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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000104
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】画像セグメンテーション方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20221222BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100726
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】森 泰平
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA03
5L096DA01
5L096FA14
5L096FA37
5L096GA51
5L096JA03
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】画像上のパターンのエッジを検出することなく、画像上の複数のパターンを正しく分けることができる画像セグメンテーション方法を提供する。
【解決手段】画像セグメンテーション方法は、積層構造を構成する複数の層内にある複数のパターンの画像を生成し、画像の輝度のヒストグラムを作成し、画像を構成する画素を、ヒストグラムの形状に基づいて複数のグループに分類し、画素の分類結果をパターンの設計データに基づいて補正する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造を構成する複数の層内にある複数のパターンの画像を生成し、
前記画像の輝度のヒストグラムを作成し、
前記画像を構成する画素を、前記ヒストグラムの形状に基づいて複数のグループに分類し、
前記画素の分類結果を前記複数のパターンの設計データに基づいて補正する、画像セグメンテーション方法。
【請求項2】
前記画像を構成する画素を、前記ヒストグラムの形状に基づいて分類する工程は、
前記ヒストグラムをその山形状に基づいて複数の区域に分割し、
前記画像を構成する画素を、前記複数の区域に従って前記複数のグループに分類する工程である、請求項1に記載の画像セグメンテーション方法。
【請求項3】
前記画像セグメンテーション方法は、前記画素の分類結果を、隣接する2つの画素間の輝度の類似度に基づいて補正する工程をさらに含み、
前記画素の分類結果を前記複数のパターンの設計データに基づいて補正する工程は、前記輝度の類似度に基づいて補正された前記画素の分類結果を、前記複数のパターンの設計データに基づいてさらに補正する工程である、請求項1または2に記載の画像セグメンテーション方法。
【請求項4】
前記画素の分類結果を、隣接する2つの画素間の輝度の類似度に基づいて補正する工程は、隣接する2つの画素間の輝度の類似度がしきい値よりも大きい場合は、前記隣接する2つの画素を同じグループに分類し、隣接する2つの画素間の輝度の類似度が前記しきい値よりも小さい場合は、前記隣接する2つの画素を異なるグループに分類する工程である、請求項3に記載の画像セグメンテーション方法。
【請求項5】
前記しきい値は、前記設計データから作成されたCADパターンのエッジからの距離に従って小さくなる複数のしきい値のうちの1つである、請求項4に記載の画像セグメンテーション方法。
【請求項6】
前記しきい値は、前記設計データから作成されたCADパターンのエッジに垂直な方向に隣接する2画素間についての第1のしきい値と、前記CADパターンのエッジと平行な方向に隣接する2画素間についての第2のしきい値のうちの1つであり、前記第1のしきい値は前記第2のしきい値よりも小さい、請求項4に記載の画像セグメンテーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハなどのワークピース上に形成されたパターンの画像を層に従って分ける画像セグメンテーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NANDフラッシュメモリなどの半導体デバイスは、多数の層からなる積層構造を有する。このような積層構造を持つ半導体デバイスの検査には、設計データとパターンの画像を比較するDie to Database検査がある(特許文献1参照)。更に、高加速電子ビームを用いて得られた反射電子画像上のパターンを層に従って分類し、異なる層のパターンの重心間のずれ量(距離)を測定するオーバーレイ方法がある。
【0003】
