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特開2023-103906ポリマー及び亜鉛含有ハイドロタルサイトを含む組成物
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  • 特開-ポリマー及び亜鉛含有ハイドロタルサイトを含む組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103906
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ポリマー及び亜鉛含有ハイドロタルサイトを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230720BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 11/00 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/26
C08L11/00
C08L23/28
C08L27/12
C08L27/06
C08L23/16
C08L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004704
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】砂田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦典
(72)【発明者】
【氏名】細井 賢
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC111
4J002BB151
4J002BB241
4J002BB271
4J002BD031
4J002BD121
4J002BG021
4J002CP031
4J002DE286
4J002FD016
4J002GL00
4J002GM00
4J002GM01
4J002GN00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた耐水性を有する成形体や加硫成形体を得ることが可能な組成物を提供する。
【解決手段】本発明のポリマー及びハイドロタルサイトを含む組成物は、ハイドロタルサイトが下記の化学式(1)で表され、かつ、粉末X線回折パターンにおいて、2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わる第1ピークと、2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わる第2ピークと、2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わる第3ピークとを有するハイドロタルサイトであり、ポリマー100質量部に対して、ハイドロタルサイトを1~12質量部含有する。
2+ Zn・M3+ x+y+(3/2)z(1)
(式中、M2+は少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+は少なくとも1種の3価金属イオンを表し、x、y及びzは、それぞれ0<x≦0.5、0<y≦0.2及び0<z≦0.4を満たす数を表す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及びハイドロタルサイトを含む組成物であって、
前記ハイドロタルサイトが、下記の化学式(1)で表され、かつ、粉末X線回折パターンにおいて第1ピーク、第2ピーク及び第3ピークを有し、
前記第1ピークの2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わり、
前記第2ピークの2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わり、
前記第3ピークの2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わるハイドロタルサイトであり、
前記組成物が、前記ポリマー100質量部に対して、前記ハイドロタルサイトを1~12質量部含有することを特徴とする、前記組成物。
2+ Zn・M3+ x+y+(3/2)z (1)
(式中、M2+は少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+は少なくとも1種の3価金属イオンを表し、x、y及びzは、それぞれ0<x≦0.5、0<y≦0.2及び0<z≦0.4を満たす数を表す。)
【請求項2】
前記ポリマーがハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン系ポリマーが、クロロプレンゴム、アクリロニトリル単量体単位を含有するクロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びフッ素ゴムから選ばれる少なくとも1種のハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ハロゲン系ポリマーが塩化ビニル系樹脂を含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが非ハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記非ハロゲン系ポリマーが、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム及びアクリルゴムから選ばれる少なくとも1種の非ハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ハイドロタルサイトの比表面積が120m/g~250m/gであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ハイドロタルサイトが、前記化学式(1)において、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項3又は6に記載の組成物の加硫物。
【請求項10】
請求項9に記載の加硫物を用いた加硫成形体。
【請求項11】
ポリマーにハイドロタルサイトを含有させる方法であって、
