(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103999
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ドライフィルムの製造方法、圧延装置、ドライフィルム、およびドライフィルムで被覆された基材
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230720BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230720BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20230720BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230720BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230720BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230720BHJP
B30B 9/24 20060101ALI20230720BHJP
B30B 5/06 20060101ALI20230720BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20230720BHJP
B29C 43/24 20060101ALI20230720BHJP
B29C 43/46 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/66 A
H01M4/74 A
H01M4/74 C
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
B30B9/24 B
B30B5/06 A
H01M4/86 M
B29C43/24
B29C43/46
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041858
(22)【出願日】2023-03-16
(62)【分割の表示】P 2022016185の分割
【原出願日】2018-05-14
(31)【優先権主張番号】102017208220.8
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(71)【出願人】
【識別番号】516386144
【氏名又は名称】テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】アルテウス ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】チェッケ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シューム ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】カスケル シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュルト クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シェーンヘル カイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドライフィルムを効率的かつ機械的に安定な方法で基材に適用する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、乾燥粉末混合物が、第1のロール2aおよび第2のロール2bを含む圧延装置によってドライフィルム3に加工される、ドライフィルム3の製造方法に関する。第1のロール2aは、第2のロール2bよりも高い周方向回転速度を有する。ドライフィルム3は第1のロール2aに取り付けられていて、第1のロール2aの回転周速度と第2のロール2bの回転周速度との比は、10:5~10:1に維持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライフィルム(3)の製造方法は、
乾燥粉末混合物は、第1のロール(2a)および第2のロール(2b)を有する圧延装置によって前記ドライフィルム(3)に加工され、
ここで、前記第1のロール(2a)は前記第2のロール(2b)よりも高い回転周速度を有し、前記ドライフィルム(3)は前記第1のロール(2a)に取り付けられていて、
前記第1のロール(2a)の回転周速度と前記第2のロール(2b)の回転周速度との比は、10:5~10:1に維持される、ことを特徴とする。
【請求項2】
前記第1のロール(2a)の回転周速度と前記第2のロール(2b)の回転周速度との比が、10:5~10:3に維持されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記圧延装置がカレンダー圧延装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
