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▶ 槌屋ティスコ株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104043
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】清掃体および回転清掃体
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/04 20060101AFI20230721BHJP
   A46B 13/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A47L9/04 A
A46B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004793
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】596024426
【氏名又は名称】槌屋ティスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】大原 康之
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】太田 敏彰
【テーマコード(参考)】
3B061
3B202
【Fターム(参考)】
3B061AA06
3B061AD05
3B061AD13
3B202BA03
3B202BC01
3B202BD05
3B202BE09
3B202EA01
3B202EB12
3B202ED08
3B202EE01
3B202EF10
3B202EG11
3B202GA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被清掃体に接触した際の騒音を抑制するとともに、繊維状の被清掃物の巻き付きを抑制することができる清掃体および回転清掃体を提供する。
【解決手段】基台110と、基台110の長手方向に糸がアーチ状に連続して繋がって延び、アーチの表面と裏面で互いに異なる方向に斜めに傾いた状態で、交差して重なるように起毛したブラシ120と、を備え、ブラシ120は、糸が折り返すようにジグザグに編まれた状態で短手方向中央部分に沿って二つ折りされるとともに、折り返された両端部を長手方向にずらした状態で接合することでアーチを形成し、隙間がないように重なり合っている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台の長手方向に糸がアーチ状に連続して繋がって延び、前記アーチの表面と裏面で互いに異なる方向に斜めに傾いた状態で、交差して重なるように起毛したブラシと、を備えた、
ことを特徴とする清掃体。
【請求項2】
前記ブラシは、前記糸が折り返すようにジグザグに編まれた状態で短手方向中央部分に沿って二つ折りされるとともに、折り返された両端部を長手方向にずらした状態で接合することで前記アーチを形成し、隙間がないように重なり合っている、
ことを特徴とする請求項1に記載の清掃体。
【請求項3】
前記アーチが斜めに傾いている角度は、前記清掃体の長手方向に対して15度~75度の範囲である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃体。
【請求項4】
前記ブラシの基端部は、長手方向において、前記基台に挟持され前記基台に縫着して固定されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の清掃体。
【請求項5】
外周面に溝部が形成された回転体と、
前記溝部に前記基台が嵌め合わされて取り付けられた請求項1ないし4のいずれか1項に記載の清掃体と、を備えた、
ことを特徴とする回転清掃体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃体および回転清掃体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のブラシ糸を並列した状態で保持糸によって保持した帯状の毛羽体と、毛羽体の長手方向に延びて前記毛羽体に重ねられる帯状体と、毛羽体の長手方向に延び、毛羽体における長手方向と直交する幅方向の一端部及び帯状体における幅方向の一端部を一緒に挟持した状態で接合される一対の挟持部を有した基材と、を備えるブラシが知られている(特許文献1)。
【0003】
掃除機本体と、掃除機本体に接続される手元グリップ部を有するホースと、ホースに一端が着脱自在に接続される延長パイプと、延長パイプ先端部の床用連結部と着脱自在に接続される床用吸込具とを備える電気掃除機において、モータで回転される、ブラシを内蔵した床用吸込具の回転ブラシに取り付けた起毛の根元から先端までの一部領域を溶着し、起毛に横のつながりを持たせた電気掃除機の床用吸込具も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-13728号公報
