(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103911
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】放射性物質収納容器の乾燥装置および方法
(51)【国際特許分類】
G21C 19/32 20060101AFI20230720BHJP
G21F 9/02 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
G21C19/32 110
G21F9/02 Z
G21F9/02 551A
G21F9/02 531Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004716
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】野末 貴大
(57)【要約】
【課題】放射性物質収納容器の乾燥装置および方法において、構造の簡素化を図ることで
装置の大型化を抑制する。
【解決手段】放射性物質収納容器の内部のガスを排出する排気ラインと、排気ラインに設
けられるドライ真空ポンプと、放射性物質収納容器の内部に不活性ガスを供給する不活性
ガス供給ラインと、排気ラインにおけるドライ真空ポンプよりガスの流れ方向の上流側に
キャリアガスを供給するガス供給部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質収納容器の内部のガスを排出する排気ラインと、
前記排気ラインに設けられるドライ真空ポンプと、
前記放射性物質収納容器の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ラインと、
前記排気ラインにおける前記ドライ真空ポンプよりガスの流れ方向の上流側にキャリア
ガスを供給するガス供給部と、
を備える放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項2】
前記ガス供給部は、一端部が前記排気ラインに接続されて他端部が大気に開放されるガ
ス供給ラインを有する、
請求項1に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記ガス供給ラインに設けられる開閉装置を有する、
請求項2に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項4】
前記排気ラインは、冷媒によってガス中の水蒸気を凝縮して除去するコールドトラップ
と、ガス中の有害物質を除去するフィルタとが設けられ、前記ガス供給ラインは、前記排
気ラインにおける前記コールドトラップおよび前記フィルタよりガスの流れ方向の下流側
に接続される、
請求項2または請求項3に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項5】
前記排気ラインは、冷媒によってガス中の水蒸気を凝縮して除去するコールドトラップ
と、ガス中の有害物質を除去するフィルタとが設けられ、前記ガス供給ラインは、前記排
気ラインにおける前記コールドトラップおよび前記フィルタよりガスの流れ方向の上流側
に接続され、前記ガス供給ラインから前記排気ラインを通した前記放射性物質収納容器側
へのガスの逆流を阻止する逆止弁が設けられる、
請求項2または請求項3に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項6】
前記ガス供給ラインのガス通路面積が前記排気ラインのガス通路面積より小さく設定さ
れる、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項7】
前記ガス供給部から前記排気ラインへのキャリアガスの供給を制御する制御装置を有す
る、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記放射性物質収納容器の内部の圧力が予め設定された所定圧力まで
低下しないときに、前記ガス供給部から前記排気ラインへのキャリアガスの供給を開始す
る、
請求項7に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項9】
前記キャリアガスは、前記不活性ガスより分子量の大きいガスを有する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の放射性物質収納容器の乾燥装置。
【請求項10】
放射性物質収納容器の内部に不活性ガスを所定量だけ供給する工程と、
ドライ真空ポンプにより前記放射性物質収納容器の内部の前記不活性ガスを含むガスを
排気ラインから排気する工程と、
前記放射性物質収納容器の内部の圧力または圧力相関値が予め設定された所定圧力まで
低下しないと前記排気ラインにおける前記ドライ真空ポンプよりガスの流れ方向の上流側
にキャリアガスを供給する工程と、
を有する放射性物質収納容器の乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性廃棄物などの放射性物質を収納する容器内を乾燥する放射性物質収納
容器の乾燥装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの原子炉などで発生した使用済燃料などの放射性廃棄物は、放射性
物質収納容器に収納され、貯蔵施設や再処理施設などに搬送され、貯蔵または再処理され
る。放射性物質収納容器に放射性廃棄物を収納する作業は、例えば、燃料プールで行われ
る。すなわち、放射性物質収納容器を燃料プールの水中に沈め、燃料プールの水中にある
放射性廃棄物を放射性物質収納容器に収納する。そして、放射性物質収納容器は、燃料プ
ールから作業フロアに引き上げられ、内部の水を排出した後、内部を真空乾燥する。
