(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103907
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20230720BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20230720BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H01M10/48 301
G01R31/3835
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004707
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲哉
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA24
2G216BA34
2G216BB01
2G216CD05
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA01
5G503CA11
5G503CA17
5G503CB11
5G503EA08
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの電圧変化に含まれる温度変化に伴う変動成分を考慮しつつ蓄電デバイスの状態を測定する。
【解決手段】蓄電デバイス10の状態を測定する測定装置1は、蓄電デバイス10の電圧に対して基準となる電圧を生成する基準電圧源30を備え、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差を測定し、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差を検出する。そして測定装置1は、測定した電位差の変化、及び検出した温度差の変化に基づいて前記蓄電デバイスの状態を示す指標を演算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの状態を測定する測定装置であって、
前記蓄電デバイスの電圧に対して基準となる電圧を生成する基準デバイスと、
前記蓄電デバイス及び前記基準デバイス間の電位差を測定する測定手段と、
前記蓄電デバイス及び前記基準デバイス間の温度差を検出するための検出手段と、
測定した時系列の前記電位差、及び検出した時系列の前記温度差に基づいて前記蓄電デバイスの状態を示す指標を演算する演算手段と、
を備える蓄電デバイスの測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記蓄電デバイス及び前記基準デバイス間の温度差の変化率と前記電位差の変化率を補正するための補正量との対応関係を示す情報を保持するメモリをさらに備え、
前記演算手段は、検出した前記温度差の変化率を取得すると、前記情報を参照して当該温度差の変化率に対応する前記補正量を求め、当該補正量に基づいて前記指標を補正する、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記蓄電デバイス及び前記基準デバイスの少なくとも一方の温度を調整する温度調整手段をさらに備え、
前記演算手段は、測定した前記電位差の変化率、及び前記検出手段により検出される前記温度差の変化率に基づいて、前記温度差の変化率と前記温度差の変化率との関係を示す近似直線の傾きを前記情報として算出する、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記蓄電デバイス及び前記基準デバイスの少なくとも一方の温度を調整する温度調整手段をさらに備え、
前記供給手段は、前記温度調整手段により前記温度差の変化率が変更されるたびに異なる大きさの前記定電流を前記蓄電デバイスに供給し、
前記演算手段は、複数の前記温度差の変化率における前記電位差の変化率及び前記定電流の電流値に基づいて前記指標を演算する、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記演算手段は、複数の前記温度差の変化率における前記電位差の変化率及び前記定電流の電流値に基づいて、前記温度差の変化率と前記温度差の変化率との関係を示す温度係数を演算する、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項4に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記基準デバイスは、他の蓄電デバイスである、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の蓄電デバイスの測定装置であって、
前記検出手段は、
前記蓄電デバイスの温度を検出する第一温度センサと、
前記基準デバイスの温度を検出する第二温度センサと、を有する、
蓄電デバイスの測定装置。
【請求項8】
蓄電デバイスの状態を測定する測定方法であって、
前記蓄電デバイスの電圧に対して基準となる電圧を生成する基準デバイスと前記蓄電デバイスとの間の電位差を測定する測定ステップと、
前記蓄電デバイス及び前記基準デバイス間の温度差を検出する検出ステップと、
前記測定ステップにおいて測定される時系列の前記電位差、及び前記検出ステップにおいて検出される時系列の前記温度差に基づいて前記蓄電デバイスの状態を示す指標を演算する演算ステップと、
を備える蓄電デバイスの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの状態を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電デバイスに定電流を供給した状態で蓄電デバイスの電圧と基準電圧との電位差の変化を検出し、検出した電位差の変化に基づいて蓄電デバイスの状態を測定する測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような測定装置は、蓄電デバイスの電圧と基準電圧との電位差の変化を検出する構成であるため、蓄電デバイスの電圧変化を精度よく検出することが可能となる。
【0005】
しかしながら、蓄電デバイスの電圧変化は、例えば蓄電デバイスの温度変化に伴って変動してしまう。このように、検出した電位差の変化には蓄電デバイスの環境に起因する変動成分がノイズとして混入してしまうので、蓄電デバイスの状態を測定する精度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、蓄電デバイスの電圧変化に含まれる温度変化に伴う変動成分を考慮しつつ蓄電デバイスの状態を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、蓄電デバイスの状態を測定する測定装置は、前記蓄電デバイスの電圧に対して基準となる電圧を生成する基準デバイスと、前記蓄電デバイス及び前記基準デバイス間の温度差を検出するための検出手段とを備える。そして測定装置は、前記蓄電デバイス及び前記基準デバイス間の電位差を測定する測定手段と、測定した時系列の前記電位差、及び検出した時系列の前記温度差に基づいて前記蓄電デバイスの状態を示す指標を演算する演算手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、蓄電デバイスの状態に相関する蓄電デバイスの電圧変化を求める際に検出手段により検出される時系列の温度差を用いることによって、蓄電デバイス及び基準デバイスの温度変化に伴う電圧変化の変動成分を低減することが可能となる。
【0009】
すなわち、蓄電デバイスの電圧変化に含まれる上記の温度変化に伴う変動成分を考慮しつつ蓄電デバイスの状態を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る蓄電デバイスの測定装置の構成を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、蓄電デバイス及び基準電圧源間の電位差変化の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aに示した蓄電デバイス及び基準電圧源間の電位差と蓄電デバイスの温度との関係を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、