前記ハイドロタルサイトが、下記の化学式(1)で表され、かつ、粉末X線回折パターンにおいて第1ピーク、第2ピーク及び第3ピークを有し、
前記第1ピークの2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わり、
前記第2ピークの2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わり、
前記第3ピークの2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わるハイドロタルサイトであり、
前記ポリマー100質量部に対して、前記ハイドロタルサイトを1~12質量部含有させることを特徴とする、前記方法。
2+ Zn・M3+ x+y+(3/2)z (1)
(式中、M2+は少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+は少なくとも1種の3価金属イオンを表し、x、y及びzは、それぞれ0<x≦0.5、0<y≦0.2及び0<z≦0.4を満たす数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴムや塩化ビニル系樹脂等のポリマーと、特定の亜鉛含有ハイドロタルサイトとを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種工業用途に用いられるポリマーは、それぞれの用途に対応した特性(例えば、機械特性や難燃性等)を有している。例えば、クロロプレンゴムやポリ塩化ビニル樹脂は、難燃性などの特性に優れており、その特性を活かして、それぞれ自動車部品や各種工業用部品等の広範囲な分野で用いられている。
【0003】
そのようなポリマーを含有する組成物においては、ポリマーが有する各種特性を更に高度に改良することが求められており、使用環境によっては優れた耐水性を有することが求められる場合もある。例えば、特許文献1には、クロロプレンゴムを主材とし、金属酸化物系加硫剤としてハイドロタルサイトの焼成物を含むクロロプレンゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-012392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたクロロプレンゴム組成物は、耐水性に優れ、かつ、加硫時に成型品に発泡やボイド、フクレ等の不良部分が発生しにくいとされているものの、使用環境によっては、依然として十分な耐水性が得られない場合があり、更なる改良が求められている。
【0006】
また、特許文献1に開示されたクロロプレンゴム組成物は、ポリマーとしてクロロプレンゴムを含有するものに限られるため、耐水性が求められる他のポリマーを含有する組成物においては、同様の効果が得られない虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、優れた耐水性を有する成形体や加硫成形体を得ることが可能な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、亜鉛(Zn)を必須成分として含有するハイドロタルサイトを、400℃~850℃という特定の温度条件下で強焼成することで、従来のハイドロタルサイトにはない特有の粉末X線回折パターンを有するハイドロタルサイトが得られ、さらに、このハイドロタルサイトを、クロロプレンゴムや塩化ビニル系樹脂等のポリマーに含有させることによって得られる組成物が、優れた耐水性を有する成形体や加硫成形体を得ることができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、以下の各項の態様を含むものである。
【0009】
(項1)ポリマー及びハイドロタルサイトを含む組成物であって、
前記ハイドロタルサイトが、下記の化学式(1)で表され、かつ、粉末X線回折パターンにおいて第1ピーク、第2ピーク及び第3ピークを有し、
前記第1ピークの2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わり、
前記第2ピークの2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わり、
前記第3ピークの2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わるハイドロタルサイトであり、
前記組成物が、前記ポリマー100質量部に対して、前記ハイドロタルサイトを1~12質量部含有することを特徴とする、前記組成物。
2+ Zn・M3+ x+y+(3/2)z (1)
(式中、M2+は少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+は少なくとも1種の3価金属イオンを表し、x、y及びzは、それぞれ0<x≦0.5、0<y≦0.2及び0<z≦0.4を満たす数を表す。)
【0010】
(項2)前記ポリマーがハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、項1に記載の組成物。
【0011】
(項3)前記ハロゲン系ポリマーが、クロロプレンゴム、アクリロニトリル単量体単位を含有するクロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びフッ素ゴムから選ばれる少なくとも1種のハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、項2に記載の組成物。
【0012】
(項4)前記ハロゲン系ポリマーが塩化ビニル系樹脂を含むことを特徴とする、項2に記載の組成物。
【0013】
(項5)前記ポリマーが非ハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、項1に記載の組成物。
【0014】
(項6)前記非ハロゲン系ポリマーが、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム及びアクリルゴムから選ばれる少なくとも1種の非ハロゲン系ポリマーを含むことを特徴とする、項5に記載の組成物。
【0015】