図16は、反射電子画像上に現れた複数のパターンの一例を示す模式図である。この反射電子画像1000には、第1の層内の第1パターン1001と、第1の層の上にある第2の層内の第2パターン1002が現れている。コンピュータは、パターン1001,1002の設計データを用いて第1パターン1001と第2パターン1002のエッジを検出し、検出されたエッジによって画定された第1パターン1001と第2パターン1002の重心をそれぞれ算定し、これら重心間のずれ量(距離)を算定する。算定されたずれ量が、設計データ上のずれ量と大きく乖離する場合には、導通不良などの欠陥が存在すると推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-268009号公報
【特許文献2】特開2019-9256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、反射電子画像では、エッジの輝度が高くなる、いわゆるエッジ効果が起こらないため、画像上のパターンのエッジを検出しにくい。加えて、積層構造は奥行き方向に、ある程度の寸法を有しているため、ある層内のパターンは焦点が合わず、パターンのエッジがぼやけていることがある。結果として、パターンのエッジが検出できず、層間でのパターンのずれ量を算定できないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、画像上のパターンのエッジを検出することなく、画像上の複数のパターンを正しく分けることができる画像セグメンテーション方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、積層構造を構成する複数の層内にある複数のパターンの画像を生成し、前記画像の輝度のヒストグラムを作成し、前記画像を構成する画素を、前記ヒストグラムの形状に基づいて複数のグループに分類し、前記画素の分類結果を前記複数のパターンの設計データに基づいて補正する、画像セグメンテーション方法が提供される。
【0008】
一態様では、前記画像を構成する画素を、前記ヒストグラムの形状に基づいて分類する工程は、前記ヒストグラムをその山形状に基づいて複数の区域に分割し、前記画像を構成する画素を、前記複数の区域に従って前記複数のグループに分類する工程である。
一態様では、前記画像セグメンテーション方法は、前記画素の分類結果を、隣接する2つの画素間の輝度の類似度に基づいて補正する工程をさらに含み、前記画素の分類結果を前記複数のパターンの設計データに基づいて補正する工程は、前記輝度の類似度に基づいて補正された前記画素の分類結果を、前記複数のパターンの設計データに基づいてさらに補正する工程である。
【0009】
一態様では、前記画素の分類結果を、隣接する2つの画素間の輝度の類似度に基づいて補正する工程は、隣接する2つの画素間の輝度の類似度がしきい値よりも大きい場合は、前記隣接する2つの画素を同じグループに分類し、隣接する2つの画素間の輝度の類似度が前記しきい値よりも小さい場合は、前記隣接する2つの画素を異なるグループに分類する工程である。
一態様では、前記しきい値は、前記設計データから作成されたCADパターンのエッジからの距離に従って小さくなる複数のしきい値のうちの1つである。
一態様では、前記しきい値は、前記設計データから作成されたCADパターンのエッジに垂直な方向に隣接する2画素間についての第1のしきい値と、前記CADパターンのエッジと平行な方向に隣接する2画素間についての第2のしきい値のうちの1つであり、前記第1のしきい値は前記第2のしきい値よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像を構成する画素は、その輝度に基づいて分類され、分類結果は設計データに基づいて補正される。このようにして分類された画素は、各層内のパターンおよびは非パターン領域を構成する。画像上のパターンのエッジは、画素の分類結果から分かる。したがって、本発明によれば、画像上のパターンのエッジを検出することなく、画像上の複数のパターンを正しく分けることができる画像セグメンテーションが達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。
図2】積層構造を形成する複数の層内にある複数のパターンの画像の一例を示す模式図である。
図3図2に示す画像の輝度のヒストグラムを示す図である。
図4】ヒストグラムを山の形状に基づいて3つの区域に分割する工程を説明する図である。
図5】ヒストグラムの3つの区域に従って3つのグループに分類された画素の分布を示す図である。
図6】第1パターンおよび第2パターンの設計データから作成されたCADパターンを示す図である。
