IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社狭山金型製作所の特許一覧

<>
  • 特開-注射針 図1
  • 特開-注射針 図2
  • 特開-注射針 図3
  • 特開-注射針 図4
  • 特開-注射針 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010404
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】注射針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A61M5/158 500F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114520
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】521082341
【氏名又は名称】株式会社狭山金型製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100189946
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 誠
(72)【発明者】
【氏名】大場 治
(72)【発明者】
【氏名】宮城 典雄
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF06
4C066KK02
4C066KK04
(57)【要約】
【課題】薬剤容器の先端部に装着して使用される注射針として使用することができる樹脂製の注射針を提供する。
【解決手段】注射針1は、樹脂製であって、使用時に人体に刺入される第1針管100と、薬剤容器に接続される樹脂製の基台部300と、を備える注射針であって、第1針管100と基台部300とは、それぞれが別部材によって構成されており、第1針管100は、基台部300に直接又は第2針管200を介して間接的に接着固定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製であって、使用時に人体に刺入される第1針管部と、
薬剤容器に接続される樹脂製の基台部と、
を備える注射針であって、
前記第1針管部と前記基台部とは、それぞれが別部材によって構成されており、
前記第1針管部は、前記基台部に間接的に接着固定されていること、
を特徴とする注射針。
【請求項2】
請求項1に記載の注射針において、
前記第1針管部の先端側とは反対側に突出しており、薬剤容器に刺入される樹脂製の第2針管部をさらに備えること、
を特徴とする注射針。
【請求項3】
請求項2に記載の注射針において、
前記第2針管部は、前記第1針管部及び前記基台部とは別部材によって構成されており、
前記第2針管部は、前記基台部に直接、接着固定されており、
前記第1針管部は、前記第2針管部に直接、接着固定されていること、
を特徴とする注射針。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の注射針において、
前記第1針管部は、PEEK樹脂により構成されていること、
を特徴とする注射針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の針管を用いる注射針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂製の注射針が提案されている(例えば、特許文献1)。樹脂製の注射針は、大量生産が可能であることから、安価に提供できる可能性がある。また、樹脂製の注射針は、針形状の設計において自由度が高く、例えば、刺入時の痛みを低減できる形状とすることも可能である。
【0003】
また、特許文献2には、プレフィルドシリンジ等の薬剤容器の先端部に、着脱自在に装着して使用される注射針が記載されている。
特許文献2に記載されている注射針は、例えば、インスリン等の投与に用いられることから、患者が自ら使用することが想定されている。したがって、このような注射針においては、刺入時の痛みが少ないことが求められる。また、毎日使用されることから、安価に提供されることが望ましい。したがって、プレフィルドシリンジ等の薬剤容器の先端部に装着して使用される注射針を樹脂製とすることができれば、刺入時の痛みを低減でき、かつ、安価な注射針とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6411944号公報
【特許文献2】国際公開第2013/115184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載されている注射針は、生体に穿刺して使用される針先の反対側に、薬剤容器の先端部に設けられている各種天然ゴム等のエラストマーからなる栓体を刺通して使用される針先を備えている。したがって、特許文献1に記載されている樹脂製の注射針をそのまま薬剤容器の先端部に装着して使用される注射針に適用することができなかった。
【0006】