(項7)前記ハイドロタルサイトの比表面積が120m/g~250m/gであることを特徴とする、項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【0016】
(項8)前記ハイドロタルサイトが、前記化学式(1)において、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であることを特徴とする、項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【0017】
(項9)項3又は6に記載の組成物の加硫物。
【0018】
(項10)項9に記載の加硫物を用いた加硫成形体。
【0019】
(項11)ポリマーにハイドロタルサイトを含有させる方法であって、
前記ハイドロタルサイトが、下記の化学式(1)で表され、かつ、粉末X線回折パターンにおいて第1ピーク、第2ピーク及び第3ピークを有し、
前記第1ピークの2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わり、
前記第2ピークの2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わり、
前記第3ピークの2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わるハイドロタルサイトであり、
前記ポリマー100質量部に対して、前記ハイドロタルサイトを1~12質量部含有させることを特徴とする、前記方法。
2+ Zn・M3+ x+y+(3/2)z (1)
(式中、M2+は少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+は少なくとも1種の3価金属イオンを表し、x、y及びzは、それぞれ0<x≦0.5、0<y≦0.2及び0<z≦0.4を満たす数を表す。)
【発明の効果】
【0020】
本発明の組成物によれば、耐水性に優れた成形体や加硫成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、各実施例及び比較例で使用したハイドロタルサイトA~Eの粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態のみに限定されるものではない。
【0023】
[組成物]
本発明の一実施形態は、ポリマー及びハイドロタルサイトを含む組成物であって、ハイドロタルサイトが、下記の化学式(1)で表され、かつ、粉末X線回折パターンにおいて第1ピーク、第2ピーク及び第3ピークを有し、第1ピークの2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わり、第2ピークの2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わり、第3ピークの2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わる(以下、このような粉末X線回折パターンを、単に「特有の粉末X線回折パターン」と称することがある。)ハイドロタルサイトであり、さらに、組成物が、ポリマー100質量部に対して、ハイドロタルサイトを1~12質量部含有する、組成物である。
2+ Zn・M3+ x+y+(3/2)z (1)
(式中、M2+は少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+は少なくとも1種の3価金属イオンを表し、x、y及びzは、それぞれ0<x≦0.5、0<y≦0.2及び0<z≦0.4を満たす数を表す。)
【0024】
上記の化学式(1)で表され、かつ、特有の粉末X線回折パターンを有するハイドロタルサイトは、Znを必須成分として含有するハイドロタルサイトを、400℃~850℃という特定の温度条件下で強焼成することで得ることができる。そして、この特定の亜鉛含有ハイドロタルサイトを、クロロプレンゴムや塩化ビニル系樹脂等のポリマーに含有させることによって得られる組成物は、成形体や加硫成形体に加工したときに、優れた耐水性を発揮することができる。
【0025】
本実施形態の組成物によって形成される成形体や加硫成形体の耐水性が向上する作用機序は明らかでなく、また、いかなる理論にも拘束されるものではないが、次のように考えられる。
【0026】
まず、未焼成の亜鉛含有ハイドロタルサイトは、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)及び亜鉛(Zn)の水酸化物によって形成される基本層と、2つの基本層の間に存在する層間水及び炭酸イオン(CO 2-)によって形成される中間層と、を備えた層状構造を有している。この未焼成の亜鉛含有ハイドロタルサイトが400℃~850℃という特定の温度条件下で強焼成されると、中間層の層間水と炭酸イオンが放出され、基本層の水酸化物が酸化物、すなわち酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)及び酸化亜鉛(ZnO)に変化する。このとき、基本層の水酸化物から変化した酸化物は、層状構造を保持したまま存在することとなる。このようにして強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトは、基本層や層間に存在する水が放出されて、比表面積が大幅に増加するため、酸と反応し得る部分が増大して、酸との中和反応が生じやすく(すなわち、高い受酸能力を有し)、優れた熱安定性を発揮することができる。
【0027】
そして、このような強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトを、ハロゲン系ポリマー(例えば、クロロプレンゴムや塩化ビニル系樹脂等)に含有させた組成物においては、組成物中の強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトは、酸との反応によって基本層の酸化物が塩類(例えば、塩化アルミニウム(AlCl)、塩化マグネシウム(MgCl)及び塩化亜鉛(ZnCl))に変化しているため、上記組成物によって形成される成形体や加硫成形体に水が接触すると、ハイドロタルサイトの基本層と中間層が水と塩類を引き込むことで、基本層の塩類が再び水酸化物に変化するとともに、水(層間水)と酸の陰イオン(すなわち、塩化物イオン(Cl))が中間層に保持されることとなり、ハイドロタルサイトが、水酸化物によって形成された基本層と、層間水等を含む中間層と、を備えた層状構造の亜鉛含有ハイドロタルサイトに変化すると考えられる。このような強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトの働きにより、上記組成物によって形成される成形体や加硫成形体に水が接触しても、亜鉛含有ハイドロタルサイトが上述のように変化することで、ポリマーへの水の影響を低減することができ、結果的に優れた耐水性を発揮することができると考えられる。