図7図5に示す第1パターンの外縁を、第2グループから第1グループに補正する工程を説明する図である。
図8】画像セグメンテーションの一実施形態のフローチャートである。
図9】複数の層内にある複数のパターンの画像の他の例を示す模式図である。
図10】ヒストグラムの複数の区域に従って複数のグループに分類された画素の分布を示す図である。
図11】輝度の類似度に基づいて分類結果が補正された画素の分布を示す図である。
図12】設計データに含まれるパターンの層情報に基づき分類結果を補正する工程を説明する図である。
図13】画像セグメンテーションの一実施形態のフローチャートである。
図14】類似度と比較される複数のしきい値が設けられる一実施形態を説明する模式図である。
図15】類似度と比較されるしきい値の設定を説明するための模式図である。
図16】反射電子画像上に現れた複数のパターンの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。画像生成システムは、ワークピースWの画像を生成する走査電子顕微鏡1と、走査電子顕微鏡1によって生成された画像を処理する処理システム5を備えている。ワークピースWの例としては、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハ、マスク、パネル、基板などが挙げられる。
【0013】
処理システム5は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。処理システム5は、プログラムが格納された記憶装置5aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する処理装置5bを備えている。記憶装置5aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。処理装置5bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、処理システム5の具体的構成は本実施形態に限定されない。
【0014】
処理システム5は、走査電子顕微鏡1に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークによって走査電子顕微鏡1に接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいは走査電子顕微鏡1に接続されたネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。処理システム5は、複数のサーバの組み合わせであってもよい。例えば、処理システム5は、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークにより互いに接続されたエッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。他の例では、処理システム5は、ネットワークで接続されていない複数のサーバ(コンピュータ)を備えてもよい。
【0015】
走査電子顕微鏡1は、電子ビームを放出する電子銃15、電子銃15から放出された電子ビームを集束する集束レンズ16、電子ビームをX方向に偏向するX偏向器17、電子ビームをY方向に偏向するY偏向器18、電子ビームを試料の一例であるワークピースWにフォーカスさせる対物レンズ20、ワークピースWを支持するステージ31を有する。電子銃15の構成は特に限定されない。例えば、フィールドエミッタ型電子銃、または半導体フォトカソード型電子銃などが電子銃15として使用できる。
【0016】
電子銃15から放出された電子ビームは集束レンズ16で集束された後に、X偏向器17、Y偏向器18で偏向されつつ対物レンズ20により集束されてワークピースWの表面に照射される。ワークピースWに電子ビームの一次電子が照射されると、ワークピースWからは二次電子および反射電子などの電子が放出される。ワークピースWから放出された電子は電子検出器26により検出される。電子検出器26の電子検出信号は、画像取得装置28に入力され画像に変換される。このようにして、走査電子顕微鏡1は、ワークピースWの表面の画像を生成する。画像取得装置28は処理システム5に接続されている。
【0017】
ワークピースWの表面には、3次元メモリなどを構成するための多層構造が形成されている。本実施形態では、多層構造の複数の層内に形成されている複数のパターンの画像を走査電子顕微鏡1が生成するために、反射電子画像(BSE像)が採用されている。すなわち、電子検出器26は、ワークピースWから放出された反射電子(BSE)を検出する反射電子検出器である。反射電子画像(BSE像)は、透過画像(シースルー画像)にとも呼ばれ、多層内の複数のパターンが透過画像上に現れる。
