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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103914
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】熱伝導体及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230720BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004719
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】新田 祐嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝也
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA02
5E322AA11
5E322AB02
5E322AB08
5E322AB09
5E322BB03
5E322DB10
5E322DB12
5E322DC01
5E322FA04
5E322FA05
5E322FA09
5F136BC06
5F136EA13
5F136FA03
5F136FA12
5F136FA22
5F136FA51
5F136FA62
5F136FA75
5F136FA82
5F136FA88
5F136GA12
5F136GA21
(57)【要約】
【課題】両面に接合される部材の熱膨張率の差により発生する熱応力を緩和することが可能であり、実質的な熱伝導性に優れた熱伝導体を提供すること、及び、熱伝導体の両面に接合される部材の熱膨張率の差により発生する熱応力を緩和することが可能であり、実質的な熱伝導性に優れた電子装置を提供すること。
【解決手段】本発明の熱伝導体は、樹脂材料を含む材料で構成され、内部に空隙部を有する熱伝導体本体と、該熱伝導体本体の外表面の少なくとも一部を被覆する金属層とを有し、対向する一対の面の両面において、前記金属層を介して異なる部材と接合されることを特徴とする。前記熱伝導体本体は、熱伝導性に異方性を有するものであることが好ましい。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を含む材料で構成され、内部に空隙部を有する熱伝導体本体と、該熱伝導体本体の外表面の少なくとも一部を被覆する金属層とを有し、
対向する一対の面の両面において、前記金属層を介して異なる部材と接合されることを特徴とする熱伝導体。
【請求項2】
前記金属層が、めっき層又はメタライジング層である請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項3】
前記金属層の厚さが、0.1μm以上20μm以下である請求項1又は2に記載の熱伝導体。
【請求項4】
前記熱伝導体は、前記一対の面の一方の面側で、金属材料を含む材料で構成される部材と接合され、他方の面側で、セラミックス材料を含む材料で構成される部材と接合される請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項5】
前記金属材料が、銅である請求項4に記載の熱伝導体。
【請求項6】
前記セラミックス材料が、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、シリコン及びガリウムヒ素よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項4又は5に記載の熱伝導体。
【請求項7】
前記熱伝導体は、はんだ付けにより、前記部材にそれぞれ接合される請求項1~6のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項8】
前記熱伝導体本体は、熱伝導性に異方性を有するものである請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項9】
前記熱伝導体本体は、前記一対の面を垂直に結ぶ第1の方向への熱伝導率が、前記一対の面の面内方向の所定方向への熱伝導率よりも高い請求項8に記載の熱伝導体。
【請求項10】
前記樹脂材料は、環状分子と、直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと、前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン、及び、第2のポリマーを含み、前記環状分子を介して、前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものである請求項1~9のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項11】
前記熱伝導体本体は、炭素材料を含む材料で構成されたものである請求項1~10のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項12】
前記炭素材料は、黒鉛である請求項11に記載の熱伝導体。
【請求項13】
前記黒鉛は、鱗片状黒鉛である請求項12に記載の熱伝導体。
【請求項14】
前記熱伝導体本体は、複数の熱伝導部と、前記樹脂材料を含む材料で構成され、柔軟性を有し、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備えるものである請求項1~13のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項15】
複数の前記熱伝導部のうち少なくとも一部は、前記熱伝導体本体の内部に連続して設けられるとともに、前記熱伝導体本体の前記両面側に露出している請求項14に記載の熱伝導体。
【請求項16】
前記熱伝導部は、実質的に単一成分で構成されたものである請求項14又は15に記載の熱伝導体。
【請求項17】
前記熱伝導体本体中に占める前記熱伝導部の割合が15体積%以上80体積%以下である請求項14~16のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項18】
前記熱伝導体本体中に占める前記接合部の割合が15体積%以上70体積%以下である請求項14~17のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項19】
前記熱伝導体本体において、前記空隙部は、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない部分である請求項14~18のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項20】
前記金属層は、前記熱伝導部の表面に選択的に設けられている請求項14~19のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項21】
電子部品と、放熱基板とを有し、
請求項1~20のいずれか一項に記載の熱伝導体が、前記電子部品と前記放熱基板との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記電子部品及び前記放熱基板とそれぞれ接合されていることを特徴とする電子装置。
【請求項22】
電子部品と、放熱基板と、前記電子部品と前記放熱基板との間に配された絶縁部材を有し、
請求項1~20のいずれか一項に記載の熱伝導体が、前記放熱基板と前記絶縁部材との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記放熱基板及び前記絶縁部材とそれぞれ接合されていることを特徴とする電子装置。
【請求項23】
電子部品と、放熱基板と、前記電子部品と前記放熱基板との間に配された電極引き出し用基板と、前記放熱基板と前記電極引き出し用基板との間に配された絶縁部材とを有し、
請求項1~20のいずれか一項に記載の熱伝導体が、前記電子部品と前記電極引き出し用基板との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記電子部品及び前記電極引き出し用基板とそれぞれ接合されていることを特徴とする電子装置。
【請求項24】
前記熱伝導体が、前記絶縁部材と前記電極引き出し用基板との間にさらに配され、前記両面において、前記金属層を介して前記絶縁部材及び前記電極引き出し用基板とそれぞれ接合されている請求項23に記載の電子装置。
【請求項25】
前記電極引き出し用基板が、銅を含む材料で構成される請求項23又は24に記載の電子装置。
【請求項26】
電子部品と、放熱基板と、前記電子部品と前記放熱基板との間に配された絶縁部材とを有し、
請求項14~20に記載の熱伝導体が、前記電子部品と前記絶縁部材との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記電子部品及び前記絶縁部材とそれぞれ接合されており、
前記熱伝導体本体は、前記両面において、複数の前記熱伝導部が、該面内の所定方向に延在しており、
前記熱伝導体の前記電子部品と接合される側の面で該電子部品から露出した部位、又は、前記絶縁部材と接合される側の面で、前記所定方向と交差する方向に延在するように、該熱伝導体と接触して配された電極線を有していることを特徴とする電子装置。
【請求項27】
前記熱伝導体が、前記放熱基板と前記絶縁部材との間にさらに配され、前記両面において、前記金属層を介して前記放熱基板及び前記絶縁部材とそれぞれ接合されている請求項23~26のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項28】
前記絶縁部材が、セラミックス材料を含む材料で構成される請求項22~27のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項29】
前記絶縁部材は、前記熱伝導体と接合される部位に、金属製の膜を有している請求項22~28のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項30】
前記電子部品は、前記熱伝導体と接合される部位に、金属製の膜を有している請求項21~29のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項31】
前記放熱基板が、銅を含む材料で構成される請求項21~30のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項32】
前記熱伝導体との接合は、はんだ付けによるものである請求項21~31のいずれか一項に記載の電子装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導体及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や車両用ヘッドライト、車載電池等の発熱部材に対する放熱対策が急務となっている。例えば、コンピューターの中央演算処理装置、画像処理用演算プロセッサ、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、レーザーダイオード、発光ダイオードやエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体といった電子部品の小型化、高集積化により、発熱量が大きくなる傾向にある。これらの電子部品の発熱による装置やシステムの寿命低下、誤作動が問題となってきており、電子部品の放熱対策への要求は、年々高まってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発熱部材である半導体素子に対する放熱対策として、セラミックス基板と、セラミックス基板の一方の面に接合され、かつ、半導体素子に電気的に接続された金属回路板と、セラミックス基板の他方の面に接合された金属放熱板とを含む、セラミックス回路基板を備えた半導体装置が開示されている。この半導体装置では、セラミックス基板の一方の面側に配された半導体素子からの熱は、放熱部材である金属放熱板に伝導され、金属放熱板から放熱される。
【0004】
しかしながら、このような構造では、接合される部材の熱膨張率の差により、接合部に熱応力が発生し、界面で剥がれが発生する等して十分な密着性が確保できず、発熱部材と放熱部材との間での実質的な熱伝導性を十分なものとすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-72281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、両面に接合される部材の熱膨張率の差により発生する熱応力を緩和することが可能であり、実質的な熱伝導性に優れた熱伝導体を提供すること、及び、熱伝導体の両面に接合される部材の熱膨張率の差により発生する熱応力を緩和することが可能であり、実質的な熱伝導性に優れた電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱伝導体は、樹脂材料を含む材料で構成され、内部に空隙部を有する熱伝導体本体と、該熱伝導体本体の外表面の少なくとも一部を被覆する金属層とを有し、
対向する一対の面の両面において、前記金属層を介して異なる部材と接合されることを特徴とする。
【0008】
本発明の電子装置は、電子部品と、放熱基板とを有し、
上記の熱伝導体が、前記電子部品と前記放熱基板との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記電子部品及び前記放熱基板とそれぞれ接合されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の電子装置は、電子部品と、放熱基板と、前記電子部品と前記放熱基板との間に配された絶縁部材を有し、
上記の熱伝導体が、前記放熱基板と前記絶縁部材との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記放熱基板及び前記絶縁部材とそれぞれ接合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の電子装置は、電子部品と、放熱基板と、前記電子部品と前記放熱基板との間に配された電極引き出し用基板と、前記放熱基板と前記電極引き出し用基板との間に配された絶縁部材とを有し、
上記の熱伝導体が、前記電子部品と前記電極引き出し用基板との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記電子部品及び前記電極引き出し用基板とそれぞれ接合されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の電子装置は、電子部品と、放熱基板と、前記電子部品と前記放熱基板との間に配された絶縁部材とを有し、
上記の熱伝導体が、前記電子部品と前記絶縁部材との間に配され、前記両面において、前記金属層を介して前記電子部品及び前記絶縁部材とそれぞれ接合されており、
前記熱伝導体本体は、前記両面において、複数の前記熱伝導部が、該面内の所定方向に延在しており、
前記熱伝導体の前記電子部品と接合される側の面で該電子部品から露出した部位、又は、前記絶縁部材と接合される側の面で、前記所定方向と交差する方向に延在するように、該熱伝導体と接触して配された電極線を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、両面に接合される部材の熱膨張率の差により発生する熱応力を緩和することが可能であり、実質的な熱伝導性に優れた熱伝導体を提供すること、及び、熱伝導体の両面に接合される部材の熱膨張率の差により発生する熱応力を緩和することが可能であり、実質的な熱伝導性に優れた電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の熱伝導体の一例を模式的に示す断面図である。
図2】熱伝導体の対向する一対の面に異なる部材が配された状態を模式的に示す断面図である。
図3】熱伝導体本体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4】積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して模式的に示す断面図である。
図5】熱伝導体本体を構成する熱伝導部の一例を模式的に示す平面図である。
図6】積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。
図7】接合部を構成する硬化性樹脂材料の硬化物の一例の概念図である。
図8】鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用シートを模式的に示す断面図である。
図9】凹部が設けられた熱伝導部形成用シートに、接合部形成用組成物を付与した状態を模式的に示す断面図である。
図10】接合部形成用組成物付与工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。
図11】切開工程で得られた切開体を模式的に示す図である。
図12】切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態を模式的に示す図である。
図13】カット工程の様子を模式的に示す図である。
図14】熱伝導体本体の他の一例を模式的に示す斜視図である。
図15図14に示す熱伝導体本体の縦断面図である。
図16】本発明の電子装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。
図17】電子装置を電子パッケージとして構成した場合の一構成例を模式的に示す断面図である。
図18】本発明の電子装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。
図19】縦型の電力半導体素子の一例として、縦型IGBT素子の構造を模式的に示す縦断面図である。
図20】本発明の電子装置の第3実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図21】本発明の電子装置の第3実施形態の他の一例を模式的に示す断面図である。
図22】本発明の電子装置の第3実施形態の他の一例を模式的に示す断面図である。
図23】本発明の電子装置の第4実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図24】本発明の電子装置の第4実施形態の他の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]熱伝導体
まず、本発明の熱伝導体について説明する。
図1は、本発明の熱伝導体の一例を模式的に示す断面図である。図2は、熱伝導体の対向する一対の面に異なる部材が配された状態を模式的に示す断面図である。図3は、熱伝導体本体の一例を模式的に示す斜視図である。図4は、積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して模式的に示す断面図である。図5は、熱伝導体本体を構成する熱伝導部の一例を模式的に示す平面図である。図6は、積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。図7は、接合部を構成する硬化性樹脂材料の硬化物の一例の概念図である。なお、図4では、樹脂繊維22の図示を省略している。
【0015】