【0028】
なお、強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトは、上述のとおり、強焼成によって比表面積が大幅に増加しているため、クロロプレンゴム等のポリマーに含有させる場合、基本層のZnOが活性の高い金属酸化物(例えば、金属酸化物系加硫剤)として作用し得るため、従来の活性の低い酸化亜鉛と比べて添加量を低減することができるという利点もある。
【0029】
一方、強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトを、非ハロゲン系ポリマー(例えば、エチレンプロピレンジエンゴム等)に含有させた組成物においては、組成物中の強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトは、上述のとおり比表面積が大幅に増加しており、表面に活性の高いZnOを有する加硫剤として作用するため、従来の活性の低いZnO等の金属酸化物系加硫剤を用いた場合よりも反応性が高く、上記組成物によって形成される加硫物の加硫密度を増大させることができる、すなわち加硫物の三次元網目構造をより密に形成することができる。そのため、加硫物に水が接触しても、水分子が物理的に加硫物の三次元網目構造の中に入り込みにくく、結果的に優れた耐水性を発揮することができると考えられる。
【0030】
本明細書において、粉末X線回折パターンのピークの「始まり」及び「終わり」は、ピークの形態に応じて次のように定義する。二つのピークが重なり合う場合は、その重なり部分の極小点を、一方のピークの始まりとし、かつ、他方のピークの終わりとする。例えば、図1に示すハイドロタルサイトA(HT-A)の粉末X線回折パターンにおいては、第1ピーク(P1)の終わりと第2ピーク(P2)の始まりは、第1ピークと第2ピークの重なり部分の極小点とする。特定のピークが他のピークと重なり合わない場合は、その粉末X線回折パターンのベースラインに対してピークの立ち上がり部分をピークの始まり及び終わりとする。
【0031】
以下、組成物の各種成分について説明する。
【0032】
[ポリマー]
ポリマーは、特に限定されず、各種用途等に応じた任意のポリマーを採用することができる。そのようなポリマーとしては、例えば、クロロプレンゴムや塩化ビニル系樹脂等のハロゲン系ポリマー;エチレンプロピレンジエンゴム等の非ハロゲン系ポリマーなどが挙げられる。なお、これらのポリマーは、単独で又は2種以上のポリマーを組み合わせて用いることができる。
【0033】
(ハロゲン系ポリマー)
ハロゲン系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ハロゲンを含むゴムや樹脂などが挙げられる。
【0034】
ハロゲンを含むゴムの具体例としては、クロロプレンゴム、アクリロニトリル単量体単位を含有するクロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の塩素系ゴム;臭素化ブチルゴム等の臭素系ゴム;フッ素ゴム等のフッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0035】
ハロゲンを含む樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリテン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0036】
なお、これらのハロゲン系ポリマーは、ハロゲンを含まない他のポリマー(すなわち、非ハロゲン系ポリマー)、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等と併せて用いることができる。ハロゲン系ポリマーと非ハロゲン系ポリマーは、例えば、ハロゲン系ポリマーと非ハロゲン系ポリマーとの混合物、ブロック共重合体又はグラフト共重合体などの形態で用いることができる。
【0037】
一実施形態では、ポリマーは、このようなハロゲン系ポリマーを含むものが好ましく、耐水性等の点から、ハロゲンを含むゴムがより好ましく、クロロプレンゴム、アクリロニトリル単量体単位を含有するクロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びフッ素ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴムを含むものが更に好ましく、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル単量体単位を含有するクロロプレンゴムのうちの少なくとも一方を含むものが特に好ましい。
【0038】
別の実施形態では、ポリマーは、ハロゲン系ポリマーとして塩化ビニル系樹脂を含むものが好ましい。本来、塩化ビニル系樹脂は、成形体等に生じる発泡や熱安定性の低下などの問題が生じやすい樹脂であるが、組成物に上述の強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトが含まれていることによって、これらの問題の発生を抑制しつつ、優れた耐水性を発揮することができる。
【0039】
(非ハロゲン系ポリマー)
非ハロゲン系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ハロゲンを含まないゴムや樹脂などが挙げられる。
【0040】
ハロゲンを含まないゴムの具体例としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。
【0041】
