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特開2023-103897磁性樹脂組成物、磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板
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  • 特開-磁性樹脂組成物、磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103897
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】磁性樹脂組成物、磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230720BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20230720BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230720BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230720BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/37
C08K3/013
B32B27/20 Z
B32B15/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004691
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】永塚 諒
(72)【発明者】
【氏名】辻 隆行
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB10B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AH04A
4F100AK01A
4F100AL05A
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CA20A
4F100CA23A
4F100GB41
4F100JB13A
4F100YY00A
4J002CC031
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002CH081
4J002DA088
4J002DC008
4J002EJ006
4J002EL136
4J002EN016
4J002EN056
4J002ET006
4J002EU116
4J002EV027
4J002FD142
4J002FD146
4J002FD207
4J002FD208
4J002GF00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】磁性材料を含有していても、その硬化物が高い強度を有することができ、かつ金属との密着性を高めることができる磁性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】磁性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、多官能チオール化合物(C)と、磁性フィラー(D1)と、を含有する。多官能チオール化合物(C)は、1分子中に2つ以上のスルファニル基を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、1分子中に2つ以上のスルファニル基を有する多官能チオール化合物(C)と、磁性フィラー(D1)と、を含有する、
磁性樹脂組成物。
【請求項2】
前記多官能チオール化合物(C)は、ペンタエリスリトール骨格、グリコールウリル骨格、及びイソシアヌル環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する、
請求項1に記載の磁性樹脂組成物。
【請求項3】
前記多官能チオール化合物(C)は、1分子中に少なくとも1つの1級スルファニル基を有するチオール化合物(C1)を含む、
請求項1又は2に記載の磁性樹脂組成物。
【請求項4】
前記磁性粉(D)100質量部に対する前記多官能チオール化合物(C)の量は、0.03質量部以上5質量部以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の磁性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の磁性樹脂組成物の半硬化物又は乾燥物のシート状である、
磁性樹脂シート。
【請求項6】
樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方に接着された金属箔と、を備え、
前記樹脂層は、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁性樹脂組成物、若しくは前記磁性樹脂組成物の半硬化物若しくは乾燥物、又は請求項5に記載の磁性樹脂シートを含む、