ドライフィルムの製造のために、非流動性粉末混合物が使用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1のロール(2a)には接着力向上修正が設けられ、および/または前記第2のロール(2b)には接着力低減修正が加えられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ドライフィルム(3)が基材(4)に適用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ドライフィルム(3)が基材(4)上に形成されている間に、前記基材(4)が前記第1のロール(2a)上を移動することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ドライフィルム(3)が、前記第1のロール(2a)と前記第2のロール(2b)によってロール間のニップに作用する、100N/cmから10kN/cmの線形な力で形成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
金属材料からなる基材(4)が使用されることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ドライフィルム(3)をそれぞれの表面に積層する前に、基材(4)に、プライマーおよび/またはバインダーを設けることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
エキスパンドメタル、金属ワイヤメッシュ、不織布、銅箔またはカーボンプライマーが塗布されたアルミニウム箔からなる基材(4)が使用されることを特徴とする、請求項5~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ドライフィルム(3)が、500μm未満の厚さで形成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記乾燥粉末混合物が、導電性添加剤、多孔性炭素、遷移金属酸化物および/または硫黄を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
異方的に形成されたフィブリルを有する前記ドライフィルム(3)が形成されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ドライフィルム(3)の構造化が、それぞれの基材表面領域に接着強化プライマー層を有することにより達成された、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
乾燥粉末混合物が、第1のカレンダーロール(2a)と第2のカレンダーロール(2b)との間のニップに導入され、前記第1のカレンダーロール(2a)及び前記第2のカレンダーロール(2b)は前記第1のカレンダーロール(2a)が前記第2のカレンダーロール(2b)よりも高い回転周速度を持つように構成または駆動され、前記第1のカレンダーロール(2a)と前記第2のカレンダーロール(2b)とは反対の回転方向を持っており、
前記第1のカレンダーロール(2a)の回転周速度と前記第2のカレンダーロール(2b)の回転周速度との比は、10:5~10:1に維持される、ことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の製造方法を実施するための圧延装置。
【請求項17】
前記乾燥粉末混合物に加えて、基材(4)がニップを通して供給されることを特徴とする、請求項16に記載の圧延装置。
【請求項18】
前記第1のカレンダーロール(2a)と前記第2のカレンダーロール(2b)を含む2つのカレンダーロール対は、2つの第1のカレンダーロール(2a)の間にニップを構成し、前記ニップの間に前記ドライフィルム(3)が提供されるように鏡面対称に並んで配置され、前記ドライフィルム(3)は、同様に前記ニップを通して供給される基材(4)の2つの側面に生成され、
2つの第1のカレンダーロール(2a)の回転方向は反対であることを特徴とする、請求項16に記載の圧延装置。
【請求項19】
回転軸を中心に回転するさらなる第1のカレンダーロールが存在し、その上に第1のカレンダーロールと第2のカレンダーロールとの間に形成されたドライフィルムが存在し、ニップから出た後に巻き取ることができ、2つの第1のカレンダーロール(2a)は同じ回転周速度を有することを特徴とする請求項16に記載の圧延装置。
【請求項20】
フィブリルが0.1μmから1000μmの長さを有することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたドライフィルム。
【請求項21】
前記ドライフィルム(3)が基材(4)に適用されることを特徴とする、請求項20に記載のドライフィルム。
【請求項22】
請求項20または21のいずれか一項に記載のドライフィルムを有する電気化学貯蔵要素または電気化学コンバーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の製造方法、圧延装置、ドライフィルム、およびドライフィルムで被覆された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー電極の製造では、50μmから100μmの厚さの層を金属集電体に高いウェブ速度で適用する必要がある。これは通常、水性または有機溶媒中の活性物質の懸濁液からの湿式化学ロールツーロールプロセスによって実現される。このためには、活物質の分散と層の乾燥の両方に高いエネルギー入力が必要である。無溶剤の、したがって乾燥した方法でコーティングを実現する努力がますます行われている。このため、活物質、導電性添加剤、および適切なバインダーの乾燥粉末混合物は、機械的に負荷をかける層に変換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7352558号明細書