ハロゲンを含まない樹脂の具体例としては、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、ポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、ポリブテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1等)、ポリスチレン、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ABS、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0042】
一実施形態では、ポリマーは、このような非ハロゲン系ポリマーを含むものが好ましく、耐水性等の点から、ハロゲンを含まないゴムがより好ましく、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム及びアクリルゴムから選ばれる少なくとも1種のゴムを含むものが更に好ましい。
【0043】
[ハイドロタルサイト]
ハイドロタルサイトは、未焼成の亜鉛含有ハイドロタルサイトを400℃~850℃という特定の温度条件下で強焼成することによって得られる、下記の化学式(1)で表され、かつ、粉末X線回折パターンにおいて、2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わる第1ピークと、2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わる第2ピークと、2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わる第3ピークと、を有するハイドロタルサイトである。
2+ Zn・M3+ x+y+(3/2)z (1)
(式中、M2+は少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+は少なくとも1種の3価金属イオンを表し、x、y及びzは、それぞれ0<x≦0.5、0<y≦0.2及び0<z≦0.4を満たす数を表す。)
【0044】
このようなハイドロタルサイトは、上述のとおり、耐水性を向上させる作用だけでなく、熱安定剤や受酸剤、加硫剤としても作用することができる。さらに、このハイドロタルサイトは、焼成前のハイドロタルサイトの層状構造の層間に存在する層間水や炭酸イオン(層間アニオン)が強焼成によって除去されているため、組成物が成形体や加硫成形体等に加工されても、層間水や炭酸イオンに起因する発泡が生じにくくなっている。
【0045】
また、上述の強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトは、強焼成によって表面に酸化亜鉛(ZnO)が形成されており、該ZnOはMgO等と比べて中和反応によって発生する水分の量が少ないため、発泡や熱安定性の低下がより生じにくいという利点がある。
【0046】
ハイドロタルサイトの上記化学式(1)中のM2+及びM3+の金属の種類は、特に限定されず、ハイドロタルサイトに含まれ得る任意の金属を採用することができる。一実施形態では、上記化学式(1)中のM2+がマグネシウムイオン(Mg2+)であり、M3+がアルミニウムイオン(Al3+)であることが好ましい。ハイドロタルサイトがこのような特定の組成を有していると、優れた耐水性をより確実に得ることができる上、上述の発泡や熱安定性の低下をより生じにくくすることができる。
【0047】
強焼成された亜鉛含有ハイドロタルサイトは、上述のとおり、強焼成によって基本層の水酸化物が酸化物へと変化する際に、層状構造の基本層や層間に存在する水が放出されることで、比表面積が大幅に増加しているが、かかるハイドロタルサイトの比表面積は、BET法による比表面積で120m/g~250m/gであることが好ましく、150m/g~200m/gであることがより好ましい。比表面積がこのような特定の範囲内にあると、成形体や加硫成形体の耐水性をより確実に向上させることができる上、発泡や熱安定性の低下等の問題をより生じにくくすることができる。
【0048】
なお、このような特定の比表面積を有するハイドロタルサイトは、上述のとおり未焼成の亜鉛含有ハイドロタルサイトを400℃~850℃の範囲内の温度条件下で強焼成することにより得ることができる。
【0049】
ハイドロタルサイトの含有量は、ポリマー100質量部に対して、1~12質量部である。ハイドロタルサイトの含有量がこのような特定の範囲内にあると、成形体や加硫成形体の耐水性をより確実に向上させることができる。
【0050】
上記化学式(1)で表され、かつ、上記特有の粉末X線回折パターンを有する亜鉛含有ハイドロタルサイトは、上述のとおり、未焼成の亜鉛含有ハイドロタルサイトを400℃~850℃という特定の温度条件下で強焼成することによって得ることができる。なお、未焼成の亜鉛含有ハイドロタルサイトを400℃未満の温度で焼成すると、高い酸反応性を有する酸化物が得られにくくなり、850℃を超える温度で焼成すると、ハイドロタルサイトの層状構造が保持できずに、スピネル型構造となりやすく、結果的に熱安定性が低下しやすくなる。焼成温度の好ましい範囲は450℃~800℃である。
【0051】
なお、未焼成の亜鉛含有ハイドロタルサイトを強焼成する際の焼成時間は、特に限定されないが、粉末X線回折法(XRD)により酸化物のピークが確認できる程度に焼成できる時間であればよい。そのような焼成時間としては、焼成温度にもよるが、例えば30分以上の焼成時間が挙げられ、好ましくは1時間以上の焼成時間であり、更に好ましくは2時間以上の焼成時間である。
【0052】
(表面処理)
ハイドロタルサイトは、組成物中の分散性を向上させるための表面処理が施されていてもよい。この表面処理に用い得る表面処理剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、リン酸エステル類処理剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シリコーン系処理剤、ケイ酸、水ガラスなどが挙げられる。特に好ましい表面処理剤は、オレイン酸、ステアリン酸、オクタン酸及びオクチル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤が挙げられる。なお、表面処理剤の量は、特に限定されないが、ハイドロタルサイトの質量に対して、例えば、0.01~20質量%であり、好ましくは0.1~15質量%である。