【特許文献2】特開2009-131305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被清掃体に接触した際の騒音を抑制するとともに、繊維状の被清掃物の巻き付きを抑制することができる清掃体および回転清掃体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の清掃体は、
基台と、
前記基台の長手方向に糸がアーチ状に連続して繋がって延び、前記アーチの表面と裏面で互いに異なる方向に斜めに傾いた状態で、交差して重なるように起毛したブラシと、を備えた、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃体において、
前記ブラシは、前記糸が折り返すようにジグザグに編まれた状態で短手方向中央部分に沿って二つ折りされるとともに、折り返された両端部を長手方向にずらした状態で接合することで前記アーチを形成し、隙間がないように重なり合っている、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の清掃体において、
前記アーチが斜めに傾いている角度は、前記清掃体の長手方向に対して15度~75度の範囲である、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の清掃体において、
前記ブラシの基端部は、長手方向において、前記基台に挟持され前記基台に縫着して固定されている、
ことを特徴とする。
【0010】
前記課題を解決するために、請求項5記載の回転清掃体は、
外周面に溝部が形成された回転体と、
前記溝部に前記基台が嵌め合わされて取り付けられた請求項1ないし4のいずれか1項に記載の清掃体と、を備えた、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、被清掃体に接触した際の騒音を抑制するとともに、繊維状の被清掃物の巻き付きを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ブラシへの繊維状の被清掃物の侵入を抑制するとともに被清掃物の掻き取り力を向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、掻き取った塵埃を清掃体の長手方向に移動させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、糸の抜けを抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、清掃体の機能を被清掃体に対して発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る回転清掃体が取り付けられる電気掃除機の掃除機ヘッドを示す底面模式図である。
図2】電気掃除機の掃除機ヘッドの使用状態を示す断面模式図である。
図3】回転清掃体を示す斜視図である。
図4】回転清掃体の拡大断面模式図である。
図5】(a)は清掃体の一部断面を示す斜視図、(b)は清掃体の一部側面を示す側面図である。
図6】清掃体のブラシの製造過程を示す平面模式図である。
図7】実施例の清掃体及び比較例の清掃体の構成を示す図である。
図8】毛絡み試験の結果を示す図である。
図9】ピックアップ試験の結果を示す図である。
図10】騒音試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0018】
(1)電気掃除機の吸い込みヘッド
図1は本実施形態に係る回転清掃体20が取り付けられる電気掃除機の掃除機ヘッド10を示す底面模式図、図2は電気掃除機の掃除機ヘッド10の使用状態を示す断面模式図、図3は回転清掃体20を示す斜視図、図4は回転清掃体20の拡大断面模式図である。
以下、図面を参照しながら掃除機ヘッド及び回転清掃体について説明する。
【0019】
(1)電気掃除機の吸い込みヘッド
図1は本実施形態に係る回転清掃体20が取り付けられる電気掃除機の掃除機ヘッド10を示す底面模式図、図2は電気掃除機の掃除機ヘッド10の使用状態を示す断面模式図、図3は回転清掃体20を示す斜視図、図4は回転清掃体20の拡大断面模式図である。
以下、図面を参照しながら掃除機ヘッド及び回転清掃体について説明する。
【0020】
(1.1)吸い込みヘッドの全体構成
図1及び図2に示すように、床面FL上の毛や塵埃などのごみを吸い込むための電気掃除機の掃除機ヘッド10は、全体の形状が略T字形のケース11と、ケース11の後端部に回転可能に接続された接続パイプ12を備えている。ケース11の底壁における前端寄り位置には左右方向に長い矩形状の吸込口13が形成されている。
【0021】
ケース11の内底面上には矩形枠状をなす仕切板14が吸込口13を囲むように立設され、仕切板14を構成する後壁14aの中央部には後壁14aを貫通するようにエア吸引口15が形成されている。ケース11の左内側面にはモーター軸受16が設けられ、モーター軸受16はケース11内における仕切板14の後方に設けられたモーター17から延びるモーター軸17aの先端を回転可能に支持している。