図2Aに示した蓄電デバイス及び基準電圧源間の電位差と蓄電デバイス及び基準電圧源間の温度差との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態に係る測定装置による測定方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、蓄電デバイスの状態を判定する手法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る蓄電デバイスの測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。本明細書においては、全体を通じて、同一及び同等の要素には同一の符号を付する。
【0012】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態における蓄電デバイスの測定装置の構成を示す図である。以下では、蓄電デバイス10の測定装置1のことを、単に「測定装置1」と称する。
【0013】
蓄電デバイス10は、例えば、リチウムイオン二次電池の単一の蓄電セルである。蓄電デバイス10は、二次電池(化学電池)に限らず、例えば、電気二重層キャパシタであってもよい。または、蓄電デバイス10は、複数の蓄電セルが直列接続されてなる蓄電モジュールであってもよい。
【0014】
図1においては、蓄電デバイス10は、等価回路モデルによって表されている。蓄電デバイス10の等価回路は、正極電極11と、負極電極12と、蓄電部13と、内部抵抗14と、並列抵抗15と、を有する。蓄電部13、内部抵抗14及び並列抵抗15は、蓄電デバイス10の内部状態を表わす等価回路の回路素子である。
【0015】
蓄電部13は、蓄電デバイス10の等価的な静電容量成分に相当する。蓄電部13は、蓄電デバイス10のセル電圧よりも高い電圧が印加されると、電荷が蓄積されて充電される。ここでは、蓄電部13の静電容量をCst[F]とし、蓄電部13に流れる電流をIst[A]とする。
【0016】
内部抵抗14は、正極電極11と負極電極12との間において、蓄電部13に直列接続される直列抵抗である。ここでは、内部抵抗14の抵抗値をRir[mΩ]とし、内部抵抗14に流れる電流をIir[A]とする。
【0017】
並列抵抗15は、蓄電部13に並列接続された抵抗成分に相当し、自己放電抵抗とも称される。並列抵抗15には、自己放電電流、いわゆる漏れ電流が流れる。ここでは、並列抵抗15の抵抗値をRpr[kΩ]とし、並列抵抗15に流れる自己放電電流をIpr[A]とする。
【0018】
測定装置1は、蓄電デバイス10の状態を測定するための装置である。測定装置1は、供給手段としての定電流源20と、基準デバイスとしての基準電圧源30と、測定手段としての電圧計40と、を備える。さらに測定装置1は、第一温度センサ及び第二温度センサとしての温度センサ51及び温度センサ52と演算手段としてのコントローラ60と、メモリとしての記憶部61と、表示部70と、を備える。
【0019】
定電流源20は、蓄電デバイス10の内部状態を検出するための定電流を蓄電デバイス10に供給することによって蓄電デバイス10を充電又は放電する。定電流源20は、例えば直流電流を出力する電源によって構成される。
【0020】
定電流源20は、蓄電デバイス10に供給される電流を所定の大きさに維持する。定電流源20は、蓄電デバイス10に流れる自己放電電流Iprよりも大きな定電流を供給する。
【0021】
定電流源20から蓄電デバイス10に供給される定電流は、自己放電電流Iprの基準値に対して一倍から十倍ほどの大きさであり、例えば10[μA]である。自己放電電流Iprの基準値としては、例えば、実験又はシミュレーションによって得られる自己放電電流Iprの理論値、実測値又は推定値、或いは、多数の蓄電デバイス10の自己放電電流Iprの代表値などの統計値が用いられる。
【0022】
基準電圧源30は、蓄電デバイス10の電圧に対しての基準となる電圧を生成する。基準電圧源30は、例えば、直流電圧を生成する電圧生成回路、又は、蓄電デバイス10と同じ種類である他の蓄電デバイスによって構成される。本実施形態における基準電圧源30は、他の蓄電デバイス10によって実現される。
【0023】
以下では、基準電圧源30によって生成される電圧のことを「基準電圧」と称する。基準電圧は、蓄電デバイス10の電圧と基準電圧源30の基準電圧との電位差が蓄電デバイス10の電圧よりも小さくなるように定められる。
【0024】
例えば、基準電圧は、複数の蓄電デバイス10の電圧についての平均値、最頻値又は中央本値などの統計値又は代表値に設定される。本実施形態における基準電圧は、蓄電デバイス10の電圧を基準とし所定の範囲内の値に設定される。例えば蓄電デバイス10の電圧が3[V]程度である場合、所定の範囲は、蓄電デバイス10の電圧に対して-1[V]から+1[V]までの範囲に設定される。
【0025】
上記所定の範囲については、電圧計40が7桁半(7 1/2)の直流電圧計である場合は、電圧計40の分解能を確保する観点から、蓄電デバイス10の電圧に対して-100[mV]から+100[mV]までの範囲に設定することが好ましい。蓄電デバイス10の電圧と基準電圧との電位差が100[mV]未満であれば、7桁半(7 1/2)の直流電圧計の分解能を10[nV]まで上げたとしても、測定した電位差の変化を精度良く検出することが可能となる。
【0026】
これに代えて、電圧計40として測定レンジを±10[mV]まで縮小可能に構成された直流電圧計が用いられる場合は、上記所定の範囲は、蓄電デバイス10の電圧に対して-10[mV]から+10[mV]までの範囲に設定することがより好ましい。
【0027】
電圧計40は、蓄電デバイス10の電圧と基準電圧源30の基準電圧との電位差を測定する直流電圧計である。すなわち、電圧計40は、定電流源20から蓄電デバイス10に定電流が供給されることによって生じる蓄電デバイス10の電圧変化のうち主に変動成分を抽出する。
【0028】
電圧計40は、測定した電位差を時系列に示す測定信号をコントローラ60に出力する。この測定信号には、蓄電デバイス10の電圧のうち直流成分の一部又は全部が除去されている。
【0029】
温度センサ51及び温度センサ52は、蓄電デバイス10の温度と基準電圧源30の温度との間の温度差を検出するための検出手段である。この検出手段は、温度センサ51及び温度センサ52に代えて、蓄電デバイス10と基準電圧源30との間に接続され蓄電デバイス10の温度と基準電圧源30の温度との間の温度差を直接検出する温度センサによって構成されてもよい。
【0030】
温度センサ51は、蓄電デバイス10の温度を検出する。例えば、温度センサ51は、蓄電デバイス10の正極電極11又は負極電極12の表面に配置される。温度センサ51は、検出した蓄電デバイスの温度を時系列に示す検出信号をコントローラ60に出力する。
【0031】
温度センサ52は、基準電圧源30の温度を検出する。温度センサ52は、検出した蓄電デバイス10の温度を時系列に示す検出信号をコントローラ60に出力する。
【0032】
コントローラ60は、プロセッサ及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータによって構成される。プロセッサとしては、中央演算装置(CPU)及びマイクロプロセッサ(MPU)などが挙げられる。
【0033】
コントローラ60は、複数のマイクロコンピュータを用いて構成することも可能である。コントローラ60は、記憶部61に記憶されたプログラムを読み出すことによって測定装置1の各種動作を制御する制御装置である。
【0034】
コントローラ60は、定電流源20から蓄電デバイス10への電力供給を制御し、電圧計40を用いて蓄電デバイス10の内部状態を演算する。具体的には、コントローラ60は、電圧計40が測定した電位差の変化に基づいて蓄電デバイス10の内部状態を示す状態指標を演算する。
【0035】
より詳細には、コントローラ60は、定電流源20から蓄電デバイス10に定電流を供給している状態において電圧計40から測定信号を取得し、その測定信号に示される蓄電デバイス10の電圧と基準電圧との電位差の時間変化を検出する。検出した電位差の時間変化は、蓄電デバイス10の電圧変化、すなわち直流成分を除去した電圧変動成分として用いられる。