【0018】
ワークピースWに形成されている、配線などの電子回路を形成するためのパターンの設計データは、記憶装置5aに記憶されている。設計データは、ワークピースW上に形成されたパターンの頂点の座標、パターンの位置、形状、および大きさ、パターンが属する層の番号などのパターンの設計情報を含む。処理システム5は、ワークピースWに形成されているパターンの設計データを記憶装置5aから読み出すことが可能である。
【0019】
次に、積層構造を構成する複数の層内にある複数のパターンの画像を画素の輝度に従って分割する画像セグメンテーションの一実施形態について説明する。本実施形態の画像セグメンテーションは、画像上のパターンのエッジは検出せず、代わりに、画像を構成する画素を輝度に従って複数のグループに分類することで、画像を分割する技術である。
【0020】
最初に、処理システム5は、走査電子顕微鏡1に指令を発して、積層構造を形成する複数の層内にある複数のパターンの画像を生成させる。処理システム5は、画像を走査電子顕微鏡1から受け取る。図2は、積層構造を形成する複数の層内にある複数のパターンの画像の一例を示す模式図である。図2に示す例では、第1の層内の第1パターン51と、第1の層の上にある第2の層内の第2パターン52と、非パターン領域53が画像55上に現れている。画像55は、複数の層内の複数のパターン51,52が現れる反射電子画像(BSE画像)である。
【0021】
半導体デバイスの製造工程においては、比較的小さい密度を持つ絶縁層に、大きい密度を持つ金属配線、ビアが形成される。高いエネルギーを持つ電子ビームを半導体デバイスに照射して得られる画像55は、金属配線およびビアにて高い輝度を持ち、絶縁層で低い輝度を持つ。また、金属の深さ(厚さ)が大きいほど、画像55上の輝度は高くなる。図2に示す第1パターン51は、比較的深いビアであり、第2パターン52は、ビアに比べて厚さが小さい金属配線であり、非パターン領域53は絶縁層である。したがって、画像55上の第1パターン51、第2パターン52、および非パターン領域53のそれぞれの輝度は異なる。
【0022】
そこで、処理システム5は、図2に示す画像55の輝度のヒストグラムを作成する。図3は、図2に示す画像55の輝度のヒストグラムを示す図である。図3の縦軸は度数(画素の数)を表し、横軸は画像55を構成する画素の輝度を表す。処理システム5は、図2に示す画像55を画素ごとに分解し、各画素の輝度を決定することで、画像55の全体の輝度のヒストグラムを作成する。図2に示す画像55上には輝度の異なる第1パターン51、第2パターン52、および非パターン領域53が現れているので、図3の輝度のヒストグラムには、3つの山が現れている。これら3つの山は、第1パターン51、第2パターン52、および非パターン領域53にそれぞれ対応する。
【0023】
処理システム5は、画像55を構成する画素を、ヒストグラムの形状に基づいて分類する。より具体的には、処理システム5は、ヒストグラムをその特徴的な形状に従って複数の区域に分割し、画像55を構成する画素を、分割された複数の区域に従って複数のグループに分類する。図3に示すヒストグラムは、特徴的な3つの山を含むので、処理システム5は、図4に示すように、ヒストグラムを山の形状に基づいて3つの区域に分割する。第1区域は図2に示す第1パターン51に対応し、第2区域は図2に示す第2パターン52に対応し、第3区域は図2に示す非パターン領域53に対応する。
【0024】
図2に示す画像55を構成する各画素は、図4に示す3つの区域のいずれかに属する。したがって、処理システム5は、画像55を構成する画素を、各画素が属する区域に従って3つのグループに分類する。例えば、図2の第1パターン51内にある画素は、第1グループに分類され、図2の第2パターン52内にある画素は、第2グループに分類され、図2の非パターン領域53内にある画素は、第3グループに分類される。
【0025】
図5は、ヒストグラムの3つの区域に従って3つのグループに分類された画素の分布を示す図である。図5に示すように、第1グループに分類された画素は第1パターン51に概ね相当し、第2グループに分類された画素は第2パターン52に概ね相当し、第3グループに分類された画素は非パターン領域53に概ね相当する。
【0026】
しかしながら、第1パターン51の外縁は、第2パターン52の輝度に近い輝度を有しており、このために、図5に示すように、第1パターン51の外縁は第2グループに分類されている。本来、第1パターン51の外縁は第1グループに分類されるべきであるが、輝度の違いが小さいことに起因して、第1パターン51の外縁を構成する画素は、第2グループに分類されている。
