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  • 特開-軽量吊り天井構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104006
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】軽量吊り天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/36 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
E04B9/36 100
E04B9/36 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004733
(22)【出願日】2022-01-15
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定天井となるのを回避するとともに、各種のデザインからなる吊り天井面を実現する。
【解決手段】軽量吊り天井構造10を構成する天井面11を覆う天井化粧材20として、ダブル野縁21とシングル野縁22の組み合わせて所定間隔をあけて取り付けて配列して軽量のルーバー天井12を構成する。ダブル野縁21は、天井面11の長手方向に所定の隣接間隔をとって天井面11全体を覆うように配列する。シングル野縁22は、所定の幾何学形状を構成するように長さを調整し、隣接するダブル野縁21間に配列する。これにより、ダブル野縁21で覆われた天井面11内に所定の幾何学形状が並ぶように形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井躯体から吊持された天井下地材に、天井面を覆う天井化粧材として野縁を所定間隔をあけて取り付けて配列してルーバー天井を構成したことを特徴とする軽量吊り天井構造。
【請求項2】
前記天井化粧材は、ダブル野縁とシングル野縁の組み合わせからなり、前記天井面の長手方向に所定の隣接間隔をとって前記ダブル野縁が前記天井面全体を覆うように配列され、所定の幾何学形状を構成するように長さが調整された前記シングル野縁が、隣接する前記ダブル野縁間に配列されて、前記ダブル野縁で覆われた前記天井面内に所定の幾何学形状が並ぶように形成された請求項1に記載の軽量吊り天井構造。
【請求項3】
前記天井面は、フロア面からの高さが6m以上、水平投影面積が200m2以上の規模からなる請求項1または請求項2に記載の軽量吊り天井構造。
【請求項4】
前記天井面は、前記野縁の配列間隔を調整して、その質量を2.0kg/m2以下としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の軽量吊り天井構造。
【請求項5】
前記天井面は、前記野縁の下面に照らされた光を反射するルーバー光天井であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軽量吊り天井構造。
【請求項6】
前記天井面は、前記天井躯体と前記天井下地材とを暗色に仕上げ、その前面に多数の線状に配列された前記野縁の下面の金属光沢面との間にコントラストをつけたルーバー天井である請求項1または請求項2に記載の軽量吊り天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽量吊り天井構造に係り、特定天井を回避することができる高いデザイン性を実現可能な軽量吊り天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
吊り天井であって、高さ6m超、水平投影面積200m2超、天井面を構成する部材の質量2kg/m2超のいずれにも該当し、日常的に人の立ち入る場所に設けられる天井は建築基準法上「特定天井」に該当する。特定天井は確認申請の対象となり、告示(平成25年国土交通省告示第771号)では(1)仕様ルート、(2)計算ルート、(3)大臣認定ルートの3つの基準が定められ、いずれかの基準をクリアしなければならない。
【0003】
いずれのルートによっても天井下地材の強度を一般的な吊り天井に比べて強固なものとする必要があり、コストが増大し、申請スケジュールも長期化してしまう。このことは一般的なボード等の面材による天井に限らず、ルーバー等による線的な化粧材についても同様である。すなわち、天井面積の算定に当たっては、ルーバーそのものの面積だけではなく、ルーバー間の隙間も含めた面積が200m2を超えると、特定天井の扱いとなる。