なお、本明細書で参照する図面においては、各部材間の関係をわかりやすくするために、一部を縮小あるいは拡大して示している場合があり、図面に示す各部材間での大きさの比率は、実際の各部材間での大きさの比率を表しているものではない。また、本明細書では、「自然状態」とは、重力以外の外力が付与されていない状態のことをいい、特に、24時間以内に重力以外の外力が付与された履歴の無い状態のことをいう。また、熱伝導体の製造後、0.1MPa以上の応力付与の履歴がないことが好ましい。また、本明細書に記載する測定、処理については、特に温度条件を示していない場合は、20℃において行ったものとする。
【0016】
また、本明細書において、「熱膨張率」は、温度の上昇に対応して長さが変化する割合を示す「線膨張率」のことをいう。
【0017】
熱伝導体1は、樹脂材料を含む材料で構成され、内部に空隙部4を有する熱伝導体本体2と、熱伝導体本体2の外表面の少なくとも一部を被覆する金属層3とを有し、対向する一対の面の両面において、金属層3を介して異なる部材と接合されるものである。
【0018】
図1図3に示す熱伝導体1及び熱伝導体本体2において、対向する一対の面の一方の面は、上面であり、他方の面は、底面である。
そして、熱伝導体1は、上面において、金属層3を介して部材100と接合され、底面において、金属層3を介して部材110と接合される。
【0019】
熱伝導体本体2が、樹脂材料を含む材料で構成され、内部に空隙部4を有するものであることにより、熱伝導体本体2は、柔軟性を有するものとなる。そして、金属層3は延性を有する金属材料で構成されていることにより、熱伝導体1は、全体として柔軟性を有するとともに、接合された部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性に優れている。言い換えると、金属層3を介して熱伝導体1の両面にそれぞれ接合される、部材100と部材110との熱膨張率差により発生する熱応力を、熱伝導体1自身が変形することで吸収し緩和することができる。言い換えると、熱伝導体1は、緩衝効果を発揮する緩衝材として機能する。
これにより、熱伝導体1と部材100及び部材110との接合界面での剥がれを抑制することができ、十分な密着性を維持することができる。
【0020】
また、熱伝導体1が柔軟性を有するものであることで、熱伝導体1と接合される部材100及び部材110と、熱伝導体1との密着性を優れたものとすることができ、部材100及び部材110と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0021】
さらに、熱伝導体1と部材100及び部材110とは、単に接触しているのではなく接合されていることで、面圧をかけなくても、良好な密着性を確保することができ、部材100及び部材110と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。また、部材100及び部材110の少なくとも一方が、面圧をかけることが困難な部材であっても、熱伝導体1を適用することができる。
【0022】
熱伝導体1の対向する一対の面の両面において、金属層3を介してそれぞれ接合される「異なる部材」の組み合わせ、言い換えると、部材100と部材110との組み合わせは、特に限定されず、同じ材料で構成されるものであってもよいが、互いに異なる材料で構成されるものであることが好ましい。
これにより、前述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0023】
熱伝導体1は、一対の面の一方の面側で、金属材料を含む材料で構成される部材と接合され、他方の面側で、セラミックス材料を含む材料で構成される部材と接合されることが好ましい。言い換えると、図2において、部材100及び部材110のうちの一方の部材が、金属材料を含む材料で構成され、他方の部材が、セラミックス材料を含む材料で構成されることが好ましい。
【0024】
一般に、金属材料の熱膨張率は比較的大きく、セラミックス材料の熱膨張率は比較的小さいため、これらの熱膨張率の差は大きい。このため、熱伝導体1は、一方の面側で、金属材料を含む材料で構成される部材と接合され、他方の面側で、セラミックス材料を含む材料で構成される部材と接合されることで、前述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0025】
金属材料としては、特に限定されず、各種の単体金属や、各種合金等を用いることができ、より具体的には、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられるが、中でも、銅であることが好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0026】
セラミックス材料としては、特に限定されず、各種酸化物系セラミックス、各種炭化物系セラミックス、各種窒化物系セラミックスやこれらから選択される二種以上の複合体等を用いることができるが、中でも、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、シリコン及びガリウムヒ素よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0027】
熱伝導体1の両面にそれぞれ接合される、異なる部材の40~100℃の平均線膨張率の差の絶対値は、5.0×10-6/K以上18.0×10-6/K以下であることが好ましく、7.0×10-6/K以上17.0×10-6/K以下であることがより好ましく、10.0×10-6/K以上16.0×10-6/K以下であることがさらに好ましい。
これにより、部材100と部材110との熱膨張率差により発生する熱応力を、熱伝導体1自身が変形することでより好適に吸収し緩和することができ、本発明による効果がさらに顕著に発揮される。
【0028】
熱伝導体1と部材100及び部材110との接合は、特に限定されないが、熱伝導体1は、はんだ120を用いたはんだ付けにより、部材100及び部材110にそれぞれ接合されることが好ましい。
これにより、熱伝導体1と部材100及び部材110との接合力をより優れたものとすることができるとともに、部材100及び部材110との接合時に部材100及び部材110に損傷等が生じることをより確実に防止することができる。
【0029】
部材100及び部材110のうち少なくとも一方が非金属材料で構成される場合、当該部材の熱伝導体1と接合される部位に、図示しない金属製の膜(メタライジング膜)が配されていることが好ましい。これにより、はんだ120により熱伝導体1と好適に接合することができる。
【0030】
前記金属製の膜を構成する材料としては、金属材料であれば特に限定されないが、例えば、金、銀、ニッケル、銅、亜鉛、スズ等を含む材料が挙げられる。
【0031】
また、前記金属製の膜の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上20μm以下であることがより好ましく、1μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
[1-1]熱伝導体本体
熱伝導体本体2は、全体として柔軟性を有するものであればよいが、図3に示す熱伝導体本体2は、複数の熱伝導部10と、樹脂材料を含む材料で構成され、柔軟性を有し、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備えている。言い換えると、図3に示す熱伝導体本体2は、複数の熱伝導部10と接合部20とを有する複合積層体である。熱伝導部10及び接合部20は、これらの表面の少なくとも一部が、熱伝導体本体2の表面の一部を被覆する金属層3を介して、熱伝導体1が適用される部材と接合された形態で配置されている。
【0033】
これにより、熱伝導体1全体としての柔軟性、接合される部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性等をより優れたものとすることができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0034】
以下の説明では、熱伝導体本体2が、複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する樹脂材料21を含む材料で構成され、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える場合について、中心的に説明する。
【0035】
熱伝導体本体2は、少なくとも1つの接合部20を備えていればよいが、図3に示す例では、複数の熱伝導部10と複数の接合部20とを備えており、これらの積層方向の両端には熱伝導部10が配されている。
【0036】
具体的には後述するが、このような熱伝導体本体2は、例えば、少なくとも一方の面に、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’が付与された、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シート(熱伝導部形成用部材)10’を、巻取ロールR2の周面に巻回することで、熱伝導部10と接合部20とを交互に積層形成し、好適に製造することができる。
【0037】
ここで、本明細書では、熱伝導体本体2において熱伝導部10と接合部20との積層方向を熱伝導体本体2の積層方向と定義するとともに、熱伝導部形成用シート10’の面内方向を熱伝導部10の面内方向と定義する。例えば、図3に示す構成では、左右方向が熱伝導体本体2の積層方向であり、縦の奥行方向が熱伝導部10の面内方向である。また、後述する図8図9中では、横の奥行方向が、熱伝導部形成用シート10’の面内方向、熱伝導部10の面内方向である。
【0038】
また、本明細書では、熱伝導体本体2の上面の面内における熱伝導部10の延在方向を、熱伝導部10の延在方向と定義する。例えば、図3に示す構成では、熱伝導体本体2の上面の面内の奥行方向が、熱伝導部10の延在方向である。
【0039】
上記のような構成により、熱伝導体本体2は、熱伝導性に異方性を有するものとなる。このように、熱伝導体本体2が熱伝導性に異方性を有するものであることにより、熱伝導体本体2は、所定の方向に、より効率よく熱を伝達することができる。また、不本意な熱伝導を防止することができる。
【0040】
図3に示す構成の熱伝導体本体2では、熱伝導体1において異なる部材がそれぞれ接合される一対の面、言い換えると、上面と底面とを垂直に結ぶ第1の方向への熱伝導率が、一対の面の面内方向の所定方向への熱伝導率よりも高いことが好ましい。
これにより、熱伝導体本体2は、一対の面の面内方向の所定方向に比べて、一対の面を垂直に結ぶ第1の方向に、より効率よく熱を伝達することができ、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0041】
上記のような条件は、例えば、熱伝導部10の面内方向を、一対の面を垂直に結ぶ第1の方向とし、熱伝導部10と接合部20との積層方向を一対の面の面内方向の所定方向とすることで満たすことができる。
なお、本明細書において、「垂直」とは、数学的な意味での厳密な「垂直」ではなく、若干のずれを許容するものである。
【0042】
また、熱伝導体本体2は、上面においても、熱伝導性に異方性を有する。すなわち、熱伝導体本体2は、上面の面内において、熱伝導部10と接合部20との積層方向への熱伝導率が、熱伝導部10の延在方向への熱伝導率よりも低い。
【0043】
後述するように、熱伝導体本体2を、熱伝導部10と接合部20との延在方向と、熱伝導部10と接合部20との積層方向とを制御して配することにより、熱伝導体本体2の熱伝導性に異方性を付与することができる。
【0044】
熱伝導体本体2の形状は、特に限定されないが、熱伝導体1と接合される部材の形状に応じて適宜設定されることが好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0045】
熱伝導体本体2を平面視した際の形状、熱伝導体本体2の横断面形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、及びこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。また、熱伝導体本体2についての縦断面形状としては、例えば、第1の方向に一定の幅を有するものであってもよいし、第1の方向で幅が変化する部位を有するものであってもよい。
【0046】
熱伝導体本体2を平面視した際の形状、熱伝導体本体2の横断面形状が多角形状、例えば、四角形状である場合、当該四角形の最大となる1辺の長さは、0.3mm以上200mm以下であることが好ましい。
これにより、熱伝導体1と、熱伝導体1と接合される部材との十分な接合面積を確保することができ、より確実に、上述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0047】
具体的には、例えば、熱伝導体本体2を平面視した際の形状が、5mm×5mm角よりも大きい四角形状であることが好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
【0048】
なお、熱伝導体本体2の大きさは、第1の方向で一定であってもよいし、一定でなくてもよい。第1の方向で熱伝導体本体2の大きさの異なる部位を有する場合、熱伝導体本体2の1辺の長さが最大となる部位での1辺の値が、前記範囲内の値であることが好ましい。
【0049】
例えば、図示の構成では、熱伝導体本体2の形状及び大きさが、第1の方向で一定とされている。具体的には、熱伝導体本体2は、四角柱形状とされている。これにより、熱伝導体本体2による第1の方向での熱伝導性を一定に保つことができ、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0050】
第1の方向の熱伝導体本体2の自然状態での長さ、すなわち、図3中T2で示す長さは、0.3mm以上10mm以下であることが好ましく、0.3mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。
これにより、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との間の実質的な熱伝導性を特に優れたものとすることができる。このため、例えば、熱伝導体1と接合される部材が発熱体である場合等における放熱性をより優れたものとすることができる。
【0051】
以下の説明では、熱伝導体本体2を四角柱形状とした場合について中心的に説明する。
なお、本明細書で参照する図では、熱伝導部10と接合部20との界面を明確に示しているが、例えば、熱伝導部10の一部が接合部20に侵入していること等により、熱伝導部10と接合部20との界面が不明確なものとなっていても構わない。
【0052】
[1-1-1]熱伝導部
複数ある熱伝導部10は、熱伝導体本体2の全体における熱伝導性、特に、熱伝導部10の面内方向の熱伝導性に主に寄与する部分である。
【0053】
複数の熱伝導部10のうち少なくとも一部は、熱伝導体本体2の内部、特に、一対の面を垂直に結ぶ第1の方向について、熱伝導体本体2の内部に連続して設けられるとともに、熱伝導体本体2の異なる2つの面、特に、熱伝導体1が他の部材と接合される異なる2つの面に露出していることが好ましい。
これにより、第1の方向についての実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
【0054】
特に、図示の構成の熱伝導体本体2は、少なくとも一組の平行な表面を有しており、複数の熱伝導部10のうち少なくとも一部が、熱伝導体本体2の内部に連続して設けられるとともに、2つの表面に露出している貫通熱伝導部である。
これにより、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1とをより好適に密着させることができ、前記平行な2つの表面間、言い換えると、一対の面間での実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
なお、本明細書において、「平行」とは、数学的な意味での厳密な「平行」ではなく、若干のずれを許容するものである。
【0055】
熱伝導部10は、熱伝導性を有していれば特に限定されず、熱伝導部10を構成する材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックス材料、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料、銅、アルミニウム等の金属材料等が挙げられるが、炭素材料を含む材料で構成されていることが好ましく、黒鉛を含む材料で構成されていることがより好ましい。
これにより、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、熱伝導部10が黒鉛を含む材料で構成されていると、各黒鉛粒子を好適に密着させつつ、黒鉛粒子間に適度な空間を設けることができる。これにより、アンカー効果が得られ、金属層3と熱伝導体本体2との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0056】
[1-1-1-1]炭素材料
特に、熱伝導部10が、黒鉛や炭素繊維のような炭素材料を含む熱伝導部形成用シート10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、熱伝導体本体2のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体本体2が折れ曲がった時の復元力、さらには、内部の空隙によるクッション性、熱伝導体1と接合される部材と接合したときの適度な変形による密着性の向上等をより優れたものとすることができる。特に、このような効果は、炭素材料として黒鉛を用いた場合に、より顕著に発揮される。
【0057】
熱伝導部10を構成する黒鉛としては、鱗片状黒鉛を用いることが好ましい。
鱗片状黒鉛を用いることで、後述するような方法により、鱗片状黒鉛を熱伝導部10の面内方向に好適に配向させることができ、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。また、鱗片状黒鉛を用いることで、熱伝導部10の後述する孔部11以外の部位、特に熱伝導部10の面内方向の法線方向である熱伝導部10の厚さ方向の中心部付近の部位に、後述するような空隙部12を好適に設けることができ、後述するような効果を得ることができる。
【0058】
[1-1-1-2]セラミックス材料
また、熱伝導部10がセラミックス材料で構成されている場合、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体本体2の発塵性をより低くすることができる。
【0059】
[1-1-1-3]金属材料
また、熱伝導部10が金属材料で構成された熱伝導部形成用シート10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体本体2の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重が加わった場合であっても、座屈等による熱伝導体本体2の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。
【0060】
熱伝導部10を構成する金属材料としては、各種の単体金属や合金等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。より具体的には、熱伝導部10を構成する金属材料としては、例えば、Al、Cu、Ag、Au、Mg及びZnよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むもの等が挙げられるが、Alを含むものであることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