本発明の課題は、薬剤容器の先端部に装着して使用される注射針として使用することができる樹脂製の注射針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
第1の発明は、樹脂製であって、使用時に人体に刺入される第1針管部(100)と、薬剤容器に接続される樹脂製の基台部(300)と、を備える注射針(1)であって、前記第1針管部(100)と前記基台部(300)とは、それぞれが別部材によって構成されており、前記第1針管部(100)は、前記基台部(300)に間接的に接着固定されていること、を特徴とする注射針(1)である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に記載の注射針(1)において、前記第1針管部(100)の先端側とは反対側に突出しており、薬剤容器に刺入される樹脂製の第2針管部(200)をさらに備えること、を特徴とする注射針(1)である。
【0010】
第3の発明は、第2の発明に記載の注射針(1)において、前記第2針管部(200)は、前記第1針管部(100)及び前記基台部(300)とは別部材によって構成されており、前記第2針管部(200)は、前記基台部(300)に直接、接着固定されており、前記第1針管部(100)は、前記第2針管部(200)に直接、接着固定されていること、を特徴とする注射針(1)である。
【0011】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかに記載の注射針(1)において、前記第1針管部(100)は、PEEK樹脂により構成されていること、を特徴とする注射針(1)である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薬剤容器の先端部に装着して使用される注射針として使用することができる樹脂製の注射針を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による注射針1の第1実施形態を第1針管100の先端側から示す図である。
図2】注射針1を図1中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。
図3】第1針管100を図1中の矢印B-Bの位置で切断した断面図である。
図4】第1実施形態の第2針管200を示す断面図である。
図5】第1実施形態の基台部300を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明による注射針1の第1実施形態を第1針管100の先端側から示す図である。
図2は、注射針1を図1中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。
なお、図1から図2を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0016】
本実施形態の注射針1は、不図示のプレフィルドシリンジ等の薬剤容器(薬液容器)の先端部に装着して使用される注射針であり、例えば、インスリン注射等に好適に用いられる医療用注入システムの注射針として用いることができる。以下の説明でもインスリン注射等に好適に用いられる医療用注入システムの注射針の例を例示して説明するが、用途は、これに限らず、動物用でもよいし、生物以外を対象とした注射針であってもよい。
【0017】
第1実施形態の注射針1は、第1針管(第1針管部)100と、第2針管(第2針管部)200と、基台部300とがそれぞれ別部材として設けられており、これらが接着固定されることにより、注射針1を構成している。第1実施形態では、第1針管100は、第2針管200を介して間接的に基台部300に接着固定されている。
【0018】
図3は、第1針管100を図1中の矢印B-Bの位置で切断した断面図である。図3の断面は、図2の断面の向きとは90°切断して見る向きが異なっている。
【0019】
本実施形態の第1針管100は、樹脂を射出成型することにより作製される樹脂製の針管である。第1針管100の作製に用いる樹脂は、用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、ポリカーボネート樹脂や、ポリプロピレン樹脂等を用いることができる。特に、人体に使用する用途では、第1針管100は、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)を用いることが望ましく、本実施形態の第1針管100は、PEEK樹脂により成形されている。PEEK樹脂は、機械的強度に優れ、また、耐薬品性及び生体適合性も良好であり、樹脂製の針管の材料として好適である。
【0020】
本実施形態の第1針管100は、根本部111と、第1錐状部112と、第2錐状部113と、第1直線状部114と、第3錐状部115と、第2直線状部116と、先端部117とが根本側からこの順で設けられている。
【0021】
根本部111は、後述する第2針管200と接続される部位である。根本部111は、端部側に向かって若干細くなるように形成されており、第2針管200との嵌合が容易となる形状となっている。
【0022】