樹脂付き金属箔。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の磁性樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層と、前記硬化物層の少なくとも一方の面に接着された金属層と、を備える、
金属張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁性樹脂組成物、磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板に関し、より詳細には磁性樹脂組成物、磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び磁性樹脂組成物の硬化物を備える金属張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、例えば硬化性樹脂と、硬化剤とを含有する、銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物が開示されている。
【0003】
上記樹脂組成物における硬化性樹脂には熱硬化性樹脂を含みうること、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含むこと、硬化剤として芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、又はグアナミン化合物を含みうることが開示されている。さらに、上記樹脂組成物は、フィラーとして無機フィラー又は有機フィラーを含みうることが開示されている。そして、この樹脂組成物の硬化物は、有機絶縁層、銅配線、及び複数の配線層と配線層間絶縁層とを備える半導体用配線層絶縁体における配線間絶縁層に用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/056466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者が研究開発を通じて独自に得た知見によると、樹脂組成物に磁性を付与するために磁性を有する材料(磁性材料)を配合して樹脂組成物の硬化物を作製すると、樹脂組成物の硬化物の強度が低下しやすい。また、この樹脂組成物の硬化物を金属箔等といった金属層に接着させようとする場合には、金属層との密着性が低下しやすい。
【0006】
本開示の目的は、磁性材料を含有していても、その硬化物が高い強度を有することができ、かつ金属との密着性を高めることができる磁性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本開示の他の目的は、磁性材料を含有していても、高い強度及び高い密着性を有する磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る磁性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、多官能チオール化合物(C)と、磁性フィラー(D1)と、を含有する。前記多官能チオール化合物(C)は、1分子中に2つ以上のスルファニル基を有する。
【0009】
本開示の一態様に係る磁性樹脂シートは、前記磁性樹脂組成物の半硬化物又は乾燥物のシート状である。
【0010】
本開示の一態様に係る樹脂付き金属箔は、樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方に接着された金属箔と、を備える。前記樹脂層は、前記磁性樹脂組成物、若しくは前記磁性樹脂組成物の半硬化物若しくは乾燥物、又は前記磁性樹脂シートを含む。
【0011】
本開示の一態様に係る金属張積層板は、硬化物層と、金属層とを備える。前記金属層は、前記硬化物層の少なくとも一方の面に接着する。前記硬化物層は、前記磁性樹脂組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、磁性材料を含有していても、その硬化物が高い強度を有することができ、かつ金属との密着性を高めることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る樹脂シートの概略を示す断面図である。
図2図2は、他の実施形態に係る樹脂付き金属箔の概略を示す断面図である。
図3図3は、他の実施形態に係る金属張積層板の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.概要
以下、本開示の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。以下の実施形態は、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
【0015】
本実施形態の磁性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、多官能チオール化合物(C)と、磁性フィラー(D1)と、を含有する。多官能チオール化合物(C)は、1分子中に2つ以上のスルファニル基を有する。
【0016】
本実施形態によると、磁性樹脂組成物が磁性材料を含有していても、その硬化物が高い強度を有しやすく、更にこの硬化物と金属箔などの金属層とを接着させる場合の密着性を高めやすい。その理由は、下記のとおりであると推察される。ただし、本実施形態は、下記の理由の説明には拘束されない。