【0053】
[他の添加剤]
一実施形態では、組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、ハイドロタルサイト以外の他の添加剤を含有していてもよい。そのような他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、充填材や補強材(例えば、カーボンブラック、シリカ、クレイ、タルク、炭酸カルシウム等)、可塑剤(例えば、ジイソノニルフタレート等のフタレート系可塑剤、エステル系可塑剤、植物油等)、加硫剤(例えば、酸化亜鉛等の金属酸化物)、加硫促進剤(例えば、トリメチルチオ尿素化合物等)、加工助剤や滑剤(例えば、ステアリン酸等の脂肪酸、パラフィン系加工助剤、脂肪酸アミド等)、老化防止剤(例えば、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン等の耐オゾン老化防止剤、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン等の耐熱老化防止剤等)、受酸剤(例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物)などが挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
[組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る組成物は、ポリマーに上記化学式(1)で表され、かつ、上記特有の粉末X線回折パターンを有する亜鉛含有ハイドロタルサイトを含有させる方法によって得ることができる。このとき、ハイドロタルサイトのほかに、任意の他の添加剤をポリマーに含有させてもよい。
【0055】
ポリマーに上述のハイドロタルサイトを含有させる際は、任意の混合手段又は混錬手段を用いて、ポリマーと上述のハイドロタルサイトとを混合又は混錬すればよい。なお、混合手段又は混錬手段は、特に限定されず、例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、1軸又は2軸押出機、二本ロールなどが挙げられる。
【0056】
[成形体]
本発明の一実施形態においては、ポリマー及び上述のハイドロタルサイトを含む組成物を用いて、任意の成形手段により所望の成形体を得ることができる。なお、成形体を製造する際の成形手段は、特に限定されず、ポリマーの種類や成形体の用途等に応じた任意の成形手段を採用することができる。そのような成形手段としては、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、カレンダー成形、シートフォーミング成形、トランスファー成形、積層成形、真空成形などが挙げられる。
【0057】
ポリマー及び上述のハイドロタルサイトを含む組成物によって形成された成形体は、耐水性に優れるとともに、発泡等の成形不良が生じにくくなっているため、耐水性や機械特性に優れた各種樹脂製品として好適に用いることができる。
【0058】
なお、本明細書においては、加硫されていない成形体(例えば、ゴム以外のポリマーを用いて成形された成形体等)を単に成形体といい、加硫されている成形体を加硫成形体という。
【0059】
[加硫物及び加硫成形体]
本発明の別の実施形態においては、クロロプレンゴム等のゴムと、上述のハイドロタルサイトとを含む組成物(すなわち、ゴム組成物)を用いて加硫することにより、加硫物を製造することができる。また、本発明の更に別の実施形態においては、上述の加硫物を用いて成形することにより、加硫成形体を製造することができる。加硫成形体は、ゴム組成物を加硫した後に所定形状に成形してもよく、ゴム組成物を所定形状に成形した後に加硫してもよい。なお、加硫成形体を製造する際の成形手段は、特に限定されず、例えば、プレス成形や押出成形、カレンダー成形などが挙げられる。
【0060】
上述のゴムとハイドロタルサイトを含むゴム組成物によって形成された加硫物又は加硫成形体は、耐水性に優れるとともに、発泡等の成形不良が生じにくくなっているため、耐水性や機械特性に優れた各種ゴム製品(例えば、ベルトやホース、被覆材等)として好適に用いることができる。
【0061】
本発明は、上述した各実施形態や後述する実施例等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【実施例0062】
以下、実施例及び比較例を例示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
<クロロプレンゴム組成物の作製>
ポリマー成分としてのクロロプレンゴム(デンカ株式会社製、メルカプタン変性クロロプレンゴム 生ゴムムーニー粘度ML1+4(100℃)=48)100質量部に、上記の化学式(1)を満たし、かつ、上記特有の粉末X線回折パターンを有する亜鉛含有ハイドロタルサイトである、ハイドロタルサイトB(協和化学工業株式会社製、原料の金属種:MgAlZn、BET比表面積:194m/g)2質量部と、滑剤としてステアリン酸(新日本理化株式会社製、ステアリン酸50S)0.5質量部と、充填材としてSRFカーボンブラック(旭カーボン株式会社製、旭#35)30質量部と、老化防止剤として耐熱老化防止剤のフェニル-1-ナフチルアミン(大内新興化学工業株式会社製、ノクラックPA)1質量部と、加硫促進剤としてトリメチルチオ尿素(TMU;大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTMU)1質量部と、を配合し、8インチロールを用いて混錬することにより、実施例1の組成物(ゴム組成物)を作製した。
【0064】
なお、実施例1並びに以降の各実施例及び比較例で使用したハイドロタルサイトは、後述するように、粉末X線回折にて分析し、それぞれの粉末X線回折パターンを確認した。
【0065】
(実施例2~4)
ハイドロタルサイトBの配合量をそれぞれ4質量部、8質量部及び12質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~4のゴム組成物を作製した。
【0066】
(実施例5)