【特許文献2】独国特許発明第102010044552号明細書
【特許文献3】独国特許発明第102014208145号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、自立フィルムへのプレスが実現される方法は、先行技術から知られている。この目的のために、乾燥粉末混合物がエアジェットミルによってフィブリル化される3段階プロセス、粉末はカレンダーニップに運ばれ、そこで自立フィルムに押し込まれる。スタンディングフィルムは、集電体に適用され、通常行われる。この方法は連続処理を可能にするが、多段階の性質、とりわけ、扱いにくい自立フィルムの中間ステップは問題がある。
【0005】
特許文献2に開示されている別の方法では、熱可塑性バインダーによる機械的安定化のために、静電粉体化および下流熱処理により乾燥粉末混合物を対象基材に塗布する。これの欠点は、粉末の塗布に続いて、シーリング処理またはカレンダー加工による機械的安定化が必要になるため、追加のプロセスステップが必要になることである。さらに、この方法では、平面ターゲット基材を使用する必要がある。
【0006】
特許文献3から、被覆電極を有する電池セル、およびその製造が知られている。バッテリーは、乾燥粒子に基づくリサイクル可能な電極を備えている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、前記欠点を回避し、したがって、ドライフィルムを効率的かつ機械的に安定な方法で基材に適用できる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の製造方法、請求項16に記載の圧延装置、請求項20に記載のドライフィルム、請求項20に記載のドライフィルムで被覆された基材、および請求項22に記載の電気化学素子によって達成される。 有利な実施形態および改良点は、従属請求項に記載されている。
【0009】
ドライフィルムを製造する方法において、乾燥粉末混合物は、第1のロールおよび第2のロールを有する圧延装置によってドライフィルムに加工される。この場合、第1のロールは第2のロールよりも高い回転周速度を有し、結果として生じるドライフィルムは第1のロールに取り付けられる。
【0010】
2つのロールの異なる回転周速度で動作する圧延装置により、第2のロールよりも高速で回転する第1のロールでの機械的安定化とフィルム形成が実現される。したがって、自立フィルムの形成が回避され、第1のロールに支持または搭載されたドライフィルムのさらなる処理を実現することができる。
【0011】
典型的には、2本のロールで処理後のドライフィルムは、好ましくは基材に積層された基材に適用されるが、代替的にまたは追加的に、これは既にドライフィルムの生成において行うことができる。基材が十分な粗さを持っている限り、たとえば金属ワイヤメッシュまたはカーボンファイバーマットとして設計されている限り、ドライフィルムは、効果的なインターロックにより、基材に押し付けることもできる。しかしながら、例えばドクターブレードによって、第1のロールからドライフィルムを剥離するために提供することもできる。さまざまなロール速度(ドライフィルムに形成される構造の間隔に影響を与える)および押圧力(これらの構造の構造高さに影響を与える)により、生成されるドライフィルムは通常、粗さRaが10μm以下であるフィブリル構造を持つ。
【0012】
第2のロールの回転周速度に対する第1のロールの回転周速度の比は、10:9から10:1の間にあることが提供され得る。好ましくは、10:7から10:3、特に好ましくは2:1の比率が維持される。その結果、2つのロール間のギャップ内の粉末にせん断力が加えられ、走行方向に沿ってフィブリル化が生じる。したがって、ドライフィルムは、異なるロール速度のために、構造の周期性が認識できる波形構造で形成することができる。
【0013】
第1のロールの円周は、典型的には、第2のロールの円周に対応するため、同じ直径の2つのロールを備えた単純な構造が得られる。ただし、たとえばそれぞれの円周に応じて定義された回転速度を達成するために、異なる直径、したがって異なるロール円周で第1のロールと第2ロールを設計することもできる。
【0014】
回転装置は、カレンダー回転装置として構成できる。加熱可能なロールにより、ドライフィルムのさらなる圧縮を達成することができる。加熱可能なロールまたは少なくとも1つの加熱可能なロールにより、フィブリル構造の形成を促進することができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーの場合、少なくとも1つの加熱可能なロールの温度は80℃~120℃である必要がある。
【0015】