第1錐状部112は、根本部111側が根本部111よりも広く、先端部117側へ向けて徐々に外径が細くなる円錐面に形成された部分である。第1錐状部112の根本部111側が根本部111よりも広くなっていることにより、第2針管200との相対的な位置が適切な位置に規制される。
【0023】
第2錐状部113は、第1錐状部112と第1直線状部114との間にあって、先端部117側へ向けて徐々に外径が細くなる錐状の部分である。第2錐状部113は、第1錐状部112の円錐面とは異なり、曲線を回転させた回転体形状の錐体となっている。なお、図1等では、理解を容易にするために、第1錐状部112と第2錐状部113との境界に線を描いているが、実際にはこの境界は、明確には確認できない場合がある。他の境界についても同様である。
【0024】
第1直線状部114は、円筒状に構成された部分である。
【0025】
第3錐状部115は、第1直線状部114と第2直線状部116との間にあって、先端部117側へ向けて徐々に外径が細くなる円錐状の部分である。
【0026】
第2直線状部116は、円筒状に構成された部分である。本実施形態では、第2直線状部116の外径は、0.24mmと非常に細くなっている。
【0027】
先端部117は、全体としてみると略円錐状に形成されている。また、先端部117と第2直線状部116とに亘って、2つの対向する位置に、開口部117bが設けられている。この開口部117bから、薬剤等が放出される。また、先端部117の最先端は、丸みを帯びて構成されており、本実施形態では、半径0.02mmの球面となっている。また、先端の曲面部は、先端部117の円錐面に滑らかに繋がって形成されている。本実施形態の第1針管100は、最先端が上述のように球面となっているので、従来の先端が鋭利に尖っている針管と比べて、刺入時の人体等への損傷を低減することができる。
従来の先端が鋭利に尖っている針管では、いくら先端を細くしたところで、鋭利な先端が細胞を切り裂くことが避けられず、人体等の負担が大きかった。これに対して、本実施形態の第1針管100は、最先端が上述のように球面となっており、かつ、非常に微細な球面である。したがって、第1針管100は、細胞を切り裂くのではなく押しのけるようにして人体等に刺入される。したがって、人体等への損傷の度合いが低減され、傷口の治癒も早くなることが期待できる。さらに、第1針管100の刺入時の痛みも低減する効果が期待できる。
【0028】
第1針管100の内部には、薬剤等が通るための流路120が設けられている。流路120には、根本部111側から、第1直線流路121と、第1錘状流路122と、第2直線流路123と、第2錘状流路124と、第3直線流路125とがこの順で設けられている。
【0029】
第1直線流路121は、根本部111の内部に設けられており、円柱形状の空洞となっている。本実施形態では、第1直線流路121の内径は、1mmである。
【0030】
第1錘状流路122は、第1錐状部112と第2錐状部113の一部との内部に設けられており、根本部111側が大きい円錐台形状の空洞となっている。
【0031】
第2直線流路123は、第2錐状部113の一部と、第1直線状部114との内部に設けられており、円柱形状の空洞となっている。本実施形態では、第2直線流路123の内径は、0.1mmである。
【0032】
第2錘状流路124は、第3錐状部115の内部に設けられており、根本部111側が大きい円錐台形状の空洞となっている。
【0033】
第3直線流路125は、第2直線状部116と先端部117の一部との内部に設けられており、円柱形状の空洞となっている。本実施形態の第3直線流路125の内径は、0.07mmである。
【0034】
第2針管200は、第1針管100及び基台部300に接続されており、第1針管100の先端側とは反対側に突出している。第2針管200は、樹脂を射出成型することにより作製される樹脂製の針管である。第2針管200の作製に用いる樹脂は、用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、ポリカーボネート樹脂や、ポリプロピレン樹脂等を用いることができる。第2針管200は、人体等へ刺入されるものではないので、PEEK樹脂を用いなくてもよい。PEEK樹脂は、一般的に高価であることから、第2針管200の樹脂をPEEK樹脂以外のものとすることにより、注射針1の価格を抑えることができる。
【0035】
図4は、第1実施形態の第2針管200を示す断面図である。
本実施形態の第2針管200は、針管接続部201と、基台部接続部202と、管部203と、第2先端部204と、根本側流路205と、錘状流路206と、先端側流路207と、開口部208とを備えている。
【0036】
針管接続部201は、第1針管100の根本部111が挿入されて嵌合する部位であり、嵌合孔201aを有した略円筒状に形成されている。嵌合孔201a内に第1針管100の根本部111が挿入されて嵌合部となる。針管接続部201と根本部111との嵌合部は、液漏れを防止するために接着剤によって隙間なく接合されている。