【0036】
本実施形態におけるコントローラ60は、さらに、温度センサ51から出力される検出信号と、温度センサ52から出力される検出信号と、を取得し、双方の検出信号の差分を取ることによって蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差を求める。
【0037】
そして、コントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の時間変化を検出する。検出した温度差の時間変化は、測定した蓄電デバイス10の電圧変化のうち、蓄電デバイス10の温度変化に伴う変動成分と基準電圧源30の温度変化に伴う変動成分とを合成した変動成分を除去するために用いられる。
【0038】
このように、コントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化に加え、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化を用いることで、測定系の温度変化に伴う変動成分を抑制した蓄電デバイス10の電圧変化を検出する。
【0039】
これにより、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化のうち温度変化に伴う変動成分を低減しつつ、蓄電デバイス10の内部状態を精度よく推定することが可能となる。そしてコントローラ60は、検出した電圧変化を、蓄電デバイス10の状態指標として取得する。
【0040】
コントローラ60は、検出した蓄電デバイス10の電圧変化に基づき、例えば、蓄電デバイス10における内部状態の良否を判定する。具体的には、コントローラ60は、蓄電デバイス10の電圧変化が正常範囲内である場合には、蓄電デバイス10が正常であると判定し、蓄電デバイス10の電圧変化が正常範囲内でない場合には、蓄電デバイス10が異常であると判定する。このように、コントローラ60は、蓄電デバイス10の状態指標に基づいて蓄電デバイス10の良否を判定する。
【0041】
これに代えて、コントローラ60は、検出した蓄電デバイス10の電圧変化に基づき、並列抵抗15に流れる自己放電電流Ipr、並列抵抗15の抵抗値、又は蓄電部13の静電容量Cstを算出してもよい。本実施形態において、並列抵抗15に流れる自己放電電流Ipr、並列抵抗15の抵抗値、又は蓄電部13の静電容量Cstは、蓄電デバイス10の状態指標に含まれる。
【0042】
コントローラ60は、判定した結果を示す判定情報、又は蓄電デバイス10の状態指標を示す指標情報を生成する。このように、コントローラ60は、蓄電デバイス10の内部状態に関する情報として判定情報及び指標情報を生成する。そしてコントローラ60は、生成した情報を記憶部61に記録する。
【0043】
記憶部61は、読み出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)によって構成される。記憶部61は、蓄電デバイス10の内部状態に関する情報を記憶する。さらに記憶部61には、本実施形態における測定装置1の動作を制御するためのプログラムが記憶されている。すなわち、記憶部61は、コンピュータ読み出し可能な記録媒体である。
【0044】
表示部70は、コントローラ60による判定情報又は指標情報などを表示して使用者に通知する。表示部70は、例えばタッチスクリーンであり、使用者が情報を視認可能、かつ使用者が操作可能なように構成される。
【0045】
次に、測定系の温度変化が電圧計40での測定信号に与える影響について、
図2A乃至
図2Cを参照して説明する。
図2A乃至
図2Cには、同一の測定信号が用いられている。測定信号は、定電流源20から蓄電デバイス10に定電流が供給された状態における蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差を示す信号である。
【0046】
図2Aは、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の時間変化の一例を示す図である。
図2Aでは、縦軸が蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差を示し、横軸が経過時間を示す。
【0047】
図2Aに示すように、測定装置1での温度変化によって電位差の時間変化率が変動し、その分だけ、電位差の時間変化は本来の直線的な電圧変化に比べて歪んでいる。以下では、電位差及び温度差の各々の時間変化率のことを単に「変化率」と称する。
【0048】
図2Bは、蓄電デバイス10の温度変化によって電位差の変化率に与える影響を示す図である。縦軸が
図2Aと同じ電位差を示し、横軸が蓄電デバイス10の温度を示す。
【0049】
蓄電デバイス10の温度変化が電位差の変化に与える影響が支配的であれば、蓄電デバイス10の温度が上昇するにつれて電位差も上昇する。しかしながら、
図2Bに示すように、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化と蓄電デバイス10の温度変化とは相関性を有していない。それゆえ、発明者は、蓄電デバイス10の温度変化を考慮するだけでは、電位差の変化を補正することは困難であることを知得した。
【0050】
電圧計40で測定される電位差は、蓄電デバイス10の電圧と基準電圧源30の基準電圧との差分であることから、蓄電デバイス10の温度変化だけでなく基準電圧源30の温度変化に対しても影響を受ける。そこで、基準電圧源30を加味した温度変化と電位差の変化との関係について
図2Cを参照して説明する。
【0051】
図2Cは、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間における温度差の変化と電位差の変化との関係を示す図である。縦軸は、一秒ごとに得られる温度差の時間変化であり、横軸は、一秒ごとに測定される電位差の時間変化である。
【0052】
図2Cに示すように、単位時間あたりの蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の時間変化と蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の時間変化とは相関性を有することを発明者は見出した。両者の関係を近似した近似直線の決定係数R
2は、0.9998であり、両者は高い相関性を有している。この近似直線の傾きによって表される温度係数は、-0.67[mV/℃]である。
【0053】
蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差Vの時間変化を示す変化率(dV/dt)と、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差Tの時間変化を示す変化率(dT/dt)とは、一次関数によって表すことができる。
【0054】
具体的には、蓄電デバイス10に定電流Inを供給した状態での電位差の変化率(dV/dt)nは、定電流Inと蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstと温度係数Aと温度差の変化率(dT/dt)nとを用いて、次式(1)のように表される。
【0055】
【0056】
したがって、温度係数Aと温度差の変化率(dT/dt)nとの積が、電位差の変化率(dV/dt)nにおける測定系の温度変化に伴う変動成分とみなすことができる。それゆえ、温度係数Aが既知であれば、温度差の変化率(dT/dt)nを取得することによって、電位差の変化率(dV/dt)nを補正することが可能となる。
【0057】
このため、本実施形態では、温度差の変化率(dT/dt)nと、電位差の変化率(dV/dt)nの補正量と、の関係を示す補正情報が記憶部61に保持される。温度係数Aは、実験又はシミュレーションによってあらかじめ定められ、補正情報として記憶部61に記憶されている。
【0058】
そして、コントローラ60は、温度センサ51及び温度センサ52の検出信号をそれぞれ取得し、単位時間あたりの蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差変化(dT/dt)nを算出する。そしてコントローラ60は、記憶部61から補正情報として温度係数Aを読み出し、その温度係数Aを、算出した温度差変化(dT/dt)nに乗じて補正量を求める。コントローラ60は、その補正量を電圧計40で測定した電位差の変化率(dV/dt)nから減じて補正後の電位差の変化率を算出する。