【0027】
そこで、処理システム5は、画素の分類結果を第1パターン51および第2パターン52の設計データに基づいて補正するように構成されている。図6は、第1パターン51および第2パターン52の設計データから作成されたCADパターン61,62を示す図である。CADパターン61,62は、設計データに含まれるパターンの設計情報によって定義される仮想パターンであり、ポリゴン形状を有している。ワークピースW上の第1パターン51および第2パターン52は、対応するCADパターン61,62に従って作成される。CADは、コンピュータ支援設計(computer-aided design)の略語である。
【0028】
設計データは、ワークピースW上に形成された第1パターン51および第2パターン52の頂点の座標、位置、形状、および大きさ、第1パターン51および第2パターン52が属する層の番号などのパターンの設計情報を含む。図6に示すCADパターン61,62は、このような設計データに基づいて処理システム5によって作成される。
【0029】
図6に示す第1CADパターン61は、図2の第1パターン51に対応し、第2CADパターン62は、図2の第2パターン52に対応する。すなわち、第1パターン51は、第1CADパターン61に従ってワークピースW上に形成された実パターンであり、第2パターン52は、第2CADパターン62に従ってワークピースW上に形成された実パターンである。第1CADパターン61の位置は、画像55上の第1パターン51の位置に対応している。したがって、図5に示す第1パターン51の外縁は、第1グループに分類されるべきであることが第1CADパターン61の位置(すなわち設計データ)から分かる。
【0030】
そこで、処理システム5は、設計データの情報に基づき、図5に示す第1パターン51の外縁を補正する。より具体的には、処理システム5は、設計データに含まれるパターンの位置情報に基づき、図5に示す第1パターン51の外縁を、第2グループから第1グループに補正する。その結果、図7に示すように、外縁を含む第1パターン51の全体は、第1グループに分類される。このようにして、処理システム5は、輝度のヒストグラムに基づいた分類結果を、設計データに基づいて補正する。
【0031】
本実施形態によれば、画像55を構成する画素は、その輝度に基づいて分類され、分類結果は設計データに基づいて補正される。このようにして分類された画素は、各層内のパターン51,52および非パターン領域53を構成する。画像55上のパターン51,52のエッジは、画素の分類結果から分かる。したがって、本実施形態によれば、画像55上のパターン51,52のエッジを検出することなく、画像55上の複数のパターン51,52を層に従って正しく分けることができる画像セグメンテーションが達成できる。
【0032】
図8は、画像セグメンテーションの一実施形態のフローチャートである。
ステップ1では、走査電子顕微鏡1は、積層構造を構成する複数の層内にある複数のパターンの画像55を生成する(図2参照)。処理システム5は、画像55を走査電子顕微鏡1から取得する。
ステップ2では、処理システム5は、画像55の輝度のヒストグラムを作成する(図3参照)。
ステップ3では、処理システム5は、画像55を構成する画素を、輝度のヒストグラムの形状に基づいて分類する。図4に示す例では、処理システム5は、輝度のヒストグラムをその3つの山形状に基づいて3つの領域に分割し、画像55を構成する画素を、3つの領域に従って3つのグループに分類する。
ステップ4では、処理システム5は、画素の分類結果を第1パターン51および第2パターン52の設計データに基づいて補正する(図6および図7参照)。
【0033】
このようにして、処理システム5は、輝度のヒストグラムに基づく分類およびパターンの設計データに基づく補正を実行することにより、画像55を、第1パターン51、第2パターン52、および非パターン領域53に正しく分割することができる。
【0034】
第1パターン51と第2パターン52は、それぞれ別の層に属しているので、第1パターン51と第2パターン52の重心間の距離から、層間のずれ量を求めることができる。具体的には、処理システム5は、第1パターン51と第2パターン52の重心をそれぞれ算定し、これら重心間のずれ量(距離)を算定する。算定されたずれ量は、層間のずれ量である。算定されたずれ量が、設計データ上のずれ量と大きく乖離する場合には、導通不良などの欠陥が存在すると推定される。
【0035】
次に、画像セグメンテーションの他の実施形態について説明する。特に説明しない本実施形態の詳細は、図1乃至図8を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の画像セグメンテーション方法は、画素の分類結果を、隣接する画素間の輝度の類似度に基づいて補正する工程をさらに含む。