前記群を構成する金属元素を含む合金としては、例えば、Al、Cu及びMgを含むアルミニウム合金であるジュラルミン等が挙げられる。
【0061】
熱伝導部10は、実質的に単一成分で構成されていることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
なお、「実質的に単一成分から構成される」とは、対象となる部位での主成分の割合が、95重量%以上であることをいうものとする。主成分の割合は97重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましい。
【0062】
ただし、熱伝導部10中に、空気等のガスが含まれる場合は、当該ガスの含有量は無視することとする。また、熱伝導部10が金属材料で構成される場合、その表面には不動態膜のような、熱伝導部10を構成する金属の酸化被膜が形成されていても構わない。このような酸化被膜が形成されている場合も、「実質的に単一成分から構成される」ものとして取り扱うものとする。後に詳述する熱伝導部形成用シート10’についても同様である。
【0063】
20℃における熱伝導部10の面内方向の熱伝導率は、7W/(m・K)以上2500W/(m・K)以下であることが好ましく、20W/(m・K)以上1800W/(m・K)以下であることがより好ましい。
なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法に準拠した、非定常熱線法により測定により求めることができる。
【0064】
図3中のt10で示す熱伝導部10の積層方向についての厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましく、40μm以上120μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、熱伝導体本体2中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体本体2全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した効果をより顕著に発揮させることができる。
ただし、ここで、熱伝導部10の厚さとは、以下に述べる孔部11が設けられていない部位における厚さのことを言う。
【0065】
図4に示すように、熱伝導体本体2を構成する各熱伝導部10には、その厚さ方向に凹部が設けられていてもよい。
これにより、熱伝導部10と接合部20との接合強度をより優れたものとすることができる。
【0066】
特に、図4に示す各熱伝導部10では、凹部は、熱伝導部10の厚さ方向に貫通する孔部11である。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0067】
以下の説明では、凹部が孔部である場合を中心に説明する。
各熱伝導部10に設けられている孔部(凹部)11の数は、熱伝導部10の面内方向の大きさ等にもより、1個のみであってもよいが、複数個であることが好ましい。
これにより、前述した効果がさらに顕著に発揮される。
【0068】
単一の熱伝導部10中に孔部11が複数個設けられている場合、当該熱伝導部10の面内方向での隣り合う孔部11の間隔は、300μm以上3000μm以下であることが好ましく、500μm以上2000μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
ここで、本明細書において、「孔部11の間隔」は、隣り合う孔部11の中心間の距離のことをいう。
【0069】
図5に示す構成では、単一の熱伝導部10に設けられた複数個の孔部11は、千鳥状に配置されているが、単一の熱伝導部10の面内方向での複数個の孔部11の配置パターンは、これに限定されず、いかなるものであってもよく、例えば、ランダムに設けられたものであってもよい。
【0070】
孔部11の少なくとも一部には樹脂材料21が侵入している。言い換えると、凹部を介して、当該凹部が設けられた熱伝導部10の内部に硬化性樹脂材料の硬化物が侵入している。
特に、熱伝導部10に設けられた孔部11に樹脂材料21が侵入していることにより、熱伝導部10と接合部20との接合をより強固にすることができ、熱伝導体1と接合される部材、例えば、発熱部材や放熱部材等の表面形状への形状適合性や熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。
【0071】
図6に示すように、熱伝導部10を接合部20との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部10で、重なり合わない孔部11が存在していることが好ましい。
【0072】
複数の熱伝導部10で、重なり合う孔部11が存在していると、当該重なり合う孔部11に侵入した接合部20の樹脂材料21は、複数の熱伝導部10を貫通した串刺し状になる。このような場合、樹脂材料21が孔部11からすり抜けてしまい、熱伝導部10同士の接合が不十分になる可能性がある。
【0073】
これに対し、熱伝導部10を接合部20との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部10で、重なり合わない孔部11が存在していることで、孔部11に侵入した接合部20の樹脂材料21のすり抜けが防止され、熱伝導部10同士の接合をより強固なものとすることができる。
【0074】
なお、図6では、熱伝導部10の部分のみを抜き出して示しており、接合部20は省略している。
孔部11の形状は、特に限定されるものではなく、熱伝導部10を平面視した際の孔部11の形状、熱伝導部10についての孔部11の横断面形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。また、熱伝導部10についての縦断面形状としては、例えば、孔部11の深さ方向に一定の幅を有するものであってもよいし、孔部11の深さ方向で幅が変化する部位を有するものであってもよい。
【0075】
熱伝導部10を平面視した際の孔部11の形状、熱伝導部10についての孔部11の横断面形状が円形である場合、当該孔部11の直径は、20μm以上300μm以下であることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0076】
なお、孔部11の大きさ(直径)は、熱伝導部10の厚さ方向で一定であってもよいし、一定でなくてもよい。熱伝導部10の厚さ方向で孔部11の大きさ(直径)の異なる部位を有する場合、孔部11の直径が最大となる部位での直径の値が、前記範囲内の値であることが好ましい。
【0077】
熱伝導体本体2(ただし、空隙部4を除く実体部)中に占める熱伝導部10の割合は、15体積%以上80体積%以下であることが好ましく、20体積%以上70体積%以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0078】
熱伝導体本体2中(ただし、空隙部4を除く実体部)に占める熱伝導部10の割合は、熱伝導体本体2の積層方向における断面での面積比で、35%以上95%以下であることが好ましく、45%以上87%以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
また、例えば、後述するように、熱伝導体本体2のうち、熱伝導部10の部分に金属層3が選択的に設けられる場合に、熱伝導部10の割合が比較的多いことで、金属層3による被覆面積を増やすことができ、上述した本発明による効果をより顕著なものとすることができる。
【0079】
また、例えば、熱伝導部10が導電性に優れた材料で構成されている場合における、熱伝導体1の導電性をより良好なものとすることができる。このため、例えば、後述するように、電子部品210から熱伝導体1を電気的に介して電極線241から電極を引き出すような場合に、熱伝導部10の割合が比較的多いことで、より効率よく電極を引き出すことができる。
【0080】
[1-1-2]接合部
接合部20は、隣り合う2つの熱伝導部10の間に配されて、熱伝導部10同士を接合するものであり、柔軟性を有する樹脂材料21を含んで構成される。樹脂材料21は、例えば、後述する硬化性樹脂材料21’の硬化物である。
【0081】
接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体1と接合される部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性がより優れたものとなる。また、熱伝導体本体2は、熱伝導体1と接合される部材の表面形状への形状適合性がより優れたものとなる。また、接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体本体2が変形した際に、熱伝導体本体2が損傷することを好適に防止することができる。
【0082】
[1-1-2-1]樹脂材料
接合部20を構成する樹脂材料21としては、柔軟性を有するものであれば特に限定されず、例えば、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、樹脂材料21は、図7に示すように、環状分子51と、直鎖状の分子構造を有し環状分子51を串刺し状に包接する第1のポリマー52と、第1のポリマー52の両端付近に設けられた封鎖基53とを有するポリロタキサン50、及び、第2のポリマー60を含み、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とが結合しているものであることが好ましい。
【0083】
これにより、熱伝導体1と接合される部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性がより優れたものとなる。また、熱伝導体本体2における熱伝導部10と接合部20との接合強度等をより優れたものとすることができ、熱伝導体本体2の耐久性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体本体2の柔軟性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。
【0084】
特に、図7(A)に示すような状態の樹脂材料21に、矢印方向の応力が付加された場合、樹脂材料21は、図7(B)に示すような形態を採ることができる。すなわち、樹脂材料21では、環状分子51が第1のポリマー52に沿って移動可能であるため、すなわち、第1のポリマー52が環状分子51内を移動可能であるため、変形の応力を樹脂材料21中で効率よく吸収することができる。したがって、ひねり変形力等の大きな外力が加わった場合であっても、接合部20が破壊されたり、熱伝導部10同士の接合が破壊されてしまったりすることが効果的に防止される。また、熱伝導体1と接合される部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性がさらに優れたものとなる。
【0085】
以下、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とを含む樹脂材料21について詳細に説明する。
ポリロタキサン50を構成する環状分子51は、第1のポリマー52に沿って移動可能なものであればよいが、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であることが好ましく、該シクロデキストリン分子がα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選択されるものであることが特に好ましい。
【0086】
ポリロタキサン50中の環状分子51の少なくとも一部は、上述のように、第2のポリマー60の少なくとも一部と結合する。
環状分子51が有する官能基(第2のポリマー60と結合する官能基)としては、例えば、-OH基、-NH基、-COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
【0087】
環状分子51が第1のポリマー52により串刺し状に包接される際に環状分子51が最大限に包接される量を1とした場合、第1のポリマー52に串刺し状に包接されている環状分子51の量は、0.001以上0.6以下であることが好ましく、0.05以上0.4以下であることがより好ましい。なお、異なる2種以上の環状分子51を用いてもよい。
【0088】
ポリロタキサン50を構成する第1のポリマー52としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体が挙げられ、特にポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0089】
第1のポリマー52の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、3.5万以上であることがより好ましい。なお、異なる2種以上の第1のポリマー52を用いてもよい。
【0090】
環状分子51と第1のポリマー52との組み合わせとしては、環状分子51が置換されていてもよいα-シクロデキストリンであり、第1のポリマー52がポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0091】
ポリロタキサン50を構成する封鎖基53は、環状分子51が第1のポリマー52から脱離することを防止する機能を有する基であれば特に限定されないが、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類、ステロイド類等が挙げられる。
【0092】
置換ベンゼン類、置換多核芳香族類を構成する置換基としては、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。なお、異なる2つ以上の封鎖基53を用いてもよい。
【0093】
樹脂材料21中において、少なくとも一部のポリロタキサン50が、環状分子51を介して、第2のポリマー60と結合しているが、樹脂材料21中には、第2のポリマー60と結合していないポリロタキサン50が含まれていてもよいし、ポリロタキサン50同士が結合していてもよい。
【0094】
第2のポリマー60は、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合するものである。第2のポリマー60が有する環状分子51と結合する官能基としては、例えば、-OH基、-NH基、-COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
【0095】
第2のポリマー60としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類の各種樹脂の骨格を有し、前述した官能基を有するものが挙げられる。
【0096】
また、第2のポリマー60と環状分子51とは、架橋剤により化学結合されていてもよい。
架橋剤の分子量は、2000未満であることが好ましく、400未満であることがより好ましい。
【0097】
架橋剤としては、例えば、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’-カルボニルジイミダゾール、アルコキシシラン類等が挙げられる。なお、異なる2種以上の架橋剤を用いてもよい。
【0098】
また、第2のポリマー60は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。樹脂材料21中において、少なくとも一部の第2のポリマー60が、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合しているが、樹脂材料21中、ポリロタキサン50と結合していない第2のポリマー60が含まれていてもよいし、第2のポリマー60同士が結合していてもよい。なお、異なる2種以上の第2のポリマー60を用いてもよい。
樹脂材料21中における第2のポリマー60の含有量に対するポリロタキサン50の含有量の比率は、重量比で、1/1000以上であることが好ましい。
【0099】
接合部20中における樹脂材料21の含有率は、5体積%以上90体積%以下であることが好ましく、25体積%以上75体積%以下であることがより好ましい。
【0100】
これにより、接合部20による熱伝導部10の接合強度をより優れたものとしつつ、接合部20が樹脂繊維22を含む場合には、接合部20中における樹脂繊維22の含有率を十分に確保することができ、樹脂繊維22を含むことによる効果を十分に発揮させることができる。
【0101】
[1-1-2-2]樹脂繊維
接合部20は、前述したような樹脂材料21とともに、樹脂繊維22を含んでいてもよい。
【0102】
これにより、熱伝導体1を長時間用いた場合でも、熱伝導体1がダレ変形してしまうことを効果的に防止することができ、熱伝導体1と接合される部材との密着性が低下し、熱抵抗や電気抵抗が上昇してしまうという問題の発生を効果的に防止することができる。
【0103】
接合部20中に含まれる樹脂繊維22の太さは、1.0μm以上30μm以下であることが好ましく、2.0μm以上25μm以下であることがより好ましく、3.0μm以上20μm以下であることがさらに好ましく、4.0μm以上15μm以下であることが最も好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0104】
樹脂繊維22は、主として樹脂材料で構成されたものであればよく、樹脂繊維22を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられるが、樹脂繊維22は、ポリエステルで構成されたものであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートで構成されたものであることがより好ましい。
【0105】
これにより、樹脂繊維22自体の強度をより優れたものとすることができ、前述したような接合部20中に樹脂繊維22を含むことによる効果をより効果的に発揮することができるとともに、樹脂繊維22と樹脂材料21との密着性をより優れたものとすることができ、熱伝導体1の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
【0106】
樹脂繊維22は、接合部20中に、少なくとも1本含まれていればよいが、複数本含まれていることが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0107】
また、各樹脂繊維22は、接合部20中において、独立した状態で含まれていてもよいし、複数の樹脂繊維22が絡み合った状態で含まれていてもよい。より具体的には、樹脂繊維22は、例えば、織布や不織布等によるものであってもよい。
【0108】
特に、接合部20中に、樹脂繊維22が不織布として含まれていることにより、接合部20中に樹脂繊維22をより均一に分布させることができ、不本意な組成のばらつきを効果的に抑制することができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0109】
接合部20中における樹脂繊維22の含有率は、2体積%以上70体積%以下であることが好ましく、4体積%以上50体積%以下であることがより好ましく、6体積%以上30体積%以下であることがさらに好ましい。
【0110】