好ましくは、第1のロールよりも低い回転周速度を有する第2のロールは、変形、好ましくはその表面にコーティングを備えており、このコーティングは、形成するドライフィルムに対して忌避性および/または付着低減性である。ドライフィルムをより簡単に除去できること。コーティングは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーンおよび/またはダイヤモンド状炭素を含むか、またはそれらからなることができる。代替的または追加的に、第1のロールは、対応する修正を有することができ、これは、形成するドライフィルムに対して接着強化効果を有する。例えば、第1のロールが第2のロールよりも大きな粗さを有する表面を有するという点で、粗面化によって修正を実現することもできる。特に、第2のロールの表面を滑らかに磨くことができる。
【0016】
ドライフィルムは、典型的には基材に適用され、好ましくは積層され、適用または積層のために、第1のロールの回転周速度に対応する速度で動かされる。これにより、相互に適合した速度により、ドライフィルムの第1のロールから基材への流体移動が可能になります。
【0017】
好ましくは、基材は、ドライフィルムが基材上に形成される間に第1のロール上を移動する。結果として、基材の移動と同時に起こる乾燥層の直接形成が促進される。基材がプライマー箔と一緒に第1のロールの上に直接供給される場合、基材に接着強化層を適用することができる。
【0018】
ドライフィルムは、ドライフィルムの十分な機械的圧縮を達成するため、ニップ内で第1のロールと第2のロールの間に作用する、100N/cm~10kN/cm、好ましくは400N/cmの線形力で、第1のロールと第2のロールによって形成されることが提供され得る。
【0019】
通常、基材は、エネルギー貯蔵ユニットの電極として機能できるように、金属材料で形成されるか、この金属材料を含む。
【0020】
適用または積層のために設けられたそれぞれの表面上にドライフィルムを積層する前に、基材にプライマーおよび/またはバインダーを設けることができる。したがって、接続が改善される。好ましくは、この目的のために、熱可塑性プライマーおよび/または熱可塑性バインダーが使用される。代替的または追加的に、反応性プライマーまたは接着剤も使用できる。プライマー層は、導電性錆および/または熱可塑性成分、好ましくはポリビニルピロリドン(PVP)を含むことができる。好ましくは、基材は、エキスパンドメタル、金属ワイヤメッシュ、不織布、機械的連結を可能にする構造化表面を有する基材、または金属箔、好ましくは銅箔またはアルミニウム箔から形成される。特に好ましくは、銅箔またはアルミニウム箔が使用され、それにカーボンプライマーが塗布される。
【0021】
ドライフィルムは、可能な限り薄くかつ同時に機械的に安定なドライフィルムを得るために、典型的には500μm未満、好ましくは300μm未満、特に好ましくは150μm未満の厚さで形成される。
【0022】
典型的には、ポリテトラフルオロエチレン、例えばカーボンナノチューブなどの導電性添加剤を含むまたは含む乾燥粉末混合物が使用される。炭素/硫黄カソードの場合、乾燥粉末混合物は、多孔性炭素(例えば、多孔性錆またはカーボンナノチューブ)、硫黄、ポリテトラフルオロエチレン、および必要に応じて、さらに導電性添加剤を含むことができる。リチウムイオン電極の場合、ポリテトラフルオロエチレンと追加の導電性添加剤に加えて、活物質、好ましくはフェロリン酸リチウム(LFP)、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケルマンガンコバルト(NMC)、ニッケルリッチリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC622またはNMC811)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムマンガンニッケル酸化物(LMNO)、および/またはチタン酸リチウム(LTO)も使用できる。特に有利なのは、リチウムイオン電池のカソード材料について記載されている方法であるが、これらの材料は水性ではほとんど処理されないからである。
【0023】
この方法を実施するための圧延装置では、乾燥粉末混合物が粉末コンベヤーから第1のカレンダーロール(第1のロール)と第2のカレンダーロール(第2のロール)の間のニップに送り込まれる。第1および第2のカレンダーロールは、第1のカレンダーロールが第2のカレンダーロールよりも高い回転周速度を有し、第1および第2のカレンダーロールがそれぞれ反対の回転方向を有するように構成される。
【0024】
乾燥粉末混合物に加えて、基材、特にホイルまたはメッシュを、ニップを通して供給することができる。
【0025】
例えば、バッテリー用途など、いわゆる断続的なコーティングを行う必要がある場合がある。これにより、コーティングの方向を横切るストリップの形のコーティングが可能になる。このため、コーティングは定期的かつ正確に同期した間隔で吊り下げられ、コーティングされていないストリップが形成される。この同期と生産可能な形状の精度、およびエッジの正確さは、限られた範囲でのみ可能である。このようにして、乾式フィルムと基材へのコーティングの断続的な形成のプロセス速度は、連続コーティングと比較して半分に減らすことができる(~60m/minの代わりに~30m/min)。