【0003】
従来、放射性物質収納容器の乾燥作業は、油回転ポンプ(油真空ポンプ)により放射性
物質収納容器の内部の空気を排出して真空乾燥するものである。ところが、ドライ真空ポ
ンプは、排気するガスの種類によっては、十分な排気速度を得ることが難しい。
【0004】
そのため、2種類の不活性ガスを用いた放射性物質収納容器の乾燥装置として、例えば
、下記特許文献1に記載された技術がある。特許文献1に記載された容器の乾燥装置は、
放射性物質収納容器の内部にヘリウムガスとヘリウムガスより分子量の大きい窒素ガスを
供給し、ドライ真空ポンプにより放射性物質収納容器の内部にあるヘリウムガスを窒素ガ
スに同伴させて排出するものである。従来の放射性物質収納容器の乾燥装置によれば、排
出しやすい窒素ガスをキャリアガスとして用いることで、排出しにくいヘリウムガスを容
易に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の放射性物質収納容器の乾燥装置は、ヘリウムガスを供給するヘリウムガス供給ラ
インと、窒素ガスを供給する窒素ガス供給ラインが必要になり、構造が複雑化して装置が
大型化してしまうという課題がある。
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、構造の簡素化を図ることで装置の大型
化を抑制する放射性物質収納容器の乾燥装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の放射性物質収納容器の乾燥装置は、放射性物質収
納容器の内部のガスを排出する排気ラインと、前記排気ラインに設けられるドライ真空ポ
ンプと、前記放射性物質収納容器の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ラインと
、前記排気ラインにおける前記ドライ真空ポンプよりガスの流れ方向の上流側にキャリア
ガスを供給するガス供給部と、を備える。
【0009】
また、本開示の放射性物質収納容器の乾燥方法は、放射性物質収納容器の内部に不活性
ガスを所定量だけ供給する工程と、ドライ真空ポンプにより前記放射性物質収納容器の内
部の前記不活性ガスを含むガスを排気ラインから排気する工程と、前記放射性物質収納容
器の内部の圧力または圧力相関値が予め設定された所定圧力まで低下しないと前記排気ラ
インにおける前記ドライ真空ポンプよりガスの流れ方向の上流側にキャリアガスを供給す
る工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の放射性物質収納容器の乾燥装置および方法によれば、構造の簡素化を図ること
で装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の放射性物質収納容器の乾燥装置を表す概略構成図である。
【
図2】
図2は、放射性物質収納容器の乾燥方法を表すフローチャートである。
【
図3】
図3は、放射性物質収納容器の乾燥方法を表すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態の放射性物質収納容器の乾燥装置を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形
態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施
形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素に
は、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが
含まれる。
【0013】
[第1実施形態]
<放射性物質収納容器の乾燥装置>
図1は、第1実施形態の放射性物質収納容器の乾燥装置を表す概略構成図である。
【0014】
第1実施形態において、
図1に示すように、放射性物質収納容器の乾燥装置10は、排
気ライン11と、ドライ真空ポンプ12と、不活性ガス供給ライン13と、ガス供給部1
4とを備える。
【0015】
放射性物質収納容器の乾燥装置10は、放射性物質収納容器100の内部を乾燥させる
ものである。放射性物質収納容器100は、原子力発電プラントの原子炉などで発生した
使用済燃料などの放射性廃棄物を収納するものである。
【0016】
放射性物質収納容器100は、例えば、キャスクであって、胴部101と蓋部102と
を有する。胴部101は、上部に開口部が形成され、下部に底部が設けられる円筒形状を
なす。胴部101は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼やステンレス鋼により構成され、外側
に中性子遮蔽機能を有するボロンやボロン化合物を含有したレジン(中性子遮蔽体)が配
置される。蓋部102は、例えば、一次蓋と二次蓋とを有する。一次蓋は、胴部101の
開口部に対して着脱可能であり、二次蓋は、一次蓋の外側に対して着脱可能である。一次
蓋は、胴部101の内部の負圧を維持して充填されたガスの漏洩を防ぐと共に、内部に収
納した放射性物質から出る放射線(γ線)を遮蔽する。また、一次蓋は、二次蓋側にレジ
ン(中性子遮蔽体)が設けられる。二次蓋は、一次蓋との間に大気に対して加圧された圧
力監視境界を有する。
【0017】
原子力発電プラントは、敷地内に原子炉建屋が設置され、原子炉建屋は、内部に原子炉
が設けられると共に、冷却水が貯留されて使用済燃料を浸漬可能な燃料プールが設けられ
る。また、原子炉建屋は、燃料プールに隣接して除染ピット111が設けられると共に、
除染ピット111に隣接して燃料プールにおける冷却水の上面より上方に位置して作業フ
ロア112が設けられる。
【0018】
原子炉建屋は、燃料プールに隣接して燃料装荷を行う処理ピットが設けられる。処理ピ