これにより、前述した樹脂繊維22を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができるとともに、接合部20中における樹脂材料21の含有率を十分に確保することができ、接合部20による熱伝導部10の接合強度を十分に優れたものとすることができる。
【0111】
接合部20中における樹脂材料21の含有率をX1[体積%]、接合部20中における樹脂繊維22の含有率をX2[体積%]としたとき、0.04≦X2/X1≦10.0の関係を満たすことが好ましく、0.07≦X2/X1≦5.0の関係を満たすことがより好ましく、0.10≦X2/X1≦3.0の関係を満たすことがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0112】
[1-1-2-3]金属粒子
接合部20は、樹脂材料21、樹脂繊維22に加えて、図示しない金属粒子を含んでいてもよい。
前述したように、熱伝導体本体2の面内方向の熱伝導性に主に寄与する部分は、熱伝導部10であるが、金属粒子は、一般に、接合部20を構成する樹脂材料21よりも高い熱伝導性を有しているため、接合部20中に金属粒子が含まれることにより、接合部20についての熱伝導性を向上させることができ、熱伝導体本体2全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。
【0113】
特に、接合部20に含まれる1個又は複数個の金属粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、該金属粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体本体2の全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0114】
さらに、電磁波シールド性を有する金属材料で構成された金属粒子を含むことで、熱伝導体1に電磁波シールド機能も付与することができる。特に、例えば、第5世代移動通信で用いられるような高周波の電磁波に対するシールド機能を好適に付与することができる。
【0115】
金属粒子としては、Fe、Ag、Pt、Cu、Sn、Al及びNiよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましく、鉄粒子がより好ましい。
【0116】
金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される重量基準の粒度分布において、小径側から累積50%になるときの粒径のことを言う。
【0117】
接合部20中における金属粒子の含有率は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
【0118】
[1-1-2-4]セラミックス粒子
接合部20は、上記の材料に加えて、図示しないセラミックス粒子を含んでいてもよい。
これにより、接合部20の組織を安定化、均一化させることができ、接合部20中の空隙の割合や大きさも安定化できる。その結果、熱伝導体本体2の各部位での特性の不本意なばらつきをより効果的に防止することができる。
【0119】
セラミックス粒子の構成材料としては、各種セラミックスが挙げられるが、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物系セラミックス、炭化ケイ素等の炭化物系セラミックス、アルミナ等の酸化物系セラミックス等のセラミックス材料を用いた場合、熱伝導体本体2全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。特に、接合部20に含まれる1個又は複数個のセラミックス粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、該セラミックス粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体本体2の全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0120】
接合部20がセラミックス粒子に加え、前述した金属粒子を含んでいる場合、前記熱パスは、セラミックス粒子及び金属粒子で形成されていてもよい。
なお、セラミックス粒子は、シリカで構成されたものであってもよい。これにより、熱伝導体1の生産コストを抑制しつつ、前述した接合部20の組織の安定化、均一化等の効果が得られる。
【0121】
セラミックス粒子の平均粒径は、特に限定されないが、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上70μm以下であることがより好ましい。
【0122】
接合部20中におけるセラミックス粒子の含有率は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
これにより、上述したような樹脂材料21を含むことによる効果とセラミックス粒子を含むことによる効果とをバランスよく発揮することができる。
【0123】
[1-1-2-5]その他の成分
接合部20は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤等が挙げられる。
【0124】
ただし、接合部20中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0125】
図3中、t20で示す熱伝導部10と接合部20との積層方向についての接合部20の厚さは、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、5.0μm以上100μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
ただし、ここで、接合部20の厚さとは、接触する熱伝導部10に孔部11が設けられていない部位における厚さのことを言う。
【0126】
熱伝導体本体2(ただし、空隙部4を除く実体部)中に占める接合部20の割合は、15体積%以上70体積%以下であることが好ましく、16体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、18体積%以上50体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0127】
[1-1-3]空隙部
熱伝導体本体2は、熱伝導部10、接合部20に加えて、熱伝導部10及び接合部20が存在していない空隙部4を有している。
空隙部4は、熱伝導体本体2において、熱伝導部10及び接合部20が存在していない部分である。空隙部4には、通常、空気や、接合部20を構成する樹脂材料21が硬化した際に発生するガス等の気体が含まれている。
【0128】
このような空隙部4を有することにより、当該空隙部4がクッションとなり、熱伝導体1の両面にそれぞれ接合される部材の熱伝導率の差により発生する熱応力による熱伝導体本体2の変形を、この空隙部4で効率よく吸収することができ、熱伝導体1全体としての過度な変形を効果的に抑制することができる。また、熱伝導体本体2に好適な柔軟性を付与することが可能となり、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との密着性を優れたものとすることができ、前記部材と熱伝導体1との間での密着性、実質的な熱伝導性、電気伝導性を優れたものとすることができる。特に、接合部20が、バインダーとして機能する樹脂材料21とともに、前述したような樹脂繊維22を含むことにより、比較的小さな空隙部4を分散して形成することができる。これにより、熱伝導部10と接合部20との密着性をより優れたものとすることができ、熱伝導体1の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体1と前記部材との接合の信頼性をより優れたものとすることができる。
【0129】
空隙部4には、通常、空気や、樹脂材料21の形成に用いられる硬化性樹脂材料21’(後述する図9参照)が硬化した際に発生するガス等の気体が含まれている。
熱伝導体本体2中において、空隙部4は、少なくとも接合部20と隣接する部位に設けられている。
【0130】
熱伝導体本体2中に占める空隙部4の割合(自然状態での割合。以下同様。)は、5体積%以上65体積%以下であることが好ましく、5体積%以上50体積%以下であることがより好ましく、6体積%以上40体積%以下であることがさらに好ましく、7体積%以上32体積%以下であることが最も好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0131】
熱伝導体本体2中に占める熱伝導部10の割合をVC[体積%]、熱伝導体本体2中に占める接合部20の割合をVJ[体積%]、熱伝導体本体2中に占める空隙部4の割合をVV[体積%]としたとき、25≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦90の関係を満たすことが好ましく、25≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦70の関係を満たすことがより好ましく、31≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦65の関係を満たすことがさらに好ましく、37≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦62の関係を満たすことが最も好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0132】
自然状態における熱伝導体本体2の密度は、0.6g/cm以上2.5g/cm以下であることが好ましく、0.9g/cm以上2.0g/cm以下であることがより好ましい。
【0133】
熱伝導体本体2における熱伝導部10及び接合部20を構成する材料として、上述したような材料を用いることにより、全体としての密度を低くすることができる。
【0134】
これにより、熱伝導体1を特に軽量なものとすることができる。そして、熱伝導体1を有する電子装置が電子機器等に搭載された場合に、該電子機器等の軽量化を妨げない。すなわち、電子機器等をより軽量なものとすることができる。
【0135】
[1-2]熱伝導体本体の製造方法
次に、熱伝導体本体の製造方法について説明する。
図8は、鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用シートを模式的に示す断面図である。図9は、凹部が設けられた熱伝導部形成用シートに、接合部形成用組成物を付与した状態を模式的に示す断面図である。図10は、接合部形成用組成物付与工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。図11は、切開工程で得られた切開体を模式的に示す図である。図12は、切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態を模式的に示す図である。図13は、カット工程の様子を模式的に示す図である。
【0136】
本実施形態の熱伝導体本体の製造方法は、硬化性樹脂材料21’を含む組成物である接合部形成用組成物20’が付与され、凹部(孔部)11が形成された熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回し、筒状の巻回体30を得る巻回工程と、巻回体30を、巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る切開工程と、切開体40中に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させ、接合部20を形成する硬化工程とを有する。
【0137】
接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回することで、例えば、枚葉のシート状原料を用いる場合等に比べて、熱伝導体本体2を効率よく製造することができる。また、巻回体30を切開した後で硬化性樹脂材料21’を硬化させることにより、樹脂材料21を含む接合部20に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。このため、巻回により発生するひずみを好適に矯正することができ、巻回体30よりも平坦性の高い切開体40とするのに際し、熱伝導部10に対応する部位である熱伝導部形成用シート10’と、接合部20に対応する部位である接合部形成用組成物20’との間での剥離や密着性の低下等が生じることを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる熱伝導体本体2を、ひずみが好適に除去されるとともに、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が効果的に防止され、熱伝導部10と接合部20とが強固に密着したものとすることができる。
【0138】
また、熱伝導体本体の製造方法では、例えば、巻回工程に先立って、凹部(孔部)11が設けられた熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する接合部形成用組成物付与工程を有していてもよい。
【0139】
[1-2-1]熱伝導部形成用シート
接合部形成用組成物付与工程で用いる熱伝導部形成用シート10’は、熱伝導体本体2において、熱伝導部10となるべきものである。
熱伝導部形成用シート10’としては、通常、形成すべき熱伝導部10に対応する材料で構成されたシート材を用いる。
【0140】
熱伝導部形成用シート10’は、実質的に単一成分から構成されることが好ましい。
これにより、形成される熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
【0141】
熱伝導部形成用シート10’として黒鉛を含むシート材を用いることにより、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、熱伝導体本体2のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、前述したような効果をより堅調発揮させることができる。また、各黒鉛粒子を好適に密着させつつ、黒鉛粒子間に適度な空間を設けることができる。これにより、アンカー効果が得られ、金属層3と熱伝導体本体2との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、前述したような効果がより顕著に発揮される。以下、黒鉛を含むシート材を「黒鉛シート材」とも言う。
【0142】
また、熱伝導部形成用シート10’として金属材料で構成されたシート材を用いることにより、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体本体2の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重が加わった場合であっても、座屈等による熱伝導体本体2の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。以下、金属材料で構成されたシート材を「金属シート材」とも言う。
【0143】
[1-2-1-1]黒鉛シート材
黒鉛シート材としては、黒鉛に加えて、黒鉛以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に黒鉛のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
このような黒鉛シート材は、例えば、粉末状の黒鉛をシート状に押し固めることにより製造することができる。
【0144】
黒鉛は、鱗片状黒鉛であることが好ましい。
これにより、鱗片状黒鉛を熱伝導部10の面内方向に好適に配向させることができ、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
【0145】
より具体的には、鱗片状黒鉛をシート状に押し固めた場合、図8に示すように、鱗片状黒鉛FGはシートの面内方向に配向される。すなわち、鱗片状黒鉛FGの厚さ方向がシートの厚さ方向に沿って、好適に配向する。そして、熱伝導体本体2とされた場合には熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
【0146】
黒鉛シート材は、例えば、鱗片状黒鉛を加圧してシート状に成形する加圧工程と、シート状に成形した黒鉛を乾燥する乾燥工程と、シート状に成形した黒鉛を加熱加圧(熱プレス)する加熱加圧工程とを有する方法により製造されることが好ましい。
【0147】
加圧工程では、黒鉛を加圧してシート状に成形する。加圧工程は、例えば、10℃以上35℃以下で好適に行うことができる。このときのプレス圧力は、例えば、1MPa以上30MPa以下とすることができる。
【0148】
乾燥工程では、シート状に成形した黒鉛に乾燥処理を施す。これにより、余分な水分等の揮発成分を除去することができ、取り扱い性が向上する。また、黒鉛シート材の形状の安定性、強度が向上する。
【0149】
乾燥工程は、減圧、加熱、自然乾燥により行うことができる。加熱により行う場合、加熱温度は、40℃以上100℃以下とすることができる。
【0150】
加熱加圧工程では、シート状に成形した黒鉛を、シートの厚さ方向に、加熱加圧処理を施す。これにより、鱗片状黒鉛をより好適に配向させることができる。また、黒鉛シート材の形状の安定性、強度が向上する。
【0151】
加熱加圧工程における加熱温度は、例えば、100℃以上400℃以下とすることができる。これにより、最終的に得られる黒鉛シート材中に、水分やバインダー等が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。また、加熱加圧工程におけるプレス圧力は、例えば、10MPa以上40MPa以下とすることができる。
【0152】
なお、図8に示すように、鱗片状黒鉛FGを押し固めてシート状とした場合、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛FGが緻密に押し固められて固くなっている一方で、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近では鱗片状黒鉛FGは粗く固められ比較的柔らかく、空隙部12を有するものとなっている。熱伝導部形成用シート10’として、鱗片状黒鉛をシート状に押し固めた黒鉛シート材を用い、当該黒鉛シート材に孔部11が設けられている場合、熱伝導部形成用シート10’としての黒鉛シート材及び当該熱伝導部形成用シート10’により形成される熱伝導部10は、孔部11のみが一方の面から他方の面に貫通しており、それ以外の部位においては、黒鉛シート材、熱伝導部10の一方の面から他方の面に貫通する空隙部12を有していない。
【0153】
このように、熱伝導部形成用シート10’が内部、特に、厚さ方向の中心部付近に空隙部12を有していると、孔部11内だけでなく、熱伝導部形成用シート10’内部の空隙部12にも硬化性樹脂材料21’を侵入させることができ、製造される熱伝導体本体2における熱伝導部10と接合部20との密着性、熱伝導体1の耐久性等をさらに優れたものとすることができる。
【0154】
また、密度についても、黒鉛シート材の表面付近では密度が比較的高く、黒鉛シート材の内部では密度が比較的低いものとなっている。
【0155】
黒鉛シート材全体としての密度は、0.3g/cm以上2.1g/cm以下であることが好ましく、0.7g/cm以上2.1g/cm以下であることがより好ましい。