【0026】
本発明による方法を用いて、それぞれの基材表面上に接着強化プライマー層を使用することにより、そのような構造化を達成することが可能である。このためには、ドライフィルムが形成される基材表面を、接着促進プライマー層で、所望の形状で事前にコーティングする必要がある。ここでは(乾燥状態で)約1μmの厚さの層であるため、実際の電極層の代わりにプライマー層を構成する方が簡単である(さまざまな印刷プロセスまたはスプレープロセス)。オプションの形状(長方形、または円形やその他の形状など)も可能である。そのような方法(たとえば
図2)では、ドライフィルム層は、より速く回転する第1カレンダーロール上に完全に形成され続ける。しかし、基材表面にプライマー層が設けられている場所でのみ、ドライフィルムとの積層が行われる。(基材表面に転写されていない)余分なドライフィルムは、最初のカレンダーロールから除去され、再処理され、再利用できる。このようにして、プロセス速度を低下させることなく、オプションのジオメトリを高精度で実現できる。
【0027】
また、第1および第2のカレンダーロールを含む2つのカレンダーロール対は、2つの第1のカレンダーロール間でニップを構成するように左右対称に並べて配置でき、同様にこのニップを介して供給される基材の両面にドライフィルムが適用され、2つの第1のカレンダーロールの回転方向は逆である。
【0028】
さらなる実施形態において、回転軸を中心に回転するさらなる第1のカレンダーロールが存在し得、その上に、第1のカレンダーロールと第2のカレンダーロールとの間に形成されたドライフィルムがニップから出た後に巻き取られ得る。2つの第1のカレンダーロールの回転周速は同じでなければならない。この実施形態では、基材、好ましくは箔に、第1のカレンダーロールと第2のカレンダーロールとの間のニップを通してドライフィルムを供給し、さらなる第1のカレンダーロールに巻き付けることができる。
【0029】
ドライフィルムには、異方的に形成されたフィブリルがある。 ニップで剪断することにより、これらのフィブリルは、好ましくは、第1のロールおよび第2のロールの走行方向に異方的に形成される。 フィブリルの長さは、0.1μm~1000μmの範囲内にある。代替的または追加的に、フィブリルを有するドライフィルムは、10μm未満の粗さRaを有し得る。ドライフィルムは通常、基材上に配置される。
【0030】
好ましくは、電気化学的貯蔵器または電気化学的変換器は、記載された特性を有するドライフィルム、またはドライフィルムを備えかつ記載された特性を有する基材を有する。
【0031】
ドライフィルムおよびドライフィルムを備えた基材は、記載された方法に従って製造されることが好ましく、したがって、記載された方法は、ドライフィルムおよびドライフィルムを備えた基材を製造するように構成される。
【0032】
製造には、非流動性の粉末混合物も使用できる。この非流動性は、ドイツの規格EN ISO 6186:1998(1998年8月現在)に準拠した試験条件下で決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の例示的な実施形態を図面に示し、
図1から
図3を参照して以下に説明する。
【0034】
【
図3】
図1に対応する、基材送りを伴う圧延装置の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1には、粉末コンベヤー1に貯蔵された乾燥粉末混合物が、粉末コンベヤー1から寸法に関して同一のクロムメッキカレンダー2aおよび2bの2つの方へと進み、これらにより押圧力およびせん断力を作用させることによって安定状態に変換される、回転装置の概略側面図が示されている。ここで、第1のカレンダーロール2aは、第2のカレンダーロール2bよりも高い回転速度で運転されるので、成形ドライフィルム3は、加圧および剪断操作の組み合わせ後、第1のカレンダーロール2a上に残る。
【0036】
図示された例示的実施形態では、使用済み乾燥粉末は予混合状態で存在し、90重量%のケッチェンブラック/硫黄(1:2 m/m)、3重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および7重量%の多層カーボンを含む ナノチューブ(MWCNT)で構成される。リチウムイオン電極の場合、95重量パーセントのマンガン酸リチウム、3重量パーセントの導電性添加剤(この場合は多層カーボンナノチューブ、MWCNT)、2重量パーセントのPTFEのものが通常使用される。第1のロール2aと第2のロール2bとの間に位置するカレンダーニップにおいて、乾燥粉末混合物のフィブリル化が起こり、それにより閉じられたドライフィルム3が生成される。
【0037】