ットは、冷却水が貯留される。放射性物質収納容器100は、まず、蓋部102が取り外
された状態で、胴部101が処理ピットの水中に沈められる。この状態で、クレーンを用
いて燃料プールの水中にある使用済燃料を胴部101に収納する。次に、胴部101の開
口部に一次蓋を設置した後、クレーンを用いて放射性物質収納容器100を処理ピットか
ら引き上げ、除染ピット111に載置し、胴部101に蓋部102を固定する。そして、
放射性物質収納容器100の内部に充填された水を排出した後、真空乾燥する。放射性物
質収納容器の乾燥装置10は、放射性物質収納容器100の内部の真空乾燥作業に用いら
れる。放射性物質収納容器の乾燥装置10は、作業フロア112に設けられる。
【0019】
放射性物質収納容器100は、蓋部102にベントライン103と、ドレンライン10
4が設けられる。ベントライン103は、蓋部102を厚さ方向に挿通され、放射性物質
収納容器100の外部と内部における胴部101の上端部とを連通する。ドレンライン1
04は、蓋部102を厚さ方向に挿通され、放射性物質収納容器100の外部と内部にお
ける胴部101の下端部とを連通する。
【0020】
排気ライン11は、一端部が放射性物質収納容器100における蓋部102のベントラ
イン103に連結される。排気ライン11は、真空乾燥ユニット21が設けられる。真空
乾燥ユニット21は、コールドトラップ22と、フィルタ23と、ドライ真空ポンプ12
とを有する。排気ライン11は、他端部が原子炉建屋の排気処理系に連結される。
【0021】
コールドトラップ22は、冷媒が供給される冷媒供給ライン24が設けられる。コール
ドトラップ22は、冷媒供給ライン24から供給される冷媒によって排気ライン11によ
り排気される水蒸気を凝縮し、固体あるいは液体として除去する。フィルタ23は、排気
ライン11により排気されるガスから有害物質を除去する。ドライ真空ポンプ12は、排
気ライン11を通して放射性物質収納容器100に排気圧(真空圧)を作用させることで
、放射性物質収納容器100に残留する空気および水蒸気などのガスを排気する。ここで
、ドライ真空ポンプ12とは、潤滑油や液体などをポンプの真空室内に使用しない機械式
の真空ポンプである。ドライ真空ポンプ12として、例えば、スクリュー式ドライ真空ポ
ンプやルーツ式ドライ真空ポンプなどが適用される。
【0022】
そのため、ドライ真空ポンプ12を作動すると、排気圧が排気ライン11を通して放射
性物質収納容器100の内部における上部に作用する。すると、放射性物質収納容器10
0の内部のガスが排気ライン11を通して排気される。このとき、放射性物質収納容器1
00から排気ライン11に排出されたガスは、コールドトラップ22により水蒸気が凝縮
されて固体あるいは液体として除去され、フィルタ23により含有する有害物質が除去さ
れる。
【0023】
不活性ガス供給ライン13は、一端部が排気ライン11における真空乾燥ユニット21
(コールドトラップ22)より放射性物質収納容器100側に連結される。不活性ガス供
給ライン13と排気ライン11の連結部には、三方弁25が設けられる。不活性ガス供給
ライン13は、他端部に不活性ガス供給源26が連結される。不活性ガスは、例えば、ヘ
リウムガスであって、不活性ガス供給源26は、ヘリウムガスを貯留する。不活性ガス供
給源26は、例えば、ボンベである。不活性ガス供給ライン13は、第1開閉装置27が
設けられる。第1開閉装置27は、不活性ガス供給源26から不活性ガス供給ライン13
に流動させるヘリウムガスの供給量を調整可能である。第1開閉装置27は、不活性ガス
供給ライン13から体積計測部に流れた不活性ガスの体積を計測し、予め設定された体積
に達すると、流れを遮断するものである。第1開閉装置27は、例えば、弁としての機能
と体積計測および演算機能を有するマスフローコントローラである。なお、第1開閉装置
27は、止め弁であってもよく、流量調整弁であってもよい。
【0024】
そのため、第1開閉装置27を開放すると、不活性ガス供給源26のヘリウムガスが不
活性ガス供給ライン13および排気ライン11を通してベントライン103から放射性物
質収納容器100の上部に供給される。このとき、第1開閉装置27を開閉制御すること
で、放射性物質収納容器100に供給するヘリウムガスの供給量を調整することができる
。
【0025】
ガス供給部14は、排気ライン11におけるドライ真空ポンプ12よりガスの流れ方向
の上流側にキャリアガスを供給する。第1実施形態にて、キャリアガスは、空気である。
ガス供給部14は、ガス供給ライン31と、第2開閉装置32とを有する。ガス供給ライ
ン31は、一端部が排気ライン11に接続され、他端部が大気に開放される。ガス供給ラ
イン31は、一端部が排気ライン11におけるコールドトラップ22およびフィルタ23
よりガスの流れ方向の下流側、つまり、フィルタ23とドライ真空ポンプ12との間の接
続部33に接続される。
【0026】
ガス供給ライン31は、第2開閉装置32が設けられる。第2開閉装置32は、ガス供
給ライン31から排気ライン11に供給するキャリアガスの供給量を調整可能である。第
2開閉装置32は、例えば、流量調整弁や止め弁である。ガス供給ライン31のガス通路
面積は、排気ライン11のガス通路面積より小さく設定される。ガス供給ライン31のガ
ス通路面積は、第2開閉装置32が開放されたときの第2開閉装置32の通路面積である
。排気ライン11のガス通路面積は、排気ライン11におけるフィルタ23とガス供給ラ
イン31との間の通路面積である。
【0027】
なお、キャリアガスを空気としたが、空気に限定されるものではない。キャリアガスは
、不活性ガスであるヘリウムガスより分子量が大きいガスを含むガスや不活性ガスであっ
てもよい。この場合、ガス供給ライン31は、大気に開放される他端部にキャリアガス供