これにより、黒鉛シート材単独での面方向での熱伝導性や強度を特に優れたものとしつつ、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近により好適な空隙部12を有するものとすることができ、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0156】
[1-2-1-2]金属シート材
金属シート材としては、金属材料に加えて、金属材料以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に金属材料のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
金属シート材としては、例えば、金属材料をシート状に圧延した金属箔を好ましく用いることができる。
【0157】
熱伝導部形成用シート10’の厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましく、80μm以上120μmであることがさらに好ましい。
【0158】
接合部形成用組成物付与工程に供される熱伝導部形成用シート10’は、予め、その厚さ方向に凹部(孔部)11が設けられたものであることが好ましい。
これにより、接合部形成用組成物付与工程において、凹部(孔部)11内に、接合部形成用組成物20’をより好適に侵入させることができ、最終的に得られる熱伝導体本体2における凹部(孔部)11への樹脂材料21の侵入形態をより好適なものとすることができる。
【0159】
熱伝導部形成用シート10’に凹部(孔部)11を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、周面に凹部(孔部)11に相当する突起が複数形成されたロール体を、熱伝導部形成用シート10’の表面に所定の力で押し当てつつ回転させることにより、凹部(孔部)11を効率よく形成することができる。
【0160】
熱伝導部形成用シート10’が有する凹部(孔部)11は、上記のような方法で設けられたものに限らず、他の方法で設けられたものであってもよい。例えば、凹部(孔部)11は、平板上に凹部(孔部)11に相当する突起が複数形成された部材や千枚通し等を用いて形成されたものであってもよい。また、凹部(孔部)11は、上記のように凹部(孔部)11を有さない熱伝導部形成用シート10’を用意し、当該熱伝導部形成用シート10’に設けられるものであってもよいが、熱伝導部形成用シート10’の成形と同時に形成されるものであってもよい。
【0161】
熱伝導部形成用シート10’が有する凹部(孔部)11は、前述した熱伝導部10が有する凹部(孔部)11の説明で記載したのと同様の条件を満足するものとすることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0162】
[1-2-2]接合部形成用組成物
接合部形成用組成物付与工程で用いる接合部形成用組成物20’は、熱伝導体本体2において、接合部20となるべきものであり、硬化性樹脂材料21’を含む組成物である。
【0163】
硬化性樹脂材料21’としては、当該硬化性樹脂材料21’を硬化させて得られる樹脂材料21が柔軟性を有するものであれば特に限定されず、前述した樹脂材料21の前駆体、例えば、未硬化物、半硬化物を用いることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0164】
また、硬化性樹脂材料21’は、後述する硬化工程においてガスを発生するものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体本体2中に空隙部4を好適に形成することができる。
【0165】
接合部形成用組成物20’は、硬化性樹脂材料21’に加えて、樹脂繊維22を含むものであってもよい。
これにより、熱伝導体本体2の製造時に、接合部形成用組成物20’とは別に樹脂繊維22を用意する必要がなく、熱伝導体本体2の製造に用いる装置(特に、接合部形成用組成物付与工程、巻回工程に用いる装置)として、構成が比較的簡易なものを用いることができる。
【0166】
接合部形成用組成物20’は、上述した成分に加えて、金属粒子、セラミックス粒子、スペーサー等を含んでいてもよい。
【0167】
接合部形成用組成物20’が上記の成分を含む場合、最終的に得られる熱伝導体本体2の接合部20における含有率が前述した範囲内の値となるように、接合部形成用組成物20’中での含有率を調整することが好ましい。
【0168】
接合部形成用組成物20’は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤等が挙げられる。
【0169】
ただし、接合部形成用組成物20’中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0170】
また、接合部形成用組成物20’は、溶媒成分を含んでいないことが好ましい。これにより、最終的に得られる熱伝導体本体2中に、溶媒成分が不本意に残存することを防止することができ、熱伝導体1の信頼性をより優れたものとすることができる。
【0171】
[1-2-3]接合部形成用組成物付与工程
接合部形成用組成物付与工程では、熱伝導部形成用シート10’の少なくとも一方の面に、硬化性樹脂材料21’を含む接合部形成用組成物20’を付与する。
【0172】
接合部形成用組成物20’を熱伝導部形成用シート10’の表面に付与する方法としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、キスコーター、ロッドコーター、ディップコーター、スプレーコーターのいずれかを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0173】
これにより、熱伝導部形成用シート10’の表面に、接合部形成用組成物20’を連続的に適切に付与することができ、製造される熱伝導体1の信頼性、熱伝導体1の生産性を向上させるうえで有利である。
【0174】
接合部形成用組成物20’は、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側のみに付与してもよいし、両面に付与してもよいが、熱伝導部形成用シート10’が孔部11を有するものである場合、図10に示すように、接合部形成用組成物20’は、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から付与することが好ましい。
【0175】
これにより、孔部11の内部に、硬化性樹脂材料21’を好適に侵入させることができる。より具体的には、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から接合部形成用組成物20’を付与することで、孔部11に存在する空気を熱伝導部形成用シート10’の他方の面側に押し出すことができ、孔部11に、硬化性樹脂材料21’をより好適に侵入させることができる。また、熱伝導部形成用シート10’が孔部11に加えて、空隙部12を有するものであると、孔部11を介して熱伝導部形成用シート10’の内部の空隙部12にも、硬化性樹脂材料21’を好適に侵入させることができる。
【0176】
このとき、接合部形成用組成物20’は、キスコーターを用いて付与することが好ましい。
【0177】
なお、図9では、熱伝導部形成用シート10’として、鱗片状黒鉛FGで構成された黒鉛シート材を示しているが、これ以外の熱伝導部形成用シート10’であっても、上記のような効果が得られる。
【0178】
ただし、熱伝導部形成用シート10’として上記のような黒鉛シート材を用いることにより、さらに、以下のような効果も得られる。すなわち、熱伝導部形成用シート10’が上記のような黒鉛シート材である場合、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛FGが緻密に押し固められて固くなっている一方で、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近では鱗片状黒鉛FGは粗く固められ比較的柔らかく、空隙部12を有するものとなっている。このため、硬化性樹脂材料21’は、孔部11を介して、熱伝導部形成用シート10’の内部の空隙部12にも好適に侵入することができる。これにより、製造される熱伝導体本体2における熱伝導部10と接合部20との密着性、熱伝導体1の耐久性等をさらに優れたものとすることができる。
【0179】
本工程は、例えば、図10に示す装置を用いて行うことができる。より具体的には、予め作製された熱伝導部形成用シート10’をロール状に巻き取った原反ロールR1を準備しておく。そして熱伝導部形成用シート10’の一端を原反ロールR1から引き出して、キスコーターM10を用いて、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から、接合部形成用組成物20’を付与する。
【0180】
キスコーターM10とは、1本又は数本のロールを用いてシートに塗工を行う装置であり、塗工ロールM11とシートが接触している部分においてのみ塗工を行うことが可能である。
【0181】
キスコーターM10は、図示しないモーターにより矢印方向に回転駆動する塗工ロールM11と、接合部形成用組成物20’を溜めた液受けパンM12と、塗工ロールM11の表面に、先端を接触させることで、ロール表面の接合部形成用組成物20’の膜厚を一定に保つスキージーM13とを含んで構成され、塗工ロールM11の略下半分が液受けパンM12の接合部形成用組成物20’中に浸漬される。また、熱伝導部形成用シート10’は、ガイドロールM14,M14によりガイドされて搬送されることにより、接合部形成用組成物20’の塗布時には塗工ロールM11の上面に接触して搬送される。これにより、塗工ロールM11が回転すると、その回転により液受けパンM12内の接合部形成用組成物20’が塗工ロールM11に同伴して汲み上げられ、スキージーM13により所定の塗布量に調整された後、熱伝導部形成用シート10’の表面に塗布される。液受けパンM12には、図示しない供給タンクからポンプによって接合部形成用組成物20’が供給され、液受けパンM12内の接合部形成用組成物20’の高さが一定に保持されるように制御される。
【0182】
キスコーターM10を用いることによって、熱伝導部形成用シート10’を、接合部形成用組成物20’に浸漬させることなく、接合部形成用組成物20’を付与することができるため、付与する工程において、連続して一定量の接合部形成用組成物20’を効率よく付与することが可能となる。
【0183】
接合部形成用組成物付着工程において、熱伝導部形成用シート10’と接合部形成用組成物20’との間に、気泡を含ませることが好ましい。
これにより、樹脂材料21の硬化後において、熱伝導部10と接合部20との間に、好適に空隙部4を形成することができる。
【0184】
熱伝導部形成用シート10’と接合部形成用組成物20’との間に、気泡を含ませる方法としては、例えば、熱伝導部形成用シート10’の表面形状、接合部形成用組成物20’の粘度や、熱伝導部形成用シート10’に対する濡れ性を調整すること等が挙げられる。
【0185】
また、熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付着させた後、硬化反応時に発生するガスを気泡の形成(空隙部4の形成)に利用することもできる。
【0186】
本工程は、接合部形成用組成物20’の粘度が、室温(20℃)での粘度より低くなるように、加熱された接合部形成用組成物20’を用いて行うことが好ましい。
これにより、本工程終了後、例えば、巻回工程において、熱伝導部形成用シート10’に付与された接合部形成用組成物20’が冷却され、接合部形成用組成物20’の粘度を、本工程での粘度よりも低いものとすることができる。その結果、接合部形成用組成物付与工程よりも後の工程で、熱伝導部形成用シート10’に付与された接合部形成用組成物20’が不本意に流失することをより効果的に防止することができる。
【0187】
本工程での接合部形成用組成物20’の加熱温度は、特に限定されないが、接合部形成用組成物20’の粘度が以下の条件を満足するように設定することが好ましい。
【0188】
熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する際の接合部形成用組成物20’の粘度は、500mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以上40000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0189】
これにより、接合部形成用組成物20’を、熱伝導部形成用シート10’に所定の厚さでより好適に付与することができる。また、熱伝導部形成用シート10’が凹部(孔部)11を有するものである場合、当該凹部(孔部)11に接合部形成用組成物20’をより好適に侵入させることができる。
なお、接合部形成用組成物20’の粘度は、JIS Z8803:2011に準じた測定により求めることができる。
【0190】
また、例えば、本工程では、複数種の接合部形成用組成物20’を用いてもよいし、前述した接合部形成用組成物20’の構成成分の一部のみを含む材料と、他の一部の構成成分を含む材料とを、別々に組み合わせて用いてもよい。
【0191】
[1-2-4]巻回工程
巻回工程では、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回し、筒状の巻回体30を得る。
【0192】
このようにして得られる巻回体30は、その中心から外周方向に向かって、熱伝導部形成用シート10’で構成された部分と、接合部形成用組成物20’で構成された部分とが、交互に配置された構造を有する。
【0193】
なお、図10では、熱伝導部形成用シート10’を、ガイドロールM14,M14によりガイドして搬送する場合を示しているが、熱伝導部形成用シート10’は、ガイドロールM14,M14以外の、図示しないガイドロールによって搬送されてもよいし、また、必要に応じて、ガイドロールによって搬送方向を変えてもよい。
【0194】
なお、図示の構成では、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、断面が真円状の巻取ロールR2の周面に巻回しているが、これに限定されず、断面が楕円状や多角形状、トラック形状等のロールの周面に巻回してもよい。
【0195】
また、巻回工程では、前述した熱伝導部形成用シート10’とともに、樹脂繊維22を含む樹脂繊維シート(織布、不織布等)を、巻取ロールR2に巻回してもよい。
この場合、樹脂繊維シートは、前述したのと同様の方法で接合部形成用組成物20’が付与されたものであってもよいし、接合部形成用組成物20’が付与されていないものであってもよい。
【0196】
樹脂繊維シートとして接合部形成用組成物20’が付与されたものを用いる場合、樹脂繊維シートとしては、前述したようにして接合部形成用組成物20’が付与されたものを用いてもよいし、接合部形成用組成物20’が付与されていないものを用いてもよい。言い換えると、接合部形成用組成物付着工程において、熱伝導部形成用シート10’の代わりに、樹脂繊維シートに対して、接合部形成用組成物20’を付着させてもよい。
また、樹脂繊維シートを用いる場合、少なくともその表面の一部に接着剤を塗布した状態で用いてもよい。
【0197】
熱伝導体本体の製造に、樹脂繊維シートを用いることにより、接合部20の面内方向に樹脂繊維22を好適に配向させることができ、これにより、樹脂繊維22をより均一に分散させることができ、樹脂繊維22の重なり状態も均一化させることができる。その結果、接合部20の引張強度が向上するとともに、接合部20の厚さをより均一なものとすることができる。
【0198】
樹脂繊維シートを用いる場合、当該樹脂繊維シートの厚さは、3μm以上300μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0199】
[1-2-5]切開工程
切開工程では、巻回体30を、巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る。
【0200】
硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程より前に、巻回体30を切開することにより、樹脂材料21(硬化性樹脂材料21’の硬化物)を含む接合部20を切開する場合に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。
【0201】
本工程では、円柱状の巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であって、巻取ロールR2の軸方向の一方の端部から他方の端部にわたって、巻回体30の積層方向に切り込みを入れ、切り込み部分で巻回体30を開きつつ巻取ロールR2から取り外し、切開体40とする。
【0202】
巻回体30を切り開く方向としては、巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であれば、特に限定されず、例えば、巻取ロールR2の軸方向に対して略平行な方向であってもよいし、巻取ロールR2の軸方向に対して斜め方向であってもよい。また、巻回体30を切り開く方向が異なる部位を有していてもよい。例えば、巻取ロールR2の軸方向に対して略平行な方向で切り開く部位と、巻取ロールR2の軸方向に対して斜め方向に切り開く部位とを有していてもよい。
【0203】
巻回体30の切開方法としては、特に限定されないが、例えば、バンドソー、のこぎり、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
【0204】
[1-2-6]硬化工程
硬化工程では、切開体40において、接合部形成用組成物20’に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる。
切開工程の後に、切開体40中に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程を行ってもよい。
【0205】
図11に示すように、巻回体30を切り開いて切開体40とした時点では、通常、切開体40は、湾曲した状態である。巻回体30を切開する前に硬化性樹脂材料21’を硬化させた場合、湾曲した切開体40の平坦性を高めようとすると、切開体40の内周と外周とでの曲率の差に起因するひずみが生じてしまい、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が生じやすい。これに対し、巻回体30を切開して平坦性を高めた切開体40に対して硬化性樹脂材料21’を硬化させる処理を施すことにより、上記のような問題の発生を効果的に防止することができる。
【0206】
本工程は、例えば、切開体40の内周側及び外周側を、それぞれ、平面に接触させた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させることにより行うことができる。
より具体的には、例えば、図12に示すように、切開体40を2枚の平板90の間に挟み込み、圧力をかけることで、熱伝導部形成用シート10’及び接合部形成用組成物20’の平坦性を高めた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させて樹脂材料21とすることができる。
【0207】
このときの圧力は、特に限定されないが、0MPa超100MPa以下とすることが好ましく、10MPa以上50MPa以下とすることがより好ましい。