【0017】
磁性樹脂組成物は、1分子中に2つ以上のスルファニル基(-SH基)を有する多官能チオール化合物(C)を含有することで、磁性樹脂組成物中において、多官能チオール化合物(C)におけるスルファニル基と、磁性材料である磁性フィラー(D1)との結合が生じうる。特に、多官能チオール化合物(C)は1分子中に2つ以上のスルファニル基を有するため、磁性樹脂組成物全体におけるスルファニル基と磁性フィラー(D1)との結合性がより高まりやすい、と推察される。
【0018】
さらに、磁性樹脂組成物を硬化させて硬化物を得るにあたり、多官能チオール化合物(C)は、硬化物の表面にも存在しうる。このため、硬化物を金属箔等の金属層上に作製すると、硬化物における多官能チオール化合物(C)中のスルファニル基の硫黄原子が、金属層中の金属とも結合を形成しやすくなるため、密着性が向上しうる、と推察される。
【0019】
本実施形態の磁性樹脂組成物は、シート状の半硬化物又は乾燥物を形成することで樹脂シートを作製するために用いることができる。また、磁性樹脂組成物は、上記のとおり、硬化物が高い強度を有し、かつ金属(特に銅)との高い密着性を有するという特性を有するため、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板を作製するために好適に用いることができる。
【0020】
2.詳細
以下、本実施形態に係る磁性樹脂組成物、磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板についてより詳細に順に説明する。なお、本明細書において「A及び/又はB」という表現は、「A」、「B」、又は「A及びB」のいずれかを意味する。
【0021】
(1)磁性樹脂組成物
本実施形態の磁性樹脂組成物は、既に述べたとおり、熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、多官能チオール化合物(C)と、磁性フィラー(D1)と、を含有する。多官能チオール化合物(C)は、1分子中に2つ以上のスルファニル基を有する。なお、磁性樹脂組成物は、上記成分以外の成分を含有してもよい。磁性樹脂組成物に含まれうる成分の詳細について説明する。
【0022】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂(A)は、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、有機リン酸化合物等を挙げることができる。なかでも、熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂とのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂は、1分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物である。エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のアルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ビスフェノールA型ブロム含有エポキシ樹脂等のブロム含有エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタンやイソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;並びにフタル酸やダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の成分が挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂は、例えば液状であることが好ましいが、これに限らず粉体状等の固体状であってもよい。
【0025】
フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により、直鎖状に高分子化した樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば末端にエポキシ基及び/又は水酸基を有しうる。フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50,000~100,000であることが好ましく、60,000~80,000であることがより好ましい。
【0026】
磁性樹脂組成物は、前記以外の硬化性樹脂を含有してもよい。磁性樹脂組成物は、例えば光硬化性樹脂を含有してもよい。
【0027】
(硬化剤)
硬化剤(B)は、磁性樹脂組成物における硬化性の成分を硬化させる機能を有しうる。本実施形態では、硬化剤(B)は、磁性樹脂組成物における熱硬化性樹脂(A)を硬化させうる。
【0028】
硬化剤(B)は、硬化性の成分を硬化させうる機能を有するものであればよく、本開示においては、硬化剤(B)には、硬化促進剤、硬化触媒、硬化助剤も含まれる。硬化剤(B)の例としては、具体的には、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、及び芳香族アミン系硬化剤、並びにイミダゾール系硬化促進剤、第3級アミン類、及びリン化合物等を挙げることができる。