【0004】
特定天井を回避するためには、上述した要件から除外する設計とする必要があるが、一般には以下の対策工法がとられている。
(1)吊天井としない工法:本体鉄骨に直接天井材を取り付ける、もしくはぶどう棚鉄骨を設置し、その鉄骨に直に天井材を取り付ける。準構造耐震天井として特定天井の扱いを回避できる。
(2)天井材の質量を2kg/m2以下とする工法:不燃性膜材、不織布パネル、その他軽量の天井ボードを使用する(特許文献1)。
【0005】
特許文献1に開示された軽量吊り天井構造では、天井ボードに0.88kg/m2の無機系不燃断熱発泡板が使用され、吊り天井の単位面積質量は1.87kg/m2となり、2.0kg/m2以下を実現可能なことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3210534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特定天井を回避する方法では、以下のような問題点がある。
(1)準構造耐震天井を構成するぶどう棚鉄骨を構築するため、工事費と工期とが増大する。また、あらかじめ所定形状のぶどう棚鉄骨が工場等で製作されるため、天井のデザイン変更に柔軟に対応しづらい。
(2)膜材の定着構造に制限があるため、デザインのバリエーションに限りがあり、既存施設での使用例も多いので差別化が図れない。工事コストもやはり増大する。特許文献1に記載された軽量吊り天井構造では、通常の天井ボードの施工作業を行った後、天井ボードに塗装する必要があるため、工事コストの増大、工期の長期化のおそれがある。
【0008】
軽量の天井ボードに代えてルーバー天井としてデザインとする場合、一般的なアルミニウム製の押出形材の角パイプがルーバーとして用いられることが多いが、特定天井を回避するための要件のうち、天井材質量が2.0kg/m2以下であることを充足するためには、ルーバー間をかなり広くする必要があり、見上げた際、天井面がほぼスケルトン状態となり、梁等、躯体の一部が露出した陳腐なデザインとなってしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、天井下地材として使用される野縁をそのまま天井化粧材として用い、天井の軽量化を図り、特定天井としての取り扱いを回避させるとともに、異なる幅の野縁を、所定の取付けピッチ、配列順を調整して組み合わせて各種のデザインからなる天井面を実現させることができる軽量吊り天井構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、天井躯体から吊持された天井下地材に、天井面を覆う天井化粧材として野縁を所定間隔をあけて取り付けて配列してルーバー天井を構成したことを特徴とする。
【0011】
前記天井化粧材は、ダブル野縁とシングル野縁の組み合わせからなり、前記天井面の長手方向に所定の隣接間隔をとって前記ダブル野縁が前記天井面全体を覆うように配列され、所定の幾何学形状を構成するように長さが調整された前記シングル野縁が、隣接する前記ダブル野縁間に配列され、前記ダブル野縁で覆われた前記天井面内に所定の幾何学形状が並ぶように形成されることが好ましい。
【0012】
前記天井面は、フロア面からの高さが6m以上、水平投影面積が200m2以上の規模からなることが好ましい。
【0013】
前記天井面は、前記野縁の配列間隔を調整して、その質量を2.0kg/m2以下とすることが好ましい。
【0014】
前記天井面は、前記野縁の下面に照らされた光を反射するルーバー光天井であることが好ましい。
【0015】
前記天井面は、前記天井躯体と前記天井下地材とを暗色に仕上げ、その前面に多数の線状に配列された前記野縁の下面の金属光沢面との間にコントラストをつけたルーバー天井であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軽量吊り天井構造を、上述した構成とすることで、軽量であるため特定天井を回避することが可能であって、大地震時の天井材の落下の恐れも少なく、天井面のデザイン性を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の軽量吊り天井構造の一実施形態としての野縁の配置例を示した見上げ図。
図2】建物内の吹き抜け部に設けられた図1に示した軽量吊り天井構造と吹き抜け部の一部を模式的に示したパース図。
図3図2に示した軽量吊り天井構造の見上げ図。