【0208】
圧力が前記下限値未満であると、熱伝導部10及び接合部20の平坦性を十分に高めることが困難になる可能性がある。一方、圧力が前記上限値を超えると、隣り合う熱伝導部形成用シート10’間から、硬化性樹脂材料21’の流失が顕著となり、所望の厚さの接合部20を形成することが困難になる可能性がある。
【0209】
また、切開体40を押圧しつつ硬化工程を行うことで、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等をより効果的に防止することができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。
【0210】
硬化性樹脂材料21’が熱硬化性樹脂である場合、加熱温度は、硬化性樹脂材料21’の条件等により異なるが、80℃以上220℃以下であることが好ましく、100℃以上190℃以下であることがより好ましい。
これにより、硬化性樹脂材料21’を好適に硬化させることができる。
【0211】
以上のような各工程を経て、必要に応じて、所定の形状に加工することにより、熱伝導体本体2が得られる。
【0212】
[1-2-7]カット工程
製造すべき熱伝導体本体2が、ブロック状をなすものである場合、前述した硬化工程の後に、両面において、熱伝導部10及び接合部20が表出するブロック状にカットするカット工程を行う。
これにより、例えば、所望の厚さを有するブロック状の熱伝導体本体2を得ることができる。
【0213】
硬化工程の後に、例えば、図13中の切断線A-A’及び切断線B-B’に沿ってカットすることで、厚さTのブロック状の熱伝導体本体2を得ることができる。
ここで、製造すべき熱伝導体本体2の厚さTが比較的小さいものであっても、硬化工程を経て、硬化性樹脂材料21’が、形状の安定性がより高い樹脂材料21となっているため、容易に、熱伝導体本体2をカットすることができる。
【0214】
カット方法は、特に限定されないが、例えば、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
【0215】
カット方向としては、積層方向(切開体40の厚さ方向)に略平行でもよいし、積層方向(切開体40の厚さ方向)に対して斜め方向であってもよい。図13では、切開体40を積層方向に略平行にカットする様子を示している。
【0216】
熱伝導体本体2の表面、特に、熱伝導部10及び接合部20が表出している面に対して、研磨処理を施してもよい。これにより、熱伝導体本体2の表面粗さを好適に調整することができる。
【0217】
自然状態、すなわち、外力を加えていない状態での、熱伝導体本体2の表面粗さRaは、0.1μm以上80μm以下であることが好ましく、0.1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
これにより、熱伝導体1と接合される部材の表面形状により好適に追従することができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
なお、熱伝導体本体2の表面粗さRaは、例えば、JIS B 0601-2013に準拠した方法により測定することができる。
【0218】
[1-3]熱伝導体本体の他の構成例
次に、熱伝導体本体の他の構成例について説明する。
図14は、熱伝導体本体の他の一例を模式的に示す斜視図である。図15は、図14に示す熱伝導体本体の縦断面図であり、図15(a)は、切断線C-C’における断面図であり、図15(b)は、切断線D-D’における断面図である。
図14図15に示す熱伝導体本体2では、第2の方向から平面視した際に、複数個の熱伝導部10が、島状に設けられている。
【0219】
これにより、熱伝導体本体2の面内(図14に示すxy平面の方向)の各部位での熱伝導性のばらつきを抑えつつ、熱伝導体本体2全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、前述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0220】
なお、本明細書において「島状」とは、接合部20中に、複数個の熱伝導部10が、連続せず点在している状態のことをいう。言い換えると、熱伝導部10は、x方向、y方向のいずれにおいても、他の熱伝導部10とは独立した状態である。
【0221】
図14に示す熱伝導体本体2では、第2の方向から平面視した際に、複数個の熱伝導部10が、千鳥状に配置されている。言い換えると、複数個の熱伝導部10がx方向に並んだ第1の列10aと、第2の列10bとが、熱伝導部10が互い違いになるように、y方向に交互に配されている。
これにより、上述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0222】
第1の列10aの熱伝導部10と、第2の列10bの熱伝導部10とは、y方向において、少なくとも一部が重なりあっているものであることが好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
【0223】
第2の方向から平面視した際の図14中のw10で示す熱伝導部10の幅は、1mm以上30mm以下であることが好ましく、5mm以上20mm以下であることがより好ましく、7mm以上15mm以下であることがさらに好ましい。
【0224】
これにより、熱伝導体本体2中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体本体2全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0225】
熱伝導体本体2を第2の方向から平面視した際の図14中のg10で示す隣り合う熱伝導部10の間隔は、1μm以上2000μm以下であることが好ましく、2μm以上1500μm以下であることがより好ましく、3μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
【0226】
これにより、熱伝導体本体2中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体本体2全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0227】
なお、本明細書において、「隣り合う熱伝導部10の間隔」は、隣り合う熱伝導部10間での最短距離としてのギャップを意味する。
【0228】
また、図14では、複数個の熱伝導部10が、千鳥状に配置されている場合を示しているが、複数個の熱伝導部10は、千鳥状以外の態様で配置されていてもよい。複数個の熱伝導部10は、規則的に配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。
【0229】
なお、図15に示すように、熱伝導部10の第1の列10aと第2の列10bとでは、表面の法線方向V1に対する熱伝導部10(貫通熱伝導部10c)の傾斜方向が、逆になっている。
【0230】
第1の列10aの貫通熱伝導部10cの、表面の法線方向V1に対する傾斜方向をプラス(+)方向とし、第2の列10bの貫通熱伝導部10cの、表面の法線方向に対する傾斜方向をマイナス(-)方向とする。
【0231】
すなわち、第1の列10aの貫通熱伝導部10cは、表面の法線方向V1に対しプラス方向に角θ1だけ傾斜しており、第2の列10bの貫通熱伝導部10cは、表面の法線方向V1に対しマイナス方向に角θ2だけ傾斜している。
【0232】
このように、互いに異なる方向に傾斜した貫通熱伝導部10cを備えること、特に、表面の法線方向V1に対してプラスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cとともに、表面の法線方向V1に対してマイナスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cを備えることにより、例えば、熱伝導体1に、比較的大きな荷重が加わった場合であっても、座屈等による熱伝導体本体2の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形をさらに効果的に抑制することができ、熱伝導体1の耐久性をさらに優れたものとすることができる。
【0233】
特に、表面の法線方向V1に対してプラスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cと、表面の法線方向V1に対してマイナスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cとが、交互に配されていることにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0234】
図15に示すように、表面の法線方向V1と、貫通熱伝導部10cの延在方向e10とのなす角θ1、θ2の絶対値は、3°以上45°以下であることが好ましく、5°以上40°以下であることがより好ましく、8°以上35°以下であることがさらに好ましい。
【0235】
これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0236】
なお、角θ1と角θ2とは、その大きさが異なっていても構わないが、同じであることが好ましい。
【0237】
また、前記角度は、数学的な意味における厳密な数値ではなく、本発明の技術分野における、通常の誤差を含んでいてもよい。例えば、1°未満の差は、誤差として、同じ角度であると解釈される。
【0238】
熱伝導部10の傾斜方向は、特に限定されないが、熱伝導部10(熱伝導部形成用部材10’)が帯状をなすものである場合、熱伝導部10は、その面方向が、前記表面の法線方向V1に対して、傾斜していることが好ましい。
【0239】
これにより、例えば、熱伝導体1に、比較的大きな荷重が加わった場合であっても、座屈等による熱伝導体本体2の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形をさらに効果的に抑制することができ、熱伝導体1の耐久性をさらに優れたものとすることができる。
【0240】
[1-4]金属層
金属層3は、熱伝導体本体2の外表面の少なくとも一部を被覆するように配されている。
金属層3は、例えば、熱伝導体本体2の外表面のうち、異なる部材が接合される、対向する一対の面を少なくとも被覆するように配されていることが好ましい。
これにより、対向する一対の面間において、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との間で、熱を効率よく伝達することができる。
【0241】
なお、図1に示す断面図では、熱伝導体本体2の外表面のうち、対向する一対の面、言い換えると、上面及び底面に加えて、図1中の左右の面、言い換えると、熱伝導体本体2において、熱伝導部10と接合部20との積層方向の両端部に配された熱伝導部10の主面に金属層3が配された状態を示しているが、金属層3は、熱伝導体本体2の図面手前側の面(側面)及び奥側の面(側面)にも配されている。図2図16図22図24についても同様である。
【0242】
金属層3は、金属を含む材料で構成されたものであればよいが、めっき層又はメタライジング層であることが好ましい。
これにより、金属層3を熱伝導体本体2の外表面に好適に形成することができる。また、金属層3と熱伝導体本体2との密着性を優れたものとすることができる。
【0243】
なお、本明細書において「メタライジング」とは、セラミックス材料やプラスチック材料等の非金属材料で構成される部材の表面に金属層を形成させて表面を金属化することをいい、「メタライジング層」は、非金属材料で構成される部材の表面に形成させることで表面を金属化するための金属層のことをいう。
メタライジング層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、無電解めっき法、溶射法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)等の気相成膜法、ペースト焼き付け法等が挙げられる。
【0244】
また、めっき層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法等が挙げられる。
【0245】
金属層3を構成する材料としては、金属材料であれば特に限定されず、例えば、金、銀、ニッケル、銅、亜鉛、スズ等が挙げられるが、金、ニッケルのうちの少なくとも一方であることが好ましい。
【0246】
金は、金属材料の中でも延性が比較的高く、熱伝導体本体2が変形した場合にも好適に追従することができる。言い換えると、熱伝導体1の柔軟性を妨げない。また、熱伝導率にも優れている。また、前述したような熱伝導体本体2(特に、前述したような黒鉛を含む材料で構成された熱伝導部10)との密着性をより優れたものとすることができ、前述した効果がより顕著に発揮される。また、めっき法又はメタライジング法により熱伝導体本体2の外表面に金属層3を形成する場合に、より好適に金属層3を形成することができる。
【0247】
金属層3の厚さは、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上15μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をより好適なものとすることができる。
【0248】
特に、金属層3の一部が、熱伝導体本体2の内部に侵入していることが好ましい。
ここで、「金属層3の一部が、熱伝導体本体2の内部に侵入する」とは、熱伝導体本体2の表面の微細な凹凸、あるいは、熱伝導体本体2の表面に露出する熱伝導部10及び接合部20の微細な空隙に、金属層3の一部が侵入していることをいう。
【0249】
これにより、アンカー効果により、熱伝導体本体2と金属層3との密着性がより優れたものとなり、上述した効果をより顕著なものとすることができる。また、熱伝導体1が変形することにより金属層3が熱伝導体本体2から剥離してしまうことが好適に防止され、熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。このようなアンカー効果は、熱伝導部10が前述したような黒鉛を含む材料で構成されたものである場合に、このような効果はより顕著に発揮される。
【0250】
図示の構成では、金属層3は、熱伝導部10の表面に選択的に設けられている。
熱伝導体1の変形は、主として熱伝導体本体2の接合部20や空隙部4の部位が変形することによる。このため、金属層3が、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていること、言い換えると、接合部20の表面には金属層3が実質的に設けられていないことで、金属層3に引っ張られることなく、接合部20や空隙部4は、好適に変形することができ、熱伝導体1としての柔軟性をより好適なものとすることができる。これにより、金属層3を介して熱伝導体1の両面にそれぞれ接合される異なる部材の熱膨張率差により発生する熱応力を、より効果的に緩和することができる。
【0251】
また、金属層3が、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていることで、熱伝導体1が変形することにより金属層3が引っ張られて熱伝導体本体2から剥離してしまうことが好適に防止され、熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。
【0252】
また、金属層3が、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていることで、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との間で、熱を効率よく伝導することができる。
【0253】
また、後述するように、熱伝導部10が、導電性に優れた材料、言い換えると、例えば、黒鉛等の炭素材料や金属材料を含んで構成され、電子部品210から熱伝導体1を電気的に介して電極線241から電極を引き出すような場合に、金属層3が、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていることで、熱伝導体1の導電性をより良好なものとすることができ、より効率よく電極を引き出すことができる。
【0254】
金属層3を、熱伝導部10の表面に選択的に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、金属層3を電解めっき法により形成することで、金属層3は、導電性に優れた熱伝導部10の部分に優先的に付着することになる。これにより、金属層3を、熱伝導部10の表面に選択的に形成することができる。また、接合部20が前述したような材料で構成されたものである場合、無電解めっき法により金属層3を形成した場合であっても、熱伝導部10の表面に優先的に金属層3を形成することができる。
【0255】
熱伝導体本体2において、熱伝導体本体2を平面視した際の熱伝導部10の面積比が大きい場合、電解めっきにより熱伝導部10の表面に選択的に形成される金属層3の面積も、より広い面積とすることができる。これにより、上述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0256】
なお、本明細書において、金属層3について「熱伝導部10の表面に選択的に設けられている」とは、熱伝導部10の表面における金属層3の被覆率が、接合部20の表面における金属層3の被覆率よりも高い状態のことを言う。すなわち、図示の構成では、金属層3は、熱伝導部10の表面にのみ設けられているが、金属層3は、熱伝導部10の表面に加えて、接合部20の表面に設けられていてもよく、熱伝導部10の表面における金属層3の被覆率が、接合部20の表面における金属層3の被覆率よりも高ければ、熱伝導部10の表面に選択的に設けられているといえる。
【0257】
また、本実施形態においては、熱伝導体1の対向する一対の面にそれぞれ接合される部材が、互いに異なるものであればよく、例えば、熱伝導体1に接合される異なる部材の一方が、他の熱伝導体1であってもよい。
【0258】
より具体的には、例えば、熱伝導体1が、面内での熱伝導性に異方性を有するものである場合、面内でのx方向への熱伝導性が高い熱伝導体1と、面内でのy方向への熱伝導性の高い熱伝導体1とを積層して2段構成としてもよい。
【0259】
このように、熱伝導部10の延在方向が異なるものとなるように、複数枚の熱伝導体1を積層することにより、前記一対の面を垂直に結ぶ第1の方向に加えて、xy平面での異なる方向、特に図示の構成では、x方向への熱伝導性にも、y方向への熱伝導性にも優れたものとすることができる。言い換えると、熱を3次元的に伝導して放熱することができる。また、熱伝導部10の延在方向が異なるものとなるように、複数枚の熱伝導体1を積層することにより、熱が伝導されにくい空間を設計しやすくなり、熱に弱い電子部品をより好適に保護することができる。
【0260】
面内での熱伝導性の異なる熱伝導体1を積層する方法としては、例えば、熱伝導体本体2において、熱伝導部10の延在方向が面内でx方向となるように配置した熱伝導体1と、熱伝導部10の延在方向が面内でY方向となるように配置した熱伝導体1とを積層する方法が挙げられる。
【0261】
[2]電子装置
次に、本発明の電子装置について説明する。
本発明に係る電子装置は、樹脂材料を含む材料で構成され、内部に空隙部4を有する熱伝導体本体2と、熱伝導体本体2の外表面の少なくとも一部を被覆する金属層3とを有する熱伝導体1を備え、熱伝導体1は、対向する一対の面の両面において、金属層3を介して異なる部材と接合されている構造を有する。