【0059】
このように、コントローラ60は、温度センサ51,52を用いて温度差の時間変化を取得すると、記憶部61から読み出した補正情報を参照し、取得した温度差の時間変化に対応する補正量を求める。そしてコントローラ60は、求めた補正量に基づいて蓄電デバイス10の状態指標の一つである電位差Vの変化率を補正する。
【0060】
また、電位差Vの変化率を補正するための補正処理としては、上述した補正処理に限られず、他の補正処理が用いられてもよい。ここで、他の補正処理の一例について説明する。
【0061】
まず、式(1)を時間tで積分すると、次式(2)のように時間tにおける電位差Vが表される。
【0062】
【0063】
上式(2)のTは、時間tにおける蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差であり、V0は、積分定数であり、測定時点を示す時間0(ゼロ)での蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差Vに該当する。
【0064】
上式(2)を展開すると、次式(3)のように、測定ごとに、温度係数Aと温度差Tとを乗じた値を電位差Vから減じて補正を行った電位差Vcが得られる。
【0065】
【0066】
この上式(3)を時間tで微分することにより、次式(4)のように補正後における電位差Vcの変化率(dVc/dt)nが表される。
【0067】
【0068】
上式(4)において、補正後における電位差の変化率(dVc/dt)nには、温度差T又は温度係数Aを含む補正項が消えている。このため、温度差の変化率(dT/dt)nが直線的でなくても、正確に電位差の変化率(dVc/dt)nを補正することが可能となる。
【0069】
このように、測定期間中に同じタイミングで得られた電位差V及び温度差Tを用いて、その電位差Vから温度差T及び温度係数Aの乗算値を減じて補正後の電位差Vcを算出することにより、補正後における電位差の変化率(dVc/dt)nを取得してもよい。
【0070】
具体例としては、コントローラ60は、電圧計40にて所定の時間間隔で測定された電位差Vごとに、電位差Vの測定タイミングで得られた温度差Tと記憶部61から得られる温度係数Aとを乗じた値をその電位差Vから減じて補正後の電位差Vcを算出する。そしてコントローラ60は、算出した電位差Vcの単位時間当たりの変化を求めることにより、補正後における電位差の変化率(dVc/dt)nを取得する。
【0071】
すなわち、測定装置1は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差Tの変化率と電位差Vの変化率との関係を示す温度係数Aを保持するメモリとして機能する記憶部61を備える。そしてコントローラ60は、取得した温度差T及び温度係数Aに基づき電位差Vを補正し、補正した電位差の変化率(dVc/dt)nを状態指標として取得する。これにより、温度差の変化率(dT/dt)nが直線的でなくても、正確に電位差の変化率(dVc/dt)nを補正することが可能となる。
【0072】
また、蓄電デバイス10の静電容量Cstが既知であり、記憶部61に静電容量Cstの代表値が記憶されている場合には、コントローラ60は、補正後における電位差の変化率(dVc/dt)を用いて自己放電電流Iprを算出してもよい。
【0073】
具体的には、上式(4)を自己放電電流Iprについて解くと、次式(5)のように表される。
【0074】
【0075】
そして、上式(5)のうち、定電流Inに対して蓄電デバイス10に供給される電流の電流値を代入し、補正後の電位差の変化率(dVc/dt)nに対して上述した算出値を代入し、静電容量Cstに対して、記憶部61から読み出した代表値を代入する。これにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを算出することができる。
【0076】
また、蓄電デバイス10の静電容量Cstが不明である場合は、蓄電デバイス10に対してn個の異なる大きさの定電流Inをそれぞれ供給することにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstを算出することが可能となる。なお、nは2以上の自然数である。
【0077】
具体的には、蓄電デバイス10に異なる定電流Inとして第一定電流I1及び第二定電流I2を別々に供給したときの電位差変化及び温度差変化と、記憶部61に記憶された温度係数Aとを用いて、次式(6)の二つの連立方程式を解く。これにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstを算出することができる。
【0078】
【0079】
以上のように、コントローラ60は、記憶部61に記憶された補正情報を参照し、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の両者の温度変化に伴う変動成分を取り除いた自己放電電流Iprを算出する。
【0080】
次に、本実施形態における測定装置1の動作について
図3を参照して説明する。
【0081】
図3は、測定装置1による蓄電デバイス10の内部状態を測定する方法の一例を示すフローチャートである。
【0082】
図3に示す例においては、測定装置1は、雰囲気温度を一定に維持可能な恒温槽の中に蓄電デバイス10を収容し、蓄電デバイス10の温度変化を抑制した環境にて蓄電デバイス10の状態を測定する処理を実行する。
【0083】
上記処理を実行するに先立ち、まず、測定装置1を蓄電デバイス10に接続し、蓄電デバイス10、定電流源20、基準電圧源30、電圧計40、温度センサ51及び温度センサ52を準備する。
【0084】
このとき、蓄電デバイス10に定電流源20が並列接続され、蓄電デバイス10の正極電極11と基準電圧源30の正極電極との間に電圧計40が接続される。また、蓄電デバイス10の負極電極12と基準電圧源30の負極電極が接続される。そして、温度センサ51が蓄電デバイス10の正極電極11及び負極電極12の一方の電極表面に配置され、温度センサ52が基準電圧源30の一方電極表面に配置される。
【0085】
ステップS1において測定装置1の基準電圧源30は、蓄電デバイス10の電圧の基準となる基準電圧を生成する。本実施形態では、基準電圧源30が、同種の他の蓄電デバイスによって実現されるため、所定の電圧にあらかじめ充電した蓄電デバイスが基準電圧源30として用いられる。なお、基準電圧源30として直流電圧を生成する電圧生成回路を用いる場合は、コントローラ60の指令により基準電圧源30は、蓄電デバイス10の電圧に応じた基準電圧を生成する。
【0086】
ステップS2においてコントローラ60は、定電流源20から蓄電デバイス10に定電流を供給して蓄電デバイス10の充電又は放電を開始する。
【0087】
ステップS3において測定装置1のコントローラ60は、電圧計40に対して蓄電デバイス10の電圧と基準電圧源30の基準電圧との間の電位差を測定させる。これにより、電圧計40から、蓄電デバイス10の電圧と基準電圧との電位差に対応する測定信号がコントローラ60に出力される。
【0088】
ステップS4においてコントローラ60は、蓄電デバイス10に定電流が供給されている状態において蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差を検出する。本実施形態では、コントローラ60は、温度センサ51及び温度センサ52から出力される検出信号を取得し、両者の差分を算出する。
【0089】
ステップS5においてコントローラ60は、上式(4)のように、ステップS3及びステップS4で得られた電位差V及び温度差Tの値と、記憶部61から読み出した温度係数Aとに基づいて補正された電位差Vcを算出し、その算出結果を記憶部61に記録する。
【0090】
ステップS6においてコントローラ60は、測定を開始してからの経過時間が、あらかじめ設定された時間に達したか否かを判断する。そしてコントローラ60は、経過時間が設定時間に達していない場合には、あらかじめ設定された時間間隔、例えば一秒間隔で、ステップS3からステップS5までの一連の処理を繰り返す。一方、コントローラ60は、経過時間が設定時間に達した場合には、ステップS7の処理に進む。