【0029】
(多官能チオール化合物)
本実施形態の多官能チオール化合物(C)は、上記のとおり、1分子中に2つ以上のスルファニル基を有する。なお、スルファニル基とは、「-SH」で表される官能基であり、メルカプト基、チオール基と称されることもある。本実施形態では、磁性樹脂組成物が多官能チオール化合物(C)を含有することにより、磁性樹脂組成物の硬化物に高い密着性及び強度を付与しうる。
【0030】
多官能チオール化合物(C)は、ペンタエリスリトール骨格、グリコールウリル骨格、及びイソシアヌル環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有することが好ましい。この場合、磁性樹脂組成物が磁性材料を含有していても、その硬化物がより高い強度を有することができ、かつ金属との密着性をより高めることができる。
【0031】
多官能チオール化合物(C)は、1分子中に少なくとも1つの1級スルファニル基を有する多官能チオール化合物(C1)を含むことが好ましい。この場合、磁性樹脂組成物が磁性材料を含有していても、その硬化物が更に高い強度を有することができ、かつ金属との密着性を更に高めることができる。本開示において、「1級スルファニル基」とは、1級炭素原子に直接結合するスルファニル基をいい、ここでいう「1級炭素原子」とは、他の一つの炭素原子と結合する炭素原子をいう。なお、多官能チオール化合物(C1)は、1級スルファニル基以外のスルファニル基、すなわち2級スルファニル基及び/又は3級スルファニル基を有していてもよい。2級スルファニル基は、2級炭素原子に直接結合したスルファニル基であり、3級スルファニル基は、3級炭素原子に直接結合したスルファニル基である。なお、「2級炭素原子」とは、他の二つの炭素原子と結合する炭素原子をいい、「3級炭素原子」とは、他の三つの炭素原子と結合するである炭素原子をいう。
【0032】
多官能チオール化合物(C)の具体的な例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、トリメチロールプロパン-トリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシブタン)、1,3,4,6-テトラキス(1-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(1-メルカプトプロピル)グリコールウリルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。ただし、多官能チオール化合物(C)に含まれうる化合物は、前記に限られない。
【0033】
なお、多官能チオール化合物(C)には、1分子中にスルファニル基を1つのみを有する単官能チオール化合物は含まれないが、磁性樹脂組成物は、本開示の効果を阻害しない限りにおいて、単官能チオール化合物を含有してもよい。
【0034】
(無機フィラー)
磁性樹脂組成物は、無機フィラー(D)を含有しうる。無機フィラー(D)は、磁性フィラー(D1)と非磁性フィラー(D2)とを含む。本実施形態では、磁性樹脂組成物は、磁性フィラー(D1)を含有する。
【0035】
本実施形態において、無機フィラー(D)は、磁性フィラー(D1)と非磁性フィラー(D2)とが含まれ、磁性フィラー(D1)とは、磁性を有する無機フィラーであり、非磁性フィラー(D2)とは、磁性を有しない無機フィラーである。
【0036】
なお、無機フィラー(D)は、導電性の有無によって、導電性フィラーと絶縁性フィラーとに大別することもできる。すなわち、導電性フィラーは、導電性を有し、絶縁性フィラーは電気的な絶縁性を有する。ここで、導電性フィラーは、そのまま使用される場合と、後述のように絶縁処理されて使用される場合とがある。絶縁処理されて使用される場合、絶縁処理後の導電性フィラーは、絶縁性フィラーとして扱われる。
【0037】
また、磁性フィラー(D1)は、導電性フィラーであるが、そのまま使用される場合と、後述のように絶縁処理されて使用される場合とがある。絶縁処理されて使用される場合、絶縁処理後の磁性フィラー(D1)は、絶縁性フィラーとして扱われる。つまり、本実施形態において、磁性フィラー(D1)には、導電性フィラー、絶縁性フィラーが含まれうる。
【0038】
磁性フィラー(D1)は、鉄、鉄系合金、フェライト系合金、及びコバルト系合金からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0039】
鉄は、例えば99.90~99.95%の純度の高純度鉄(純鉄)を含む。具体的には、鉄は、例えば、カーボニル鉄、アームコ鉄、海綿鉄、電解鉄を挙げることができる。カーボニル鉄は、鉄カーボニルFe(CO)を熱分解して得られる。
【0040】