【0262】
このような電子装置では、熱伝導体本体2が、樹脂材料を含む材料で構成され、内部に空隙部4を有するものであることにより、熱伝導体本体2は、柔軟性を有するものとなる。そして、金属層3が延性を有する金属材料で構成されていることにより、熱伝導体1は、全体として柔軟性を有するとともに、接合された部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性に優れている。言い換えると、金属層3を介して熱伝導体1の両面にそれぞれ接合される異なる部材の熱膨張率差により発生する熱応力を、熱伝導体1自身が変形することで吸収し緩和することができる。
これにより、熱伝導体1と部材との接合界面での剥がれを抑制することができ、十分な密着性を維持することができる。
【0263】
また、熱伝導体本体2が柔軟性を有するものであることで、熱伝導体1と接合される部材と、熱伝導体1との密着性を優れたものとすることができ、部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0264】
さらに、熱伝導体1と部材とが接合されていることで、面圧をかけなくても、良好な密着性を確保することができ、部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。また、面圧をかけることが困難な部材に対しても、熱伝導体1を適用することができる。
【0265】
<第1実施形態>
図16は、本発明の電子装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。図17は、電子装置を電子パッケージとして構成した場合の一構成例を模式的に示す断面図である。
【0266】
図16に示す電子装置200A(200)は、電子部品210と、放熱基板220とを有し、前述した熱伝導体1が、電子部品210と放熱基板220との間に配され、その対向する一対の面の両面において、金属層3を介して電子部品210及び放熱基板220とそれぞれ接合されている。
【0267】
熱伝導体1は、例えば、一方の面側にて高温部材に接触するとともに、他方の面側にて放熱部材に接触するものとすることができる。これにより、高温部材の熱を放熱部材に伝達し、放熱部材から効率よく放熱させるための伝熱部材、加熱されるべき加熱対象物と当該加熱対象物よりも温度の高い高温部材とに接触し、高温部材から熱エネルギーを加熱対象物に伝達し、加熱対象物を効率よく加熱させるための伝熱部材等として用いられる。
【0268】
図16に示す構成では、熱伝導体1は、その一方の面で、高温部材である電子部品210と接合され、他方の面で、放熱部材である放熱基板220と接合されている。
【0269】
このような電子装置200A(200)では、電子部品210から発生する熱は、熱伝導体1を介して放熱基板220へと伝導され、放熱基板220を介して放熱される。
【0270】
特に、この電子装置200A(200)では、熱伝導体1は、全体として柔軟性を有するものとなる。言い換えると、金属層3を介して熱伝導体1の両面にそれぞれ接合される、電子部品210を構成する材料と放熱基板220を構成する材料との熱膨張率の差により発生する熱応力を、熱伝導体1自身が変形することで吸収し緩和することができる。
【0271】
これにより、熱伝導体1と電子部品210及び放熱基板220との接合界面での剥がれを抑制することができ、十分な密着性を維持することができる。
【0272】
また、熱伝導体1が柔軟性を有するものであることで、電子部品210及び放熱基板220と、熱伝導体1との密着性を優れたものとすることができ、電子部品210及び放熱基板220と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0273】
また、熱伝導体1と、電子部品210及び放熱基板220とは、単に接触しているのではなく、接合されていることで、密着性をより優れたものとすることができる。
【0274】
このような電子装置200A(200)は、実質的な熱伝導性に優れた熱伝導体1を備えているので、発熱体である電子部品210からの熱をより効率よく放熱することができ、装置やシステムの寿命低下、誤作動等のリスクをより効果的に低減することができる。
【0275】
[2-1]電子部品
電子部品210としては、例えば、各種の電子部品等が挙げられ、より具体的には、コンピューターの中央演算処理装置(CPU)、画像処理用演算プロセッサ(GPU)、電力半導体素子(パワーデバイス)、FPGA、ASIC、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、トランジスタ等の半導体素子等が挙げられる。
電子部品210は、例えば、周囲雰囲気よりも高温になる高温部材である。
【0276】
高温部材としては、その表面の最高温度が40℃以上250℃以下のものが好ましく、50℃以上200℃以下のものがより好ましく、60℃以上180℃以下のものがさらに好ましい。
熱伝導体1がこのような高温部材に適用される場合に、より好適に熱伝導、放熱することができ、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0277】
上述したような電子部品の中でも、電力半導体素子を用いた場合には、特に発熱量が大きくなる傾向がある。言い換えると、電子部品210を構成する材料と放熱基板220を構成する材料との熱膨張率の差により発生する熱応力もより大きくなる傾向にある。したがって、電子部品210として電力半導体素子を適用し、電子部品210と放熱基板220との間に熱伝導体1を配することで、上述したような本発明による効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0278】
電子部品210は、はんだ250により、熱伝導体1の一方の面側に接合されていることが好ましい。
これにより、熱伝導体1と電子部品210との接合力をより優れたものとすることができるとともに、電子部品210の固定時に電子部品210に損傷等が生じることをより確実に防止することができる。また、電子装置200A(200)の生産性をより優れたものとすることができる。
【0279】
電子部品210は、熱伝導体1と接合される部位に、金属製の膜211を有していることが好ましい。
これにより、例えば、電子部品210の熱伝導体1と接合される部位が、非金属材料、例えば、セラミックス材料で構成される場合であっても、はんだ250により熱伝導体1と好適に接合することができる。
【0280】
金属製の膜211を構成する材料としては、金属材料であれば特に限定されないが、例えば、金、銀、ニッケル、銅、亜鉛、スズ等を含む材料が挙げられる。
【0281】
また、金属製の膜211の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、0.2μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0282】
以下の説明では、熱伝導体1が、一方の面側で電子部品210としての電力半導体素子と接合され、他方の面側で放熱基板220と接合される場合について、中心的に説明する。
【0283】
[2-1-1]電力半導体素子
電力半導体素子は、電力制御用の半導体素子(パワーデバイス)である。このような電力半導体素子としては、例えば、整流ダイオード、パワートランジスタ(パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT))、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアック等が挙げられる。
【0284】
このような電力半導体素子では、大電流が流れるために発熱量も特に大きくなる。言い換えると、上述したような、熱膨張率の差による問題がより顕著となる。
熱伝導体1がこのような電力半導体素子に適用される場合に、上述した本発明による効果が特に顕著に発揮される。
【0285】
[2-2]放熱基板
放熱基板220は、金属材料を含む材料で構成された基板である。
放熱基板220は、その一方の面側に電子部品210を搭載した際に、この電子部品210から発せられる熱を、放熱基板220を介して外部に放熱する。
【0286】
放熱基板220を構成する金属材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。
これらの中でも、放熱基板220は、銅を含む材料で構成されることが好ましい。これにより、電子部品210からの熱をより効率よく放熱することができる。
【0287】
放熱基板220の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上20.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上5.0mm以下であることがより好ましい。
これにより、放熱基板220の放熱性を向上させることができるとともに、電子装置200A(200)全体としての薄型化や、放熱基板220の外形加工や切り出し加工等における加工性を向上させることができる。
【0288】
放熱基板220は、はんだ250により、熱伝導体1の他方の面側に接合されていることが好ましい。
これにより、放熱基板220と熱伝導体1との接合力をより優れたものとすることができる。また、電子装置200A(200)の生産性をより優れたものとすることができる。
【0289】
また、放熱基板220の電子部品210が搭載された面と反対の面側には、図示しない冷却ユニットが取り付けられていてもよい。
冷却ユニットは、電子部品210の熱を放熱するための部材である。このような冷却ユニットとしては、例えば、ベーパーチャンバー、放熱フィン、ペルチェ素子、風冷式ユニット、水冷式ユニット等が挙げられる。
これにより、電子部品210からの熱をさらに効率よく放熱させることができる。
【0290】
前述したように、熱伝導体1は、熱伝導性に優れる材料で構成されるとともに、柔軟性にも優れ、高温部材及び放熱部材の表面への形状適合性に優れている。したがって、高温部材及び放熱部材の表面に比較的大きな凹凸がある場合等であっても、熱伝導体1は、これらの部材と好適に密着することができ、界面熱抵抗を低く抑え、高温部材である電子部品210から熱伝導体1、熱伝導体1から放熱部材である放熱基板220への実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0291】
これにより、電子部品210、具体的には、電力半導体素子からの熱を効果的に放熱することができ、熱による電力半導体素子の故障や誤作動といった不具合の発生を抑制することができ、電力半導体素子の製品寿命をより長いものとすることができる。
【0292】
上述したような電子装置200A(200)は、ケース内に収容され、さらに封止樹脂によって封止されることにより電子パッケージとして構成されていてもよい。
図17は、電子装置200A(200)を電子パッケージとして構成した場合の一構成例を模式的に示す断面図である。
【0293】
この電子パッケージ201は、ケース260と、電極端子261,262,263と、電子部品210と、配線271,272,273と、封止樹脂280と、放熱基板220とを主に有している。
【0294】
ケース260は、放熱基板220の周囲を囲うように配されており、その内側には、上述したように電子部品210及び熱伝導体1が実装された放熱基板220が取り付けられている。
【0295】
ケース260は、例えば、樹脂材料で形成されている。ケース260を構成する樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が挙げられる。
【0296】
また、ケース260には、電極端子261,262,263が取り付けられている。電極端子261,262,263の一方の端部は、ケース260の外側に露出している。また、電極端子261,262,263の他方の端部は、ケース260の内側に露出している。
電極端子261,262,263は、複数の負極入力端子(N)、正極入力端子(P)、ゲート端子(Pg)、アース端子(Pe)、交流電極端子(AC)を含んでいる。
【0297】
配線271は、電子部品210と電極端子261とに接続され、配線272は、電子部品210と電極端子262とに接続され、そして、配線273は、電子部品210と電極端子263とに接続されている。これにより、配線271,272,273によって、電子部品210と電極端子261,262,263とが互いに電気的に接続されている。
配線271,272,273を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム等の金属材料が挙げられる。
【0298】
ケース260と放熱基板220とで取り囲まれた内部空間に、電子部品210、熱伝導体1及び配線271,272,273が収容され、封止樹脂280で覆われている。
封止樹脂280を構成する樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンゲル等が挙げられる。
【0299】
なお、図17中、電子部品210と熱伝導体1、熱伝導体1と放熱基板220とを接合するはんだの図示は省略している。
【0300】
<第2実施形態>
次に、本発明の電子装置の第2実施形態について説明する。
図18は、本発明の電子装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。図19は、縦型の電力半導体素子の一例として、縦型IGBT素子の構造を模式的に示す縦断面図である。
なお、以下の説明では、前述した実施形態と異なる部分について主に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0301】
図18に示す電子装置200B(200)は、電子部品210と、放熱基板220と、電子部品210と放熱基板220との間に配された絶縁部材230とを有し、前述した熱伝導体1が、放熱基板220と絶縁部材230との間に配され、その対向する一対の面の両面において、金属層3を介して放熱基板220及び絶縁部材230とそれぞれ接合されている。
【0302】
本実施形態のように、電子部品210と放熱基板220との間に配された絶縁部材230を有する場合、電子部品210として、上述したような電力半導体素子の中でも、縦型IGBT、縦型MOSFET、縦型ダイオード等の縦型素子を用いることができる。縦型素子を備える電子装置では、半導体基板の上下両面に設けられる電極によって縦型素子に電圧を印加してオン動作させる。
【0303】
なお、縦型素子とは、オン動作時に半導体基板の一方の面から他方の面に向かって電流が流れる構造の素子のことをいう。
【0304】
このような縦型素子では、素子全体に均一に電流が流れるため、大電流用途に好適に用いられる。そして、縦型素子では、大電流が流れるために発熱量も特に大きくなる。言い換えると、上述したような、熱膨張率の差による問題がより顕著となる。
熱伝導体1がこのような縦型の電力半導体素子に適用される場合に、上述した本発明による効果が特に顕著に発揮される。
【0305】
図19は、縦型の電力半導体素子の一例として、縦型IGBT素子の構造を模式的に示す縦断面図である。
この縦型IGBT素子300は、n高抵抗層からなる半導体基板310と、半導体基板310の表面側に形成されたpボディ領域320と、pボディ領域320の表面に形成されたエミッタ領域330Eと、隣り合うpボディ領域320の間の半導体基板310の表面上に配置されたゲート絶縁膜350と、ゲート絶縁膜350上に配置されたゲート電極351と、エミッタ領域330E及びpボディ領域320に接続されたエミッタ電極331Eと、半導体基板310の表面と反対側の裏面に配置されたpコレクタ領域340Pと、pコレクタ領域340Pに接続されたコレクタ電極341Cとを備える。
【0306】
図示の構成では、縦型IGBT素子300は、プレーナゲート型のnチャネル縦型素子とされているが、縦型IGBT素子300は、トレンチゲート型のnチャネル縦型素子であってもよい。
【0307】
電子装置200B(200)が、電子部品210として縦型の電力半導体素子を備える場合、オン動作時の電流や発熱が局所的に集中する。
これにより、絶縁部材230は、電子部品210からの熱を直接的に受けて高温となる。
【0308】
また、絶縁部材230がセラミックス材料を含む材料で構成される場合、セラミックス材料と、放熱基板220を構成する金属材料との熱膨張率の差は、比較的大きくなる。言い換えると、絶縁部材230と放熱基板220との界面では、上述したような、熱膨張率の差による問題がより顕著となる。
【0309】
したがって、絶縁部材230と放熱基板220との間に熱伝導体1を配することで、より確実に上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0310】
[2-3]絶縁部材
絶縁部材230は、主として絶縁材料で構成された部材であって、放熱基板220と電子部品210とを絶縁する機能を有する。
このような絶縁部材230が配されることにより、電子回路のショート等の問題の発生を好適に防止することができる。
【0311】
絶縁部材230は、絶縁性を有する材料で構成されていれば特に限定されないが、セラミックス材料を含む材料で構成されることが好ましい。
これにより、放熱基板220と電子部品210との間の絶縁をより確実に図ることができる。
【0312】
絶縁部材230を構成するセラミックス材料は、特に限定されないが、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これにより、放熱基板220と電子部品210との間の絶縁をさらに確実に図ることができるとともに、これらのセラミックス材料は、それ自体の熱伝導性も比較的高いものであるため、全体としての熱伝導性をより優れたものとすることができる。
なお、前記群に含まれる複数の成分を含むセラミックス材料としては、例えば、ジルコニア強化アルミナ等が挙げられる。
【0313】
絶縁部材230の厚さは、特に限定されないが、0.10mm以上2.0mm以下であることが好ましく、0.15mm以上1.5mm以下であることがより好ましく、0.20mm以上1.0mm以下であることがさらに好ましい。
これにより、機械的強度や絶縁性の向上を図りつつ、電子部品210からの熱を、熱伝導体1を介して、より効果的に放熱基板220へ伝えることができる。
【0314】
図示の構成では、絶縁部材230を、複数の分割体231に分割しており、各分割体231の間に、隙間232を設けて配している。
これにより、絶縁部材230は、電子部品210からの熱によって熱膨張しても、熱膨張分をこの隙間232で吸収することができ、絶縁部材230の熱による割れや変形を好適に防止することができる。
【0315】
なお、絶縁部材230は、図示の構成に限定されず、1枚の板状体として構成されたものであってもよい。
【0316】
これらの絶縁部材230及び放熱基板220は、はんだ250により、熱伝導体1の面面にそれぞれ接合されていることが好ましい。これにより、絶縁部材230及び放熱基板220と熱伝導体1との接合力をより優れたものとすることができる。
【0317】
絶縁部材230は、熱伝導体1と接合される部位に、金属製の膜233を有していることが好ましい。
これにより、絶縁部材230の熱伝導体1と接合される部位が、セラミックス材料を含む材料で構成される場合であっても、はんだ250により熱伝導体1と好適に接合することができる。
【0318】
なお、金属製の膜233は、絶縁部材230において、電子部品210と接合される側の面(図示の構成では上面)、及び、熱伝導体1と接合される側の面(図示の構成では下面)に選択的に形成されており、側面には形成されないことが好ましい。