【0036】
この輝度の類似度に基づいた補正は、輝度のヒストグラムに基づく上記分類と、上述した設計データに基づく上記補正との間に行われる。処理システム5は、画素の分類結果を、隣接する画素間の輝度の類似度に基づいて補正し、輝度の類似度に基づいて補正された画素の分類結果を、パターンの設計データに基づいてさらに補正するように構成される。
【0037】
隣接する画素間の輝度の類似度は、隣接する2つの画素の輝度の差の逆数として定義される。類似度が大きいということは、隣接する2つの画素の輝度は互いに近いということを意味する。処理システム5は、輝度の類似度をしきい値と比較し、輝度の類似度がしきい値よりも大きい場合は、隣接する2つの画素を同じグループに分類し、輝度の類似度がしきい値よりも小さい場合は、隣接する2つの画素を異なるグループに分類する。
【0038】
図9は、複数の層内にある複数のパターンの画像の他の例を示す模式図である。図9に示す例では、第1の層内の第1パターン71と、第1の層の上にある第2の層内の第2パターン72と、第2の層の上にある第3の層内の第3パターン73と、非パターン領域74が画像75上に現れている。第2パターン72と第3パターン73は、異なる層に形成されているが、画像75上では第2パターン72と第3パターン73の一部は重なっているように見える。
【0039】
処理システム5は、図9に示す画像75を走査電子顕微鏡1から取得し、画像75を構成する輝度のヒストグラムを作成し、輝度のヒストグラムをその特徴的な形状に基づいて複数の区域に分割する。さらに、処理システム5は、画像75を構成する画素を、ヒストグラムの複数の区域に従って複数のグループに分類する。具体的な工程は、図4および図5を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0040】
図10は、ヒストグラムの複数の区域に従って複数のグループに分類された画素の分布を示す図である。図10に示すように、第1パターン71の外縁は、第1グループに分類されるべきであるが、第2グループに分類されている。これは、第1パターン71の外縁の輝度が、第2パターン72の輝度に近いからである。処理システム5は、画像75全体に亘って、隣接する2つの画素間の輝度の類似度を算定し、類似度がしきい値よりも大きい2つの隣接する画素を、同じグループに分類する。図10に示す例では、第1パターン71の外縁の画素間の輝度の類似度は、しきい値よりも大きいので、処理システム5は、第1パターン71の外縁を構成する画素を、同じグループ、すなわち第1グループに分類する。このようにして、処理システム5は、輝度のヒストグラムに基づく分類結果を、輝度の類似度に基づいて補正する。
【0041】
図11は、輝度の類似度に基づいて分類結果が補正された画素の分布を示す図である。上述したように、第1パターン71の全体(外縁を含む)は、第1グループに属すると補正されている。しかしながら、第2パターン72の輝度と第3パターン73の輝度は互いに近いため、第2パターン72と第3パターン73は異なる層に属する異なるパターンであるにもかかわらず、第2パターン72と第3パターン73は同じグループに分類されている。
【0042】
そこで、処理システム5は、第2パターン72と第3パターン73の設計データを用いて、分類結果をさらに補正する。具体的には、処理システム5は、設計データに含まれる第2パターン72と第3パターン73の層情報に基づき、図12に示すように、第2パターン72と第3パターン73を、第2グループおよび第3グループにそれぞれ分類する。このようにして、処理システム5は、輝度のヒストグラムに基づく分類、輝度の類似度に基づく補正、およびパターンの設計データに基づく補正を実行することにより、画像75を、第1パターン71、第2パターン72、第3パターン73、および非パターン領域74に正しく分割することができる。
【0043】
図13は、画像75セグメンテーションの一実施形態のフローチャートである。
ステップ1では、走査電子顕微鏡1は、積層構造を構成する複数の層内にある複数のパターンの画像75を生成する(図2参照)。処理システム5は、画像75を走査電子顕微鏡1から取得する。
ステップ2では、処理システム5は、画像75の輝度のヒストグラムを作成する(図3参照)。
ステップ3では、処理システム5は、画像75を構成する画素を輝度のヒストグラムの形状に基づいて分類する。
ステップ4では、処理システム5は、ステップ3の画素の分類結果を、隣接する画素間の輝度の類似度に基づいて補正する。より具体的には、処理システム5は、画像75を構成する隣接する2つの画素間の輝度の類似度を算定し、類似度がしきい値よりも大きい2つの隣接する画素を、同じグループに分類する(図11参照)。