【0091】
ステップS7においてコントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差Vを示す測定信号を補正して得られた電位差の変化率(dVc/dt)nに基づいて、蓄電デバイス10の状態指標を演算する。
【0092】
本実施形態におけるコントローラ60は、算出した補正後における電位差の変化率(dVc/dt)nを、上記の式(5)又は式(6)に代入することにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを算出する。
【0093】
そしてステップS7の処理が完了すると、本実施形態における測定方法についての一連の処理手順が終了する。
【0094】
図4は、蓄電デバイス10の充電時間に対する蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の補正後の電位差変化の一例を示す図である。縦軸は、補正後における充電の開始時点を示す初期の電位差と現時点の電位差との差[μV]を示し、横軸は、充電時間[s]を示す。充電時間[s]は、蓄電デバイス10の充電を開始してからの経過時間を示す。
【0095】
図4に示す例では、電圧計40によって蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差が測定されており、測定した電位差の直流成分が比較的小さいため、電圧計40の分解能は10[nV]に設定されている。
【0096】
図4に示す実線のデータは、蓄電デバイス10が正常な状態であるときの電位差の変化であり、実線の直線は、電位差の変化を示す近似直線Ln1である。一方、
図4に示す点線のデータは、蓄電デバイス10が異常な状態であるときの電位差の変化であり、破線の直線は、電位差の変化を示す近似直線La1である。
【0097】
以下では、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の時間変化率を示す近似直線Ln1の傾きをRnとし、近似直線La1の傾きをRaとする。
【0098】
また、
図4に示す二本の二点鎖線の直線は、近似直線の傾きの上限値Rmaxと下限値Rminとを各々示すものであり、二本の二点鎖線の直線の間が、蓄電デバイス10が正常な状態における傾きである。なお、近似直線の傾きの上限値Rmax及び下限値Rminは、正常な状態の蓄電デバイス10を用いて予め実測して求めた近似直線の例えば±10[%]に設定される。
【0099】
図4を参照すると、実線で示す近似直線Ln1(傾きRn)は、近似直線の傾きの上限値Rmaxと下限値Rminとの間に入っている。よって、コントローラ60は、蓄電デバイス10が正常な状態であると判定する。一方、破線で示す近似直線La1(傾きRa)は、近似直線の傾きの上限値Rmaxと下限値Rminとの間に入っていない。よって、コントローラ60は、蓄電デバイス10が異常な状態であると判定する。
【0100】
このように、コントローラ60は、近似直線の傾きが上限値Rmaxと下限値Rminとの間に入っているか否かに基づいて、蓄電デバイス10が正常な状態であるか、あるいは異常な状態であるかを判定する。即ち、コントローラ60は、測定した蓄電デバイス10の電圧と基準電圧との電位差に基づき直流成分を大部分除去した蓄電デバイス10の電圧変化を検出し、当該電圧変化が正常範囲内である場合に蓄電デバイス10が正常であると判定する。
【0101】
なお、
図4に示す例では、蓄電デバイス10の良否判定に60[s]の測定時間Tmをかけているが、実線で示す近似直線Ln1と破線で示す近似直線La1との傾きの差は、20[s]程度が経過すれば明確に確認できる。このように、測定装置1においては、蓄電デバイス10の良否判定を数十秒程度の短い時間で実行することができる。
【0102】
以上のように、本実施形態におけるコントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の時系列の温度差に基づいて、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化を補正する。そしてコントローラ60は、補正した電位差の変化率が正常範囲内であるか否かを判断し、電位差の変化率が正常範囲内である場合に、蓄電デバイス10が正常であると判定する。
【0103】
これに代えて、コントローラ60は、補正した電位差の変化率に基づき算出された自己放電電流Iprが、正常な自己放電電流の上限値及び下限値で定められた正常範囲内であるか否かを判断する。そしてコントローラ60は、自己放電電流Iprが正常範囲内である場合には蓄電デバイス10が正常であると判定し、自己放電電流Iprが正常範囲位以外である場合には蓄電デバイス10が異常であると判定する。
【0104】
次に、第一実施形態による作用効果について説明する。
【0105】
本実施形態における測定装置1は、蓄電デバイス10の状態を測定する。この測定装置1は、蓄電デバイス10の電圧に対して基準となる電圧を生成する基準デバイスとして機能する基準電圧源30と、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差を測定する測定手段として機能する電圧計40と、を備える。測定装置1は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差を検出するための検出手段として機能する温度センサ51及び温度センサ52と、測定した電位差の変化、及び検出した温度差の変化に基づいて蓄電デバイス10の状態を示す指標を演算する演算手段として機能するコントローラ60とを備える。
【0106】
また、本実施形態における測定方法は、蓄電デバイス10の状態を測定する。この測定方法は、蓄電デバイス10の電圧に対して基準となる電圧を生成する基準電圧源30と蓄電デバイス10との間の電位差を測定する測定ステップ(S3)と、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差を検出する検出ステップ(S4)とを備える。そして測定方法は、測定ステップにおいて測定される時系列の電位差、及び検出ステップにおいて検出される時系列の温度差に基づいて蓄電デバイス10の状態を示す指標を演算する演算ステップ(S7)を備える。
【0107】
これらの構成によれば、測定装置1は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差を測定する構成であるため、蓄電デバイス10の微小な電圧変化を精度よく検出することが可能となる。
【0108】
一方で、蓄電デバイス10の電圧変化は、蓄電デバイス10の温度変化にも変動してしまう。特に、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差を測定する構成においては、
図2A乃至
図2Bに示したように、測定した電位差の変化は、蓄電デバイス10の温度変化を考慮しただけでは補正することが困難であることを発明者は知見した。
【0109】
この対策として上記構成によれば、蓄電デバイス10の状態に相関する蓄電デバイス10の電圧変化を求める際には、温度センサ51及び温度センサ52を用いて蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化が検出される。そして、検出された温度差の変化を用いることによって、測定された電位差の変化のうち蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化に伴う変動成分を低減することが可能となる。
【0110】
すなわち、測定装置1は、蓄電デバイスの電圧変化に含まれる測定系の温度変化に伴う変動成分を考慮しつつ蓄電デバイスの状態を測定することができる。
【0111】
これに加え、上記構成によれば、測定装置1は、蓄電デバイス10の電圧を直接測定する代わりに、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化を測定する。これにより、蓄電デバイス10の電圧変化に含まれる直流成分が除去されるので、電圧計40の分解能を上げることが可能となる。
【0112】