ハイドロタルサイトBの代わりに、上記の化学式(1)を満たし、かつ、上記特有の粉末X線回折パターンを有する亜鉛含有ハイドロタルサイトである、ハイドロタルサイトA(協和化学工業株式会社製、原料の金属種:MgAlZn、BET比表面積:155m/g)を8質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のゴム組成物を作製した。
【0067】
(実施例6)
受酸剤として酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種)3質量部を更に配合したこと以外は、実施例3と同様にして実施例6のゴム組成物を作製した。
【0068】
(実施例7)
クロロプレンゴム(メルカプタン変性クロロプレンゴム)の代わりに、アクリロニトリル単量体単位を含有するクロロプレンゴム(デンカ株式会社製)を配合したこと以外は、実施例3と同様にして実施例7のゴム組成物を作製した。
【0069】
(比較例1及び2)
ハイドロタルサイトBの配合量をそれぞれ0.5質量部及び16質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1及び2のゴム組成物を作製した。
【0070】
(比較例3)
ハイドロタルサイトBの代わりに、粉末X線回折パターンが上記特有の回折パターンとは異なる亜鉛含有ハイドロタルサイトである、ハイドロタルサイトC(協和化学工業株式会社製、原料の金属種:MgAlZn、BET比表面積:101m/g)を8質量部配合したこと以外は、実施例3と同様にして比較例3のゴム組成物を作製した。
【0071】
(比較例4)
ハイドロタルサイトBの代わりに、亜鉛非含有(すなわち、上記の化学式(1)を満たしていない)で粉末X線回折パターンが上記特有の回折パターンとは異なる亜鉛非含有ハイドロタルサイトである、ハイドロタルサイトD(協和化学工業株式会社製、原料の金属種:MgAl、BET比表面積:131m/g)を8質量部配合したこと以外は、実施例3と同様にして比較例4のゴム組成物を作製した。
【0072】
(比較例5)
ハイドロタルサイトBの代わりに、受酸剤である酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、キョーワマグ150)及び酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種)をそれぞれ4質量部及び3質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして比較例5のゴム組成物を作製した。
【0073】
<加硫成形体の作製及び評価>
作製した実施例1~7及び比較例1~5のゴム組成物を、それぞれ170℃×20分の条件でプレス加硫することにより、厚さ2mmのシート状の加硫成形体を作製した。さらに、このようにして作製した加硫成形体の耐水性を、下記の<耐水性試験>に従って体積変化率を測定することにより評価した。耐水性試験の体積変化率の測定結果は、実施例1~7及び比較例1~5のゴム組成物の配合とともに、下記の表1に示す。
【0074】
<耐水性試験>
シート状の成形体を用いて幅20mm、長さ50mm、厚さ2mmの試験片を得た。80℃の水に試験片を288時間浸漬した後、浸漬の前後で試験片の体積を測定することにより体積変化率を測定した。試験片の体積は、アルファーミラージュ株式会社製電子比重計を用いて測定した。なお、体積変化率ΔVは、試験片の浸漬前の体積をW1、浸漬後の体積をW2としたときに、「体積変化率ΔV(%)=100×(W2-W1)/W1」で求められる。
【0075】
【表1】
【0076】
(実施例8)
<ポリ塩化ビニル樹脂組成物の作製>
ポリマー成分としてのポリ塩化ビニル樹脂(信越化学工業株式会社製、TK-1300)100質量部に、上記のハイドロタルサイトBを1質量部と、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP;大八化学工業株式会社製)50質量部と、充填材として炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、ホワイトンSB)30質量部と、滑剤としてステアリン酸(新日本理化株式会社製、ステアリン酸50S)0.1質量部と、を配合し、8インチロールを用いて170℃で5分間混錬することにより、実施例8の組成物(樹脂組成物)を作製した。
【0077】
(実施例9~12)
ハイドロタルサイトBの配合量をそれぞれ3質量部、5質量部、8質量部及び12質量部に変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例9~12の樹脂組成物を作製した。
【0078】
(実施例13)
ハイドロタルサイトBの代わりに、上記のハイドロタルサイトAを3質量部配合したこと以外は、実施例8と同様にして実施例13の樹脂組成物を作製した。
【0079】
(実施例14)
ハイドロタルサイトBの代わりに、上記の化学式(1)を満たし、かつ、上記特有の粉末X線回折パターンを有する亜鉛含有ハイドロタルサイトである、ハイドロタルサイトE(協和化学工業株式会社製、原料の金属種:MgAlZn、BET比表面積:130m/g)を3質量部配合したこと以外は、実施例8と同様にして実施例14の樹脂組成物を作製した。
【0080】
(比較例6~8)
ハイドロタルサイトBの配合量をそれぞれ0.5質量部、16質量部及び22質量部に変更したこと以外は、実施例8と同様にして比較例6~8の樹脂組成物を作製した。
【0081】
(比較例9)
ハイドロタルサイトBの代わりに、上記のハイドロタルサイトCを3質量部配合したこと以外は、実施例8と同様にして比較例9の樹脂組成物を作製した。
【0082】
(比較例10)
ハイドロタルサイトBの代わりに、上記のハイドロタルサイトDを3質量部配合したこと以外は、実施例8と同様にして比較例10の樹脂組成物を作製した。
【0083】
<プレス成形体の作製及び評価>
作製した実施例8~14及び比較例6~10の樹脂組成物を、それぞれ190℃×5分の条件でプレス成形することにより、厚さ2mmのシート状のプレス成形体を作製した。さらに、このようにして作製したプレス成形体の耐水性を、上記の<耐水性試験>に従って体積変化率を測定することにより評価した。耐水性試験の体積変化率の測定結果は、実施例8~14及び比較例6~10の樹脂組成物の配合とともに、下記の表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