【0022】
仕切板14の左右両側壁14bにはそれぞれ回転支持体18が設けられ、回転支持体18はケース11の左右両内側面に設けられた軸受19によってそれぞれ回転可能に支持されている。仕切板14の内側には回転軸線c1が左右方向に延びる回転清掃体20が収容され、回転清掃体20の両端部は回転支持体18によってそれぞれ支持されている。
【0023】
左側の回転支持体18と、モーター軸17aに取り付けられたプーリー17bとには、タイミングベルトTBが巻き掛けられ、モーター17が駆動されると、その回転駆動力が、モーター軸17a、プーリー17b、タイミングベルトTB、及び左側の回転支持体18を介して回転清掃体20に伝達される。
【0024】
(1.2)回転清掃体の構成
図3及び図4に示すように、回転清掃体20は、回転体21と、回転体21の長手方向(軸方向)に設けられた4つの清掃体100とを備えている。
回転体21は、周囲に凹溝部22が等間隔で形成された略丸棒状の軸体であり、それぞれの凹溝部22は周方向に約180度捻って回転体21の一方の端面から他方の端面まで長手方向に延在して形成されている。
【0025】
清掃体100は、凹溝部22に回転体21の一方の端面側からその基台110が嵌め込まれて取り付けられている。回転清掃体20において、清掃体100は、ブラシ120が回転体21の回転(図中 矢印Rで示す)にともなって、被清掃体である床面FLに接触して繊維状ゴミや塵埃の掻き取り機能をブラシ120に発揮するとともに、床面FLに接触した際の騒音の増大を抑制している。
【0026】
(2)清掃体
図5(a)は清掃体100の一部断面を示す斜視図、(b)は清掃体100の一部側面を示す側面図、図6は清掃体100のブラシ120の製造過程を示す平面模式図である。以下、図面を参照しながら清掃体100の構成と製造方法について説明する。
【0027】
図5に示すように、清掃体100は、基台110と、基台110の長手方向(X方向)に糸121がアーチ状に連続して繋がって延び、アーチの表面と裏面で互いに異なる方向に斜めに傾いた状態で交差して重なるように起毛したブラシ120とを備える。ブラシ120は、基端部が長手方向において、基台110に挟持され基台110に縫着して固定されている。
【0028】
(2.1)基台
基台110は、合成樹脂によって構成され、回転体21の凹溝部22(図4参照)に嵌め込んで固定するための矩形断面を有する係止部111と、係止部111上に形成されたL字板状の一対の挟持部112とを備えている。
一対の挟持部112は、係止部111上に係止部111の幅方向において対向するように立設されている。
一対の挟持部112の先端部112aは、基端部に対して直角に屈曲されて係止部111と平行に延びている。そして、一対の挟持部112における基端部112bは、ブラシ120における幅方向Yの一端部を挟持した状態で、1本の縫製糸113によりブラシ120に縫着されている。
【0029】
基台110は、熱可塑性の合成樹脂を押出成形することによって形成されている。熱可塑性の合成樹脂としては、JIS K7215に準じた測定によるヂュロメータ硬さがD40~D50の可撓性を有するオレフィン系エラストマーが挙げられる。基台110は、可撓性を有しているために、フレキシブルに曲げることができ、図3に示すように、清掃体100を回転体21の周方向に約180度捻って形成された凹溝部22に挿入して容易に取り付けることができる。
【0030】
係止部111は、基台110の長手方向と交差(直交)する方向の幅が、回転体21の凹溝部22の開口部22aの幅よりも若干大きくなっている。そして、回転体21に清掃体100を取り付ける場合には、ブラシ120が凹溝部22の開口部22aから外側へ突出するように、回転体21の一端部から各凹溝部22内に基台110をスライドさせながら挿入することで、基台110が各凹溝部22に沿って螺旋状に捻れた状態で挿入されて、清掃体100の回転体21に対する取り付けが完了する。
【0031】
(2.2)ブラシ
ブラシ120は、図5(b)に示すように、糸121がアーチ状に連続して繋がって延び、アーチの表面120Aと裏面120Bで互いに異なる方向(図5(b)において矢印R1、R2で示す)に斜めに傾いた状態で、交差して重なるように起毛している。アーチが斜めに傾いている角度Θは、清掃体100の長手方向に対して15度~75度の範囲である。アーチが斜めに傾いて交差して重なっていることで、糸間の間隙が少なく、掻き取った繊維状の被清掃物のブラシ120内への侵入を抑制し、ブラシ120への巻き付きを抑制することができる。
【0032】
ブラシ120は、具体的には、図6(a)に示すように、糸121が折り返すようにジグザグに編まれた状態で短手方向中央部分C(図6(a)中 破線C-Cで示す)に沿って二つ折りされる(図中 一点鎖線矢印参照)とともに、図6(b)に示すように、折り返された両端部を長手方向にずらした状態(図6(b)中 矢印X1、X2で示す)で接合することで表面と裏面で互いに異なる方向に斜めに傾いたアーチを形成し、隙間がないように重なり合っている。