したがって、蓄電デバイス10の微小な電圧変化を検出する精度が向上するので、蓄電デバイス10の電圧を直接測定する場合に比べて蓄電デバイス10の状態指標を迅速に推定することができる。
【0113】
このように、蓄電デバイス10の電圧変化における蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化に起因するノイズの影響を抑制しつつ、短時間で精度よく、蓄電デバイス10の内部状態を測定することができる。
【0114】
また、本実施形態における測定装置1は、蓄電デバイス10に定電流を供給する供給手段として定電流源20をさらに備えている。そして蓄電デバイス10に供給される定電流は、蓄電デバイス10の実際の自己放電電流Iprよりも大きな定電流、すなわち想定される又は検出したい自己放電電流Iprに対して一倍から十倍ほどの大きさに設定される。
【0115】
ここで、定電流源20から蓄電デバイス10に供給される定電流には、誤差電流が含まれている。この誤差電流と自己放電電流とは原理的に区別できないため、誤差電流は少ない方が好ましい。
【0116】
例えば、定電流源20に対する設定値と、実際に蓄電デバイス10に供給される電流の値と、の間に0.1[%]の誤差がある場合は、定電流源20から10[mA]の定電流を供給しようとすると、誤差電流は10[μA]となる。つまり、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprの良否判定のための上限値が5[μA]である場合は、蓄電デバイス10の良否を正しく判定することはできない。
【0117】
これ対して、蓄電デバイス10への供給電流を10[μA]とすると、定電流源20において0.1[%]の誤差が生じても供給電流に合成される誤差電流は10[nA]で収まる。このため、自己放電電流Iprの測定精度としては十分である。
【0118】
上述のような理由から、定電流の大きさは、自己放電電流Iprよりも大きな定電流、すなわち自己放電電流Iprの基準値に対して一倍から十倍ほどの大きさに設定することが好ましい。このように設定することで、定電流源20による定電流の誤差、電位差測定時の外乱ノイズによる電位差変化、及び自己放電電流Iprの大小による電位差変化の差がそれぞれ少なくなるので、信号ノイズ比(SN比)を向上させることができる。
【0119】
このように、上述した構成によれば、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差変化を測定する場合に信号ノイズ比が大きくなるので、蓄電デバイス10の内部状態を精度よく測定することができる。
【0120】
また、上述した構成によれば、定電流源20を用いて微小な電流を蓄電デバイス10に精度よく供給することは、蓄電デバイス10に定電圧を供給する場合と比較して容易である。
【0121】
ここで、蓄電デバイス10に定電圧を供給する構成について説明する。例えば、蓄電デバイス10の電圧が4.0[V]である場合、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを精度よく測定するためには、蓄電デバイス10に供給される定電圧の誤差及び電圧変動は1[μV]未満であることが望ましい。しかしながら、4.0[V]に対して1[μV]は0.25[ppm]であり、この精度で定電圧の大きさを制御することは困難である。
【0122】
これに対し、本実施形態のように蓄電デバイス10に定電流を供給する構成においては、上述のように供給電流の大きさを適切に選ぶことにより、定電流源20での誤差が0.1[%]でも精度よく蓄電デバイス10の内部状態を測定することが可能となる。
【0123】
また、本実施形態における測定装置1は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率と、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率を補正するための補正量と、の対応関係を示す補正情報を保持するメモリとして記憶部61をさらに備えている。そしてコントローラ60は、温度センサ51,52を用いて温度差の変化率を取得すると、記憶部61に記憶された補正情報を参照し、取得した温度差の変化率に対応する補正量を求め、求めた補正量に基づいて状態指標を補正する。
【0124】
この構成によれば、記憶部61に記憶された補正情報を用いることにより、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率に含まれる温度変化に伴うノイズ成分を取り除くことが可能になる。それゆえ、蓄電デバイス10の状態指標を精度よく求めることができる。
【0125】
また、本実施形態における基準電圧源30は、蓄電デバイス10と同じ種類である他の蓄電デバイスによって実現される。
【0126】
この構成によれば、基準電圧として同種の蓄電デバイスの電圧が用いられるので、蓄電デバイス10と異なる電圧源を採用する場合に比べて、双方の測定環境の違いに起因する蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差及び温度差が小さくなりやすい。したがって、蓄電デバイス10の状態指標を補正するための演算処理に起因する誤差を低減することができる。
【0127】
さらに、蓄電デバイス10と異なる電圧生成回路を採用する場合に比べて、簡易に測定装置1を構成することができる。したがって、測定装置1を簡易に構成しつつ蓄電デバイス10の内部状態を精度よく測定することができる。
【0128】
(第二実施形態)
次に、記憶部61に記憶される補正情報を生成する手法について
図5を参照して説明する。
【0129】
図5は、第二実施形態における測定装置2の構成を示す図である。本実施形態では温調部80が測定装置2に備えられている点が第一実施形態とは異なる。
【0130】
温調部80は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率を調節するための装置である。温調部80は、例えば、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の少なくとも一方の温度を調整する温度調整手段として機能する。
【0131】
本実施形態における温調部80は、コントローラ60の制御に従って、蓄電デバイス10を加熱及び冷却する。例えば、蓄電デバイス10が恒温槽に収容されている状況では、温調部80は、恒温槽内の雰囲気温度を調節する空調機によって構成される。
【0132】
本実施形態におけるコントローラ60は、定電流源20から定電流が蓄電デバイス10に供給されている状態において、所定の時間間隔ごとに、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率を変更する。具体例としてコントローラ60は、蓄電デバイス10を段階的に加熱することにより、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率を段階的に大きくする。
【0133】
このとき、コントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率ごとに、電圧計40からの測定信号に基づいて蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率を取得する。
【0134】
そして、コントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率ごとにそれぞれ測定された蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率に基づいて、温度差の変化率と電位差の変化率との関係を示す近似直線を求める。コントローラ60は、その近似直線の傾きを温度係数Aとして取得し、その温度係数Aを第一実施形態で述べた補正情報として記憶部61に記録する。
【0135】
このように、本実施形態では、測定装置2に温調部80を備えることにより、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化に伴う電位差の変化率を補正するための補正情報を生成することができる。
【0136】