これにより、放熱基板220と電子部品210との間の絶縁を確実に図りつつ、上述した効果をより好適に得ることができる。
【0319】
<第3実施形態>
次に、本発明の電子装置の第3実施形態について説明する。
図20は、本発明の電子装置の第3実施形態の一例を模式的に示す断面図である。図21は、本発明の電子装置の第3実施形態の他の一例を模式的に示す断面図である。図22は、本発明の電子装置の第3実施形態の他の一例を模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明では、前述した実施形態と異なる部分について主に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0320】
図20図22に示す電子装置200C(200)は、電子部品210と、放熱基板220と、電子部品210と放熱基板220との間に配された電極引き出し用基板240と、放熱基板220と電極引き出し用基板240との間に配された絶縁部材230とを有し、前述した熱伝導体1が、電子部品210と電極引き出し用基板240との間に配され、その対向する一対の面の両面において、金属層3を介して電子部品210及び電極引き出し用基板240とそれぞれ接合されている。
【0321】
電子部品210が、縦型IGBT、縦型MOSFET、縦型ダイオード等の縦型素子を含む場合、素子の下面から電極、例えばコレクタ電極を引き出そうとすると、電極面積が素子の大きさに限定されることから、その部分に熱が局所的に集中し、発熱量が特に大きくなってしまう。そこで、素子の下面からではなく、より面積の大きい電極引き出し用基板240を配し、この電極引き出し用基板240から電極を引き出すことで、熱を拡散させて発熱量を抑えることができる。
【0322】
その場合でも、電極引き出し用基板240の部分での発熱量は、依然として大きくなる傾向にあり、また、電子部品210を構成するセラミックス材料と、後述するように電極引き出し用基板240を構成する金属材料との熱膨張率の差も比較的大きい。言い換えると、電子部品210と電極引き出し用基板240との界面は、上述したような、熱膨張率の差による問題がより顕著となる。
したがって、電子部品210と電極引き出し用基板240との間に熱伝導体1を配することで、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0323】
これらの電子部品210及び電極引き出し用基板240は、はんだ250により、熱伝導体1の面面にそれぞれ接合されていることが好ましい。これにより、電子部品210及び電極引き出し用基板240との接合力をより優れたものとすることができる。
【0324】
[2-4]電極引き出し用基板
電極引き出し用基板240は、金属材料を含む材料で構成された基板である。
電極引き出し用基板240は、導電性を有していればよく、特に限定されないが、銅を含む材料で構成されることが好ましい。
これにより、電子部品210からの電極を好適に引き出すことができる。また、熱伝導体1との密着性をより優れたものとすることができる。
【0325】
電極引き出し用基板240と放熱基板220との絶縁を図るために、放熱基板220と電極引き出し用基板240との間に絶縁部材230が配される。
これにより、電子回路の電気的なショート等の問題の発生を好適に防止することができる。
【0326】
絶縁部材230は、はんだ250により、電極引き出し用基板240と放熱基板220とにそれぞれ接合されている。
【0327】
このとき、絶縁部材230は、電極引き出し用基板240及び放熱基板220と接合される部位に、金属製の膜233を有していることが好ましい。
【0328】
図21に示すように、本実施形態の電子装置200C(200)では、上記の構成に加えて、熱伝導体1が、絶縁部材230と電極引き出し用基板240との間にさらに配され、その対向する一対の面の両面において、金属層3を介して絶縁部材230及び電極引き出し用基板240とそれぞれ接合されていてもよい。
【0329】
絶縁部材230を構成するセラミックス材料と、電極引き出し用基板240を構成する金属材料との熱膨張率の差も大きい。言い換えると、絶縁部材230と電極引き出し用基板240との界面においても、上述したような、熱膨張率の差による問題が顕著となる。
したがって、絶縁部材230と電極引き出し用基板240との間にさらに熱伝導体1を配することで、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0330】
これらの絶縁部材230及び電極引き出し用基板240は、はんだ250により、熱伝導体1の面面にそれぞれ接合されていることが好ましい。これにより、絶縁部材230及び電極引き出し用基板240と熱伝導体1との接合力をより優れたものとすることができる。
【0331】
また、図22に示すように、本実施形態の電子装置200C(200)では、上記の構成に加えて、熱伝導体1が、放熱基板220と絶縁部材230との間にさらに配され、その対向する一対の面の両面において、金属層3を介して放熱基板220及び絶縁部材230とそれぞれ接合されていることが好ましい。
【0332】
絶縁部材230を構成するセラミックス材料と、放熱基板220を構成する金属材料との熱膨張率の差も大きい。言い換えると、放熱基板220と絶縁部材230との界面においても、上述したような、熱膨張率の差による問題が顕著となる。
したがって、放熱基板220と絶縁部材230との間に熱伝導体1を配することで、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0333】
これらの放熱基板220及び絶縁部材230は、はんだ250により、熱伝導体1の面面にそれぞれ接合されていることが好ましい。これにより、放熱基板220及び絶縁部材230と熱伝導体1との接合力をより優れたものとすることができる。
【0334】
<第4実施形態>
次に、本発明の電子装置の第4実施形態について説明する。
図23は、本発明の電子装置の第4実施形態の一例を模式的に示す断面図である。図24は、本発明の電子装置の第4実施形態の他の一例を模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明では、前述した実施形態と異なる部分について主に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0335】
図23図24に示す電子装置200D(200)は、電子部品210と、放熱基板220と、電子部品210と放熱基板220との間に配された絶縁部材230とを有し、前述した熱伝導体1が、電子部品210と絶縁部材230との間に配され、その対向する一対の面の両面において、金属層3を介して電子部品210及び絶縁部材230とそれぞれ接合されており、熱伝導体本体2は、前記両面において、複数の熱伝導部10が、該面内の所定方向に延在しており、熱伝導体1の電子部品210と接合される側の面で、電子部品210から露出した部位、又は、絶縁部材230と接合される側の面で、前記所定方向と交差する方向に延在するように、該熱伝導体1と接触して配された電極線241を有している。
【0336】
本実施形態の熱伝導体1は、優れた熱伝導性を有するものであるが、さらに、熱伝導体1それ自体が導電性を有する場合、電子部品210からの電流を、熱伝導体1を通じて電極を引き出すことも可能である。
【0337】
熱伝導体1それ自体が導電性を有する場合とは、具体的には、例えば、熱伝導体本体2の熱伝導部10が、導電性を有する材料を含んで構成される場合が挙げられる。
【0338】
熱伝導部10を構成する、導電性を有する材料としては、例えば、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料、銅、アルミニウム等の金属材料等が挙げられ、炭素材料が好ましく、黒鉛がより好ましい。
【0339】
これにより、熱伝導体1は、熱伝導性にも優れるとともに、導電性にも優れたものとなり、電子部品210からの電流をロスなく伝導し、電極線241から電極を引き出すことができる。
【0340】
熱伝導体本体2において、熱伝導部10の積層方向についての厚さが比較的厚い場合、あるいは、熱伝導体本体2を平面視した際の熱伝導部10の面積比が比較的大きい場合、熱伝導部10の部分で電流を効率よく伝導することができ、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0341】
また、熱伝導体1において、熱伝導部10の表面に選択的に金属層3が配されていることにより、上記効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0342】
[2-5]電極線
電極線241は、熱伝導体1の電子部品210と接合される側の面で、電子部品210から露出した部位、又は、絶縁部材230と接合される側の面に、熱伝導体1と接触して配されている。言い換えると、電極線241は、電子部品210とは接触しないように、熱伝導体1と接触して配されている。
図示の構成では、電極線241は、熱伝導体1の絶縁部材230と接合される側の面、言い換えると、熱伝導体1の下面に配されている。
【0343】
また、電極線241は、複数の熱伝導部10と交差するように、熱伝導体1に対して配されていればよく、電極線241と複数の熱伝導部10とは直交していなくても構わない。
【0344】
電極線241は、複数の熱伝導部10と交差していればよいが、少なくとも、電子部品210と電気的に接触する複数の熱伝導部10と交差していることが好ましい。これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0345】
このような構造によれば、熱伝導体1の一方の面側において、電子部品210からの電流を、複数の熱伝導部10に分散させて流し、熱伝導体1の他方の面側において、複数の熱伝導部10にそれぞれ電気的に接触している電極線241によって、分散された電流を再び集めて引き出すことができる。
【0346】
これにより、電子部品210からの電流が比較的大電流の場合であっても、電流の集中や局所的な発熱を抑えて、好適に電極を引き出すことができる。
【0347】
特に、本実施形態の熱伝導体1は、複数の熱伝導部10が積層された構造を有しているので、大電流を複数に分散させることができるため、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0348】
電極線241は、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、銅を含む材料で構成されることが好ましい。
これにより、電子部品210からの電極を好適に引き出すことができる。また、熱伝導体1との密着性をより優れたものとすることができる。
【0349】
電極線241の形状は、電流を引き出すことができるものであれば、特に限定されず、例えば、線状、帯状等が挙げられる。
【0350】
電極線241が線状である場合、電極線241の太さは、特に限定されないが、0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.0mm以下であることがより好ましい。
【0351】
電極線241が帯状である場合、電極線241の幅は、特に限定されないが、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0352】
電極線241が帯状である場合、電極線241の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.0mm以下であることがより好ましい。
【0353】
上記のような条件を満たすことにより、配線抵抗の増大を抑えて、より効率よく電極を引き出すことができる。
【0354】
図示の構成では、電極線241は、熱伝導体1の絶縁部材230と接合される側の面、すなわち、図中下側の面で、熱伝導体1に接触しているが、これに限定されず、電極線241は、熱伝導体1の電子部品210と接合される側の面、すなわち、図中上側の面で、熱伝導体1に接触していてもよい。
【0355】
さらに、電極線241は、金属層3を介して熱伝導体1と接合されていてもよい。電極線241を熱伝導体1に接合する場合、電極線241は、例えば、はんだ250により熱伝導体1に接合することができる。
【0356】
図24に示すように、本実施形態の電子装置200D(200)では、熱伝導体1が、放熱基板220と絶縁部材230との間にさらに配され、その対向する一対の面の両面において、金属層3を介して放熱基板220及び絶縁部材230とそれぞれ接合されていてもよい。
【0357】
絶縁部材230を構成するセラミックス材料と、放熱基板220を構成する金属材料との熱膨張率の差も大きい。言い換えると、放熱基板220と絶縁部材230との界面においても、上述したような、熱膨張率の差による問題が顕著となる。
【0358】
したがって、放熱基板220と絶縁部材230との間に熱伝導体1を配することで、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0359】
これらの放熱基板220及び絶縁部材230は、はんだ250により、熱伝導体1の面面にそれぞれ接合されていることが好ましい。これにより、放熱基板220及び絶縁部材230と熱伝導体1との接合力をより優れたものとすることができる。
【0360】
このとき、絶縁部材230は、熱伝導体1と接合される部位に、金属製の膜233を有していることが好ましい。これにより、絶縁部材230と熱伝導体1とを好適に接合することができる。
【0361】
なお、上述した説明では、絶縁部材として、セラミックス材料を含む材料で構成されたものを用いた場合を代表的に説明したが、絶縁部材としては、上述したようなセラミック以外の材料で構成されたものも用いることができる。
【0362】
セラミック以外の材料としては、例えば、PCM(Phase Change Material)等が挙げられる。PCMは、絶縁性を有するとともに、熱により軟化して密着性が向上することで、優れた放熱性能を発揮する。
【0363】
絶縁部材として、PCMで構成されたものを用いる場合、例えば、PCMを、シート状に成形したものが用いられる。
シートの厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下とすることが好ましい。
【0364】
なお、PCMは、熱により軟化するため、はんだにより接合しなくても、熱伝導体1との好適な密着性を確保することができる。
【0365】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0366】
例えば、前述した説明では、熱伝導体を構成する熱伝導部及び接合部が平面状のものである場合について中心的に説明したが、熱伝導体を構成する熱伝導部、接合部のうちの少なくとも一部は、非平面状をなすもの、例えば、湾曲面状のもの、屈曲面状のもの等であってもよい。
【0367】
また、前述した説明では、熱伝導体を構成する各熱伝導部に、孔部が設けられている場合について代表的に説明したが、熱伝導体を構成する複数の熱伝導部のうちの一部については、孔部が設けられていなくてもよい。
【0368】
また、熱伝導部には、前述した孔部の代わりに又は前述した孔部に加えて、熱伝導部の厚さ方向に貫通しない凹部、すなわち、有底凹部が設けられていてもよい。また、熱伝導部には、凹部が設けられていなくてもよい。
【0369】
また、熱伝導体は、前述した熱伝導部、接合部、空隙部以外の構成を有するものであってもよい。
【0370】
また、熱伝導体は、上記のような方法で製造されたものに限定されない、例えば、熱伝導体の製造方法においては、前述した工程に加え、他の工程(前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)をさらに有していてもよい。
【0371】
また、熱伝導部形成用シートへの孔部の形成は、熱伝導部形成用シートを原反ロールから引き出した後に行ってもよい。より具体的には、例えば、孔部が形成されていない熱伝導部形成用シートを、原反ロールから引き出した後であって接合部形成用組成物を付与する前のタイミングで、熱伝導部形成用シートに孔部を形成してもよいし、孔部が形成されていない熱伝導部形成用シートに接合部形成用組成物を付与するのと同じタイミングで、熱伝導部形成用シートに孔部を形成してもよい。
【0372】
また、上述した説明では、巻回工程と、切開工程と、硬化工程とをこの順で有する方法を用いて熱伝導体を製造する方法について説明したが、例えば、これらの順番を入れ替えた方法や、これらの工程のうち一部を有さない方法、他の工程で置換した方法等により、熱伝導体を製造してもよい。より具体的には、例えば、熱伝導体は、巻回工程及び切開工程を有する方法の代わりに、接合部形成用組成物が付与された複数枚の熱伝導部形成用シートを重ね合わせて、その後、硬化工程を行う方法を用いて製造されたものであってもよい。
【0373】
また、上述した説明では、接合部形成用組成物を付与した熱伝導部形成用シートを巻回して巻回体とし、巻回体を切開する方法を用いて熱伝導体を製造する方法について説明したが、熱伝導体は、例えば、接合部形成用組成物が付着した枚葉の熱伝導部形成用部材を積層して積層体とする方法を用いて製造されたものであってもよい。
【0374】
また、熱伝導体の製造方法においては、前述した工程の順序の少なくとも一部を入れ替えてもよい。
【0375】
また、電子装置には、上述した部材、例えば、電子部品、放熱基板、絶縁部材、電極引き出し用基板、電極線以外の部品が配されていてもよい。
【符号の説明】
【0376】
1 :熱伝導体
2 :熱伝導体本体
3 :金属層
4 :空隙部
10 :熱伝導部
10a :第1の列
10b :第2の列
10c :貫通熱伝導部
10’ :熱伝導部形成用シート(熱伝導部形成用部材)
11 :孔部(凹部)
12 :空隙部
20 :接合部
20’ :接合部形成用組成物
21 :樹脂材料
21’ :硬化性樹脂材料
22 :樹脂繊維
30 :巻回体
40 :切開体
50 :ポリロタキサン
51 :環状分子
52 :第1のポリマー
53 :封鎖基
60 :第2のポリマー
90 :平板
100 :部材
110 :部材
120 :はんだ
200 :電子装置
200A :電子装置
200B :電子装置
200C :電子装置
200D :電子装置
201 :電子パッケージ
210 :電子部品
211 :金属製の膜
220 :放熱基板
230 :絶縁部材
231 :分割体
232 :隙間
233 :金属製の膜
240 :電極引き出し用基板
241 :電極線
250 :はんだ
260 :ケース
261 :電極端子
262 :電極端子
263 :電極端子
271 :配線
272 :配線
273 :配線
280 :封止樹脂
300 :縦型IGBT素子
310 :半導体基板
320 :pボディ領域
330E :エミッタ領域
331E :エミッタ電極
340P :pコレクタ領域
341C :コレクタ電極
350 :ゲート絶縁膜
351 :ゲート電極
A-A’ :切断線
B-B’ :切断線
C-C’ :切断線
D-D’ :切断線
FG :鱗片状黒鉛
10 :延在方向
10 :間隔
M10 :キスコーター
M11 :塗工ロール
M12 :液受けパン
M13 :スキージー
M14 :ガイドロール
R1 :原反ロール
R2 :巻取ロール
10 :厚さ
20 :厚さ
T1 :厚さ
T2 :長さ
:厚さ
V1 :法線方向
10 :幅
θ1 :角
θ2 :角

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24