給源としてのボンベを連結すればよい。
【0028】
そのため、ドライ真空ポンプ12を作動すると、排気圧が排気ライン11を通して放射
性物質収納容器100の内部に作用すると共に、ガス供給ライン31に作用する。このと
き、第2開閉装置32を開放すると、外部の空気がガス供給ライン31の他端部から吸入
される。すなわち、放射性物質収納容器100の内部のガスが排気ライン11を通して排
気されると共に、外部の空気がガス供給ライン31を通して排気ライン11に取り込まれ
、放射性物質収納容器100の内部のガスと共に排気される。
【0029】
制御装置41は、ドライ真空ポンプ12を作動制御可能であると共に、第1開閉装置2
7および第2開閉装置32を開閉制御可能である。また、排気ライン11における三方弁
25より放射性物質収納容器100側に圧力計42が設けられる。制御装置41は、圧力
計42の計測結果が入力される。このとき、排気ライン11における三方弁25より放射
性物質収納容器100側の圧力は、放射性物質収納容器100の内部の圧力と同等である
ことから、圧力計42の計測結果は、放射性物質収納容器100の内部の圧力であると推
定される。
【0030】
制御装置41は、ガス供給ライン31から排気ライン11へのキャリアガス(空気)の
供給開始時期を制御する。すなわち、制御装置41は、圧力計42が計測した放射性物質
収納容器100の内部の圧力に基づいてガス供給ライン31から排気ライン11へのキャ
リアガス(空気)の供給開始時期を設定する。具体的に、制御装置41は、ドライ真空ポ
ンプ12による放射性物質収納容器100の内部の減圧時に、放射性物質収納容器100
の内部の圧力が予め設定された所定圧力まで低下しないと、ガス供給ライン31から排気
ライン11へのキャリアガス(空気)の供給を開始する。なお、制御装置41は、放射性
物質収納容器100の内部の圧力低下率が予め設定された所定圧力変化率以下になると、
ガス供給ライン31から排気ライン11へのキャリアガス(空気)の供給を開始するよう
にしてもよい。さらに、制御装置41は、ドライ真空ポンプ12による放射性物質収納容
器100の内部の減圧開始から予め設定された所定時間が経過すると、ガス供給ライン3
1から排気ライン11へのキャリアガス(空気)の供給を開始するようにしてもよい。
【0031】
<放射性物質収納容器の乾燥方法>
図2は、放射性物質収納容器の乾燥方法を表すフローチャートである。
【0032】
放射性物質収納容器の乾燥方法は、放射性物質収納容器100の内部に不活性ガス(ヘ
リウムガス)を所定量だけ供給する工程と、ドライ真空ポンプ12により放射性物質収納
容器100の内部の不活性ガスを含むガスを排気する工程と、放射性物質収納容器100
の内部の圧力または圧力相関値が予め設定された所定圧力まで低下しなしと排気ライン1
1におけるドライ真空ポンプ12よりガスの流れ方向の上流側にキャリアガス(空気)を
供給する工程とを有する。
【0033】
ここで、圧力相関値とは、圧力、圧力変化率、時間である。すなわち、放射性物質収納
容器100の内部の圧力が所定圧力に到達しないとき、または、放射性物質収納容器10
0の内部の圧力低下率が所定圧力変化率以下になるとき、または、ドライ真空ポンプ12
が作動してから所定時間が経過したとき、放射性物質収納容器100の内部へのキャリア
ガスの供給を開始する。
【0034】
具体的に説明すると、
図1および
図2に示すように、ステップS11にて、放射性物質
収納容器100を処理ピットに搬送する。原子炉建屋は、燃料プールに隣接して処理ピッ
トが設けられる。放射性物質収納容器100は、胴部101が処理ピットの冷却水に浸漬
される。ステップS12にて、作業者は、クレーンを用いて燃料プールに浸漬されている
使用済燃料を処理ピットの放射性物質収納容器100の胴部101に収容する。
【0035】
放射性物質収納容器100に所定量の使用済燃料が収納されると、ステップS13にて
、処理ピットの胴部101に蓋部102を設置する。ステップS14にて、クレーンを用
いて使用済燃料が収納された放射性物質収納容器100を処理ピットから除染ピット11
1に搬送する。ここで、胴部101に蓋部102を固定する。そして、ステップS15に
て、放射性物質収納容器100のドレンライン104に排水ラインを連結し、放射性物質
収納容器100の内部に充填された水を排水ラインから排出する。なお、放射性物質収納
容器100の排水方法は、この方法に限らず、例えば、放射性物質収納容器100の内部
に空気などのガスを供給し、内部の水を排水ラインから押し出して排出するようしてもよ
い。
【0036】
放射性物質収納容器100の内部から水が排出されると、ステップS16にて、放射性
物質収納容器100に排気ライン11と不活性ガス供給ライン13とガス供給部14を連
結する。そして、作業者は、制御装置41に対して放射性物質収納容器100の乾燥作業
の操作を行う。まず、制御装置41は、ドライ真空ポンプ12を作動し、排気圧を排気ラ
イン11から放射性物質収納容器100の内部に作用させる。すると、放射性物質収納容
器100は、内部に残留する水蒸気が空気と共に外部に吸引されて排気され、内部圧力が
低下する。放射性物質収納容器100は、内部の圧力が低下すれば、内部に残留する水の
沸点が低下し、常温に近い環境下で蒸発して水蒸気になる。この水蒸気は、ドライ真空ポ
ンプ12の排気により排気ライン11を通じて排気される。このとき、三方弁25は、排
気ライン11を連通し、排気ライン11と不活性ガス供給ライン13との連通を遮断して
いる。放射性物質収納容器100の内部が所定圧力まで減圧されると、ドライ真空ポンプ
12の作動を停止する。
【0037】
ステップS17にて、制御装置41は、第1開閉装置27を開放制御し、不活性ガス供