図4図3に示した四角枠内を拡大して示した部分見上げ図。
図5図1に示した各野縁と、各野縁を保持する野縁受け部材の配置例を合わせて示した天井面伏図。
図6図4に示した平行四辺形枠内の野縁の吊り下げ保持状況を拡大して示した部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の軽量吊り天井構造の一実施形態として、添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、図2に示した建物内に設けられた1階から3階まで空間が広がる吹き抜け部1の天井面11として施工された軽量吊り天井構造10が構成される天井面11を真下(吹き抜け部1の1階フロア中央)から見た見上げ図である。この例で示した建物はショッピングセンターとして建設されており、建物の平面中心位置で約115°の折れ角をなして2方向に店舗棟2が延びる平面形状からなり、その建物の折れ曲がり部分に吹き抜け部1が配置されている。図2に示したように、2方向に延びる店舗棟2の動線が交差する吹き抜け部1は、1階フロアが広場になっている。また、吹き抜け部1を囲むように各階フロアには手摺り3が配置され、各フロアにある店舗を行き来する客が吹き抜け空間を臨んで周回可能な回廊になっている。吹き抜け部1の一面には、1階フロアから天井部分まで立設された下地鉄骨に支持された大型のデジタルサイネージ4が備えられ、その背面側に各フロア間の昇降手段としてのエスカレータ5が備えられている(図2)。デジタルサイネージ4に映し出される映像は、1階フロアからと吹き抜け部1に向く各階の手摺り越しに観ることができる。
【0020】
この吹き抜け部1の天井形状は、図1に示したように扁平な略六角形状からなり、水平投影面積は200m2を越え、凸部が形成された中央位置の一辺の一部に、2階フロアレベルから3階フロアレベルにわたる大型画面を有するデジタルサイネージ4が設置されている(図2)。図1には、天井面11とデジタルサイネージ4の位置関係の理解のために、デジタルサイネージ4と、デジタルサイネージ4を支持する下地鉄骨の設置位置が破線で描かれている。
【0021】
この吹き抜け部1の天井面11には、本発明の軽量吊り天井構造10の一実施形態としてのルーバー天井12が施工されている。ルーバー天井12の天井面11を構成する天井化粧材20として、天井面11の長手方向に沿って天井面11のほぼ全面を覆うダブル野縁21と、ルーバー天井12のデザイン性を高める所定の幾何学形状を構成するように所定の長さに切り揃えられて配列されたシングル野縁22とが用いられている。
【0022】
ルーバー天井12は、図1に示したように、扁平な略六角形状をなすように区切られた天井範囲全体にわたり、長手方向に沿って等しい配置間隔(@300mm)にダブル野縁21が配列されている。さらに隣り合って配置されたダブル野縁21間の中間位置に所定長さのシングル野縁22が配置されている。すなわちシングル野縁22の配置された箇所では、ダブル野縁21とシングル野縁22との配置(隣接)間隔は150mmとなっている。
【0023】
本実施形態で用いられている野縁はJIS19形のCW(ダブル野縁)、CS(シングル野縁22)と称呼される板厚0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板の既製品部材からなり、ダブル野縁21、シングル野縁22のウエブ面を下方に向けて天井化粧材20として用いられている。また、シングル野縁22は、天井面11の質量が2.0kg/m2以下となるように、天井面11全面に配列されたダブル野縁21と組み合わせて配列されている。これにより、このルーバー天井12が特定天井としての取り扱いとなることを回避することができる。
【0024】
本実施形態のルーバー天井12は、天井面11のほぼ全面にわたって配列されたダブル野縁21を背景として、隣り合うダブル野縁21の間に所定の長さのシングル野縁22によって天井面11に所定の幾何学形状が形成されるようにデザインされている。たとえば、本実施形態では、図1に示したように、シングル野縁22は、まず天井面11のほぼ中央位置でデジタルサイネージ4の設置位置側を底辺とする底辺約11m、高さ約10mの大きな略二等辺三角形を表すように配置されている。さらに細長い天井面11全体の意匠がこの略二等辺三角形部12Aを中心として対称形状となるように、略二等辺三角形部12Aの斜辺12Aaに相当する位置から天井面11の長手方向の両端にかけて、略二等辺三角形部12Aの斜辺12Aaと平行な2辺12Ba,12Bbを有する略台形形状部12Bを形成するように片側に2カ所設けられている。寸法的には、シングル野縁22は、略二等辺三角形部12Aの斜辺12Aaに相当する位置から約5.0mの離れの位置に天井長手方向の1辺の長さが約3.0mの略台形形状部12Bを形成するように、天井面11の端部に沿って天井長手方向の1辺の長さが約1.2mの略台形形状部12Cを形成するように配列されている。このような各幾何学形状(12A,12B,12C)を含むようにデザインされたルーバー天井12(図1)の天井質量は1.97kg/m2で、2.0kg/m2以下となり、特定天井としての扱いが回避されている。