(実施例15)
<フッ素ゴム組成物の作製>
ポリマー成分としてのフッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、フッ素濃度:66wt%、生ゴムムーニー粘度ML1+10(121℃)=41)100質量部に、上記のハイドロタルサイトBを3質量部と、水酸化カルシウム(近江化学工業株式会社製、カルビット)6質量部と、補強材としてMTカーボンブラック(Cancarb Limited製)20質量部と、を配合し、8インチロールを用いて混錬することにより、実施例15の組成物(ゴム組成物)を作製した。
【0086】
(比較例11)
ハイドロタルサイトBの代わりに、酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、キョーワマグ150)を3質量部配合したこと以外は、実施例15と同様にして比較例11のゴム組成物を作製した。
【0087】
<加硫成形体の作製及び評価>
作製した実施例15及び比較例11のゴム組成物を、それぞれ170℃×15分の条件でプレス加硫することにより、厚さ2mmのシート状の加硫成形体を作製した。さらに、このようにして作製した加硫成形体の耐水性を、上記の<耐水性試験>に従って体積変化率を測定することにより評価した。耐水性試験の体積変化率の測定結果は、実施例15及び比較例11のゴム組成物の配合とともに、下記の表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
(実施例16)
<エチレンプロピレンジエンゴム組成物の作製>
ポリマー成分としてのエチレンプロピレンジエンゴム(三井化学株式会社製、生ゴムムーニー粘度ML1+4(100℃)=40)100質量部に、上記のハイドロタルサイトBを5質量部と、滑剤としてステアリン酸(新日本理化株式会社製、ステアリン酸50S)1質量部と、プロセスオイル(出光興産社製、PW-380)50質量部と、補強材として3種類のカーボンブラック、すなわちSRFカーボンブラック(旭カーボン株式会社製、旭#35)45質量部、MTカーボンブラック(Cancarb Limited製)45質量部及びFEFカーボンブラック(東海カーボン株式会社製、シーストSO)30質量部と、耐熱老化防止剤としてポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)(大内新興化学工業株式会社製、ノクラック224-S)2質量部と、過酸化物として2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油株式会社製、パーヘキサ25B-40)7質量部と、架橋促進剤としてトリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル株式会社製、TAIC)1.5質量部と、を配合し、8インチロールを用いて混錬することにより、実施例16の組成物(ゴム組成物)を作製した。
【0090】
(比較例12)
ハイドロタルサイトBの代わりに、酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種)を5質量部配合したこと以外は、実施例16と同様にして比較例12のゴム組成物を作製した。
【0091】
<加硫成形体の作製及び評価>
作製した実施例16及び比較例12のゴム組成物を、それぞれ180℃×15分の条件でプレス加硫することにより、厚さ2mmのシート状の加硫成形体を作製した。さらに、このようにして作製した加硫成形体の耐水性を、上記の<耐水性試験>に従って体積変化率を測定することにより評価した。耐水性試験の体積変化率の測定結果は、実施例16及び比較例12のゴム組成物の配合とともに、下記の表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
<ハイドロタルサイトの粉末X線回折>
上記の各実施例及び比較例で使用したハイドロタルサイトA~Eについて、粉末X線回折にて分析し、それぞれの粉末X線回折パターンを確認した。各ハイドロタルサイトの粉末X線回折パターンを図1に示す。なお、図1において、上下に並ぶ5本の回折パターンに付された符号HT-A、HT-B、HT-C、HT-D及びHT-Eは、それぞれハイドロタルサイトA、B、C、D及びEを意味し、符号P1、P2及びP3は、それぞれ第1ピーク、第2ピーク及び第3ピークを意味する。
【0094】
図1に示すように、実施例で使用したハイドロタルサイトA(HT-A)、ハイドロタルサイトB(HT-B)及びハイドロタルサイトE(HT-E)は、いずれも2θが28°~32°より始まり38°~41°で終わる第1ピーク(P1)と、2θが38°~41°より始まり45°~47°で終わる第2ピーク(P2)と、2θが59°~61°より始まり64°~66°で終わる第3ピーク(P3)と、を有する特有の粉末X線回折パターンを有していることが確認できた。一方、比較例で使用したハイドロタルサイトC(HT-C)は、第2ピーク(P2)を有しておらず、同じく比較例で使用したハイドロタルサイトD(HT-D)は、第1ピーク(P1)を有しておらず、いずれのハイドロタルサイトも上記特有の粉末X線回折パターンを有していないことを確認した。
【0095】
表1~表4に示すように、実施例1~16と比較例1~12の比較から、ポリマー100質量部に対して、上記化学式(1)で表され、かつ、上記特有の粉末X線回折パターンを有するハイドロタルサイトを1~12質量部含有する組成物は、優れた耐水性を有する成形体や加硫成形体を得ることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の組成物は、耐水性に優れるため、例えば、自動車用部品材(例えば、シール材等のゴム部材)、ホース材、被覆材、ベルト材、建材、ガスケットなどの様々な分野の樹脂製品やゴム製品などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
P1 第1ピーク
P2 第2ピーク
P3 第3ピーク
HT-A ハイドロタルサイトA
HT-B ハイドロタルサイトB
HT-C ハイドロタルサイトC
HT-D ハイドロタルサイトD
HT-E ハイドロタルサイトE
図1