給源26のヘリウムガスを不活性ガス供給ライン13および排気ライン11を通してベン
トライン103から放射性物質収納容器100の内部に供給する。このとき、三方弁25
は、排気ライン11の放射性物質収納容器100側と不活性ガス供給ライン13とを連通
し、排気ライン11の真空乾燥ユニット21側を遮断している。放射性物質収納容器10
0の内部にヘリウムガスが供給されることで、放射性物質収納容器100の内部が冷却さ
れる。放射性物質収納容器100に所定量のヘリウムガスが充填されると、制御装置41
は、第1開閉装置27を閉止制御し、放射性物質収納容器100へのヘリウムガスの供給
を停止する。放射性物質収納容器100に供給すべくヘリウムガスの供給量は、放射性物
質収納容器100の容積により決定される。第1開閉装置27は、放射性物質収納容器1
00に供給すべくヘリウムガスの量が流れると閉止する。なお、第1開閉装置27が止め
弁や流量調整弁であると、不活性ガス供給ライン13および排気ライン11の配管径と圧
力とにより、予め設計や演算、実験などにより、放射性物質収納容器100へのヘリウム
ガスの供給量を、止め弁や流量調整弁の開放時間に換算しておいてもよい。
【0038】
ステップS18にて、制御装置41は、再びドライ真空ポンプ12を作動し、排気圧を
排気ライン11から放射性物質収納容器100の内部に作用させる。すると、放射性物質
収納容器100は、内部に残留するヘリウムガスおよび水蒸気などが外部に排気され、内
部圧力が低下する。このとき、三方弁25は、排気ライン11を連通し、排気ライン11
と不活性ガス供給ライン13との連通を遮断している。
【0039】
ステップS19にて、制御装置41は、圧力計42が計測した放射性物質収納容器10
0の内部圧力が予め設定された所定圧力まで低下したかどうかを判定する。具体的に、制
御装置41は、予め設定された所定時間の間に放射性物質収納容器100の内部圧力が所
定圧力まで低下したかどうかを判定する。ここで、放射性物質収納容器100の内部圧力
が所定圧力まで低下していないと判定(No)されると、ステップS20にて、ドライ真
空ポンプ12の作動を継続したままで、第2開閉装置32を開放制御する。すると、排気
ライン11の排気圧がガス供給ライン31に作用し、外部の空気がガス供給ライン31に
吸入され、排気ライン11に供給される。
【0040】
ドライ真空ポンプ12を作動すると、放射性物質収納容器100は、内部に残留するヘ
リウムガスや水蒸気などが外部に排気され、内部圧力が低下する。このとき、排気ライン
11は、ドライ真空ポンプ12より下流側が大気圧であり、ドライ真空ポンプ12より上
流側が放射性物質収納容器100と同等の低圧になる。ドライ真空ポンプ12は、ケーシ
ングの内部に配置されたロータが回転することで、真空圧(排気圧)を作用させる。とこ
ろが、ロータの下流側の圧力に対して上流側の圧力が極低圧になると、ロータの下流側の
ガスがケーシングとロータとの隙間を通ってロータの上流側に逆流し、ここで、循環流が
発生する。すると、ドライ真空ポンプ12は、排気ライン11の上流側に適切な真空圧を
作用させることが困難になる。
【0041】
そこで、制御装置41は、ドライ真空ポンプ12で循環流が発生することで、放射性物
質収納容器100の内部の圧力が低下しにくくなると、第2開閉装置32を開放し、外部
の空気をガス供給ライン31からドライ真空ポンプ12の上流側の排気ライン11に供給
する。すると、排気ライン11は、ドライ真空ポンプ12の下流側と上流側との差圧が小
さくなり、循環流がなくなり、ドライ真空ポンプ12が作動することで発生した真空圧を
排気ライン11から放射性物質収納容器100の内部に適切に作用させることができる。
このとき、分子量の大きい窒素ガスなどを含む空気は、分子間力が大きい性質であること
から、ドライ真空ポンプ12での十分な排気速度を得ることが容易である。そのため、空
気を、放射性物質収納容器100の内部のヘリウムガスを排出させるキャリアガスとして
用い、空気により排出しにくいヘリウムガスを効率良く排出することができる。
【0042】
ステップS20にて、外部の空気をガス供給ライン31から排気ライン11に供給した
後、ステップS19に戻り、制御装置41は、再度、圧力計42が計測した放射性物質収
納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下したかどうかを判定する。ここで、放射性物
質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下していないと判定(No)されると、前
述したように、ステップS20の処理を継続する。一方、放射性物質収納容器100の内
部圧力が所定圧力まで低下したと判定(Yes)されると、ステップS21にて、第2開
閉装置32を閉止制御し、ガス供給ライン31から排気ライン11への空気の供給を停止
する。続いて、ステップS22にて、制御装置41は、ドライ真空ポンプ12の作動を停
止する。そして、ステップS23にて、第1開閉装置27を開放制御し、放射性物質収納
容器100の内部に所定量のヘリウムガスを供給する。ここで、放射性物質収納容器10
0の乾燥作業が終了する。
【0043】
なお、所定圧力は、例えば、700Paであり、放射性物質収納容器100の内部のガ
ス組成における水分量が10重量%以下となる圧力である。日本原子力学会標準では、燃
料被覆管の酸化および水素吸着量の計算例として、金属キャスク内のガス組成における水
分量を10%(質量)に制限すれば、キャスクの設計に基づいて、燃料被覆管の酸化およ
び水素吸着量がわずかとなり、燃料に影響を与えるものではなくなる、と記載されている
。
【0044】
<放射性物質収納容器の圧力変化>
図3は、放射性物質収納容器の乾燥方法を表すタイムチャートである。
【0045】
図1および