なお、本実施形態では蓄電デバイス10を段階的に加熱して得られた複数の温度差の変化率と、これらの温度差の変化率に対応する電位差の変化率と、の関係を示す近似直線の傾きが温度係数Aとして取得されたが、これに限られるものではない。
【0137】
例えば、蓄電デバイス10を段階的に加熱することによって得られる近似直線の傾きと、蓄電デバイス10を段階的に冷却することによって得られる近似直線の傾きとの平均値を温度係数Aとしてもよい。
【0138】
この理由は、蓄電デバイス10又は基準電圧源30の温度変化が大き過ぎると、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の温度変化に伴う変化率の中に、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprに起因する電圧変化の成分が含まれてしまうからである。
【0139】
それゆえ、蓄電デバイス10を段階的に加熱したときの温度係数Aと、蓄電デバイス10を段階的に冷却したときの温度係数Aとの平均を取ることにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprに起因する電圧変化成分を相殺することができる。このように求められた温度係数Aを用いることによって、精度よく蓄電デバイス10の状態指標を補正する精度を高めることが可能となる。
【0140】
また、本実施形態では温調部80が蓄電デバイス10に配置されていたが、これに限られるものではない。蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率を変更することができればよいので、温調部80を基準電圧源30にのみに配置してもよく、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の双方に配置してもよい。
【0141】
次に、第二実施形態による作用効果について説明する。
【0142】
本実施形態における測定装置2は、第一実施形態における測定装置1の構成に加え、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の少なくとも一方の温度を調整する温度調整手段として機能する温調部80をさらに備える。そしてコントローラ60は、電圧計40を用いて測定される電位差の変化率、及び温度センサ51,52を用いて検出される温度差の変化率に基づいて、その温度差の変化率と温度差の変化率との関係を示す近似直線の傾きを補正情報として算出する。
【0143】
この構成によれば、補正情報は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30に関する温度係数Aの実測値であるので、第一実施形態のように代表値が用いられる場合に比べて、精度よく蓄電デバイス10の状態指標を補正することが可能となる。
【0144】
(第三実施形態)
第一実施形態では記憶部61に記憶された温度係数Aを用いて測定中の温度変化に伴うノイズ成分を除去した蓄電デバイス10の状態指標を算出したが、これに限られるものではない。以下では、温度係数Aを算出することなく蓄電デバイス10の状態指標を算出する測定装置2を第三実施形態として説明する。
【0145】
第三実施形態における測定装置2は、
図5に示した第二実施形態の構成と同等の構成である。ここでは、温度係数Aと蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstとの三つのパラメータが不明であると仮定する。
【0146】
本実施形態において、コントローラ60は、あらかじめ定められた基準時間ごとに蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率が切り替わるように温調部80の動作を制御する。
【0147】
具体的には、コントローラ60は、温度センサ51から蓄電デバイス10の温度を示す検出信号、及び温度センサ52から基準電圧源30の温度を示す検出信号をそれぞれ取得し、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差を算出する。そしてコントローラ60は、算出した温度差の変化率を計測しつつ、温調部80を用いて蓄電デバイス10の温度を制御する。
【0148】
そしてコントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率ごとに電流値が異なる定電流を蓄電デバイス10に供給するよう、定電流源20の動作を制御する。
【0149】
例えば、温調部80は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率が第一変化率(dT/dt)1となるよう蓄電デバイス10の温度を上昇させる。温度差の変化率が第一変化率(dT/dt)1に維持された状態において、定電流源20は、第一定電流I1を蓄電デバイス10に供給する。
【0150】
このとき、電圧計40は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差を測定し、測定した電位差を示す測定信号をコントローラ60に出力する。そしてコントローラ60は、温度差が第一変化率(dT/dt)1であるときの測定信号に基づいて蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率を示す第一変化率(dV/dt)1を取得する。
【0151】
この状態で基準時間が経過すると、温調部80は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率が第二変化率(dT/dt)2となるよう蓄電デバイス10の温度をさらに上昇させる。温度差の変化率が第二変化率(dT/dt)2に維持された状態において、定電流源20は、第二定電流I2を蓄電デバイス10に供給する。
【0152】
このとき、電圧計40は、温度差が第二変化率(dT/dt)2のときの測定信号をコントローラ60に出力する。そしてコントローラ60は、温度差が第二変化率(dT/dt)2であるときの測定信号に基づいて蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率を示す第二変化率(dV/dt)2を取得する。
【0153】
この状態で基準時間が経過すると、温調部80は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率が第三変化率(dT/dt)3となるよう蓄電デバイス10の温度をさらに上昇させる。温度差の変化率が第三変化率(dT/dt)3に維持された状態において、定電流源20は、第三定電流I3を蓄電デバイス10に供給する。
【0154】
このとき、電圧計40は、温度差が第三変化率(dT/dt)3のときの測定信号をコントローラ60に出力する。そしてコントローラ60は、温度差が第三変化率(dT/dt)3であるときの測定信号に基づいて蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率を示す第三変化率(dV/dt)3を取得する。
【0155】
このように、コントローラ60は、温度差が第一変化率(dT/dt)1であるときの電位差の第一変化率(dV/dt)1、及び、温度差が第二変化率(dT/dt)2であるときの電位差の第二変化率(dV/dt)2を取得する。さらにコントローラ60は、温度差が第三変化率(dT/dt)3であるときの電位差の第三変化率(dV/dt)3を取得する。
【0156】
そして、コントローラ60は、蓄電デバイス10に供給される定電流Inごとに、上式(1)のうち、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率(dV/dt)n及び温度差の変化率(dT/dt)nに、それぞれ取得した値を代入する。
【0157】
続いて、コントローラ60は、次式(7)に示される第一定電流I1乃至第三定電流I3についての三つの連立方程式を解くことで、蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstと、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度係数Aとを算出する。
【0158】
【0159】