【0033】
すなわち、ブラシ120は、並列した状態の複数のU字状をなす糸121の基端部(湾曲部分123側)を、複数の糸121が並列された方向に真っ直ぐに互いに平行に延びる2本の保持糸122によって一体に保持することによって編物として形成される。なお、図5に示すように、清掃体100において、2本の保持糸122は、一対の挟持部112間に配置される。
保持糸122は、耐久性及び柔軟性が高い繊維により形成される。このような条件を満たす繊維としては、レーヨン繊維、キュプラ繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維などが挙げられる。なお、保持糸122は、ポリエステル繊維によって構成され、一部に加熱することによって溶融する熱溶融繊維を含んでもよい。
【0034】
ブラシ120を構成する糸121は、線径が0.05mm~0.5mmであることが好ましい。特に、線径が0.05mm~0.2mmのポリアミドまたはポリプロピレンのフィラメント糸を用いることで、清掃体100として一定の柔軟性を有し、被清掃体に接触した際の騒音を抑制することができる。
本実施形態における糸121には、綿番手1900T(デシテックス)/24F(フィラメント)のポリアミド系マルチフィラメント糸(単繊維当たりの線径は0.09mm)が用いられている。ポリアミド繊維は、耐摩耗性及び復元性に優れているため、清掃体100の用途に好適である。
【0035】
尚、ブラシ120を構成する糸121は、炭素繊維、炭素を練り込んだ合成樹脂繊維などの導電性を有する繊維を使用してもよい。
導電性を有する糸には静電気が貯まりにくく、ブラシ120で掻き取ったり拭き取ったりした塵埃などが静電気によってブラシ120に付着することが抑制される。これにより、例えばブラシ120で掻き取ったり拭き取ったりした塵埃などを電気掃除機で吸い込む際に、ブラシ120からリリースされやすくすることができる。
【0036】
(2.3)清掃体の形成
清掃体100を形成する場合には、まず、基台110の一対の挟持部112間に、糸121が折り返すようにジグザグに編まれた状態で短手方向中央部分Cに沿って二つ折りされたブラシ120の折り返された両端部を長手方向にずらした状態で接合して保持糸122側の基端部を挿入すると、ブラシ120の基端部が挟持部112によって挟持された状態となる。
この状態で、例えば工業用ミシン(不図示)を用いて、縫製糸113により、挟持部112と、保持糸122を含むブラシ120の基端部とを縫着して、挟持部112を保持糸122が位置する部分においてブラシ120に接合する。これにより、図5に示す清掃体100が得られる。
【0037】
(3)回転清掃体の作用と効果
電気掃除機を使用するときには、図2に示すように、掃除機ヘッド10を床面FL上に載せた状態で電気掃除機を稼動させると、モーター17が回転駆動されるとともに、仕切板14の内側のエアがエア吸引口15を通り、接続パイプ12を介して電気掃除機の本体部(不図示)内に吸引される(図中 矢印S参照)。
【0038】
このとき、モーター17の回転駆動に連動して回転清掃体20が図2における反時計方向(図2中 矢印Rで示す方向)に回転しながら、回転清掃体20の清掃体100が床面FLに接触して、床面FL上の繊維状ゴミや塵埃が清掃体100によって掻き取られてエアとともに電気掃除機の本体部(不図示)内に吸引される。
【0039】
このとき、回転清掃体20は図4に示す矢印R方向に回転し、清掃体100におけるブラシ120の先端部が床面FLに接触し、回転方向における上流側に弾性変形してブラシ120の糸121も一部が接触する。
【0040】
床面FLがフローリングである場合、ブラシ120にてフローリング上の塵埃を掻き上げることができるとともに、髪の毛や糸屑等の繊維状ゴミを掻き上げることができ、これらのゴミはエア吸引口15内へ吸い込まれる。
【0041】
床面FLが絨毯やマットである場合、ブラシ120にて床面FL付近の塵埃を掻き出すとともに、繊維状ゴミを絡め取ることができる。このとき、繊維状ゴミの一部はエア吸引口15へ吸い込まれずに回転清掃体20に巻き付くことがあるが、ブラシ120は、糸121がアーチ状に連続して繋がって延び、アーチの表面120Aと裏面120Bで互いに異なる方向に斜めに傾いた状態で交差して重なっていることで、糸間の間隙が少なく、掻き取った繊維状ゴミはブラシ120内へ侵入しにくく、ブラシ120への巻き付きを抑制することができる。
【0042】
また、ブラシ120は、糸121がアーチ状に連続して繋がって延び、アーチの表面120Aと裏面120Bで互いに異なる方向に斜めに傾いた状態で交差して重なっていることで、糸121そのものを連結することなくコシを強くすることができ、塵埃のピックアップ性を向上させることができる。
また、例えば線径が0.1mmの比較的小さい糸121を用いても一定のピックアップ性を有し、ブラシ120の先端部が床面FLに接触しても騒音の発生を抑制することができる。
【実施例0043】