図3に示すように、ドライ真空ポンプ12の作動により放射性物質収納容器
100の内部が所定圧力まで減圧されると、時間t1にて、ドライ真空ポンプ12を停止
(OFF)する。ここで、第1開閉装置27を開放制御し、放射性物質収納容器100へ
のヘリウムガスの供給を開始し、時間t2にて、ヘリウムガスの供給を停止する。すると
、放射性物質収納容器100の内部圧力が上昇する。時間t3にて、放射性物質収納容器
100の内部圧力が圧力P0(ほぼ大気圧)に到達すると、ドライ真空ポンプ12を作動
することで、放射性物質収納容器100の内部に残留するヘリウムガスや水蒸気などが外
部に排気され、内部圧力が低下する。
【0046】
しかし、前述したように、ヘリウムガスは、分子間力が小さい性質であることから、ド
ライ真空ポンプ12では放射性物質収納容器100から排出しにくいため、放射性物質収
納容器100の内部圧力の低下が緩慢となり、放射性物質収納容器100からのガスの排
気速度が低下する。時間t4では、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下率が0に
近くなり、ガスの排気速度も0に近くなる。そのため、この時間t4にて、第2開閉装置
32を開放制御してドライ真空ポンプ12の上流側にキャリアガス(空気)を供給する。
キャリアガスの供給を開始する時期は、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下率が
予め設定された所定圧力変化率以下になる時期が好ましい。
【0047】
但し、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下率が所定圧力変化率以下になる時期
は、放射性物質収納容器100の容積に応じて決まるものであることから、所定時間内に
放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下しないとき、窒素ガスの供給を
開始するようにしてもよい。また、ドライ真空ポンプ12を作動してから所定時間が経過
したら、キャリアガス(空気)の供給を開始するようにしてもよい。この所定圧力は、例
えば、700Paであり、放射性物質収納容器100の内部のガス組成における水分量が
10重量%以下となる圧力である。
【0048】
時間t4にて、ドライ真空ポンプ12の上流側にキャリアガス(空気)を供給すると、
放射性物質収納容器100の内部圧力が一気に低下する。そして、時間t5にて、放射性
物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下すると、第2開閉装置32を閉止する
と共に、ドライ真空ポンプ12の作動を停止する。その後、放射性物質収納容器100の
内部が乾燥されているかどうかを確認する時間が経過した後、時間t6から時間t7まで
の間、第1開閉装置27を開放制御し、放射性物質収納容器100の内部に所定量のヘリ
ウムガスを供給し、放射性物質収納容器100の乾燥作業が終了する。この所定圧力は、
例えば、0.08Paである。
【0049】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の放射性物質収納容器の乾燥装置を表す概略構成図である。なお
、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明
は省略する。
【0050】
第2実施形態において、
図3に示すように、放射性物質収納容器の乾燥装置10Aは、
排気ライン11と、ドライ真空ポンプ12と、不活性ガス供給ライン13と、ガス供給部
14Aとを備える。
【0051】
排気ライン11は、一端部が放射性物質収納容器100における蓋部102のベントラ
イン103に連結される。排気ライン11は、真空乾燥ユニット21が設けられる。真空
乾燥ユニット21は、コールドトラップ22と、フィルタ23と、ドライ真空ポンプ12
とを有する。排気ライン11は、他端部が排気処理系に連結される。
【0052】
不活性ガス供給ライン13は、一端部が排気ライン11における真空乾燥ユニット21
(コールドトラップ22)より放射性物質収納容器100側に連結される。不活性ガス供
給ライン13と排気ライン11の連結部は、三方弁25が設けられる。不活性ガス供給ラ
イン13は、他端部に不活性ガス供給源26が連結される。不活性ガスは、例えば、ヘリ
ウムガスであって、不活性ガス供給源26は、ヘリウムガスを貯留する。不活性ガス供給
ライン13は、第1開閉装置27が設けられる。
【0053】
ガス供給部14Aは、排気ライン11におけるドライ真空ポンプ12よりガスの流れ方
向の上流側にキャリアガスを供給する。ガス供給部14Aは、ガス供給ライン51と、第
2開閉装置52とを有する。ガス供給ライン51は、一端部が排気ライン11に接続され
、他端部が大気に開放される。ガス供給ライン51は、一端部が排気ライン11における
コールドトラップ22およびフィルタ23よりガスの流れ方向の上流側、つまり、コール
ドトラップ22と放射性物質収納容器100との間の接続部53に接続される。
【0054】
ガス供給ライン51は、第2開閉装置52が設けられる。第2開閉装置52は、ガス供
給ライン51から排気ライン11に供給するキャリアガスの供給量を調整可能である。第
2開閉装置52は、例えば、流量調整弁や止め弁である。ガス供給ライン51のガス通路
面積は、排気ライン11のガス通路面積より小さく設定される。
【0055】
また、ガス供給ライン51から排気ライン11を通した放射性物質収納容器100側へ
のガスの逆流を阻止する逆止弁54,55が設けられる。逆止弁54は、排気ライン11
における三方弁25と接続部53との間に設けられる。逆止弁54は、放射性物質収納容
器100側から真空乾燥ユニット21側へのガスの流れを許容し、真空乾燥ユニット21