上式(7)に示すように、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率には、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化に伴う変動成分を表す項として温度係数Aを含む項が含まれている。
【0160】
このため、三つの連立方程式を解くことにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstを算出する際に、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化に伴う変動成分を低減することができる。したがって、測定系の温度変化に伴う測定結果に与える影響を抑制することができる。
【0161】
なお、第一定電流I1乃至第三定電流I3は、互いに異なる電流値であり、いずれか一つの定電流Inは、電流値がゼロ(0)であってもよい。また、定電流Inは、正の値でもよく、負の値であってもよい。言い換えると、自己放電電流Ipr、静電容量Cst及び温度係数Aの取得にあたり、本実施形態では定電流Inを蓄電デバイス10の正極電極11から負極電極12に向かって供給してもよく、反対に、定電流Inを負極電極12から正極電極11に向かって供給してもよい。
【0162】
また、第一定電流I1乃至第三定電流I3に関して、少なくとも一つの定電流の絶対値は、自己放電電流Iprの基準値に対して一倍又は数倍に設定され、他の定電流の絶対値は、自己放電電流Iprの基準値の十倍に設定される。例えば、第一定電流I1は、自己放電電流Iprの基準値を一倍した10[μA]に設定され、第二定電流I2及び第三定電流I3は、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprの基準値に対して十倍に設定される。
【0163】
上述した自己放電電流Iprの基準値は、自己放電電流Iprの代表値、推定値及び実測値を含む既知の情報である。自己放電電流Iprの基準値は、例えば、多数の蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを集計した統計データ、又は、電気特性が正常である特定の蓄電デバイス10の自己放電電流Iprの試験結果などを用いて予め定められる。
【0164】
また、蓄電デバイス10の静電容量Cstが既知である場合は、少なくとも第一定電流I1及び第二定電流I2についての二つの連立方程式を解くことにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprを算出することが可能となる。例えば、静電容量Cstの代表値をあらかじめ記憶部61に記憶しておき、二つの連立方程式を解く際に、式(7)中の静電容量Cstに記憶部61から読み出した代表値を代入する。
【0165】
反対に、蓄電デバイス10の自己放電電流Iprが既知である場合は、同様に二つの連立方程式を解くことにより、静電容量Cstを算出することができる。このように、蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstのうち一方の状態指標が既知である場合、コントローラ60は、第一定電流I1及び第二定電流I2についての二つの連立方程式を解くことにより、他方の状態指標を算出することができる。
【0166】
以上のようにコントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率を変更し、温度差の変化率ごとに、異なる定電流を蓄電デバイス10に供給して蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の電位差の変化率を取得する。そしてコントローラ60は、例えば式(7)に示した三つの連立方程式を解くことにより、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化の影響が抑制された蓄電デバイス10の状態指標を演算する。
【0167】
このように本実施形態では、コントローラ60は、温調部80を用いて蓄電デバイス10の温度を積極的に変更する。そしてコントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の複数の変化率のときの電位差の変化率及び定電流の電流値に基づいて、蓄電デバイス10の状態指標を演算する。
【0168】
なお、本実施形態では蓄電デバイス10を加熱して温度差の変化率を大きくすることにより、蓄電デバイス10の状態指標と蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度係数Aとを算出したが、これに限られるものではない。
【0169】
例えば、蓄電デバイス10を冷却して温度差の変化率を下降させたときの蓄電デバイス10の状態指標と、蓄電デバイス10を加熱して温度差の変化率を上昇させたときの蓄電デバイス10の状態指標と、の平均値を最終的な状態指標としてもよい。これにより、精度よく蓄電デバイス10の状態指標を算出することができる。温度係数Aについても同様である。
【0170】
次に、第三実施形態による作用効果について説明する。
【0171】
本実施形態におけるコントローラ60は、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の少なくとも一方の温度を調整する温度調整手段として、蓄電デバイス10の温度を調整する温調部80を備える。そして定電流源20は、温調部80により蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率が変更されるたびに異なる大きさの定電流Inを蓄電デバイス10に供給する。コントローラ60は、異なる複数の温度差の第一変化率(dT/dt)1乃至第三変化率(dT/dt)3における電位差の第一変化率(dV/dt)1乃至第三変化率(dV/dt)3及び第一定電流I1乃至第三定電流I3の電流値に基づいて、蓄電デバイス10の状態指標を演算する。
【0172】
この構成によれば、第一定電流I1乃至第三定電流I3の電流値ごとに得られた温度差の第一変化率(dT/dt)1乃至第三変化率(dT/dt)3と、電位差の第一変化率(dV/dt)1乃至第三変化率(dV/dt)3と、を例えば上式(7)に代入する。これにより、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化の影響が取り除かれた蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstを算出することができる。
【0173】
このように、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間の温度差の変化率を積極的に変更することにより、蓄電デバイス10の状態指標を求めるにあたり、蓄電デバイス10及び基準電圧源30の温度変化の影響を抑制することができる。
【0174】
また、本実施形態におけるコントローラ60は、上述した蓄電デバイス10の状態指標に代えて又は加えて、蓄電デバイス10及び基準電圧源30間における電位差の変化率と温度差の変化率との関係を示す温度係数Aを演算する。
【0175】
この構成によれば、上式(7)を用いることにより、蓄電デバイス10の自己放電電流Ipr及び静電容量Cstに加えて、温度係数Aを算出することができる。
【0176】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0177】
例えば、コントローラ60は、算出した静電容量Cstに基づいて蓄電デバイス10の内部状態を判定してもよい。例えば、コントローラ60は、静電容量Cstの算出値が所定の正常範囲内にあるか否かを判定することにより、蓄電デバイス10の良否を判定する。
【0178】
また、上記実施形態では一つの蓄電デバイス10を測定したが、複数の蓄電デバイス10が直列接続された蓄電装置を測定することができる。また、測定装置1,2は表示部70を備えているが、表示部70を省略してもよい。
【符号の説明】
【0179】
1 測定装置
10 蓄電デバイス
20 定電流源(供給手段)
30 基準電圧源(基準デバイス)
40 電圧計(測定手段)
51、52 温度センサ(第一温度センサ、第二温度センサ、検出手段)
60 コントローラ(演算手段)
61 記憶部(メモリ)