ステップ5では、処理システム5は、ステップ4の画素の分類結果を、パターンの設計データに基づいて補正する(図12参照)。より具体的には、処理システム5は、ステップ4の画素の分類結果を、パターンの設計データに含まれる層情報(および位置情報)に基づいて、画素が属するグループを補正する。
【0044】
処理システム5は、第1パターン71と第2パターン72と第3パターン73の重心をそれぞれ算定し、第1パターン71と第2パターン72の重心間のずれ量(距離)、第2パターン72と第3パターン73の重心間のずれ量(距離)を算定してもよい。算定されたずれ量は、層間のずれ量である。算定されたずれ量が、設計データ上のずれ量と大きく乖離する場合には、導通不良などの欠陥が存在すると推定される。
【0045】
上述した類似度と比較されるしきい値は複数あってもよい。例えば、CADパターンの中心とエッジとで、異なるしきい値が設けられてもよい。図14は、類似度と比較される複数のしきい値が設けられる一実施形態を説明する模式図であり、画像の輝度のヒストグラムに基づいて分類された画素の分布の一部を表している。
【0046】
図14の例では、第1CADパターンと第2CADパターンは、異なる層に属しているが、第1CADパターンと第2CADパターンの一部が重なり合っている。図14に示す、類似度に基づいて分類された画素の分布では、第2グループに分類されるべき画素のいくつかは、第1グループに分類されている。そこで、このような分類結果を補正するために、2つのCADパターンの境界線L1上に設定された第1しきい値と、境界線L1から離れた線L2上に設定された第2しきい値が設けられる。第1しきい値は第2しきい値よりも大きい。したがって、2つのCADパターンの境界線L1を挟む2つの画素は、別々のグループに分類されやすくなる。
【0047】
CADパターンのエッジからの距離に従って小さくなる複数のしきい値を設けてもよい。図14に示す例では、2つのCADパターンの境界線L1は、第1CADパターンのエッジに相当する。したがって、境界線L1(すなわち、CADパターンのエッジ)から離れた第2しきい値は、境界線L1上に設定される第1しきい値よりも小さい。このようにCADパターンのエッジからの距離に従って小さくなる複数のしきい値を設けることで、CADパターンのエッジ上およびその近傍では、2つの隣接する画素は別々のグループに分類されやすくなる。
【0048】
上述した各実施形態で説明したしきい値は、固定値に限られない。すなわち、しきい値は、画像内の領域によって変化させてもよい。このように可変のしきい値を使用することで、分割されたグループ間の境界線を自然な形にすることができる。
【0049】
一実施形態では、図15に示すように、分割されたグループ間の境界線が、CADパターンのエッジL3に対して垂直な方向に延びる場合は、分割されたグループ間の境界線が、CADパターンのエッジL3と平行になるようにしきい値を設定する。図15に示す例では、分割された2つのグループ間の境界線が、CADパターンのエッジL3に対して垂直に延びる箇所S1,S2,S3が存在する。このような垂直な箇所S1,S2,S3がなくなるように、CADパターンのエッジL3に垂直な方向に隣接する2つの画素間についてのしきい値を小さくする。一方、CADパターンのエッジL3に平行な方向に隣接する2つの画素間についてのしきい値を大きくする。すなわち、しきい値には、CADパターンのエッジL3に垂直な方向に隣接する2つの画素間についての第1のしきい値と、CADパターンのエッジL3に平行な方向に隣接する2つの画素間についての第2のしきい値が含まれ、第1のしきい値を第2のしきい値よりも小さくする。このようにすることで、図15においてCADパターンのエッジL3を越えてはみ出した領域を正しいグループに分類することができる。
【0050】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0051】
W ワークピース
1 走査電子顕微鏡
5 処理システム
5a 記憶装置
5b 処理装置
15 電子銃
16 集束レンズ
17 X偏向器
18 Y偏向器
20 対物レンズ
26 電子検出器
31 ステージ
51 第1パターン
52 第2パターン
53 非パターン領域
55 画像
61,62 CADパターン
71 第1パターン
72 第2パターン
73 第3パターン
74 非パターン領域
75 画像
図1
図2
図3
図4
図5
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