側から放射性物質収納容器100側へのガスの流れを遮断する。逆止弁55は、ガス供給
ライン51における接続部53と第2開閉装置52との間に設けられる。逆止弁55は、
第2開閉装置52側から排気ライン11側へのガスの流れを許容し、排気ライン11側か
ら第2開閉装置52側へのガスの流れを遮断する。
【0056】
そのため、ドライ真空ポンプ12を作動すると、排気圧が排気ライン11を通して放射
性物質収納容器100の内部に作用すると共に、ガス供給ライン51に作用する。このと
き、第2開閉装置52を開放すると、外部の空気がガス供給ライン51の他端部から吸入
される。すなわち、放射性物質収納容器100の内部のガスが排気ライン11を通して排
気されると共に、外部の空気がガス供給ライン51を通して排気ライン11に取り込まれ
、放射性物質収納容器100の内部のガスと共に排気される。
【0057】
制御装置41は、ドライ真空ポンプ12を作動制御可能であると共に、第1開閉装置2
7および第2開閉装置52を開閉制御可能である。制御装置41は、圧力計42の計測結
果が入力される。制御装置41は、ガス供給ライン51から排気ライン11へのキャリア
ガス(空気)の供給開始時期を制御する。すなわち、制御装置41は、圧力計42が計測
した放射性物質収納容器100の内部の圧力に基づいてガス供給ライン51から排気ライ
ン11へのキャリアガス(空気)の供給開始時期を設定する。具体的に、制御装置41は
、ドライ真空ポンプ12による放射性物質収納容器100の内部の減圧時に、放射性物質
収納容器100の内部の圧力が予め設定された所定圧力まで低下しないと、ガス供給ライ
ン51から排気ライン11へのキャリアガス(空気)の供給を開始する。
【0058】
放射性物質収納容器100の内部にヘリウムガスが充填された状態で、制御装置41は
、ドライ真空ポンプ12を作動し、排気圧を排気ライン11から放射性物質収納容器10
0の内部に作用させる。すると、放射性物質収納容器100は、内部に残留するヘリウム
ガスおよび水蒸気などが外部に排気され、内部圧力が低下する。そして、放射性物質収納
容器100の内部圧力が所定圧力まで低下していないと、制御装置41は、ドライ真空ポ
ンプ12の作動を継続したままで、第2開閉装置52を開放制御する。すると、排気ライ
ン11の排気圧がガス供給ライン51に作用し、外部の空気がガス供給ライン51に吸入
され、排気ライン11に供給される。
【0059】
すると、排気ライン11は、ドライ真空ポンプ12の下流側と上流側との差圧が小さく
なり、ドライ真空ポンプ12が作動することで発生した排気圧(真空圧)が、排気ライン
11を通して放射性物質収納容器100の内部に適切に作用する。このとき、分子量の大
きい窒素ガスなどを含む空気は、分子間力が大きい性質であることから、ドライ真空ポン
プ12での十分な排気速度を得ることが容易である。そのため、空気を、放射性物質収納
容器100の内部のヘリウムガスを排出させるキャリアガスとして用い、空気により排出
しにくいヘリウムガスを効率良く排出することができる。
【0060】
このとき、排気ライン11に逆止弁54が設けられていることから、真空乾燥ユニット
21側から放射性物質収納容器100側へのガスの流れが遮断される。そのため、放射性
物質収納容器100の内部への空気の流入が阻止される。また、ガス供給ライン51に逆
止弁55が設けられていることから、排気ライン11側から第2開閉装置52側へのガス
の流れが遮断される。そのため、放射性物質を含んだガスの大気放出が阻止される。
【0061】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、放射性物質収納容器100の内部
のガスを排出する排気ライン11と、排気ライン11に設けられるドライ真空ポンプ12
と、放射性物質収納容器100の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ライン13
と、排気ライン11におけるドライ真空ポンプ12よりガスの流れ方向の上流側にキャリ
アガスを供給するガス供給部14,14Aとを備える。
【0062】
第1の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置によれば、放射性物質収納容器100
の内部に不活性ガスが供給された状態で、ドライ真空ポンプ12を作動して排気圧を作用
させると共に、ドライ真空ポンプ12より上流側にキャリアガスを供給する。これにより
、ドライ真空ポンプ12の下流側と上流側との差圧が小さくなり、ドライ真空ポンプ12
が作動することで発生した真空圧が排気ライン11を通して放射性物質収納容器100の
内部に適切に作用する。そのため、放射性物質収納容器100の内部に残留する不活性ガ
スを含むガスを効率良く排出することができる。その結果、構造の簡素化を図ることがで
き、装置の大型化を抑制することができる。
【0063】
第2の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、ガス供給部14,14Aは、一端
部が排気ライン11に接続されて他端部が大気に開放されるガス供給ライン31,51を
有する。これにより、排気ライン11にガス供給ライン31,51を接続するためで、空
気を排気ライン11に供給することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0064】
第3の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、ガス供給部14,14Aは、ガス
供給ライン31,51に設けられる第2開閉装置32,52を有する。これにより、必要
な時だけ、第2開閉装置32,52を開放し、キャリアガスをガス供給ライン31,51
から排気ライン11に供給することができる。