鉄系合金は、例えば軟磁性鉄合金を挙げることができる。軟磁性鉄合金の具体例として、軟磁性鉄(Fe)-シリコン(Si)系合金、軟磁性鉄(Fe)-シリコン(Si)-ホウ素(B)系合金、軟磁性鉄(Fe)-窒素(N)系合金、軟磁性鉄(Fe)-炭素(C)系合金、軟磁性鉄(Fe)-ホウ素(B)系合金、軟磁性鉄(Fe)-リン(P)系合金、軟磁性鉄(Fe)-アルミニウム(Al)系合金、軟磁性鉄(Fe)-アルミニウム(Al)-シリコン(Si)系合金、パーメンジュール(Fe-Co)、Fe-Co-V合金等を挙げることができる。
【0041】
フェライト系合金の具体例として、一般式MFe又はMO・nFe(ただし、Mは2価の金属元素、nは整数)で示される合金、Mn-Zn系フェライト、Ni系フェライト、Mg-Zn系フェライトを挙げることができる。上記の一般式MO・nFe(ただし、Mは2価の金属元素、nは整数)で示される合金の具体例として、CoO・Fe合金を挙げることができる。
【0042】
コバルト系合金の具体例として、CoO・Fe合金、軟磁性コバルト合金、パーメンジュール(Fe-Co)、Co基アモルファス合金を挙げることができる。なお、パーメンジュール(Fe-Co)、Fe-Co-V合金は鉄系合金でもありコバルト系合金でもある。また、CoO・Fe合金はフェライト系合金でもありコバルト系合金でもある。
【0043】
磁性フィラー(D1)が導電性フィラーを含む場合、導電性フィラーの平均粒子径は、0.5μm以上150μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。磁性フィラー(D1)が絶縁性フィラーを含む場合、絶縁性フィラーの平均粒子径は、5nm以上2μm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。本実施形態において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(50%粒子径、メディアン径)を意味する。無機フィラー(D)が、導電性フィラー及び絶縁性フィラーを含有する場合、絶縁性フィラーの含有量は、無機フィラー(D)全量に対して0.2質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
無機フィラー(D)は、上述のとおり、非磁性フィラー(D2)を含みうる。非磁性フィラー(D2)としては、例えばシリカ、アルミナ等を挙げることができる。無機フィラー(D)が非磁性フィラー(D2)を含む場合、無機フィラー(D)全量に対する非磁性フィラー(D2)の量は、例えば0.2質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0045】
(その他の成分)
磁性樹脂組成物は、本開示の目的を逸脱しない限りにおいて、適宜の上記以外の成分(以下、「その他の成分」という。)を含有してもよい。
【0046】
その他の成分の例としては、例えば分散剤、添加剤等を挙げることができる。
【0047】
磁性樹脂組成物は、例えば分散剤を含有できる。分散剤としては、例えばポリオキシエチレン-ラウリルアミン等を挙げることができる。磁性樹脂組成物が分散剤を含有する場合、磁性樹脂組成物中における各成分の均一性を高めうる。なお、本実施形態では、上記で説明したとおり構成を有することにより、分散剤を含有していなくても、良好な分散性を有しうる。
【0048】
本実施形態の磁性樹脂組成物は、例えば以下のようにして調製することができる。
【0049】
磁性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、多官能チオール化合物(C)と、磁性フィラー(D1)とを混合してから、硬化剤(B)、必要に応じて適宜のその他の成分を混合することによって調製することができる。なお、上記では磁性樹脂組成物を液状で作製することについて説明したが、磁性樹脂組成物は、スラリー状であってもよく、ペースト状であってもよく、シート(フィルム)状であってもよい。
【0050】
磁性樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂の含有割合は、無機フィラー(D)以外の樹脂組成物の固形分全量に対して、75質量%以上95質量%以下であることが好ましい。なお、本開示において、「固形分全量」とは、溶剤等の揮発成分を除く組成物に含まれる成分全体の量である。
【0051】
磁性樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含有する場合、フェノキシ樹脂の含有割合は、特に限定されないが、例えば、無機フィラー(D)以外の樹脂組成物の固形分全量に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0052】
無機フィラー(D)以外の樹脂組成物の固形分全量に対する硬化剤(B)の含有割合は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0053】
磁性樹脂組成物において、磁性フィラー(D1)100質量部に対する多官能チオール化合物(C)の量は、0.03質量部以上5質量部以下であることが好ましい。この場合、硬化物がより高い強度を有することができ、かつ金属との密着性をより高めることができる。磁性フィラー(D1)100質量部に対する多官能チオール化合物(C)の量は、0.05質量部以上3質量部以下であればより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下であれば更に好ましい。