第1針管100と第2針管200とを接着する接着剤は、例えば、株式会社スリーボンド社製 エポキシ配合樹脂 TB2202C、株式会社スリーボンド社製 紫外線硬化樹脂 TB3094F、又は、TB3094G等を例示することができる。
【0037】
基台部接続部202は、基台部300の嵌合孔301に嵌合して基台部300と接続されている。基台部接続部202と嵌合孔301との嵌合部についても、液漏れを防止するために接着剤によって隙間なく接合されている。第2針管200と基台部300との接着に用いる接着剤についても、上記第1針管100と第2針管200とを接着する接着剤と同様なものを利用することができる。
【0038】
管部203は、直線状に延在する管状の部位であり、使用時には、不図示の薬剤容器の先端部に設けられている各種天然ゴム等のエラストマーからなる栓体を刺通して薬剤中に挿入され使用される。
【0039】
第2先端部204は、管部203の先端に設けられており、略円錐形状に構成されている。第2先端部204は、使用時には薬剤へ刺入される。
【0040】
根本側流路205は、針管接続部201に隣接しており、第1針管100の第1直線流路121と連通している。本実施形態では、根本側流路205の内径が第1直線流路121の内径と同じ内径としたが、これらは異なる内径となっていてもよい。
【0041】
錘状流路206は、基台部接続部202内の根本側流路205と先端側流路207との間に配置され、根本側流路205側が大きい円錐台形状の空洞となっている。
【0042】
先端側流路207は、管部203内に設けられており、円柱形状の空洞となっている。
【0043】
開口部208は、管部203の第2先端部204に近い位置に配置されており、管部203の側方に向けて開口している。使用時には、この開口部208から薬剤が第2針管200内の流路に注入される。
【0044】
図5は、第1実施形態の基台部300を示す断面図である。
基台部300は、不図示の薬剤カートリッジ(薬剤容器)に装着される部位である。基台部300は、樹脂を射出成型することにより作製される樹脂製の接続部材である。基台部300の作製に用いる樹脂は、用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、ポリカーボネート樹脂や、ポリプロピレン樹脂等を用いることができる。
基台部300は、嵌合孔301と、ねじ部302とを備えており、一端側が開放され他端側が閉鎖された略円筒形状に構成されている。
嵌合孔301は、閉鎖された他端側の中央に開口しており、この嵌合孔301には、第2針管200の基台部接続部202が嵌合して接着固定されている。
ねじ部302は、不図示の薬剤カートリッジのねじ部に螺合することができ、このねじ部302を用いて注射針1が薬剤カートリッジに固定されて、使用可能な状態となる。ねじ部302が薬剤カートリッジのねじ部に螺合するときに、第2針管200の第2先端部204が薬剤カートリッジの薬剤へ向けて刺入される。
【0045】
以上説明したように、第1実施形態によれば、樹脂製の第1針管100と第2針管200と基台部300とを嵌合した状態で接着固定する構成とした。これにより、簡単、かつ、確実にこれらが互いに直接固定され、人体に刺入される第1針管100と薬剤容器に刺入される第2針管200とを備えた注射針1を安価に提供できる。また、第1針管100は、先端が微細な球面により構成されているので、人体等への損傷の度合いが低減され、第1針管100の刺入時の痛みも低減する効果が期待できる。
【0046】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0047】
(1)各実施形態において、インスリン注射等に好適に用いられる医療用注入システムの注射針であって、薬剤カートリッジにねじ部により接続して用いられる例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、本発明の注射針は、一般的なシリンジを用いる注射器に用いられる注射針として用いてもよい。
【0048】
(2)各実施形態において、第1針管100の開口部117bを2箇所設けた例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、開口部は、3箇所でもよいし、4箇所以上設けてもよい。また、開口部を設ける位置も、先端部に限らず、先端部と根本部との間の任意の位置に設けてもよい。
【0049】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0050】
1 注射針
100 第1針管
111 根本部
112 第1錐状部
113 第2錐状部
114 第1直線状部
115 第3錐状部
116 第2直線状部
117 先端部
117b 開口部
120 流路
121 第1直線流路
122 第1錘状流路
123 第2直線流路
124 第2錘状流路
125 第3直線流路
200 第2針管
201 針管接続部
201a 嵌合孔
202 基台部接続部
203 管部
204 第2先端部
205 根本側流路
206 錘状流路
207 先端側流路
208 開口部
300 基台部
301 嵌合孔
302 ねじ部
図1
図2
図3
図4
図5