【0065】
第4の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、排気ライン11に、冷媒によって
ガス中の水蒸気を凝縮して除去するコールドトラップ22と、ガス中の有害物質を除去す
るフィルタ23とを設け、ガス供給ライン31を排気ライン11におけるコールドトラッ
プ22およびフィルタ23よりガスの流れ方向の下流側に接続する。これにより、キャリ
アガスは、ガス供給ライン31から排気ライン11におけるドライ真空ポンプ12の直前
に供給されることとなり、キャリアガスの放射性物質収納容器100側へ逆流を抑制する
ことができる。
【0066】
第5の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、排気ライン11に、冷媒によって
ガス中の水蒸気を凝縮して除去するコールドトラップ22と、ガス中の有害物質を除去す
るフィルタ23とを設け、ガス供給ライン51を排気ライン11におけるコールドトラッ
プ22およびフィルタ23よりガスの流れ方向の上流側に接続し、ガス供給ライン51か
ら排気ライン11を通した放射性物質収納容器100側へのガスの逆流を阻止する逆止弁
54,55を設ける。これにより、逆止弁54は、放射性物質収納容器100の内部への
空気の流入を抑制することができ、逆止弁55は、放射性物質を含んだガスの大気放出を
抑制することができる。
【0067】
第6の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、ガス供給ライン31のガス通路面
積が排気ライン11のガス通路面積より小さく設定される。これにより、ドライ真空ポン
プ12が作動することで発生する真空圧を排気ライン11から放射性物質収納容器100
の内部に適切に作用させることができると共に、適量のキャリアガスを排気ライン11に
供給することができる。
【0068】
第7の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、ガス供給部14,14Aから排気
ライン11へのキャリアガスの供給を制御する制御装置41を有する。これにより、適正
時期に排気ライン11へのキャリアガスの供給を開始することができる。
【0069】
第8の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、制御装置41は、放射性物質収納
容器100の内部の圧力が予め設定された所定圧力まで低下しないときに、ガス供給部1
4,14Aから排気ライン11へのキャリアガスの供給を開始する。これにより、放射性
物質収納容器100の内部のガスの排気が困難になると、内部の圧力が所定圧力に到達し
ないため、このときに排気ライン11へキャリアガスを供給することで、放射性物質収納
容器100の内部のガスの排気を促進することができる。
【0070】
第9の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、キャリアガスは、不活性ガスより
分子量の大きいガスを有する。これにより、分子量の大きいガスは、分子間力が大きい性
質であることから、ドライ真空ポンプ12での十分な排気速度を得ることが容易であるこ
とから、キャリアガスにより放射性物質収納容器100の内部の不活性ガスを効率良く排
出することができる。
【0071】
第10の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥方法は、放射性物質収納容器100の内
部に不活性ガスを所定量だけ供給する工程と、ドライ真空ポンプ12により放射性物質収
納容器100の内部の不活性ガスを含むガスを排気ライン11から排気する工程と、放射
性物質収納容器100の内部の圧力または圧力相関値が予め設定された所定圧力まで低下
すると排気ライン11におけるドライ真空ポンプ12よりガスの流れ方向の上流側にキャ
リアガスを供給する工程とを有する。
【0072】
第10の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥方法によれば、ドライ真空ポンプ12の
下流側と上流側との差圧が小さくなり、ドライ真空ポンプ12が作動することで発生した
真空圧が排気ライン11を通して放射性物質収納容器100の内部に適切に作用する。そ
のため、放射性物質収納容器100の内部に残留する不活性ガスを含むガスを効率良く排
出することができる。その結果、構造の簡素化を図ることができ、装置の大型化を抑制す
ることができる。
【0073】
なお、上述した実施形態にて、ガス供給部14,14Aとして、外部の空気を吸入する
ガス供給ライン31,51を設けたが、この構成に限定されるものではない。ガス供給部
として、例えば、ガス供給ライン31,51の他端部にガスボンベやブロアなどを接続し
てもよい。また、排気ライン11にキャリアガスを供給するブロアなどを直接設けてもよ
い。
【0074】
また、上述した実施形態にて、ガス供給部14,14Aの位置は、放射性物質収納容器
100とドライ真空ポンプ12との間の排気ライン11であれば、いずれの位置であって
もよい。
【符号の説明】
【0075】
10,10A 放射性物質収納容器の乾燥装置
11 排気ライン
12 ドライ真空ポンプ
13 不活性ガス供給ライン
14,14A ガス供給部
21 真空乾燥ユニット
22 コールドトラップ
23 フィルタ
24 冷媒供給ライン
25 三方弁
26 不活性ガス供給源
27 第1開閉装置
31,51 ガス供給ライン
32,52 第2開閉装置
33,53 接続部
41 制御装置
42 圧力計
54,55 逆止弁
100 放射性物質収納容器
101 胴部
102 蓋部
103 ベントライン
104 ドレンライン
111 除染ピット
112 作業フロア