【0025】
図3は、図1に示したようなデザインで配列されたダブル野縁21とシングル野縁22とが、たとえば図2に示したように、建物内で実際にルーバー天井12として施工された例を示した見上げ図である。図4は、図3中の四角枠(IV)を拡大して示した見上げ図である。図3図4に示した施工例では、天井面11として区画された範囲の上階スラブ下面、梁、後述する天井下地材30(後述する吊り元金具、吊りボルト、ハンガー、クリップ、野縁受けの各部材で構成される。)等の全体が、一例として濃い焦げ茶色の暗色に塗装され、天井下地材30としての野縁受け31(図5図6)にダブル野縁21とシングル野縁22が所定間隔をあけて取り付けられている。ダブル野縁21とシングル野縁22とは、無塗装の金属素材の溶融亜鉛めっき鋼板からなるため、図2図4に示したように、暗色の背景に対して、前面に位置する複数本の線状をなす金属光沢の各野縁の下面が高いコントラストで並び、さらにダブル野縁21の配列の中にシングル野縁22を並べることで形成された略二等辺三角形部12Aや略台形形状部12B,12Cの幾何学形状が映える天井面11が得られる。シングル野縁21で形成する幾何学形状は、上述した略二等辺三角形の他、台形、長方形、正方形、円形、長円形、楕円形、ランダムに変化する形状等、様々な形状とすることができることは言うまでもない。
【0026】
また、本実施形態では、略二等辺三角形部12Aの底辺に当たる部分の下方にデジタルサイネージ4の大型画面が位置するため、デジタルサイネージ4の画面に映し出される映像の様々な色合いが天井面11を構成する金属面の各野縁で反射するため、ダブル野縁21とシングル野縁22で構成された略二等辺三角形部12Aをなす天井面11がカラフルに彩られる反射光を利用したルーバー光天井として機能するという効果もある。
【0027】
図5は、図1に示した天井面11を構成するダブル野縁21とシングル野縁22と、各野縁を支持する野縁受け31の配置例を示した天井面11伏図である。各野縁受け31は図1に示した略二等辺三角形部12Aの斜辺12Aaと平行をなして、各ダブル野縁21とシングル野縁22とを均等なバランスで保持するように十分な本数が配置された、板厚1.2mmの溶融亜鉛めっき鋼板をC型鋼として加工した既製品部材からなり、後述する吊りボルト32を介して上階スラブ面(図示せず)から吊持されている。
【0028】
図6は、図5中、平行四辺形の枠(VI)で囲んだ部位でのダブル野縁21とシングル野縁22の吊り下げ状態を模式的に示した部分斜視図である。同図に示したように、揃った所定長さからなるシングル野縁22は、天井面11の端部において、斜めになった天井面11端部の辺と平行な辺を有する略台形形状部を構成するように、公知のクリップ33を介して所定ボルト径からなる全ネジの吊りボルト32を介して上階スラブに吊持された2本の野縁受け31に堅固に固定保持されている。天井面11の長手方向に延在するタブル野縁もシングル野縁22と同様にこの野縁受け31に公知のクリップ34を介して固定保持されている。これらダブル野縁21、シングル野縁22及びこれらを支持する各部材は、通常の天井下地材として用いられる一般的な部材であるため、通常の技術を有する内装業者のみで施工が完結することができる。このため、工事費のコストダウン、工期短縮も果たせる。また、野縁のサイズ、種類を変えて配列することにより、様々な斬新なデザイン展開も可能になる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 吹き抜け部
4 デジタルサイネージ
10 軽量吊り天井構造
11 天井面
12 ルーバー天井
20 天井化粧材
21 ダブル野縁
22 シングル野縁
30 天井下地材
31 野縁受け
32 吊りボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6