【0054】
本実施形態の磁性樹脂組成物は、硬化させることにより、硬化物を得ることができる。
【0055】
磁性樹脂組成物の硬化物は、曲げ強度が110MPa以上であることが好ましい。なお、硬化物の曲げ強度は、後掲の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0056】
従来の磁性を有する樹脂組成物では、硬化物の強度の向上が難しく、かつ金属板との密着性の向上も難しかった。これに対し、本実施形態の磁性樹脂組成物の硬化物は、磁性材料を含有しながら、強度を高めることができ、かつ金属との密着性を高めやすい。これにより、磁性樹脂組成物の硬化物にクラックを生じにくくすることができる。
【0057】
次に、磁性樹脂シート、樹脂付き金属箔、及び金属張積層板について説明する。
【0058】
(2)磁性樹脂シート
図1に本実施形態に係る磁性樹脂シート1を示す。図1では、磁性樹脂シート1は、樹脂フィルム2が支持フィルム3上に重なって形成されている。磁性樹脂シート1は、全体としてフィルム状又はシート状に形成されている。樹脂フィルム2は、磁性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物であることが好ましい。磁性樹脂組成物の詳細は、上記で説明したとおりである。
【0059】
より具体的には、磁性樹脂シート1は、磁性樹脂組成物、又は樹脂組成物の半硬化物若しくは乾燥物を含む樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2を支持する支持フィルム3と、を備えている。磁性樹脂シート1は、後述の樹脂付き金属箔11、金属張積層板を作製するために用いることができ、またプリント配線板(不図示)の多層化(ビルドアップ法)などに利用される。なお、図1では、磁性樹脂シート1は、支持フィルム3を備えて構成されているが、支持フィルム3は必須の構成ではない。すなわち、磁性樹脂シート1は、樹脂フィルム2であってもよい。
【0060】
樹脂フィルム2は、加熱又は光照射(紫外線照射)されると、硬化して、後述の金属張積層板100の硬化物層200、及びプリント配線板における絶縁層を形成し得る。
【0061】
樹脂フィルム2の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上120μm以下である。これにより、例えば基板の薄型化を実現し得る。
【0062】
支持フィルム3は、樹脂フィルム2を支持している。これにより、樹脂フィルム2を扱いやすくなる。支持フィルム3は、必要に応じて樹脂フィルム2から剥離可能である。好ましくは、樹脂フィルム2を硬化させて樹脂層21を形成した後に、この樹脂層21から支持フィルム3が剥離される。樹脂フィルム2でプリント配線板における絶縁層を形成する場合も同様である。
【0063】
支持フィルム3は、例えば、電気絶縁性フィルムであるが、特にこれに限定されない。支持フィルム3の具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びポリアリレートフィルム等が挙げられる。支持フィルム3は、これらのフィルムに限定されない。
【0064】
図1では、樹脂フィルム2の一方の面を支持フィルム3で被覆しているが、これに限らず、樹脂フィルム2の一方の面を支持フィルム3で被覆するとともに、樹脂フィルム2の他方の面を保護フィルム(不図示)で被覆してもよい。保護フィルムも、支持フィルム3と同様に、必要に応じて樹脂フィルム2から剥離可能である。このように、樹脂フィルム2の両面を被覆することで、樹脂フィルム2を更に扱いやすくなる。また異物が樹脂フィルム2に付着することを抑制することができる。
【0065】
保護フィルムは、例えば、電気絶縁性フィルムであるが、特にこれに限定されない。保護フィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、及びポリメチルペンテンフィルム等が挙げられる。保護フィルムは、これらのフィルムに限定されない。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る磁性樹脂シート1の樹脂フィルム2は、上述の磁性樹脂組成物で形成されているので、高い強度及び金属との密着性の向上を両立させた基板を製造可能である。
【0067】
(3)樹脂付き金属箔
図2に本実施形態に係る樹脂付き金属箔11を示す。樹脂付き金属箔11は、全体としてフィルム状又はシート状である。樹脂付き金属箔11は、磁性樹脂組成物、又は磁性樹脂組成物の半硬化物若しくは半硬化物を含む樹脂層21と、樹脂層21に接着された金属箔4と、を備える。樹脂付き金属箔11は、金属張積層板100、またプリント配線板の多層化(ビルドアップ法)などに利用される。
【0068】
樹脂付き金属箔11における樹脂層21は、磁性樹脂組成物、又は磁性樹脂組成物の乾燥物若しくは半硬化物を含む。このため、樹脂層21は、上記で説明した磁性樹脂シート1における樹脂フィルム2と同じであってよい。
【0069】
樹脂層21は、加熱又は光照射(紫外線照射)されると、硬化して、金属張積層板100の硬化物層200、またプリント配線板の絶縁層を形成し得る。