第1のロール2aおよび第2のロール2bの回転速度は、10:9から10:4の範囲内にあり、示されている例示的な実施形態では、約2:1、すなわち10mm/s:5mm/sまたは20mm/s:10mm/sである。さらなる例示的な実施形態では、パラメータウィンドウおよび粉末条件に応じて、80mm/s:40mm/sも回転速度として使用することもできる。ここで、より高い回転速度は、より顕著な波形構造またはより少ないフィブリルを有するより薄いドライフィルムをもたらし、したがって、より低い表面粗さRaをもたらす。示された例示的な実施形態では、フィブリルは平均で10μmの長さを有し、ロール2aおよび2bの走行方向に異方的に形成される。回転速度の結果として、ニップ内の粉末に、後者は、示された例示的な実施形態では、50μmの幅を有するが、10μmと300μmの間の幅でもあり得、走行方向に沿って細動を生じさせるせん断力が加えられる。これにより、より高速で回転する第1のロール2a上での機械的安定化および膜形成がもたらされ、自立膜の形成が回避される(しかし、必要な場合、例えばドクターブレードによるロール2aからの機械的除去により達成することができる)。代わりに、より速いロール2a上に支持されたドライフィルム3が得られ、これは、限定された機械的安定性のため、特に200μm未満の厚さを有するドライフィルムにとって有利である。
【0038】
図示の例示的な実施形態では、第1のロール2aおよび第2のロール2bは、それぞれ100℃の温度に加熱することができる。さらに、第1のロール2aには、ドライフィルム3が付着する付着力増強表面を設けることができ、一方、第2のロール2bは、ドライフィルムに対して付着力低減表面を有する。図示の例示的な実施形態では、第1のロール2aと第2のロール2bとの間の作用する線形力は400Nに達する。
【0039】
熱可塑性プライマーまたはバインダーを備えた集電体への引き続く積層により、ドライフィルム3を第1のロール2aから除去することができ、したがって、例えば、無溶媒で製造された電極を生成することができる。
【0040】
図2には、
図1に対応する図に、
図1に示された2つの回転装置からなる対称構造が存在する例示的な実施形態が示されている。次の図にもあるように、この図には繰り返し機能があり、同じ参照記号が付いている。
【0041】
図示された例示的な実施形態では、基材4は、互いに鏡面対称に配置された2つの回転装置の間を通って送られる。それぞれの上でドライフィルム3が走行する2つの第1のロール2aは互いに向かい合っており、両面がそれぞれロールの1つに向いているため、基材4の両側にドライフィルム3を設けることができる。このために、基材4は、2つの第1のロール2aの回転周速度に正確に対応する速度で動かされる。図示の例示的な実施形態では、鏡面対称配置を除いて、2つの回転装置は同一に構成され、したがって特に寸法が等しく、等しい回転速度または回転周辺速度で動作する。さらなる例示的な実施形態では、組成に関して互いに異なるドライフィルム3を基材4に適用することもできるが、
図2に示す例示的な実施形態では、ドライフィルム3は同一である。
【0042】
さらに、記載された方法は、電極を、基材4として代替の集電体、例えば、穿孔金属箔または導電性織物などの低坪量の穿孔基材を有する電極の製造を可能にする。
図2に示される例示的な実施形態では、基材4は、両面コーティングとしてカーボンプライマーを有するアルミニウム箔である。
【0043】
一次および二次電池、例えばリチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、ナトリウム硫黄電池、固体電池、スーパーキャップ電極、燃料電池用電極、電解電池用電極、さらなる電気化学素子用電極用の電池電極の連続フィルム製造 多孔質粒子、装飾層、吸収のための光学層、および/または湿気に敏感なまたは溶剤に敏感な材料の層の使用によるフィルター膜または吸着コーティングも可能になる。
【0044】
図3は、
図1に対応する概略側面図で、本発明のさらなる例示的な実施形態を示し、基材4は、箔の形態で基材ロール5に巻き付けられ、箔の形態でニップに導入され、これにより、形成されたドライフィルム3はニップ内で基材4に直接積層される。この例示的な実施形態では、ドライフィルム3は、第1のロール2a上にもはや直接接触せず、したがって直接接触で接触するのではなく、第1のロール2a上で間接的にのみ走り、次のロール2aに巻き取られる。
【0045】
したがって、記載された方法は、フィブリル化の目的のための追加のステップなしで、予混合されたドライフィルム粉末から直接電極を製造することを可能にし、その結果、自立フィルムも形成される必要がない。この方法は、ドライフィルムの機械的安定性の向上が可能な前フィブリル化に使用できる。さらに、自立フィルムは、キャリアロールから分離することで実現できる。第1のロール2aおよび第2のロール2bの周速度または回転周速度と、カレンダーニップまたはロール間のニップの方向に作用する押圧力とにより、負荷および密度を設定することができる。ドライフィルム形成は自己投与方式で実現され、結果として得られる層の厚さは、2つのロール2aおよび2bの使用押圧力に由来する。特定の(プロセスパラメータに適合した)粉体量の連続入力により、たとえば粉末コンベヤー1または供給基材を介して、予備投入が実現する。このようにして、層の厚さも同様に影響を受ける。
【0046】
ドライフィルム3の機械的安定性は、使用される押圧力および回転速度(せん断速度)によって設定される。 ロール2aおよび2bの等しい回転速度が与えられた場合、ニップ内で単にプレスされた自立フィルムと比較して、提案された方法で製造されたドライフィルム3は、著しく増加した機械的安定性を示す。
【0047】
例示的な実施形態に開示されている様々な実施形態の特徴のみを互いに組み合わせて、個別に請求することができる。