図7は実施例の清掃体及び比較例の清掃体の構成を示す図、図8は毛絡み試験の結果を示す図、図9はピックアップ試験の結果を示す図、図10は騒音試験の結果を示す図である。
以下実施形態をさらに具体化した実施例の毛絡み、ピックアップ及び騒音の性能評価ついて比較例との対比で説明する。
【0044】
(実施例)
糸121としてその太さが0.09mmのポリアミドのモノフィラメント糸を用いて長手方向(X方向)に糸121がアーチ状に連続して繋がって延び、アーチの表面と裏面で互いに異なる方向に斜めに傾いた状態で、交差して重なるように起毛した糸密度が480F/cmのブラシ120を形成し、回転清掃体としたときに床面FLとの当接量が1.0mmとなる清掃体100を製作した。
(比較例1)
その太さが0.2mmのポリアミドのモノフィラメント糸を用いて糸密度が300F/cmになるように立毛されたブラシ130Aを形成し、回転清掃体としたときに床面FLとの当接量が0.5mmとなる清掃体100Aを製作した。
また、その太さが0.001mmの炭素繊維を用いて糸密度が60000F/cmになるように立毛されたブラシ130Bを形成し、回転清掃体としたときに床面FLとの当接量が0.5mmとなる清掃体100Bを製作した。
(比較例2)
その太さが0.2mmのポリアミドのモノフィラメント糸を用いて糸密度が108F/cmになるように立毛されたブラシ130Cを形成し、回転清掃体としたときに床面FLとの当接量が0.5mmとなる清掃体100Cを製作した。
また、熱可塑性エラストマーを用いて押出しブレード130Dを形成し、回転清掃体としたときに床面FLとの当接量が0.5mmとなる清掃体100Dを製作した。
実施例及び比較例1-4の清掃体を製作して、市販の電気掃除機に回転清掃体として実装して毛絡み試験、ピックアップ試験及び騒音試験を行った。
【0045】
「毛絡み試験」
毛絡み試験に供する繊維状の被清掃物としての試料サンプルは、毛髪100%、サンプル数量0.283±0.005g、サンプル長さ20-45cmであり、床面FLとしての試験領域は303mm×1818mmのフローリング木板とし、木板上に試料サンプルをランダムに配置し、すべて回収した後の回収率を毛絡み率として評価した。ここに、毛絡み率は、試験後の掃除機ヘッド10内に残った毛髪数量(g)/試験前の毛髪数量(g)×100(%)とした。
【0046】
図8に毛絡み試験の結果を示す。これによると、実施例の清掃体100においては、毛絡み率が0.1%、比較例1の清掃体100A、100Bにおいては、毛絡み率が49.0%、比較例2の清掃体100C、100Dにおいては、毛絡み率が0.8%という評価結果になった。すなわち、実施例の清掃体100においては、毛絡みが殆ど発生しないことが確認された。
【0047】
「ピックアップ試験」
ピックアップ試験は、JIS C 9108(2017)に準拠して、床面FLとして303mm×1818mmのフローリング木板上に図9(a)に示す資料サンプルをランダムに配置し、試験後の電気掃除機のダストボックスの資料サンプル数量を計測することによりピックアップ性能として評価した。
【0048】
図9(b)にピックアップ試験の結果を示す。これによると、珪砂(小粒径の塵埃)は、いずれもピックアップ95%以上で差がない結果となった。
樹脂ペレット(粒径大の塵埃)については、実施例が88.9%、比較例1が93.6%、比較例2が91.0%であり、実施例のピックアップが若干低い結果となった。尚、糸くずについては、比較例1において糸くず絡みが発生した。
【0049】
「騒音試験」
騒音試験は、JIS C 9108(2017)に準拠して、試験面としてのフローリング木板に、清掃体を当接させて2往復稼働させて、発生する騒音(3500HZ-5000HZ)のピーク値を採って騒音・静音性を評価した。
図10に騒音試験の結果を示す。これによると、3500HZ-5000HZの範囲において、実施例が騒音が最も低く、比較例1も実施例に次いで低い騒音となった。比較例2は、ブレードと床面(フローリング木板)との接触時に高い騒音が発生した。
【0050】
本実施形態においては、ブラシ120を構成する糸121として、線径が0.05mm~0.5mmのポリアミドまたはポリプロピレンのフィラメント糸を挙げたが、糸121は、清掃体100の使用用途によってその線径、材質及び糸密度を適宜選定してもよい。例えば、低騒音が求められる場合には、線径を例えば0.05mmとしてブラシ120の柔軟性を増してもよい。
また、基台110の挟持部112とブラシ120の基端部とを縫着する際に、折り返された両端部を長手方向にずらす量を変更してアーチの傾斜角度を調整し、床面FLとの当接量(ニップ量)の微調整を行うこともできる。
【符号の説明】
【0051】
10・・・掃除機ヘッド
20・・・回転清掃体
21・・・回転体、22・・凹溝部
100・・・清掃体
110・・・基台、111・・・係止部、112・・・挟持部、113…縫製糸
120・・・ブラシ、121・・・糸、122・・・保持糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10