【0070】
樹脂層21の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上120μm以下である。これにより、基板の薄型化を実現し得る。
【0071】
金属箔4は、樹脂層21に接着されている。金属箔4の具体例として、銅箔、アルミニウム箔及びニッケル箔等が挙げられるが、特にこれに限定されない。金属箔4は、サブトラクティブ法などにおいて不要部分がエッチングにより除去されることで、導体配線を形成し得る。本実施形態では、樹脂層21が上記の磁性樹脂組成物を含み、磁性樹脂組成物が多官能チオール化合物(C)を含有するため、樹脂層21と金属箔との密着性が向上しうる。
【0072】
金属箔4の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0073】
金属箔4が極薄金属箔である場合には、ハンドリング性向上の観点から、金属箔4は、キャリア付極薄金属箔の一部であることが好ましい。キャリア付極薄金属箔は、金属箔4(極薄金属箔)と、剥離層(不図示)と、キャリア(不図示)と、を備える。この場合の金属箔4の厚さは、例えば10μm以下である。剥離層は、金属箔4とキャリアとを一時的に接着する層である。必要に応じて、金属箔4は、剥離層又はキャリアから剥離される。キャリアは、金属箔4を支持する支持体である。キャリアの具体例として、銅箔及びアルミニウム箔等が挙げられる。キャリアの厚さは、金属箔4の厚さよりも厚い。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る樹脂付き金属箔11の樹脂層21は、上述の磁性樹脂組成物で形成されているので、高い強度及び金属との密着性の向上を両立させた基板を製造可能である。
【0075】
(4)金属張積層板
図3に本実施形態に係る金属張積層板100を示す。金属張積層板100は、硬化物層200と、硬化物層200に接着された金属層40と、を備える。硬化物層200は、磁性樹脂組成物の硬化物201を含む。金属張積層板100は、プリント配線板の材料などに利用される。
【0076】
図3では、1つの硬化物層200は、1枚の基材210を有しているが、1つの硬化物層200が、2枚以上の基材を有していてもよい。すなわち、硬化物層200は、基材210を含んでもよい。
【0077】
硬化物層200は、例えば上記の樹脂付き金属箔11における樹脂層21を硬化させることにより作製してもよい。硬化物層200は、絶縁性の層としての機能を有することが好ましい。
【0078】
硬化物層200の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上120μm以下である。これにより、基板の薄型化を実現し得る。
【0079】
図3では、金属層40は、硬化物層200の両面に接着されているが、片面のみに接着されていてもよい。硬化物層200の両面に金属層40が接着されている金属張積層板100は、両面金属張積層板である。硬化物層200の片面のみに金属層40が接着されている金属張積層板100は、片面金属張積層板である。
【0080】
金属層40としては、特に限定されないが、例えば、金属箔等が挙げられる。金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔及びニッケル箔等が挙げられる。
【0081】
金属層40の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2μm以上35μm以下である。金属層40が極薄金属箔である場合には、ハンドリング性向上の観点から、金属層40は、キャリア付極薄金属箔の一部であることが好ましい。キャリア付極薄金属箔は、上述のとおりである。
【0082】
以上のように、本実施形態に係る金属張積層板100の硬化物層200は、上述の樹脂組成物で形成されているので、高い強度及び金属との密着性の向上を両立させた基板を製造可能である。
【0083】
本実施形態の磁性樹脂組成物は、インダクタ部品を製造するために用いることもできる。例えば磁性樹脂組成物を、適宜の金型に注入して成形し、硬化させることで成形体を得ることができる。また、インダクタ部品は、例えばコイル線状配線と、コイル線状配線を被覆する絶縁層とを備える。このため、磁性樹脂組成物から作製される成形体を、絶縁層として用いることでインダクタ部品を作製することができる。インダクタ部品は、コイル、インダクタ、フィルタ、リアクトル、及びトランスが含まれる。インダクタ部品の用途としては、特に限定されないが、例えば、ノイズフィルタの部品、及びインピーダンスマッチング回路の部品などが挙げられる。ノイズフィルタとしては、例えば、ローパスフィルタ、及びコモンチョークコイルなどが挙げられる。
【0084】
本実施形態の磁性樹脂組成物は、CCL(Copper Clad Laminate。銅張積層板)上に塗布したり、シート状に成形してからCCL状に配置することで磁性層を形成することも可能である。また、本実施形態の磁性樹脂組成物は、1以上のスルーホールが形成された支持基板のスルーホールに充填することで充填層を形成するために用いることもできる。
