりベース部31で音響装置3に安定して支持される。上記の構成により、音響装置3の後方側に音響装置3とは別体である遮蔽部材4を設けることができる。また、遮蔽部材4により、着座者Mの側方および後方の視界を遮り、没入感を有する聴環境を確保できる。
【0053】
図2および図4に示すように、音響装置3では、バッテリホルダ25にバッテリ36を差し込んで電気的に接続し、バッテリ36の電力をバッテリホルダ25に内蔵されたアンプ35に供給することで、一対のスピーカ34、34から所望の音量で音声を出力することができる。
また、ヘッドレスト音響ユニット2では、バッテリホルダ25を遮蔽部材4の後ろ側に配置するため、バッテリホルダ25の開口位置が遮蔽部材4の外面側に位置し、バッテリ36の交換を容易に行うことができ、ヘッドレスト21と遮蔽部材4との間の構成を簡素化できる。
また、椅子1では、バッテリホルダ25は上方に開口し、バッテリ36は上方からバッテリホルダ25に差し込まれるため、背凭れ13を倒してもバッテリ36はバッテリホルダ25から脱落することがない。
【0054】
図5から図7に示すように、ヘッドレスト音響ユニット2では、音響装置3とヘッドレスト21とが別体であり、さらに音響装置3と遮蔽部材4とは別体であるため、音響装置3、ヘッドレスト21および遮蔽部材4の構成を簡素化できる。また、音響装置3の後付けや一対のスピーカ34、34等が不要となった際の取り外しを容易に行うことができる。
【0055】
ヘッドレスト音響ユニット2では、一対の可動接続部33、33がヘッドレスト21の後方およびヘッドレスト21の左右端よりもX方向内側に配置される。また、一対の可動接続部33、33から一対のアーム部32、32の第一アーム部321、321がヘッドレスト21のX方向両端部に向かって延びている。上記の構成により、一対の可動接続部33、33および第一アーム部321、321は、椅子1の正面視においてヘッドレスト21に隠れて視認されないため、ヘッドレスト21の前側の美観を向上できる。また、着座者Mの髪が一対の可動接続部33、33に引っ掛かることを抑制できる。
【0056】
図6および図7に示すように、ヘッドレスト音響ユニット2では、ヘッドレスト21と、音響装置3と、遮蔽部材4とを連結する第一接続部23および第二接続部24がヘッドレスト21の後ろ側に配置される。上記の構成により、椅子1の正面視において第一接続部23と第二接続部24は視認されないため、ヘッドレスト音響ユニット2の美観をより向上できる。すなわち、第一接続部23および第二接続部24は、遮蔽部材4により左右および後ろからは視認されなくなるため、ヘッドレスト音響ユニット2の美観を向上できる。
また、ヘッドレスト音響ユニット2は、本実施形態のようにヘッドレスト21の断面が前側凸の形状であれば、その内側に第一接続部23および第二接続部24を収めることが可能となり、第一接続部23および第二接続部24は上から見ても視認が困難となる。
【0057】
図2および図4に示すように、ヘッドレスト音響ユニット2では、一対の遮蔽用側壁42、42の前端部42a、42aは、一対のスピーカ34、34の前端部34c、34cよりも前方に突出している。上記の構成により、ヘッドレスト音響ユニット2は、一対のスピーカ34、34から出力された音声の外部への音漏れを低減できる。
【0058】
また、椅子1では、着座者Mが椅子1から離席または椅子1に着席する際において、一対のスピーカ34、34を一対のアーム部32、32を介してX方向(開く方向)に移動させることで、一対のスピーカ34、34と着座者Mの耳M1との距離を広げるとともに、着座者Mの耳M1よりも斜め後方に移動させることができる。そのため、着座者Mの髪等が一対のスピーカ34、34に引っ掛かる等がなく、離着席時における着座者Mの動線を妨げない。また、椅子1では、一対のスピーカ34、34を一対のアーム部32、32を介してX方向(開く方向)に移動させることで、一対のスピーカ34、34の音声出力方向を前方に移動させることができる。そのため、着座者Mが前傾した場合においても、聴環境を確保できる。
【0059】
以上、本発明による音響装置、ヘッドレスト音響ユニットおよび椅子の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
例えば、上記の実施形態に係る椅子1では、遮蔽部材4がヘッドレスト21を介して背凭れ13の本体部に取り付けられているが、遮蔽部材4は背凭れ13の本体部に直接固定してもよい。また、背凭れ13と座12とを、側面視が略L字形状をなすように一体形成し、一体形成された構造体の上部に、遮蔽部材4を取り付けてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、バッテリホルダ25を遮蔽部材4の遮蔽用後壁41の後ろ側に設けた構成としているが、一対のスピーカ34、34から所望の音声を出力できれば上記の設置位置に限定されない。例えば、遮蔽用側壁42の後ろ側に配置してもよいし遮蔽部材4の前側に配置してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、オプション部材4として遮蔽部材4を用いているが、オプション部材4は、例えば一対のスピーカ34、34とは別体で着座者Mの頭部hの上方や前方等に配置される音響装置やモニタとしてもよいし、ウェブ会議や読書等の着座者Mの作業に応じて設置された照明装置としてもよい。また、背凭れ13に接続されるハンガーとしてもよいし、着座者Mの肘を置く肘掛けとしてもよい。
【0063】
本実施形態では、ベース部31が遮蔽部材4に固定されている例を示したが、ベース部31は、椅子1に支持される構成であればよく、例えば、ベース部31が背凭れ13に固定されていてもよいし、ベース部31がヘッドレスト21に固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 椅子
2 ヘッドレスト音響ユニット
3 音響装置
4 遮蔽部材(オプション部材)
13 背凭れ
21 ヘッドレスト
31 ベース部
32 アーム部
34 スピーカ
35 音響処理部(アンプ)
36 バッテリ
322 第二アーム部(延出部)
M 着座者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7