【実施例0085】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【0086】
(1)樹脂組成物の調製
各実施例及び比較例において、表に示す成分のうち「硬化剤」及び「磁性材料」以外の成分を表に示す配合割合(質量部)で混合し、更に有機溶剤を添加して混合液を調製した。続いて、混合液に磁性材料を添加して混錬し、最後に「硬化剤」を添加して均一になるように撹拌した。これにより、磁性樹脂組成物を得た。有機溶剤としては、メチルエチルケトンを使用した。磁性樹脂組成物の有機溶剤による希釈倍率(体積比)は1.5~2倍である。なお、表に示される成分の詳細は以下の通りである。
(熱硬化性樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社「jER 807」)。
・エポキシ樹脂2:多官能エポキシ樹脂(株式会社プリンテック「TECHMORE VG3101」)。
・フェノキシ樹脂:新日鉄住金化学株式会社製 品名 YP-50(重量平均分子量Mw:60,000~80,000)。
(硬化剤)
・硬化剤1:ジシアンジアミド
・硬化剤2:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成株式会社製 品名:2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ))。
(チオール化合物)
・チオール化合物1:信越化学工業株式会社製 型番 X12-1154(メルカプト基含有多官能シランカップリング剤。ペンタエリスリトール骨格と、ペンタエリスリトール骨格に結合し末端にトリメトキシシリル基を有する分子鎖と、ペンタエリスリトール骨格に結合し末端にメルカプト基を有する分子鎖と、を有する。1分子内に3個のスルファニル基を有する。各スルファニル基は、いずれも1級である。)
・チオール化合物2:昭和電工株式会社製 品名 PEMP(ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)。ペンタエリスリトール骨格を有する。1分子内に4個のスルファニル基を有する多官能チオール化合物。各スルファニル基は、いずれも1級である。)
・チオール化合物3:四国化成株式会社製 品名 TS-G(L)(1,3,4,6-テトラキス(1-メルカプトエチル)グリコールウリル。グリコールウリルを有する。1分子内に4個のスルファニル基を有する多官能チオール化合物。各スルファニル基は、いずれも1級である。)
・チオール化合物4:昭和電工株式会社製 品名 PE1(ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)。ペンタエリスリトール骨格を有する。1分子内に4個のスルファニル基を有する多官能チオール化合物。各スルファニル基は、いずれも2級である。)
・チオール化合物5:信越化学工業株式会社製 品名 KBM-802(3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン。1分子内に1個の1級スルファニル基を有する単官能チオール化合物。)
(その他)
・シリカ系添加剤1:モメンティブ社製 品名A1871(シランカップリング剤。エポキシシラン。)
・分散剤:ポリオキシエチレン-ラウリルアミン(日油株式会社、「ナイミーンL-202」)
(無機フィラー)
・磁性フィラー:磁性粉A:金属粉(エプソンアトミクス株式会社製 品名 KUMAME6B2 053C03)と磁性粉B:金属粉(エプソンアトミクス株式会社製 品名AW2-08 PF3KG)との混合物。混合比は、A:B=95:5~60:40。
【0087】
(2)試験片の作製
上記(1)で調製した樹脂組成物を、次に、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に上記の磁性樹脂スラリーを塗布して乾燥させることによって、厚み 100μmのBステージ状態の磁性樹脂シートを製造した。
【0088】
(3)評価
(3-1)密着性
上記(2)で作製した樹脂シートをCCL(Copper Clad Laminate。銅張積層板)上に配置し、無加圧状態で乾燥機(175℃)に入れ45分間静置した。45分経過後の樹脂シート(成形物)の様子を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
A:成形物を押しても基板から剥離しない。
B:成形物を押すと基板から剥離する。
C:基板から樹脂シートが剥がれている。
【0089】
(3-2)強度(曲げ強度)
上記(2)で作製した樹脂シートを所定枚数重ね、真空ホットプレスを用いて成形。アフターキュアーを施し、成形品を所定のサイズにカットした。試験方法、試験寸法はJIS―K6911に準拠。オートグラフにより最大荷重を測定し、支点間距離、試験片の幅と厚みから算出された値に基づき、以下の基準で評価した。
A:140MPa以上である。
B:110MPa以上140MPa未満である。
C:110MPa未満である。
【0090】
【表1】
【符号の説明】
【0091】
1 磁性樹脂シート
21 樹脂層
4 金属箔
11 樹脂付き金属箔
200 硬化物層
40 金属層
100 金属張積層板
図1
図2
図3